(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】太陽光パネル支持機構および建物
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20221012BHJP
H02S 20/22 20140101ALI20221012BHJP
【FI】
E04F13/08 Z ETD
H02S20/22
(21)【出願番号】P 2019009566
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】宮城 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】藤家 充朗
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-65149(JP,A)
【文献】特開2013-129994(JP,A)
【文献】特開2014-15751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
H02S 20/22-20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁パネルと、
前記外壁パネルの外側面に沿って太陽光パネルを支持するための太陽光パネル支持具と、を備え、
前記太陽光パネル支持具は、前記太陽光パネルの内側面に設けられた下側被係合部を支持する第1の支持部を有して、前記外壁パネルの前記外側面に取り付けられる第1の部材と、
前記外壁パネルの前記外側面の前記第1の部材より上方に取り付けられる基部と、前記太陽光パネルの内側面の前記下側被係合部より上方に設けられた上側被係合部に係合する規制部とを有する第2の部材と、を備えてなり、
前記規制部は、
前記太陽光パネルが前記外壁パネルから離れる方向に移動するのを許容する前記上側被係合部との非係合状態を維持する第1の姿勢と、
前記太陽光パネルが前記外壁パネルから離れる方向に移動するのを規制する前記上側被係合部との係合状態を維持する第2の姿勢と、を取ることができる、太陽光パネル支持機構。
【請求項2】
前記規制部は、
前記第1の姿勢において、前記太陽光パネルの上方に配置され、内側面に下側被係合部が設けられた上側太陽光パネルが前記外壁パネルから離れる方向に移動するのを許容する前記上側太陽光パネルの前記下側被係合部との非係合状態を維持し、
前記第2の姿勢において、前記上側太陽光パネルが前記外壁パネルから離れる方向に移動するのを規制する前記上側太陽光パネルの前記下側被係合部との係合状態を維持する請求項1に記載の太陽光パネル支持機構。
【請求項3】
前記規制部は、前記第1の姿勢と前記第2の姿勢との間で回転可能に保持される請求項1または請求項2に記載の太陽光パネル支持機構。
【請求項4】
前記第2の部材は、前記規制部と前記基部との間隔を調整可能とする調整機構を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の太陽光パネル支持機構。
【請求項5】
前記第2の部材は、前記太陽光パネルの上方に配置される上側太陽光パネルの内側面に設けられた下側被係合部を支持する第2の支持部を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の太陽光パネル支持機構。
【請求項6】
建物であって、
請求項1~5のいずれかに記載の太陽光パネル支持機構と、
前記太陽光パネル支持機構に支持される前記太陽光パネルと、
鉛直方向に延びるとともに、前記建物に加わる水平方向の外力によって上部が下部に対して水平方向に変位する躯体と、
水平方向に変位する前記躯体に追従するために前記躯体に対して前記太陽光パネル支持機構を回転運動可能に取り付けるロッキング機構と、を備え、
前記外壁パネルの外面に垂直な方向から見て、前記太陽光パネル、および前記太陽光パネル支持具が前記外壁パネルの領域内に配置されている、建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネル支持機構および当該太陽光パネル支持機構を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境エネルギーを利用するため、発電用の太陽光パネルを備える家屋等の建物が増加している。太陽光パネルは、屋根だけでなく、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されているように、外壁にも設けられるようになってきている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の太陽光パネルの取付け構造は、外壁に設けられた支持具が太陽光パネルの下端を支持するとともに太陽光パネルの外側面(受光面)の一部を覆って太陽光パネルの壁から離れる方向への移動を規制するものである。そのため、太陽光パネルは十分に太陽光を受けることができず、発電性能を十分に発揮できない。
【0004】
これに対して、特許文献2に記載の太陽光パネルの取付け構造は、太陽光パネルの内側面に設けられた被係合部と、外壁に設けられた支持具を用いるものであり、太陽光パネルの外側面を開放した状態で太陽光パネルを外壁に設けることができる。そのため、太陽光パネルは、外側面で十分に太陽光を受け、発電性能を十分に発揮することができる。
【0005】
特許文献2に記載の太陽光パネルの取付け構造に用いられる太陽光パネルの被係合部は、内側面の上部および下部に設けられている。また、外壁に設けられる支持具は、太陽光パネルの上側および下側の被係合部を下方から受ける構造であり、上側および下側の双方の被係合部を同時に支持具の上方から引掛けることにより、太陽光パネルは支持具に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-129994号公報
【文献】特開2014-15751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の太陽光パネルの取付け構造では、太陽光パネルの上側および下側の双方の被係合部の両方を同時に支持具に引掛ける必要があり、双方の被係合部が支持具に引掛かるまで太陽光パネルを作業者が保持しなければならないため、施工が難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、太陽光パネルの外側面を開放した状態で、外壁パネルに沿って太陽光パネルを上下方向に並べて設けることができるとともに、外壁パネルへの太陽光パネルの施工が容易である太陽光パネル支持機構を提供することを目的とする。また、このような太陽光パネル支持機構によって支持された太陽光パネルを有する建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0010】
本発明の一局面に係る太陽光パネル支持機構は、建物の外壁パネルと、前記外壁パネルの外側面に沿って太陽光パネルを支持するための太陽光パネル支持具と、を備え、前記太陽光パネル支持具は、前記太陽光パネルの内側面に設けられた下側被係合部を支持する第1の支持部を有して、前記外壁パネルの前記外側面に取り付けられる第1の部材と、前記外壁パネルの前記外側面の前記第1の部材より上方に取り付けられる基部と、前記太陽光パネルの内側面の前記下側被係合部より上方に設けられた上側被係合部に係合する規制部とを有する第2の部材と、を備えてなり、前記規制部は、前記太陽光パネルが前記外壁パネルから離れる方向に移動するのを許容する前記上側被係合部との非係合状態を維持する第1の姿勢と、前記太陽光パネルが前記外壁パネルから離れる方向に移動するのを規制する前記上側被係合部との係合状態を維持する第2の姿勢と、を取ることができる。
【0011】
上記の太陽光パネル支持機構では、第1,第2の部材は、太陽光パネル本体の内側面に設けられた上側被係合部および下側被係合部と係合するため、上記の太陽光パネル支持具を用いることによって、太陽光パネルの外側面を開放した状態で、太陽光パネルを外壁パネルの外側面に沿って設けることができる。
【0012】
また、上記の太陽光パネル支持機構を用いて太陽光パネルを外壁に沿って設ける場合、まず、規制部を第1の姿勢とするとともに、第1の支持部で太陽光パネルを支持した状態とし、続いて太陽光パネルを外壁に沿わせた上で、規制部を第2の姿勢とすることで、太陽光パネルが太陽光パネルから離れる方向に移動するのを規制することができる。
【0013】
そのため、特許文献2に記載のように太陽光パネルの上側および下側の双方の被係合部の両方を同時に支持具に引掛ける場合と比べて、容易に外壁に太陽光パネルを施工することができる。
【0014】
上記の太陽光パネル支持機構において、前記規制部は、前記第1の姿勢において、前記太陽光パネルの上方に配置され、内側面に下側被係合部が設けられた上側太陽光パネルが前記外壁パネルから離れる方向に移動するのを許容する前記上側太陽光パネルの前記下側被係合部との非係合状態を維持し、前記第2の姿勢において、前記上側太陽光パネルが前記外壁パネルから離れる方向に移動するのを規制する前記上側太陽光パネルの前記下側被係合部との係合状態を維持してもよい。
【0015】
この態様では、規制部によって、太陽光パネルだけでなく、太陽光パネルの上側に設けられた上側太陽光パネルが外壁パネルから離れる方向に移動するのを抑制することができる。
【0016】
上記の太陽光パネル支持機構において、前記規制部は、前記第1の姿勢と前記第2の姿勢との間で回転可能に保持されてもよい。
【0017】
この態様では、規制部を回転させることにより第1の姿勢から第2の姿勢に変化させ、また、第2の姿勢から第1の姿勢に変化させることができる。
【0018】
上記の太陽光パネル支持機構において、前記第2の部材は、前記規制部と前記基部との間隔を調整可能とする調整機構を有してもよい。
【0019】
この態様では、規制部を第2の姿勢として太陽光パネルの上側被係合部に係合させた後、調整機構によって規制部と基部との間隔を調整することができる。調整機構によって規制部と基部との間隔を狭くすることにより、規制部と基部とで上側被係合部を挟持することができ、安定して太陽光パネルを外壁パネルに設けることができる。
【0020】
上記の太陽光パネル支持機構において、前記第2の部材は、前記太陽光パネルの上方に配置される上側太陽光パネルの内側面に設けられた下側被係合部を支持する第2の支持部を有してもよい。
【0021】
この態様では、第2の部材によって、下側の太陽光パネルが外壁パネルから離れる方向に移動するのを規制するだけでなく、上側太陽光パネルを支持することができる。
【0022】
本発明の他の一局面に係る建物は、上記太陽光パネル支持機構と、前記太陽光パネル支持機構に支持される前記太陽光パネルと、鉛直方向に延びるとともに、前記建物に加わる水平方向の外力によって上部が下部に対して水平方向に変位する躯体と、水平方向に変位する前記躯体に追従するために前記躯体に対して前記太陽光パネル支持機構を回転運動可能に取り付けるロッキング機構と、を備え、前記外壁パネルの外面に垂直な方向から見て、前記太陽光パネル、および前記太陽光パネル支持具が前記外壁パネルの領域内に配置されている。
【0023】
上記建物は、地震、台風等により建物が揺れた場合には、ロッキング機構が作動し、外壁が回転運動するため、外壁パネルの損壊が抑制される。また、太陽光パネルは、外壁の外面に垂直な方向から見た外壁パネルの領域内に配置されているため、ロッキング機構が作動しても、太陽光パネルの損壊が抑制される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、外側面を開放した状態で、外壁パネルに沿って太陽光パネルを上下方向に並べて設けることができるとともに、外壁パネルへの太陽光パネルの施工が容易である太陽光パネル支持機構を提供することができる。また、このような太陽光パネル支持機構によって支持された太陽光パネルを有する建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽光パネル支持機構および太陽光パネルの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII部分の、一部を省略した部分拡大図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の他の実施形態に係る太陽光パネル支持機構の第1の姿勢を取る第2の規制部周辺の部分正面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のb-b線での断面図である。
【
図9】
図9(a)は、本発明の他の実施形態に係る太陽光パネル支持機構の第2の姿勢を取る第2の規制部周辺の部分正面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のb-b線での断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の他の実施形態に係る第2の規制部の変形例の正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施形態に係る第2の規制部の正面図である。
【
図14】
図14(a)は、本発明の他の実施形態に係る太陽光パネル支持機構の部分正面図であり、
図14(b)は、
図14(a)のb-b線での断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態に係る建物の躯体の構造を模式的に示す正面図である。
【
図16】
図16は、建物の外壁パネル部分の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る太陽光パネル支持機構、および太陽光パネル支持機構を備えた建物について図面に基づいて説明する。
【0027】
(太陽光パネル支持機構の構成)
図1は、本実施形態に係る太陽光パネル支持機構および太陽光パネルの正面図である。
図2は、
図1のII部分の、一部を省略した部分拡大図である。
図3は、
図1のIII-III線での断面図である。
図4は、
図3のVI部分の部分拡大図である。
図5は、
図3のV部分の部分拡大図である。
図6は、
図2のVI-VI線での断面図である。
図7は、
図1のVII-VII線での断面図である。
【0028】
以下の説明では、
図1の右方向を+X方向、左方向を-X方向、上方向を+Z方向(鉛直上向き方向)、下方向を-Z方向(鉛直下向き方向)とし、
図1の紙面と直交する方向で、紙面奥行方向を+Y方向、紙面手前方向を-Y方向として説明する。また、+X方向および-X方向を総称してX方向、+Y方向および-Y方向を総称してY方向、+Z方向および-Z方向を総称してZ方向という。X方向とY方向とZ方向とはそれぞれ直交する。
【0029】
太陽光パネル支持機構2は、外壁パネル3と、外壁パネル3の外側面(-Y方向側の面)に沿って2枚の太陽光発電用の太陽光パネル4,5を支持するための太陽光パネル支持具9と、を備える。
【0030】
2枚の太陽光パネル4,5は外壁パネル3の外側面に鉛直方向上下に設けられており、それぞれ、太陽光パネル本体6と、太陽光パネル本体6の内側面に設けられた上側被係合部7および下側被係合部8と、を有する。上側被係合部7は、下側被係合部8の上方に設けられている。
【0031】
太陽光パネル本体6は、基板6aと、基板6aの一方(-Y方向側)の面に形成された発電層6bと、を備える。基板6aは、発電層6bに沿って設けられた基板本体6cと、基板本体6cに沿うように基板本体6cの上端部から下向き(-Z方向)に延びる上側重複部6dと、基板本体6cに沿うように基板本体6cの下端部から上向き(+Z方向)に延びる下側重複部6eと、を有する。発電層6bは、基板6aに蒸着によって形成された蒸着層と、蒸着層の上に設けられたカバーガラスとを有する。
【0032】
上側被係合部7は、基板6aの上側重複部6dの下端部から内側(+Y方向側)に延びる第1の延伸部7aと、第1の延伸部7aの端部から上向き(+Z方向)に延びる第2の延伸部7bと、を有する。
【0033】
下側被係合部8は、基板6aの下側重複部6eの上端部から内側(+Y方向側)に延びる第3の延伸部8aと、第3の延伸部8aの端部から下向き(-Z方向)に延びる第4の延伸部8bと、を有する。
【0034】
基板6a、上側被係合部7、および下側被係合部8は、1枚の金属板を折り曲げることにより一体に形成されている。当該金属板には、例えば厚さ3mmの鋼板を用いることができる。
【0035】
太陽光パネル支持具9は、下側の太陽光パネル4の下端部に取り付けられる第1の部材20と、下側の太陽光パネル4の上端部および上側の太陽光パネル(上側太陽光パネル)5の下端部に取り付けられる第2の部材30と、上側の太陽光パネル5の上端部に取り付けられる第3の部材40と、を備える。
【0036】
第1の部材20は、外壁パネル3に埋め込まれたインサートナット3aとインサートナット3aと螺合するボルト3bとによって外壁パネル3の外側面に取り付けられる第1の基部21と、下側の太陽光パネル4の下側被係合部8を支持する第1の支持部22と、を有する。
【0037】
第1の基部21は、ボルト3bを通す穴(不図示)を有する外壁側側壁21aと、第1の支持部22との間で下側の太陽光パネル4の下側被係合部8の第4の延伸部8bを受け入れる溝を形成するための太陽光パネル側側壁21bと、を有する。第1の基部21の外壁側側壁21aは、インサートナット3aとボルト3bとによって、外壁パネル3の外側面に取り付けられている。
【0038】
図4に示すように、第1の支持部22は、下側の太陽光パネル4の下側被係合部8に係合して、下側の太陽光パネル4の荷重を受け、下側被係合部8を支持するとともに、太陽光パネル4が-Y方向に移動するのを規制する。具体的には、第1の支持部22は、第1の基部21の太陽光パネル側側壁21bの下端から-Y方向に延びる底板部22aと、底板部22aの端部から+Z方向に延びる本体22bと、を有する。
【0039】
第1の支持部22の本体22bと第1の基部21の太陽光パネル側側壁21bとの間には、下側の太陽光パネル4の下側被係合部8の第4の延伸部8bが挟まれている。また、第1の支持部22の本体22bは、下側の太陽光パネル4の基板6aの下側重複部6eと下側被係合部8の第4の延伸部8bとの間に挿入された状態となる。この状態において、第1の支持部22は、下側の太陽光パネル4の下側被係合部8に下(-Z方向)から係合している。
【0040】
ここで、
図4に示すように、第1の支持部22の本体22bの第1の基部21と対向する面(+Y方向側の面)のZ方向の長さをH1、下側の太陽光パネル4の下側被係合部8の第4の延伸部8bの内側の面(-Y方向側の面)のZ方向の長さをH2とする。H1≧H2である場合、第1の支持部22の本体22bの上端部は、下側被係合部8の第3の延伸部8aに接し、下側の太陽光パネル4の荷重を受ける。H1≦H2である場合、第1の支持部22の底板部22aは、下側被係合部8の第4の延伸部8bの下端部に接し、下側の太陽光パネル4の荷重を受ける。
図4には、H1=H2の場合について示している。
【0041】
第2の部材30は、インサートナット3aとボルト3bとによって外壁パネル3の外側面の第1の部材20より上方に取り付けられる第2の基部(基部)31と、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7に係合する規制部本体32を有する複数の第2の規制部(規制部)と、上側の太陽光パネル5の下側被係合部8を支持する第2の支持部33と、を有する。
【0042】
第2の基部31は、X方向に延び、ボルト3bを通す穴(不図示)を有する第1外壁側側壁31aと、第1外壁側側壁31aの下方で第1外壁側側壁31aと同一平面上に設けられた第2外壁側側壁31cと、第1外壁側側壁31aおよび第2外壁側側壁31cの-Y方向側に設けられ、第2の規制部の規制部本体32が回動可能な状態で取り付けられるとともに、第2の支持部33との間で上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bを受け入れる溝を形成とするための太陽光パネル側側壁31bと、を有する。第2の基部31の第1外壁側側壁31aは、インサートナット3aとボルト3bとによって、外壁パネル3の外側面に取り付けられている。第1外壁側側壁31aが外壁パネル3の外側面に取り付けられた状態において、第2外壁側側壁31cは、外壁パネル3に押し付けられている。
【0043】
第2の規制部は、規制部本体32と、規制部本体32を太陽光パネル側側壁31bに回動可能に取り付けるねじ34と、を備える。規制部本体32は、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7に係合して下側の太陽光パネル4が外壁パネル3から離れる方向(-Y方向)に移動するのを規制する。本実施形態では、第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bに所定の間隔を空けてX方向に並んだ状態で2つの第2の規制部が設けられている。
【0044】
図6に示すように、第2の支持部33は、上側の太陽光パネル5の下側被係合部8に係合して、太陽光パネル5の荷重を受け、下側被係合部8を支持するとともに、太陽光パネル5が-Y方向に移動するのを規制している。具体的には、第2の支持部33は、第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bに設けられた挿入口31dを通じて太陽光パネル側側壁31bの-Y方向側から+Y方向側に延びる挿通部33bと、挿通部33bの-Y方向側の端部から+Z方向に延びる係止部33aと、挿通部33bの+Y方向側の端部から-Z方向に延び、第1外壁側側壁31aおよび第2外壁側側壁31cと同一平面上に設けられた状態で係止部33aおよび挿通部33bの回動を規制する回動抑制部33cと、を有する。本実施形態では、第2の支持部33は2個設けられ、2個の第2の規制部の規制部本体32の内側に所定の間隔を空けてX方向に並んで設けられている。
【0045】
第2の支持部33の挿通部33bの長さは、回動抑制部33cが第2の基部31の第1外壁側側壁31aおよび第2外壁側側壁31cと同一平面上に位置する状態において、係止部33aと第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bとの間に間隙が生じる長さとする。
【0046】
第2の支持部33の係止部33aと第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bとの間には、上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bが挟まれている。また、第2の支持部33の係止部33aは、上側の太陽光パネル5の基板6aの下側重複部6eと下側被係合部8の第4の延伸部8bとの間に挿入された状態となる。この状態において、第2の支持部33は、上側の太陽光パネル5の下側被係合部8に下(-Z方向)から係合している。
【0047】
第2の支持部33の回動抑制部33cは、外壁パネル3の外側面に接触して、挿通部33bが第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bと接触する部分を軸として回動するのを抑制する。回動抑制部33cは、外壁パネル3の外側面に固定されていてもよいし、単に接するだけでもよい。回動抑制部33cが外壁パネル3の外側面に固定されている場合、単に接する場合と比べて、第2の支持部33は上側の太陽光パネル5を安定して支持することができる。第2の支持部33は、1個でもよいが、上側の太陽光パネル5を安定して支持するため、2個以上設けることが好ましい。第2の支持部33は、2個の第2の規制部の規制部本体32を挟むように設けてもよい。
【0048】
図2に示すように、本実施形態では、第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bは、規制部本体32との間で下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bを挟むための第1の挟持領域31eと、規制部本体32との間で上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bを挟むための第2の挟持領域31fと、を有する。
【0049】
また、規制部本体32は、第1の挟持領域31eの上(+Z方向側)において第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bに設けられためねじに螺合するおねじを有するねじ34によって太陽光パネル側側壁31bに直交する方向に延びる軸35を中心として回動可能に取り付けられる。ねじ34は、規制部本体32と太陽光パネル側側壁31bとの間隔を調整可能とする調整機構を兼ねている。第2の挟持領域31fは、軸35を基準として、第1の挟持領域31eの反対側に設けられる。
【0050】
規制部本体32は、回動させることにより、姿勢を変化させることができる。規制部本体32の下端から軸35までの上下方向(Z方向)の距離が最も短くなる姿勢を「第1の姿勢」という。また、本実施形態では、規制部本体32の上側の太陽光パネル5の荷重を受ける部分が軸35の鉛直上方に位置する姿勢を「第2の姿勢」という。
図2において、-X方向側の規制部本体32は第1の姿勢を取っており、+X方向側の規制部本体32は、第2の姿勢を取っている。
【0051】
第1の挟持領域31eは、規制部本体32が第1の姿勢である状態において、規制部本体32の下端の下側となる部分に設けられている。第2の挟持領域31fは、規制部本体32が第1の姿勢である状態において、規制部本体32の上端の上側となる部分に設けられている。
【0052】
規制部本体32は、第1の姿勢を取る状態では、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bの上端と上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bの下端との間に納まる。このとき、規制部本体32は、上側被係合部7から上に離れ、下側の太陽光パネル4が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを許容する上側被係合部7との非係合状態を維持する。また、規制部本体32は、下側被係合部8から下に離れ、上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを許容する下側被係合部8との非係合状態も維持する。
【0053】
規制部本体32は、第2の姿勢を取る状態では、上側被係合部7に上から係合して、下側の太陽光パネル4が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを規制する上側被係合部7との係合状態を維持する。また、規制部本体32は、下側被係合部8に下から係合して、上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを規制する下側被係合部8との非係合状態も維持するとともに、上側の太陽光パネル5の荷重を受ける。規制部本体32は、第1の姿勢から第2の姿勢に回動する途中で、上側被係合部7に係合しない状態から係合する状態となる。
【0054】
本実施形態では、Y方向から見た規制部本体32の形状は六角形であり、具体的には、長方形において、一つの頂点とその対角に位置する頂点が、それぞれ短辺の中点から長辺に向かって延びる線分に沿って切り落とされた形状である。また、規制部本体32において、軸35は、六角形の元となる長方形の対角線を結んだ交点の位置に設けられている。第1の姿勢を取る状態では、規制部本体32の六角形の元となる長方形の長辺はX方向に延びている。
【0055】
これにより、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第1の延伸部7aと、上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第3の延伸部8aとの間隔が、六角形の元となる長方形の長辺の長さと等しい場合、第1の姿勢を取る規制部本体32を右回りに回動させることにより、規制部本体32の角を下側の太陽光パネル4の第1の延伸部7aおよび上側の太陽光パネル5の第3の延伸部8aに阻まれることなく第2の姿勢に変化させることができる。第2の姿勢を取る状態では、規制部本体32の六角形の元となる長方形の短辺を有する面で上側の太陽光パネル5の荷重を受ける。規制部本体32を第2の姿勢から第1の姿勢に変化させる場合には、左回りに回動させる。
【0056】
第3の部材40は、インサートナット3aとボルト3bとによって外壁パネル3の外側面に取り付けられる第3の基部41と、上側の太陽光パネル5の上側被係合部7に係合する第3の規制部42と、を有する。第3の基部41および第3の規制部42は、いずれもX方向に延びる。
【0057】
第3の基部41は、ボルト3bを通す穴(不図示)を有する外壁側側壁41aと、第3の規制部42の本体42bとの間で上側の太陽光パネル5の上側被係合部7の第2の延伸部7bを挟む太陽光パネル側側壁41bと、太陽光パネル側側壁41bの上端から+Y方向に延びる天板41cと、を有する。第3の基部41の外壁側側壁41aは、インサートナット3aとボルト3bとによって、外壁パネル3の外側面に取り付けられている。
【0058】
第3の規制部42は、第3の基部41の天板41c上に沿って延びる天板42aと、第3の基部41の太陽光パネル側側壁41b上に沿って間隙を設けた状態で延びる本体42bと、を有する。第3の部材40は、第3の基部41の天板41cに設けられた内ねじと螺合するねじ43を有する。ねじ43は、第3の規制部42の天板42aと第3の基部41の天板41cとを固定している。
【0059】
第3の規制部42の本体42bと、第3の基部41の太陽光パネル側側壁41bとの間には、上側の太陽光パネル5の上側被係合部7の第2の延伸部7bが挟まれる。この状態において、第3の規制部42は、上側の太陽光パネル5の上側被係合部7に係合している。これにより、上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向(-Y方向)に移動するのが規制される。
【0060】
太陽光パネル支持機構2は、さらに、外壁パネル3の外側面のX方向の両端に、太陽光パネル4,5の水平方向(X方向)の移動を規制する2対の規制部材50を有する。規制部材50は、Z方向に延び、太陽光パネル支持具9の第1の基部21、第2の基部31、および第3の基部41に取り付けられる基部51と、太陽光パネル4,5の太陽光パネル本体6のX方向の端面を受ける規制部52と、太陽光パネル4,5の太陽光パネル本体6の+Y方向に向く面のX方向の端部を受ける支持部53と、基部51と太陽光パネル支持具9の第1の基部21、第2の基部31、および第3の基部41とを固定するねじ54と、を有する。
【0061】
基部51は、ねじ54を通す穴(不図示)を有する。規制部52は、基部51のX方向の外壁パネル3の周縁に近い側の端部から-Y方向に延びる。また、支持部53は、規制部52の互いに向かい合う面のY方向の両端の間の部分からX方向に延びる。
【0062】
規制部材50の基部51は、第1の基部21の外壁側側壁21a、第2の基部31の第1外壁側側壁31aおよび第2外壁側側壁31c、ならびに第3の基部41の外壁側側壁41aに、外壁パネル3側(+Y方向側)から挿入されたねじ54によって、第1の基部21、第2の基部31、および第3の基部41に固定される。本実施形態では、2対の規制部材50のうち1対の基部51は、第1の基部21の外壁側側壁21aおよび第2の基部31の第1外壁側側壁31aに固定され、もう1対の規制部材50の基部51は、第2の基部31の第2外壁側側壁31cおよび第3の基部41の外壁側側壁41aに固定される。
【0063】
本実施形態に係る太陽光パネル支持機構2によれば、太陽光パネル4,5の外側面を開放した状態で、太陽光パネル4,5を外壁パネル3の外側面に沿って設けることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る太陽光パネル支持機構2によれば、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7は、+Z方向から第2の部材30の規制部本体32が係合する形状であるため、第2の姿勢を取る規制部本体32が下側の太陽光パネル4の第2の支持部33と係合する範囲で第1の部材20と第2の部材30とのY方向の間隔を調整することができる。そのため、第1の部材20と第2の部材30とのY方向の間隔を調整することにより、下側の太陽光パネル4と上側の太陽光パネル5との間隔(ピッチ)を調整することができる。
【0065】
(太陽光パネル支持機構の組み立て方および太陽光パネルの設け方)
太陽光パネル支持機構の組み立て方について説明する。
【0066】
第1の基部21の外壁側側壁21a、第2の基部31の第1外壁側側壁31aおよび第2外壁側側壁31c、ならびに第3の基部41の外壁側側壁41aを、それぞれ+Y方向側からねじ54によって2対の規制部材50の基部51に固定する。これにより、第1の部材20、第2の部材30、および第3の部材40、すなわち太陽光パネル支持具9と、規制部材50とを一体化する。
【0067】
規制部材50と一体化した太陽光パネル支持具9の、第1の基部21の外壁側側壁21a、第2の基部31の第1外壁側側壁31aおよび第2外壁側側壁31c、ならびに第3の基部41の外壁側側壁41aに設けられた穴にボルト3bを通し、ボルト3bを外壁パネル3に埋め込まれたインサートナット3aに螺合させる。これによって、規制部材50と一体化した太陽光パネル支持具9を外壁パネル3の外側面に取り付ける。これにより、太陽光パネル支持機構2が完成する。このとき、第2の支持部33は、第2の基部31に取り付けた状態とし、第3の規制部42は、第3の基部41から分離した状態とする。
【0068】
次に、太陽光パネル支持機構2に下側および上側の太陽光パネル4,5を設ける手順(第1の手順)について説明する。
【0069】
第1の手順を適用する場合、あらかじめ第2の部材30の規制部本体32は、ねじ34を緩めた状態で第1の姿勢に設定する。また、外壁パネル3に設けられる下側の太陽光パネル4と上側の太陽光パネル5との間隔は、ねじ回しでねじ34を回転させることができるよう、-Y方向から見てねじ34のねじ穴(被操作部分)を開放する長さとする。
【0070】
まず、第1の部材20の第1の支持部22に、下側の太陽光パネル4の下側被係合部8を係合させるとともに、第2の部材30の第2の支持部33に、上側の太陽光パネル5の下側被係合部8を係合させ、第1の支持部22および第2の支持部33で太陽光パネル4,5の荷重を受けた状態とし、さらに手または他の部材によって両方の太陽光パネル4,5を外壁パネル3方向(+Y方向)に沿わせた状態とする。このとき、太陽光パネル4,5の上側被係合部7の第2の延伸部7bは、それぞれ第2の部材30の第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bまたは第3の部材40の第3の基部41の太陽光パネル側側壁41bに接触する。
【0071】
次に、規制部本体32を回動させて第1の姿勢から第2の姿勢に変化させ、ねじ34を締め付ける。
【0072】
最後に、第3の基部41に第3の規制部42を取り付け、ねじ43で固定して、太陽光パネル4,5を備えた太陽光パネル支持機構2が完成する。
【0073】
このように、本実施形態に係る太陽光パネル支持機構2を用いることにより、外壁パネル3に太陽光パネル4,5をそれぞれ施工する際に、上側被係合部7と下側被係合部8の両方を同時に外壁パネル3に設けられた太陽光パネル支持具9に係合させる必要がなく、外壁パネル3に太陽光パネル4,5を比較的容易に施工することができる。
【0074】
また、ねじ34を締め付けて規制部本体32と第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bとの間隔を狭くすることにより、規制部本体32と、第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bの第1の挟持領域31eとの間で下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bを挟持することができるため、安定して下側の太陽光パネル4を外壁パネル3に設けることができる。さらに、規制部本体32と、第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bの第2の挟持領域31fとの間で上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bを挟持することもできる。これにより、規制部本体32によって上側の太陽光パネル5の荷重を受けることができ、安定して上側の太陽光パネル5を外壁パネル3に設けることができる。
【0075】
外壁パネル3に設けられる下側の太陽光パネル4と上側の太陽光パネル5との間隔は、第1の姿勢を取る規制部本体32を、下側の太陽光パネル4と上側の太陽光パネル5の間を通じて抜き挿し可能な長さとした場合、外壁パネル3に下側および上側の太陽光パネル4,5を設ける手順を、上記第1の手順だけでなく、以下の手順(第2の手順)とすることもできる。これにより、外壁パネル3の外側面に太陽光パネル4,5を施工する際の作業の自由度が高められる。
【0076】
以下の説明では、上記第1の手順と共通する部分については省略する。
【0077】
第2の支持部33を第2の基部31から外した状態で、下側および上側の太陽光パネル4,5をそれぞれ第1の支持部22または第2の支持部33に係合させ、両方の太陽光パネル4,5を外壁パネル3方向(+Y方向)に押さえた状態とする。
【0078】
この状態で、第1の姿勢とした規制部本体32を、両方の太陽光パネル4,5の間隙から第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bに向けて挿入し、ねじ34を太陽光パネル側側壁31bに設けられた内ねじに螺合させる。第2の基部31を回動させて第2の姿勢とし、ねじ34を締め付ける。
【0079】
最後に、第3の基部41に第3の規制部42をねじ43で固定する。
【0080】
上記2つの手順において、規制部本体32を第1の姿勢から第2の姿勢に回動させる前に、第3の基部41に第3の規制部42を取り付けてもよい。
【0081】
次に、本発明の他の実施形態に係る太陽光パネル支持機構について
図8~
図14を用いて説明する。
図8~
図14では、
図1~
図7に記載の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図8(a)は、本発明の他の実施形態に係る太陽光パネル支持機構の第1の姿勢を取る第2の規制部周辺の部分正面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のb-b線での断面図である。
図9(a)は、本発明の他の実施形態に係る太陽光パネル支持機構の第2の姿勢を取る第2の規制部周辺の部分正面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のb-b線での断面図である。
【0083】
この実施形態では、第2の規制部(規制部)36は、それぞれ独立して回動可能な第1の翼部36aと第2の翼部36bとを備え、第1の翼部36aは上側の太陽光パネル5の下側係合部8と係合し、第2の翼部36bは下側の太陽光パネル4の上側被係合部7と係合することが可能である。
【0084】
具体的には、第2の規制部36は、ボルト36cと、ボルト36cに螺合するナット36dと、それぞれ一端にボルト36cを挿入可能なボルト挿入孔(不図示)を有する第1の翼部36aおよび第2の翼部36bと、を備える。第1の翼部36aと第2の翼部36bとは、それぞれのボルト挿入孔が形成された部分同士がY方向に重なっている(
図8(a)および
図9(a)では、重なっている部分はボルト36cに隠れている)。第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bは、X方向に延びる長穴31gを有する。
【0085】
ボルト36cは長穴31gに-Y方向側から挿入され、ナット36dは、長穴31gの+Y方向側からボルト36cに螺合する。ボルト36cの頭部およびナット36dは、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bを太陽光パネル側側壁31bに対して回動可能に挟む。
【0086】
第2の規制部36は、
図8(a),(b)に示すように、ボルト36cが長穴31gの-X方向側の端部に位置する状態において、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bがボルト36c側から+X方向に延びた状態で、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bが閉じた第1の姿勢を取る。また、第2の規制部36は、
図9(a),(b)に示すように、ボルト36cが長穴31gの+X方向側の端部に位置する状態において、第1の翼部36aが第1の姿勢から+Z方向に、第2の翼部36bが第1の姿勢から-Z方向にそれぞれ回動した場所に位置し、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bが開いた第2の姿勢を取る。
【0087】
太陽光パネル側側壁31bは、その長穴31gの下側部分から-Y方向に延びるピン31iと、その長穴31gの上側部分から-Y方向に延びるピン31jと、を有する。ピン31iおよびピン31jは、第2の姿勢を取る第2の規制部36を-X方向に移動させることにより、それぞれ第2の翼部36bの-Z方向側の面および第1の翼部36aの+Z方向側の面に接触して、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bを第1の姿勢に導く。
【0088】
また、太陽光パネル側側壁31bは、その長穴31gの+X方向側の部分から-Y方向に延びる柱状部31hを有する。柱状部31hを-Y方向側から見た形状は、-X方向側から+X方向側に向かってZ方向の幅が広がる台形状である。柱状部31hは、第1の姿勢を取る第2の規制部36を+X方向に移動させることにより、+Z方向側の面が第1の翼部36a、-Z方向側の面が第2の翼部36bにそれぞれ接触して、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bを第2の姿勢に向けて、互いに離れる方向に導く。また、柱状部31hは、
図9に示すように、第2の姿勢を取る第1の翼部36aおよび第2の翼部36bの間で、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bが閉じるのを抑制する。
【0089】
第2の規制部36は、
図8に示すように第1の姿勢を取る状態では、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bの上端と上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bの下端との間に納まる。このとき、第2の規制部36は、下側の太陽光パネル4および上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを許容する上側被係合部7および下側被係合部8との非係合状態を維持する。
【0090】
図9に示すように、第2の規制部36が第2の姿勢を取る状態では、第2の翼部36bは、上側被係合部7に上(+Z方向)から係合して下側の太陽光パネル4が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを規制する上側被係合部7との係合状態を維持する。また、第1の翼部36aは、下側被係合部8に下(-Z方向)から係合して、上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを規制する下側被係合部8との係合状態を維持する。
【0091】
第2の規制部36が第2の姿勢を取る状態でボルト36cおよびナット36dを締め付けることにより、第2の規制部36と太陽光パネル側側壁31bとの間隔が狭くなる。これにより、第2の規制部36によって下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bおよび上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bを+Y方向に押さえつけることができる。
【0092】
図10は、本発明の他の実施形態に係る第2の規制部の変形例の正面図である。この変形例では、第2の規制部36は、ボルトおよびナットによって長穴に沿って移動するのではなく、ねじ36fによって開閉可能に太陽光パネル側側壁31bに固定されている。
【0093】
第2の規制部36は、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bに加え、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bのボルト挿入孔の周囲に第1の翼部36aおよび第2の翼部36bを互いに開く方向に付勢する付勢部材36eと、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bのボルト挿入孔に挿入されるねじ36fと、を有する。ねじ36fは、太陽光パネル側側壁31bに設けられためねじに螺合するおねじを有する。
【0094】
第2の規制部36は、
図10において実線で示す第1の姿勢では、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bは付勢部材36eによって開く方向に付勢されている。このとき、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bは、ねじ36fを締め付けることにより閉じた状態で保持されている。ねじ36fを緩めると、付勢部材36eの付勢力により、
図10に二点鎖線で示す第2の姿勢を取る。第2の姿勢を取る第2の規制部36を閉じる際には、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bに設けられた孔36a1および孔36b1に専用の工具を挿入して閉じることができる。
【0095】
付勢部材36eが第1の翼部36aおよび第2の翼部36bを互いに閉じる方向に付勢するものである場合、第1の翼部36aおよび第2の翼部36bを開いた状態としたうえで、太陽光パネル側側壁31bのそれらの翼部の間の部分に柱状部31hを取り付けることにより、第2の規制部36を第2の姿勢で保持することができる。
【0096】
図11は、本発明の他の実施形態に係る第2の規制部の正面図であり、
図12は、
図11に示す第2の規制部を用いた太陽光パネル支持機構の断面図である。この実施形態に係る第2の規制部(規制部)37は、回転するのではなく、太陽光パネル側側壁31bに固定されたねじ37cに対して上下方向に移動可能である点でその他の実施形態と異なる。
【0097】
図11に示すように、本実施形態では、第2の規制部37は、上側規制部37aと、上側規制部37aの+Y方向側に配置される下側規制部37bと、上側規制部37aおよび下側規制部37bを太陽光パネル側側壁31bに対してZ方向にスライド可能に取り付けるねじ37cと、上側規制部37aとねじ37cの頭との間に配置されるワッシャ37dと、を備える。ねじ37cは、太陽光パネル側側壁31bに設けられためねじに螺合するおねじを有する。
【0098】
上側規制部37aは、X方向およびZ方向に沿って延びる四角形の平板からなる本体部37a1と、本体部37a1の+Z方向側の端部から+Y方向に延びる延伸部37a2と、を有する。本体部37a1は、X方向中央部にZ方向に延びる長穴37a3が設けられている。下側規制部37bは、X方向およびZ方向に沿って延びる平板からなり、X方向中央部にZ方向に延びる長穴37b1が設けられている。上側規制部37aおよび下側規制部37bは、ワッシャ37dを介して長穴37a3,37b1に挿通されたねじ37cによって、太陽光パネル側側壁31bに対してZ方向にスライド可能に取り付けられる。
【0099】
第2の規制部37は、以下の第1の姿勢と第2の姿勢とを取ることができる。第2の規制部37が第1の姿勢を取る状態では、上側規制部37aおよび下側規制部37bは、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bの上端と上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bの下端との間に納まっており、下側の太陽光パネル4および上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを許容する。第2の規制部37が第2の姿勢を取る状態では、上側規制部37aは、上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bと係合し、下側規制部37bは、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bと係合し、それぞれ下側の太陽光パネル4および上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを規制する。
【0100】
第2の規制部37が第1の姿勢を取ることができるように、上側規制部37aのZ方向の長さは、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bの上端から上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bの下端までの長さ(以下「延伸部間隔」という。)以下である。また、下側規制部37bのZ方向の長さは、当該延伸部間隔から上側規制部37aの延伸部37a2のZ方向の長さを引いた長さ以下である。
【0101】
第2の規制部37において、ねじ37cを締め付けることにより、上側規制部37aおよび下側規制部37bを所定の位置に保持することができる。また、ねじ37cを緩めることにより、上側規制部37aおよび下側規制部37bをZ方向にスライド可能とすることができる。第1の姿勢を取る第2の規制部37においてねじ37cを緩め、上側規制部37aを+Z方向、下側規制部37bを-Z方向にそれぞれ移動させ、ねじ37cを締め付けることにより、第2の姿勢に保持することができる。
【0102】
第2の規制部37が第2の姿勢を取り、ねじ37cを締め付けた状態では、
図12に示すように、上側規制部37aは、上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bを+Y方向に押さえつけ、下側規制部37bは、下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bを+Y方向に押さえつける。
【0103】
図13は、
図11に示す第2の規制部の変形例の正面図である。同図に示すように、斜めに延びてもよい。同図では、長穴37a3および長穴37b1の斜めに延びる角度を同じとしているが、上側規制部37aの長穴37a3および下側規制部37bの長穴37b1は、上側規制部37aの延伸部37a2を上側の太陽光パネル5の下側被係合部8の第4の延伸部8bの下端よりも上方に移動させ、下側規制部37bの下端を下側の太陽光パネル4の上側被係合部7の第2の延伸部7bの上端よりも下方に移動させることができる範囲であれば、それぞれ異なる角度に延びてもよい。
【0104】
図14(a)は、本発明の他の実施形態に係る太陽光パネル支持機構の部分正面図であり、
図14(b)は、
図14(a)のb-b線での断面図である。
【0105】
この実施形態に係る第2の規制部(規制部)38は、水平方向(X方向)から下側の太陽光パネル4の上側被係合部17および上側の太陽光パネル5の下側被係合部18に係合する点でその他の実施形態と異なる。
【0106】
図14(a)に示すように、下側の太陽光パネル4は、上部の内側面に、+X方向に開口し、Z方向に延びる溝を有する上側被係合部17を備える。上側の太陽光パネル5は、下部の内側面に、+X方向に開口し、Z方向に延びる溝を有する下側被係合部18を備える。
【0107】
第2の基部31の太陽光パネル側側壁31bには、第2の規制部38が設けられている。第2の規制部38は、規制部本体38aと、規制部本体38aを太陽光パネル側側壁31に対してX方向にスライド可能に取り付けるねじ38bと、規制部本体38aとねじ38bとの間に配置されるワッシャ38cと、を備える。ねじ38bは、太陽光パネル側側壁31bに設けられためねじに螺合するおねじを有する。
【0108】
規制部本体38aは、X方向およびZ方向に沿って延びる四角形の平板からなり、Z方向中央部にはZ方向に延びる長穴38a1が設けられている。規制部本体38は、ワッシャ38cを介して長穴38a1に挿通されたねじ38bによって、太陽光パネル側側壁31bに対してX方向に移動可能に取り付けられる。
【0109】
規制部本体38aは、以下の第1の姿勢と第2の姿勢とを取ることができる。規制部本体38aが第1の姿勢を取る状態では、下側の太陽光パネル4の上側係合部17および上側の太陽光パネル5の下側係合部18から離れており、下側の太陽光パネル4および上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを許容する。規制部本体38aが第2の姿勢を取る状態では、下側の太陽光パネル4の上側係合部17および上側の太陽光パネル5の下側係合部18に+X方向側から係合し、下側の太陽光パネル4および上側の太陽光パネル5が外壁パネル3から離れる方向に移動するのを規制する。
【0110】
規制部本体38aは、+X方向に移動させると、
図14に示すように、下側の太陽光パネル4の上側係合部17および上側の太陽光パネル5の下側係合部18から+X方向に離れた場所に位置する第1の姿勢を取り、-X方向に移動させると下側の太陽光パネル4の上側係合部17および上側の太陽光パネル5の下側係合部18に収容される第2の姿勢を取る。
【0111】
規制部本体38aが第2の姿勢を取る状態でねじ38bを締め付けることにより、規制部本体38aによって、下側の太陽光パネル4の上側被係合部17および上側の太陽光パネル5の下側被係合部18を+Y方向に押さえつけることができる。
【0112】
次に、本実施形態に係る建物について説明する。
【0113】
図15は、本発明の一実施形態に係る建物の躯体の構造を模式的に示す正面図である。
図16は、建物の外壁パネル部分の構成を模式的に示す図である。
【0114】
建物1は、太陽光パネル支持機構2と、太陽光パネル支持機構2に支持される太陽光パネル4,5と、躯体10と、躯体10に対して太陽光パネル支持機構2を回転運動可能に取り付けるロッキング機構15と、を備える。
【0115】
躯体10は、鉛直方向(Z方向)に延びるとともに、建物1に加わる水平方向(X方向)の外力F1によって上部が下部に対して水平方向に変位する。
図15に示すように、躯体10は、鉛直方向に延びると共に水平方向に隣接するように並べられた複数の柱11と、水平方向に延びると共に各柱11の上端が固定された梁12と、を有する。各柱11の下端は、建物1の基礎13に固定されている。
【0116】
太陽光パネル支持機構2は、外力F1によって水平方向に変位する躯体10に追従するために、ロッキング機構15によって躯体10に対して回転運動可能に取り付けられている。ロッキング機構15は、公知の機構を使用することができる。
【0117】
躯体10が外力によって水平方向に変位した場合には、ロッキング機構15が作動し、個々の太陽光パネル支持機構2は変形することなく回転運動する。そのため、外壁パネル3には無理な力がかからず、ひび割れ等の損壊や躯体10からの脱落等を抑制することができる。また、回転運動による太陽光パネル4,5の損壊も抑制することができる。
【0118】
本実施形態の建物1では、太陽光パネル支持機構2のそれぞれにおいて、外壁パネル3の外面に垂直な方向(-Y方向)から見て、複数の太陽光パネル4,5、および太陽光パネル支持具9が外壁パネル3の領域内に配置されている。そのため、ロッキング機構15が作動しても、隣接する外壁パネル3に設けられた太陽光パネル4,5同士が干渉せず、太陽光パネル4,5の損壊や外壁パネル3からの太陽光パネル4,5の脱落等を抑制することができる。
【0119】
(本実施形態の変形例)
太陽光パネル支持機構2は、外壁パネル3に上下方向に3枚以上の太陽光パネルを備えるものであってもよい。この場合、太陽光パネルの枚数に応じて第2の部材30を増加させる。
【0120】
規制部本体32は、第2の姿勢を取る状態で、下側の太陽光パネル4の第2の支持部33と係合する部分を有し、かつ上側の太陽光パネル5の第4の延伸部8bと係合する部分を有さなくてもよい。
【0121】
基板6a、上側被係合部7、および下側被係合部8は、一枚の金属板からなるものでなくてもよく、基板6aに上側被係合部7、および下側被係合部8を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 建物
2 太陽光パネル支持機構
3 外壁パネル
4 下側太陽光パネル(太陽光パネル)
5 上側太陽光パネル
7,17 上側被係合部
8,18 下側被係合部
9 太陽光パネル支持具
10 躯体
15 ロッキング機構
20 第1の部材
22 第1の支持部
30 第2の部材
31 第2の基部(基部)
32 第2の規制部の規制部本体(規制部)
33 第2の支持部
34 第2の規制部のねじ(規制部、調整機構)
36,37,38 第2の規制部(規制部)
36c ボルト(調整機構)
36d ナット(調整機構)
36f,37c,38b ねじ(調整機構)