(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ポリイミド、接着剤、フィルム状接着剤、接着層、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、並びに多層配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20221012BHJP
C09J 179/08 20060101ALI20221012BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20221012BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20221012BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C08G73/10
C09J179/08 A
C09J7/10
C09J7/35
H05K1/03 650
(21)【出願番号】P 2019010081
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼本 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 淳
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 崇司
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-076072(JP,A)
【文献】特開2020-117699(JP,A)
【文献】特開2013-199645(JP,A)
【文献】特開2018-168371(JP,A)
【文献】特開2015-127117(JP,A)
【文献】特表2015-526561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00- 73/26
C09J 1/00-201/10
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸無水物(A)、及びジアミン(B)を含むモノマー群の反応物であり、(B)成分がダイマージアミン(B1)、並びに一般式(1)及び(2)で表されるジアミンの少なくとも一種(B2)を含み、
(B)成分総量100モル%中(B1)成分が25モル%以上である、ポリイミド。
【化1】
(式中、
R
1~R
4は、独立して水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【化2】
(式中、
R
5~R
8は、独立して水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【請求項2】
(B2)成分がm-フェニレンジアミン、2,5-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン、及びp-フェニレンジアミンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載のポリイミド。
【請求項3】
軟化点が100℃以上である、請求項1又は2に記載のポリイミド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のポリイミド、架橋剤及び有機溶剤を含む、接着剤。
【請求項5】
請求項4に記載の接着剤の加熱硬化物を含む、フィルム状接着剤。
【請求項6】
請求項4に記載の接着剤又は請求項5に記載のフィルム状接着剤を含む、接着層。
【請求項7】
請求項6に記載の接着層及び支持フィルムを含む、接着シート。
【請求項8】
請求項6に記載の接着層及び銅箔を含む、樹脂付銅箔。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂付銅箔及び、銅箔又は絶縁性シートを含む、銅張積層板。
【請求項10】
請求項9に記載の銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有する、プリント配線板。
【請求項11】
プリント配線板(1)又はプリント回路板(1)、
請求項6に記載の接着層、及び
プリント配線板(2)又はプリント回路板(2)を含む、
多層配線板。
【請求項12】
下記工程1及び2を含む多層配線板の製造方法。
工程1:請求項4に記載の接着剤又は請求項5に記載のフィルム状接着剤を、プリント配線板(1)又はプリント回路板(1)の少なくとも片面に接触させることによって、接着層付基材を製造する工程
工程2:該接着層付基材の上に、プリント配線板(2)又はプリント回路板(2)を積層し、加熱及び加圧下に圧着する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド、接着剤、フィルム状接着剤、接着層、接着シート、樹脂付銅箔、銅張積層板、プリント配線板、並びに多層配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話及びスマートフォン等のモバイル型通信機器やその基地局装置、サーバー・ルーター等のネットワーク関連電子機器、大型コンピュータ等に含まれるプリント配線板等を製造するために各種公知の樹脂が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、上記ネットワーク関連電子機器では、大容量の情報を低損失かつ高速で伝送・処理する必要があり、それら製品のプリント配線板で扱う電気信号も高周波化が進んでいる。高周波の電気信号は減衰しやすいため、プリント配線板における伝送損失を一層低くする必要がある。そのため、プリント配線板を製造する際に一般的に用いられる樹脂には、低誘電率且つ低誘電正接であること(以下、「低誘電特性」ともいう。)が求められる。
【0004】
また、プリント配線板を製造する際に一般的に用いられる接着剤について、はんだ耐熱性が高いことも求められる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、低誘電特性とはんだ耐熱性を両立した接着剤を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、所定のポリイミドによって、上記課題が解決されることを見出した。
【0007】
本明細書により以下の項目が提供される。
(項目1)
芳香族テトラカルボン酸無水物(A)、及びジアミン(B)を含むモノマー群の反応物であり、
(B)成分がダイマージアミン(B1)、並びに一般式(1)及び(2)で表されるジアミンの少なくとも一種(B2)を含み、
(B)成分総量100モル%中(B1)成分が25モル%以上である、ポリイミド。
【化3】
(式中、
R
1~R
4は、独立して水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【化4】
(式中、
R
5~R
8は、独立して水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
(項目2)
(B2)成分がm-フェニレンジアミン、2,5-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン、及びp-フェニレンジアミンからなる群より選ばれる1種以上である、項目1に記載のポリイミド。
(項目3)
軟化点が100℃以上である、項目1又は2に記載のポリイミド。
(項目4)
項目1~3のいずれかに記載のポリイミド、架橋剤及び有機溶剤を含む、接着剤。
(項目5)
項目4に記載の接着剤の加熱硬化物を含む、フィルム状接着剤。
(項目6)
項目4に記載の接着剤又は項目5に記載のフィルム状接着剤を含む、接着層。
(項目7)
項目6に記載の接着層及び支持フィルムを含む、接着シート。
(項目8)
項目6に記載の接着層及び銅箔を含む、樹脂付銅箔。
(項目9)
項目8に記載の樹脂付銅箔及び、銅箔又は絶縁性シートを含む、銅張積層板。
(項目10)
項目9に記載の銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有する、プリント配線板。
(項目11)
プリント配線板(1)又はプリント回路板(1)、
項目6に記載の接着層、及び
プリント配線板(2)又はプリント回路板(2)を含む、
多層配線板。
(項目12)
下記工程1及び2を含む多層配線板の製造方法。
工程1:項目4に記載の接着剤又は項目5に記載のフィルム状接着剤を、プリント配線板(1)又はプリント回路板(1)の少なくとも片面に接触させることによって、接着層付基材を製造する工程
工程2:該接着層付基材の上に、プリント配線板(2)又はプリント回路板(2)を積層し、加熱及び加圧下に圧着する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリイミドを含む接着剤は、低誘電特性とはんだ耐熱性を両立している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<(A)成分>
(A)成分は芳香族テトラカルボン酸無水物である。(A)成分は、各種公知のものであってもよい。
【0010】
(A)成分として、下記構造で表されるものが例示される。
【化5】
(式中、
Xは単結合、-SO
2-、-CO-、-O-、-O-C
6H
4-C(CH
3)
2-C
6H
4-O-、-COO-X
1-OCO-又はX
2を表す。
X
1は-(CH
2)
l-(l=1以上20以下)又は-H
2C-HC(-O-C(=O)-CH
3)-CH
2-を表す。
X
2は、下記式を表す。
【化6】
)
【0011】
(A)成分として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物等が例示される。
【0012】
(A)成分として例示された物質及び(A)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
(A)成分は、(A)成分と(B1)成分及び(B2)成分との相溶性、接着性、及びはんだ耐熱性に優れることから、好ましくは3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、及び9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくは4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、及び9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種である。また、(A)成分は、特にはんだ耐熱性に優れることから、特に好ましくは4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物である。
【0014】
(A)成分の分子量は、接着性、相溶性に優れることから、好ましくは200以上1,000以下であり、より好ましくは300以上800以下である。
【0015】
(A)成分の含有量は、接着性、はんだ耐熱性に優れることから、モノマー群の総量100質量%に対して好ましくは固形分換算で20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは固形分換算で30質量%以上70質量%以下であり、さらにより好ましくは固形分換算で35質量%以上70質量%以下であり、特に好ましくは固形分換算で50質量%以上70質量%以下である。
【0016】
(A)成分の含有量は、接着性、はんだ耐熱性に優れることから、モノマー群の総量100モル%に対して好ましくは固形分換算で30モル%以上75モル%以下であり、より好ましくは固形分換算で40モル%以上70モル%以下であり、さらにより好ましくは固形分換算で45モル%以上65モル%以下であり、特に好ましくは固形分換算で50モル%以上60モル%以下である。
【0017】
<(B)成分>
(B)成分は、アミノ基を2個有する化合物である。(B)成分は、ダイマージアミン(B1)、並びに一般式(1)及び(2)で表されるジアミンの少なくとも一種(B2)等を含むものである。
【0018】
<(B1)成分>
(B1)成分は、ダイマージアミンである。本明細書においてダイマージアミンとは、不飽和脂肪酸の二量体として得られる環式又は非環式ダイマー酸の全てのカルボキシル基を一級アミノ基に置換したものである。(B1)成分は、各種公知のものであってもよい。
【0019】
(B1)成分として、下記構造で表されるものが例示される。なお、各式において、好ましくはm+n=6以上17以下であり、好ましくはp+q=8以上19以下であり、破線部は炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する
【化7】
【0020】
(B1)成分は、市販された製品であってもよい。当該製品として、製品名「バーサミン551」「バーサミン552(バーサミン551の水添物)」(コグニクスジャパン(株)製)、製品名「PRIAMINE1075」「PRIAMINE1074」(クローダジャパン(株)製)等が例示される。
【0021】
(B1)成分として例示された物質及び(B1)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
(B1)成分の含有量は、柔軟性、接着性、相溶性に優れることから、モノマー群の総量100質量%に対して好ましくは固形分換算で19質量%以上79質量%以下であり、より好ましくは固形分換算で28質量%以上68質量%以下であり、さらにより好ましくは固形分換算で28質量%以上63質量%以下であり、特に好ましくは固形分換算で28質量%以上48質量%以下である。
【0023】
(B1)成分の含有量は、柔軟性、接着性、相溶性に優れることから、(B)成分総量100質量%に対して好ましくは固形分換算で50質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは固形分換算で60質量%以上98質量%以下であり、さらにより好ましくは固形分換算で65質量%以上97質量%以下であり、特に好ましくは固形分換算で70質量%以上96質量%以下であり、さらに特に好ましくは固形分換算で75質量%以上95質量%以下である。
【0024】
(B1)成分の含有量は、柔軟性、接着性、相溶性に優れることから、(B)成分総量100モル%に対して固形分換算で25モル%以上であり、好ましくは固形分換算で30モル%以上であり、より好ましくは35モル%以上であり、さらにより好ましくは40モル%以上である。また、(B1)成分の含有量は、柔軟性、接着性、相溶性に優れることから、(B)成分総量100モル%に対して好ましくは25モル%以上99モル%以下であり、より好ましくは固形分換算で30モル%以上90モル%以下であり、さらにより好ましくは固形分換算で35モル%以上85モル%以下であり、特に好ましくは固形分換算で40モル%以上80モル%以下である。
【0025】
(A)成分と(B1)成分との質量比[(A)/(B1)]は、柔軟性、接着性、相溶性に優れることから、好ましくは固形分換算で10/90~90/10であり、より好ましくは固形分換算で45/55~85/15であり、さらにより好ましくは固形分換算で50/50~75/25である。なお、本明細書において「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0026】
(A)成分と(B1)成分とのモル比[(A)/(B1)]は、柔軟性、接着性、相溶性に優れることから、好ましくは固形分換算で51/49~80/20であり、より好ましくは固形分換算で53/47~77/23であり、さらにより好ましくは54/46~74/26であり、特に好ましくは56/44~72/28である。
【0027】
<(B2)成分>
(B2)成分は、以下の一般式で表されるジアミンの少なくとも一種である。なお、接着剤中の樹脂に芳香族基が多く含まれる場合、通常は誘電正接が上昇してしまうため、(B2)成分のような成分は好ましくないというのが通説であった。しかし、本発明の接着剤は誘電正接が上昇しにくくなっている。この現象の詳細については不明であるが、(B2)成分と(B1)成分とを併用することで誘電正接が上昇しにくくなるものと考えている。
【化8】
(式中、
R
1~R
4は、独立して水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【化9】
(式中、
R
5~R
8は、独立して水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【0028】
(B2)成分として、m-フェニレンジアミン、2,5-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン等が例示される。
【0029】
(B2)成分として例示された物質及び(B2)成分として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
(B2)成分は、軟化点を上昇させることに優れ、誘電正接上昇の抑制に優れることから、好ましくはm-フェニレンジアミン、2,5-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン、及びp-フェニレンジアミンからなる群より選ばれる1種以上である。
【0031】
(B2)成分の分子量は、軟化点を上昇させることに優れ、誘電正接上昇の抑制に優れることから、好ましくは50以上300以下であり、より好ましくは100以上200以下である。
【0032】
(B2)成分の一般式中のR1~R8のいずれか又は全てがアルキル基を表す場合、その炭素数は1以上5以下であり、好ましくは1以上4以下であり、より好ましくは1以上3以下であり、さらにより好ましくは1以上2以下である。
【0033】
(B2)成分の含有量は、軟化点を上昇させることに優れることから、モノマー群の総量100質量%に対して好ましくは固形分換算で1質量%以上11質量%以下であり、より好ましくは固形分換算で2質量%以上10質量%以下であり、さらにより好ましくは固形分換算で2質量%以上9質量%以下であり、特に好ましくは固形分換算で2質量%以上8質量%以下である。
【0034】
(B2)成分の含有量は、軟化点を上昇させることに優れ、誘電正接上昇の抑制に優れることから、(B)成分総量100質量%に対して好ましくは固形分換算で1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは固形分換算で2質量%以上40質量%以下であり、さらにより好ましくは固形分換算で3質量%以上35質量%以下であり、特に好ましくは固形分換算で4質量%以上30質量%以下であり、さらに特に好ましくは固形分換算で5質量%以上25質量%以下である。
【0035】
(B2)成分の含有量は、軟化点を上昇させることに優れ、誘電正接上昇の抑制に優れることから、(B)成分総量100モル%に対して好ましくは固形分換算で1モル%以上75モル%以下であり、より好ましくは固形分換算で10モル%以上70モル%以下であり、さらにより好ましくは固形分換算で15モル%以上65モル%以下であり、特に好ましくは固形分換算で20モル%以上60モル%以下である。
【0036】
(B1)成分と(B2)成分との質量比[(B1)/(B2)]は、柔軟性、接着性及び相溶性と軟化点を上昇させること、及び誘電正接上昇の抑制とのバランスに優れることから、好ましくは50/50~99/1であり、より好ましくは60/40~98/2であり、さらにより好ましくは65/35~97/3であり、特に好ましくは70/30~96/4であり、さらに特に好ましくは75/25~95/5である。
【0037】
(B1)成分と(B2)成分とのモル比[(B1)/(B2)]は、柔軟性、接着性及び相溶性と軟化点を上昇させること、及び誘電正接上昇の抑制とのバランスに優れることから、好ましくは25/75~99/1であり、より好ましくは30/70~90/10であり、さらにより好ましくは35/65~85/15であり、特に好ましくは40/60~80/20である。
【0038】
(A)成分と(B1)成分及び(B2)成分との質量比[(A)/((B1)+(B2))]は、接着剤が接着性、はんだ耐熱性に優れることから、好ましくは40/60~80/20であり、より好ましくは40/60~70/30であり、さらにより好ましくは40/60~70/30であり、特に好ましくは50/50~70/30である。
【0039】
(A)成分と(B1)成分及び(B2)成分とのモル比[(A)/((B1)+(B2))]は、接着剤が接着性、はんだ耐熱性に優れることから、好ましくは45/55~60/40であり、より好ましくは50/50~55/45であり、さらにより好ましくは50/50~54/46であり、特に好ましくは50/50~52/48である。
【0040】
<ポリイミド>
ポリイミドの重量平均分子量は、低誘電特性、溶剤可溶性、柔軟性に優れることから、好ましくは5,000以上100,000以下である。また、ポリイミドの重量平均分子量は、接着性、柔軟性、相溶性に優れることから、好ましくは25,000以上65,000以下である。また、ポリイミドの重量平均分子量は、はんだ耐熱性に優れることから、好ましくは20,000以上50,000以下であり、より好ましくは21,000以上47,500以下であり、さらにより好ましくは22,800以上45,000以下であり、特に好ましくは22,900以上45,000以下である。
【0041】
ポリイミドの数平均分子量は、低誘電特性、相溶性、柔軟性に優れることから、好ましくは2,000以上40,000以下である。
【0042】
本明細書において重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値である。
【0043】
ポリイミドの軟化点は、はんだ耐熱性に優れることから、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上であり、さらにより好ましくは120℃以上である。また、ポリイミドの軟化点は、作業性及びはんだ耐熱性に優れることから、好ましくは100℃以上250℃以下であり、より好ましくは110℃以上230℃以下であり、さらにより好ましくは120℃以上200℃以下である。
【0044】
軟化点は、市販の測定器(製品名「ARES-2KSTD-FCO-STD」、Rheometric Scientific社製)等を用いて測定した貯蔵弾性率のプロファイルにおいて、貯蔵弾性率が低下し始める温度(以下、「変曲点」ともいう。)を指す。
【0045】
ポリイミドは、各種公知の方法により製造できる。ポリイミドの製造方法は、(A)成分、(B1)成分及び(B2)成分を含むモノマー群を、好ましくは50℃以上120℃以下程度、より好ましくは80℃以上100℃以下程度の温度において、好ましくは5時間以下程度、より好ましくは3時間以下程度、重付加反応させて、重付加物を得る工程、得られた重付加物を好ましくは80℃以上250℃以下程度、より好ましくは100℃以上200℃以下程度の温度において、好ましくは0.5時間以上50時間以下程度、より好ましくは1時間以上20時間以下程度、イミド化反応、即ち脱水閉環反応させる工程を含む方法等が例示される。
【0046】
イミド化反応では、各種公知の反応触媒、脱水剤、及び後述する有機溶剤が使用され得る。各種公知の反応触媒、脱水剤、及び後述する有機溶剤は、単独又は2種以上で使用され得る。反応触媒は、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン等が例示される。また、脱水剤は、無水酢酸等の脂肪族酸無水物や無水安息香酸等の芳香族酸無水物等が例示される。
【0047】
ポリイミドのイミド閉環率は特に限定されない。ここで「イミド閉環率」とは、ポリイミドにおける環状イミド結合の含有量を意味し、例えばNMRやIR分析等の各種分光手段により決定できる。接着性及びはんだ耐熱性が良好となる観点から、ポリイミドのイミド閉環率は、70%以上程度が好ましく、85%以上100%以下程度がより好ましい。
【0048】
<接着剤>
本明細書において、ポリイミド、架橋剤及び有機溶剤を含む接着剤も提供される。
【0049】
接着剤100質量%におけるポリイミドの含有量は、好ましくは5質量%以上99質量%以下程度である。
【0050】
<架橋剤>
架橋剤は、ポリイミドの架橋剤として機能するものであれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。架橋剤として、エポキシド、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアネートエステル等が例示される。
【0051】
エポキシドとして、フェノールノボラック型エポキシド、クレゾールノボラック型エポキシド、ビスフェノールA型エポキシド、ビスフェノールF型エポキシド、ビスフェノールS型エポキシド、水添ビスフェノールA型エポキシド、水添ビスフェノールF型エポキシド、スチルベン型エポキシド、トリアジン骨格含有エポキシド、フルオレン骨格含有エポキシド、線状脂肪族エポキシド、脂環式エポキシド、グリシジルアミン型エポキシド、トリフェノールメタン型エポキシド、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシド、ビフェニル型エポキシド、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシド、ナフタレン骨格含有エポキシド、アリールアルキレン型エポキシド、テトラグリシジルキシリレンジアミン、上記エポキシドのダイマー酸変性物であるダイマー酸変性エポキシド、ダイマー酸ジグリシジルエステル等が例示される。
【0052】
エポキシドは、市販された製品であってもよい。当該製品として、製品名「jER828」「jER834」「jER807」「jER630」(三菱ケミカル(株)製)、製品名「ST-3000」「YD-172-X75」(新日鉄住金化学(株)製)、製品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)、製品名「TETRAD-X」(三菱ガス化学(株)製)等が例示される。
【0053】
ベンゾオキサジンとして、6,6-(1-メチルエチリデン)ビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)、6,6-(1-メチルエチリデン)ビス(3,4-ジヒドロ-3-メチル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)等が例示される。オキサジン環の窒素にはフェニル基、メチル基、シクロヘキシル基等が結合していてもよい。
【0054】
ベンゾオキサジンは、市販された製品であってもよい。当該製品として、製品名「ベンゾオキサジンF-a型」「ベンゾオキサジンP-d型」(四国化成工業(株)製)、製品名「RLV-100」(エア・ウォ-タ-社製)等が例示される。
【0055】
ビスマレイミドとして、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド等が例示される。
【0056】
ビスマレイミドは、市販された製品であってもよい。当該製品として、製品名「BAF-BMI」(JFEケミカル(株)製)等が例示される。
【0057】
シアネートエステルとして、2-アリルフェノールシアネートエステル、4-メトキシフェノールシアネートエステル、2,2-ビス(4-シアナトフェノール)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビスフェノールAシアネートエステル、ジアリルビスフェノールAシアネートエステル、4-フェニルフェノールシアネートエステル、1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン、4-クミルフェノールシアネートエステル、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、4,4’-ビスフェノールシアネートエステル、2,2‐ビス(4-シアナトフェニル)プロパン等が例示される。
【0058】
シアネートエステルは、市販された製品であってもよい。当該製品として、製品名「PRIMASET BTP-6020S」(ロンザジャパン(株)製)等が例示される。
【0059】
架橋剤として例示された物質及び架橋剤として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
本発明の接着剤における、ポリイミド100質量部に対する架橋剤の含有量は、好ましくは固形分換算で0.4質量部以上900質量部以下程度である。
【0061】
本発明の接着剤100質量%中の架橋剤の含有量は、好ましくは0.04質量%以上90質量%以下程度である。
【0062】
<有機溶剤>
本発明の粘着剤には、有機溶剤を含む。有機溶剤として、各種公知のものであってよい。
【0063】
有機溶剤として、ケトン溶剤、芳香族溶剤、アルコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、エステル溶剤、石油系溶剤、ハロアルカン溶剤、アミド溶剤等が例示される。
【0064】
ケトン溶剤として、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が例示される。
【0065】
芳香族溶剤として、トルエン、キシレン等が例示される。
【0066】
アルコール溶剤として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、クレゾール等が例示される。
【0067】
グリコールエーテル溶剤として、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルトリグライム、メチルジグライム等が例示される。
【0068】
エステル溶剤として、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート又はセロソルブアセテート等が例示される。
【0069】
石油系溶剤として、メチルシクロヘキサン、製品名「ソルベッソ100」「ソルベッソ150」(エクソンモービル社製)等が例示される。
【0070】
ハロアルカン溶剤として、クロロホルム等が例示される。
【0071】
アミド溶剤として、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N-メチルカプロラクタム等が例示される。
【0072】
その他の有機溶剤として、ジメチルスルホキシド等が例示される。
【0073】
有機溶剤として例示された物質及び有機溶剤として公知のものを単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
本発明の接着剤における、固形分換算のポリイミド100質量部に対する有機溶剤の含有量は、好ましくは1質量部以上900質量部以下程度である。
【0075】
本発明の接着剤100質量%中の有機溶剤の含有量は、好ましくは0.09質量%以上90質量%以下程度である。
【0076】
<その他配合可能な剤>
本発明のポリイミドには、必要に応じて、各種添加剤を含めてよい。添加剤は、各種公知のものであってもよい。
【0077】
添加剤として、表面調整剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、無機フィラー、シランカップリング剤、コロイダルシリカ、消泡剤、湿潤剤、防錆剤、可塑剤、連鎖移動剤、光増感剤、開環エステル化反応触媒、脱水剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤等が例示される。
【0078】
<フィルム状接着剤>
本明細書において、上記接着剤の加熱硬化物を含む、フィルム状接着剤を提供する。フィルム状接着剤の製造方法は、上記接着剤を適当な支持フィルムに塗工する工程、加熱して有機溶剤を揮発させることによって硬化させる工程、該支持フィルムから剥離する工程等を含む方法等が例示される。該接着剤の厚みは、3μm以上40μm以下程度が好ましい。支持フィルムは、下記のもの等が例示される。
【0079】
<接着層>
本明細書において、接着剤又は上記フィルム状接着剤を含む、接着層を提供する。上記接着層を製造する際には、上記接着剤と上記接着剤以外の各種公知の接着剤とを併用してもよい。同様に上記フィルム状接着剤と上記フィルム状接着剤以外の各種公知のフィルム状接着剤とを併用してもよい。
【0080】
<接着シート>
本明細書において、上記接着層及び支持フィルムを含む、接着シートを提供する。
【0081】
支持フィルムは、プラスチックフィルム等が例示される。
【0082】
プラスチックとして、ポリエステル、ポリイミド、ポリイミド-シリカハイブリッド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、エチレンテレフタレートやフェノール、フタル酸、ヒドロキシナフトエ酸等とパラヒドロキシ安息香酸とから得られる芳香族系ポリエステル樹脂(液晶ポリマー;製品名「ベクスター」、(株)クラレ製)等が例示される。
【0083】
また、上記接着剤を該支持フィルムに塗布する際、前記塗工手段を採用できる。塗工層の乾燥後の厚みは1μm以上100μm以下程度が好ましく、3μm以上50μm以下程度がより好ましい。また、接着シートの接着層は各種保護フィルムで保護してもよい。
【0084】
<樹脂付銅箔>
本明細書において、上記接着層及び銅箔を含む、樹脂付銅箔を提供する。具体的には、上記樹脂付銅箔は、該接着剤又は該フィルム状接着剤を銅箔に塗工又は貼り合わせたものである。該銅箔として、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。その厚みは、1μm以上100μm以下程度が好ましく、2μm以上38μm以下程度がより好ましい。また、該銅箔は、各種表面処理(粗化、防錆化等)が施されたものであってよい。防錆化処理として、Ni,Zn,Sn等を含むメッキ液を用いたメッキ処理、クロメート処理等の、所謂鏡面化処理が例示される。また、塗工手段として、前記した方法が例示される。
【0085】
該樹脂付銅箔の接着層は未硬化であってもよく、また加熱下に部分硬化ないし完全硬化させたものであってもよい。部分硬化の接着層は、いわゆるBステージと呼ばれる状態にある。また、接着層の厚みは、0.5μm以上30μm以下程度が好ましい。また、該樹脂付銅箔の接着面に更に銅箔を貼り合わせ、両面樹脂付銅箔にすることもできる。
【0086】
<銅張積層板>
本明細書において、上記樹脂付銅箔及び銅箔又は絶縁性シートを含む、銅張積層板を提供する。銅張積層板は、CCL(Copper Clad Laminate)とも呼ばれる。銅張積層板は、具体的には、各種公知の銅箔若しくは絶縁性シートの少なくとも片面又は両面に、上記樹脂付銅箔を、加熱下に圧着させたものである。片面に貼り合わせる場合には、他方の面に上記樹脂付銅箔とは異なるものを圧着させてもよい。また、当該銅張積層板における樹脂付銅箔、銅箔及び絶縁性シートの枚数は特に制限されない。
【0087】
1つの実施形態において、絶縁性シートは、プリプレグ又は上記の支持フィルムが好ましい。プリプレグは、ガラス布等の補強材に樹脂を含浸させBステージまで硬化させたシート状材料のことをいう(JIS C 5603)。該樹脂は、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、液晶ポリマー、アラミド樹脂等の絶縁性樹脂が使用される。該絶縁性シートの厚みは、20μm以上500μm以下程度が好ましい。加熱・圧着条件は、好ましくは150℃以上280℃以下程度(より好ましくは170℃以上240℃以下程度)、及び好ましくは0.5MPa以上20MPa以下程度(より好ましくは1MPa以上8MPa以下程度)である。
【0088】
<プリント配線板>
本明細書において、上記銅張積層板の銅箔面に回路パターンを有する、プリント配線板を提供する。銅張積層板の銅箔面に回路パターンを形成するパターニング手段として、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等が例示される。セミアディティブ法は、銅張積層板の銅箔面に、レジストフィルムでパターニングした後、電解銅メッキを行い、レジストを除去し、アルカリ液でエッチングする方法が例示される。また、該プリント配線板における回路パターン層の厚みは特に限定されない。また、該プリント配線板をコア基材とし、その上に同一のプリント配線板や他の公知のプリント配線板又はプリント回路板を積層することによって、多層基板を得ることもできる。積層の際には上記接着剤と上記接着剤以外の他の公知の接着剤とを併用できる。また、多層基板における積層数は特に限定されない。また、積層の都度、ビアホールを挿設し、内部をメッキ処理してもよい。前記回路パターンのライン/スペース比は、1μm/1μm~100μm/100μm程度が好ましい。また、前記回路パターンの高さは、1μm以上50μm以下程度が好ましい。
【0089】
<プリント回路板>
本明細書において、プリント回路板は、プリント配線板に対してコンデンサ等の各種公知の部品を装着したものを指す。
【0090】
<多層配線板>
本明細書において、プリント配線板(1)又はプリント回路板(1)、上記接着層、及びプリント配線板(2)又はプリント回路板(2)を含む、多層配線板を提供する。上記プリント配線板(1)~(2)は、上記プリント配線板であってよく、また、各種公知のものであってもよい。同様にプリント回路板(1)~(2)は、上記プリント回路板であってよく、また、各種公知のものであってもよい。またプリント配線板(1)とプリント配線板(2)は同一のものであっても異なるものであってもよい。同様にプリント回路板(1)とプリント回路板(2)も同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0091】
<多層配線板の製造方法>
本明細書において、下記工程1及び2
工程1:上記接着剤又は上記フィルム状接着剤を、プリント配線板(1)又はプリント回路板(1)の少なくとも片面に接触させることによって、接着層付基材を製造する工程
工程2:該接着層付基材の上に、プリント配線板(2)又はプリント回路板(2)を積層し、加熱及び加圧下に圧着する工程
を含む多層配線板の製造方法を提供する。
【0092】
上記プリント配線板(1)~(2)は、上記プリント配線板であってよく、また、各種公知のものであってもよい。同様にプリント回路板(1)~(2)は、上記プリント回路板であってよく、また、各種公知のものであってよい。
【0093】
工程1では、上記接着剤又はフィルム状接着剤を被着体に接触させる手段は、各種公知の塗工手段、カーテンコーター、ロールコーター、ラミネーター、プレス等が例示される。
【0094】
工程2における加熱温度及び圧着時間は、(ア)本発明の接着剤又はフィルム状接着剤をコア基材の少なくとも一面に接触させた後、70℃以上200℃以下程度に加熱し、1分以上10分以下程度かけて硬化反応させてから、(イ)架橋剤の硬化反応を進行させるために、更に150℃以上250℃以下程度、10分以上3時間以下程度加熱処理することが好ましい。また、圧力は、工程(ア)及び(イ)を通じて0.5MPa以上20MPa以下程度が好ましく、1MPa以上8MPa以下程度がより好ましい。
【実施例】
【0095】
以下に、製造例、比較製造例、実施例、比較例、評価例及び比較評価例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明で、部および%は質量基準である。
【0096】
本実施例において重量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
(GPC測定条件)
機種 :製品名「HLC-8320GPC」(東ソー(株)製)
カラム :製品名「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー(株)製)
展開溶剤:THF
流量 :0.35mL/分
測定温度:40℃
検出器 :RI
標準 :ポリスチレン
試料調製:0.4%溶液
【0097】
<製造例1:ポリイミド(1)の製造>
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物(製品名「BisDA-1000」、SABICジャパン合同会社製)(以下、「BisDA」ともいう。)315.0g、シクロヘキサノン1,000.7g仕込み、溶液を60℃まで加熱した。次いで、ダイマージアミン(製品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製)208.7gと、m-フェニレンジアミン(製品名「1,3-Phenylenediamine」、東京化成工業(株)製)(以下、「MPDA」ともいう。)20.6gとを徐々に添加した後、メチルシクロヘキサンを200.1g仕込み、140℃まで加熱し、3時間かけてイミド化反応を実施することにより、ポリイミド(1)の溶液(不揮発分30%)を得た。なお、ポリイミド(1)の酸成分/ジアミン成分のモル比は1.05であり、軟化点は120℃であった。本実施例において酸成分とは(A)成分のことであり、ジアミン成分とは(B1)成分及び(B2)成分のことである。
【0098】
<製造例2~12及び比較製造例1~5:ポリイミド(2)~(12)及び(C1)~(C5)の製造>
製造例2~12及び比較製造例1~5は、組成を表1~表3に記載したように変更したことを除き、製造例1と同様の手法により行い、ポリイミド(2)~(12)及び(C1)~(C5)を得た。
【0099】
<性能評価(1):ポリイミドの誘電率及び誘電正接試験>
ポリイミド(1)~(12)及び(C1)~(C5)について、JIS C2565に準じ、10GHzにおける誘電率及び誘電正接を、市販の誘電率測定装置(製品名「高Q値空洞共振器」、(株)エーイーティー製)を用いて測定した。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
表1~表3中の用語の意味は下記のとおりである。
BisDA:4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物(製品名「BisDA-1000」、SABICジャパン合同会社製)
BPAF:9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物(製品名「BPAF」、JFEケミカル(株)製)
PRIAMINE:ダイマージアミン(製品名「PRIAMINE 1075」、クローダジャパン(株)製)
MPDA:m-フェニレンジアミン(製品名「1,3-Phenylenediamine」、東京化成工業(株)製)
DETDA:2,5-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン(製品名「ハートキュア10」、クミアイ化学工業(株)製)
PPDA:p-フェニレンジアミン(製品名「1,4-Phenylenediamine」、東京化成工業(株)製)
ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(製品名「4,4‘-Diaminodiphenyl Ether」、東京化成工業(株)製)
DABA:3,5-ジアミノ安息香酸(製品名「3,5-Diaminobenzoic Acid」、東京化成工業(株)製)
なお、表1~3の(A)成分、(B1)成分、(B2)成分、ODA、DABA、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の各成分の単位は「g」である。
また、表3の「測定困難」とは、測定サンプルを作製することが困難であることが原因である。これは、ポリイミド(C2)の柔軟性が低く、測定サンプルを切り出す際、割れてしまうためと考えている。
【0104】
<実施例1:接着剤(1)の作製>
ポリイミド(1)の溶液300g、トルエン23g、及び架橋剤としてN,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン(製品名「jER630」、三菱ケミカル(株)製)10gを混合し、よく撹拌することによって、不揮発分30%の接着剤(1)を得た。
【0105】
<実施例2~12及び比較例1~5:接着剤(2)~(12)及び(C1)~(C5)の作製>
実施例2~12及び比較例1~5は、ポリイミド(1)をポリイミド(2)~(12)又はポリイミド(C1)~(C5)に変更したことを除き、実施例1と同様の手法により行い、不揮発分30%の接着剤(2)~(12)及び(C1)~(C5)を得た。
【0106】
<評価例1-1:銅張積層板(1)の作製>
接着剤(1)を、ポリイミドフィルム(製品名「カプトン100EN」、東レ・デユポン(株)製)(膜厚25μm、熱膨張係数15ppm/℃)に、乾燥後の厚みが25μmとなるようギャップコーターにて塗布した後、150℃で5分間乾燥させることによって接着シートを得た。得られた接着シートの接着面を、市販の電解銅箔(商品名「F2-WS」、古河電気工業(株)製)(膜厚18μm)の鏡面側に重ねた、接着シート-電解銅薄の積層体を作製した。次いで、当該積層体をプレス用支持体の上に置き、電解銅薄側より圧力10MPa、120℃及び30秒間の条件で加熱プレスをし、170℃及び30分間の条件で熱硬化をすることにより10cm×10cmの銅張積層板(1)を作製した。
【0107】
<評価例2-1~10-1及び比較評価例1-1~4-1:銅張積層板(2)~(10)及び(C1)~(C4)の作製>
評価例2-1~10-1及び比較評価例1-1~4-1は、接着剤(1)を接着剤(2)~(10)又は(C1)~(C4)のものに変更したことを除き、評価例1-1と同様の手法により行い、銅張積層板(2)~(10)及び(C1)~(C4)を得た。
【0108】
<評価例1-2:加熱硬化物(1)の作製>
接着剤(1)を、フッ素樹脂PFA平皿(直径75mm、(株)相互理化学硝子製作所製)に約7g注ぎ、30℃×10時間、70℃×10時間、100℃×6時間、120℃×6時間、150℃×6時間、180℃×12時間の条件で硬化させることによって、膜厚約300μmの加熱硬化物(1)を得た。
【0109】
<評価例2-2~10-2及び比較評価例1-2~4-2:加熱硬化物(2)~(10)及び(C1)~(C4)の作製>
評価例2-2~10-2及び比較評価例1-2~4-2は、接着剤(1)を接着剤(2)~(10)又は(C1)~(C4)のものに変更したことを除き、評価例1-2と同様の手法により行い、加熱硬化物(2)~(10)及び(C1)~(C4)を得た。
【0110】
<性能評価(2):はんだ耐熱試験>
銅張積層板(1)~(10)及び(C1)~(C4)について、硬化直後、及び温度25℃、室温50%下で24時間静置したものを288℃のはんだ浴に銅箔側を下にして30秒浮かべ、はんだ浴から取り出した後、下記基準で外観変化を評価した。
AAA:銅張積層板4cm×4cmに変化が一切ない
AA:銅張積層板4cm×4cmに発泡、膨れが1つ以上3つ未満ある
A:銅張積層板4cm×4cmに発泡、膨れが3つ以上10つ未満ある
B:銅張積層板4cm×4cmに全面に発泡が見られる
【0111】
<性能評価(3):接着性試験>
評価例1-1~10-1及び比較評価例(C1)~(C4)で得られた銅張積層板(1)~(10)及び(C1)~(C4)について、JIS C 6481(プリント配線板用銅張積層板試験方法)に準じ、引き剥がし強さ(N/cm)を測定した。
【0112】
<性能評価(4):加熱硬化物の誘電率及び誘電正接試験>
加熱硬化物(1)~(10)及び(C1)~(C4)について、JIS C2565に準じ、10GHzにおける誘電率及び誘電正接を、市販の誘電率測定装置(製品名「高Q値空洞共振器」、(株)エーイーティー製)を用いて測定した。
【0113】
【0114】
【0115】
<評価例11-1、12-1及び比較評価例5-1:銅張積層板(11)、(12)及び(C5)の作製>
接着剤(11)、(12)及び(C5)を、ポリイミドフィルム(製品名「カプトン100EN」、東レ・デユポン(株)製)(膜厚25μm、熱膨張係数15ppm/℃)に、乾燥後の厚みが25μmとなるようギャップコーターにてそれぞれ塗布した後、150℃で5分間乾燥させることによって接着シートを得た。得られた接着シートの接着面を、市販の電解銅箔(商品名「F2-WS」、古河電気工業(株)製)(膜厚18μm)の粗化側に重ねた、接着シート-電解銅薄の積層体を作製した。次いで、当該積層体をプレス用支持体の上に置き、電解銅薄側より圧力10MPa、120℃及び30秒間の条件で加熱プレスをし、180℃及び60分間の条件で熱硬化をすることにより10cm×10cmの銅張積層板(11)、(12)及び(C5)をそれぞれ作製した。
【0116】
<評価例11-2、12-2及び比較評価例5-2:加熱硬化物(11)、(12)及び(C5)の作製>
評価例11-2、12-2及び比較評価例5-2は、接着剤(1)を接着剤(11)、(12)又は(C5)のものに変更したことを除き、評価例1-2と同様の手法により行い、加熱硬化物(11)、(12)及び(C5)を得た。
【0117】
<性能評価(5):はんだ耐熱試験>
銅張積層板(11)、(12)及び(C5)について、硬化直後、及び温度25℃、室温50%下で24時間静置したものを288℃のはんだ浴に銅箔側を下にして30秒浮かべ、はんだ浴から取り出した後、下記基準で外観変化を評価した。
AAA:銅張積層板4cm×4cmに変化が一切ない
AA:銅張積層板4cm×4cmに発泡、膨れが1つ以上3つ未満ある
A:銅張積層板4cm×4cmに発泡、膨れが3つ以上10つ未満ある
B:銅張積層板4cm×4cmに全面に発泡が見られる
【0118】
<性能評価(6):接着性試験>
評価例11-1、12-1及び比較評価例5-1で得られた銅張積層板(11)、(12)及び(C5)について、JIS C 6481(プリント配線板用銅張積層板試験方法)に準じ、引き剥がし強さ(N/cm)を測定した。
【0119】
<性能評価(7):加熱硬化物の誘電率及び誘電正接試験>
加熱硬化物(11)、(12)及び(C5)について、JIS C2565に準じ、10GHzにおける誘電率及び誘電正接を、市販の誘電率測定装置(製品名「高Q値空洞共振器」、(株)エーイーティー製)を用いて測定した。
【0120】