(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】燃料ガスの成分調整装置
(51)【国際特許分類】
C10L 3/00 20060101AFI20221012BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20221012BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20221012BHJP
F17C 9/02 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C10L3/00 D
B01D53/22
F23K5/00 303
F17C9/02
(21)【出願番号】P 2019022478
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】浦部 治貴
(72)【発明者】
【氏名】林 謙年
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/010033(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/092877(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02833046(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第104136827(CN,A)
【文献】特開2018-145404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0165829(US,A1)
【文献】特開平07-150154(JP,A)
【文献】特開2013-210045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 3/00
B01D 53/22
F23K 5/00
F17C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGを気化する気化装置と、該気化装置で気化されたNGから特定成分を分離する膜分離装置とを有し、前記膜分離装置の分離膜を透過することで特定成分が濃縮化されて都市ガスとして使用する燃料ガスと前記分離膜を透過することなく特定成分が希薄化されて都市ガス以外に使用する燃料ガスとに分離することで燃料ガスの成分を調整する燃料ガスの成分調整装置であって、
前記膜分離装置に供給するNGの温度を検知する温度検知装置と、
前記膜分離装置の分離膜を透過した膜透過ガスの熱量を検知する熱量検知装置と、
前記温度検知装置で検知された検知温度と前記熱量検知装置で検知された検知熱量の相関を記録すると共に日々変動するLNG組成に応じてアップデートされるデータベースと、
前記検知温度を入力し、前記データベースの情報に基づいて前記膜分離装置に供給されるNG温度を目標熱量に相当するNG温度に制御するNG温度制御手段とを備えたことを特徴とする燃料ガスの成分調整装置。
【請求項2】
LNGにおける特定成分を希薄化した特定成分希薄ガスを都市ガス以外に使用するその他ガスとして供給するための第一ラインと、該第一ラインに設けられて、LNGを気化する気化装置と、気化されたNGから特定成分を分離する膜分離装置と、LNGにおける特定成分を濃縮化した特定成分濃縮ガスを都市ガスとして供給するための第二ラインと、該第二ラインに設けられて、前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスをLNGに混合して前記濃縮ガスを液化する第二ライン気液混合液化装置と、該第二ライン気液混合液化装置で混合された混合液を気化する第2気化装置と、前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記第二ライン気液混合液化装置に供給する膜透過ガス供給ラインと、を備え、前記膜分離装置の分離膜を透過して特定成分が濃縮化された濃縮ガスを前記第二ラインのLNGに混合することで特定成分が濃縮化されて都市ガスとして使用する燃料ガスとし、前記分離膜を透過することなく特定成分が希薄化されたガスを都市ガス以外に使用する燃料ガスとすることで燃料ガスの成分を調整する燃料ガスの成分調整装置であって、
前記膜分離装置に供給するNGの温度を検知する温度検知装置と、
前記第2気化
装置で気化された特定成分濃縮ガスの熱量を検知する第2熱量検知装置と、
前記温度検知装置で検知された検知温度と前記第2熱量検知装置で検知された第2検知熱量の相関を記録すると共に日々変動するLNG組成に応じてアップデートされるデータベースと、
前記検知温度を入力し、前記データベースの情報に基づいて前記膜分離装置に供給されるNG温度を目標熱量に相当するNG温度に制御するNG温度制御手段とを備えたことを特徴とする燃料ガスの成分調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG(液化天然ガス)又はLNGをガス化したNG(天然ガス)の成分を調整することで燃料ガス成分を調整する燃料ガスの成分調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LNG基地においては、LNGを気化させて都市ガス向けの燃料ガス、および発電向けの燃料ガスが製造されている。
都市ガス向けの燃料ガスは、都市ガスとして規定された熱量範囲を満足するように熱量を調整して供給する必要がある。LNGを気化させた燃料ガスの熱量は上述した規定熱量範囲より低い場合が多く、通常、増熱剤(LPG等)を混合して熱量調整する。
他方、発電向けの燃料ガスは、都市ガス向けのように熱量範囲が規定されているわけではなく、通常は熱量調整を行わずに供給されている。
【0003】
都市ガス向けの燃料ガスに混合される増熱剤はLNGとは別途調達する必要があり、そのコスト削減には大きなニーズがある。混合する増熱剤量を低減するための一方策として、熱量調整が要求されない発電向け燃料ガスからプロパン、ブタン等の重質成分を分離回収し、熱量調整に用いる技術が例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1においては、LNGを気化させたNGから重質成分を分離回収する分離回収装置として蒸留装置、膜分離装置、吸着装置が実施の形態に開示されている。
しかし、蒸留装置は設備構成が複雑でありコストが高くなるし、吸着装置はバッチ式であるため、連続処理を行うには複数の吸着装置を組み合わせる必要があり構成が複雑でコストが高くなるという問題がある。
他方、膜分離装置は装置構造が単純でコストが低いという利点がある。
【0005】
したがって、構造の単純化やコスト低下という観点から膜分離装置を適用するのが好ましい。
ガス分離装置に使用される分離膜は、ガスの種類によって透過しやすさが異なる性質を利用してLNG等の多成分系ガスから特定成分のガスを分離するものであり、例えばゴム状高分子膜やガラス状高分子膜などがある。
膜を透過して流出してくるガス(膜透過ガス)には、透過しやすいガス成分が濃縮されている。一方、分離膜を透過しないで流出してくるガス(非透過ガス)には、逆に透過しにくいガス成分が濃縮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LNGをガス化した燃料ガスから重質成分を分離回収する場合、シリコンラバー等のゴム状高分子膜が使用されるが、当然のことながら、分離膜の分離性能が膜透過ガスの成分を左右する。
そして、発明者の知見によれば、分離膜に供給される燃料ガスの温度が分離膜の分離性能に影響する。他方、都市ガスとして使用される燃料ガスは熱量の上限があるため、膜分離装置で分離された膜透過ガスの熱量が大きすぎるのも適切でない。
この点、特許文献1では、膜分離装置を用いることの開示はあるものの、膜分離装置で分離される膜透過ガスの熱量を制御することまでの言及はなく、それ故に、LNGを気化した燃料ガスを都市ガスとして用いる場合には、膜透過ガスの成分の制御性という点において課題が残されていた。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、LNGを気化して都市ガスとして用いる燃料ガスの成分調整をするのに際して膜分離装置を用いる場合において、分離膜を透過する膜透過ガスの成分の制御性に優れた燃料ガスの成分調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る燃料ガスの成分調整装置は、LNGを気化する気化装置と、該気化装置で気化されたNGから特定成分を分離する膜分離装置と、該膜分離装置に供給するNGの温度を検知する温度検知装置及び/又は前記膜分離装置の分離膜を透過した膜透過ガスの熱量を検知する熱量検知装置と、該温度検知装置及び/又は熱量検知装置の検出値を入力して、前記膜分離装置に供給されるNG温度を制御するNG温度制御手段を備え、
前記膜分離装置の分離膜を透過することで特定成分が濃縮化されて都市ガスとして使用する燃料ガスと、前記分離膜を透過することなく特定成分が希薄化されて都市ガス以外に使用する燃料ガスとに分離することで燃料ガスの成分を調整することを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、LNGにおける特定成分を希薄化した特定成分希薄ガスを都市ガス以外に使用するその他ガスとして供給するための第一ラインと、LNGにおける特定成分を濃縮化した特定成分濃縮ガスを都市ガスとして供給するための第二ラインとを備え、
前記第一ラインにおいて、LNGを気化する気化装置と、気化されたNGから特定成分を分離する膜分離装置と、該膜分離装置に供給するNGの温度を検知する温度検知装置と前記膜分離装置の分離膜を透過した膜透過ガスの熱量を検知する熱量検知装置と前記特定成分濃縮ガスの熱量を検知する第2熱量検知装置のうち少なくとも一つと、該温度検知装置、熱量検知装置及び第2熱量検知装置の少なくとも1つの検出値を入力して、前記膜分離装置に供給されるNG温度を制御するNG温度制御手段とを有し、
前記第二ラインにおいて、前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスをLNGに混合して前記濃縮ガスを液化する第二ライン気液混合液化装置と、該第二ライン気液混合液化装置で混合された混合液を気化する第2気化装置とを有し、
前記膜分離装置で分離された特定成分が濃縮された濃縮ガスを前記第二ライン気液混合液化装置に供給する膜透過ガス供給ラインを有し、
前記膜分離装置の分離膜を透過して特定成分が濃縮化された濃縮ガスを前記第二ラインのLNGに混合することで特定成分が濃縮化されて都市ガスとして使用する燃料ガスとし、前記分離膜を透過することなく特定成分が希薄化されたガスを都市ガス以外に使用する燃料ガスとすることで燃料ガスの成分を調整することを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記NG温度制御手段は、前記LNGと熱交換する加熱媒体を前記気化装置に供給する加熱媒体供給管に設けられて前記加熱媒体の供給量を調整する供給量調整弁と、前記検出値を入力して前記供給量調整弁を制御する第1制御部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
(4)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記NG温度制御手段は、前記気化装置にLNGを供給するLNG供給管に設けられた第1流量制御弁と、前記気化装置から排出されたNGを前記膜分離装置に供給するNG供給管に設けられて前記NGにLNGを供給して混合すると共に該LNGを気化する気液混合気化装置と、前記LNG供給管から分岐して前記気液混合気化装置にLNGを供給するバイパス管と、該バイパス管に設けられた第2流量制御弁と、前記検出値を入力して前記第1流量制御弁及び前記第2流量制御弁を制御する第2制御部とを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る燃料ガスの成分調整装置においては、温度検知装置及び/又は熱量検知装置の検出値を入力して、膜分離装置に供給されるNG温度を制御するNG温度制御手段を備えたことにより、分離膜を透過する膜透過ガスの成分の制御性に優れた燃料ガスの成分調整装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る燃料ガスの成分調整装置の説明図である(その1)。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る燃料ガスの成分調整装置の説明図である(その2)。
【
図3】本発明の実施の形態2に係る燃料ガスの成分調整装置の説明図である(その1)。
【
図4】本発明の実施の形態2に係る燃料ガスの成分調整装置の説明図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
実施の形態1に係る燃料ガスの成分調整装置1は、
図1に示すように、LNGを気化する気化装置3と、気化装置3で気化されたNGから特定成分を分離する膜分離装置5と、膜分離装置5に供給するNGの温度を検知する温度検知装置7及び膜分離装置5の分離膜を透過した膜透過ガスの熱量を検知する熱量検知装置9と、温度検知装置7及び熱量検知装置9の検出値を入力して、膜分離装置5に供給されるNG温度を制御するNG温度制御手段11を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0016】
<気化装置>
気化装置3は、LNGを気化させてNG(燃料ガス)を得るものであり、海水等の加熱媒体とLNGとの間で熱交換させることにより、LNGを加熱して気化させるものである。
気化装置3の方式としては、オープンラック式気化器、中間熱媒体式気化器、サブマージドコンバッション式気化器、空温式気化器あるいは温水式気化器等があるが、いずれの方式のものも適用可能であり、いずれかの方式のものに限定されるものではない。
【0017】
オープンラック式気化器は、主に海水を熱源とし、伝熱管内部を流れるLNGと伝熱管外部を流れる海水との間で熱交換し、LNGをガス化させる気化器である。
また、中間熱媒体式気化器は、海水などの加熱源の温度とLNGの温度との間に沸点及び凝縮点を有するプロパンなどの熱媒体を介して熱交換させる気化器である。
また、サブマージドコンバッション式気化器は、水中バーナによる燃料ガスの燃焼熱によりLNGを気化させる気化器である。
空温式気化器は、アルミ合金製のフィン付伝熱管を組合せ、伝熱管周囲の空気を熱源としてLNGを気化させる気化器である。
また、温水式気化器は、温水を熱源とする気化器であって、ステンレス製伝熱管コイルを温水が流動する槽内に設置し、温水と直接熱交換させてLNGを気化させる。
【0018】
<膜分離装置>
膜分離装置5は、気化装置3で気化されたNGから特定成分を分離膜5aによって分離する装置であって、本実施の形態では、分離膜5aとしてシリコンラバー素材のものを用いた。
【0019】
<温度検知装置>
温度検知装置7は、LNGが気化装置3によって気化された膜分離装置5に供給されるNGの温度を検知するものである。
【0020】
<熱量検知装置>
熱量検知装置9は、膜分離装置5の分離膜5aを透過した膜透過ガスの熱量を検知するものであり、熱量計を用いることができる。
【0021】
<NG温度制御手段>
NG温度制御手段11は、温度検知装置7又は熱量検知装置9のいずれか一方又は両方の検出値を入力し、該検出値に基づいて、膜分離装置5に供給されるNG温度を制御するものである。
具体的には、NG温度制御手段11は、LNGと熱交換する加熱媒体を気化装置3に供給する加熱媒体供給管13に設けられて加熱媒体の供給量を調整する供給量調整弁11aと、温度検知装置7及び/又は熱量検知装置9の検出値を入力して、供給量調整弁11aを制御する第1制御部11bとを備えてなるものである。
【0022】
加熱媒体とは、適用される気化装置3の方式によって異なるが、例えばオープンラック式気化器及び中間熱媒体式気化器では海水、サブマージドコンバッション式気化器では燃料ガス、空温式気化器では伝熱管周囲の空気、温水式気化器では温水となる。
【0023】
上記のように構成された本実施の形態においては、LNGを気化装置3で気化したNGを膜分離装置5で膜分離し、プロパン、ブタン等の重質成分が濃縮された膜透過ガスと、重質分が希薄化された非透過ガスに分離し、膜透過ガスは必要に応じて増熱剤を添加して都市ガスとして利用する。他方、非透過ガスは発電向けガスとして利用する。
そして、第1制御部11bは、温度検知装置7又は熱量検知装置9のいずれか一方又は両方の検出値を入力し、該検出値に基づいて、供給量調整弁11aを制御することで膜分離装置5に供給されるNG温度を制御する。
【0024】
ここで、具体的な制御温度について説明する。
表1に、供給するNG(燃料ガス)の組成及び熱量を示す。また、NG(燃料ガス)の圧力が7MPaG、膜透過ガスの圧力が1MPaGの条件で、分離温度が常温である25℃、および0℃、-10℃、-30℃における膜透過ガスの組成及び熱量も併せて示した。表1におけるC1はメタン、C2はエタン、C3はプロパン、C4はブタンであるが、いずれも参考値である。
【0025】
【0026】
表1に示されたとおり、膜透過ガスの熱量は、常温である25℃よりも、0℃、-10℃および-30℃の方が高い結果を与えた。
【0027】
表2に、膜分離温度が常温である25℃、及び0℃、-10℃、-30℃における非透過ガス量、都市ガス量、増熱剤量、都市ガス熱量を示した。膜透過ガスの圧力は1MPaGとした。
都市ガスの規定熱量は45.0MJ/m3で、膜透過ガスがこの値に達しない場合、増熱剤を添加した。増熱剤としては、熱量が102MJ/m3のLPGを用いた。また、都市ガスの供給圧力は1MPaGとした。
【0028】
【0029】
都市ガス熱量を45.0MJ/m3となるように調整するための増熱剤の量は、常温の25℃の場合に比べ、低温の0℃および-10℃の場合の方が少量とすることが可能となった。しかし、-30℃の場合、膜透過ガスの熱量が都市ガスの規定熱量である45.0MJ/m3を超えてしまったため、規定熱量への調整が不可能であった。
したがって、この4ケースの中では、膜分離温度を-10℃に設定することで、都市ガスの規定熱量への調整が可能な範囲で、増熱剤の量を最小にすることができることが分かる。
このように、膜分離装置5でNGを分離する場合、膜分離装置5に供給するNG温度が重要であるが、本実施の形態によれば、このようなNGの温度制御を適切に行うことができ、増熱を最小限にして都市ガスの製造を適切に行うことができる。
なお、分離膜5aとしてシリコンラバーを用いた場合には、NG温度は、シリコンラバーのガラス転移点である-120℃よりは高い温度に設定する必要がある。
【0030】
上記の実施の形態では、第1制御部11bは、膜分離装置5に供給されるNG温度を制御するのに際して、温度検知装置7又は熱量検知装置9のいずれか一方又は両方の検出値を入力するとしたが、温度検知装置7の検出値、すなわち検知温度を入力してNG温度を制御する場合には、上記のように、予めNGの適切な温度を設定しておく。
また、熱量検知装置9の検出値、すなわち検知熱量を入力してNG温度を制御する場合には、目標とする膜透過ガスの熱量を設定しておき、その目標熱量になるように、NG温度を制御する。
さらに、検知温度と検知熱量の両方を入力してNG温度を制御する場合には、検知温度と検知熱量の相関をデータベース化するとともに日々変動するLNG組成に応じて常にアップデートしておき、そのデータベースを活用して目標熱量に相当するNG温度を狙って制御する。温度制御の方が応答が早く、検知温度と検知熱量の両方を入力することにより高い制御性が実現できる。
【0031】
上記の説明では、NG温度制御手段の態様として、気化装置3に供給する加熱媒体の供給量を調整する供給量調整弁11aを第1制御部11bで制御するNG温度制御手段11を例示したが、本発明のNG温度制御手段はこれに限定されるものではなく、
図2に示すように、気化装置3にLNGを供給するLNG供給管15に設けられた第1流量制御弁17aと、気化装置3から排出されたNGを膜分離装置5に供給するNG供給管19に設けられて前記NGにLNGを供給して混合すると共にLNGを気化する気液混合気化装置17bと、LNG供給管15から分岐して気液混合気化装置17bにLNGを供給するバイパス管17cと、バイパス管17cに設けられた第2流量制御弁17dと、温度検知装置7及び/又は熱量検知装置9の検出値を入力して、第1流量制御弁17a及び第2流量制御弁17bを制御する第2制御部17eとを備えてなるNG温度制御手段17であってもよい。
【0032】
図2に示す態様では、加熱媒体の量を制御しない気化装置3から得られる常温のNGと、バイパス管17cから得られる低温のLNGを気液混合気化装置17bによって任意の割合で混合させることで、得られる燃料ガスの温度を制御することができる。すなわち、気化装置3と気液混合気化装置17bに供給されるLNGの流量バランスを調整することで、膜分離装置5に供給されるNG温度を制御するものである。
この場合、気化装置3の方式が異なっても同一の構成で対応できる点が好ましい。
【0033】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る燃料ガスの成分調整装置を、
図3に基づいて説明する。なお、実施の形態1と同一又は対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態に係る燃料ガスの成分調整装置21は、LNGにおける特定成分を希薄化した特定成分希薄ガスを都市ガス以外に使用するその他ガスとして供給するための第一ライン23と、LNGにおける特定成分を濃縮化した特定成分濃縮ガスを都市ガスとして供給するための第二ライン25とを備えている。
【0034】
そして、第一ライン23において、LNGを気化する気化装置3と、気化されたNGから特定成分を分離する膜分離装置5と、膜分離装置5に供給するNGの温度を検知する温度検知装置7及び/又は膜分離装置5の分離膜5aを透過した膜透過ガスの熱量を検知する熱量検知装置9と、温度検知装置7、熱量検知装置9の検出値及び後述する第2熱量検知装置33の少なくとも一つの検出値を入力して、膜分離装置5に供給されるNG温度を制御するNG温度制御手段11とを有している。
【0035】
また、第二ライン25において、膜分離装置5で分離された特定成分が濃縮された膜透過ガスをLNGに混合して膜透過ガスを液化する第二ライン気液混合液化装置27と、第二ライン気液混合液化装置27で混合された混合液を昇圧する昇圧ポンプ29と、昇圧された混合液を気化する第2気化装置31と、第2気化装置31で気化されたNGの熱量を検知する第2熱量検知装置33とを有している。
さらに、第一ライン25と第二ライン27の間には、膜分離装置5で分離された特定成分が濃縮された膜透過ガスを第二ライン気液混合液化装置27に供給する膜透過ガス供給ライン35を有している。
【0036】
以下、実施の形態1には設けられていない、第二ライン気液混合液化装置27、昇圧ポンプ29、第2気化装置31及び第2熱量検知装置33について説明する。
<第二ライン気液混合液化装置>
第二ライン気液混合液化装置27は、膜分離装置5で分離された重質成分が濃縮された膜透過ガスをLNGに混合するものであり、液体に気体を直接接触させて前記液体に前記気体を混合、溶解、あるいは前記気体を液化させるものであればその形態は特に限定されない。
もっとも、気液混合液化装置として、液化を促進するような機構の混合装置を用いてもよい。
【0037】
<昇圧ポンプ>
昇圧ポンプ29は、混合液を昇圧して都市ガスの需要者に向けて送出するためのポンプである。なお、需要家へ供給圧力が低い場合等においては昇圧ポンプ29を設ける必要がない場合もあり、本発明において昇圧ポンプ29は必須ではない。
【0038】
<第2気化装置>
第2気化装置31は混合液を気化するための装置であり、例えば第一ラインに設けた実施の形態1で説明したのと同様に種々の方式のものを使用できる。
【0039】
<第2熱量検知装置>
第2熱量検知装置33は、実施の形態1で説明した熱量検知装置9と同様のもので、NGの熱量を検知して、検出値を第1制御部11bに入力する。
本実施の形態の第1制御部11bは、この第2熱量検知装置33の検出値を入力している点において実施の形態1と異なるが、他の点は実施の形態1と同様である。第2熱量検知装置33で検知される熱量が規定値を超えないように管理するために使用することができる。
【0040】
以上のように構成された本実施の形態の燃料ガスの成分調整装置21においては、膜分離装置5の分離膜5aを透過して特定成分が濃縮化された膜透過ガスを第二ライン25のLNGに混合することで特定成分が濃縮化されて都市ガスとして使用する燃料ガスとし、分離膜5aを透過することなく特定成分が希薄化されたガス(非透過ガス)を都市ガス以外に使用する燃料ガスとすることで燃料ガスの成分を調整する。
膜透過ガスの圧力は1MPaGとし、この膜透過ガスは同じ圧力で供給されるLNGと第二ライン気液混合液化装置27で混合され、全量が液化される。液化された膜透過ガスとLNGの混合物を昇圧ポンプ29で昇圧し、第2気化装置31で気化し、増熱剤を添加して都市ガスを製造する。このような構成にすることで、膜透過ガスの圧力よりも高い圧力で都市ガスを供給することが可能となる。
膜透過ガスをガス圧縮機で昇圧する場合に比べ、本実施の形態のように昇圧ポンプ29を用いることで、はるかに小さな動力で高圧の都市ガスを製造することが可能となる。
【0041】
ここで、具体的な制御温度について説明する。
表3に、供給する燃料ガスの組成及び熱量を記した。また、表3には燃料ガスの圧力が7MPaG、膜透過ガスの圧力が1MPaGの条件で、分離温度が常温である25℃、および0℃、-10℃、-30℃における膜透過ガスの組成及び熱量も併せて示した。
【0042】
【0043】
表3に示されたとおり、膜透過ガスの熱量は、常温である25℃よりも、0℃、-10℃および-30℃の方が高い結果を与えた。
表4に、膜分離温度が常温である25℃、および0℃、-10℃、-30℃における非透過ガス量、膜透過ガス量、都市ガス量、増熱剤量、都市ガス熱量を示した。膜透過ガスの圧力は1MPaGとした。
都市ガスの規定熱量は45.0MJ/m3で、膜透過ガスと第二ラインのLNGとの混合物を気化させた濃縮ガスがこの値に達しない場合、増熱剤を添加した。増熱剤としては、熱量が102MJ/m3のLPGを用いた。また、都市ガスの供給圧力は6MPaGとした。
【0044】
【0045】
都市ガス熱量を45.0MJ/m3となるように調整するための増熱剤の量は、常温の25℃の場合に比べ、低温の0℃および-10℃の場合の方が少量とすることが可能となった。しかし、-30℃の場合、膜透過ガスと第二ラインのLNGとの混合物を気化させた濃縮ガスの熱量が都市ガスの規定熱量である45.0MJ/m3を超えてしまったため、規定熱量への調整が不可能であった。
したがって、この4ケースの中では、実施の形態1と同様に、膜分離温度を-10℃に設定することで、都市ガスの規定熱量への調整が可能な範囲で、増熱剤の量を最小にすることができることが分かる。
このように、膜分離装置でNGを分離する場合、膜分離装置に供給するNG温度が重要であるが、本実施の形態によれば、このようなNGの温度制御を適切に行うことができ、増熱を最小限にして都市ガスの製造を適切に行うことができる。
【0046】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、NG温度制御手段の態様として、
図4に示すように、気化装置3にLNGを供給するLNG供給管15に設けられた第1流量制御弁17aと、気化装置3から排出されたNGを膜分離装置5に供給するNG供給管19に設けられて前記NGにLNGを供給して気液混合する気液混合気化装置17bと、LNG供給管15から分岐して気液混合気化装置17bにLNGを供給するバイパス管17cと、バイパス管17cに設けられた第2流量制御弁17bと、温度検知装置7及び/又は熱量検知装置9、第2熱量検知装置33の検出値を入力して、第1流量制御弁17a及び第2流量制御弁17dを制御する第2制御部17eとを備えてなるNG温度制御手段17であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 燃料ガスの成分調整装置(実施の形態1)
3 気化装置
5 膜分離装置
5a 分離膜
7 温度検知装置
9 熱量検知装置
11 NG温度制御手段
11a 供給量調整弁
11b 第1制御部
13 加熱媒体供給管
15 LNG供給管
17 NG温度制御手段(他の態様)
17a 第1流量制御弁
17b 気液混合気化装置
17c バイパス管
17d 第2流量制御弁
17e 第2制御部
19 NG供給管
21 燃料ガスの成分調整装置(実施の形態2)
23 第一ライン
25 第二ライン
27 第二ライン気液混合液化装置
29 昇圧ポンプ
31 第2気化装置
33 第2熱量検知装置
35 膜透過ガス供給ライン