(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】新規化合物、その製造方法、ならびに、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、および、それらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 519/00 20060101AFI20221012BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20221012BHJP
C08G 64/02 20060101ALI20221012BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20221012BHJP
C08G 64/30 20060101ALI20221012BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
C07D519/00 CSP
C08G63/672
C08G64/02
C08G18/32 018
C08G64/30
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019026732
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】中村 四季
(72)【発明者】
【氏名】桐野 智明
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513172(JP,A)
【文献】特開2012-072350(JP,A)
【文献】国際公開第2004/111106(WO,A1)
【文献】特開2017-105873(JP,A)
【文献】特開2017-186553(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208959(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
【請求項2】
式(1)において、Rはいずれも水素原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式(2)で表される化合物から形成される、請求項1または2に記載の化合物。
式(2)
【化2】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
【請求項4】
下記式(2)で表される化合物同士を反応させることを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
式(2)
【化3】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
【請求項5】
前記式(2)で表される化合物をハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の少なくとも1種の存在下で反応させることを含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記式(2)で表される化合物を金属触媒の存在下で反応させることを含む、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属触媒が遷移金属触媒を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属触媒が銅を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
ジオール由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジオール由来の構成単位が請求項1または2に記載の化合物由来の構成単位を含む、ポリエステル。
【請求項10】
重量平均分子量が1,000以上である、請求項9に記載のポリエステル。
【請求項11】
ジオール由来の構成単位と炭酸エステル由来の構成単位から構成され、前記ジオール由来の構成単位が請求項1または2に記載の化合物由来の構成単位を含む、ポリカーボネート。
【請求項12】
重量平均分子量が1,000以上である、請求項11に記載のポリカーボネート。
【請求項13】
請求項1または2に記載の化合物とポリイソシアネートから形成されたポリウレタン。
【請求項14】
重量平均分子量が1,000以上である、請求項13に記載のポリウレタン。
【請求項15】
請求項1または2に記載の化合物と多価カルボン酸を反応させることを含む、ポリエステルの製造方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載の化合物と炭酸エステルを反応させることを含む、ポリカーボネートの製造方法。
【請求項17】
請求項1または2に記載の化合物とポリイソシアネートを反応させることを含む、ポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、その製造方法、ならびに、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソソルビド骨格を有するポリカーボネートジオールが開示されている(特許文献1)。同文献では、これを、ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンを合成した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような状況のもと、近年、イソソルビドの二量体が求められているが、イソソルビドの二量体は合成が困難であった。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、イソソルビドの二量体等の新規化合物の提供を目的とする。また、新規化合物の製造方法、ならびに、前記化合物を用いたポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ならびに、前記ポリエステル等の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は下記の手段により解決された。
<1>下記式(1)で表される化合物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
<2>式(1)において、Rはいずれも水素原子である、<1>に記載の化合物。
<3>下記式(2)で表される化合物から形成される、<1>または<2>に記載の化合物。
式(2)
【化2】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
<4>下記式(2)で表される化合物同士を反応させることを含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
式(2)
【化3】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
<5>前記式(2)で表される化合物をハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の少なくとも1種の存在下で反応させることを含む、<4>に記載の製造方法。
<6>下記式(2)で表される化合物を金属触媒の存在下で反応させることを含む、<4>または<5>に記載の製造方法。
<7>前記金属触媒が遷移金属触媒を含む、<6>に記載の製造方法。
<8>前記金属触媒が銅を含む、<6>に記載の製造方法。
<9>ジオール由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジオール由来の構成単位が<1>または<2>に記載の化合物由来の構成単位を含む、ポリエステル。
<10>重量平均分子量が1,000以上である、<9>に記載のポリエステル。
<11>ジオール由来の構成単位と炭酸エステル由来の構成単位から構成され、前記ジオール由来の構成単位が<1>または<2>に記載の化合物由来の構成単位を含む、ポリカーボネート。
<12>重量平均分子量が1,000以上である、<11>に記載のポリカーボネート。
<13><1>または<2>に記載の化合物とポリイソシアネートから形成されたポリウレタン。
<14>重量平均分子量が1,000以上である、<13>に記載のポリウレタン。
<15><1>または<2>に記載の化合物と多価カルボン酸を反応させることを含む、ポリエステルの製造方法。
<16><1>または<2>に記載の化合物と炭酸エステルを反応させることを含む、ポリカーボネートの製造方法。
<17><1>または<2>に記載の化合物とポリイソシアネートを反応させることを含む、ポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、イソソルビド二量体等の新規化合物を提供可能になった。また、前記新規化合物の製造方法、ならびに、前記新規化合物を用いたポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、および、それらの製造方法を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0008】
本発明の新規化合物は下記式(1)で表される。
式(1)
【化4】
(式(1)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。特に、Rはいずれも水素原子であることが好ましい。
【0009】
上記式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表される化合物から形成されることが好ましく、イソソルビドから形成されることがより好ましい。
式(2)
【化5】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
Rの好ましい範囲は、式(1)におけるRと同じである。
【0010】
すなわち、式(1)で表される化合物の製造方法は、上記式(2)で表される化合物同士を反応させることを含むことが好ましい。
式(2)で表される化合物は、シス体、トランス体のいずれであってもよい。
式(2)で表される化合物は、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール(イソソルビド)、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール(イソマンニド)、1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-ソルビトール(イソイディド)などが挙げられ、好ましくはイソソルビドである。尚、式(2)で表される化合物として、イソソルビドのみを用いたとしても、式(1)で表される化合物の合成反応中に、加熱などにより立体配座が変わることもある。
式(2)で表される化合物は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。好ましくは、1種のみである。
【0011】
式(1)で表される化合物の製造方法においては、式(2)で表される化合物をハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の少なくとも1種の存在下で反応させることが好ましく、ハロゲン化炭素の存在下で反応させることがより好ましい。
ハロゲン化炭素としては、四臭化炭素、四塩化炭素、ブロモトリクロロメタンなどが好ましく、四臭化炭素がより好ましい。
ハロゲン化水素としては、臭化水素、塩化水素、ヨウ化水素などが好ましい。
ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の使用量は特に限定されず適宜調節すればよいが、式(2)で表される化合物1molに対して、0.001mol以上であることが好ましく、0.01mol以上であることがより好ましく、0.06mol以上であることがさらに好ましく、0.08mol以上であることが一層好ましく、0.1mol以上であることがより一層好ましい。また、前記ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の使用量は、式(2)で表される化合物1molに対して、1mol以下であることが好ましく、0.7mol以下であることがより好ましく、0.5mol以下であることがさらに好ましい。
ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、ハロゲン化炭素やハロゲン化水素を用いずに、反応時間を長くすること等によって、反応を進行させることもできる。
【0012】
式(1)で表される化合物の製造方法においては、式(2)で表される化合物を金属触媒の存在下で反応させることが好ましい。
金属触媒としては、遷移金属触媒を含むことが好ましく、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、ReおよびOsを含むことがより好ましく、銅を含むことがさらに好ましい。
金属触媒として、具体的には、銅アセチルアセトネート、臭化銅(I)、臭化銅(II)、塩化銅、ヨウ化銅などが挙げられる。
金属触媒の使用量は適宜調節すればよいが、式(2)で表される化合物1molに対して、0.001mol以上であることが好ましく、0.005mol以上であることがより好ましく、0.008mol以上であることがさらに好ましい。また、前記金属触媒の使用量は、式(2)で表される化合物1molに対して、0.5mol以下であることが好ましく、0.1mol以下であることがより好ましく、0.05mol以下であることがさらに好ましい。
金属触媒は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、金属触媒を用いずに、反応時間を長くすること等によって、反応を進行させることもできる。
【0013】
式(1)で表される化合物の製造方法においては、式(2)で表される化合物をハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の少なくとも1種と金属触媒の存在下で反応させることがより好ましい。ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の少なくとも1種と、金属触媒を併用する場合、そのモル比率は、ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の合計1molに対し、金属触媒が0.001mol以上であることが好ましく、0.005mol以上であることがより好ましく、0.01mol以上であることがさらに好ましく、また、前記モル比率の上限は、ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の合計1molに対し、1mol以下であることが好ましく、0.5mol以下であることがより好ましく、0.1mol以下であることがさらに好ましく、0.08mol以下であることが一層好ましい。
このような構成とすることにより、式(2)で表される化合物の二量化反応をより効果的に進行させることができる。
【0014】
本実施形態にかかる式(1)で表される化合物の製造方法において、式(2)で表される化合物の反応温度は特に限定されないが、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、100℃以上であることが一層好ましい。また、前記反応温度は、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、170℃以下であってもよい。
式(1)で表される化合物の製造方法において、式(2)で表される化合物の反応時間は特に限定されないが、ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の少なくとも1種と、金属触媒を併用する場合、3~20時間であることが好ましく、5~10時間であることがより好ましい。
また、ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の少なくとも1種と、金属触媒を併用しない場合の反応時間は、5~30時間であることが好ましく、8~20時間であることがより好ましい。
【0015】
式(1)で表される化合物の製造方法においては、溶媒を用いてもよいし、用いなくてもよい。特に、二量化反応の際に、溶媒を用いないことが好ましい。ここでの溶媒を用いないとは、溶媒を積極的に添加しないことを意味し、不純物等として混入する溶媒を排除するものではない。
式(1)で表される化合物の製造方法においては、式(2)で表される化合物と、ハロゲン化炭素およびハロゲン化水素の少なくとも1種と、金属触媒のみを用いて反応を行うことが好ましい。ここでの「のみ」とは、意図して積極的に添加しないことをいい、不純物等意図せずに含まれてしまうものまでを排除する趣旨ではない。
【0016】
式(1)で表される化合物の製造方法において、反応は開放系で行うことが好ましい。開放系で行うことにより、収率をより向上させることができる。
また、式(1)で表される化合物の製造方法において、式(2)で表される化合物を反応系に供給する態様が例示される。
【0017】
式(1)で表される化合物は、各種のポリマーの材料として用いることができる。具体的には、その末端にある2つのヒドロキシ基を介して結合するモノマーとして用いることができる。
【0018】
<ポリエステル>
本実施形態では、式(1)で表される化合物と多価カルボン酸(好ましくはジカルボン酸)から形成されたポリエステルを製造することができる。
すなわち、本実施形態にかかるポリエステルとしては、ジオール由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジオール由来の構成単位が式(1)で表される化合物由来の構成単位を含む、ポリエステルが開示される。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸であることが好ましい。ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸であっても、芳香族ジカルボン酸であってもよい。ジカルボン酸の詳細は、特開2017-105873号公報の段落0019に記載のジカルボン酸が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態にかかるポリエステルは、式(1)で表される化合物以外のジオール由来の構成単位を含んでいてもよい。具体的には、特開2017-105873号公報の段落0017および0018の記載、国際公開第2016/002873号の段落0009、および、0011~0035の記載、国際公開第2017/208959号の段落0030、0031に記載のジオールが例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、本実施形態にかかるポリエステルは、ジオール由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成されるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の構成単位や末端基等を含んでいてもよい。本実施形態にかかるポリエステルは、全体の90質量%以上が、ジオール由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位からなることが好ましい。
本実施形態にかかるポリエステルの重量平均分子量は1,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。上限は特にないが200,000以下であることが実際的である。
【0019】
<ポリカーボネート>
本実施形態では、式(1)で表される化合物と炭酸エステルから形成されたポリカーボネートを製造することができる。
すなわち、本実施形態にかかるポリカーボネートとしては、ジオール由来の構成単位と炭酸エステル由来の構成単位から構成され、前記ジオール由来の構成単位が式(1)で表される化合物由来の構成単位を含む、ポリカーボネートが開示される。
炭酸エステルは、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネートおよびジアリールカーボネートが挙げられ、より具体的には、特開2017-186553号公報の段落0026に記載の炭酸エステルが例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、ジオール由来の構成単位として、式(1)で表される化合物由来の構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。このようなジオール由来の構成単位としては、上述のポリエステルのところで挙げたジオールが例示される。
また、本実施形態にかかるポリカーボネートは、ジオール由来の構成単位と炭酸エステル由来の構成単位から構成されるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の構成単位や末端基等を含んでいてもよい。本実施形態にかかるポリカーボネートは、全体の90質量%以上が、ジオール由来の構成単位と炭酸エステル由来の構成単位からなることが好ましい。
本実施形態にかかるポリカーボネートの重量平均分子量は1,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。上限は特にないが20,0000以下であることが実際的である。
【0020】
<ポリウレタン>
本実施形態では、式(1)で表される化合物とポリイソシアネートから形成されたポリウレタンを製造することができる。
すなわち、本実施形態にかかるポリウレタンは、ジオール由来の構成単位とポリイソシアネート由来の構成単位を含み、前記ジオール由来の構成単位が式(1)で表される化合物由来の構成単位を含む、ポリウレタンが開示される。
また、ジオール由来の構成単位として、式(1)で表される化合物由来の構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。このようなジオール由来の構成単位としては、上述のポリエステルのところで挙げたジオールが例示される。
さらに、本実施形態にかかるポリウレタンは、ポリオール由来の構成単位を含んでいてもよく、これらの詳細は、特開2017-186553号公報の段落0031に記載のポリオールが例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。
ポリイソシアネートとしては常用されているものを適宜選定して用いることができる。具体的には、国際公開第2017/208959号の段落0033~0037に記載のポリイソシアネートが例示され、この内容は、本明細書に組み込まれる。
その他、本実施形態にかかるポリウレタンの製造方法については、特開2017-186553号公報の段落0032~0043の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態にかかるポリウレタンの重量平均分子量は1,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。上限は特にないが200,000以下であることが実際的である。
【0021】
式(1)で表される化合物は上記のとおり、ポリマー、樹脂の合成原料として有用である。特に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の原料モノマーとして好ましく用いられる。その他、医薬品の中間体、化粧品の原料、接着剤の原料としても利用することができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0023】
<実施例1>
イソソルビド(東京化成工業社製、I0407)1.460g、四臭化炭素(東京化成工業社製、T0038)0.166g、銅アセチルアセトネート(東京化成工業社製、C0384)0.0262gを50mLの三口フラスコに入れ、上部を開放した状態で150℃、7時間反応を行った。得られた反応液について、超純水とクロロホルムを用い、液液分離を行った。水相サンプルをGC-MSで測定した。
その結果、式(1)で表される化合物の生成割合は面積比から0.3質量%と見積もられた。ここでの生成割合とは、溶媒以外のGC-MSで示された全ピーク面積に対する式(1)で表される化合物の面積ピークの割合をいう。
【0024】
<実施例2>
四臭化炭素を0.664gにした以外は実施例1と同じ手順で反応を行なった。そのとき得られた式(1)で表される化合物の生成割合は0.8質量%であった。
【0025】
<参考例1> 硫酸触媒を用いた脱水反応
イソソルビド10gに硫酸濃度を260μl/Lに調整した酢酸エチル溶液を73mL添加した。その後、エバポレーターで酢酸エチルを留去した。さらに真空乾燥機で40℃、2時間乾燥させて硫酸触媒を担持させた。硫酸を担持させたイソソルビド3gを秤量し、三口フラスコに入れ130℃で2時間加熱した。反応終了後、蒸留水で回収し、GC-MSで分析を行った。二量体のピークは検出されなかった。
【0026】
<参考例2> ウィリアムソンエーテル合成
イソソルビド7300mg、ピリジン15mLを三口フラスコに入れ氷浴中で撹拌させながら、三臭化リン4500mgを滴下した。その後、50℃に加温し2時間反応を行った。反応終了後、蒸留水とクロロホルムで液液分離を行った。エバポレーターでクロロホルム相の溶媒を留去した。この手法により、臭素化イソソルビドを得た。
得られた臭素化イソソルビド1040mg、イソソルビド730mgをそれぞれ3mLのジメチルホルムアミドに溶解させた。三口フラスコに水素化ナトリウム400mgを投入し、氷浴中で撹拌を行った。その後、イソソルビドのジメチルホルムアミド溶液を滴下し、25℃、1時間撹拌した。その後、臭素化イソソルビドのジメチルホルムアミド溶液を滴下し、50℃に加温して2時間反応を行った。反応終了後、水素化ナトリウムをメタノールと水でクエンチした後、全量回収した。反応液について、GC-MS分析を行ったが、二量体のピークは検出できなかった。
【0027】
分析方法
式(1)で表される化合物の同定、定量分析にはアジレント社製GC7890B、日本電産製TOF-MS JMS-T200GCを用いた。EI+法でイオン化を行い、カラムにはGLサイエンス製「TC-17」(長さ:30m、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm)を用いた。
式(1)で表される化合物の精密質量は274.104である。式(1)で表される化合物と思われるピークのマススペクトルの親イオンはm/z=274.104であり、これはイソソルビド二量体の分子量と一致した。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の新規化合物はポリマーを始めとした各種製品の材料として用いることができ産業に利用可能である。