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特許7156131サーボDC給電システム及びモータ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】サーボDC給電システム及びモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/40 20160101AFI20221012BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02P29/40
H02P27/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019060608
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162339
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
(72)【発明者】
【氏名】財津 俊行
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌志
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-220900(JP,A)
【文献】特開2008-253087(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030067(WO,A1)
【文献】特許第6468342(JP,B1)
【文献】特開2008-296877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/40
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
それぞれ、サーボモータを制御する複数のモータ制御装置と、
前記直流電源からの電力を前記複数のモータ制御装置に分配供給する電力供給路と、
を含み、
前記複数のモータ制御装置は、それぞれ、
前記電力供給路の電圧が発振し得る周波数に応じた中心周波数を有するノッチフィルタ及び前記ノッチフィルタの前段に配置され電流を制御する電流制御器を含む電流制御ループにより前記サーボモータに流れる電流を制御する電流制御ループ部
を備え
前記電力供給路の電圧が発振し得る周波数は、前記電流制御ループが前記ノッチフィルタを含まない場合に、前記電力供給路側の伝達関数とそれぞれの前記モータ制御装置側の伝達関数との相関において該電力供給路側の伝達関数に対応するゲインが該モータ制御装置側の伝達関数に対応するゲインを上回る周波数範囲に応じた周波数である、
サーボDC給電システム。
【請求項2】
前記複数のモータ制御装置のそれぞれが備える前記電流制御ループ部は、
それぞれ、前記電力供給路の電圧が発振し得る複数の周波数に応じた中心周波数を有する複数のノッチフィルタを含む電流制御ループにより前記サーボモータに流れる電流を制御する、
請求項1に記載のサーボDC給電システム。
【請求項3】
直流電源と、それぞれ、サーボモータを制御する複数のモータ制御装置と、前記直流電源からの電力を前記複数のモータ制御装置に分配供給する電力供給路と、を含むサーボDC給電システムにおける前記複数のモータ制御装置のうちの1つのモータ制御装置であって、
前記電力供給路の電圧が発振し得る周波数に応じた中心周波数を有する1つ又は複数のノッチフィルタ及び前記ノッチフィルタの前段に配置され電流を制御する電流制御器を含む電流制御ループにより前記サーボモータに流れる電流を制御する電流制御ループ部を備え、
前記電力供給路の電圧が発振し得る周波数は、前記電流制御ループが前記ノッチフィル
タを含まない場合に、前記電力供給路側の伝達関数とそれぞれの前記モータ制御装置側の伝達関数との相関において該電力供給路側の伝達関数に対応するゲインが該モータ制御装置側の伝達関数に対応するゲインを上回る周波数範囲に応じた周波数である、
モータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボDC給電システムとモータ制御装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等では、複数の電動機が、離れた場所に配置された複数のサーボドライバにてPWM駆動されるシステム(ロボットとその制御装置とで構成されたシステム等)が使用されている。そのようなシステムには、電動機・サーボドライバ間の長いケーブルからの放射ノイズを低減するために、スイッチングスピードを速くできない、電動機・サーボドライバ間の接続に多数のケーブルが必要とされる、といった問題がある。
【0003】
各電動機の近傍に、サーボドライバからコンバータを除去した装置(以下、モータ制御装置)を配置し、1つの直流電源からDCバスにて複数のモータ制御装置に電力を供給する構成を採用しておけば、上記問題が発生しないようにすることが出来る。ただし、この構成を採用したシステムでは、DCバス側のLC回路とモータ制御装置内のインバータ回路側とが干渉してDCバスの電圧が発振する場合がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】横尾 真志, 近藤 圭一郎,「直流電気鉄道車両におけるベクトル制御された誘導電動機駆動システムのダンピング制御系設計法」、電気学会論文誌D,Vol.135 No.6 pp.622-631(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、直流電源と、サーボモータを制御する複数のモータ制御装置と、直流電源からの電力を複数のモータ制御装置に分配供給する電力供給路とを含むサーボDC給電システムにおける電力供給路の電圧の発振を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点に係るサーボDC給電システムは、直流電源と、それぞれ、サーボモータを制御する複数のモータ制御装置と、前記直流電源からの電力を前記複数のモータ制御装置に分配供給する電力供給路とを含む。そして、サーボDC給電システムの各モータ制御装置は、前記電力供給路の電圧が発振し得る周波数に応じた中心周波数を有するノッチフィルタを含む電流制御ループにより前記サーボモータに流れる電流を制御する電流制御ループ部を備える。
【0007】
上記構成を有するサーボDC給電システムによれば、既存のシステムでは、システム全体の伝達関数が不安定となり発振してしまう運転状態でも、伝達関数を安定化させることが可能となるため、電力供給路の電圧の発振を抑制することが出来る。
【0008】
各モータ制御装置のそれぞれが備える前記電流制御ループ部は、それぞれ、前記電力供給路の電圧が発振し得る複数の周波数に応じた中心周波数を有する複数のノッチフィルタを含む電流制御ループにより前記サーボモータに流れる電流を制御しても良い。
【0009】
また、本発明の一観点に係る、サーボモータを制御するモータ制御装置は、中心周波数が可変な1つ又は複数のノッチフィルタを含む電流制御ループにより前記サーボモータに
流れる電流を制御する電流制御ループ部を備える。従って、このモータ制御装置を用いれば、電力供給路の電圧が発振しにくいサーボDC給電システムを構築できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、直流電源と、サーボモータを制御する複数のモータ制御装置と、直流電源からの電力を複数のモータ制御装置に分配供給する電力供給路とを含むサーボDC給電システムにおける電力供給路の電圧の発振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るサーボDC給電システムの構成の説明図である。
図2図2は、サーボDC給電システム内のモータ制御装置の構成の説明図である。
図3図3は、モータ制御装置の機能ブロック図である。
図4A図4Aは、比較対象システムの電源側及びモータ側のボード線図である。
図4B図4Bは、サーボDC給電システムの電源側及びモータ側のボード線図である。
図5図5は、サーボDC給電システムと比較対象システムの電力供給路の電圧変化パターンの違いを説明するための図である。
図6A図6Aは、電流制御ループ部の変形例の説明図である。
図6B図6Bは、電流制御ループ部の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
まず、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係るサーボDC給電システムの概要を説明する。なお、図1は、本実施形態に係るサーボDC給電システムの構成の説明図であり、図2は、サーボDC給電システムの構成要素であるモータ制御装置10の構成の説明図である。
【0014】
図1に示してあるように、本実施形態に係るサーボDC給電システムは、直流電源30と複数のモータ制御装置10との間を、電力供給路35にて接続したシステムである。
【0015】
直流電源30は、所定の直流電圧を出力する電源である。図1には、直流電源30として、三相交流電源50からの三相交流を直流電圧に変換する装置を示してあるが、直流電源30は、単相交流を直流電圧に変換する装置であっても良い。また、直流電源30は、ダイオードを組み合わせた整流回路(例えば、全波整流回路)であっても、スイッチング素子が用いられたAC-DCコンバータ(例えば、電源回生コンバータ)であっても良い。
【0016】
モータ制御装置10は、PLC(Programmable Logic Controller)等の上位装置からの指令(位置指令、速度指令等)に従って、サーボモータ40(以下、単に、モータ40とも表記する)を制御する装置(詳細は後述)である。電力供給路35は、直流電源30からの電力(電流)を、サーボDC給電システム内の各モータ制御装置に分配供給できるように複数の電力ケーブルを組み合わせた給電路である。この電力供給路35の各モータ制御装置10との接続部分(各モータ制御装置10の電源端子間)には、通常、平滑コンデンサ15が設けられる。
【0017】
図2に示してあるように、モータ制御装置10は、インバータ回路11と制御部12とを備える。インバータ回路11は、モータ制御装置10に電力供給路35から入力される
直流電圧を三相交流に変換するための回路である。インバータ回路11は、正負の母線間に、U相用のレグ、V相用のレグ及びW相用のレグを並列接続した構成を有しており、モータ制御装置10には、インバータ回路11の各レグの出力電流を測定するための電流センサ28が設けられている。
【0018】
制御部12は、上位装置(PCL等)からの指令に従って、インバータ回路11をPWM(Pulse Width Modulation)制御するユニットである。制御部12は、プロセッサ(マイクロコントローラ、CPU等)とその周辺回路とから構成されており、制御部12は、各電流センサ28からの信号、モータ40に取り付けられたエンコーダ41(アブソリュートエンコーダやインクリメンタルエンコーダ)からの信号等が入力されている。
【0019】
以下、本実施形態に係るサーボDC給電システムについてさらに具体的に説明する。
本実施形態に係るサーボDC給電システムは、電力供給路35の電圧の発振を抑制可能とするために、各モータ制御装置10を、ノッチフィルタを含む電流制御ループによりモータ40に流れる電流を制御するように構成したシステムである。
【0020】
以下、上位装置から入力される指令が位置指令である場合を例に、モータ制御装置10の構成及び動作を説明する。
【0021】
モータ制御装置10は、位置指令に従ってモータ40を制御する場合、図3に示した構成の装置、すなわち、減算器21及び23、位置制御器22、速度制御器24、ノッチフィルタ(NF)26を含む電流制御ループ部20、速度検出器29等を備えた装置として動作する。
【0022】
このモータ制御装置10内の減算器21は、位置指令から、エンコーダ41により検出された位置(以下、検出位置)を減算することで位置偏差を算出するユニットである。位置制御器22は、位置偏差に所定の位置比例ゲインを乗ずることにより速度指令を算出するユニットである。速度検出器29は、検出位置を微分することで、速度(以下、検出速度)を算出するユニットである。減算器23は、速度指令から検出速度を減算することにより速度偏差を算出するユニットである。速度制御器24は、速度偏差に基づくPI(比例積分)演算により電流指令を算出するユニットである。
【0023】
電流制御ループ部20は、電流指令通りの電流がモータ40に流れるように、モータ40に流れる電流をフィードバック制御するユニットである。図示してあるように、電流制御ループ部20は、減算器25と、ノッチフィルタ26と、電流制御器27と、電流センサ28とにより構成されている。
【0024】
減算器25は、電流指令から電流センサ28により検出された電流を減算することで電流偏差を算出するユニットである。電流制御器27は、インバータ回路11と制御部12の一部とで実現されるユニットである。この電流制御器27の構成要素としての制御部12は、ノッチフィルタ26通過後の電流偏差に基づき、モータ40に電流指令通りの電流が流れるようにインバータ回路11を制御する。
【0025】
電流制御ループ部20内のノッチフィルタ26は、中心周波数(ノッチ周波数とも称される)が可変なデジタルフィルタである。そして、本実施形態に係るサーボDC給電システムは、各モータ制御装置10内のノッチフィルタ26の中心周波数を、電力供給路35の電圧が発振し得る周波数にほぼ一致させたシステムとなっている。
【0026】
本実施形態に係るサーボDC給電システムは、以上、説明した構成を有している。従って、サーボDC給電システムによれば、電力供給路35の電圧の発振を抑制することが出
来る。
【0027】
具体的には、各モータ制御装置10として、ノッチフィルタ26を含まない電流制御ループによりモータ40に流れる電流を制御する装置が用いられたサーボDC給電システムを考える。そのようなサーボDC給電システム(以下、比較対象システムと表記する)にて電力供給路35の電圧が発振するのは、電力供給路35側の伝達関数とモータ制御装置10側の伝達関数とを統合した伝達関数が不安定となる場合、つまり、図4Aに模式的に示したように、電力供給路35側(“電源側”)のゲインがモータ制御装置10側(“モータ側”)のゲインを上回る周波数範囲がある場合である。
【0028】
一方、本実施形態に係るサーボDC給電システムのように、各モータ制御装置10が、電力供給路35の電圧が発振し得る周波数に応じた中心周波数を有するノッチフィルタ26を含む電流制御ループによりモータ40に流れる電流を制御すれば、図4Bに模式的に示したように、電力供給路35側(“電源側”)のゲインが、いずれの周波数においても、モータ制御装置10側(“モータ側”)のゲインを上回らないようにすることが可能となる。
【0029】
従って、本実施形態に係るサーボDC給電システムは、比較対象システムでは図5に示したような電圧の発振(“NF無し”)が発生してしまう条件で運転しても、電圧が発振しない(“NFあり”)ようにすることが出来る。
【0030】
《変形形態》
上記した実施形態に係るサーボDC給電システムは、各種の変形が可能なものである。例えば、電力供給路35は、直流電源30からの電力(電流)を、サーボDC給電システム内の全モータ制御装置に供給できるものであれば、図1に示したものとは異なる構成のものであっても良い。また、各モータ制御装置10内の電流制御ループ部20(図3)を、例えば、図6Aに示したように、電流制御器27の後段にノッチフィルタ26を備えたものや、検出電流のリターン経路上にノッチフィルタ26を備えたものに変形しても良い。
【0031】
また、電流制御ループ部20を、図6Bに示したように、電力供給路35の電圧が発振し得る複数の周波数に応じた中心周波数を有する複数のノッチフィルタ26(図6Bでは、中心周波数ω1のNF26と中心周波数ω2のNF26)を含むものに変形しても良い。
【0032】
《付記1》
直流電源(30)と、
それぞれ、サーボモータ(40)を制御する複数のモータ制御装置(10)と、
前記直流電源(30)からの電力を前記複数のモータ制御装置(10)に分配供給する電力供給路(35)と、
を含み、
前記複数のモータ制御装置(10)は、それぞれ、
前記電力供給路(35)の電圧が発振し得る周波数に応じた中心周波数を有するノッチフィルタ(26)を含む電流制御ループにより前記サーボモータ(40)に流れる電流を制御する電流制御ループ部(20)
を備える、
サーボDC給電システム。
【符号の説明】
【0033】
10 モータ制御装置
11 インバータ回路
12 制御部
15 平滑コンデンサ
20 電流制御ループ部
21,23,25 減算器
22 位置制御器
24 速度制御器
26 ノッチフィルタ
27 電流制御部
28 電流センサ
29 速度検出器
30 直流電源
35 電力供給路
40 サーボモータ
41 エンコーダ
50 三相交流電源
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B