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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
G03G21/16 147
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019062951
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020160405
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】春田 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 正仁
(72)【発明者】
【氏名】西村 祥一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知範
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014817(JP,A)
【文献】特開2004-029616(JP,A)
【文献】特開平08-234530(JP,A)
【文献】特開2014-052458(JP,A)
【文献】特開2015-191206(JP,A)
【文献】特開2007-256875(JP,A)
【文献】特開2015-212740(JP,A)
【文献】特開2013-100896(JP,A)
【文献】特開平05-297763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0136604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラムと、
前記感光ドラムに接触する接触位置と、前記感光ドラムから離間する離間位置との間で移動可能な現像ローラと、
前記現像ローラを前記接触位置と前記離間位置との間で移動させる離間機構と、
加熱部と、前記加熱部との間でシートを挟む加圧部とを有する定着器と、
前記加熱部と前記加圧部のニップ圧を、第1ニップ圧と、前記第1ニップ圧より大きい第2ニップ圧に切り替えるニップ圧調整機構と、
モータと、
前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達する駆動伝達機構と、
前記現像ローラを有する現像カートリッジと、を備え、
前記駆動伝達機構は、前記モータの駆動力を前記離間機構と前記ニップ圧調整機構の両方にも伝達し、
前記モータは、正逆回転可能であり、
前記駆動伝達機構は、前記モータが正回転した場合に前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達するように構成され、
前記離間機構は、前記モータが正回転した場合に前記現像ローラを前記接触位置と前記離間位置との間で移動させるように構成され、
前記ニップ圧調整機構は、前記モータが正回転した場合に前記ニップ圧を前記第1ニップ圧から前記第2ニップ圧に切り替え、前記モータが逆回転した場合に前記ニップ圧を前記第2ニップ圧から前記第1ニップ圧に切り替えるように構成され、
前記離間機構は、前記現像ローラの位置を制御するための第1カムであって、前記モータから駆動力を受けることで回転する第1カムを有し、
前記駆動伝達機構は、前記モータからの駆動力を前記第1カムに伝達する状態と、前記モータからの駆動力を前記第1カムに伝達しない状態とを切り替えて、前記第1カムの回転と停止を切り替える第1切替機構を有し、
前記第1カムは、前記現像ローラの回転軸線と平行な軸周りに回転するカムであり、前記現像ローラの回転軸線方向に突出する第1カム部を有し、
前記離間機構は、前記第1カムの前記第1カム部と接触して前記回転軸線方向にスライド移動し、前記現像カートリッジを押圧するカムフォロワを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像カートリッジを支持する支持部材をさらに備え、
前記現像カートリッジは、前記カムフォロワに押圧されることで前記回転軸線方向にスライド移動可能なスライド部材を有し、
前記スライド部材は、前記支持部材に当接して、前記現像カートリッジを前記回転軸線方向に直交する方向に向けて付勢する、前記回転軸線方向に対して傾斜した斜面を有することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動伝達機構は、前記離間機構と機械的に接続されており、前記現像ローラが前記離間位置にある場合に前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達しないように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動伝達機構は、
前記第1カムとともに回転する第2カム部と、
遊星歯車機構を有してなり、前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達する伝達状態と、前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達しない切断状態とで切り替え可能なクラッチと、
揺動可能であり、かつ、前記第2カム部と接触可能なレバーであって、前記第2カム部から離間して前記モータの正回転に伴って回転する前記遊星歯車機構の1つの要素に係合した場合に前記クラッチを前記伝達状態とし、前記第2カム部に接触して前記1つの要素から離脱した場合、または、前記1つの要素が前記モータの逆回転に伴って回転した場合に前記クラッチを前記切断状態とするレバーと、を有することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
感光ドラムと、
前記感光ドラムに接触する接触位置と、前記感光ドラムから離間する離間位置との間で移動可能な現像ローラと、
前記現像ローラを前記接触位置と前記離間位置との間で移動させる離間機構と、
加熱部と、前記加熱部との間でシートを挟む加圧部とを有する定着器と、
前記加熱部と前記加圧部のニップ圧を、第1ニップ圧と、前記第1ニップ圧より大きい第2ニップ圧に切り替えるニップ圧調整機構と、
モータと、
前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達する駆動伝達機構と、を備え、
前記駆動伝達機構は、前記モータの駆動力を前記離間機構と前記ニップ圧調整機構の両方にも伝達し、
前記モータは、正逆回転可能であり、
前記駆動伝達機構は、前記モータが正回転した場合に前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達するように構成され、
前記離間機構は、前記モータが正回転した場合に前記現像ローラを前記接触位置と前記離間位置との間で移動させるように構成され、
前記ニップ圧調整機構は、前記モータが正回転した場合に前記ニップ圧を前記第1ニップ圧から前記第2ニップ圧に切り替え、前記モータが逆回転した場合に前記ニップ圧を前記第2ニップ圧から前記第1ニップ圧に切り替えるように構成され、
前記離間機構は、前記現像ローラの位置を制御するための第1カムであって、前記モータから駆動力を受けることで回転する第1カムを有し、
前記駆動伝達機構は、前記モータからの駆動力を前記第1カムに伝達する状態と、前記モータからの駆動力を前記第1カムに伝達しない状態とを切り替えて、前記第1カムの回転と停止を切り替える第1切替機構を有し、
前記駆動伝達機構は、前記離間機構と機械的に接続されており、前記現像ローラが前記離間位置にある場合に前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達しないように構成され、
前記駆動伝達機構は、
前記第1カムとともに回転する第2カム部と、
遊星歯車機構を有してなり、前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達する伝達状態と、前記モータからの駆動力を前記現像ローラに伝達しない切断状態とで切り替え可能なクラッチと、
揺動可能であり、かつ、前記第2カム部と接触可能なレバーであって、前記第2カム部から離間して前記モータの正回転に伴って回転する前記遊星歯車機構の1つの要素に係合した場合に前記クラッチを前記伝達状態とし、前記第2カム部に接触して前記1つの要素から離脱した場合、または、前記1つの要素が前記モータの逆回転に伴って回転した場合に前記クラッチを前記切断状態とするレバーと、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記ニップ圧調整機構は、前記加熱部および前記加圧部の一方を動かして前記ニップ圧を切り替えるための第2カムであって、前記モータから駆動力を受けることで回転する第2カムを有し、
前記駆動伝達機構は、前記モータからの駆動力を前記第2カムに伝達する状態と、前記モータからの駆動力を前記第2カムに伝達しない状態とを切り替えて、前記第2カムの回転と停止を切り替える第2切替機構を有することを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着器は、前記第1ニップ圧の場合に前記加熱部と前記加圧部が離間していることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第2ニップ圧は、前記第1ニップ圧より大きい第3ニップ圧と、前記第3ニップ圧より大きい第4ニップ圧とを含み、
前記ニップ圧調整機構は、前記ニップ圧を、前記第1ニップ圧と前記第3ニップ圧との間で切り替え可能であるとともに、前記第1ニップ圧と前記第4ニップ圧との間で切り替え可能であることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
感光ドラムと、
前記感光ドラムに接触する接触位置と、前記感光ドラムから離間する離間位置との間で移動可能な現像ローラと、
前記現像ローラを前記接触位置と前記離間位置との間で移動させる離間機構と、
加熱部と加圧部を有する定着器と、
前記加熱部と前記加圧部のニップ圧を、第1ニップ圧と、前記第1ニップ圧より大きい第2ニップ圧に切り替えるニップ圧調整機構と、
現像モータと、
定着モータと、を備え、
前記現像モータは、前記現像ローラと、前記離間機構と、前記ニップ圧調整機構を駆動し、
前記定着モータは、前記加熱部を駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記現像モータは、正逆回転可能であり、
前記現像ローラは、前記現像モータが正回転した場合に前記現像モータからの駆動力により駆動し、
前記離間機構は、前記現像モータが正回転した場合に前記現像モータからの駆動力により前記現像ローラを前記接触位置と前記離間位置との間で移動させ、
前記ニップ圧調整機構は、前記現像モータが正回転した場合に前記ニップ圧を前記第1ニップ圧から前記第2ニップ圧に切り替え、前記現像モータが逆回転した場合に前記ニップ圧を前記第2ニップ圧から前記第1ニップ圧に切り替えることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
感光ドラムと、
前記感光ドラムに接触する接触位置と、前記感光ドラムから離間する離間位置との間で移動可能な現像ローラと、
前記現像ローラを前記接触位置と前記離間位置との間で移動させる離間機構と、
加熱部と加圧部を有する定着器と、
前記加熱部と前記加圧部のニップ圧を、第1ニップ圧と、前記第1ニップ圧より大きい第2ニップ圧に切り替えるニップ圧調整機構と、
現像モータと、を備え、
前記現像モータは、前記現像ローラと、前記離間機構と、前記ニップ圧調整機構を駆動し、
前記現像モータは、正逆回転可能であり、
前記現像ローラは、前記現像モータが正回転した場合に前記現像モータからの駆動力により駆動し、
前記離間機構は、前記現像モータが正回転した場合に前記現像モータからの駆動力により前記現像ローラを前記接触位置と前記離間位置との間で移動させ、
前記ニップ圧調整機構は、前記現像モータが正回転した場合に前記ニップ圧を前記第1ニップ圧から前記第2ニップ圧に切り替え、前記現像モータが逆回転した場合に前記ニップ圧を前記第2ニップ圧から前記第1ニップ圧に切り替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記感光ドラム上に形成されたトナー像をシートに転写するベルトユニットと、
プロセスモータと、をさらに備え、
前記プロセスモータは、前記感光ドラムと前記ベルトユニットを駆動することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光ドラムや現像ローラ、定着器を備える電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置として、定着器のニップ圧を調整するカムを専用のモータで駆動するものが知られている(特許文献1)。
また、電子写真方式の画像形成装置として、現像ローラの回転と、現像ローラを感光ドラムに当接する接触位置と感光ドラムと離間する離間位置との間で変位させる変位機構とを、1つのモータで駆動するものも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-297763号公報
【文献】特開2015-69031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像形成装置を駆動するモータの数はなるべく少なくすることが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、現像ローラの駆動と、現像ローラの接触・離間と、定着器のニップ圧の切り替えを1つのモータで行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、感光ドラムと、感光ドラムに接触する接触位置と感光ドラムから離間する離間位置との間で移動可能な現像ローラと、現像ローラを接触位置と離間位置との間で移動させる離間機構と、加熱部および加熱部との間でシートを挟む加圧部を有する定着器と、加熱部と加圧部のニップ圧を第1ニップ圧と第1ニップ圧より大きい第2ニップ圧に切り替えるニップ圧調整機構と、モータと、モータからの駆動力を現像ローラに伝達する駆動伝達機構と、を備える。
駆動伝達機構は、モータの駆動力を離間機構とニップ圧調整機構の両方にも伝達する。
【0007】
このような構成によれば、現像ローラを駆動するモータにより離間機構とニップ圧調整機構を駆動させて、現像ローラの接触・離間と定着器のニップ圧の切り替えを行うことができる。これにより、現像ローラの駆動と、現像ローラの接触・離間と、定着器のニップ圧の切り替えを1つのモータで行うことができる。
【0008】
前記した画像形成装置において、モータは、正逆回転可能であり、駆動伝達機構は、モータが正回転した場合にモータからの駆動力を現像ローラに伝達するように構成され、離間機構は、モータが正回転した場合に現像ローラを接触位置と離間位置との間で移動させるように構成され、ニップ圧調整機構は、モータが正回転した場合にニップ圧を第1ニップ圧から第2ニップ圧に切り替え、モータが逆回転した場合にニップ圧を第2ニップ圧から第1ニップ圧に切り替えるように構成された構成とすることができる。
【0009】
前記した画像形成装置において、離間機構は、現像ローラの位置を制御するための第1カムであって、モータから駆動力を受けることで回転する第1カムを有し、駆動伝達機構は、モータからの駆動力を第1カムに伝達する状態と、モータからの駆動力を第1カムに伝達しない状態とを切り替えて、第1カムの回転と停止を切り替える第1切替機構を有する構成とすることができる。
【0010】
前記した画像形成装置は、現像ローラを有する現像カートリッジを備え、第1カムは、現像ローラの回転軸線と平行な軸周りに回転するカムであり、現像ローラの回転軸線方向に突出する第1カム部を有し、離間機構は、第1カムの第1カム部と接触して前記回転軸線方向にスライド移動し、現像カートリッジを押圧するカムフォロワを有する構成とすることができる。
【0011】
前記した画像形成装置は、現像カートリッジを支持する支持部材をさらに備え、現像カートリッジは、カムフォロワに押圧されることで回転軸線方向にスライド移動可能なスライド部材を有し、スライド部材は、支持部材に当接して、現像カートリッジを前記回転軸線方向に直交する方向に向けて付勢する、前記回転軸線方向に対して傾斜した斜面を有する構成とすることができる。
【0012】
前記した画像形成装置において、駆動伝達機構は、離間機構と機械的に接続されており、現像ローラが離間位置にある場合にモータからの駆動力を現像ローラに伝達しないように構成されている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、現像ローラが現像を行わない離間位置にある場合に現像ローラを停止させることができるので、現像ローラの回転を最小限にすることができる。
【0014】
前記した画像形成装置において、駆動伝達機構は、第1カムとともに回転する第2カム部と、遊星歯車機構を有してなり、モータからの駆動力を現像ローラに伝達する伝達状態と、モータからの駆動力を現像ローラに伝達しない切断状態とで切り替え可能なクラッチと、揺動可能であり、かつ、第2カム部と接触可能なレバーであって、第2カム部から離間してモータの正回転に伴って回転する遊星歯車機構の1つの要素に係合した場合にクラッチを伝達状態とし、第2カム部に接触して1つの要素から離脱した場合、または、1つの要素がモータの逆回転に伴って回転した場合にクラッチを切断状態とするレバーと、を有する構成とすることができる。
【0015】
前記した画像形成装置において、ニップ圧調整機構は、加熱部および加圧部の一方を動かしてニップ圧を切り替えるための第2カムであって、モータから駆動力を受けることで回転する第2カムを有し、駆動伝達機構は、モータからの駆動力を第2カムに伝達する状態と、モータからの駆動力を第2カムに伝達しない状態とを切り替えて、第2カムの回転と停止を切り替える第2切替機構を有する構成とすることができる。
【0016】
これによれば、第2カムの同じカム面を用いて、モータが正回転する場合に定着器のニップ圧を第1ニップ圧から第2ニップ圧に切り替え、モータが逆回転する場合に定着器のニップ圧を第2ニップ圧から第1ニップ圧に切り替えることができるので、第2カムを小型化することができる。
【0017】
前記した画像形成装置において、定着器は、第1ニップ圧の場合に加熱部と加圧部が離間している構成とすることができる。
【0018】
これによれば、定着器のニップ圧を第1ニップ圧に切り替えることで、装置内で詰まったシートが加熱部と加圧部との間に位置する場合に、詰まったシートを容易に取り除くことができるので、ジャム処理を容易に行うことができる。また、モータが正回転する場合に、現像ローラを接触位置と離間位置との間で移動させることができるとともに、定着器のニップ圧を第1ニップ圧から第2ニップ圧に切り替えることができることで、画像形成を実行する際にモータを正回転させた後は、そのまま画像形成を実行することができる。
【0019】
前記した画像形成装置において、第2ニップ圧は、第1ニップ圧より大きい第3ニップ圧と、第3ニップ圧より大きい第4ニップ圧とを含み、ニップ圧調整機構は、ニップ圧を、第1ニップ圧と第3ニップ圧との間で切り替え可能であるとともに、第1ニップ圧と第4ニップ圧との間で切り替え可能である構成とすることができる。
【0020】
これによれば、定着器のニップ圧を第3ニップ圧と第4ニップ圧に個別に設定できるので、シートの種類に応じた最適なニップ圧で定着を行うことができる。
【0021】
また、前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、感光ドラムと、感光ドラムに接触する接触位置と感光ドラムから離間する離間位置との間で移動可能な現像ローラと、現像ローラを接触位置と離間位置との間で移動させる離間機構と、加熱部と加圧部を有する定着器と、加熱部と加圧部のニップ圧を第1ニップ圧と第1ニップ圧より大きい第2ニップ圧に切り替えるニップ圧調整機構と、現像モータと、を備える。
現像モータは、現像ローラと、離間機構と、ニップ圧調整機構を駆動する。
【0022】
このような構成によれば、現像モータで、現像ローラの駆動と、現像ローラの接触・離間と、定着器のニップ圧の切り替えを行うことができる。これにより、現像ローラの駆動と、現像ローラの接触・離間と、定着器のニップ圧の切り替えを1つのモータで行うことができる。
【0023】
前記した画像形成装置は、感光ドラム上に形成されたトナー像をシートに転写するベルトユニットと、プロセスモータと、をさらに備え、プロセスモータは、感光ドラムとベルトユニットを駆動する構成とすることができる。
【0024】
前記した画像形成装置は、定着モータをさらに備え、定着モータは、加熱部を駆動する構成とすることができる。
【0025】
前記した画像形成装置において、現像モータは、正逆回転可能であり、現像ローラは、現像モータが正回転した場合に現像モータからの駆動力により駆動し、離間機構は、現像モータが正回転した場合に現像モータからの駆動力により現像ローラを接触位置と離間位置との間で移動させ、ニップ圧調整機構は、現像モータが正回転した場合にニップ圧を第1ニップ圧から第2ニップ圧に切り替え、現像モータが逆回転した場合にニップ圧を第2ニップ圧から第1ニップ圧に切り替える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、現像ローラの回転と、現像ローラの接触・離間と、定着器のニップ圧の切り替えを1つのモータで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】支持部材、カムおよびカムフォロワの斜視図である。
図3】現像カートリッジの斜視図(a)と、側面図(b)である。
図4】スライド部材を説明する、現像カートリッジの周辺を上から見た模式図であり、カムフォロワが待機位置に位置するとき(a)と作動位置に位置するとき(b)を示す。
図5】支持部材のサイドフレームの内面(現像カートリッジ側)を示す図である。
図6】画像形成装置の駆動系を示すブロック図である。
図7】駆動伝達機構を左上から見た斜視図である。
図8】駆動伝達機構を軸方向に沿って左側から見た図である。
図9】駆動伝達機構を右上から見た斜視図である。
図10】駆動伝達機構を軸方向に沿って右側から見た図である。
図11】クラッチをサンギヤ側から見た分解斜視図(a)と、キャリア側から見た分解斜視図(b)である。
図12】現像ローラが接触位置にあり、クラッチが伝達状態にあるときの離間機構と、レバーと、クラッチと、カップリングギヤとを示す、軸方向から見た図(a)と斜視図(b)である。
図13図12の状態からカムが回転し、イエローに対応する現像ローラが接触位置で画像形成しているときの、離間機構と、レバーと、クラッチと、カップリングギヤとを示す、軸方向から見た図(a)と斜視図(b)である。
図14図13の状態からカムが回転し、現像ローラが離間位置にあり、クラッチが伝達状態にあるときの離間機構と、レバーと、クラッチと、カップリングギヤとを示す、軸方向から見た図(a)と斜視図(b)である。
図15図14の状態からカムが回転し、現像ローラが離間位置にあり、クラッチが切断状態にあるときの離間機構と、レバーと、クラッチと、カップリングギヤとを示す、軸方向から見た図(a)と斜視図(b)である。
図16図15の状態からカムが回転し、イエローに対応する現像ローラが接触位置に移動し始める直前の状態で一時停止しているときの、離間機構と、レバーと、クラッチと、カップリングギヤとを示す、軸方向から見た図(a)と斜視図(b)である。
図17】定着器と第2カムを示す図であり、強ニップ圧の状態を示す図(a)と、弱ニップ圧の状態を示す図(b)と、ゼロニップ圧の状態を示す図(c)である。
図18】印刷ジョブを受信したときの処理の一例を示すフローチャートである。
図19】カラー印刷をする場合の処理の一例を示すフローチャートである。
図20】カラー印刷をする場合の各センサの出力に基づくYMCクラッチとKクラッチの制御を説明するタイミングチャートである。
図21】カラー印刷をする場合の、カム、離間センサおよび各色の現像ローラの動作を説明するタイミングチャートである。
図22】モノクロ印刷をする場合の処理の一例を示すフローチャートである。
図23】モノクロ印刷をする場合の各センサの出力に基づくKクラッチの制御とブラックの現像ローラの動作を説明するタイミングチャートである。
図24】カラー印刷をする場合の、現像ローラの離間・接触の動作を説明する図(a)~(d)である。
図25】カラー印刷をする場合の、現像ローラの離間・接触の動作を説明する、図24に続く図(a)~(d)である。
図26】モノクロ印刷をする場合の、現像ローラの離間・接触の動作を説明する図(a)~(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、実施形態に係る画像形成装置1は、カラープリンタであり、本体筐体10内に、シート供給部20と、画像形成部30と、制御部2とを主に備えている。
【0029】
シート供給部20は、本体筐体10内の下部に設けられ、シートSを収容するシートトレイ21と、シートトレイ21からシートSを画像形成部30に供給する供給機構22とを備えている。シートトレイ21は本体筐体10から図1の左側に引き出して取り外し可能に構成されている。供給機構22は、本体筐体10内の前部に設けられ、給紙ローラ23と、分離ローラ24と、分離パッド25と、レジストレーションローラ27とを備えている。なお、本明細書において、便宜上、前後等の方向は、シートトレイ21が引き出される図1の左を前として説明する。すなわち、図1の左側を前、右側を後、上下をそのまま上下とし、図1の紙面手前側を右、紙面奥側を左とする。本明細書のシートSは、画像形成装置1が画像を形成することができる媒体であって、普通紙、封筒、葉書、薄紙、厚紙、光沢紙、樹脂シート、シール等を含む。
【0030】
シート供給部20では、シートトレイ21内のシートSが給紙ローラ23により送り出された後、分離ローラ24と分離パッド25との間でシートSが1枚ずつに分離される。その後、シートSは、回転が停止した状態のレジストレーションローラ27によって先端位置が規制された後、レジストレーションローラ27が回転することで画像形成部30に供給される。シートSの搬送方向における分離ローラ24の下流側には、シートSの通過を検知する給紙センサ28Aが設けられている。シートSの搬送方向におけるレジストレーションローラ27の上流側には、シートSと接触して、シートSの通過を検知するレジ前センサ28Bが配置されている。シートSの搬送方向におけるレジストレーションローラ27の下流側には、レジ後センサ28Cが配置されている。
【0031】
画像形成部30は、露光装置40と、複数の感光ドラム50と、複数の現像カートリッジ60と、ベルトユニット70と、定着器80とを備えている。
【0032】
露光装置40は、図示しないレーザダイオード、偏向器、レンズおよびミラーを有している。露光装置40は、複数の感光ドラム50を露光する複数のレーザ光を発して、感光ドラム50の表面を走査するように構成されている。
【0033】
感光ドラム50は、第1色の一例であるイエローに対応した第1感光ドラム50Yと、第2色の一例であるマゼンタに対応した第2感光ドラム50Mと、第3色の一例であるシアンに対応した第3感光ドラム50Cと、第4色の一例であるブラックに対応した第4感光ドラム50Kとを含む。なお、本明細書および図面において、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色に対応して設けられている部材には、色を区別して示す場合に、それぞれ、Y,M,C,Kを付して示す。一方、色を区別しないで説明する場合には、符号にY,M,C,Kを付さず、名称も第1、第2などを省略する。
【0034】
現像カートリッジ60は、各感光ドラム50に対応して設けられている。具体的には、現像カートリッジ60は、第1感光ドラム50Yにトナーを供給する第1現像ローラ61Yを有する第1現像カートリッジ60Yと、第2感光ドラム50Mにトナーを供給する第2現像ローラ61Mを有する第2現像カートリッジ60Mと、第3感光ドラム50Cにトナーを供給する第3現像ローラ61Cを有する第3現像カートリッジ60Cと、第4感光ドラム50Kにトナーを供給する第4現像ローラ61Kを有する第4現像カートリッジ60Kとを含む。
【0035】
第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kは、シートSの移動方向の上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。
【0036】
各現像カートリッジ60は、図1に実線で示した、現像ローラ61が対応する感光ドラム50に接触する接触位置にある位置と、図1に仮想線で示した、現像ローラ61が対応する感光ドラム50から離間する離間位置にある位置との間で移動可能である。そして、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kが、離間位置にある場合に、第2現像カートリッジ60M、第3現像カートリッジ60Cおよび第4現像カートリッジ60Kは、シートSの移動方向の上流側に隣接する感光ドラム50を露光するレーザ光の光路と重なる。具体的には、第2現像カートリッジ60Mは、第2現像ローラ61Mが離間位置にある場合において、第1感光ドラム50Yを露光するレーザ光の光路と重なり、第3現像カートリッジ60Cは、第3現像ローラ61Cが離間位置にある場合において、第2感光ドラム50Mを露光するレーザ光の光路と重なり、第4現像カートリッジ60Kは、第4現像ローラ61Kが離間位置にある場合において、第3感光ドラム50Cを露光するレーザ光の光路と重なる。
【0037】
図2に示すように、感光ドラム50は、支持部材90に回転可能に支持されている。また、支持部材90は、第1現像カートリッジ60Y、第2現像カートリッジ60M、第3現像カートリッジ60Cおよび第4現像カートリッジ60Kを着脱可能に支持する。支持部材90は、本体筐体10のフロントカバー11(図1参照)を開くことで形成される開口から、本体筐体10に対して着脱可能である。支持部材90は、感光ドラム50の軸方向に離れて配置された一対のサイドフレーム91と、一対のサイドフレーム91の前部同士を連結する連結フレーム92と、一対のサイドフレーム91の後部同士を連結する連結フレーム93とを備える。一対のサイドフレーム91は、右側のサイドフレーム91Rと、左側のサイドフレーム91Lとを含む。支持部材90には、各感光ドラム50に対向して配置された、感光ドラム50を帯電させるための帯電器52(図1参照)が設けられている。
【0038】
画像形成装置1は、複数の現像ローラ61を、複数の感光ドラム50のうち対応する感光ドラム50に接触する接触位置と、当該感光ドラム50から離間した離間位置との間で移動させる離間機構5を有する。離間機構5は、正逆回転可能な現像モータ3D(図8参照)が正回転した場合に現像モータ3Dからの駆動力により現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させるように構成されている。
【0039】
具体的に、離間機構5は、現像ローラ61の回転軸線61X(図1参照)と平行な軸周りに回転する第1カム150(150Y,150M,150C,150K)と、カムフォロワ170とを有する。
第1カム150は、現像ローラ61の位置を制御するためのカムであり、現像モータ3Dから駆動力を受けることで所定の回転方向に回転する。第1カム150は、現像ローラ61の回転軸線方向(以下、単に「回転軸線方向」という。)に突出する第1カム部152Aを有する。
【0040】
カムフォロワ170は、第1カム150の第1カム部152Aの端面であるカム面152Fに接触して、図4(b)に示す、現像ローラ61を離間位置に位置させる作動位置と、図4(a)に示す、現像ローラ61を接触位置に位置させる待機位置との間で移動可能である。カムフォロワ170は、第1カム150の第1カム部152Aと接触して回転軸線方向にスライド移動して作動位置に位置し、第1現像カートリッジ60Y、第2現像カートリッジ60M、第3現像カートリッジ60Cおよび第4現像カートリッジ60Kのいずれかを押圧する。また、カムフォロワ170は待機位置において、現像カートリッジ60から離間する。
【0041】
図2に戻り、第1カム150と、カムフォロワ170とは、各現像カートリッジ60に対応して設けられている。第1カム150およびカムフォロワ170は、左側のサイドフレーム91Lの左右方向外側に配置されている。第1カム150とカムフォロワ170の詳細な構造については後述する。
【0042】
支持部材90は、サイドフレーム91R,91Lの上部に、後述するスライド部材64に当接する被当接部94が設けられている。被当接部94は、例えば、感光ドラム50の軸方向と平行な第1方向と、感光ドラム50が並ぶ第2方向との両方に直交する第3方向(上下方向)に沿った軸回りに回転可能なローラからなる。
【0043】
また、支持部材90は、各現像カートリッジ60に対応して設けられた、押圧部材95を備えている。押圧部材95は、各現像カートリッジ60ごとに、感光ドラム50の軸方向の両端部に設けられている。押圧部材95は、バネ95A(図4(a),(b)参照)により後方へ向けて付勢されており、支持部材90に現像カートリッジ60が装着されると、現像カートリッジ60の突起63Dを押圧して、現像ローラ61を対応する感光ドラム50に圧接させるようになっている。
【0044】
図3(a),(b)に示すように、現像カートリッジ60(60Y,60M,60C,60K)は、トナーを収容するケース63と、スライド部材64と、カップリング65を有する。
【0045】
ケース63は、一方の側面に、回転軸線方向に突出する突出部として、第1突出部63Aおよび第2突出部63Bを有する。
第1突出部63Aは、現像ローラ61の回転軸線61Xと同軸に配置され、回転軸線方向に突出している。
第2突出部63Bは、第1突出部63Aから所定距離離れて配置されている。本実施形態では、第2突出部63Bは、第1突出部63Aの上方に配置されている。
第1突出部63Aおよび第2突出部63Bは、ともに、回転軸線方向に平行な軸線周りに回転可能なローラである。
図示は省略するが、ケース63は、他方の側面にも、一方の側面と対称な位置に第1突出部63Aと第2突出部63Bが設けられている。
【0046】
また、ケース63は、前側の面の上部に、押圧部材95により押圧される突起63Dを有している。突起63Dは、ケース63の、回転軸線方向における両端部に設けられている。
【0047】
カップリング65は、後述するカップリング軸119と係合して、カップリング軸119から回転駆動力が入力される。
【0048】
スライド部材64は、ケース63に対して回転軸線方向にスライド移動可能な部材である。スライド部材64は、カムフォロワ170に押圧されることで回転軸線方向にスライド移動可能である。
【0049】
図4(a),(b)に示すように、スライド部材64は、シャフト181と、第1当接部材182と、第2当接部材183とを備える。第1当接部材182は、シャフト181の一端に固定され、第2当接部材183は、シャフト181の他端に固定されている。
【0050】
シャフト181は、ケース63に形成された、回転軸線方向に延びる孔に貫通して配置され、ケース63にスライド移動可能に支持されている。
【0051】
第1当接部材182は、回転軸線方向における端面である押圧面182Aと、回転軸線方向に対して傾斜した斜面182Bとを有する。
押圧面182Aは、カムフォロワ170により押圧される面である。
斜面182Bは、スライド部材64がカムフォロワ170により回転軸線方向に押圧された場合に、支持部材90の被当接部94に当接して、現像カートリッジ60(60Y,60M,60C,60K)を回転軸線方向に直交する方向、具体的には、シートSの移動方向に平行な方向に向けて付勢し、現像カートリッジ60を移動させる(図4(b)参照)。斜面182Bは、シャフト181の一端から他端に向かうにつれて、第2方向における感光ドラム50から対応する現像ローラ61に向かう方向(前方)に位置するように傾斜している。
【0052】
第2当接部材183は、第1当接部材182の斜面182Bと同様に傾斜した斜面183Bを有している。斜面183Bもスライド部材64がカムフォロワ170により回転軸線方向に押圧された場合に、支持部材90の被当接部94に当接して、現像カートリッジ60(60Y,60M,60C,60K)をシートSの移動方向に平行な方向へ向けて付勢し、現像カートリッジ60を移動させる(図4(b)参照)。
【0053】
第1当接部材182とケース63の間には、スライド部材64を回転軸線方向の一方、ここでは、左側に向けて付勢するバネ184が配置されている。バネ184は、圧縮コイルバネであり、コイル内にシャフト181が通るようにシャフト181の外側に配置されている。
【0054】
図5に示すように、支持部材90は、一方のサイドフレーム91Lの内側の面に、支持面としての第1支持面96Aおよび第2支持面96Bを有する。第1支持面96Aおよび第2支持面96Bは、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kが接触位置から離間位置に移動するときに、第1突出部63Aおよび第2突出部63Bをそれぞれ下から支持する。第1支持面96Aおよび第2支持面96Bは、シートSの移動方向に延びている。
第1支持面96Aは、第1突出部63Aを支持するように配置されている。第1支持面96Aは、現像カートリッジ60を支持部材90に装着するときの現像ローラ61の案内と上下方向の位置決めの機能を兼ねている。
第2支持面96Bは、第2突出部63Bを支持するように第1支持面96Aの上方に配置されている。
図示は省略するが、支持部材90は、他方のサイドフレーム91Rの内側の面にも、一方のサイドフレーム91Lと左右対称な第1支持面96Aおよび第2支持面96Bを有している。
【0055】
現像ローラ61が感光ドラム50に接触する接触位置に位置するとき、図5の第1現像カートリッジ60Y、第2現像カートリッジ60Mおよび第3現像カートリッジ60Cのように第1突出部63Aが第1支持面96Aにおける後寄りに位置する。一方、現像ローラ61が感光ドラム50から離間する離間位置に位置するとき、図5の第4現像カートリッジ60Kのように第1突出部63Aが第1支持面96Aにおける前寄りに位置する。
このようにして、離間機構5は、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kを、接触位置から離間位置に移動させるときに、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kを、シートSの移動方向の下流側から上流側へ向けて移動させる。
【0056】
図12(a),(b)に示すように、第1カム150は、円板部151と、ギヤ部150Gと、端面カム152と、クラッチ制御カム153とを有する。第1カム150は、回転することにより、対応する現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させる部材である。
【0057】
円板部151は、略円板形状を有し、支持プレート102(図9参照)に回転可能に支持されている。
ギヤ部150Gは、円板部151の外周に形成されている。
端面カム152は、現像ローラ61の離間機構5を構成する、円板部151から突出した部分である第1カム部152Aを有する。端面カム152は、回転軸線方向における端面にカム面152Fを有する。
カム面152Fは、第1保持面F1と、第2保持面F2と、第1案内面F3と、第2案内面F4とを有する。
第1保持面F1は、カムフォロワ170を待機位置に保持する。
第2保持面F2は、カムフォロワ170を作動位置に保持する。
第1案内面F3は、第1保持面F1と第2保持面F2を繋ぐ、第1保持面F1に対して傾斜した面である。第1案内面F3は、第1カム150が回転するにつれてカムフォロワ170を第1保持面F1から前記第2保持面F2に案内する。
第2案内面F4は、第2保持面F2と第1保持面F1を繋ぐ、第1保持面F1に対して傾斜した面である。第2案内面F4は、第1カム150が回転するにつれてカムフォロワ170を第2保持面F2から第1保持面F1に案内する。
【0058】
クラッチ制御カム153は、レバー160と協働してクラッチ120の伝達・切断を切り換える部分である。クラッチ制御カム153は、円柱形状のベース円部153Aと、ベース円部153Aから第1カム150の直径方向に突出した第2カム部153Bとを有する。クラッチ制御カム153は、円板部151と一体に形成されている。このため、第2カム部153Bは、第1カム150とともに回転する。
【0059】
カムフォロワ170は、スライド軸部171と、接触部172とを有する。
スライド軸部171は、本体筐体10に固定された図示しない軸部にスライド移動可能に支持されて、回転軸線方向にスライド移動可能である。スライド軸部171は、付勢部材であるバネ173により、接触部172が第1カム150のカム面152Fに接触する方向に付勢されている。これにより、カムフォロワ170は、待機位置に向けて付勢されている。バネ173は、引張コイルバネであり、一端がスライド軸部171に掛止され、他端が本体筐体10内に設けられた図示しないバネ取付部に掛止されている。
接触部172は、スライド軸部171から延出して設けられている。接触部172の、回転軸線方向の端面は、カム面152Fに対向し、カム面152Fに接触可能である。
【0060】
図9に示すように、各第1カム150Y,150M,150C,150Kは、第1カム部152Aの第1カム150の回転方向の長さが第1カム150Yだけが他よりも長い点が異なるだけで、他の構成はほぼ同じである。
各第1カム150C,150Kは、第1カム部152Aよりも回転中心に近い位置に、円板部151から軸方向に突出する被検出部154を有する。本体筐体10には、ブラックとシアンに対応して離間センサ4K,4Cが設けられている。
離間センサ4K,4Cは、第1カム150C,150Kの位相を検知する位相センサである。離間センサ4K,4Cは、第1カム150C,150Kが、第3現像ローラ61C、第4現像ローラ61Kが離間位置にある所定の位相範囲に位置する場合に離間信号を出力し、第1カム150C,150Kが所定の位相範囲に位置しない場合に離間信号を出力しない。本実施形態においては、便宜上、離間信号を出力する場合をONと呼び、離間信号を出力しない場合をOFFと呼ぶ。離間信号を出力する場合と出力しない場合は、どちらの電圧が高くても構わない。
【0061】
離間センサ4K,4Cは、検出光を発する発光部4Pと、発光部4Pからの検出光を受光可能な受光部4Rを有する。離間センサ4K,4Cは、発光部4Pと受光部4Rの間に被検出部154が入って発光部4Pの検出光を遮り、受光部4Rが検出光を受光しないときに、ON信号を制御部2に出力し、発光部4Pと受光部4Rの間から被検出部154から外れて受光部4Rが発光部4Pの検出光を受光したときに、OFF信号を制御部2に出力する。なお、第1カム150Y,150Mにも被検出部154と同様の形状が設けられているが、第1カム150Y,150Mに対応する離間センサは設けられていないので、これらは、被検出部としては機能しない。
【0062】
図1に戻り、ベルトユニット70は、シートトレイ21と感光ドラム50との間に設けられている。ベルトユニット70は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、無端状のベルトからなる搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを備えている。搬送ベルト73は、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に張設され、外側の面が各感光ドラム50に対向配置されている。各転写ローラ74は、各感光ドラム50との間で搬送ベルト73を挟持するように搬送ベルト73の内側に配置されている。ベルトユニット70は、上側の外周面にシートSを載せた状態で搬送ベルト73を移動させることでシートSを搬送し、このときに、複数の感光ドラム50上に形成されたトナー像をシートSに転写する。
【0063】
定着器80は、感光ドラム50およびベルトユニット70の後方に設けられている。定着器80は、加熱部の一例である加熱ローラ81と、加熱ローラ81に対向して配置され、加熱ローラ81との間でシートSを挟む加圧部の一例である加圧ローラ82とを有している。シートSの搬送方向における定着器80の下流側には、シートSの通過を検出する排紙センサ28Dが設けられている。定着器80の上方には搬送ローラ15が設けられ、搬送ローラ15の上方には排出ローラ16が設けられている。
【0064】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム50の表面が、帯電器52により一様に帯電された後、各露光装置40から照射される光により露光される。これにより、各感光ドラム50上に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0065】
また、ケース63内のトナーは現像ローラ61の表面に担持され、現像ローラ61が感光ドラム50に対向して接触するときに、感光ドラム50上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム50上でトナー像が形成される。
【0066】
次に、搬送ベルト73上に供給されたシートSが各感光ドラム50と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム50上に形成されたトナー像がシートS上に転写される。そして、シートSが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、シートS上に転写されたトナー像がシートSに熱定着される。
【0067】
定着器80から排出されたシートSは、搬送ローラ15および排出ローラ16によって本体筐体10の上面の排紙トレイ13に蓄積される。
【0068】
画像形成装置1は、図6に示すように、正逆回転可能である現像モータ3Dと、プロセスモータ3Pと、定着モータ3Fと、現像モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達する駆動伝達機構100と、加熱ローラ81と加圧ローラ82のニップ圧を切り替えるニップ圧調整機構200とを備えている。現像モータ3Dは、現像ローラ61と、離間機構5と、ニップ圧調整機構200を駆動する。また、プロセスモータ3Pは、感光ドラム50と、ベルトユニット70の駆動ローラ71を駆動する。また、定着モータ3Fは、加熱ローラ81を駆動する。なお、本実施形態においては、現像モータ3Dが「モータ」に相当する。
【0069】
次に、現像ローラ61を駆動・停止するための構成と、現像ローラ61を感光ドラム50に対して接触・離間させるように動かすための構成の詳細について説明する。
図7図8に示すように、駆動伝達機構100は、前記した離間機構5の一部である第1カム150と機械的に接続されている。駆動伝達機構100は、現像ローラ61が接触位置にある場合であって現像モータ3Dが正回転した場合に現像モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達し、現像ローラ61が離間位置にある場合に現像モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達しないように構成されている。このため、現像ローラ61は、接触位置にある場合であって現像モータ3Dが正回転した場合に現像モータ3Dからの駆動力により回転駆動する。また、駆動伝達機構100は、現像モータ3Dの駆動力を離間機構5とニップ圧調整機構200の両方にも伝達するように構成されている。
【0070】
駆動伝達機構100は、図8に、現像モータ3Dの駆動力を現像ローラ61に伝達するための駆動伝達ギヤ列100Dを含んでなり、駆動伝達ギヤ列100Dの駆動力の伝達を制御するための駆動制御ギヤ列100Cと機械的に接続されている。また、駆動伝達ギヤ列100Dは、ニップ圧調整機構200(図10参照)への駆動力の伝達を制御するためのニップ圧制御ギヤ列100Eと機械的に接続されている。図8図10において、駆動伝達ギヤ列100Dの各ギヤ同士の噛み合いは、太い実線で示し、駆動制御ギヤ列100Cおよびニップ圧制御ギヤ列100Eの各ギヤ同士の噛み合いは、太い破線で示す。
【0071】
駆動伝達ギヤ列100Dは、2つの第1アイドルギヤ110(110A,110B)と、3つの第2アイドルギヤ113A,113B,113Cと、第3アイドルギヤ115(115Y,115M,115C,115K)と、4つのクラッチ120(120Y,120M,120C,120K)と、4つのカップリングギヤ117(117Y,117M,117C,117K)とを含んでなる。駆動伝達ギヤ列100Dを構成する各ギヤは、支持プレート102または図示しないフレームに支持されており、感光ドラム50の軸方向に平行な回転軸周りに回転可能である。
【0072】
現像モータ3Dは、回転駆動する出力軸3Aを有している。出力軸3Aには、図示しないギヤが設けられている。
【0073】
図7に示すように、第1アイドルギヤ110は、大径ギヤ110Lと、大径ギヤ110Lよりも歯数が少ない小径ギヤ110Sとを備える2段ギヤである。大径ギヤ110Lと小径ギヤ110Sは一体に回転する。2つの第1アイドルギヤ110は、出力軸3Aの前側に配置された第1アイドルギヤ110Aと、出力軸3Aの後側に配置された第1アイドルギヤ110Bとを含む。各第1アイドルギヤ110の小径ギヤ110Sは、出力軸3Aのギヤと噛み合っている。
【0074】
図8に示すように、第2アイドルギヤ113Aは、前側に配置された一方の第1アイドルギヤ110の小径ギヤ110Sと噛み合っている。
第2アイドルギヤ113Bは、後側に配置された他方の第1アイドルギヤ110の小径ギヤ110Sと噛み合っている。
【0075】
第3アイドルギヤ115Y,115M,115C,115Kは、各色に対応して設けられ、前から後ろに向かってこの順に配置されている。
第3アイドルギヤ115Y,115Mは、それぞれ、第2アイドルギヤ113Aと噛み合っている。
第3アイドルギヤ115Cは、第2アイドルギヤ113Bと噛み合っている。
第3アイドルギヤ115Cと第3アイドルギヤ115Kは、それぞれ、第2アイドルギヤ113Cと噛み合っている。これにより第3アイドルギヤ115Kは、第3アイドルギヤ115Cから第2アイドルギヤ113Cを介して駆動力を受ける。
【0076】
4つのクラッチ120Y,120M,120C,120Kは、それぞれ同じ構成を有している。各クラッチ120Y,120M,120C,120Kは、第3アイドルギヤ115Y,115M,115C,115Kの一つと噛み合って、第3アイドルギヤ115から駆動力を受ける。クラッチ120の構成については後述する。
【0077】
各カップリングギヤ117は、クラッチ120の一つと噛み合っている。各カップリングギヤ117は、同軸で一体に回転するカップリング軸119を有している(図7参照)。カップリング軸119は、フロントカバー11の開閉に連動して軸方向に移動可能に構成され、フロントカバー11を閉めると現像カートリッジ60のカップリング65(図3(a)参照)と係合する。
【0078】
このような駆動伝達ギヤ列100Dにより、イエローのカップリングギヤ117Yは、現像モータ3Dから、第1アイドルギヤ110A、第2アイドルギヤ113A、第3アイドルギヤ115Yおよびクラッチ120Yを介して駆動力が伝達される。
また、マゼンタのカップリングギヤ117Mは、現像モータ3Dから、第1アイドルギヤ110A、第2アイドルギヤ113A、第3アイドルギヤ115Mおよびクラッチ120Mを介して駆動力が伝達される。
また、シアンのカップリングギヤ117Cは、現像モータ3Dから、第1アイドルギヤ110B、第2アイドルギヤ113B、第3アイドルギヤ115Cおよびクラッチ120Cを介して駆動力が伝達される。
また、ブラックのカップリングギヤ117Kは、現像モータ3Dから、第1アイドルギヤ110B、第2アイドルギヤ113B、第3アイドルギヤ115C、第2アイドルギヤ113C、第3アイドルギヤ115Kおよびクラッチ120Kを介して駆動力が伝達される。
【0079】
図9図10に示すように、駆動制御ギヤ列100Cは、2つの第4アイドルギヤ131(131A,131B)と、2つの第5アイドルギヤ132(132A,132B)と、第1切替機構の一例であるYMCクラッチ140AおよびKクラッチ140Kと、2つの第6アイドルギヤ133(133A,133B)と、第7アイドルギヤ134と、第8アイドルギヤ135と、第9アイドルギヤ136と、第10アイドルギヤ137と、第1カム150(150Y,150M,150C,150K)とを含んでなる。駆動制御ギヤ列100Cを構成する各ギヤは、支持プレート102または図示しないフレームに支持されており、感光ドラム50の軸方向に平行な回転軸周りに回転可能である。
【0080】
第4アイドルギヤ131は、大径ギヤ131Lと、大径ギヤ131Lよりも歯数が少ない小径ギヤ131Sとを備える2段ギヤである(図9参照)。大径ギヤ131Lと小径ギヤ131Sは一体に回転する。2つの第4アイドルギヤ131は、第1アイドルギヤ110Aの前側に配置された第4アイドルギヤ131Aと、第1アイドルギヤ110Bの後側に配置された第4アイドルギヤ131Bとを含む。各第4アイドルギヤ131の大径ギヤ131Lは、第1アイドルギヤ110の小径ギヤ110Sと噛み合っている。
【0081】
2つの第5アイドルギヤ132は、第4アイドルギヤ131Aの前側に配置された第5アイドルギヤ132Aと、第4アイドルギヤ131Bの後側に配置された第5アイドルギヤ132Bとを含む。各第5アイドルギヤ132A,132Bは、第4アイドルギヤ131A,131Bの小径ギヤ131Sと噛み合っている。
【0082】
YMCクラッチ140Aは、イエロー、マゼンタおよびシアンの第1カム150に駆動力を伝達する系列の駆動制御ギヤ列100Cの、駆動力の伝達・切断を切り換える。すなわち、YMCクラッチ140Aは、第1カム150Y,150M,150Cの回転・停止を切り替え可能である。具体的には、YMCクラッチ140Aは、現像モータ3Dからの駆動力を第1カム150Y,150M,150Cに伝達する状態と、現像モータ3Dからの駆動力を第1カム150Y,150M,150Cに伝達しない状態とを切り替えて、第1カム150Y,150M,150Cの回転と停止を切り替える。
【0083】
YMCクラッチ140Aは、大径ギヤ140Lと、大径ギヤ140Lよりも歯数が少ない小径ギヤ140Sとを備える。YMCクラッチ140Aは、第5アイドルギヤ132Aの前側に配置され、大径ギヤ140Lが第5アイドルギヤ132Aと噛み合っている。
YMCクラッチ140Aは、例えば、電磁クラッチであり、通電すること(ONとする)により、大径ギヤ140Lと小径ギヤ140Sが一体に回転し、通電を止めると(OFFとする)、大径ギヤ140Lが空転して小径ギヤ140Sが回転しない。
【0084】
Kクラッチ140Kは、YMCクラッチ140Aと同じ構成を有している。Kクラッチ140Kは、ブラックの第1カム150に駆動力を伝達する系列の駆動制御ギヤ列100Cの、駆動力の伝達・切断を切り換える。すなわち、Kクラッチ140Kは、第1カム150Kの回転・停止を切り替え可能である。具体的には、Kクラッチ140Kは、現像モータ3Dからの駆動力を第1カム150Kに伝達する状態と、現像モータ3Dからの駆動力を第1カム150Kに伝達しない状態とを切り替えて、第1カム150Kの回転と停止を切り替える。Kクラッチ140Kは、大径ギヤ140Lと、大径ギヤ140Lよりも歯数が少ない小径ギヤ140Sとを備える。Kクラッチ140Kは、第5アイドルギヤ132Bの後側に配置され、大径ギヤ140Lが第5アイドルギヤ132Bと噛み合っている。
【0085】
第6アイドルギヤ133は、大径ギヤ133Lと、大径ギヤ133Lよりも歯数が少ない小径ギヤ133Sとを備える2段ギヤである(図7参照)。大径ギヤ133Lと小径ギヤ133Sは一体に回転する。2つの第6アイドルギヤ133は、YMCクラッチ140Aの前側に配置された第6アイドルギヤ133Aと、Kクラッチ140Kの後側に配置された第6アイドルギヤ133Bとを含む。各第6アイドルギヤ133の大径ギヤ133Lは、YMCクラッチ140AまたはKクラッチ140Kの小径ギヤ140Sと噛み合っている。
【0086】
第7アイドルギヤ134は、第6アイドルギヤ133Aと第1カム150Yの間に配置されている。第7アイドルギヤ134は、第6アイドルギヤ133Aの小径ギヤ133S(図7参照)と、第1カム150Yのギヤ部150Gとに噛み合っている。
【0087】
第8アイドルギヤ135は、第1カム150Yと第1カム150Mの間に配置されている。第8アイドルギヤ135は、第1カム150Yのギヤ部150Gと第1カム150Mのギヤ部150Gとに噛み合っている。
【0088】
第9アイドルギヤ136は、第1カム150Mと第1カム150Cの間に配置されている。第9アイドルギヤ136は、第1カム150Mのギヤ部150Gと第1カム150Cのギヤ部150Gとに噛み合っている。
【0089】
第10アイドルギヤ137は、第6アイドルギヤ133Bと第1カム150Kの間に配置されている。第10アイドルギヤ137は、第6アイドルギヤ133Bの小径ギヤ133S(図7参照)と、第1カム150Yのギヤ部150Gとに噛み合っている。
【0090】
このような駆動制御ギヤ列100Cにより、イエローの第1カム150Yは、現像モータ3Dから、第1アイドルギヤ110A、第4アイドルギヤ131A、第5アイドルギヤ132A、YMCクラッチ140A、第6アイドルギヤ133Aおよび第7アイドルギヤ134を介して駆動力が伝達される。
また、マゼンタの第1カム150Mは、イエローの第1カム150Yから、第8アイドルギヤ135を介して駆動力が伝達される。
また、シアンの第1カム150Cは、マゼンタの第1カム150Mから、第9アイドルギヤ136を介して駆動力が伝達される。
そして、YMCクラッチ140Aに通電することにより、第1カム150Y,150M,150Cは同時に回転し、YMCクラッチ140Aの通電を止めることにより、第1カム150Y,150M,150Cは、ともに停止する。
【0091】
一方、ブラックの第1カム150Kは、現像モータ3Dから、第1アイドルギヤ110B、第4アイドルギヤ131B、第5アイドルギヤ132B、Kクラッチ140K、第6アイドルギヤ133Bおよび第10アイドルギヤ137を介して駆動力が伝達される。
そして、Kクラッチ140Kに通電することにより、第1カム150Kは回転し、Kクラッチ140Kの通電を止めることにより、第1カム150Kは停止する。
【0092】
ここで、クラッチ120の構成とその機能について説明する。
図11(a),(b)に示すように、クラッチ120は、遊星歯車機構を有してなる。クラッチ120は、現像モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達する伝達状態と、現像モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達しない切断状態とで切り替え可能に構成されている。具体的に、クラッチ120は、一つの軸を中心に回転可能な要素であるサンギヤ121、リングギヤ122およびキャリア123と、キャリア123に支持されるプラネタリギヤ124とを備えて構成されている。
【0093】
サンギヤ121は、ギヤ部121Aと一体に回転する円板部121Bと、円板部121Bの外周に設けられた複数の爪部121Cとを有する。爪部121Cは、尖った先端を有し、この尖った先端が周方向において、一方の回転方向に傾いている。
リングギヤ122は、内周面に設けられたインナーギヤ122Aと、外周面に設けられた入力ギヤ122Bとを有する。
【0094】
キャリア123は、プラネタリギヤ124を回転可能に支持する4つの軸部123Aを有する。また、キャリア123は、外周面に出力ギヤ123Bが設けられている。
【0095】
プラネタリギヤ124は、4つ設けられ、それぞれ、キャリア123の軸部123Aに回転可能に支持されている。プラネタリギヤ124は、サンギヤ121のギヤ部121Aに噛み合っているとともにリングギヤ122のインナーギヤ122Aに噛み合っている。
【0096】
クラッチ120は、入力ギヤ122Bが第3アイドルギヤ115と噛み合い、出力ギヤ123Bがカップリングギヤ117と噛み合っている(図7参照)。
そして、サンギヤ121が回転しないように止められた状態では、入力ギヤ122Bに入力された駆動力を出力ギヤ123Bに伝達できる伝達状態となる。
一方、サンギヤ121が回転できる状態では、入力ギヤ122Bに入力された駆動力を出力ギヤ123Bに伝達できない切断状態となる。
クラッチ120が切断状態かつ出力ギヤ123Bに負荷が掛かっている状態で入力ギヤ122Bに駆動力が入力された場合は、出力ギヤ123Bは回転せず、サンギヤ121が空転する。
【0097】
図10に示すように、駆動伝達機構100は、第1カム150に形成された第2カム部153Bと、レバー160とをさらに有する。レバー160は、支持プレート102に固定された支持軸102Aに揺動可能に支持されている。
レバー160は、第1カム150と協働することにより、遊星歯車機構の要素であるサンギヤ121、リングギヤ122およびキャリア123のうちの1つの要素であるサンギヤ121に係合してサンギヤ121が回転しないように規制し、クラッチ120を伝達状態とし、サンギヤ121から離脱してクラッチ120を切断状態とする機能を有する。
【0098】
具体的に、図12(a)に示すように、レバー160は、回転支持部161と、回転支持部161から延びる第1アーム162と、回転支持部161から第1アーム162と異なる方向に延びる第2アーム163とを有する。
【0099】
回転支持部161は、円筒形状を有し、その内側に支持プレート102の支持軸102Aが入って、支持軸102Aに支持されている。
【0100】
第2アーム163の先端は、クラッチ120の円板部121Bの外周面に向けて延びている。レバー160は、図示しないトーションスプリングにより先端がサンギヤ121(円板部121B)の外周面に向かうように付勢されている。第2アーム163は、先端にフック163Aを有する。フック163Aは、現像モータ3Dの正回転に伴って回転するサンギヤ121の外周面の爪部121Cに係合してサンギヤ121の回転を規制することが可能である。
【0101】
レバー160は、第1アーム162の先端部162Aが、第2カム部153Bと接触可能である。レバー160は、第1アーム162の先端部162Aがベース円部153Aと対向してフック163Aが遊星歯車機構の1つの要素であるサンギヤ121の爪部121Cに係合する係合位置と、第1アーム162の先端部162Aが第2カム部153Bと接触して押し動かされることで、フック163Aが遊星歯車機構の1つの要素であるサンギヤ121の爪部121Cから離脱する離脱位置とに移動可能である。レバー160は、第2カム部153Bから離間して係合位置に位置する場合にクラッチ120を伝達状態とし、第2カム部153Bに接触して離脱位置に位置する場合にクラッチ120を切断状態とする。
【0102】
この動作について、図12から図16を参照して説明する。なお、図12から図16に示した各部材は、イエローに対応する部材であるが、他の色についても、第1カム150の位相が異なるのみで、基本的な動作は同じである。
【0103】
図12(a),(b)に示すように、第1アーム162の先端部162Aは、第2カム部153Bから離間した後に、ベース円部153Aに対向する。すると、第2アーム163のフック163Aは、クラッチ120のサンギヤ121の爪部121Cと係合して、レバー160は係合位置に位置する。クラッチ120は、レバー160によりサンギヤ121の回転が止められるので、入力ギヤ122Bが回転させられたときに出力ギヤ123Bが回転する伝達状態となる。これにより、現像ローラ61には、正回転する現像モータ3Dからの駆動力が伝達可能となり、現像モータ3Dが正回転すると、駆動伝達ギヤ列100Dを介して現像ローラ61が回転する。また、カムフォロワ170は、接触部172の端面がカム面152Fの第1保持面F1に位置する。このため、スライド軸部171は、現像カートリッジ60のスライド部材64から離間している(図4(a)参照)。したがって、現像ローラ61は、接触位置に位置する。
【0104】
図13(a),(b)に示すように、図12(a),(b)の状態から第1カム150が回転すると、カムフォロワ170の接触部172が第1保持面F1上を滑り、第1案内面F3に近づく。4つある第1カム150のうち、特にイエローの第1カム150Yを現像ローラ61が接触位置にある状態で停止させる場合は、図13(a),(b)のような、接触部172が第1案内面F3に接する位置で停止させる。
【0105】
現像ローラ61を感光ドラム50から離間させるとき、第1カム150Yはさらに回転し、接触部172が第1案内面F3と摺動して第1案内面F3に押し動かされ、図14(a),(b)に示すように、接触部172が第2保持面F2に接触する。このとき、スライド軸部171は、現像カートリッジ60のスライド部材64を回転軸線方向に押し動かす。そして、現像カートリッジ60が支持部材90の反力によって前側に押し動かされる(図4(b)参照)。現像ローラ61は、接触部172が第1案内面F3の第2保持面F2に近い位置にあるときに感光ドラム50から離間する。接触部172が第2保持面F2に接触すると、現像ローラ61は離間位置に保持される。
【0106】
図15(a),(b)に示すように、現像ローラ61が離間位置に位置した後、第1カム150はさらに回転し、レバー160の第1アーム162の先端部162Aが第2カム部153Bに接触する。レバー160は、第1アーム162が第2カム部153Bに押し動かされることで揺動し、フック163Aがサンギヤ121の爪部121Cから外れて離脱位置に位置する。クラッチ120のサンギヤ121は、レバー160により回転が止められなくなるので、入力ギヤ122Bが回転させられたときに出力ギヤ123Bが駆動力を伝達しない切断状態となる。これにより、現像ローラ61には、現像モータ3Dからの駆動力が伝達不能となり、現像モータ3Dが回転しても、サンギヤ121が空転するだけで現像ローラ61は回転しない。
【0107】
現像ローラ61を離間位置に位置させて維持する場合、図15(a),(b)のようなレバー160が離脱位置にある位置で第1カム150が停止する。4つある第1カム150のうち、特にイエローの第1カム150Yを現像ローラ61を離間位置にある状態で一時停止させる場合は、図15(a),(b)の状態からさらに回転させる。そして、図16(a),(b)に示すように、接触部172が第2保持面F2のうち第2案内面F4側の端部(接触部172が第2案内面F4に接触する直前の位置)で一時停止させる。
【0108】
現像ローラ61を離間位置から接触位置に移動させる場合、図15(a),(b)または図16(a),(b)の状態から、第1カム150を回転させる。すると、接触部172は、第2案内面F4を摺動して図12に示すような第1保持面F1と対向する位置に位置する。これにより、スライド軸部171は、バネ173の付勢力によって回転軸線方向に動き、スライド部材64から離れる。スライド部材64は、図4(a)の位置に戻り、現像カートリッジ60は図1の実線の位置に戻る。これによって、現像ローラ61は、感光ドラム50に接触する。現像ローラ61は、接触部172が第2案内面F4の第2保持面F2に近い位置を通過したときに感光ドラム50に接触する(図16(b)参照)。
【0109】
そして、前記したように、レバー160がベース円部153Aと対向してサンギヤ121と係合する係合位置に位置することで、クラッチ120が伝達状態となる。
【0110】
本実施形態において、画像形成装置1は、シートSへのトナー像の転写時に、シートSの移動に合わせて、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kを接触位置に移動させ、トナー像の転写後に離間位置に順次移動させる。このため、第1カム150Y,150M,150Cは、第1カム部152Aの位相が所定角度ずつずれるように組み付けられている(図9参照)。より正確には、第1カム150M,150Cは、同じ部品が用いられ、第1カム150Yは、第1カム150M,150Cよりも第1カム部152Aの回転方向の長さが長い。そして、第1カム150Y,150M,150Cは、第1カム部152Aの回転方向の下流端の位相が所定角度ずつずれており、第1カム150Yと第1カム150Mは、第1カム部152Aの回転方向の上流端の位相が揃っている。
一方、第1カム150Kは、第1カム150M,150Cと同じ部品であり、制御部2により、第1カム150M,150Cよりも所定角度、位相が遅れて動作するように制御される。
【0111】
なお、レバー160は、遊星歯車機構の1つの要素であるサンギヤ121が現像モータ3Dの逆回転に伴って図12(a)に二点鎖線で示す矢印の方向(現像モータ3Dが正回転したときと逆の方向)に回転した場合には、フック163Aが爪部121Cと係合できないため、サンギヤ121の回転を規制しない。クラッチ120は、サンギヤ121の回転が止められない状態では、入力ギヤ122Bに入力された駆動力を出力ギヤ123Bに伝達できない切断状態となるので、レバー160は、現像モータ3Dが逆回転した場合にはクラッチ120を切断状態とする。このため、現像モータ3Dが逆回転した場合には、現像モータ3Dからの駆動力は現像ローラ61に伝達されない。
【0112】
図7図8に示すように、ニップ圧制御ギヤ列100Eは、第11アイドルギヤ191と、第12アイドルギヤ192と、第2切替機構の一例であるNクラッチ145と、第13アイドルギヤ193と、第14アイドルギヤ194とを含んでなる。ニップ圧制御ギヤ列100Eを構成する各ギヤは、図示しないフレームに支持されており、感光ドラム50の軸方向に平行な回転軸周りに回転可能である。
【0113】
第11アイドルギヤ191は、前側に配置された第3アイドルギヤ115Kと噛み合っている。ニップ圧制御ギヤ列100Eは、第3アイドルギヤ115Kから駆動力を受ける。
第12アイドルギヤ192は、第11アイドルギヤ191の上側に配置されている。第12アイドルギヤ192は、大径ギヤ192Lと、大径ギヤ192Lよりも歯数が少ない小径ギヤ192Sとを備える2段ギヤであり、大径ギヤ192Lと小径ギヤ192Sが一体に回転する。第12アイドルギヤ192の大径ギヤ192Lは、第11アイドルギヤ191と噛み合っている。
【0114】
Nクラッチ145は、ニップ圧調整機構200の後述する第2カム210(図17参照)に駆動力を伝達する系列のニップ圧制御ギヤ列100Eの、駆動力の伝達・切断を切り換える。すなわち、Nクラッチ145は、第2カム210の回転・停止を切り替え可能である。具体的には、Nクラッチ145は、現像モータ3Dからの駆動力を第2カム210に伝達する状態と、現像モータ3Dからの駆動力を第2カム210に伝達しない状態とを切り替えて、第2カム210の回転と停止を切り替える。
【0115】
Nクラッチ145は、大径ギヤ145Lと、大径ギヤ145Lよりも歯数が少ない小径ギヤ145Sとを備える。Nクラッチ145は、第12アイドルギヤ192の上側に配置され、大径ギヤ145Lが第12アイドルギヤ192の小径ギヤ192Sと噛み合っている。Nクラッチ145は、例えば、電磁クラッチであり、通電すること(ONとする)により、大径ギヤ145Lと小径ギヤ145Sが一体に回転し、通電を止めると(OFFとする)、大径ギヤ145Lが空転して小径ギヤ145Sが回転しない。
【0116】
図9図10に示すように、第13アイドルギヤ193は、第12アイドルギヤ192の後側であってNクラッチ145の下側に配置されている。第13アイドルギヤ193は、大径ギヤ193Lと、大径ギヤ193Lよりも歯数が少ない小径ギヤ193Sとを備える2段ギヤであり、大径ギヤ193Lと小径ギヤ193Sが一体に回転する。第13アイドルギヤ193の大径ギヤ193Lは、Nクラッチ145の小径ギヤ145Sと噛み合っている。
【0117】
第14アイドルギヤ194は、第11アイドルギヤ191の後側であって第13アイドルギヤ193の下側に配置されている。第14アイドルギヤ194は、大径ギヤ194Lと、大径ギヤ194Lよりも歯数が少ない小径ギヤ194Sとを備える2段ギヤであり、大径ギヤ194Lと小径ギヤ194Sが一体に回転する。第14アイドルギヤ194は、大径ギヤ194Lが第13アイドルギヤ193の小径ギヤ193Sと噛み合っており、小径ギヤ194Sが第2カム210のギヤ部230と噛み合っている。
【0118】
図17に示すように、ニップ圧調整機構200は、定着器80の加熱ローラ81と加圧ローラ82のニップ圧を、図17(c)に示す第1ニップ圧と、図17(a),(b)に示す第2ニップ圧に切り替える。ニップ圧調整機構200は、現像モータ3Dが正回転した場合にニップ圧を第1ニップ圧から第2ニップ圧に切り替え、現像モータ3Dが逆回転した場合にニップ圧を第2ニップ圧から第1ニップ圧に切り替えるように構成されている。
【0119】
図17(c)に示すように、定着器80は、第1ニップ圧の場合に加熱ローラ81と加圧ローラ82が離間している。すなわち、第1ニップ圧は、ニップ圧が0の状態である。また、第2ニップ圧は、第1ニップ圧より大きいニップ圧である。本実施形態において、第2ニップ圧は、図17(b)に示す、第1ニップ圧より大きい第3ニップ圧と、図17(a)に示す、第3ニップ圧よりさらに大きい第4ニップ圧とを含む。そして、ニップ圧調整機構200は、ニップ圧を、第1ニップ圧と第3ニップ圧との間で切り替え可能であるとともに、第1ニップ圧と第4ニップ圧との間で切り替え可能である。なお、本実施形態では、第1ニップ圧をゼロニップ圧といい、第3ニップ圧を弱ニップ圧といい、第4ニップ圧を強ニップ圧という。強ニップ圧の状態での加熱ローラ81と加圧ローラ82とのニップ幅N1は、弱ニップ圧の状態でのニップ幅N2よりも大きい。
【0120】
ここで、定着器80の構成について説明する。
図17(a)に示すように、定着器80は、加熱ローラ81を回転可能に支持するフレーム84と、加圧ローラ82を回転可能に支持するレバー85と、加圧ローラ82を加熱ローラ81に向けて押圧可能なバネ86とを有している。フレーム84のレバー85やバネ86が係合する部分や、レバー85、バネ86は、回転軸線方向における定着器80の両側にそれぞれ設けられている(一方のみ図示)。
【0121】
フレーム84は、軸部84Aと、第1バネ係合部84Bとを有し、レバー85は、軸係合部85Aと、第2バネ係合部85Bと、カム接触面85Cとを有している。レバー85は、軸係合部85Aがフレーム84の軸部84Aに係合しており、フレーム84に対して軸部84Aを中心に揺動可能に支持されている。これにより、レバー85に支持された加圧ローラ82は、フレーム84に支持された加熱ローラ81に対して接触・離間可能となっている。バネ86は、引張コイルバネであり、一端部がフレーム84の第1バネ係合部84Bに係合し、他端部がレバー85の第2バネ係合部85Bに係合している。
【0122】
ニップ圧調整機構200は、各レバー85のカム接触面85Cに対応して設けられた一対の第2カム210(一方のみ図示)と、一対の第2カム210を連結する回転軸線方向に延びる軸部220と、軸部220の回転軸線方向における一端に設けられたギヤ部230(図10参照)とを有する。一対の第2カム210、軸部220およびギヤ部230は、一体に回転するように形成されている。図10に示すように、ギヤ部230は、ニップ圧制御ギヤ列100Eを構成する第14アイドルギヤ194の小径ギヤ194Sと噛み合っている。
【0123】
図17(b)に示すように、第2カム210は、加熱ローラ81と加圧ローラ82のニップ圧を制御するためのカムであり、現像モータ3Dから駆動力を受けることで第1回転方向R1または第1回転方向R1と逆の第2回転方向R2に回転する。第2カム210は、正回転する現像モータ3Dから駆動力を受けることで第1回転方向R1に回転し、逆回転する現像モータ3Dから駆動力を受けることで第2回転方向R2に回転する。第2カム210は、加熱ローラ81および加圧ローラ82の一方、具体的には、加圧ローラ82を加熱ローラ81に対して近接・離間する方向に動かしてニップ圧を切り替える。
【0124】
第2カム210は、回転することにより加圧ローラ82を移動させて、加熱ローラ81と加圧ローラ82のニップ圧を、ゼロニップ圧と弱ニップ圧との間、または、ゼロニップ圧と強ニップ圧との間で切り替える部材である。第2カム210は、軸部220などとともに加熱ローラ81や加圧ローラ82の回転軸線と平行な軸周りに回転可能に支持されている。第2カム210は、外周面にカム面213を有する。カム面213は、レバー85のカム接触面85Cと接触可能な面であり、ニップ圧をゼロニップ圧とする第1カム面213Aと、ニップ圧を弱ニップ圧とする第2カム面213Bとを有する。第1カム面213Aは、第2カム210の回転中心からの距離が第2カム面213Bよりも大きくなっている。また、第2カム210の外周面は、図17(a)に示す強ニップ圧の場合にレバー85のカム接触面85Cから離間する。
【0125】
制御部2は、画像形成装置1の全体の動作を制御する装置である。制御部2は、CPU、ROM、RAM、入出力部等を有し、予め記憶されたプログラムを実行することで各処理を実行する。
【0126】
本実施形態において、制御部2は、給紙センサ28A、レジ前センサ28B、レジ後センサ28C、離間センサ4K,4Cからの信号に基づいて、YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140Kを制御し、現像ローラ61の感光ドラム50に対する接触・離間を制御するとともに、Nクラッチ145を制御し、定着器80の加圧ローラ82の加熱ローラ81に対するニップ圧を制御する。
【0127】
本実施形態においては、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kは、離間位置にある場合に、シートSの移動方向の上流側に隣接する感光ドラム50を露光するレーザ光の光路と重なるので、画像形成装置1は、上流側に隣接する感光ドラム50の露光を開始する前に接触位置に位置するように構成されている。
【0128】
第2現像ローラ61Mおよび第3現像ローラ61Cについては、前記した、第1カム150Y,150M,150Cの第1カム部152Aの回転方向の長さの設定と、互いの位相のずれの機械的な設定によって、上流側に隣接する感光ドラム50の露光を開始する前に接触位置に位置するようになっている。具体的には、第1現像ローラ61Yの露光前に、第2現像ローラ61Mを接触位置に位置させるため、第1カム150Y,150Mは、第1現像ローラ61Yを第1感光ドラム50Yに接触させる以前に第2現像ローラ61Mを第2感光ドラム50Mに接触させるように設定されている。すなわち、第1現像ローラ61Yを第1感光ドラム50Yに接触させる時刻をt1、第2現像ローラ61Mを第2感光ドラム50Mに接触させる時刻をt2として、t2≦t1を満たすように設定されている。本実施形態においては、より具体的に、t2=t1になるように設定されている。
【0129】
一方、第4現像ローラ61Kについては、カラー印刷時は、第3現像ローラ61Cとの関係で、第1カム150Kが第1カム150Cに対して所定角度遅れるように制御部2が制御する。すなわち、制御部2は、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kを使ってカラー印刷をする場合に、第3感光ドラム50Cの露光を開始する前に、第3現像ローラ61Cを接触位置に移動させるとともに第4現像ローラ61Kを接触位置へ移動させる。そして、第3感光ドラム50Cの現像が終了した後で、かつ、第4感光ドラム50Kの現像が終了する前に、第3現像ローラ61Cを離間位置へ移動させる。そして、第4感光ドラム50Kの現像が終了した後に、第4現像ローラ61Kを離間位置へ移動させる。
【0130】
一方、制御部2は、第4現像ローラ61Kだけを使ってシートSに画像を形成する場合に、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61Mおよび第3現像ローラ61Cを離間位置に維持し、第4感光ドラム50Kの露光を開始する前に、第4現像ローラ61Kを接触位置に移動させる。そして、第4感光ドラム50Kの現像が終了した後に、第4現像ローラ61Kを離間位置へ移動させる。
【0131】
また、制御部2は、シートSの搬送と最上流側のイエローの第1現像ローラ61Yの第1感光ドラム50Yへの接触タイミングを合わせる制御を実行する。すなわち、制御部2は、シートSの搬送開始後、シートSが第1感光ドラム50Yに到達する前の期間に第1カム150Y,150M,150Cを回転させる。そして、離間センサ4CからON信号を取得しなくなった時点(OFF信号になった時点)から第1時間T1経過後の一時停止タイミングであって、第1現像ローラ61Yが第1感光ドラム50Yに接触しない一時停止タイミングでYMCクラッチ140Aを制御して第1カム150Y,150M,150Cを停止させる。そして、シートセンサであるレジ前センサ28BがシートSの前端の通過を検知した時点から第2時間T2経過後の再開タイミングでYMCクラッチ140Aを制御して第1カム150Y,150M,150Cを回転させ、第1現像ローラ61Yを第1感光ドラム50Yに接触させて画像形成を実行する。
【0132】
また、制御部2は、定着器80のニップ圧を図17(c)に示すゼロニップ圧から、図17(b)に示す弱ニップ圧または図17(a)に示す強ニップ圧に切り替える場合には、YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140KをOFFとしたまま、現像モータ3Dを正回転させ、Nクラッチ145をONとする。これにより、第2カム210が、図17(c)に示す状態から、第1回転方向R1に回転する。
【0133】
そして、制御部2は、ニップ圧を弱ニップ圧に切り替える場合には、第2カム210を、第1カム面213Aがレバー85のカム接触面85Cに接触した状態から、第2カム面213Bがカム接触面85Cに接触する状態まで所定時間T8回転させ、Nクラッチ145をOFFとする。また、制御部2は、ニップ圧を強ニップ圧に切り替える場合には、第2カム210を、第1カム面213Aがカム接触面85Cに接触した状態から、外周面がカム接触面85Cから離間する状態まで所定時間T8回転させ、Nクラッチ145をOFFとする。これにより、バネ86によってレバー85が引き上げられ、レバー85に支持された加圧ローラ82が所定のニップ圧で加熱ローラ81に接触する。制御部2は、Nクラッチ145をOFFとした後、正回転する現像モータ3Dを停止させる。なお、ニップ圧をゼロニップ圧から弱ニップ圧に切り替える場合の所定時間T8と、ニップ圧をゼロニップ圧から強ニップ圧に切り替える所定時間T8は、異なる時間である。
【0134】
また、制御部2は、定着器80のニップ圧を図17(b)に示す弱ニップ圧または図17(a)に示す強ニップ圧から、図17(c)に示すゼロニップ圧に切り替える場合には、YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140KをOFFとしたまま、現像モータ3Dを逆回転させ、Nクラッチ145をONとする。これにより、第2カム210が、図17(a)または図17(b)に示す状態から、第2回転方向R2に回転する。
【0135】
そして、制御部2は、ニップ圧を弱ニップ圧から切り替える場合には、第2カム210を、第2カム面213Bがカム接触面85Cに接触した状態から、第1カム面213Aがカム接触面85Cに接触する状態まで所定時間T9回転させ、Nクラッチ145をOFFとする。また、制御部2は、ニップ圧を強ニップ圧から切り替える場合には、第2カム210を、外周面がカム接触面85Cから離間した状態から、第1カム面213Aがカム接触面85Cに接触する状態まで所定時間T9回転させ、Nクラッチ145をOFFとする。これにより、第2カム210によってレバー85が押し下げられ、加圧ローラ82が加熱ローラ81から離間する。制御部2は、Nクラッチ145をOFFとした後、逆回転する現像モータ3Dを停止させる。なお、ニップ圧を弱ニップ圧からゼロニップ圧に切り替える場合の所定時間T9と、ニップ圧を強ニップ圧からゼロニップ圧に切り替える所定時間T9は、異なる時間である。
【0136】
ここで、制御部2の処理の一例について、図18図23を参照して説明する。画像形成装置1は、印刷ジョブを受信する前の待機状態にあるときは、すべての現像ローラ61が離間位置にあり、定着器80がゼロニップ圧の状態である。
【0137】
図18に示すように、制御部2は、印刷ジョブを受信したとき、現像モータ3Dを正回転させる(S11)。そして、制御部2は、Nクラッチ145をONにして(S12)、第2カム210を回転させる。そして、制御部2は、Nクラッチ145をONにしてから所定時間T8が経過したか否か判定する(S13)。制御部2は、所定時間T8が経過したと判定したら(S13,Yes)、Nクラッチ145をOFFにして(S14)、第2カム210を停止させる。
【0138】
次に、制御部2は、印刷ジョブに含まれる1頁目の画像形成がカラー画像か否かを判定する(S21)。制御部2は、形成すべき画像がカラー画像であると判定した場合(S21,Yes)、カラー印刷の処理を実行し(S22)、形成すべき画像がモノクロ画像である(カラー画像でない)と判定した場合(S21,No)、モノクロ印刷の処理を実行する(S23)。そして、ステップS22またはS23で1頁の画像形成が終了すると、印刷ジョブに次の頁があるか判定し(S24)、次の頁がある場合(S24,Yes)、ステップS21からの処理を繰り返す。
【0139】
一方、制御部2は、印刷ジョブに次の頁がない場合(S24,No)、正回転する現像モータ3Dを一旦停止させ(S31)、その後、現像モータ3Dを逆回転させる(S32)。そして、制御部2は、Nクラッチ145をONにして(S33)、第2カム210を回転させる。そして、制御部2は、Nクラッチ145をONにしてから所定時間T9が経過したか否か判定する(S34)。制御部2は、所定時間T9が経過したと判定したら(S34,Yes)、Nクラッチ145をOFFにして(S35)、第2カム210を停止させる。そして、制御部2は、逆回転する現像モータ3Dを停止させて(S36)、処理を終了する。
【0140】
次に、図19のフローチャートおよび図20のタイミングチャートを参照して、カラー印刷の処理について説明する。図19および図20では、1枚の印刷をする処理を示している。また、図20では、一番上のイエローの第1現像ローラ61Yの動作のタイミングチャートに重ねて、線種を変えてマゼンタ、シアンおよびブラックの第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kの動作を示している。
【0141】
ステップS22でカラー印刷の処理をする場合、画像形成動作の前はすべての現像ローラ61が離間位置にある。制御部2は、現像ローラ61を順次、接触位置にするため、まず、YMCクラッチ140AをONにするとともにKクラッチ140KをONにする(S201,t0)。これにより、第1カム150Y,150M,150C,150Kが回転する。第1カム150Y,150M,150C,150Kが回転すると、すぐに、離間センサ4C,4KがOFFになる(t31)。そして、制御部2は、給紙ローラ23を所定時間動かして(t51)、シートSをピックアップして搬送を開始する(S202)。
【0142】
そして、制御部2は、シートSの搬送を開始後、シートSが第1感光ドラム50Yに到達する前の期間に、シアンの離間センサ4CがOFF信号を出力した時点から第1時間T1が経過したか否か判定する(S210)。制御部2は、第1時間T1が経過したと判定したら(S210,Yes)、YMCクラッチ140AをOFFにして(S211,t32)、一時停止タイミングで第1カム150Y,150M,150Cを停止させる。この第1時間T1は、一時停止タイミングにおいて、イエローのカムフォロワ170の接触部172が、第1カム150Yの第2保持面F2のうち、最も第2案内面F4に近い位置に位置するような時間に設定されている。これにより、第1カム150Y,150M,150Cの回転が再開すると、すぐにイエローのカムフォロワ170が第2案内面F4に移動し、第1現像ローラ61Yが接触位置へ向けて動き出すようになっている。
【0143】
次に、制御部2は、レジ前センサON(t53、シートSの先端がレジ前センサ28Bを通過したとき)から第2時間T2が経過したか否か判定し(S212)、経過したと判定したら(S212,Yes)、YMCクラッチ140AをONにして(S213,t33)、再開タイミングで第1カム150Y,150M,150Cを回転再開させる。この第2時間T2は、第1現像ローラ61Yによる第1感光ドラム50Yの現像が、搬送されてきたシートSへのトナー像の転写に間に合うような時間に設定されている。
【0144】
また、制御部2は、シートSの搬送を開始後、シートSが第4感光ドラム50Kに到達する前の期間に、ブラックの離間センサ4KがOFF信号を出力した時点から第1時間T21が経過したか否か判定する(S220)。制御部2は、第1時間T21が経過したと判定したら(S220,Yes)、Kクラッチ140KをOFFにして(S221,t42)、一時停止タイミングで第1カム150Kを停止させる。この第1時間T21は、一時停止タイミングにおいて、ブラックのカムフォロワ170の接触部172が、第1カム150Kの第2保持面F2のうち、最も第2案内面F4に近い位置に位置するような時間に設定されている。これにより、第1カム150Kの回転が再開すると、すぐにカムフォロワ170が第2案内面F4に移動し、第4現像ローラ61Kが接触位置へ向けて動き出すようになっている。なお、第1時間T21と第1時間T1は異なる時間である。
【0145】
次に、制御部2は、再開タイミングでYMCクラッチ140AをON(t33)にしてから第3時間T3が経過したか否か判定し(S222)、経過したと判定したら(S222,Yes)、YMCクラッチ140AをOFFにして(S223,t36)、第1カム150Y,150M,150Cを停止させる。この第3時間T3は、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61Mおよび第3現像ローラ61Cのすべてが接触位置に位置するような時間に設定されている。
【0146】
次に、制御部2は、レジ後センサON(t54、シートSの先端がレジ後センサ28Cを通過したとき)から第2時間T22が経過したかを判定し(S224)、経過したと判定したら(S224,Yes)、Kクラッチ140KをONにして(S225,t43)、第1カム150Kを回転させる。第2時間T22は、第4現像ローラ61Kによる第4感光ドラム50Kの現像が、搬送されてきたシートSへのトナー像の転写に間に合うような時間に設定されている。これにより、第4現像ローラ61Kが接触位置に位置するタイミングが、第3感光ドラム50Cの露光を開始する直前となる。
【0147】
次に、制御部2は、Kクラッチ140KをON(t43)にしてから所定時間T23が経過したか否か判定し(S226)、経過したと判定したら(S226,Yes)、Kクラッチ140KをOFFにして(S227,t44)、第1カム150Kを停止させる。この所定時間T23は、第4現像ローラ61Kが接触位置に位置するような時間に設定されている。
【0148】
次に、制御部2は、レジ後センサOFF(t57、シートSの後端がレジ後センサ28Cを通過したとき)から第4時間T4が経過したかを判定し(S230)、経過したと判定したら(S230,Yes)、YMCクラッチ140AをONにして(S231,t37)、第1カム150Y,150M,150Cを回転させ、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cを順次離間させ始める。第4時間T4は、第1現像ローラ61Yにより第1感光ドラム50Yの現像が完了し、さらに、第1感光ドラム50YからシートSへの転写が終わった直後に第1現像ローラ61Yが離間位置に移動することができるような時間に設定されている。
【0149】
次に、制御部2は、レジ後センサOFF(t57)から所定時間T13が経過したかを判定し(S232)、経過したと判定したら(S232,Yes)、Kクラッチ140KをONにして(S233,t45)、第1カム150Kを回転させる。所定時間T13は、第4現像ローラ61Kにより第4感光ドラム50Kに現像が完了し、さらに、第4感光ドラム50KからシートSへの転写が終わった直後に第4現像ローラ61Kが離間位置に移動することができるような時間に設定されている。
【0150】
次に、制御部2は、シアンの離間センサ4CがON信号(離間信号)を出力したか否かを判定し(S240)、ON信号を出力したと判定したら(S240,Yes)、YMCクラッチ140AをOFFにして(S241,t40)、第1カム150Y,150M,150Cを停止させる。
【0151】
次に、制御部2は、ブラックの離間センサ4KがON信号を出力したか否かを判定し(S242)、ON信号を出力したと判定したら(S242,Yes)、Kクラッチ140KをOFFにして(S243,t46)、第1カム150Kを停止させる。
【0152】
このようにして、1枚の印刷時に各現像ローラ61が、順次離間位置から接触位置に移動し、さらに印刷後に接触位置から離間位置に移動する動作が実現される。具体的には、図21に示すように、画像形成装置1は、時刻t1において第1現像ローラ61Yを第1感光ドラム50Yに接触させ、時刻t2において第2現像ローラ61Mを第2感光ドラム50Mに接触させ、時刻t3において、第3現像ローラ61Cを第3感光ドラム50Cに接触させ、時刻t4において、第4現像ローラ61Kを第4感光ドラム50Kに接触させる。本実施形態においては、時刻t1=t2である。また、t1<t3、t2<t3、t3<t4である。そのため、本実施形態では、時刻t1と時刻t2の間の時間を|t1-t2|、時刻t2と時刻t3の間の時間を|t2-t3|として、|t1-t2|<|t2―t3|を満たす。なお、本発明において、後の時刻は、前の時刻より値が大きいものとし、後の時刻から前の時刻を引いた値は正であり、前の時刻から後の時刻を引いた値は負とする。そして、時刻と時刻を引いた値の絶対値は、時間の長さを意味する。t1とt2の関係は、t2<t1であってもよいので、この場合には、t2-t1は負の値となる。なお、t2<t1であることは必要ではないが、この場合には、第2現像ローラ61Mをより早めに接触位置に移動させることになる。
【0153】
また、画像形成装置1は、時刻t11において第1現像ローラ61Yを第1感光ドラム50Yから離間させ、時刻t12において第2現像ローラ61Mを第2感光ドラム50Mから離間させ、時刻t13において、第3現像ローラ61Cを第3感光ドラム50Cから離間させ、時刻t14において、第4現像ローラ61Kを第4感光ドラム50Kから離間させる。本実施形態においては、t11<t12<t13<t14である。このため、時刻t1と時刻t2の間の時間を|t1-t2|、時刻t11と時刻t12の間の時間を|t11-t12|として、|t1-t2|<|t11-t12|を満たす。
【0154】
次に、図22のフローチャートおよび図23のタイミングチャートを参照して、モノクロ印刷の処理について説明する。図22および図23では、1枚の印刷をする処理を示している。
【0155】
ステップS23でモノクロ印刷の処理をする場合、画像形成動作の前はすべての現像ローラ61が離間位置にある。モノクロ印刷の処理中、制御部2は、YMCクラッチ140Aを一切動かさず、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61Mおよび第3現像ローラ61Cを離間位置に位置させたままとする。一方、制御部2は、第4現像ローラ61Kを接触位置にするため、まず、Kクラッチ140KをONにする(S301,t0)。これにより、第1カム150Kが回転する。第1カム150Kが回転すると、すぐに、ブラックの離間センサ4KがOFFになる(t61)。そして、制御部2は、給紙ローラ23を所定時間動かして(t51)、シートSをピックアップして搬送を開始する(S302)。
【0156】
そして、制御部2は、シートSの搬送を開始後、シートSが第4感光ドラム50Kに到達する前の期間に、ブラックの離間センサ4KがOFF信号を出力した時点から第1時間T21が経過したか否か判定する(S310)。制御部2は、第1時間T21が経過したと判定したら(S310,Yes)、Kクラッチ140KをOFFにして(S311,t62)、一時停止タイミングで第1カム150Kを停止させる。この第1時間T21は、一時停止タイミングにおいて、ブラックのカムフォロワ170の接触部172が、第1カム150Kの第2保持面F2のうち、最も第2案内面F4に近い位置に位置するような時間に設定されている。これにより、第1カム150Kの回転が再開すると、すぐにカムフォロワ170が第2案内面F4に移動し、第4現像ローラ61Kが接触位置へ向けて動き出すようになっている。なお、モノクロ印刷における第1時間T21と、カラー印刷における第1時間T1は異なる時間である。
【0157】
次に、制御部2は、レジ後センサON(t54、シートSの先端がレジ後センサ28Cを通過したとき)から第2時間T22が経過したか否か判定し(S312)、経過したと判定したら(S312,Yes)、Kクラッチ140KをONにして(S313,t63)、再開タイミングで第1カム150Kを回転再開させる。この第2時間T22は、第4現像ローラ61Kによる第4感光ドラム50Kの現像が、搬送されてきたシートSへのトナー像の転写に間に合うような時間に設定されている。なお、モノクロ印刷における第2時間T22と、カラー印刷における第2時間T2は異なる時間である。
【0158】
次に、制御部2は、Kクラッチ140KをON(t63)にしてから所定時間T23が経過したか否か判定し(S324)、経過したと判定したら(S324,Yes)、Kクラッチ140KをOFFにして(S325,t66)、第1カム150Kを停止させる。この所定時間T23は、第4現像ローラ61Kが接触位置に位置するような時間に設定されている。
【0159】
次に、制御部2は、レジ後センサOFF(t57)から所定時間T13が経過したかを判定し(S332)、経過したと判定したら(S332,Yes)、Kクラッチ140KをONにして(S333,t67)、第1カム150Kを回転させる。
【0160】
次に、制御部2は、ブラックの離間センサ4KがON信号を出力したか否かを判定し(S342)、ON信号を出力したと判定したら(S342,Yes)、Kクラッチ140KをOFFにして(S343,t70)、第1カム150Kを停止させる。
【0161】
このようにして、1枚の印刷時に第4現像ローラ61Kが、離間位置から接触位置に移動し、さらに印刷後に接触位置から離間位置に移動する動作が実現される。このとき、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61Mおよび第3現像ローラ61Cを離間位置に位置させたままとするので、これらの第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61Mおよび第3現像ローラ61Cを無駄に回転させることが無い。
【0162】
以上のような構成による、具体的なシートSと現像ローラ61の動作を図24図26を参照して説明する。
画像形成装置1は、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kを使ってカラー印刷をする場合に、シートSへのトナー像の転写時に、シートSの移動に合わせて、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kを接触位置に移動させ、各感光ドラム50の現像が終了した後に離間位置に移動させる。
【0163】
具体的には、図24(a)に示すように、シートSが最も上流側の第1感光ドラム50Yに到達する前に、第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61M、第3現像ローラ61Cおよび第4現像ローラ61Kのすべてを離間位置に位置させておく。各現像ローラ61が離間位置にある場合、第2現像カートリッジ60Mは、第1感光ドラム50Yを露光するレーザ光の光路と重なり、第3現像カートリッジ60Cは、第2感光ドラム50Mを露光するレーザ光の光路と重なり、第4現像カートリッジ60Kは、第3感光ドラム50Cを露光するレーザ光の光路と重なる。
【0164】
そして、図24(b)に示すように、画像形成装置1は、シートSが第1感光ドラム50Yに近づくと、第1感光ドラム50Yの露光を開始する前に、第1現像カートリッジ60Yおよび第2現像カートリッジ60Mを同時に動かし、第1現像ローラ61Yおよび第2現像ローラ61Mを接触位置に移動させる。これにより、第1感光ドラム50Yを露光するレーザ光が第2現像カートリッジ60Mと重ならなくなり、第1感光ドラム50Yの露光が可能となる。第1現像ローラ61Yは、第1感光ドラム50Yを現像し、第1感光ドラム50Yからトナー像がシートSに転写される。
【0165】
そして、図24(c)に示すように、画像形成装置1は、シートSが第2感光ドラム50Mに近づくと、第2感光ドラム50Mの露光を開始する前に、第3現像カートリッジ60Cを動かし、第3現像ローラ61Cを接触位置に移動させる。これにより、第2感光ドラム50Mを露光するレーザ光が第3現像カートリッジ60Cと重ならなくなり、第2感光ドラム50Mの露光が可能となる。第2現像ローラ61Mは、第2感光ドラム50Mを現像し、第2感光ドラム50Mからトナー像がシートSに転写される。
【0166】
そして、図24(d)に示すように、画像形成装置1は、シートSが第3感光ドラム50Cに近づくと、第3感光ドラム50Cの露光を開始する前に、第4現像カートリッジ60Kを動かし、第4現像ローラ61Kを接触位置に移動させる。これにより、第3感光ドラム50Cを露光するレーザ光が第4現像カートリッジ60Kと重ならなくなり、第3感光ドラム50Cの露光が可能となる。第3現像ローラ61Cは、第3感光ドラム50Cを現像し、第3感光ドラム50Cからトナー像がシートSに転写される。また、第4現像ローラ61Kが接触位置に位置することで、第4現像ローラ61Kが第4感光ドラム50Kを現像することが可能となる。
【0167】
そして、図25(a)に示すように、画像形成装置1は、第1現像ローラ61Yによる第1感光ドラム50Yの現像が終了した後で、かつ、第2現像ローラ61Mによる第2感光ドラム50Mの現像が終了する前に、第1現像カートリッジ60Yを動かし、第1現像ローラ61Yを離間位置に移動させる。
【0168】
そして、図25(b)に示すように、画像形成装置1は、第2現像ローラ61Mによる第2感光ドラム50Mの現像が終了した後で、かつ、第3現像ローラ61Cによる第3感光ドラム50Cの現像が終了する前に、第2現像カートリッジ60Mを動かし、第2現像ローラ61Mを離間位置に移動させる。
【0169】
そして、図25(c)に示すように、画像形成装置1は、第3現像ローラ61Cによる第3感光ドラム50Cの現像が終了した後で、かつ、第4現像ローラ61Kによる第4感光ドラム50Kの現像が終了する前に、第3現像カートリッジ60Cを動かし、第3現像ローラ61Cを離間位置に移動させる。
【0170】
そして、図25(d)に示すように、画像形成装置1は、第4現像ローラ61Kによる第4感光ドラム50Kの現像が終了した後に、第4現像カートリッジ60Kを動かし、第4現像ローラ61Kを離間位置に移動させる。
【0171】
一方、画像形成装置1は、図26(a)~(c)に示すように、第4現像ローラ61Kだけを使ってモノクロ印刷をする場合、シートSへのトナー像の転写時に、第1色から第4色のうち、ブラック以外の第1現像ローラ61Y、第2現像ローラ61Mおよび第3現像ローラ61Cを離間位置に維持する。そして、シートSの移動に合わせて、ブラックに対応する第4現像ローラ61Kを接触位置に移動させ、第4感光ドラム50Kの現像が終了した後に、離間位置に移動させる。
【0172】
具体的には、画像形成装置1は、図26(b)に示すように、第4感光ドラム50Kの露光を開始する前に、第4現像カートリッジ60Kを動かして第4現像ローラ61Kを接触位置に移動させる。そして、図26(c)に示すように、第4感光ドラム50Kの現像が終了した後に、第4現像ローラ61Kを離間位置へ移動させる。
【0173】
以上に説明した画像形成装置1による作用効果について説明する。
画像形成装置1は、現像モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達する駆動伝達機構100が現像モータ3Dの駆動力を離間機構5とニップ圧調整機構200の両方にも伝達するので、現像ローラ61を駆動する現像モータ3Dにより離間機構5とニップ圧調整機構200を駆動させて、現像ローラ61の接触・離間と定着器80のニップ圧の切り替えを行うことができる。これにより、現像ローラ61の駆動と、現像ローラ61の接触・離間と、定着器80のニップ圧の切り替えを、それぞれについて専用のモータを設けることなく、1つのモータで行うことができる。
【0174】
また、駆動伝達機構100は、現像ローラ61が離間位置にある場合に現像モータ3Dからの駆動力を現像ローラ61に伝達しないので、現像ローラ61が現像を行わない離間位置にある場合に現像ローラ61を停止させることができる。これにより、現像ローラ61の回転を最小限にすることができる。そして、これにより、トナーの劣化を抑制することができる。
【0175】
また、画像形成装置1は、第2カム210の同じカム面213を用いて、現像モータ3Dが正回転する場合に定着器80のニップ圧をゼロニップ圧から、弱ニップ圧または強ニップ圧に切り替え、現像モータ3Dが逆回転する場合に定着器80のニップ圧を弱ニップ圧または強ニップ圧から、ゼロニップ圧に切り替えることができる。すなわち、第2カムに、ニップ圧をゼロニップ圧から、弱ニップ圧または強ニップ圧に切り替えるカム面と、ニップ圧を弱ニップ圧または強ニップ圧から、ゼロニップ圧に切り替えるカム面とを別に設ける必要がない。これにより、第2カム210を小型化することができる。
【0176】
また、画像形成装置1は、ゼロニップ圧の場合に加熱ローラ81と加圧ローラ82が離間しているので、定着器80のニップ圧をゼロニップ圧に切り替えることで、画像形成装置1内で詰まったシートSが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間に位置する場合に、詰まったシートSを容易に取り除くことができる。これにより、ジャム処理を容易に行うことができる。
【0177】
また、画像形成装置1は、現像モータ3Dが正回転する場合に、現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させることができるとともに、定着器80のニップ圧をゼロニップ圧から、弱ニップ圧または強ニップ圧に切り替えることができるので、印刷ジョブを受信して画像形成を実行する際に現像モータ3Dを正回転させた後は、現像モータ3Dを一旦停止させて回転方向を切り替えることなく、そのまま画像形成を実行することができる。なお、現像モータが逆回転した場合にニップ圧をゼロニップ圧から、弱ニップ圧または強ニップ圧に切り替える構成では、印刷ジョブを受信した後、ニップ圧を切り替えるため現像モータを逆回転させ、ニップ圧を切り替えた後に現像モータを一旦停止し、その後、現像ローラ61の接触・離間や回転のために現像モータを正回転させる必要が生じる。画像形成装置1は、現像モータ3Dを正回転させた後にそのまま画像形成を実行できるので、画像が形成されたシートSがアウトプットさせるまでの待ち時間を短縮することができる。
【0178】
また、画像形成装置1は、画像形成動作を実行する前の待機状態にあるとき、現像ローラ61が離間位置にあるので、現像ローラ61が感光ドラム50と無駄に接触するのを抑制することができる。これにより、現像ローラ61の劣化や、現像ローラ61と感光ドラム50との間でのトナーの固着を抑制することができる。また、画像形成装置1は、待機状態にあるとき、定着器80のニップ圧がゼロニップ圧の状態である、すなわち、加熱ローラ81と加圧ローラ82が離間しているので、加圧ローラ82が加熱ローラ81と無駄に圧接するのを抑制することができる。これにより、加圧ローラ82の劣化を抑制することができる。
【0179】
また、画像形成装置1は、ニップ圧を、ゼロニップ圧と弱ニップ圧との間で切り替え可能であるとともに、ゼロニップ圧と強ニップ圧との間で切り替え可能であるので、定着器80のニップ圧を弱ニップ圧と強ニップ圧に個別に設定することができる。これにより、シートSの種類、例えば、シートSの厚さや材質などの違いに応じた最適なニップ圧で定着を行うことができる。
【0180】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
【0181】
例えば、前記実施形態においては、ニップ圧調整機構200の第2カム210が加圧ローラ82を動かしてニップ圧を切り替える構成であったが、加熱ローラ81を動かしてニップ圧を切り替える構成であってもよい。また、ニップ圧調整機構は、加熱ローラ81と加圧ローラ82の両方を動かしてニップ圧を切り替える構成であってもよい。
【0182】
また、前記実施形態においては、ニップ圧を、ゼロニップ圧と、弱ニップ圧と、強ニップ圧の3段階に切替可能な構成であったが、ニップ圧を、2段階に切り替える構成であってもよいし、4段階以上に切替可能な構成であってもよい。また、前記実施形態においては、ゼロニップ圧(第1ニップ圧)の場合に加熱ローラ81と加圧ローラ82が離間していたが、第1ニップ圧の場合に加熱ローラ81と加圧ローラ82が接触していてもよい。
【0183】
また、前記実施形態においては、加熱部として加熱ローラ81を例示したが、加熱部は、例えば、無端状の加熱ベルトを有する加熱ユニットなどであってもよい。また、前記実施形態においては、加圧部として加圧ローラ82を例示したが、加圧部は、例えば、無端状の加圧ベルトを含む加圧ユニットなどであってもよい。
【0184】
また、前記実施形態においては、搬送ベルト73を備えるベルトユニット70を例示したが、中間転写ベルトを備えるベルトユニットであってもよい。
【0185】
また、前記実施形態においては、4色のトナーを用いてカラー画像を印刷する画像形成装置1を例示したが、3色や5色のトナーを用いてカラー画像を印刷する装置であってもよい。また、画像形成装置は、感光ドラムや現像ローラ、カムなどをそれぞれ1つずつ備え、1色のトナーのみを用いてモノクロ画像を印刷する装置であってもよい。
【0186】
また、画像形成装置は、複合機やコピー機であってもよい。
【符号の説明】
【0187】
1 画像形成装置
3D 現像モータ
3F 定着モータ
3P プロセスモータ
5 離間機構
50 感光ドラム
60 現像カートリッジ
61 現像ローラ
61X 回転軸線
64 スライド部材
70 ベルトユニット
80 定着器
81 加熱ローラ
82 加圧ローラ
90 支持部材
100 駆動伝達機構
120 クラッチ
121 サンギヤ
140A YMCクラッチ
140K Kクラッチ
145 Nクラッチ
150 第1カム
152A 第1カム部
153B 第2カム部
160 レバー
170 カムフォロワ
182B 斜面
183B 斜面
200 ニップ圧調整機構
210 第2カム
S シート
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