(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】画像解析装置、画像解析システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
A61B6/00 330A
A61B6/00 350C
A61B6/00 350D
(21)【出願番号】P 2019071003
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松谷 哲嗣
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157968(JP,A)
【文献】特開2015-226710(JP,A)
【文献】特開2011-206155(JP,A)
【文献】特開平05-264232(JP,A)
【文献】特開2009-153678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0009683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管及び/又は気管支を含む被写体を異なる2方向から動態撮影することにより得られた複数の二次元画像からなる複数の動態画像を解析して、前記気管及び/又は前記気管支の狭窄状態を表す特徴量を測定する測定手段と、
前記測定手段による測定結果に基づいて、前記気管及び/又は前記気管支の狭窄状態を推定する推定手段と、
を備える画像解析装置。
【請求項2】
前記複数の動態画像は、前記被写体を正面及び側面の2方向から撮影した画像である請求項
1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記特徴量として、前記2方向から撮影した動態画像の双方から、気管領域及び/又は気管支領域の径、面積、濃度の少なくとも一つを測定する請求項
1又は2に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記測定手段による測定結果に基づいて、さらに、前記気管及び/又は前記気管支の疾患を推定する請求項
1~3のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項5】
前記動態画像は、呼気を含むタイミングで撮影された動態画像である請求項1~
4のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項6】
気管及び/又は気管支を含む被写体の動態を撮影して複数の二次元画像からなる動態画像を取得する撮影装置と、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の画像解析装置と、
を備える画像解析システム。
【請求項7】
コンピューターを、
気管及び/又は気管支を含む被写体を異なる2方向から動態撮影することにより得られた複数の二次元画像からなる複数の動態画像を解析して、前記気管及び/又は前記気管支の狭窄状態を表す特徴量を測定する測定手段、
前記測定手段による測定結果に基づいて、前記気管及び/又は前記気管支の狭窄状態を推定する推定手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置、画像解析システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
気管・気管支が軟化したことにより、息を吐いた時に気道が狭窄する疾患として、気管・気管支軟化症が知られている。気管・気管支軟化症を評価する際には、気道の狭窄状態を実際に観察可能な気道内視鏡が用いられている。しかし、気道内視鏡による評価は、医師の視覚のみに基づくため定量的な指標がなく、客観性が低い。また、狭窄がある状態であっても、気道壁が内視鏡に接触することで、狭窄の発生を妨害してしまう懸念がある。CT検査により気道断面を視覚化する方法もあるが、気管・気管支軟化症による狭窄は呼気の最中に発生するため、息止めが必要なCT検査では検出できない場合がある。以上の通り、従来の検査手法では、狭窄を検出できないケースが懸念される。
【0003】
この問題に対する解決手段として、例えば、特許文献1には、被写体の三次元画像の時間変化を取得することができる4DCT検査により得られた画像を基に、気管支領域の容量の変化を測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、4DCT検査は被ばく量が多く、コストも高い。より簡易的な検査手法が求められる。
【0006】
本発明の課題は、より簡易的な検査手法により、気管・気管支の狭窄状態を推定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の画像解析装置は、
気管及び/又は気管支を含む被写体を異なる2方向から動態撮影することにより得られた複数の二次元画像からなる複数の動態画像を解析して、前記気管及び/又は前記気管支の狭窄状態を表す特徴量を測定する測定手段と、
前記測定手段による測定結果に基づいて、前記気管及び/又は前記気管支の狭窄状態を推定する推定手段と、
を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記複数の動態画像は、前記被写体を正面及び側面の2方向から撮影した画像である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記測定手段は、前記特徴量として、前記2方向から撮影した動態画像の双方から、気管領域及び/又は気管支領域の径、面積、濃度の少なくとも一つを測定する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の発明において、
前記推定手段は、前記測定手段による測定結果に基づいて、さらに、前記気管及び/又は前記気管支の疾患を推定する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の発明において、
前記動態画像は、呼気を含むタイミングで撮影された動態画像である。
【0012】
請求項6に記載の発明の画像解析システムは、
気管及び/又は気管支を含む被写体の動態を撮影して複数の二次元画像からなる動態画像を取得する撮影装置と、
請求項1~5のいずれか一項に記載の画像解析装置と、
を備える。
【0013】
請求項7に記載の発明のプログラムは、
コンピューターを、
気管及び/又は気管支を含む被写体を異なる2方向から動態撮影することにより得られた複数の二次元画像からなる複数の動態画像を解析して、前記気管及び/又は前記気管支の狭窄状態を表す特徴量を測定する測定手段、
前記測定手段による測定結果に基づいて、前記気管及び/又は前記気管支の狭窄状態を推定する推定手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より簡易的な検査手法により、気管・気管支の狭窄状態を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態における画像解析システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1の撮影用コンソールの制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】(a)は、人体の胸部を正面から見た模式図、(b)は、(a)において一点鎖線Bで囲んだ気管を切り出した形状の拡大図である。
【
図4】正常な気管・気管支及び狭窄した気管・気管支の疾患別の呼気時の見え方(断面、正面、側面)及び正面の動態画像と側面の動態画像における径、濃度の変化を一覧にして示す図である。
【
図5】
図1の診断用コンソールの制御部により実行される狭窄状態推定処理Aを示すフローチャートである。
【
図6】
図1の診断用コンソールの制御部により実行される狭窄状態推定処理Bを示すフローチャートである。
【
図7】
図1の診断用コンソールの制御部により実行される狭窄状態推定処理Cを示すフローチャートである。
【
図8】
図1の診断用コンソールの制御部により実行される狭窄状態推定処理Dを示すフローチャートである。
【
図9】
図1の診断用コンソールの制御部により実行される狭窄状態推定処理Eを示すフローチャートである。
【
図10】
図1の診断用コンソールの制御部により実行される狭窄状態推定処理Fを示すフローチャートである。
【
図11】気管・気管支領域の狭窄状態の変化率の時間変化を表すグラフである。
【
図12】狭窄状態の推定に用いた気管・気管支領域の位置を可視化して示した図である。
【
図13】狭窄状態の推定を行った気管・気管支領域の部位名、狭窄率、面積変化量、濃度変化量を一覧にして示した図である。
【
図14】過去に測定した狭窄率と患者数との関係を示すヒストグラム上に、今回測定した狭窄率の位置を示した図である。
【
図15】過去に測定した正面と側面の気管・気管支領域の径の変化率の散布図に、今回測定した正面と側面の気管・気管支領域の径の変化率の位置を示した図である。
【
図16】正面と側面の気管・気管支領域の径の変化率による正常及び疾患の分類を示した分類図に、今回測定した正面と側面の気管・気管支領域の径の変化率の位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0020】
〔画像解析システム100の構成〕
まず、本実施形態の構成を説明する。
図1に、本実施形態における画像解析システム100の全体構成を示す。
図1に示すように、画像解析システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。画像解析システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0021】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、例えば、被写体の動態を撮影する撮影手段である。動態撮影とは、被写体に対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、被写体の動態を示す複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。なお、以下の実施形態では、パルス照射により胸部の動態撮影を行う場合を例にとり説明する。
【0022】
放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、パルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、付加フィルター種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0023】
放射線検出部13は、FPD等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。FPDにはX線をシンチレーターを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
放射線検出部13は、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられている。
【0024】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データ(二次元画像)を取得する。この画像データがフレーム画像である。各フレーム画像は、各画素の濃度を表す信号値からなる。そして、読取制御装置14は、取得したフレーム画像を撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0025】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。
【0026】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された動態画像を撮影技師等の撮影実施者によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。
撮影用コンソール2は、
図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0027】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0028】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、
図2に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、記憶部22は、検査対象部位(ここでは、胸部)及び撮影方向(正面、側面)に対応付けて放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0029】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0030】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0031】
通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0032】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から動態画像を取得し、取得した動態画像に基づいて、気管及び/又は気管支(以下、気管・気管支と表記)の狭窄状態を表す特徴量を測定し、測定結果に基づいて気管・気管支の狭窄状態を推定する装置である。
【0033】
診断用コンソール3は、
図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0034】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する狭窄状態推定処理A~Fを始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3の各部の動作を集中制御する。制御部31は、測定手段、推定手段として機能する。
【0035】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で後述する狭窄状態推定処理A~Fを実行するためのプログラムを始めとする各種プログラムやプログラムによる処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0036】
また、記憶部32には、過去に撮影された動態画像、及びその動態画像から測定された気管・気管支の狭窄率(詳細後述)、狭窄の有無、及び疾患の推定結果が患者情報(例えば、患者ID、患者の氏名、身長、体重、年齢、性別等)、検査情報(例えば、検査ID、検査日、検査対象部位(ここでは、胸部)、撮影方向(正面、側面))に対応付けて記憶されている。
【0037】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、ユーザーによるキーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0038】
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種表示を行う。
【0039】
通信部35は、LANアダプターやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0040】
〔画像解析システム100の動作〕
次に、本実施形態における上記画像解析システム100の動作について説明する。
【0041】
(撮影装置1、撮影用コンソール2の動作)
まず、撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
図2に、撮影用コンソール2の制御部21において実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0042】
まず、撮影実施者により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、被検者(被写体M)の患者情報、検査情報の入力が行われる(ステップS1)。
【0043】
次いで、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS2)。ここで、フレームレートは、呼吸サイクルより短くなるように設定される。一般的な動態撮影のフレームレートは15fpsであるが、呼吸サイクルは周期が長いため、7.5fpsとしてもよい。
【0044】
次いで、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS3)。
ここで、撮影実施者は、被写体Mを放射線源11と放射線検出部13の間に配置してポジショニングを行う。また、被検者(被写体M)に対し、呼吸状態を指示する。具体的には、被検者(被写体M)に楽にするように指示し、安静呼吸を促す。深呼吸を指示してもよい。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0045】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS3;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS4)。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。
【0046】
操作部23により放射線照射終了指示が入力されると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。
撮影実施者は、少なくとも呼気位を含むタイミングで動態撮影が行われるように、放射線照射終了の指示を行う。気管・気管支の狭窄は、呼気の最中に発生するためである。
【0047】
撮影により取得されたフレーム画像は順次撮影用コンソール2に入力され、撮影順を示す番号(フレーム番号)と対応付けて記憶部22に記憶されるとともに(ステップS5)、表示部24に表示される(ステップS6)。撮影実施者は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
【0048】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS7;YES)、動態撮影で取得された一連のフレーム画像のそれぞれに、動態画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査情報、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示す番号(フレーム番号)等の情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS8)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS7;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS9)、本処理は終了する。この場合、再撮影が必要となる。
【0049】
本実施形態では、上記撮影制御処理に従って胸部正面及び/又は胸部側面の動態撮影を行い、胸部正面及び/又は胸部側面の動態画像を取得する。
【0050】
(診断用コンソール3の動作)
次に、診断用コンソール3における動作について説明する。
診断用コンソール3においては、通信部35を介して撮影用コンソール2から胸部の動態画像の一連のフレーム画像(胸部正面及び/又は胸部側面)が受信されると、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により、以下に説明する狭窄状態推定処理A~Fのいずれかが実行される。
【0051】
ここで、
図3(a)は、人体の胸部を正面から見た模式図、(b)は、(a)において一点鎖線Bで囲んだ気管を切り出した形状を拡大した図である。
気管は、軟骨と筋肉により構成される。
図3(b)に示すように、気管は、筒状をしており、前(腹)側が軟骨、後(背)側が筋肉となっている。気管支は、気管が枝分かれしたものであり、気管と同様に、筒状の形状であり、前(腹)側と後(背)側が共に軟骨となっている。気管・気管支が狭窄する疾患としては、気管・気管支の軟骨が縮む気管・気管支軟化症(Tracheobronchomalacia)と、気管の筋肉が縮む動的気道虚脱(Excessive Dynamic Airway Collapse)とがある。
【0052】
図4は、正常な気管・気管支及び狭窄した気管・気管支の疾患別の呼気時の見え方(断面、正面、側面)及び正面の動態画像と側面の動態画像における気管・気管支領域の径(直径)、濃度の変化を一覧にして示す図である。
放射線画像(動態画像)において、気管・気管支領域は奥行き方向の空気の量が多いほど高い濃度で(黒っぽく)描画され、奥行き方向の空気量が少ないほど低い濃度で(白っぽく)描画される。気管・気管支が奥行き方向に狭窄していない状態では、気管・気管支は十分な空気を含んでいるため気管・気管支領域は高濃度で描画されるが、気管・気管支が奥行き方向に狭窄した状態では、気管・気管支の空気が少ないため気管・気管支領域は低濃度で描画される。すなわち、動態画像における気管・気管支領域の濃度は、気管・気管支の奥行き方向の狭窄状態を示す情報となる。
図4の「気管の見え方」の正面と側面の濃度は、呼気時における正面と側面の画像の濃度で示されている。また、放射線画像において、気管・気管支領域の径(面積)は、気管・気管支が画像の左右方向に狭窄した状態では小さく描画される。
【0053】
狭窄のない正常な気管・気管支は、
図4に示すように、断面が筒状であり、正面の動態画像と側面の動態画像において気管・気管支領域の径(面積)、濃度は、ともに変化しない。
気管・気管支軟化症のSaber-sheath typeは、気管・気管支の前側の軟骨が縮まり、気管・気管支が背面から前面に向かって剣先のように細くなり、奥行き方向が広がる疾患であり、
図4に示すように、正面の動態画像では、狭窄すると気管・気管支領域の径(面積)が縮小し、濃度が増加する。側面の動態画像では、狭窄すると気管・気管支領域の径(面積)が拡大し、濃度が減少する。
気管・気管支軟化症のCrescent typeは、気管・気管支の軟骨の前後方向が縮まり、左右方向が広がる疾患であり、
図4に示すように、正面の動態画像では、狭窄すると気管・気管支領域の径(面積)が拡大し、濃度が減少する。側面の動態画像では、狭窄すると気管・気管支領域の径(面積)が縮小し、濃度が増加する。
気管・気管支軟化症のCircumferential typeは、気管・気管支の軟骨が前後及び左右方向に縮まる疾患であり、
図4に示すように、正面の動態画像では、狭窄すると気管・気管支領域の径(面積)が縮小し、濃度も減少する。側面の動態画像においても、狭窄すると気管・気管支領域の径(面積)が縮小し、濃度も減少する。
動的気道虚脱は、気管の筋肉が痛んで内側に湾曲してしまう疾患であり、
図4に示すように、正面の動態画像では、狭窄しても気管領域の径(面積)は変化しないが、濃度が減少する。側面の動態画像においは、狭窄すると気管領域の径(面積)が縮小し、濃度は変化しない。
【0054】
すなわち、正面の動態画像及び/又は側面の動態画像の気管・気管支領域の径(面積)、濃度は、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量であり、これらの特徴量を測定することにより、気管・気管支の狭窄の有無やどこが狭窄しているか等の狭窄状態を推定することができる。
また、
図4に示すように、正面または側面から見た気管・気管支の左右方向及び奥行き方向の情報が揃えば、気管・気管支の狭窄による疾患を推定することができる。例えば、正面又は側面のいずれか1方向から撮影した動態画像から気管・気管支領域の径又は面積、及び濃度を測定することにより、気管・気管支の左右方向及び奥行き方向の情報を取得することができ、気管・気管支の疾患を推定することができる。また、正面及び側面から撮影した動態画像の双方から、気管・気管支領域の径又は面積を測定するか、又は濃度を測定することにより、気管・気管支の左右方向及び奥行き方向の情報を取得することができ、気管・気管支の疾患を推定することができる。
【0055】
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から受信した動態画像の撮影方向に応じた狭窄状態推定処理を実行する。なお、以下の説明において、気管・気管支領域の径についての記載は、面積についても同様のことがいえる。
【0056】
<側面の動態画像のみから狭窄状態を推定>
撮影用コンソール2から受信した動態画像が側面の動態画像のみである場合、制御部31は、記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により、
図5に示す狭窄状態推定処理A、又は
図6に示す狭窄状態推定処理Bを実行する。いずれの処理を実行するかは、ユーザーが操作部33の操作により選択することができる。
【0057】
まず、
図5を参照して狭窄状態推定処理Aについて説明する。
まず、側面の動態画像の各フレーム画像から気管・気管支領域が抽出される(ステップS11)。
気管・気管支領域は、気管と気管が枝分かれした複数の気管支領域により構成されており(
図12参照)、ステップS11においては、気管領域と複数の気管支領域のうち、狭窄状態の推定対象となる気管・気管支領域が抽出される。推定対象となる気管・気管支領域は、一つであってもよいし、複数であってもよい。
各フレーム画像からの気管・気管支領域の抽出は、制御部31が自動で行うこととしてもよいし、ユーザー操作により手動で行うこととしてもよい。
気管・気管支領域の抽出を自動で行う場合、推定対象となる気管・気管支領域は、予め設定されていてもよいし、ユーザーが操作部33により設定(選択)することとしてもよい。推定対象の気管・気管支領域は、例えば、パターンマッチング処理により抽出することができる。
気管・気管支領域の抽出を手動で行う場合、例えば、受信された動態画像の代表フレーム画像(例えば、1番目のフレーム画像)が表示部34に表示され、表示された代表フレーム画像からユーザーが操作部33により指定した(なぞった)領域が気管・気管支領域として抽出される。他のフレーム画像については、代表フレーム画像からユーザーにより指定された領域がトラッキングされ、気管・気管支領域として抽出される。または、ユーザーが操作部33により表示された代表フレーム画像にROI(関心領域)を設定する(例えば、四角等で囲む)と、その範囲内でパターンマッチング処理を行って推定対象の気管・気管支領域を抽出することとしてもよい。または、ユーザーが操作部33により表示された代表フレーム画像に推定対象としたい気管領域又は気管支領域の径に線や矢印を付加すると、その線や矢印の幅を径としてその位置から予め定められた範囲内を推定対象の気管・気管支領域として抽出することとしてもよい。
なお、後段のステップにおいて、狭窄状態を表す特徴量として径が使用される場合には、気管・気管支領域の抽出を行わず、操作部33により描画された線や矢印の位置を気管・気管支領域の径の測定位置として取得するだけであってもよい。
【0058】
次いで、受信した動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の径が測定される(ステップS12)。ステップS12においては、気管・気管支領域の予め定められた位置(例えば、中央部)の径を測定してもよいし、複数箇所の径を測定してその代表値(平均値、中央値等)を径としてもよい。
【0059】
次いで、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径に基づいて、気管・気管支領域の径の変化率が算出され、予め定められた閾値TH1以上であるか否かが判断される(ステップS13)。
気管・気管支領域の径の変化率は、(式1)により算出することができる。
気管・気管支領域の径の変化率={(Dmax-Dmin)/Dmax}×100[%]・・・(式1)
ここで、Dmaxは、各フレーム画像から測定された径のうち最大径、Dminは最小径を指す。
また、一般的な診断では、気管(気管支)の断面積が50%以上変化した場合、狭窄あり(異常)と判断するため、気管(気管支)の断面を正円と仮定すると、気管(気管支)の断面積は「半径×半径×π」となることから、閾値TH1は29.3%とすることが好ましい。
【0060】
気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1未満であると判断された場合(ステップS13;NO)、狭窄なしと推定され(ステップS14)、ステップS19に移行する。
気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1以上であると判断された場合(ステップS13;YES)、狭窄ありと推定され(ステップS15)、ステップS16に移行する。
【0061】
ステップS16においては、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径の時間変化に基づいて、気管・気管支領域の径が拡大したか縮小したかが判断される(ステップS16)。例えば、気管・気管支領域の径の時間変化を示すグラフが上に凸である場合、気管・気管支領域の径が拡大したと判断され、下に凸である場合、気管・気管支領域の径が縮小したと判断される。
気管・気管支領域の径が拡大したと判断した場合(ステップS16;YES)、気管・気管支軟化症(Saber-sheath type)であると推定され(ステップS17)、ステップS19に移行する。
気管・気管支領域の径が縮小したと判断した場合(ステップS16;NO)、気管・気管支軟化症(Crescent typeもしくはCircumferential type)又は動的気道虚脱であると推定され(ステップS18)、ステップS19に移行する。
なお、推定対象の気管・気管支領域が複数抽出されている場合は、領域ごとに、ステップS12~ステップS18の処理が実行され、全ての領域についてステップS12~S18の処理が終了すると、ステップS19に移行する。
【0062】
ステップS19においては、狭窄の有無と疾患の推定結果が表示部34に表示され(ステップS19)、狭窄状態推定処理Aは終了する。
狭窄状態推定処理Aの終了後、測定された気管・気管支の狭窄率、狭窄の有無、及び疾患の推定結果が動態画像に対応付けて記憶部32に記憶される。ここで、狭窄率とは、上記狭窄状態推定処理A~Fで求めた径(面積)や濃度の変化率を指し、径(面積、濃度)が拡大(増加)している場合は正の符号を付し、径(面積、濃度)が縮小(減少)している場合は負の符号を付して表す。
【0063】
次に、
図6を参照して狭窄状態推定処理Bについて説明する。
まず、側面の動態画像の各フレーム画像から気管・気管支領域が抽出される(ステップS31)。
ステップ31の処理は、ステップS11で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0064】
次いで、受信した動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の径が測定される(ステップS32)。気管・気管支領域の径の測定手法は、ステップS12で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0065】
次いで、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径に基づいて、気管・気管支領域の径の変化率が算出され、予め定められた閾値TH1以上であるか否かが判断される(ステップS33)。
気管・気管支領域の径の変化率は、(式1)により算出することができる。
【0066】
気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1未満であると判断された場合(ステップS33;NO)、狭窄なしと推定され(ステップS34)、ステップS44に移行する。
気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1以上であると判断された場合(ステップS33;YES)、狭窄ありと推定され(ステップS35)、ステップS36に移行する。
【0067】
ステップS36においては、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径の時間変化に基づいて、気管・気管支領域の径が拡大したか縮小したかが判断される(ステップS36)。例えば、気管・気管支領域の径の時間変化を示すグラフが上に凸である場合、気管・気管支領域の径が拡大したと判断され、下に凸である場合、気管・気管支領域の径が縮小したと判断される。
気管・気管支領域の径が拡大したと判断した場合(ステップS36;YES)、気管・気管支軟化症(Saber-sheath type)であると推定され(ステップS37)、ステップS44に移行する。
気管・気管支領域の径が縮小したと判断した場合(ステップS36;NO)、受信した動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の濃度が測定される(ステップS38)。
ステップS38においては、例えば、気管・気管支領域の予め定められた位置(例えば、中心)の画素の信号値を濃度として測定してもよいし、気管・気管支領域内の画素の信号値の代表値(例えば、平均値、中央値、最大値、最小値等)を濃度として測定してもよい。
【0068】
次いで、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の濃度に基づいて、気管・気管支領域の濃度の変化率が算出され、予め定められた閾値TH2以上であるか否かが判断される(ステップS39)。
気管・気管支領域の濃度の変化率は、(式1)のDmaxを最大濃度、Dminを最小濃度として、(式1)と同様の式により算出することができる。また、閾値TH2は、径の変化率の閾値TH1=29.3%に相当する濃度変化率とすることが好ましい。濃度は、撮影装置や撮影条件によって変動するため、実験にて調整することが好ましい。
【0069】
気管・気管支領域の濃度の変化率が予め定められた閾値TH2未満であると判断された場合(ステップS39;NO)、動的気道虚脱であると推定され(ステップS40)、ステップS44に移行する。
【0070】
気管・気管支領域の濃度の変化率が予め定められた閾値TH2以上であると判断された場合(ステップS39;YES)、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の濃度の時間変化に基づいて、気管・気管支領域の濃度が増加したか減少したかが判断される(ステップS41)。例えば、気管・気管支領域の濃度の時間変化を示すグラフが上に凸である場合、気管・気管支領域の濃度が増加したと判断され、下に凸である場合、縮小したと判断される。
【0071】
気管・気管支領域の濃度が増加したと判断された場合(ステップS41;YES)、気管・気管支軟化症(Crescent type)と推定され(ステップS42)、ステップS44に移行する。
気管・気管支領域の濃度が減少したと判断された場合(ステップS41;NO)、気管・気管支軟化症(Circumferential type)と推定され(ステップS43)、ステップS44に移行する。
なお、推定対象の気管・気管支領域が複数抽出されている場合は、領域ごとに、ステップS32~ステップS43の処理が実行され、全ての領域についてステップS32~S43の処理が終了すると、ステップS44に移行する。
【0072】
ステップS44においては、狭窄の有無と疾患の推定結果が表示部34に表示され(ステップS44)、狭窄状態推定処理Bは終了する。狭窄状態推定処理Bの終了後、測定された気管・気管支の狭窄率、狭窄の有無、及び疾患の推定結果が動態画像に対応付けて記憶部32に記憶される。
【0073】
狭窄状態推定処理Bでは、側面の動態画像における気管・気管支領域の左右方向の狭窄状態を表す径及び奥行き方向の狭窄状態を表す濃度の双方を使って狭窄状態を推定するので、狭窄の有無だけでなく、疾患を推定することができる。なお、上記狭窄状態推定処理Bでは、先に気管・気管支領域の径の変化率に基づいて推定を行ったが、先に濃度の変化率に基づいて推定を行ってもよい。
【0074】
<正面の動態画像のみから狭窄状態を推定>
撮影用コンソール2から受信した動態画像が正面の動態画像のみである場合、制御部31は、記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により、
図7に示す狭窄状態推定処理C、又は
図8に示す狭窄状態推定処理Dを実行する。いずれの処理を実行するかは、ユーザーが操作部33の操作により選択することができる。
【0075】
まず、
図7を参照して狭窄状態推定処理Cについて説明する。
まず、正面の動態画像の各フレーム画像から気管・気管支領域が抽出される(ステップS51)。
ステップS51の処理は、
図5のステップS11で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0076】
次いで、受信した動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の濃度が測定される(ステップS52)。ステップS52の処理は、
図6のステップS38で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0077】
次いで、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の濃度に基づいて、気管・気管支領域の濃度の変化率が算出され、予め定められた閾値TH2以上であるか否かが判断される(ステップS53)。
気管・気管支領域の濃度の変化率は、(式1)のDmaxを最大濃度、Dminを最小濃度として、(式1)と同様の式にて算出することができる。
【0078】
気管・気管支領域の濃度の変化率が予め定められた閾値TH2未満であると判断された場合(ステップS53;NO)、狭窄なしと推定され(ステップS54)、ステップS59に移行する。
気管・気管支領域の濃度の変化率が予め定められた閾値TH2以上であると判断された場合(ステップS54;YES)、狭窄ありと推定され(ステップS55)、ステップS56に移行する。
【0079】
ステップS56においては、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の濃度の時間変化に基づいて、気管・気管支領域の濃度が増加したか減少したかが判断される(ステップS56)。ステップS56の処理は、
図6のステップS41で説明したものと同様であるので説明を援用する。
気管・気管支領域の濃度が増加したと判断した場合(ステップS56;YES)、気管・気管支軟化症(Saber-sheath type)であると推定され(ステップS57)、ステップS59に移行する。
【0080】
気管・気管支領域の濃度が減少したと判断した場合(ステップS56;NO)、気管・気管支軟化症(Crescent typeもしくはCircumferential type)又は動的気道虚脱であると推定され(ステップS58)、ステップS59に移行する。
なお、推定対象の気管・気管支領域が複数抽出されている場合は、領域ごとに、ステップS52~ステップS58の処理が実行され、全ての領域についてステップS52~S58の処理が終了すると、ステップS59に移行する。
【0081】
ステップS59においては、狭窄の有無と疾患の推定結果が表示部34に表示され(ステップS59)、狭窄状態推定処理Cは終了する。狭窄状態推定処理Cの終了後、測定された気管・気管支の狭窄率、狭窄の有無、及び疾患の推定結果が動態画像に対応付けて記憶部32に記憶される。
【0082】
次に、
図8を参照して狭窄状態推定処理Dについて説明する。
まず、正面の動態画像の各フレーム画像から気管・気管支領域が抽出される(ステップS61)。
ステップ61の処理は、
図5のステップS11で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0083】
次いで、受信した動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の濃度が測定される(ステップS62)。気管・気管支領域の濃度の測定は、
図6のステップS38で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0084】
次いで、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径に基づいて、気管・気管支領域の濃度の変化率が算出され、予め定められた閾値TH2以上であるか否かが判断される(ステップS63)。
気管・気管支領域の濃度の変化率は、(式1)のDmaxを最大濃度、Dminを最小濃度として、(式1)により算出することができる。
【0085】
気管・気管支領域の濃度の変化率が予め定められた閾値TH2未満であると判断された場合(ステップS63;NO)、狭窄なしと推定され(ステップS64)、ステップS74に移行する。
気管・気管支領域の濃度の変化率が予め定められた閾値TH2以上であると判断された場合(ステップS63;YES)、狭窄ありと推定され(ステップS65)、ステップS66に移行する。
【0086】
ステップS66においては、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の濃度の時間変化に基づいて、気管・気管支領域の濃度が増加したか減少したかが判断される(ステップS66)。ステップS66の処理は、
図6のステップS41の処理と同様であるので説明を援用する。
気管・気管支領域の濃度が増加したと判断した場合(ステップS66;YES)、気管・気管支軟化症(Saber-sheath type)であると推定され(ステップS67)、ステップS74に移行する。
気管・気管支領域の濃度が減少したと判断した場合(ステップS66;NO)、受信した動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の径が測定される(ステップS68)。
ステップS68の処理は、
図5のステップS12で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0087】
次いで、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径に基づいて、気管・気管支領域の径の変化率が算出され、予め定められた閾値TH1以上であるか否かが判断される(ステップS69)。
気管・気管支領域の径の変化率は、(式1)により算出することができる。
【0088】
気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1未満であると判断された場合(ステップS69;NO)、動的気道虚脱であると推定され(ステップS70)、ステップS74に移行する。
気管・気管支領域の濃度の変化率が予め定められた閾値TH1以上であると判断された場合(ステップS69;YES)、各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径の時間変化に基づいて、気管・気管支領域の径が拡大したか縮小したかが判断される(ステップS71)。
ステップS71の処理は、
図5のステップS16で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0089】
気管・気管支領域の径が拡大したと判断された場合(ステップS71;YES)、気管・気管支軟化症(Crescent type)と推定され(ステップS72)、ステップS74に移行する。
気管・気管支領域の径が縮小したと判断された場合(ステップS71;NO)、気管・気管支軟化症(Circumferential type)と推定され(ステップS73)、ステップS74に移行する。
なお、推定対象の気管・気管支領域が複数抽出されている場合は、領域ごとに、ステップS62~ステップS73の処理が実行され、全ての領域についてステップS62~S73の処理が終了すると、ステップS74に移行する。
【0090】
ステップS74においては、狭窄の有無と疾患の推定結果が表示部34に表示され(ステップS74)、狭窄状態推定処理Dは終了する。狭窄状態推定処理Dの終了後、測定された気管・気管支の狭窄率、狭窄の有無、及び疾患の推定結果が動態画像に対応付けて記憶部32に記憶される。
【0091】
狭窄状態推定処理Dでは、正面の動態画像における気管・気管支領域の左右方向の狭窄状態を表す径及び奥行き方向の狭窄状態を表す濃度の双方を使って狭窄状態を推定するので、狭窄の有無だけでなく、疾患を推定することができる。なお、上記狭窄状態推定処理Dでは、先に気管・気管支領域の濃度の変化率に基づいて推定を行ったが、先に径の変化率に基づいて推定を行ってもよい。
【0092】
<正面及び側面の動態画像から狭窄状態を推定>
撮影用コンソール2から受信した動態画像が正面及び側面の動態画像である場合、制御部31は、記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により、
図9に示す狭窄状態推定処理E、又は
図10に示す狭窄状態推定処理Fを実行する。いずれの処理を実行するかは、ユーザーが操作部33の操作により選択することができる。
【0093】
まず、
図9を参照して狭窄状態推定処理Eについて説明する。
まず、正面及び側面の動態画像の各フレーム画像から気管・気管支領域が抽出される(ステップS81)。
ステップS81の処理は、
図5のステップS11で説明したものと同様であるので説明を援用する。
なお、肋骨の位置情報に基づいて、正面の動態画像と側面の動態画像の対応するフレーム画像に(同じタイミングで撮影されたフレーム画像又は呼吸位相が最も近いフレーム画像)おける推定対象の気管・気管支領域の位置合わせを行う。
【0094】
次いで、側面の動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の径が測定される(ステップS82)。ステップS82の処理は、
図5のステップS12で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0095】
次いで、側面の動態画像の各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径に基づいて、気管・気管支領域の径の変化率が算出され、予め定められた閾値TH1以上であるか否かが判断される(ステップS83)。
気管・気管支領域の径の変化率は、(式1)により算出することができる。
【0096】
側面の気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1未満であると判断された場合(ステップS83;NO)、狭窄なしと推定され(ステップS84)、ステップS94に移行する。
側面の気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1以上であると判断された場合(ステップS83;YES)、狭窄ありと推定され(ステップS85)、ステップS86に移行する。
【0097】
ステップS86においては、側面の動態画像の各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径の時間変化に基づいて、側面の気管・気管支領域の径が拡大したか縮小したかが判断される(ステップS86)。ステップS86の処理は、
図5のステップS16で説明したものと同様であるので説明を援用する。
側面の気管・気管支領域の径が拡大したと判断した場合(ステップS86;YES)、気管・気管支軟化症(Saber-sheath type)であると推定され(ステップS87)、ステップS94に移行する。
【0098】
側面の気管・気管支領域の径が縮小したと判断した場合(ステップS86;NO)、正面の動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の径が測定される(ステップS88)。ステップS88の処理は、
図5のステップS12で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0099】
次いで、正面の動態画像の各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径に基づいて、正面の気管・気管支領域の径の変化率が算出され、予め定められた閾値TH1以上であるか否かが判断される(ステップS89)。
気管・気管支領域の径の変化率は、(式1)により算出することができる。
【0100】
正面の気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1未満であると判断された場合(ステップS89;NO)、動的気道虚脱と推定され(ステップS90)、ステップS94に移行する。
正面の気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1以上であると判断された場合(ステップS89;YES)、正面の動態画像の各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径の時間変化に基づいて、気管・気管支領域の径が拡大したか縮小したかが判断される(ステップS91)。ステップS91の処理は、
図5のステップS16で説明したものと同様であるので説明を援用する。
正面の気管・気管支領域の径が拡大したと判断された場合(ステップS91;YES)、気管・気管支軟化症(Crescent type)と推定され(ステップS92)、ステップS94に移行する。
正面の気管・気管支領域の径が縮小したと判断された場合(ステップS91;NO)、気管・気管支軟化症(Circumferential type)と推定され(ステップS93)、ステップS94に移行する。
なお、推定対象の気管・気管支領域が複数抽出されている場合は、領域ごとに、ステップS82~ステップS93の処理が実行され、全ての領域についてステップS82~S93の処理が終了すると、ステップS94に移行する。
【0101】
ステップS94においては、狭窄の有無と疾患の推定結果が表示部34に表示され(ステップS94)、狭窄状態推定処理Eは終了する。狭窄状態推定処理Eの終了後、測定された気管・気管支の狭窄率、狭窄の有無、及び疾患の推定結果が動態画像に対応付けて記憶部32に記憶される。
なお、上記狭窄状態推定処理Eは、正面と側面を入れ替えて、径を濃度に置き換えても、同様に狭窄の有無及び疾患を推定することができる。
【0102】
次に、
図10を参照して狭窄状態推定処理Fについて説明する。
まず、正面及び側面の動態画像の各フレーム画像から気管・気管支領域が抽出される(ステップS101)。
ステップS101の処理は、
図5のステップS11で説明したものと同様であるので説明を援用する。
なお、肋骨の位置情報に基づいて、正面の動態画像と側面の動態画像の対応するフレーム画像(同じタイミングで撮影されたフレーム画像又は呼吸位相が最も近いフレーム画像)における推定対象の気管・気管支領域の位置合わせを行う。
【0103】
次いで、正面及び側面の動態画像の各フレーム画像の気管・気管支領域において、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量として、気管・気管支領域の径が測定される(ステップS102)。ステップS102の処理は、
図5のステップS12で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0104】
次いで、正面及び側面の動態画像の各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径に基づいて、気管・気管支領域の断面積の変化率が算出され、予め定められた閾値TH3以上であるか否かが判断される(ステップS103)。
気管・気管支領域の断面を楕円と仮定すると、気管・気管支領域の断面積は「短軸半径×長軸半径×π」となる。すなわち、(正面の径÷2)×(側面の径÷2)×πを算出することで、断面積を算出することができる。
気管・気管支領域の断面積の変化率は、(式1)のDmaxを最大断面積、Dmaxを最小断面積に置き換えることにより算出することができる。
また、一般的な診断では、気管(気管支)の断面積が50%以上変化した場合、狭窄あり(異常)と判断するため、閾値TH3は50%とすることが好ましい。
【0105】
気管・気管支領域の断面積の変化率が予め定められた閾値TH3未満であると判断された場合(ステップS103;NO)、狭窄なしと推定され(ステップS104)、ステップS113に移行する。
気管・気管支領域の断面積の変化率が予め定められた閾値TH3以上であると判断された場合(ステップS103;YES)、狭窄ありと推定され(ステップS105)、ステップS106に移行する。
【0106】
ステップS106においては、側面の動態画像の各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径の時間変化に基づいて、側面の気管・気管支領域の径が拡大したか縮小したかが判断される(ステップS106)。ステップS106の処理は、
図5のステップS16で説明したものと同様であるので説明を援用する。
側面の気管・気管支領域の径が拡大したと判断した場合(ステップS106;YES)、気管・気管支軟化症(Saber-sheath type)であると推定され(ステップS107)、ステップS113に移行する。
【0107】
側面の気管・気管支領域の径が縮小したと判断した場合(ステップS106;NO)、正面の動態画像の各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径に基づいて、気管・気管支領域の径の変化率が算出され、予め定められた閾値TH1以上であるか否かが判断される(ステップS108)。
気管・気管支領域の径の変化率は、(式1)により算出することができる。
【0108】
正面の気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1未満であると判断された場合(ステップS108;NO)、動的気道虚脱と推定され(ステップS109)、ステップS113に移行する。
正面の気管・気管支領域の径の変化率が予め定められた閾値TH1以上であると判断された場合(ステップS108;YES)、正面の動態画像の各フレーム画像から算出された気管・気管支領域の径の時間変化に基づいて、気管・気管支領域の径が拡大したか縮小したかが判断される(ステップS110)。ステップS110の処理は、
図5のステップS16で説明したものと同様であるので説明を援用する。
正面の気管・気管支領域の径が拡大したと判断された場合(ステップS110;YES)、気管・気管支軟化症(Crescent type)と推定され(ステップS111)、ステップS113に移行する。
正面の気管・気管支領域の径が縮小したと判断された場合(ステップS110;NO)、気管・気管支軟化症(Circumferential type)と推定され(ステップS112)、ステップS113に移行する。
なお、推定対象の気管・気管支領域が複数抽出されている場合は、領域ごとに、ステップS102~ステップS112の処理が実行され、全ての領域についてステップS102~S112の処理が終了すると、ステップS113に移行する。
【0109】
ステップS113においては、狭窄の有無と疾患の推定結果が表示部34に表示され(ステップS113)、狭窄状態推定処理Fは終了する。狭窄状態推定処理Fの終了後、測定された気管・気管支の狭窄率、狭窄の有無、及び疾患の推定結果が動態画像に対応付けて記憶部32に記憶される。
【0110】
上記狭窄状態推定処理A~Fにおいて、径を算出したり、径に基づいて判断を行ったりした箇所は、面積に置き換えて処理を行うことが可能である。
【0111】
上述のステップS19、S44、S59、S74、S94、S113において、狭窄状態の有無と疾患の推定結果を表示部34に表示する際には、制御部31は、併せて以下の狭窄状態を示す情報を表示することとしてもよい。
【0112】
例えば、
図11に示すように、気管・気管支領域の狭窄状態の変化率の時間変化を表すグラフを生成して、表示部34に表示することとしてもよい。ここで、狭窄状態の変化率は、以下の(式2)により算出することができる。パラメーター値は、推定に用いたパラメーター(気管・気管支領域の径(面積)又は濃度、すなわち狭窄状態を表す特徴量)の値である。
狭窄状態の変化率=(nフレーム目のパラメーター値-1フレーム目のパラメーター値)/1フレーム目のパラメーター値 ・・・(式2)
または、パラメーター値の時間変化を表すグラフを表示部34に表示してもよい。その際、呼気位相がどこであるかを示す表示をすることが好ましい。呼気位相の区間は、肺野面積が最大から最小になるまでのフレーム画像の区間として特定することができる。これにより、気管・気管支の状態の時間変化をユーザーが把握することが可能となる。
【0113】
また、
図12に示すように、狭窄状態の推定に用いた気管・気管支の位置を可視化して表示することとしてもよい。例えば、狭窄状態の推定に用いた気管・気管支領域の位置を代表フレーム画像において色を付けて表示することとしてもよい。また、
図13に示すように、狭窄状態を推定した気管・気管支の部位名、狭窄率を一覧表示してもよい。これにより、狭窄状態を推定した気管・気管支の位置及びそれぞれの狭窄の程度をユーザーが容易に把握することが可能となる。また、狭窄率と併せて、または狭窄率に代えて、径(面積)や濃度の変化量(最大変化量)を表示することとしてもよい。径(面積)や濃度の変化量(最大変化量)を表示する際には、径(面積、濃度)が拡大(増加)している場合は正の符号を付し、径(面積、濃度)が縮小(減少)している場合は負の符号を付して表すことが好ましい。
【0114】
また、
図14に示すように、過去に測定した狭窄率と患者数の関係を示すヒストグラムを作成し、今回動態画像から算出した狭窄率(被検者の狭窄率)の位置(
図14において患者Aで示す)を作成したヒストグラム上に表示してもよい。これにより、被検者の狭窄率を過去のデータと比較して、狭窄の重症度を把握することができる。ヒストグラム上に、正常・異常を分ける閾値を表示してもよい。なお、狭窄率を、気管・気管支領域の径(面積)や濃度の変化率に置き換えてもよい。
【0115】
また、
図15に示すように、過去に測定した正面と側面の気管・気管支領域の径(
図15、
図16において気道径と表記)の変化率の散布図を作成し、今回動態画像から算出した被検者の正面と側面の気管・気管支領域の径の変化率の位置を散布図上にプロットして(
図15において患者Aで示す)表示してもよい。これにより、被検者の気管・気管支領域の径の変化率を過去のデータと比較して、被検者の気管・気管支の狭窄の重症度を把握することが可能となる。なお、気管・気管支領域の径を気管・気管支領域の面積や濃度に置き換えてもよい。
【0116】
また、
図16に示すように、正面と側面の気管・気管支領域の径の変化率による正常及び疾患の分類図を作成し、今回動態画像から算出した被検者の正面と側面の気管・気管支領域の径の変化率の位置を作成した分類図上にプロットして(
図16において患者Aで示す)表示してもよい。これにより、被検者の気管・気管支の狭窄状態や疾患名を容易に推定することができる。なお、気管・気管支領域の径を気管・気管支領域の面積や濃度に置き換えてもよい。
【0117】
以上説明したように、診断用コンソール3の制御部31は、気管・気管支を含む被写体を動態撮影することにより得られた二次元画像からなる動態画像を解析して、気管・気管支の狭窄状態を表す特徴量を測定し、測定結果に基づいて、気管・気管支の狭窄状態を推定する。
したがって、4DCT検査のように被ばく量が多くコストも高い検査を行うことなく、より簡易的な検査手法により、気管・気管支の狭窄状態を推定することが可能となる。
【0118】
例えば、制御部31は、動態画像における気管・気管支領域の径、面積、濃度の少なくとも一つの測定結果に基づいて、気管・気管支の狭窄状態を推定する。したがって、動態画像から測定した、気管・気管支領域の径、面積、濃度の少なくとも一つから気管・気管支の狭窄状態を推定することが可能となる。
【0119】
また、制御部31は、さらに、気管及び/又は気管支の疾患を推定するので、気管及び/気管支の疾患をユーザーが認識することが可能となる。その結果、疾患に合った適切な治療を行うことが可能となる。
例えば、動態画像が1方向から気管及び/又は気管支を含む被写体を動態撮影することにより得られた画像である場合、制御部31は、動態画像から気管領域及び/又は気管支領域の径又は面積、及び濃度を測定することにより気管及び/又は気管支の疾患を推定することができる。
また、例えば、動態画像が、例えば、異なる2方向から気管及び/又は気管支を含む被写体を動態撮影することにより得られた画像である場合、制御部31は、2方向から撮影した動態画像の双方から、気管領域及び/又は気管支領域の径又は面積を測定するか、又は濃度を測定することにより気管及び/又は気管支の疾患を推定することができる。2方向から撮影された動態画像が被写体を正面及び側面の2方向から撮影した画像である場合、精度よく気管及び/又は気管支の疾患を推定することができる。
気管及び/又は気管支の疾患がわかることで、疾患に合った適切な治療を行うことが可能となる。
【0120】
また、制御部31は、呼気位を含むタイミングで撮影された動態画像から気管及び/又は気管支の狭窄状態を推定することで、狭窄状態を精度よく推定することが可能となる。
【0121】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、正面及び/又は側面の撮影方向の動態画像を用いて狭窄状態の推定を行う場合を例にとり説明したが、斜位方向の動態画像を加えて狭窄状態の推定を行ってもよい。これにより、変則的な縮まり方など、より情報量を増やして推定することができるので、精度よく推定を行うことが可能となる。
【0122】
また、上記実施形態においては、
図5から
図10の狭窄状態推定処理A~Fのフローのいずれかを用いて狭窄状態や疾患を推定する例を示したが、これに限定されず、例えば、
図16に示す分類図を予め記憶部32に記憶しておき、今回動態画像から算出した被検者の正面と側面の気道径(または、面積、濃度)の変化率の位置(1方向の場合は気道径(又は面積)及び濃度)を分類図上にプロットすることにより被検者の狭窄状態や疾患を推定することとしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態においては、胸部の動態画像から気管・気管支の狭窄状態や疾患を推定する場合を例にとり説明したが、気管・気管支を含む被写体が撮影された画像であれば特に限定されない。また、気管・気管支を含む被写体を呼吸サイクルよりも短い時間間隔で連続的に撮影することにより得られた複数の静止画像を用いてもよい。
【0124】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0125】
その他、画像解析装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0126】
100 画像解析システム
1 撮影装置
11 放射線源
12 放射線照射制御装置
13 放射線検出部
14 読取制御装置
2 撮影用コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス
3 診断用コンソール
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス