(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F02D 29/00 20060101AFI20221012BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20221012BHJP
A01B 71/02 20060101ALI20221012BHJP
B60K 25/02 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F02D29/00 B
F02D29/02 321C
A01B71/02 H
A01B71/02 J
B60K25/02
(21)【出願番号】P 2019121591
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】青井 航一
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193047(JP,A)
【文献】特開2016-156690(JP,A)
【文献】特開2009-047044(JP,A)
【文献】特開2001-182101(JP,A)
【文献】特開平02-299933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00-29/06,43/00-45/00
A01B 51/00-61/04,63/14-67/00,
71/00-79/02,
B60K 25/00-28/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動力を発生するエンジン(5)と、
前記エンジン(5)の回転数を所定の低速回転数から高速回転数までの範囲内で固定するよう操作するスロットル操作手段(15)と、
前記エンジン(5)の回転数を任意に変更するよう操作するアクセル操作手段(16)と、
路上走行モードと作業走行モードを切り替えるモード切替え手段(20)と、
回転動力を外部に出力するPTO軸(9)への前記エンジン(5)の回転動力の伝達を接続又は切断するPTOクラッチ(95)と、
前記PTOクラッチ(95)の接続又は切断の状態を切り替えるよう操作するPTOクラッチ切替え手段(23)と、
前記スロットル操作手段(15)の選択された回転数を検出するスロットルセンサ(72)と、
前記アクセル操作手段(16)の操作量を検出するアクセルセンサ(73)と、
前記モード切替え手段(20)の切り替えを検出するモード切替えセンサ(74)と、
少なくとも前記エンジン(5)の動作を制御する制御手段(70)と、
を備え、
前記制御手段(70)は、
前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードの切り替えを検出したときに前記PTOクラッチ切替え手段(23)が接続の状態に切り替えられているか又は切り替えられた場合、前記エンジン(5)の回転数を前記所定の低速回転数にするよう制御することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記エンジン(5)の回転動力を駆動輪(3,4)へ伝達するときの変速比を低速から高速までの範囲内で設定された複数の変速段から選択して切り替えるよう操作する変速操作手段(21,22)と、
前記変速操作手段(21,22)の選択された変速段を検出する変速操作センサ(75,76)と、
を備え、
制御手段(70)は、前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードの切り替えを検出したときに前記変速操作センサ(75,76)が最も高速の変速段に選択されていること又は選択したことを検出した場合、前記PTOクラッチ切替え手段(23)が接続の状態に切り替えられたときに、前記PTOクラッチ(95)を切断の状態に保つよう制御することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記エンジン(5)の回転動力を駆動輪(3,4)へ伝達するときの変速比を低速から高速までの範囲内で設定された複数の変速段から選択して切り替えるよう操作する変速操作手段(21,22)と、
前記変速操作手段(21,22)の選択された変速段を検出する変速操作センサ(75,76)と、
を備え、
制御手段(70)は、前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードの切り替えを検出したときに前記変速操作センサ(75,76)が最も高速の変速段に選択されていること又は選択したことを検出した場合、前記PTOクラッチ切替え手段(23)が接続の状態に切り替えられたときに、前記エンジン(5)の回転数を前記所定の低速回転数にするよう制御することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御手段(70)は、前記エンジン(5)の回転数を前記所定の低速回転数で制御している時間が一定の時間を経過したときに、前記エンジン(5)を停止させるよう制御することを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両におけるエンジンの回転を調節する技術としては、下記特許文献1に記載された作業車両が知られている。
【0003】
特許文献1には、エンジンからの回転駆動力を変速装置を介して出力する走行変速系を備え、その変速装置における副変速を行う副変速レバーが高速側に切り替えられた状態で路上走行する作業車両において、その副変速レバーの高速側への操作に連動して高速側にセットされているスロットルレバーを低速側に切り替えるとともに、副変速レバーの高速への切替え状態ではスロットルレバーの高速側への操作を規制する連動手段を備えるエンジン回転調整装置を採用した作業車両が記載されている。
また特許文献1には、副変速レバーが高速側に切り替えられた場合はスロットルレバーが連動手段によって低速側に切り替えられるとともに高速側への操作が規制された状態になるので、その状態で路上走行するときは、エンジンの回転調節をスロットルレバーとは別系統であるフットペダルのみで行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された作業車両は、副変速レバーとスロットルレバーが連動手段で連結されているため、副変速レバーを高速側に切り替えた場合には、常にスロットルレバーが低速側に切り替えられて高速側への操作が規制されることになってしまい、エンジンの回転数をスロットルレバーの操作により調節することが不可能であった。
このため、この作業車両では、圃場、牧場等の作業場において例えばトレーラーを牽引して荷物の運搬移動をする場合、副変速レバーを高速側に切り替えたときには、スロットルレバーを操作して高速で走行したいときがあっても、それができず不便を強いられることになる。
【0006】
ちなみに近年、本出願人にあっては、路上を走行する路上走行モードと圃場等で作業しながら走行する作業走行モードとして、その路上走行や作業走行にそれぞれ適した制御機能や動作が有効になるよう予め選定された構成からなるモードを用意し、その路上走行モードと作業走行モードをモード切替えスイッチで簡単に切り替えて対応することができる作業車両の開発を続けている。その構成の一例としては、作業走行モードが選択されたときには、副変速レバーの選択内容に関係なくスロットルレバーによる制御操作を可能とする一方で、路上走行モードが選択されたときには、スロットルレバーによる制御操作を禁止するという設定である。
このようなモード切り替えが可能な作業車両であれば、作業走行モードを選択したときにスロットルレバーによる制御操作ができるので、作業場においてスロットルレバーを操作して低速以外の高速等の選択内容にしたうえで走行することも可能になる。
【0007】
また、特許文献1に記載された作業車両と上記モード切り替えが可能な作業車両はいずれも、その外部にロータリ耕うん機等の作業機を装着することが可能であり、また、その作業機を作動させる回転動力を伝達するためエンジンで発生する回転動力の一部を分配して出力するPTO軸を備えている。
【0008】
ところが、これらの作業車両にあっては、一般に路上に停止して置かれているときや路上走行中においてもPTO軸を作動させた状態にすることが可能になっている。すなわち、路上走行する際にも、エンジンの回転動力のPTO軸への伝達を接続又は切断するためのPTOクラッチの接続又は切断の状態を切り替えるPTOクラッチ切替えスイッチを、その接続の状態にすることができる。
このため、このような作業車両では、路上に置かれているときや路上走行中のときに作業機を装着したままPTO軸を作動させていると、その作業機が作動した状態におかれるので周囲に危険を及ぼすおそれがあった。特にPTO軸を高速で作動させている場合には、その危険性が高くなる傾向にあった。
【0009】
そこで、この発明の課題は、路上走行モードに切り替えたときにPTOクラッチ切替えスイッチが意図せずに接続の状態にされていること又はされることがあったとしても、安全性を確保することができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、
回転動力を発生するエンジン(5)と、前記エンジン(5)の回転数を所定の低速回転数から高速回転数までの範囲内で固定するよう操作するスロットル操作手段(15)と、前記エンジン(5)の回転数を任意に変更するよう操作するアクセル操作手段(16)と、路上走行モードと作業走行モードを切り替えるモード切替え手段(20)と、回転動力を外部に出力するPTO軸(9)への前記エンジン(5)の回転動力の伝達を接続又は切断するPTOクラッチ(95)と、前記PTOクラッチ(95)の接続又は切断の状態を切り替えるよう操作するPTOクラッチ切替え手段(23)と、前記スロットル操作手段(15)の選択された回転数を検出するスロットルセンサ(72)と、前記アクセル操作手段(16)の操作量を検出するアクセルセンサ(73)と、前記モード切替え手段(20)の切り替えを検出するモード切替えセンサ(74)と、少なくとも前記エンジン(5)の動作を制御する制御手段(70)と、を備え、
前記制御手段(70)は、前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードの切り替えを検出したときに前記PTOクラッチ切替え手段(23)が接続の状態に切り替えられているか又は切り替えられた場合、前記エンジン(5)の回転数を前記所定の低速回転数にするよう制御することを特徴とする作業車両である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記エンジン(5)の回転動力を駆動輪(3,4)へ伝達するときの変速比を低速から高速までの範囲内で設定された複数の変速段から選択して切り替えるよう操作する変速操作手段(21,22)と、前記変速操作手段(21,22)の選択された変速段を検出する変速操作センサ(75,76)と、を備え、
制御手段(70)は、前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードの切り替えを検出したときに前記変速操作センサ(75,76)が最も高速の変速段に選択されていること又は選択したことを検出した場合、前記PTOクラッチ切替え手段(23)が接続の状態に切り替えられたときに、前記PTOクラッチ(95)を切断の状態に保つよう制御することを特徴とする作業車両である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記エンジン(5)の回転動力を駆動輪(3,4)へ伝達するときの変速比を低速から高速までの範囲内で設定された複数の変速段から選択して切り替えるよう操作する変速操作手段(21,22)と、前記変速操作手段(21,22)の選択された変速段を検出する変速操作センサ(75,76)と、を備え、
制御手段(70)は、前記モード切替えセンサ(74)が路上走行モードの切り替えを検出したときに前記変速操作センサ(75,76)が最も高速の変速段に選択されていること又は選択したことを検出した場合、前記PTOクラッチ切替え手段(23)が接続の状態に切り替えられたときに、前記エンジン(5)の回転数を前記所定の低速回転数にするよう制御することを特徴とする作業車両である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の作業車両において、前記制御手段(70)は、前記エンジン(5)の回転数を前記所定の低速回転数で制御している時間が一定の時間を経過したときに、前記エンジン(5)を停止させるよう制御することを特徴とする作業車両である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、路上走行モードに切り替えたときにPTOクラッチ切替えスイッチが意図せずに接続の状態にされていること又はされることがあったとしても、安全性を確保することができる。
この発明では、路上走行モードに切り替えたときにPTOクラッチ切替えスイッチが接続の状態になっているか又はその状態になった場合、スロットル操作手段の選択内容やアクセル操作手段の操作量に関係なく、エンジンの回転数が低速回転数になるよう制御される。これにより、PTO軸も低速で作動するようになり、作業機を装着した作業車両がPTO軸を低速以外の中速や高速等の速度で作動させた状態のままで路上に停止して置かれることや路上走行することがなくなるので、危険性が低減して安全性が確保される。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、路上走行モードに切り替えられているときに変速操作手段により最も高速の変速段が選択されている又は選択された場合、PTOクラッチ切替えスイッチが接続の状態に切り替えられていたり又は切り替えられたとしても、PTOクラッチが切断の状態に保たれるので、PTO軸が作動することがなく、安全性を確保することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、路上走行モードに切り替えられているときに変速操作手段により最も高速の変速段が選択されている又は選択された場合、PTOクラッチ切替えスイッチが接続の状態に切り替えられていたり又は切り替えられたとしても、エンジンの回転数が低速回転数になるよう制御されるので、PTO軸も低速で作動するようになり、安全性を確保することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明においてエンジンの回転数が低速回転数になるよう制御される場合でも、その制御されている時間が一定の時間を経過するとエンジンが停止させられるので、PTO軸の作動が停止するとともに操作車両の路上走行ができない状態になり、より安全性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施形態に係るトラクタを示す左側面図である。
【
図2】トラクタの駆動伝達系や制御系の構成を示す平面模式図である。
【
図3】操縦席の前方側の構成を示す概略斜視図である。
【
図4】(A)は
図3の前方側の一部を示す右側概略斜視図、(B)は(A)の前方側の一部における一部を示す概略拡大図である。
【
図5】(A)は操縦席の後方側の構成を示す概略斜視図、(B)は(A)の後方側の一部における一部を拡大して示す概略斜視図である。
【
図6】トラクタの制御系の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】第1の実施形態における走行モードに関する制御処理を示すフローチャート図である。
【
図8】第2の実施形態における走行モードに関する制御処理を示すフローチャート図である。
【
図9】第3の実施形態における走行モードに関する制御処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1には、この発明の第1の実施形態に係る作業車両の一例であるトラクタ1が示されている。
図2には、
図1のトラクタ1の一部(駆動伝達系や制御系の構成)が示されている。
以下の説明では、前後とはトラクタ1の前進する方向と後進する方向とする。また同様に、左右(L,R)とはトラクタ1の前進する方向で見たときの左側および右側とし、上下とはトラクタ1の上側および下側とする。
【0021】
トラクタ1は、
図1や
図2に示されるように、車体2の前部および後部に左右一対の前輪3(3L,3R)および後輪4(4L,4R)が設けられている。またトラクタ1は、車体2の前部に内に搭載されたエンジン5で発生させる回転動力が、車体2の中間部に配置された主変速部6Aと副変速部6Bからなる変速機構部6(
図2参照)において適宜減速された後に後輪4等に伝えられる。
これにより、トラクタ1は、所要の速度で前進および後進することが可能な車両として構成されている。エンジン5については、その前部および上部を含む一部が、開閉するボンネット7で覆われている。
【0022】
このトラクタ1においては、
図2に示されるように、変速機構部6において減速された後の回転動力を前輪3に伝達することを接続又は切断するための前輪駆動クラッチ65が設けられている。
この前輪駆動クラッチ65を接続する状態(入り状態)にしたときは、その回転動力が差動装置の前輪デフ装置31から左右の前輪軸部32L,32Rを通して前輪3に伝わるとともに後輪デフ装置41から左右の後輪軸部42L,42Rを通して後輪4に伝わって、四輪が駆動される。また、前輪駆動クラッチ65を切断する状態(切り状態)にしたときは、回転動力が後輪4のみに伝わって二輪が駆動される。
これにより、トラクタ1は、前輪駆動クラッチ65を切り替えることにより、二輪駆動(2WD)と四輪駆動(4WD)のいずれかの形態で走行することが可能になっている。
【0023】
また、トラクタ1は、
図1等に示されるように、車体2の後部に、ロータリ耕うん機等の作業機90を連結させて昇降動させる連結昇降装置8や、作業機90で利用される回転動力を出力するPTO軸9が設けられている。
【0024】
連結昇降装置8は、リンク機構、ロッド、油圧シリンダ等を組み合わせて構成されている。PTO軸9は、エンジン5で発生する回転動力の一部が分配されてPTOクラッチ95およびPTO変速部96(
図2参照)を介して伝達されることにより所定の速度および方向に回転するようになっている。
図1では、作業機90としてロータリ耕うん機を例示している。このロータリ耕うん機によれば、
図1に示されるように圃場に下降させられた状態において、PTO軸9から伝達される回転動力で耕うん爪91を回転させることにより圃場の地面(土壌)を耕すことができる。
【0025】
さらに、トラクタ1では、
図1から
図3等に示されるように、車体2の中間部から後部にかけて、トラクタ1の操縦者が座って運転等の操作を行う操縦席10が設けられている。操縦席10は、例えば、操縦者が座るシート部10aと操縦者の足を置く床面部10bとで構成されている。
【0026】
操縦席10の前方には、
図1、
図3等に示されるように、床面部10bの左右中央部から立ち上がるハンドルポスト11が設けられている。ハンドルポスト11の上部には、ステアリングホイール(ハンドル)12やメータパネル13が設けられている。
ステアリングホイール12は、前輪3の操舵装置33を作動させて走行するときの向きを調節するよう操作される。メータパネル13は、トラクタ1における走行速度、設定や状態の状況、警告内容等の情報を表示する表示手段等で構成されている。
【0027】
また、ハンドルポスト11の上部でステアリングホイール12の下方側の周辺部分には、
図3等に示されるように、前後進切替えレバー14、スロットルレバー15等が設けられている。
前後進切替えレバー14は、前進走行と後進走行との切り替えを行うように操作される。スロットルレバー15は、エンジン5の回転数を所定の範囲内で選択して固定するよう操作するスロットル操作手段の一例である。スロットルレバー15は、例えば、所定の低速回転数と所定の高速回転数の2種類の回転数を選択できるようになっている。このときの所定の低速回転数は、アイドリング状態のときの回転数に設定される。
【0028】
さらに、ハンドルポスト11の上部には、
図4に示されるように、トラクタ1の路上走行モードと作業走行モードを切り替えるモード切替え手段の一例としてのモード切替えスイッチ20が設けられている。
【0029】
第1の実施形態におけるモード切替えスイッチ20は、
図4(B)に拡大して示されるように、ダイヤル式のものであり、路上走行モードとしての「走行」と、作業走行モードとしての「耕うん」とに切り替えることができるように構成されている。
路上走行モードとしての「走行」は、道路走行、圃場の出入り、傾斜地等の場所を走行する際に適した機能や動作が予め選定されており、例えば4WD,2WDの駆動切り替え機能や水平切替え等が実行されるよう設定されている。作業走行モードとしての「耕うん」は、圃場等の作業場において行われる作業に適した機能や動作が予め選定されている。その機能や動作としては、例えば、4WDに固定されること、後進に切り替えたときやステアリングホイール12を切ったときに作業機90を自動で上昇させること、旋回時に内側の後輪4に自動的にブレーキをかけること等の機能や動作であり、これらが実行されるよう設定されている。
また、このモード切替えスイッチ20には、カスタマイズ設定モードとしての「こだわり」も用意されている。このカスタマイズ設定モードとしての「こだわり」は、主に作業時の機能について操縦者が任意に選択変更することが可能なモードであり、主に作業走行モードとしての「耕うん」における機能や動作の採用の有無を選択することができる。
【0030】
操縦席10の床面部10bでハンドルポスト11の下部の周辺部分には、
図3等に示されるように、アクセルペダル16、左右のブレーキペダル17L,17R、クラッチペダル18、PTO変速レバー19等が設けられている。
アクセルペダル16は、エンジン5の回転数を任意に変更するよう操作するアクセル操作手段の一例であり、ペダル式になっている。左右のブレーキペダル17L,17Rは、左右の後輪4L,4Rにおける図示しないブレーキ装置を作動させるときに踏み込んで操作される。クラッチペダル18は、エンジン5と主変速部6Aの間に配置されてエンジン5の回転動力の伝達を接続又は切断するとともに回転動力を前進および後進用に切り替えて伝達させる前後進クラッチ55を作動させるときに踏み込んで操作される。PTO変速レバー19は、PTO軸9の回転の速度や方向の切り替えが行われるPTO変速部96を作動させるときに操作される。
【0031】
操縦席10のシート部10aの左脇には、左側操作部が設けられている。この左側操作部には、
図5(A)に示されるように副変速部6Bの切り替えを行う副変速レバー21が設けられている。
副変速レバー21は、例えば、副変速ギヤ機構におけるギヤの組み合わせとして低速段、中速段および高速段の3種類の副変速段を選択して切り替えることができるよう構成されている。
【0032】
操縦席10のシート部10aの右脇には、右側操作部が設けられている。この右側操作部には、
図5に示されるように主変速部6Aの切り替えを行う主変速レバー22や、PTOクラッチ95における回転動力の伝達を接続又は切断する状態(入り状態と切り状態)を切り替えるPTO入切スイッチ23等が設けられている。
主変速レバー22は、例えば、主変速ギヤ機構におけるギヤの組み合わせとして1段(低速側)から15段(高速側)までの複数の主変速段のいずれかに自由に切り替えることができるよう構成されている。
【0033】
そして、このトラクタ1は、
図2や
図6に示されるように、エンジン5の動作やトラクタ1の走行動作等の各種の動作について制御するための制御手段70を備えている。
制御手段70は、例えばマイクロコンピュータ等で構成されるものであり、メモリ部70mに格納されている制御用のプログラムやデータに基づいて必要な制御を行うようになっている。
【0034】
この制御手段70には、エンジン5の動作を制御する際に参考にする指示情報や制御情報を得るためにエンジン回転センサ71、スロットルセンサ72、アクセルセンサ73等が接続されており、その各センサ71,72,73等で検出される検出値(検出結果の情報)が入力される。
エンジン回転センサ71は、エンジン5の回転数(例えばクランクの回転数)を検出する手段である。スロットルセンサ72は、スロットルレバー15の選択したときの回転数の移動位置を検出する手段である。アクセルセンサ73は、アクセルペダル16の操作量(ペダルの踏み込み量)を検出する手段である。
【0035】
また、制御手段70は、エンジン5の回転数を実際に調節するときの制御対象になる回転数調節装置51と接続されており、回転数調節装置51にエンジン5の回転数を制御するための制御信号を送信するようになっている。
回転数調節装置51は、エンジン5がガソリンエンジンである場合には、そのエンジン5におけるスロットルの開度をスロットルセンサ72又はアクセルセンサ73の検出値に応じて調節するようスロットルをワイヤーにより動かす装置として構成される。また、回転数調節装置51は、エンジン5がディーゼルエンジンである場合には、そのエンジン5における燃焼噴射のタイミングをスロットルセンサ72又はアクセルセンサ73の検出値に応じて調節するようセンサアームをリンクにより動かす装置として構成される。
【0036】
一方、制御手段70には、トラクタ1の走行動作を制御する際に参考にする制御情報を得るためにモード切替えセンサ74、副変速操作センサ75、主変速操作センサ76、走行速度センサ77等が接続されており、その各センサ74,75,76,77等で検出される検出値が入力される。
モード切替えセンサ74は、モード切替えスイッチ20の切り替えたときのモードの選択位置を検出する手段である。副変速操作センサ75は、副変速レバー21の選択したときの副変速段の移動位置を検出する手段である。主変速操作センサ76は、主変速レバー22の選択したときの主変速段の移動位置を検出する手段である。走行速度センサ77は、トラクタ1の走行速度を検出する手段である。
【0037】
また、制御手段70は、トラクタ1の走行条件を実際に変更するときの制御対象になる副変速駆動装置61、主変速駆動装置62等と接続されており、その副変速駆動装置61、主変速駆動装置62等に対して変速段の変更等の動作を制御するための制御信号を送信するようになっている。
副変速駆動装置61は、副変速操作センサ75の検出値に応じて副変速部6Bにおける副変速段等の変更を行うためのメカリンクや副変速の操作位置を検出する副変速操作センサ75等で構成された装置である。主変速駆動装置62は、主変速操作センサ76の検出値に応じて主変速部6Aにおける主変速段等の変更を行うためのソレノイド、油圧クラッチ等で構成された装置である。
【0038】
さらに、制御手段70には、トラクタ1のPTO軸9に関する動作を制御するときの制御処理の参考にする制御情報を得るためにPTO入切センサ78、PTO変速センサ79等が接続されており、その各センサ78,79等で検出される検出値が入力される。
PTO入切センサ78は、PTO入切スイッチ23における入り状態および切り状態を検出する手段である。PTO変速センサ79は、PTO変速レバー19の選択したときの移動位置を検出する手段である。
【0039】
また、制御手段70は、PTO軸9の動作を実際に変更するときの制御対象になるクラッチ駆動装置85、PTO変速駆動装置86等と接続されており、そのクラッチ駆動装置85、PTO変速駆動装置86等に対してその各動作を制御するための制御信号を送信するようになっている。
クラッチ駆動装置85は、PTO入切センサ78の検出値に応じてPTOクラッチ95における接続又は切断の状態の切り替えを行うためのソレノイド、油圧クラッチ等で構成された装置である。PTO変速駆動装置86は、PTO変速センサ79の検出値に応じてPTO変速部96における変速段等の変更を行うためのメカリンクやPTO変速の操作位置を検出するPTO変速センサ79等で構成された装置である。
【0040】
そして、このトラクタ1は、エンジン5を始動して走行等の動作を行うにときには、制御手段70により以下に説明する制御が行われるようになっている。
【0041】
このトラクタ1では、路上走行することを選択した場合、制御手段70により次のように制御される。
【0042】
すなわち、制御手段70は、
図7に示されるように、モード切替えスイッチ20が操作されることでモード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことを検出した検出値が得られるか否かを判断しており(ステップS10)、その検出値が得られると、PTO入切スイッチ23が接続の状態(入り状態)に切り替えられているか又は切り替えられたか否かを続けて判断する(S11)。
【0043】
このときのPTO入切スイッチ23の状態に関する情報は、例えば、その状態を検出する図示なしPTO入切センサから得られる検出値が用いられる。また、ステップS21においては路上走行モードに切り替えられたことの検出値を得た後にPTO入切スイッチ23が入り状態に切り替えられた場合も検出できるようになっている。そのPTO入切スイッチ23が入り状態に切り替えられたか否かについては、その検出値を得た時点から所定の時間(例えば数十秒の時間)が経過するまで確認し続けることで判断される。
【0044】
ステップS11においてPTO入切スイッチ23が入り状態にある又はその状態になったと判断されると、制御手段70は、エンジン5の回転数を低速回転数にするよう制御する(S12)。
【0045】
これにより、トラクタ1においては、回転数調節装置51が、先ずはスロットルセンサ72の検出値やアクセルセンサ73の検出値とは関係なく、エンジン5の回転数を低速回転数、本例ではアイドリング状態の回転数にするよう調節する。このため、トラクタ1では、その低速回転数で回転するエンジン5から得られる回転動力が低速で回転するようになり、また、その回転動力の一部がPTOクラッチ95およびPTO変速部96を介して伝達されるPTO軸9も比較的低速で回転するようになる。
【0046】
また、このときの制御手段70による制御は、モード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことの検出値が無くなるまで継続され(S12)、
図7に示されるように、その検出値が無くなって検出終了になった段階で終了する。
一方、ステップS11においてPTO入切スイッチ23が入り状態に切り替えられたことの検出情報が得られなかった場合は、制御手段70による上記の制御は行われることなく終了する。
【0047】
したがって、このトラクタ1は、路上走行モードが選択されたときに、PTO入切スイッチ23が入り状態になっているとき又はなったときには、エンジン5が低速回転数で回転してPTO軸9も低速で作動するようになるので、PTO軸9が比較的低速で作動した状態になって路上に停止して置かれたりあるいは路上走行することになる。別の観点からすると、このときのトラクタ1は、スロットルレバー15およびアクセルペダル16を操作することによりエンジン5の回転数を高めて中速や高速で路上走行させることができない。
【0048】
この結果、トラクタ1は、路上走行モードの選択時にPTO入切スイッチ23が意図せずに入り状態にされていることや入り状態にされることがあったとしても、例えば、作業機90を装着したトラクタ1がPTO軸9を低速以外の中速や高速等の速度で作動させた状態のままで路上に停止して置かれることや路上走行することがなくなるので、危険性が低減されて安全性を確保することができる。
【0049】
ちなみに、このトラクタ1においては、PTO入切スイッチ23が上記の状態から切断の状態(切り状態)に切り替えられた場合には、制御手段70によりエンジン5の回転数がアクセルセンサ73の検出値に応じて制御されるようになっている。
このため、このトラクタ1では、路上走行を開始した場合であっても、アクセルペダル16を多く踏み込んでエンジン5を高速の回転数に変更しない限りにおいては、エンジン5の回転数が比較的低速に保たれるようになっているので、PTO軸9が作動したままでも安全に路上走行することができる。また、特にエンジン5の回転数等の状態について安定させるよう自動で電子制御する装置(電子ガバナ制御装置:調速機)を具備している場合には、負荷変動にかかわらずエンジン5の回転数が安定するためPTO軸9の作動も安定するようになる。
【0050】
[第2の実施形態]
図8には、この発明の第2の実施形態に係るトラクタの一部(制御の構成例)が示されている。
第2の実施形態に係るトラクタは、路上走行することを選択した場合における制御手段70の制御が副変速レバー21の選択した変速段を考慮して行われるように変更した以外は第1の実施形態に係るトラクタ1と同じ構成のものである。
【0051】
すなわち、第2の実施形態に係るトラクタにおける制御手段70(
図6参照)は、
図8に示されるように、モード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことを検出した検出値が得られるか否かを判断した際(ステップS20)、路上走行モードに切り替えられたことの検出値が得られると、副変速レバー21の操作により副変速操作センサ75から最も高速の変速段に選択されているか又は選択されたか否かを続けて判断する(S21)。
また、制御手段70は、ステップS22においてモード切替えセンサ74から最も高速の変速段が選択されたとの検出値が得られたとき又は得られるようになったと判断すると、PTO入切スイッチ23が入り状態に切り替えられているか又は切り替えられたか否かを続けて判断する(S22)。
第2の実施形態における最も高速の変速段は、上記の低速、中速および高速という3つの副変速段における高速の副変速段が該当する。
【0052】
そして、ステップS22においてPTO入切スイッチ23が入り状態にある又はその状態になったと判断されると、制御手段70は、PTOクラッチ95を切断の状態(切り状態)に保つように制御する(S23)。
【0053】
これにより、トラクタ1では、PTO入切スイッチ23が入り状態に切り替えられているにもかかわらず、クラッチ駆動装置85がPTOクラッチ95を切り状態に維持し続けるように作動して、PTO軸9に回転動力が伝達されることがない。つまり、このときのトラクタ1は、路上走行モードに切り替えられたときに副変速レバー21が最も高速の変速段を選択しているため、エンジン5で発生する回転動力が副変速部6Bで比較的高速の回転動力として前輪3や後輪4に伝達される状態におかれているが、その一方でPTO軸9は回転動力が伝達されず回転しない状態に保たれる。
【0054】
また、このときの制御手段70による制御は、モード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことの検出値が無くなるまで継続され(S24)、その検出値が無くなって検出終了になった段階で終了する。
一方、ステップS21において副変速操作センサ75から最も高速の変速段に選択されているとの情報が得られなかった場合(換言すれば最も高速の変速段以外の変速段に選択されているとの検出値が得られた場合)と、ステップS22においてPTO入切スイッチ23が入り状態にあるとの情報が得られなかった場合には、
図8に示されるように、制御手段70による上記の制御は行われることなく終了する。
【0055】
したがって、このトラクタ1においては、路上走行モードの選択時に副変速レバー21が最も高速の変速段を選択されている場合に、PTO入切スイッチ23が意図せずに入り状態にされていることや入り状態にされることがあったとしても、PTOクラッチ95が切断の状態に保たれてPTO軸が作動することがないので、例えば、作業機90を装着したトラクタ1がPTO軸9を低速以外の中速や高速等の速度で作動させた状態のままで路上に停止して置かれることや路上走行することがなくなるので、危険性が低減されて安全性を確保することができる。
特にこのトラクタ1によれば、副変速部6Bが最も高速の変速段に設定されたなかで路上走行する場合でも、PTO軸が作動していないので安全に路上走行することができる。
【0056】
ちなみに、このトラクタ1は、ステップS21において副変速操作センサ75からの検出情報が最も高速の変速段以外の変速段(本例では低速又は中速)に選択されているとの検出情報が得られた場合において、PTO入切スイッチ23が入り状態にされていたり又は入り状態にされたときには、PTOクラッチ95が通常のとおり接続する状態にされ、これによりPTO軸9が作動するようになっている。
【0057】
[第3の実施形態]
図9には、この発明の第3の実施形態に係るトラクタの一部(制御の構成例)が示されている。
第3の実施形態に係るトラクタは、路上走行することを選択した場合における副変速レバー21の選択した変速段を考慮して行われる制御手段70の制御が以下に説明するように変更された以外は第2の実施形態に係るトラクタと同じ構成のものである。
【0058】
すなわち、第3の実施形態に係るトラクタにおける制御手段70(
図6参照)は、
図9に示されるように、第2の実施形態における制御手段70のステップS20からS22までの判断処理(
図8参照)と同様の判断(S30~S32)を行う。
そして、ステップS32においてPTO入切スイッチ23が入り状態にある又はその状態になったと判断されると、制御手段70は、先ずはエンジン5の回転数を低速回転数になるよう制御する(S33)。
【0059】
これにより、トラクタ1では、回転数調節装置51がスロットルセンサ72の検出値やアクセルセンサ73の検出値とは関係なく、エンジン5の回転数を低速回転数、本例ではアイドリング状態の回転数にするよう調整する。このため、このときのトラクタ1は、エンジン5で発生する回転動力が低速で回転するので、PTO軸9に伝達される回転動力も低速で回転することになり、PTO軸9が比較的低速で作動する状態におかれる。
【0060】
したがって、このトラクタ1においては、路上走行モードの選択時に副変速レバー21が最も高速の変速段を選択されている場合に、PTO入切スイッチ23が意図せずに入り状態にされていることや入り状態にされることがあったとしても、エンジン5の回転数が低速回転数になるよう制御されてPTO軸が比較的低速で作動することになるので、例えば、作業機90を装着したトラクタ1がPTO軸9を中速や高速で作動させた状態のままで路上に停止して置かれることや路上走行することがなくなり、これにより危険性が低減されて安全性を確保することができる。
特にこのトラクタ1によれば、PTO軸が少なくとも低速で作動するので、例えば、路上に停止させて置いた状態において作業機90の一例であるロータリ耕うん機における耕うん爪91を回転させることが可能である。これにより、例えば、その耕うん爪91に作業で付着した泥等の不要な付着物を回転で振り落とす等の作業を行うことができる。
【0061】
また、このときの制御手段70による制御は、原則として、モード切替えセンサ74から路上走行モードに切り替えられたことの検出値が無くなるまで継続され(S35)、その検出値が無くなって検出終了になった段階で終了する。
一方、ステップS31において副変速操作センサ75から最も高速の変速段に選択されているとの情報が得られなかった場合とステップS32においてPTO入切スイッチ23が入り状態にあるとの情報が得られなかった場合には、
図9に示されるように、制御手段70による上記の制御は行われることなく終了する。
【0062】
さらに、第3の実施形態における制御手段70では、
図9に示されるように、上記したエンジン5の回転数を低速回転数にする制御が開始されると、その開始時点からの経過時間(制御時間)が予め定める所定の閾値時間を越えるか否かを判断している(S34)。所定の閾値時間としては、例えば10秒~20秒程度の時間が設定される。
そして、このステップS34において制御時間が閾値時間を越えて経過すると、制御手段70は、エンジン5を停止させるように制御する(S36)。
【0063】
したがって、このトラクタ1では、上記したエンジン5の回転数を低速回転数にする制御が行われる場合でも、その制御時間が一定の閾値時間を経過するとエンジン5が停止させられるので、PTO軸9の作動が停止するとともにトラクタ1の路上走行ができない状態になり、危険性が更に低減されて安全性をより確保することができる。
【0064】
[変形例等の他の実施形態]
第1~第3の実施形態では、スロットル操作手段として、その一例であるスロットルレバー15に代えて、例えば段階式又は無段階式のダイヤル形態のスロットルダイヤル、押下方式や接触(タッチ)方式のスロットルボタン等に代表される他の形態からなるものを適用してもよい。
また第1~第3の実施形態では、アクセル操作手段として、その一例であるアクセルペダル16に代えて、例えばレバー式のアクセルレバー等に代表される他の形態からなるものを適用してもよい。
【0065】
また、第2および第3の実施形態では、制御手段70として、副変速レバー21の操作により選択される副変速部6Bの変速段が最も高速の変速段に選択されたことを検出することもできる副変速操作センサ75から得られる検出情報を利用して制御を行う構成例を示した。
しかし、その制御手段70については、主変速レバー22の操作により選択される主変速部6Aにおける変速段が最も高速の変速段に選択されたことを検出することもできる主変速操作センサ76から得られる検出情報を利用して制御を行うように構成してもよい。また、その制御手段70については、副変速操作センサ75から得られる検出情報と主変速操作センサ76から得られる検出情報とを組み合わせて利用して制御を行うように構成しても構わない。
また、第3の実施形態における制御手段70は、ステップS34およびS36として示す制御処理を省略した構成を採用することも可能である。
【0066】
さらに、第1および第3の実施形態における制御手段70については、路上走行モードの選択時にPTO入切スイッチ23が入り状態にある又はその状態になったと判断された後にエンジン5の回転数を低速回転数にする制御をした場合、その後においてスロットルレバー15を低速回転数を選択する位置に一度移動させる操作をすると、エンジン5の回転数をスロットルセンサ72の検出値に応じて制御することができるように構成してもよい。
【0067】
また、第1および第3の実施形態における制御手段70については、路上走行モードの選択時にエンジン5の回転数が低速回転数に制御されているときに、スロットルレバー15が低速回転数を選択する位置にない場合、メータパネル13における表示部13a(
図6参照)に警告の表示をすること、メータパネル13に付設する音発生部13b(
図6参照)で警告の音を発することの一方又はその双方を行うように構成するとよい。
このように構成した場合、トラクタ1の操縦者は、その警告の表示や警告音を受けることにより、操縦者が不適切な操作状態であることに気付くこととその操作状態を解消させる操作を容易に把握することができる等の効果がある。
【0068】
この場合、警告の表示は、例えば、メータパネル13において表示アイコンを点灯又は点滅させることで行えばよい。
また、このときの制御手段70については、上記エンジン5の回転数の制御が開始されてからスロットルレバー15が低速回転数を選択する位置にないときの経過時間が一定の時間を経過した場合、警告の表示や警告音の発生をした後又はそれらをせずに、エンジン5を停止させる制御を行うように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、トラクタなどの農作業用の車両に限られず、それ以外の各種作業用の車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 トラクタ
5 エンジン
9 PTO軸
15 スロットルレバー
16 アクセルペダル
20 モード切替えスイッチ
23 PTO入切スイッチ
70 制御手段
72 スロットルセンサ
73 アクセルセンサ
74 モード切替えセンサ
95 PTOクラッチ