(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】蓋開閉構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20221012BHJP
F16J 13/22 20060101ALI20221012BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20221012BHJP
F16J 13/16 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B60K15/05 B
F16J13/22
F16C11/04 F
F16J13/16
(21)【出願番号】P 2019122470
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0118644(US,A1)
【文献】特開2017-047827(JP,A)
【文献】特開2017-043894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0045049(US,A1)
【文献】特開2016-223150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0222356(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
F16J 13/22
F16C 11/04
F16J 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口に取り付けられる開口基材と、前記開口基材に対して前記開口を開閉させる方向に回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体が前記開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより前記蓋体を開動作させるプッシュリフタ機構と、を備える蓋開閉構造であって、
前記プッシュリフタ機構は、
前記開口基材と前記蓋体との回動中心に配置される回動軸と、
前記開口基材と前記蓋体との間に介在し、前記蓋体を前記開口基材に対して前記蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材と、
前記開口基材と前記蓋体とのうちの一方に設けられ、前記回動軸の軸回り方向に延びて形成されたカム溝と、
前記開口基材と前記蓋体とのうちの他方に設けられ、前記カム溝に前記蓋体の開閉位置に応じた箇所で係合するリードピンと、
を有
し、
前記カム溝は、
前記蓋体が前記閉塞位置から所定押込位置まで押込操作される際、前記蓋体が前記所定押込位置から所定開位置まで開動作する際、及び前記蓋体が前記所定開位置から前記閉塞位置まで閉動作する際に前記リードピンが一方通行で位置移動する、環状に形成された環状部と、
一端が前記環状部における前記蓋体の前記所定開位置に対応した所定箇所に接続し、前記蓋体が前記所定開位置から全開位置まで開動作しかつ前記蓋体が前記全開位置から前記所定開位置まで閉動作する際に前記リードピンが往復して位置移動する、線状に形成された延長線部と、
を有する、蓋開閉構造。
【請求項2】
前記蓋体が前記所定押込位置から前記全開位置へ開動作する際に前記蓋体の動作を前記付勢力に抗して減速させる回動減速機構を備え、
前記回動減速機構は、
前記開口基材と前記蓋体とのうちの一方に設けられ、前記回動軸の軸回り方向に対して傾斜する傾斜方向に延びるように形成された終端溝部を有するブレーキ溝と、
前記開口基材と前記蓋体とのうちの他方に設けられ、前記蓋体の開動作時に前記ブレーキ溝の前記終端溝部に係合するブレーキピンと、
を有する、請求項
1に記載された蓋開閉構造。
【請求項3】
車体の開口に取り付けられる開口基材と、前記開口基材に対して前記開口を開閉させる方向に回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体が前記開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより前記蓋体を開動作させるプッシュリフタ機構と、を備える蓋開閉構造であって、
前記プッシュリフタ機構は、
前記開口基材と前記蓋体との回動中心に配置される回動軸と、
前記開口基材と前記蓋体との間に介在し、前記蓋体を前記開口基材に対して前記蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材と、
前記開口基材と前記蓋体とのうちの一方に設けられ、前記回動軸の軸回り方向に延びて形成されたカム溝と、
前記開口基材と前記蓋体とのうちの他方に設けられ、前記カム溝に前記蓋体の開閉位置に応じた箇所で係合するリードピンと、
を有し、
前記カム溝は、前記回動軸の軸回り方向に形成される周面に、前記回動軸の径方向に向けて開口するように形成されている
、蓋開閉構造。
【請求項4】
車体の開口に取り付けられる開口基材と、前記開口基材に対して前記開口を開閉させる方向に回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体が前記開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより前記蓋体を開動作させるプッシュリフタ機構と、を備える蓋開閉構造であって、
前記プッシュリフタ機構は、
前記開口基材と前記蓋体との回動中心に配置される回動軸と、
前記開口基材と前記蓋体との間に介在し、前記蓋体を前記開口基材に対して前記蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材と、
前記開口基材と前記蓋体とのうちの一方に設けられ、前記回動軸の軸回り方向に延びて形成されたカム溝と、
前記開口基材と前記蓋体とのうちの他方に設けられ、前記カム溝に前記蓋体の開閉位置に応じた箇所で係合するリードピンと、
を有し、
前記カム溝は、前記回動軸の軸方向に対する鉛直面に、前記回動軸の軸方向に向けて開口するように形成されている
、蓋開閉構造。
【請求項5】
車体の開口に取り付けられる開口基材と、前記開口基材に対して前記開口を開閉させる方向に回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体が前記開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより前記蓋体を開動作させるプッシュリフタ機構と、を備える蓋開閉構造であって、
前記プッシュリフタ機構は、
一端部で前記開口基材に対して回動可能に支持されると共に、他端部で前記蓋体に対して回動可能に支持されるアームと、
前記開口基材と前記アームとの回動中心及び前記蓋体と前記アームとの回動中心に配置される二以上の回動軸と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとの間に介在し、前記アームを前記開口基材又は前記蓋体に対して前記蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの一方に設けられ、何れかの前記回動軸の軸回り方向に延びて形成されたカム溝と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの他方に設けられ、前記カム溝に前記蓋体の開閉位置に応じた箇所で係合するリードピンと、
を有
し、
前記カム溝は、
前記蓋体が前記閉塞位置から所定押込位置まで押込操作される際、前記蓋体が前記所定押込位置から所定開位置まで開動作する際、及び前記蓋体が前記所定開位置から前記閉塞位置まで閉動作する際に前記リードピンが一方通行で位置移動する、環状に形成された環状部と、
一端が前記環状部における前記蓋体の前記所定開位置に対応した所定箇所に接続し、前記蓋体が前記所定開位置から全開位置まで開動作しかつ前記蓋体が前記全開位置から前記所定開位置まで閉動作する際に前記リードピンが往復して位置移動する、線状に形成された延長線部と、
を有する、蓋開閉構造。
【請求項6】
前記蓋体が前記所定押込位置から前記全開位置へ開動作する際に前記蓋体の動作を前記付勢力に抗して減速させる回動減速機構を備え、
前記回動減速機構は、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの一方に設けられ、前記回動軸の軸回り方向に対して傾斜する傾斜方向に延びるように形成された終端溝部を有するブレーキ溝と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの他方に設けられ、前記蓋体の開動作時に前記ブレーキ溝の前記終端溝部に係合するブレーキピンと、
を有する、請求項5に記載された蓋開閉構造。
【請求項7】
車体の開口に取り付けられる開口基材と、前記開口基材に対して前記開口を開閉させる方向に回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体が前記開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより前記蓋体を開動作させるプッシュリフタ機構と、を備える蓋開閉構造であって、
前記プッシュリフタ機構は、
一端部で前記開口基材に対して回動可能に支持されると共に、他端部で前記蓋体に対して回動可能に支持されるアームと、
前記開口基材と前記アームとの回動中心及び前記蓋体と前記アームとの回動中心に配置される二以上の回動軸と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとの間に介在し、前記アームを前記開口基材又は前記蓋体に対して前記蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの一方に設けられ、何れかの前記回動軸の軸回り方向に延びて形成されたカム溝と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの他方に設けられ、前記カム溝に前記蓋体の開閉位置に応じた箇所で係合するリードピンと、
を有し、
前記カム溝は、前記回動軸の軸回り方向に形成される周面に、前記回動軸の径方向に向けて開口するように形成されている
、蓋開閉構造。
【請求項8】
車体の開口に取り付けられる開口基材と、前記開口基材に対して前記開口を開閉させる方向に回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体が前記開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより前記蓋体を開動作させるプッシュリフタ機構と、を備える蓋開閉構造であって、
前記プッシュリフタ機構は、
一端部で前記開口基材に対して回動可能に支持されると共に、他端部で前記蓋体に対して回動可能に支持されるアームと、
前記開口基材と前記アームとの回動中心及び前記蓋体と前記アームとの回動中心に配置される二以上の回動軸と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとの間に介在し、前記アームを前記開口基材又は前記蓋体に対して前記蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの一方に設けられ、何れかの前記回動軸の軸回り方向に延びて形成されたカム溝と、
前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの他方に設けられ、前記カム溝に前記蓋体の開閉位置に応じた箇所で係合するリードピンと、
を有し、
前記カム溝は、前記回動軸の軸方向に対する鉛直面に、前記回動軸の軸方向に向けて開口するように形成されている
、蓋開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に設けられた開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させる蓋開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給油口などが設けられた車体の開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させる蓋開閉構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の蓋開閉構造は、開口基材と、蓋体と、プッシュリフタ機構と、を備えている。開口基材は、車体の開口に取り付けられる部材である。蓋体は、車体の開口を開閉させるリッド部材であり、ヒンジ部で開口基材に対して回動可能に支持されている。プッシュリフタ機構は、蓋体が開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより蓋体を開動作させる機構である。
【0003】
プッシュリフタ機構は、開口基材に取り付けられている。プッシュリフタ機構は、蓋体における開口基材との連結部であるヒンジ部とは反対の回動時に大きな弧を描く反連結側に配置されている。プッシュリフタ機構は、直線状に形成されたロッドピンと、一端部で後述のケースに固定されかつ他端部でロッドピンに固定されたコイルスプリングと、ロッドピンの一部(具体的には、コイルスプリングへの固定側)及びコイルスプリングを収容するケースと、を有している。
【0004】
上記のプッシュリフタ機構において、ロッドピンは、棒状に延びたピン部と、ピン部に接続され、環状ハート型の溝が形成されたカム部と、を有している。カム部の溝には、線状部材の先端部が係合して案内されている。線状部材は、後端部にてケース側に取り付けられて支持されている。線状部材の先端部は、カム部の溝内で一方通行の周回経路を移動する。線状部材の先端部の周回経路移動は、ピン部のケース内への押込移動とケース外への引出移動とが繰り返されることにより実現される。
【0005】
コイルスプリングは、ロッドピンを蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材である。蓋体が閉塞位置から僅かに開動作した所定開位置よりも閉塞位置側にあるとき、ロッドピンの先端は蓋体の裏面に当接し、蓋体はロッドピンを介してコイルスプリングの付勢力を受ける。蓋体は、ロッドピンの先端が蓋体の裏面に当接していても、所定ロック機構によりコイルスプリングの付勢力に抗して閉塞位置にロックされることが可能である。
【0006】
蓋体が閉塞位置にあるとき、操作者による操作により所定ロック機構のロックが解除された後に、操作者により蓋体が閉塞位置から奥側へコイルスプリングの付勢力に抗して押込操作されると、ピン部がケース内へ押込移動され、線状部材の先端部がカム部の溝の第一角部で留まることとなる。そして、操作者による蓋体の押込操作が解除されると、コイルスプリングの付勢力によりロッドピンが蓋体を開動作させる方向に付勢され、ピン部がケース外へ引き出され、線状部材の先端部がカム部の溝の第一線部を移動する。そして、線状部材の先端部が第一基準位置に達すると、ピン部の先端が最もケースから離れ、蓋体が閉塞位置から僅かに開動作した所定開位置に到達する。その後、操作者が手動で蓋体を全開位置まで回動させる。
【0007】
次に、蓋体が全開位置にあるとき、操作者により蓋体が閉塞位置側へ回動操作され、更に、その蓋体が上記の所定開位置の到達後にコイルスプリングの付勢力に抗して奥側へ回動操作されると、ピン部がケース内へ押込移動され、線状部材の先端部がカム部の溝の第二線部を移動してその後に第二角部で留まることとなる。そして、操作者による蓋体の回動操作が解除されると、コイルスプリングの付勢力によりロッドピンが蓋体を開動作させる方向に付勢され、線状部材の先端部が第二基準位置に達する。そして、線状部材の先端部が第二基準位置に達すると、ロッドピンがコイルスプリングの付勢力により開方向へ移動するのが規制され、蓋体が閉塞位置に到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の蓋開閉構造において、プッシュリフタ機構は、開口基材に取り付けられ、蓋体に連結するヒンジ部とは反対の反連結側に配置されている。このため、開口基材の反連結側にプッシュリフタ機構の配置スペースを確保することが必要である。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、プッシュリフタ機構を回動軸周辺に配置することで構造のコンパクト化を図ることが可能な蓋開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様である蓋開閉構造は、車体の開口に取り付けられる開口基材と、前記開口基材に対して前記開口を開閉させる方向に回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体が前記開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより前記蓋体を開動作させるプッシュリフタ機構と、を備える蓋開閉構造であって、前記プッシュリフタ機構は、前記開口基材と前記蓋体との回動中心に配置される回動軸と、前記開口基材と前記蓋体との間に介在し、前記蓋体を前記開口基材に対して前記蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材と、前記開口基材と前記蓋体とのうちの一方に設けられ、前記回動軸の軸回り方向に延びて形成されたカム溝と、前記開口基材と前記蓋体とのうちの他方に設けられ、前記カム溝に前記蓋体の開閉位置に応じた箇所で係合するリードピンと、を有する。
【0012】
この構成によれば、開口基材と蓋体とが相対的に回動する回動軸の周辺にプッシュリフタ機構の構成部品を集約して配置することができるので、蓋開閉構造のコンパクト化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の一態様である蓋開閉構造は、車体の開口に取り付けられる開口基材と、前記開口基材に対して前記開口を開閉させる方向に回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体が前記開口を塞いだ閉塞位置から押込操作されることにより前記蓋体を開動作させるプッシュリフタ機構と、を備える蓋開閉構造であって、前記プッシュリフタ機構は、一端部で前記開口基材に対して回動可能に支持されると共に、他端部で前記蓋体に対して回動可能に支持されるアームと、前記開口基材と前記アームとの回動中心及び前記蓋体と前記アームとの回動中心に配置される二以上の回動軸と、前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとの間に介在し、前記アームを前記開口基材又は前記蓋体に対して前記蓋体が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材と、前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの一方に設けられ、何れかの前記回動軸の軸回り方向に延びて形成されたカム溝と、前記開口基材又は前記蓋体と前記アームとのうちの他方に設けられ、前記カム溝に前記蓋体の開閉位置に応じた箇所で係合するリードピンと、を有する。
【0014】
この構成によれば、開口基材又は蓋体とアームとが相対的に回動する回動軸の周辺にプッシュリフタ機構の構成部品を集約して配置することができるので、蓋開閉構造のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓋開閉構造における閉塞状態での斜視図(但し、蓋体は図示せず)である。
【
図2】実施形態の蓋開閉構造における閉塞状態での上面図(但し、蓋体は図示せず)である。
【
図3】実施形態の蓋開閉構造における開状態での表面側からの斜視図である。
【
図4】実施形態の蓋開閉構造における開状態での裏面側からの斜視図である。
【
図5】実施形態の蓋開閉構造における開口基材とアームとの連結部における分解斜視図である。
【
図6】実施形態の蓋開閉構造が備えるプッシュリフタ機構の要部の斜視図である。
【
図7】実施形態の蓋開閉構造が備えるプッシュリフタ機構の要部の上面図である。
【
図8】実施形態の蓋開閉構造が備えるプッシュリフタ機構のカム溝及びブレーキ溝の展開図である。
【
図9】実施形態の蓋開閉構造が備えるプッシュリフタ機構のカム溝とリードピン先端部との位置関係を蓋体の開閉位置ごとに表した図である。
【
図10】本発明の第一変形形態に係る蓋開閉構造が備えるプッシュリフタ機構の要部の側面図である。
【
図11】本発明の第二変形形態に係る蓋開閉構造の閉塞位置での側面図である。
【
図12】第二変形形態の蓋開閉構造の全開位置での側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて、本発明に係る蓋開閉構造の具体的な実施形態について説明する。
【0017】
一実施形態の蓋開閉構造1は、例えば車両の車体に設けられた開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させる構造である。蓋開閉構造1は、開口基材10と、蓋体20と、プッシュリフタ機構30と、回動減速機構40と、を備えている。
【0018】
図1、
図2、
図3、及び
図4に示す如く、開口基材10は、車両の車体側壁やボンネットなどに設けられた車体開口に取り付けられる基底部材である。開口基材10は、樹脂などにより成形された射出成形体であって、容器状或いは箱状に形成されている。開口基材10は、一端側(手前側)にて開口しかつ他端側(奥側)にて底壁が形成された円筒状や四角筒状の部材である。開口基材10は、開口11を有している。開口11は、給油口や充電口に連通している。開口11は、所定の平面形状(例えば、四角形状や円形状など)に形成されている。
【0019】
開口基材10は、環状又は枠状に形成された側壁部12と、側壁部12における開口11側の端部とは反対側である奥端部(すなわち、側壁部12における開口11の内方向Ziの端部)を塞ぐ底壁をなす基底部13と、を有している。基底部13には、給油口や充電口に連なる取出口13aが設けられている。取出口13aには、燃料タンクやバッテリなどに接続する配管やケーブルの一端が表出している。取出口13aは、蓋体20の閉状態で車体開口内に隠れる一方、蓋体20の開状態で燃料供給や充電が可能となるように外部に露出する。
【0020】
開口基材10は、第一支持部14と、第二支持部15と、を有している。第一支持部14及び第二支持部15はそれぞれ、基底部13から開口11の外方向Zoに突出するブロック状に形成されている。第一支持部14は、後述のプッシュリフタ機構のプライマリアームの一端部を回転可能に支持する部位である。第二支持部15は、後述のプッシュリフタ機構のセカンダリアームの一端部を回転可能に支持する部位である。
【0021】
第一支持部14と第二支持部15とは、基底部13の表面に沿った第一方向Xに離間して配置されている。第一支持部14及び第二支持部15は、二箇所ずつ設けられている。二箇所の第一支持部14は、上記の内外方向Z及び第一方向Xの双方に直交する基底部13の表面に沿った第二方向Yに離間して配置されている。二箇所の第二支持部15は、上記の第二方向Yに離間して配置されている。
【0022】
各第一支持部14にはそれぞれ、第一係合部14aが設けられている。第一係合部14aは、後述のプッシュリフタ機構のプライマリアームの一端部に係合する部位である。第一係合部14aは、上記の第二方向Yに延びる孔部又は溝部である。各第二支持部15にはそれぞれ、第二係合部15aが設けられている。第二係合部15aは、後述のプッシュリフタ機構のセカンダリアームの一端部に係合する部位である。第二係合部15aは、上記の第二方向Yに延びる孔部又は溝部である。
【0023】
蓋体20は、開口基材10の開口11ひいては車体開口(以下、「開口11」には車体開口を含むものとする。)を塞ぐ板状の部材である。蓋体20は、開口11を開閉させることが可能である。蓋体20は、開口基材10に対して開口11を開閉させる方向に回動可能に支持されている。蓋体20は、開口11の平面形状に合わせた形状に形成されている。蓋体20は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。蓋体20は、
図4に示す如く、表皮部材21と、保持部材22と、を有している。蓋体20は、表皮部材21が保持部材22に取り付け固定されることにより両部材21,22が互いに組み付けられた状態で構成される。
【0024】
表皮部材21は、蓋体20の表面として外部に露出する部材である。表皮部材21は、平板状に形成されており、開口基材10の開口11に対応した平面形状(例えば、四角形状や円形状など)に形成されている。また、保持部材22は、蓋体20の裏側を構成しており、表皮部材21を保持する部材である。表皮部材21と保持部材22とは、複数箇所で互いに締結されることにより固定される。
【0025】
保持部材22は、第三支持部24と、第四支持部25と、を有している。第三支持部24及び第四支持部25はそれぞれ、表皮部材21の裏面に沿って広がる平板部26から開口11の内方向Ziに突出するブロック状に形成されている。第三支持部24は、後述のプッシュリフタ機構のプライマリアームの他端部を回転可能に支持する部位である。第四支持部25は、後述のプッシュリフタ機構のセカンダリアームの他端部を回転可能に支持する部位である。
【0026】
第三支持部24と第四支持部25とは、表皮部材21の裏面に沿った方向(具体的には、蓋体20の閉塞位置では開口基材10における上記の内外方向Zに直交する第一方向Xに一致する方向)に離間して配置されている。第三支持部24及び第四支持部25は、二箇所ずつ設けられている。二箇所の第三支持部24、及び、二箇所の第四支持部25はそれぞれ、表皮部材21の裏面に沿った方向(すなわち、蓋体20の閉塞位置では開口基材10における上記の内外方向Z及び第一方向Xの双方に直交する第二方向Yに一致する方向)に離間して配置されている。
【0027】
各第三支持部24にはそれぞれ、第三係合部24aが設けられている。第三係合部24aは、後述のプッシュリフタ機構のプライマリアームの他端部に係合する部位である。第三係合部24aは、上記の第二方向Yに延びる孔部又は溝部である。各第四支持部25にはそれぞれ、第四係合部25aが設けられている。第四係合部25aは、後述のプッシュリフタ機構のセカンダリアームの他端部に係合する部位である。第四係合部25aは、上記の第二方向Yに延びる孔部又は溝部である。
【0028】
プッシュリフタ機構30は、蓋体20を開閉動作させる機構であって、特に、蓋体20が開口11を塞いだ閉塞位置Pcから車体奥側へ押込操作されることにより蓋体20を開動作させる機構である。プッシュリフタ機構30は、
図5、
図6、及び
図7に示す如く、アーム31と、回動軸32と、トーションスプリング33と、カム溝34と、リードピン35と、を有している。
【0029】
アーム31は、開口基材10と蓋体20との間に介在するリンク部材である。アーム31は、一端部で開口基材10に対して回動可能に支持されていると共に、他端部で蓋体20に対して回動可能に支持されている。アーム31は、二つのアーム31-1,31-2を有している。以下、適宜、アーム31-1をプライマリアーム31-1と、アーム31-2をセカンダリアーム31-2と、それぞれ称す。
【0030】
プライマリアーム31-1の一端部は、開口基材10の一対の第一支持部14に支持されている。プライマリアーム31-1の他端部は、蓋体20の一対の第三支持部24に支持されている。セカンダリアーム31-2の一端部は、開口基材10の一対の第二支持部15に支持されている。セカンダリアーム31-2の他端部は、蓋体20の一対の第四支持部25に支持されている。
【0031】
プライマリアーム31-1は、角棒状に形成されている。セカンダリアーム31-2は、二股に分かれた角棒状に形成されている。プライマリアーム31-1は、セカンダリアーム31-2の二股の角棒部間に嵌るように配置されている。蓋体20は、開口基材10に対してプライマリアーム31-1を介して回動すると共にセカンダリアーム31-2を介して回動する。蓋体20は、閉塞位置Pcと全開位置Poとの間で回動する際に開口基材10の開口11に対して平行移動する。尚、全開位置Poとは、蓋体20が開口基材10の開口11を全く塞がない状態にあることである。
【0032】
プライマリアーム31-1の一端部及び他端部にはそれぞれ、係合部31-1aが設けられている。係合部31-1aは、開口基材10の第一支持部14の第一係合部14a又は蓋体20の第三支持部24の第三係合部24aに係合する部位である。係合部31-1aは、上記の第二方向Yに延びる孔部である。セカンダリアーム31-2の一端部及び他端部にはそれぞれ、係合部31-2aが設けられている。係合部31-2aは、開口基材10の第二支持部15の第二係合部15a又は蓋体20の第四支持部25の第四係合部25aに係合する部位である。係合部31-2aは、上記の第二方向Yに延びる孔部である。
【0033】
回動軸32は、開口基材10とアーム31との回動中心(すなわち、支持中心)及び蓋体20とアーム31との回動中心に配置される軸部材である。回動軸32は、丸棒状に延びる係合ピンである。回動軸32は、開口基材10、蓋体20、及びアーム31とは独立して設けられている。回動軸32は、4本設けられている。
【0034】
一本目の回動軸32は、開口基材10の第一支持部14の第一係合部14a及びプライマリアーム31-1の一端部の係合部31-1aに挿入され、それらの係合部14a,31-1aを同軸上で係合させる。二本目の回動軸32は、蓋体20の第三支持部24の第三係合部24a及びプライマリアーム31-1の他端部の係合部31-1aに挿入され、それらの係合部24a,31-1aを同軸上で係合させる。三本目の回動軸32は、開口基材10の第二支持部15の第二係合部15a及びセカンダリアーム31-2の一端部の係合部31-2aに挿入され、それらの係合部15a,31-2aを同軸上で係合させる。四本目の回動軸32は、蓋体20の第四支持部25の第四係合部25a及びセカンダリアーム31-2の他端部の係合部31-2aに挿入され、それらの係合部25a,31-2aを同軸上で係合させる。
【0035】
尚、本実施形態では、各回動軸32が、上記の如く、開口基材10、蓋体20、及びアーム31とは独立して設けられた係合ピンであるが、その別個独立した係合ピンに代えて、それらの開口基材10、蓋体20、又はアーム31に一体に丸棒状に延びて形成される軸部であってもよい。
【0036】
トーションスプリング33は、蓋体20を開口基材10に対して蓋体20が開動作する方向に付勢する付勢力を発生する付勢部材である。トーションスプリング33は、蓋体20の後述の所定押込位置P1から閉塞位置Pcを経て全開位置Poまでの間において蓋体20にその付勢力を付与する。トーションスプリング33は、開口基材10又は蓋体20とアーム31との間に介在している。トーションスプリング33は、一端部が開口基材10又は蓋体20に係止されかつ他端部がアーム31に係止されるように取り付けられている。トーションスプリング33は、4本の回動軸32のうち2本の回動軸32(具体的には、開口基材10と何れかのアーム31との間の回動軸32及び蓋体20と何れかのアーム31との間の回動軸32)それぞれの軸回り方向に螺旋状に巻かれるように配置されている。
【0037】
アーム31(すなわち、プライマリアーム31-1又はセカンダリアーム31-2)は、軸体部31aを有している。軸体部31aは、アーム31の本体部に一体に設けられ、そのアーム31が開口基材10に対して回動する回動中心を通り回動軸32の軸方向に沿って延びている。軸体部31aは、回動軸32の外周を覆うように設けられた外筒部である。軸体部31aは、アーム31の回動に伴って一体となって回動軸32の軸回りに回動する。
【0038】
カム溝34は、アーム31の軸体部31aに設けられている。カム溝34は、軸体部31aにおける回動軸32の軸回り方向に沿った外周面に形成されており、回動軸32の径方向外方に向けて開口している。カム溝34は、回動軸32の軸回り方向に延びて形成されている。カム溝34は、開口基材10に対してアーム31が回動する際すなわち蓋体20が開閉動作する際にリードピン35の先端部が係合するハートカム溝である。カム溝34は、
図8及び
図9に示す如く、環状部34aと、延長線部34bと、を有している。
【0039】
環状部34aは、軸体部31aの外周面上で環状に形成されている。環状部34aは、リードピン35の先端部が係止されることで蓋体20がトーションスプリング33の付勢力に抗して閉塞位置Pcにロックされる閉ロック位置Lcと、蓋体20の所定押込位置P1から全開位置Poまでの開動作時及び全開位置Poから閉塞位置Pcまでの閉動作時の双方でリードピン35の先端部が通過する通過位置Lpと、を含むように形成されている。通過位置Lpは、環状部34aが延長線部34bの一端に接続する接続箇所であり、蓋体20の開動作時と閉動作時とでリードピン35の先端部の進行路が切り替わる分岐点である。
【0040】
環状部34aは、蓋体20が閉塞位置Pcから押込操作された所定押込位置P1とその閉塞位置Pcよりも開側かつ全開位置Poよりも閉側の所定開位置P2との間に位置する際にリードピン35の先端部が位置する部位である。具体的には、環状部34aは、蓋体20が閉塞位置Pcから所定押込位置P1まで押込操作される際、蓋体20が所定押込位置P1から所定開位置P2まで開動作する際、及び蓋体20が所定開位置P2から所定押込位置P1を経て閉塞位置Pcまで閉動作する際にリードピン35の先端部が一方通行で位置移動するようにハート型に形成されている。尚、蓋体20の所定開位置P2は、環状部34aの通過位置Lpに対応した位置であり、リードピン35の先端部が環状部34aの通過位置Lpに位置する際に蓋体20が位置する箇所である。
【0041】
延長線部34bは、軸体部31aの外周面上で線状に形成されている。延長線部34bの一端は、環状部34aの所定箇所に接続している。この環状部34aの所定箇所は、蓋体20の所定開位置P2に対応した上記の通過位置Lpである。延長線部34bは、リードピン35の先端部が係止されることで蓋体20がトーションスプリング33の付勢力に抗して全開位置Poにロックされる開ロック位置Loを含むように形成されている。
【0042】
延長線部34bは、蓋体20が所定開位置P2と全開位置Poとの間に位置する際にリードピン35の先端部が位置する部位である。具体的には、延長線部34bは、蓋体20が所定開位置P2から全開位置Poまで開動作しかつ蓋体が全開位置Poから所定開位置P2まで閉動作する際にリードピン35の先端部が往復して位置移動するように形成されている。延長線部34bは、軸体部31aの外周面においてアーム31が開口基材10に対して回動する周方向(すなわち、回動軸32の軸回り方向)に平行な方向に沿って直線状に延びている。
【0043】
開口基材10は、台座部16を有している。台座部16は、基底部13から開口11の外方向Zoに向けて突出するブロック状に形成されている。台座部16は、アーム31の軸体部31aに近接した箇所に設けられている。
【0044】
リードピン35は、開口基材10の台座部16に設けられている。リードピン35は、台座部16の円筒取付部16aから突出すると共に屈曲した状態にピン状に形成されている。リードピン35の一端部は、台座部16の上面に取り付け固定されている。リードピン35は、台座部16からアーム31の軸体部31aの外周面に接するように延びている。リードピン35の他端部(すなわち、先端部)は、上記のカム溝34に嵌って係合している。リードピン35は、台座部16側の一端部を支点にしてアーム31の軸体部31aの軸方向に沿う方向へ揺動可能である。リードピン35は、その先端部においてカム溝34に蓋体20の開閉位置に応じた箇所で係合する。
【0045】
回動減速機構40は、蓋体20が所定押込位置P1から全開位置Poへ開動作する過程で蓋体20の動作をトーションスプリング33の付勢力に抗して減速させる機構である。回動減速機構40は、
図6及び
図7に示す如く、ブレーキ溝41と、ブレーキピン42と、を有している。
【0046】
ブレーキ溝41は、アーム31の軸体部31aに設けられている。ブレーキ溝41は、軸体部31aの外周面に形成されており、回動軸32の径方向外方に向けて開口している。ブレーキ溝41は、上記のカム溝34に対して、回動軸32の軸方向に隣接して設けられている。ブレーキ溝41は、回動軸32の軸回り方向に延びて形成されている。ブレーキ溝41は、
図8に示す如く、直線溝部41aと、終端溝部41bと、を有している。
【0047】
直線溝部41aは、軸体部31aの外周面においてアーム31が開口基材10に対して回動する周方向(すなわち、回動軸32の軸回り方向)に平行な方向に沿って直線状に延びている。すなわち、直線溝部41aは、延長線部34bが環状部34aとの接続部側からその接続部側とは反対の先端側にかけて延びる延在方向に平行に延びている。直線溝部41aは、蓋体20の動作中のうち非減速時にブレーキピン42の先端部が位置する部位である。
【0048】
終端溝部41bは、直線溝部41aの一端に連通している。終端溝部41bは、軸体部31aの外周面においてアーム31が開口基材10に対して回動する周方向に対して傾斜する傾斜方向に延びるように形成されている。すなわち、終端溝部41bは、回動軸32の軸回り方向すなわち延長線部34bの延在方向に対して傾斜する傾斜方向に延びている。尚、終端溝部41bの傾斜方向は、蓋体20の開動作時の速度変化が所望変化になるものであればよく、例えば、延長線部34bの延在方向に対して一定角度をなすこととしてもよく、或いは、延長線部34bの延在方向に対する角度が変化するもの(例えば、屈曲や湾曲したもの)であってもよい。ブレーキ溝41は、例えば
図8に示す如く、J字状に形成されていてよい。
【0049】
ブレーキピン42は、開口基材10の台座部16に設けられている。ブレーキピン42は、台座部16の壁状取付部16bから突出した状態にピン状に形成されている。ブレーキピン42の一端部は、台座部16の上面に取り付け固定されている。ブレーキピン42は、台座部16からアーム31の軸体部31aの外周面に接するように延びている。ブレーキピン42の他端部(すなわち、先端部)は、上記のブレーキ溝41に嵌って係合している。ブレーキピン42は、上記のリードピン35とは異なり、台座部16側の一端部で軸体部31aの軸方向に沿う方向への揺動が規制されつつ、その方向への弾性変形を伴ってブレーキ溝41を辿るように構成されている。ブレーキピン42は、その先端部においてブレーキ溝41に蓋体20の開閉位置に応じた箇所で係合する。特に、ブレーキピン42は、蓋体20の開動作中において全開位置Poに接近した際にブレーキ溝41の終端溝部41bに係合する。
【0050】
次に、蓋開閉構造1の動作について説明する。
【0051】
蓋体20は、トーションスプリング33の付勢力の作用により
図6及び
図7に示す如くリードピン35の先端部がカム溝34の環状部34aの閉ロック位置Lcに係止されることで、その付勢力に抗して、開口11を塞いだ閉塞位置Pcにロックされる。
【0052】
蓋体20の閉塞位置Pcでのロック状態において、車両乗員などの操作者がトーションスプリング33の付勢力に抗して蓋体20の表面を開口11の内方向Ziへ押し込む押込操作を行うと、その押込力により、蓋体20がアーム31の他端部に対して回動軸32を中心にして開方向とは反対の閉方向へ回動すると同時に、アーム31の一端部が開口基材10に対して回動軸32を中心にして閉方向へ回動する。この際、リードピン35の先端部は、カム溝34の環状部34aにおいて上記の閉ロック位置Lcを外れ、やがて周方向一方(
図8及び
図9において下方)側の端部に達する。リードピン35がカム溝34の周方向一方側の端部に達すると、蓋体20のそれ以上の回動が規制される。この規制位置が蓋体20の所定押込位置P1である。
【0053】
蓋体20が閉塞位置Pcから所定押込位置P1に達した後に操作者による蓋体20の押込操作が解除されると、トーションスプリング33の付勢力により、アーム31の一端部が開口基材10に対して回動軸32を中心にして開方向へ回動すると同時に、蓋体20がアーム31の他端部に対して回動軸32を中心にして開方向へ回動する。この回動が生じると、リードピン35の先端部は、カム溝34の環状部34aを辿って延長線部34bとの接続箇所である通過位置Lpに達し、その後は延長線部34bを辿って、やがてカム溝34の周方向他方(
図8及び
図9において上方)側の端部である開ロック位置Loに達する。リードピン35がカム溝34の開ロック位置Loに達すると、蓋体20のそれ以上の回動が規制される。この規制位置が蓋体20の全開位置Poである。
【0054】
次に、蓋体20の全開位置Poにおいて、操作者がトーションスプリング33の付勢力に抗して蓋体20をアーム31の他端部に対して回動軸32を中心にして開方向とは反対の閉方向へ回動させると、アーム31の一端部が開口基材10に対して回動軸32を中心にして閉方向へ回動する。この回動が生じると、リードピン35の先端部は、カム溝34の延長線部34bを辿って通過位置Lpに達し、その後は環状部34a(具体的には、蓋体20の開動作時に辿った側とは異なる側)を辿る。
【0055】
操作者による蓋体20の閉方向への回動操作の過程で、蓋体20は、所定開位置P2及び閉塞位置Pcを通過する。そして、その閉方向への回動操作が更に継続すると、やがてリードピン35の先端部がカム溝34の周方向一方(
図8及び
図9において下方)側の端部に達する。リードピン35がカム溝34の周方向一方側の端部に達すると、蓋体20のそれ以上の回動が規制され、蓋体20が所定押込位置P1に達する。
【0056】
蓋体20が全開位置Poから所定押込位置P1に達した後に操作者による蓋体20の閉動方向への回動操作が解除されると、トーションスプリング33の付勢力により、アーム31の一端部が開口基材10に対して回動軸32を中心にして開方向へ回動すると同時に、蓋体20がアーム31の他端部に対して回動軸32を中心にして開方向へ回動する。この回動が生じると、リードピン35の先端部は、カム溝34の環状部34aを辿って閉ロック位置Lcに嵌って係止される。
【0057】
このように、蓋開閉構造1においては、蓋体20が閉塞位置Pcから操作者により開口11の内方向Ziへ押込操作されることによりその蓋体20を開動作させることができる。具体的には、蓋体20が閉塞位置Pcから所定押込位置P1まで押込操作された後にその押込操作が解除されることにより、トーションスプリング33の付勢力により蓋体20を所定押込位置P1から閉塞位置Pcを経て全開位置Poまで開動作させることができる。
【0058】
また、蓋体20が全開位置Poから操作者により閉方向に回動操作されることにより、その蓋体20を閉動作させることができる。そして、蓋体20が全開位置Poから閉塞位置Pcを超えて所定押込位置P1まで閉方向に回動操作された後にその閉方向への回動操作が解除されることにより、トーションスプリング33の付勢力によって蓋体20をその所定押込位置P1から閉塞位置Pcまで動作させてその蓋体20を閉塞位置Pcにロックすることができる。
【0059】
上記の構成においては、プッシュリフタ機構30を用いて蓋体20を閉塞位置Pcから全開位置Poまで開動作させるうえで、操作者がその蓋体20を閉塞位置Pcから所定押込位置P1まで押込操作することとすれば十分であり、蓋体20が閉塞位置Pcから僅かに開いて移動停止した後に操作者がその蓋体20を全開位置まで手動で回動させることは不要である。このため、蓋体20を閉塞位置Pcから全開位置Poまで開動作させるのに操作者の手間を省くことが可能である。
【0060】
また、蓋体20を閉塞位置Pcから全開位置Poまで開動作させるプッシュリフタ機構30は、アーム31と、回動軸32と、トーションスプリング33と、カム溝34と、リードピン35と、を有している。トーションスプリング33は、開口基材10又は蓋体20とアーム31とを連結する回動軸32の軸回り方向に螺旋状に巻かれるように配置されている。カム溝34は、アーム31の軸体部31aの外周面に形成されている。また、リードピン35は、開口基材10の台座部16に設けられており、台座部16からアーム31の軸体部31aの外周面に接するように延びている。
【0061】
このプッシュリフタ機構30によれば、開口基材10とアーム31とが相対的に回動する回動軸32の周辺に構成部品を集約して配置することができ、その構成部品を開口基材10におけるアーム31との連結部とは開口11を挟んで反対に位置する反連結側に配置することは不要であり、その反連結側にプッシュリフタ機構30の配置スペースを確保することは不要である。従って、プッシュリフタ機構30の省スペース化を図り、蓋開閉構造1のコンパクト化を図ることができる。
【0062】
また、蓋開閉構造1において、蓋体20の所定押込位置P1から全開位置Poまでの開動作中、蓋体20が全開位置Poに接近するまでは、回動減速機構40のブレーキピン42の先端部がブレーキ溝41の直線溝部41aに係合する。このときは、ブレーキピン42の先端部が直線溝部41aの内壁にほとんど摺動せずその内壁から大きな摺動抵抗を受けないので、蓋体20がトーションスプリング33の付勢力に応じた比較的大きな速度で開動作する。一方、上記の開動作中、蓋体20が全開位置Poに接近した後は、ブレーキピン42の先端部がブレーキ溝41の終端溝部41bに係合する。このときは、ブレーキピン42の先端部が終端溝部41bの内壁に摺動してその内壁から大きな摺動抵抗を受けるので、蓋体20がトーションスプリング33の付勢力に応じた速度を減速させた速度で開動作する。
【0063】
このように、蓋開閉構造1においては、回動減速機構40を用いて、蓋体20が所定押込位置P1から全開位置Poへ開動作する過程(特に、全開位置Poに接近した後)で蓋体20の動作をトーションスプリング33の付勢力に抗して減速させることができ、蓋体20の開動作速度を調整することができる。回動減速機構40は、ブレーキ溝41と、ブレーキピン42と、を有している。ブレーキ溝41は、アーム31の軸体部31aの外周面に形成されている。ブレーキピン42は、開口基材10の台座部16に設けられており、台座部16からアーム31の軸体部31aの外周面に接するように延びている。
【0064】
この回動減速機構40によれば、開口基材10とアーム31とが相対的に回動させる回動軸32の周辺に構成部品を集約して配置することができ、蓋体20の開動作速度を調整する構造を簡易なものとすることができる。
【0065】
尚、上記の実施形態においては、トーションスプリング33が特許請求の範囲に記載した「付勢部材」に相当している。
【0066】
ところで、上記の実施形態においては、カム溝34がアーム31に設けられ、リードピン35が開口基材10に設けられている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、逆に、カム溝34が開口基材10に設けられ、リードピン35がアーム31に設けられたものであってもよい。また、カム溝34がアーム31に設けられ、リードピン35が蓋体20に設けられてもよく、逆に、カム溝34が蓋体20に設けられ、リードピン35がアーム31に設けられてもよい。更に、プッシュリフタ機構30のカム溝34及びリードピン35が、二以上の箇所に設けられてもよい。
【0067】
また、上記の実施形態においては、プッシュリフタ機構30のカム溝34が、アーム31の軸体部31aにおける回動軸32の軸回り方向に形成される外周面に形成されている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、カム溝34が、アーム31の軸体部31aおける回動軸32の軸方向に対して垂直な鉛直面(例えば、軸方向端面など)に、回動軸32の軸方向に向けて開口するように形成されていてもよい。また、
図10に示す如く、カム溝34が、開口基材10における回動軸32の軸方向に対して垂直な鉛直面(例えば、軸方向端面など)に、回動軸32の軸方向に向けて開口するように形成されていてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態においては、開口基材10と蓋体20との間に介在するアーム31が、回動中心が互いにずれた二つのアームであるプライマリアーム31-1及びセカンダリアーム31-2を有する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、アーム31が一つのアームからなるものであってもよい。
【0069】
更に、上記の実施形態においては、開口基材10と蓋体20との間にアーム31が介在し、プッシュリフタ機構30のカム溝34が開口基材10又は蓋体20とアーム31とのうちの一方に設けられ、リードピン35が開口基材10又は蓋体20とアーム31とのうちの他方に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、
図11及び
図12に示す如く、開口基材10と蓋体20との間に介在するアーム31が存在せず、開口基材10と蓋体20とが回動軸32を介して直接に連結され、プッシュリフタ機構30のカム溝34が開口基材10と蓋体20とのうちの一方に設けられ、リードピン35が開口基材10と蓋体20とのうちの他方に設けられたものであってもよい。
【0070】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1:蓋開閉構造、10:開口基材、11:開口、20:蓋体、30:プッシュリフタ機構、31:アーム、31-1:プライマリアーム、31-2:セカンダリアーム、31a:軸体部、32:回動軸、33:トーションスプリング、34:カム溝、34a:環状部、34b:延長線部、35:リードピン、40:回動減速機構、41:ブレーキ溝、41a:直線溝部、41b:終端溝部、42:ブレーキピン。