(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】グラビア印刷装置および積層セラミックコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20221012BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20221012BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20221012BHJP
B41F 9/00 20060101ALI20221012BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20221012BHJP
【FI】
B41F33/00 210
B41M1/10
H01G4/30 311D
H01G4/30 517
B41F9/00 B
H01G13/00 391B
(21)【出願番号】P 2019136960
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平野 博之
(72)【発明者】
【氏名】植村 建
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-232054(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173703(WO,A1)
【文献】実開昭58-069440(JP,U)
【文献】特開平08-250370(JP,A)
【文献】特開2010-280165(JP,A)
【文献】特開2009-096189(JP,A)
【文献】国際公開第2008/028516(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
B41M 1/10
B41F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版ロールとドラムロールとの間で印刷対象物を挟み、前記版ロールの外周面に形成されているセルに充填されているインクを前記印刷対象物に転写することによって印刷を行うグラビア印刷装置であって、
外周面に、印刷すべき図形に対応した形状を有する前記セルが形成された第1の版ロールと、
前記ドラムロールと、
前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速を検出する第1の周速検出部と、
前記第1の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速と、前記第1の版ロールの周速とが一致するように、前記第1の版ロールの角速度を調整する第1の角速度調整部と、
を備え
、
前記印刷対象物は、キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートであって、
前記インクは、導電性ペーストおよびセラミックペーストのうちの少なくとも一つであり、
前記ドラムロールの外周面上のうち、少なくとも前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する部分には、弾性部材が配置されていることを特徴とするグラビア印刷装置。
【請求項2】
外周面に、印刷すべき図形に対応した形状を有する前記セルが形成された第2の版ロールと、
前記印刷対象物を介して前記第2の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速を検出する第2の周速検出部と、
前記第2の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速と、前記第2の版ロールの周速とが一致するように、前記第2の版ロールの角速度を調整する第2の角速度調整部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のグラビア印刷装置。
【請求項3】
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第1の版ロールの周速を検出する第3の周速検出部をさらに備え、
前記第1の角速度調整部は、前記第3の周速検出部によって検出された前記第1の版ロールの周速と、前記第1の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第1の版ロールの角速度を調整することを特徴とする請求項1または2に記載のグラビア印刷装置。
【請求項4】
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第1の版ロールの周速を検出する第3の周速検出部と、
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第2の版ロールの周速を検出する第4の周速検出部と、
をさらに備え、
前記第1の角速度調整部は、前記第3の周速検出部によって検出された前記第1の版ロールの周速と、前記第1の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第1の版ロールの角速度を調整し、
前記第2の角速度調整部は、前記第4の周速検出部によって検出された前記第2の版ロールの周速と、前記第2の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第2の版ロールの角速度を調整することを特徴とする請求項2に記載のグラビア印刷装置。
【請求項5】
版ロールとドラムロールとの間で印刷対象物を挟み、前記版ロールの外周面に形成されているセルに充填されているインクを前記印刷対象物に転写することによって印刷を行うグラビア印刷装置であって、
外周面に、印刷すべき図形に対応した形状を有する前記セルが形成された第1の版ロールと、
前記ドラムロールと、
前記ドラムロールの回転位置と、前記ドラムロールの周速との関係を示す周速データを記憶する記憶部と、
前記ドラムロールの回転位置を検出する回転位置検出部と、
前記回転位置検出部によって検出される前記ドラムロールの回転位置と、前記記憶部に記憶されている前記周速データとに基づいて、前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速を求め、求めた前記ドラムロールの周速と、前記第1の版ロールの周速とが一致するように、前記第1の版ロールの角速度を調整する第1の角速度調整部と、
を備え
、
前記印刷対象物は、キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートであって、
前記インクは、導電性ペーストおよびセラミックペーストのうちの少なくとも一つであり、
前記ドラムロールの外周面上のうち、少なくとも前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する部分には、弾性部材が配置されていることを特徴とするグラビア印刷装置。
【請求項6】
外周面に、印刷すべき図形に対応した形状を有する前記セルが形成された第2の版ロールと、
前記回転位置検出部によって検出される前記ドラムロールの回転位置と、前記記憶部に記憶されている前記周速データとに基づいて、前記印刷対象物を介して前記第2の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速を求め、求めた前記ドラムロールの周速と、前記第2の版ロールの周速とが一致するように、前記第2の版ロールの角速度を調整する第2の角速度調整部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のグラビア印刷装置。
【請求項7】
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第1の版ロールの周速を検出する第3の周速検出部をさらに備え、
前記第1の角速度調整部は、前記第3の周速検出部によって検出された前記第1の版ロールの周速と、前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第1の版ロールの角速度を調整することを特徴とする請求項5または6に記載のグラビア印刷装置。
【請求項8】
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第1の版ロールの周速を検出する第3の周速検出部と、
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第2の版ロールの周速を検出する第4の周速検出部と、
をさらに備え、
前記第1の角速度調整部は、前記第3の周速検出部によって検出された前記第1の版ロールの周速と、前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第1の版ロールの角速度を調整し、
前記第2の角速度調整部は、前記第4の周速検出部によって検出された前記第2の版ロールの周速と、前記印刷対象物を介して前記第2の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第2の版ロールの角速度を調整することを特徴とする請求項6に記載のグラビア印刷装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載のグラビア印刷装置を用いて、セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターンが形成された前記セラミックグリーンシートを含む複数の前記セラミックグリーンシートを積層することによって積層体を作製する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、
焼成後の前記積層体に外部電極を設ける工程と、
を備えることを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷装置、および、グラビア印刷装置を用いて積層セラミックコンデンサを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
版ロールとドラムロールとの間で印刷対象物を挟むことによって、版ロールのセルに充填されたインクを印刷対象物に転写して印刷を行うグラビア印刷装置が知られている。
【0003】
そのようなグラビア印刷装置の1つとして、特許文献1には、複数の版ロールのセルにそれぞれ異色のインクが貯留された状態で、複数の版ロールのそれぞれを回転させるとともに1つのドラムロールを回転させて、印刷対象物に多色グラビア印刷を行うグラビア印刷装置が記載されている。このグラビア印刷装置では、版ロールとドラムロールの周速が一致するように、版ロールの回転とドラムロールの回転がそれぞれ制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ドラムロールは、回転軸と直交する面で切断したときの断面形状が真円であることが好ましいが、加工精度によって真円にならない場合がある。その場合、ドラムロールの外周面の位置によって周速が異なるため、版ロールとドラムロールの当接する位置において、版ロールの周速とドラムロールの周速とが一致せず、印刷精度が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ドラムロールの断面形状が真円ではない場合でも、印刷精度を向上させることができるグラビア印刷装置、および、そのようなグラビア印刷装置を用いて積層セラミックコンデンサを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のグラビア印刷装置は、
版ロールとドラムロールとの間で印刷対象物を挟み、前記版ロールの外周面に形成されているセルに充填されているインクを前記印刷対象物に転写することによって印刷を行うグラビア印刷装置であって、
外周面に、印刷すべき図形に対応した形状を有する前記セルが形成された第1の版ロールと、
前記ドラムロールと、
前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速を検出する第1の周速検出部と、
前記第1の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速と、前記第1の版ロールの周速とが一致するように、前記第1の版ロールの角速度を調整する第1の角速度調整部と、
を備え、
前記印刷対象物は、キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートであって、
前記インクは、導電性ペーストおよびセラミックペーストのうちの少なくとも一つであり、
前記ドラムロールの外周面上のうち、少なくとも前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する部分には、弾性部材が配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記グラビア印刷装置は、
外周面に、印刷すべき図形に対応した形状を有する前記セルが形成された第2の版ロールと、
前記印刷対象物を介して前記第2の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速を検出する第2の周速検出部と、
前記第2の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速と、前記第2の版ロールの周速とが一致するように、前記第2の版ロールの角速度を調整する第2の角速度調整部と、
をさらに備えていてもよい。
【0009】
上記グラビア印刷装置は、
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第1の版ロールの周速を検出する第3の周速検出部をさらに備え、
前記第1の角速度調整部は、前記第3の周速検出部によって検出された前記第1の版ロールの周速と、前記第1の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第1の版ロールの角速度を調整するように構成されていてもよい。
【0010】
上記グラビア印刷装置は、
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第1の版ロールの周速を検出する第3の周速検出部と、
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第2の版ロールの周速を検出する第4の周速検出部と、
をさらに備え、
前記第1の角速度調整部は、前記第3の周速検出部によって検出された前記第1の版ロールの周速と、前記第1の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第1の版ロールの角速度を調整し、
前記第2の角速度調整部は、前記第4の周速検出部によって検出された前記第2の版ロールの周速と、前記第2の周速検出部によって検出された前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第2の版ロールの角速度を調整するように構成されていてもよい。
【0011】
本発明のグラビア印刷装置は、
版ロールとドラムロールとの間で印刷対象物を挟み、前記版ロールの外周面に形成されているセルに充填されているインクを前記印刷対象物に転写することによって印刷を行うグラビア印刷装置であって、
外周面に、印刷すべき図形に対応した形状を有する前記セルが形成された第1の版ロールと、
前記ドラムロールと、
前記ドラムロールの回転位置と、前記ドラムロールの周速との関係を示す周速データを記憶する記憶部と、
前記ドラムロールの回転位置を検出する回転位置検出部と、
前記回転位置検出部によって検出される前記ドラムロールの回転位置と、前記記憶部に記憶されている前記周速データとに基づいて、前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速を求め、求めた前記ドラムロールの周速と、前記第1の版ロールの周速とが一致するように、前記第1の版ロールの角速度を調整する第1の角速度調整部と、
を備え、
前記印刷対象物は、キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートであって、
前記インクは、導電性ペーストおよびセラミックペーストのうちの少なくとも一つであり、
前記ドラムロールの外周面上のうち、少なくとも前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する部分には、弾性部材が配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記グラビア印刷装置は、
外周面に、印刷すべき図形に対応した形状を有する前記セルが形成された第2の版ロールと、
前記回転位置検出部によって検出される前記ドラムロールの回転位置と、前記記憶部に記憶されている前記周速データとに基づいて、前記印刷対象物を介して前記第2の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速を求め、求めた前記ドラムロールの周速と、前記第2の版ロールの周速とが一致するように、前記第2の版ロールの角速度を調整する第2の角速度調整部と、
をさらに備えていてもよい。
【0013】
上記グラビア印刷装置は、
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第1の版ロールの周速を検出する第3の周速検出部をさらに備え、
前記第1の角速度調整部は、前記第3の周速検出部によって検出された前記第1の版ロールの周速と、前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第1の版ロールの角速度を調整するように構成されていてもよい。
【0014】
上記グラビア印刷装置は、
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第1の版ロールの周速を検出する第3の周速検出部と、
前記印刷対象物を介して前記ドラムロールと当接する位置における前記第2の版ロールの周速を検出する第4の周速検出部と、
をさらに備え、
前記第1の角速度調整部は、前記第3の周速検出部によって検出された前記第1の版ロールの周速と、前記印刷対象物を介して前記第1の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第1の版ロールの角速度を調整し、
前記第2の角速度調整部は、前記第4の周速検出部によって検出された前記第2の版ロールの周速と、前記印刷対象物を介して前記第2の版ロールと当接する位置における前記ドラムロールの周速との差が0になるように、前記第2の版ロールの角速度を調整するように構成されていてもよい。
【0016】
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、
上述したいずれかに記載のグラビア印刷装置を用いて、セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターンが形成された前記セラミックグリーンシートを含む複数の前記セラミックグリーンシートを積層することによって積層体を作製する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、
焼成後の前記積層体に外部電極を設ける工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のグラビア印刷装置によれば、ドラムロールの第1の版ロールと当接する位置の周速を検出し、検出されたドラムロールの周速と、第1の版ロールの周速とが一致するように、第1の版ロールの角速度を調整する。したがって、ドラムロールの断面形状が真円ではない場合でも、第1の版ロールとドラムロールの当接する位置における周速を一致させて、印刷精度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法によれば、上述したグラビア印刷装置を用いて、セラミックグリーンシート上に内部電極パターンを形成するので、所望の位置に内部電極パターンを形成することができ、所望の積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態におけるグラビア印刷装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【
図2】第1の版ロールの外観を模式的に示す斜視図である。
【
図4】グラビア印刷装置を用いて、印刷対象物に印刷を行う方法の一例を説明するための図である。
【
図5】第1の実施形態におけるグラビア印刷装置によって印刷を行う場合において、第1の版ロールの角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態におけるグラビア印刷装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【
図7】(a)は、キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートに内部電極パターンを形成した状態を示す図であり、(b)は、内部電極パターンの周囲にセラミックペーストパターンを形成した状態を示す図である。
【
図8】第2の実施形態におけるグラビア印刷装置によって印刷を行う場合において、第1の版ロールおよび第2の版ロールの角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図9】第3の実施形態におけるグラビア印刷装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【
図10】第3の実施形態におけるグラビア印刷装置によって印刷を行う場合において、第1の版ロールの角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図11】第4の実施形態におけるグラビア印刷装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【
図12】第4の実施形態におけるグラビア印刷装置によって印刷を行う場合において、第1の版ロールおよび第2の版ロールの角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図13】第5の実施形態におけるグラビア印刷装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【
図14】(a)は、ドラムロールの回転位置と、周速測定位置におけるドラムロールの周速との関係を示す図であり、(b)は、ドラムロールの回転位置と、印刷対象物を介して第1の版ロールと当接する位置におけるドラムロールの周速との関係を示す図である。
【
図15】第5の実施形態におけるグラビア印刷装置によって印刷を行う場合において、第1の版ロールの角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図16】第6の実施形態におけるグラビア印刷装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【
図17】第6の実施形態におけるグラビア印刷装置によって印刷を行う場合において、第1の版ロールおよび第2の版ロールの角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図18】第7の実施形態におけるグラビア印刷装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【
図19】第7の実施形態におけるグラビア印刷装置によって印刷を行う場合において、第1の版ロールの角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図20】第8の実施形態におけるグラビア印刷装置の主要部の構成を模式的に示す図である。
【
図21】第8の実施形態におけるグラビア印刷装置によって印刷を行う場合において、第1の版ロールおよび第2の版ロールの角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図22】積層セラミックコンデンサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0021】
本発明のグラビア印刷装置は、版ロールとドラムロールとの間で印刷対象物を挟み、版ロールの外周面に形成されているセルに充填されているインクを印刷対象物に転写することによって印刷を行う。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態におけるグラビア印刷装置10の主要部の構成を模式的に示す図である。グラビア印刷装置10は、第1の版ロール1と、ドラムロール2と、第1の周速検出部3と、第1の角速度調整部4と、第1のモータ5と、ドラムロール用モータ6とを備える。
【0023】
図2は、第1の版ロール1の外観を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、第1の版ロール1の外周面1aには、印刷すべき図形に対応した形状を有する複数のセル11が形成されている。印刷時に、複数のセル11には、インクが充填される。第1の版ロール1の回転駆動は、第1のモータ5によって行われる。
【0024】
図3は、ドラムロール2の断面図である。本実施形態において、ドラムロール2は、金属からなる中心部2aと、中心部2aを覆うように設けられた弾性部材2bとを備える。弾性部材2bは、ドラムロール2の外周面上のうち、少なくとも印刷対象物を介して第1の版ロール1と当接する部分に設けられている。弾性部材2bは、例えばゴムである。ドラムロール2の回転駆動は、ドラムロール用モータ6によって行われる。
【0025】
ドラムロール2の回転軸方向と垂直な方向で切断したときの断面は、真円であることが好ましいが、加工精度の関係で、
図3に示すように、真円にならない場合がある。その場合、ドラムロール2の半径r
dは、外周面上の位置によって異なるため、外周面の周速も位置によって異なる。
【0026】
図4は、グラビア印刷装置10を用いて、印刷対象物20に印刷を行う方法の一例を説明するための図である。
図4に示すように、印刷対象物20を第1の版ロール1とドラムロール2との間で挟み込み、第1の版ロール1およびドラムロール2をそれぞれ回転駆動させることによって、セル11(
図2参照)に充填されたインクが印刷対象物20上に転写される。なお、第1の版ロール1には、押圧部材であるプッシャーによって、ドラムロール2から離れないように圧力が印加される。
【0027】
印刷対象物20は、例えば、キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートである。また、第1の版ロール1のセル11に充填されるインクは、例えば、内部電極パターンを形成するための導電性ペーストである。したがって、上述した方法で印刷が行われることにより、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートが得られる。内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートは、例えば、積層セラミック電子部品である積層セラミックコンデンサの製造に用いられる。
【0028】
第1の周速検出部3は、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を検出する。一例として、第1の周速検出部3はカメラを備えており、ドラムロール2の外周面には、速度検出用マーカーが複数設けられている。そして、カメラによって速度検出用マーカーを撮像し、撮像画像における速度検出用マーカーの位置に基づいて、第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を検出する。
【0029】
ただし、第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1の検出方法が上述した方法に限定されることはなく、任意の方法により検出することができる。例えば、第1の周速検出部3として、公知のドップラー速度計を用いてもよい。
【0030】
第1の角速度調整部4は、第1の版ロール1の周速Vh1が、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1と一致するように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。第1の版ロール1の回転駆動は、第1のモータ5によって行われるので、第1の角速度調整部4は、第1のモータ5を制御することによって、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。
【0031】
具体的には、第1の版ロール1の回転軸方向と垂直な方向で切断したときの断面における半径をr1とすると、第1の角速度調整部4は、第1の版ロール1の角速度ωh1がVd1/r1となるように、第1のモータ5を制御する。
【0032】
図5は、第1の実施形態におけるグラビア印刷装置10によって印刷を行う場合において、第1の版ロール1の角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0033】
ステップS1では、角速度ωdで回転するように、ドラムロール2の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、ドラムロール用モータ6を制御することにより、ドラムロール2を角速度ωdで回転させる。
【0034】
ステップS1に続くステップS2では、角速度ω1で回転するように、第1の版ロール1の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、第1のモータ5を制御することにより、第1の版ロール1を角速度ω1で回転させる。
【0035】
ステップS2に続くステップS3では、第1の周速検出部3によって、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を検出する。
【0036】
ステップS3に続くステップS4では、第1の角速度調整部4によって、第1の版ロール1の周速Vh1が、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1と一致するように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。上述したように、第1の角速度調整部4は、第1の版ロール1の角速度ωh1がVd1/r1となるように、第1のモータ5を制御する。
【0037】
ステップS4に続くステップS5において、ドラムロール2の回転が継続している場合には、ステップS3に戻って、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する処理を再び行う。一方、グラビア印刷が終了してドラムロール2の回転が停止した場合には、フローチャートの処理を終了する。
【0038】
第1の実施形態におけるグラビア印刷装置10によれば、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を検出し、検出されたドラムロール2の周速Vd1と、第1の版ロール1の周速Vh1とが一致するように、第1の版ロール1の角速度を調整する。したがって、ドラムロール2の断面形状が真円ではない場合でも、第1の版ロール1とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させて、印刷精度を向上させることができる。
【0039】
また、ドラムロール2の表面に弾性部材2bが設けられている構成では、弾性部材2bが変形しても、第1の版ロール1の周速Vh1とドラムロール2の周速Vd1とを一致させることができるので、変形した弾性部材2bをそのまま使用することが可能となり、コストを低減することができる。
【0040】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態におけるグラビア印刷装置10Aの主要部の構成を模式的に示す図である。第2の実施形態におけるグラビア印刷装置10Aは、第1の実施形態におけるグラビア印刷装置10の構成に対して、第2の版ロール31と、第2の周速検出部32と、第2の角速度調整部33と、第2のモータ34とをさらに備える。なお、第1の角速度調整部4と第2の角速度調整部33とが1つの角速度調整部として構成されていてもよい。
【0041】
第2の版ロール31の外周面には、印刷すべき図形に対応した形状を有する複数のセルが形成されている。印刷時に、複数のセルには、インクが充填される。第2の版ロール31の回転駆動は、第2のモータ34によって行われる。
【0042】
上述したように、印刷対象物20は、例えば、キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートであり、第1の版ロール1のセルに充填されるインクは、内部電極パターンを形成するための導電性ペーストである。
【0043】
図7(a)は、キャリアフィルム41上に形成されたセラミックグリーンシート42に、第1の版ロール1によって、内部電極パターン43を形成した状態を示す図である。
【0044】
第2の版ロール31のセルに充填されるインクは、例えば、内部電極パターン43と、その周囲領域との間の段差を解消するために塗工するセラミックペーストである。
図7(b)は、内部電極パターン43の周囲に、第2の版ロール31によって、セラミックペーストパターン44を形成した状態を示す図である。内部電極パターン43の周囲にセラミックペーストパターン44を形成することにより、上述した段差を無くして、段差のあるセラミックグリーンシートを用いた場合には生じやすい、積層体の内部の密度差による構造欠陥や、デラミネーション、内部電極間の短絡などの発生を抑制することが可能な信頼性の高い積層セラミック電子部品を製造することが可能になる。
【0045】
第2の周速検出部32は、印刷対象物20を介して第2の版ロール31と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd2を検出する。周速Vd2の検出は、第1の周速検出部3による周速Vd1の検出と同じ検出方法を用いてもよいし、異なる検出方法を用いてもよい。
【0046】
第2の角速度調整部33は、第2の版ロール31の周速Vh2が、第2の周速検出部32によって検出されたドラムロール2の周速Vd2と一致するように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。第2の版ロール31の回転駆動は、第2のモータ34によって行われるので、第2の角速度調整部33は、第2のモータ34を制御することによって、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。
【0047】
具体的には、第2の版ロール31の回転軸方向と垂直な方向で切断したときの断面における半径をr2とすると、第2の角速度調整部33は、第2の版ロール31の角速度ωh2がVd2/r2となるように、第2のモータ34を制御する。
【0048】
図8は、第2の実施形態におけるグラビア印刷装置10Aによって印刷を行う場合において、第1の版ロール1および第2の版ロール31の角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0049】
ステップS11では、角速度ωdで回転するように、ドラムロール2の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、ドラムロール用モータ6を制御することにより、ドラムロール2を角速度ωdで回転させる。
【0050】
ステップS11に続くステップS12では、角速度ω1で回転するように、第1の版ロール1の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、第1のモータ5を制御することにより、第1の版ロール1を角速度ω1で回転させる。
【0051】
ステップS12に続くステップS13では、角速度ω2で回転するように、第2の版ロール31の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、第2のモータ34を制御することにより、第2の版ロール31を角速度ω2で回転させる。
【0052】
ステップS13に続くステップS14では、第1の周速検出部3によって、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を検出する。
【0053】
ステップS14に続くステップS15では、第1の角速度調整部4によって、第1の版ロール1の周速Vh1が、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1と一致するように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。すなわち、第1の角速度調整部4は、第1の版ロール1の角速度ωh1がVd1/r1となるように、第1のモータ5を制御する。
【0054】
ステップS15に続くステップS16では、第2の周速検出部32によって、印刷対象物20を介して第2の版ロール31と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd2を検出する。
【0055】
ステップS16に続くステップS17では、第2の角速度調整部33によって、第2の版ロール31の周速Vh2が、第2の周速検出部32によって検出されたドラムロール2の周速Vd2と一致するように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。すなわち、第2の角速度調整部33は、第2の版ロール31の角速度ωh2がVd2/r2となるように、第2のモータ34を制御する。
【0056】
ステップS17に続くステップS18において、ドラムロール2の回転が継続している場合には、ステップS14に戻って、ステップS14以後の処理を再び行う。一方、グラビア印刷が終了してドラムロール2の回転が停止した場合には、フローチャートの処理を終了する。
【0057】
第2の実施形態におけるグラビア印刷装置10Aによれば、ドラムロール2の断面形状が真円ではない場合でも、第1の版ロール1とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させるとともに、第2の版ロール31とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させることにより、印刷精度を向上させることができる。したがって、例えば、
図7(b)に示すように、第1の版ロール1によって内部電極パターン43を形成した後、第2の版ロール31によってセラミックペーストパターン44を形成する場合に、内部電極パターン43と、その周囲に形成されるセラミックペーストパターン44とを精度良く形成することができる。
【0058】
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態におけるグラビア印刷装置10Bの主要部の構成を模式的に示す図である。第3の実施形態におけるグラビア印刷装置10Bは、第1の実施形態におけるグラビア印刷装置10の構成に対して、第3の周速検出部51をさらに備える。
【0059】
第3の周速検出部51は、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1を検出する。一例として、第3の周速検出部51は、カメラを備えており、第1の版ロール1の外周面には、速度検出用マーカーが複数設けられている。そして、カメラによって速度検出用マーカーを撮像し、撮像画像における速度検出用マーカーの位置に基づいて、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1を検出する。
【0060】
ただし、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1の検出方法が上述した方法に限定されることはなく、任意の方法により検出することができる。例えば、第3の周速検出部51として、公知のドップラー速度計を用いてもよい。
【0061】
第1の角速度調整部4は、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1との差が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。より具体的には、第1の角速度調整部4は、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1より大きい場合に、上述した差(Vh1-Vd1)が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。第1の閾値Vth1は、上述した差の絶対値|Vh1-Vd1|が許容範囲内であるか否かを判定するための閾値である。
【0062】
例えば、第1の版ロール1の周速Vh1がドラムロール2の周速Vd1より大きい場合には、(Vh1-Vd1)/r1だけ角速度が小さくなるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。また、第1の版ロール1の周速Vh1がドラムロール2の周速Vd1より小さい場合には、(Vd1-Vh1)/r1だけ角速度が大きくなるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。
【0063】
図10は、第3の実施形態におけるグラビア印刷装置10Bによって印刷を行う場合において、第1の版ロール1の角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0064】
ステップS31では、角速度ωdで回転するように、ドラムロール2の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、ドラムロール用モータ6を制御することにより、ドラムロール2を角速度ωdで回転させる。
【0065】
ステップS31に続くステップS32では、角速度ω1で回転するように、第1の版ロール1の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、第1のモータ5を制御することにより、第1の版ロール1を角速度ω1で回転させる。
【0066】
ステップS32に続くステップS33では、第1の周速検出部3によって、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を検出する。
【0067】
ステップS33に続くステップS34では、第3の周速検出部51によって、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1を検出する。
【0068】
ステップS34に続くステップS35では、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1以下であるか否かを判定する。この判定は、例えば、第1の角速度調整部4によって行われる。第1の版ロール1の周速Vh1とドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1以下であると判定すると、第1の版ロール1の角速度ωh1の調整は行わずにステップS37の処理を行い、第1の閾値Vth1より大きいと判定すると、ステップS36の処理を行う。
【0069】
ステップS36では、第1の角速度調整部4によって、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1との差が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。
【0070】
ステップS37において、ドラムロール2の回転が継続している場合には、ステップS33に戻って、ステップS33以後の処理を再び行う。一方、グラビア印刷が終了してドラムロール2の回転が停止した場合には、フローチャートの処理を終了する。
【0071】
第3の実施形態におけるグラビア印刷装置10Bによれば、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1との差が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整するので、第1の版ロール1の周速Vh1とドラムロール2の周速Vd1との間の実際の差に応じて、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整することができる。したがって、第1の版ロール1の半径r1に誤差が存在する場合でも、第1の版ロール1とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させることができ、印刷精度をより向上させることができる。
【0072】
<第4の実施形態>
図11は、第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10Cの主要部の構成を模式的に示す図である。第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10Cは、第2の実施形態におけるグラビア印刷装置10Aの構成に対して、第3の周速検出部51と第4の周速検出部52とをさらに備える。第3の周速検出部51は、第3の実施形態におけるグラビア印刷装置10Bの第3の周速検出部51と同じものである。
【0073】
第4の周速検出部52は、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第2の版ロール31の周速Vh2を検出する。第2の版ロール31の周速Vh2の検出は、第3の周速検出部51による第1の版ロール1の周速Vh1の検出と同じ検出方法を用いることができる。
【0074】
第2の角速度調整部33は、第4の周速検出部52によって検出された第2の版ロール31の周速Vh2と、第2の周速検出部32によって検出されたドラムロール2の周速Vd2との差が0になるように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。より具体的には、第2の角速度調整部33は、第4の周速検出部52によって検出された第2の版ロール31の周速Vh2と、第2の周速検出部32によって検出されたドラムロール2の周速Vd2との差の絶対値|Vh2-Vd2|が第2の閾値Vth2より大きい場合に、上述した差(Vh2-Vd2)が0になるように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。第2の閾値Vth2は、上述した差の絶対値|Vh2-Vd2|が許容範囲内であるか否かを判定するための閾値である。上述したように、第2の角速度調整部33は、第2のモータ34を制御することによって、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。
【0075】
図12は、第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10Cによって印刷を行う場合において、第1の版ロール1および第2の版ロール31の角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0076】
ステップS41では、角速度ωdで回転するように、ドラムロール2の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、ドラムロール用モータ6を制御することにより、ドラムロール2を角速度ωdで回転させる。
【0077】
ステップS41に続くステップS42では、角速度ω1で回転するように、第1の版ロール1の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、第1のモータ5を制御することにより、第1の版ロール1を角速度ω1で回転させる。
【0078】
ステップS42に続くステップS43では、角速度ω2で回転するように、第2の版ロール31の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、第2のモータ34を制御することにより、第2の版ロール31を角速度ω2で回転させる。
【0079】
ステップS43に続くステップS44では、第1の周速検出部3によって、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を検出する。
【0080】
ステップS44に続くステップS45では、第3の周速検出部51によって、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1を検出する。
【0081】
ステップS45に続くステップS46では、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1以下であるか否かを判定する。この判定は、例えば、第1の角速度調整部4によって行われる。第1の版ロール1の周速Vh1とドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1以下であると判定すると、第1の版ロール1の角速度ωh1の調整は行わずにステップS48の処理を行い、第1の閾値Vth1より大きいと判定すると、ステップS47の処理を行う。
【0082】
ステップS47では、第1の角速度調整部4によって、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1との差が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。
【0083】
ステップS48では、第2の周速検出部32によって、印刷対象物20を介して第2の版ロール31と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd2を検出する。
【0084】
ステップS48に続くステップS49では、第4の周速検出部52によって、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第2の版ロール31の周速Vh2を検出する。
【0085】
ステップS49に続くステップS50では、第3の周速検出部51によって検出されたドラムロール2の周速Vd2と、第4の周速検出部52によって検出された第2の版ロール31の周速Vh2との差の絶対値|Vh2-Vd2|が第2の閾値Vth2以下であるか否かを判定する。この判定は、例えば、第2の角速度調整部33によって行われる。第2の版ロール31の周速Vh2とドラムロール2の周速Vd2との差の絶対値|Vh2-Vd2|が第2の閾値Vth2以下であると判定すると、第2の版ロール31の角速度ωh2の調整は行わずにステップS52の処理を行い、第2の閾値Vth2より大きいと判定すると、ステップS51の処理を行う。
【0086】
ステップS51では、第2の角速度調整部33によって、第4の周速検出部52によって検出された第2の版ロール31の周速Vh2と、第3の周速検出部51によって検出されたドラムロール2の周速Vd2との差が0になるように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。
【0087】
ステップS52において、ドラムロール2の回転が継続している場合には、ステップS44に戻って、ステップS44以後の処理を再び行う。一方、グラビア印刷が終了してドラムロール2の回転が停止した場合には、フローチャートの処理を終了する。
【0088】
第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10Cによれば、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、第1の周速検出部3によって検出されたドラムロール2の周速Vd1との差が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整するとともに、第4の周速検出部52によって検出された第2の版ロール31の周速Vh2と、第3の周速検出部51によって検出されたドラムロール2の周速Vd2との差が0になるように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。すなわち、第1の版ロール1の周速Vh1とドラムロール2の周速Vd1との間の実際の差に応じて、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整し、かつ、第2の版ロール31の周速Vh2とドラムロール2の周速Vd2との間の実際の差に応じて、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。したがって、第1の版ロール1の半径r1に誤差が存在する場合でも、第1の版ロール1とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させることができ、かつ、第2の版ロール31の半径r2に誤差が存在する場合でも、第2の版ロール31とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させることができるので、印刷精度をより向上させることができる。
【0089】
<第5の実施形態>
図13は、第5の実施形態におけるグラビア印刷装置10Dの主要部の構成を模式的に示す図である。第5の実施形態におけるグラビア印刷装置10Dは、第1の版ロール1と、ドラムロール2と、第1のモータ5と、ドラムロール用モータ6と、第1の角速度調整部61と、記憶部62と、回転位置検出部63とを備える。
【0090】
回転位置検出部63は、例えばエンコーダであり、ドラムロール2の回転基準点の回転位置θを検出する。
【0091】
記憶部62は、ドラムロール2の回転位置θと、ドラムロール2の周速との関係を示す周速データVd(θ)を記憶する。
【0092】
図14(a)は、ドラムロール2の回転位置θと、周速測定位置におけるドラムロール2の周速との関係を示す図である。ドラムロール2の回転位置θに応じた周速を測定することによって、ドラムロール2の回転位置θと、その回転位置θにおけるドラムロール2の周速との関係を示す周速データV
d(θ)を予め求めておく。
【0093】
周速データVd(θ)は、少なくともドラムロール2の1周分の周速のデータである。ただし、複数周分の周速を測定してから、回転位置毎の平均周速を求め、その平均周速を周速データVd(θ)として、記憶部62に記憶させておいてもよい。
【0094】
第1の角速度調整部61は、回転位置検出部63によって検出されるドラムロール2の回転位置θと、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を求め、求めたドラムロール2の周速Vd1と、第1の版ロール1の周速Vh1とが一致するように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。具体的には、第1の角速度調整部4は、第1の版ロール1の角速度ωh1がVd1/r1となるように、第1のモータ5を制御する。
【0095】
ここで、ドラムロール2の周速を測定した位置と、印刷対象物20を介してドラムロール2が第1の版ロール1と当接する位置とが一致していない場合には、ドラムロール2の回転方向における2つの位置の間の角度の分だけ補正する必要がある。例えば、ドラムロール2の回転方向における、周速計測位置と、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置との間の角度をθ
1とすると、ドラムロール2の回転位置θと、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速との関係は、
図14(b)に示すように、
図14(a)に示す周速データをθ
1だけシフトさせたものとなる。
【0096】
図15は、第5の実施形態におけるグラビア印刷装置10Dによって印刷を行う場合において、第1の版ロール1の角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0097】
ステップS61では、回転位置検出部63によって、ドラムロール2の回転基準点の回転位置θを検出する。
【0098】
ステップS61に続くステップS62では、第1の角速度調整部61によって、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)を読み出す。
【0099】
ステップS62に続くステップS63では、角速度ωdで回転するように、ドラムロール2の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、ドラムロール用モータ6を制御することにより、ドラムロール2を角速度ωdで回転させる。
【0100】
ステップS63に続くステップS64では、回転位置検出部63によって検出されたドラムロール2の回転位置θと、記憶部62から読み出した周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を求め、求めたドラムロール2の周速Vd1と、第1の版ロール1の周速Vh1とが一致するように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。上述したように、第1の角速度調整部61は、第1のモータ5を制御することによって、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。
【0101】
ステップS64に続くステップS65において、ドラムロール2の回転が継続している場合には、ステップS64に戻って、第1の版ロール1の角速度ωh1の調整を再び行う。一方、グラビア印刷が終了してドラムロール2の回転が停止した場合には、フローチャートの処理を終了する。
【0102】
なお、ドラムロール2の回転が停止するまでの間、ステップS64の処理は所定時間毎に行われるため、最初にドラムロール2の回転基準点の回転位置θを検出すれば、その後は毎回検出を行わなくても、ドラムロール2の回転基準点の回転位置θを把握することができる。
【0103】
第5の実施形態におけるグラビア印刷装置10Dによれば、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を検出する必要がないので、ドラムロール2の周速Vd1を検出するための周速検出部を省略することができ、コストを低減することができる。
【0104】
<第6の実施形態>
図16は、第6の実施形態におけるグラビア印刷装置10Eの主要部の構成を模式的に示す図である。第6の実施形態におけるグラビア印刷装置10Eは、第5の実施形態におけるグラビア印刷装置10Dの構成に対して、第2の版ロール31と、第2の角速度調整部71と、第2のモータ34とをさらに備える。なお、第1の角速度調整部61と第2の角速度調整部71とが1つの角速度調整部として構成されていてもよい。
【0105】
第2の角速度調整部71は、回転位置検出部63によって検出されるドラムロール2の回転位置θと、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第2の版ロール31と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd2を求め、求めたドラムロール2の周速Vd2と、第2の版ロール31の周速Vh2とが一致するように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。具体的には、第2の角速度調整部71は、第2の版ロール31の角速度ωh2がVd2/r2となるように、第2のモータ34を制御する。
【0106】
なお、ドラムロール2の周速を測定した位置と、印刷対象物20を介して第2の版ロール31と当接する位置とが一致していない場合には、ドラムロール2の回転方向における2つの位置の間の角度の分だけ補正する必要がある。
【0107】
図17は、第6の実施形態におけるグラビア印刷装置10Eによって印刷を行う場合において、第1の版ロール1および第2の版ロール31の角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0108】
ステップS71では、回転位置検出部63によって、ドラムロール2の回転基準点の回転位置θを検出する。
【0109】
ステップS71に続くステップS72では、第1の角速度調整部61および第2の角速度調整部71によって、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)を読み出す。
【0110】
ステップS72に続くステップS73では、角速度ωdで回転するように、ドラムロール2の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、ドラムロール用モータ6を制御することにより、ドラムロール2を角速度ωdで回転させる。
【0111】
ステップS73に続くステップS74では、回転位置検出部63によって検出されたドラムロール2の回転位置θと、記憶部62から読み出した周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を求め、求めたドラムロール2の周速Vd1と、第1の版ロール1の周速Vh1とが一致するように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。上述したように、第1の角速度調整部61は、第1のモータ5を制御することによって、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。
【0112】
ステップS74に続くステップS75では、回転位置検出部63によって検出されたドラムロール2の回転位置θと、記憶部62から読み出した周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第2の版ロール31と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd2を求め、求めたドラムロール2の周速Vd2と、第2の版ロール31の周速Vh2とが一致するように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。第2の角速度調整部71は、第2のモータ34を制御することによって、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。
【0113】
第6の実施形態におけるグラビア印刷装置10Eによれば、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1と、第2の版ロール31と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd2とを検出する必要がないので、ドラムロール2の周速Vd1およびVd2を検出するための周速検出部を省略することができ、コストを低減することができる。
【0114】
<第7の実施形態>
図18は、第7の実施形態におけるグラビア印刷装置10Fの主要部の構成を模式的に示す図である。第7の実施形態におけるグラビア印刷装置10Fは、
図13に示す第5の実施形態におけるグラビア印刷装置10Dの構成に対して、第3の周速検出部51をさらに備える。
【0115】
本実施形態における第3の周速検出部51は、第3の実施形態におけるグラビア印刷装置10Bの第3の周速検出部51と同じものである。すなわち、第3の周速検出部51は、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1を検出する。
【0116】
第1の角速度調整部61は、まず、回転位置検出部63によって検出されるドラムロール2の回転位置θと、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を求める。続いて、第1の角速度調整部61は、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、上述した方法により求めたドラムロール2の周速Vd1との差(Vh1-Vd1)が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。ここでの第1の版ロール1の角速度ωh1の調整は、第3の実施形態におけるグラビア印刷装置10Bにおいて、第1の角速度調整部4が第1の版ロール1の周速Vh1とドラムロール2の周速Vd1との差(Vh1-Vd1)が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する方法と同じ方法により行うことができる。
【0117】
図19は、第7の実施形態におけるグラビア印刷装置10Fによって印刷を行う場合において、第1の版ロール1の角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0118】
ステップS81では、回転位置検出部63によって、ドラムロール2の回転基準点の回転位置θを検出する。
【0119】
ステップS81に続くステップS82では、第1の角速度調整部61によって、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)を読み出す。
【0120】
ステップS82に続くステップS83では、角速度ωdで回転するように、ドラムロール2の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、ドラムロール用モータ6を制御することにより、ドラムロール2を角速度ωdで回転させる。
【0121】
ステップS83に続くステップS84では、第3の周速検出部51によって、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1を検出する。
【0122】
ステップS84に続くステップS85では、第1の角速度調整部61によって、回転位置検出部63によって検出されるドラムロール2の回転位置θと、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を求め、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、求めたドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1以下であるか否かを判定する。第1の版ロール1の周速Vh1とドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1以下であると判定すると、第1の版ロール1の角速度ωh1の調整は行わずにステップS87の処理を行い、第1の閾値Vth1より大きいと判定すると、ステップS86の処理を行う。
【0123】
ステップS86では、第1の角速度調整部61によって、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、求めたドラムロール2の周速Vd1との差が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。
【0124】
ステップS87において、ドラムロール2の回転が継続している場合には、ステップS84に戻って、ステップS84以後の処理を再び行う。一方、グラビア印刷が終了してドラムロール2の回転が停止した場合には、フローチャートの処理を終了する。
【0125】
第7の実施形態におけるグラビア印刷装置10Fによれば、第5の実施形態におけるグラビア印刷装置10Dと同様に、ドラムロール2の周速Vd1を検出するための周速検出部を省略することができ、コストを低減することができる。また、第3の実施形態におけるグラビア印刷装置10Bと同様に、第1の版ロール1の半径r1に誤差が存在する場合でも、第1の版ロール1とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させることができ、印刷精度をより向上させることができる。
【0126】
<第8の実施形態>
図20は、第8の実施形態におけるグラビア印刷装置10Gの主要部の構成を模式的に示す図である。第8の実施形態におけるグラビア印刷装置10Gは、
図16に示す第6の実施形態におけるグラビア印刷装置10Eに対して、第3の周速検出部51および第4の周速検出部52をさらに備える。
【0127】
本実施形態における第3の周速検出部51は、第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10Cの第3の周速検出部51と同じものである。すなわち、第3の周速検出部51は、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1を検出する。
【0128】
本実施形態における第4の周速検出部52は、第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10Cの第4の周速検出部52と同じものである。すなわち、第4の周速検出部52は、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第2の版ロール31の周速Vh2を検出する。
【0129】
第2の角速度調整部71は、まず、回転位置検出部63によって検出されるドラムロール2の回転位置θと、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第2の版ロール31と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd2を求める。続いて、第2の角速度調整部71は、第4の周速検出部52によって検出された第2の版ロール31の周速Vh2と、上述した方法により求めたドラムロール2の周速Vd2との差(Vh2-Vd2)が0になるように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。ここでの第2の版ロール31の角速度ωh2の調整は、第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10Cにおいて、第2の角速度調整部33が第2の版ロール31の周速Vh2とドラムロール2の周速Vd2との差(Vh2-Vd2)が0になるように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する方法と同じ方法により行うことができる。
【0130】
図21は、第8の実施形態におけるグラビア印刷装置10Gによって印刷を行う場合において、第1の版ロール1および第2の版ロール31の角速度調整方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【0131】
ステップS91では、回転位置検出部63によって、ドラムロール2の回転基準点の回転位置θを検出する。
【0132】
ステップS91に続くステップS92では、第1の角速度調整部61によって、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)を読み出す。
【0133】
ステップS92に続くステップS93では、角速度ωdで回転するように、ドラムロール2の回転を開始する。例えば、図示しない制御部によって、ドラムロール用モータ6を制御することにより、ドラムロール2を角速度ωdで回転させる。
【0134】
ステップS93に続くステップS94では、第3の周速検出部51によって、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第1の版ロール1の周速Vh1を検出する。
【0135】
ステップS94に続くステップS95では、第1の角速度調整部61によって、回転位置検出部63によって検出されるドラムロール2の回転位置θと、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第1の版ロール1と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd1を求め、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、求めたドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1以下であるか否かを判定する。第1の版ロール1の周速Vh1とドラムロール2の周速Vd1との差の絶対値|Vh1-Vd1|が第1の閾値Vth1以下であると判定すると、第1の版ロール1の角速度ωh1の調整は行わずにステップS97の処理を行い、第1の閾値Vth1より大きいと判定すると、ステップS96の処理を行う。
【0136】
ステップS96では、第1の角速度調整部61によって、第3の周速検出部51によって検出された第1の版ロール1の周速Vh1と、求めたドラムロール2の周速Vd1との差が0になるように、第1の版ロール1の角速度ωh1を調整する。
【0137】
ステップS97では、第4の周速検出部52によって、印刷対象物20を介してドラムロール2と当接する位置における第2の版ロール31の周速Vh2を検出する。
【0138】
ステップS97に続くステップS98では、第2の角速度調整部71によって、回転位置検出部63によって検出されるドラムロール2の回転位置θと、記憶部62に記憶されている周速データVd(θ)とに基づいて、印刷対象物20を介して第2の版ロール31と当接する位置におけるドラムロール2の周速Vd2を求め、第4の周速検出部52によって検出された第2の版ロール31の周速Vh2と、求めたドラムロール2の周速Vd2との差の絶対値|Vh2-Vd2|が第2の閾値Vth2以下であるか否かを判定する。第2の版ロール31の周速Vh2とドラムロール2の周速Vd2との差の絶対値|Vh2-Vd2|が第2の閾値Vth2以下であると判定すると、第2の版ロール31の角速度ωh2の調整は行わずにステップS100の処理を行い、第2の閾値Vth2より大きいと判定すると、ステップS99の処理を行う。
【0139】
ステップS99では、第2の角速度調整部71によって、第4の周速検出部52によって検出された第2の版ロール31の周速Vh2と、求めたドラムロール2の周速Vd2との差が0になるように、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整する。
【0140】
ステップS100において、ドラムロール2の回転が継続している場合には、ステップS94に戻って、ステップS94以後の処理を再び行う。一方、グラビア印刷が終了してドラムロール2の回転が停止した場合には、フローチャートの処理を終了する。
【0141】
第8の実施形態におけるグラビア印刷装置10Gによれば、第6の実施形態におけるグラビア印刷装置10Eと同様に、ドラムロール2の周速Vd1およびVd2を検出するための周速検出部を省略することができ、コストを低減することができる。また、第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10Cと同様に、第1の版ロール1の半径r1に誤差が存在する場合でも、第1の版ロール1とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させることができ、かつ、第2の版ロール31の半径r2に誤差が存在する場合でも、第2の版ロール31とドラムロール2の当接する位置における周速を一致させることができるので、印刷精度をより向上させることができる。
【0142】
(積層セラミックコンデンサの製造方法)
図22は、積層セラミックコンデンサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0143】
ステップS111では、複数のセラミックグリーンシートを用意する。セラミックグリーンシートとしては、公知のものを用いることができる。
【0144】
ステップS111に続くステップS112では、上述した第1~第8の実施形態におけるグラビア印刷装置のうちの1つを用いて、複数のセラミックグリーンシートのうちの特定のものの上に、内部電極パターンを形成する。すなわち、上述したグラビア印刷装置を用いて、セラミックグリーンシート上に、内部電極用導電性ペーストを印刷することによって、内部電極パターンを形成する。
【0145】
ステップS112に続くステップS113では、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層することによって積層体を作製する。具体的には、内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを所定枚数積層し、その上に、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを順次積層し、その上に、内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートを所定枚数積層することによって、積層体を作製する。この積層体は、未焼成のマザー積層体である。
【0146】
ステップS113に続くステップS114では、積層体をプレスした後、ダイシングや押し切りなどの種々の方法により、チップ状に個片化する。
【0147】
ステップS114に続くステップS115では、個片化したチップを焼成することによって、セラミック積層体を作製する。焼成温度は、セラミック層や内部電極の材料にもよるが、例えば、900℃以上1300℃以下である。この後、バレル研磨などにより、セラミック積層体の角部および稜線部に丸みをつける。
【0148】
ステップS115に続くステップS116では、セラミック積層体の両端面に外部電極を形成する。
【0149】
上述した方法により、積層セラミック電子部品である積層セラミックコンデンサが作製される。
【0150】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。例えば、上述した各実施形態における特徴的な構成は、適宜組み合わせることができる。
【0151】
第2の実施形態におけるグラビア印刷装置10Aでは、第1の角速度調整部4が第1の版ロール1の角速度ωh1を調整するとともに、第2の角速度調整部33が第2の版ロール31の角速度ωh2を調整するように構成されているが、第1の版ロール1および第2の版ロール31のうちのいずれか一方の版ロールのみの角速度を調整し、他方の版ロールは、ドラムロール2の回転に合わせて連れ回るように受動回転させてもよい。その場合、第1の版ロール1による印刷と、第2の版ロール31による印刷との間の印刷精度を向上させるために、第1の版ロール1を受動回転させて、第2の版ロール31の角速度ωh2を調整するように制御することが好ましい。版ロールを2つ備える第4の実施形態におけるグラビア印刷装置10C、第6の実施形態におけるグラビア印刷装置10E、第8の実施形態におけるグラビア印刷装置10Gについても同様である。
【0152】
なお、上述した実施形態では、最初に印刷を行う版ロールを第1の版ロール1とし、後に印刷を行う版ロールを第2の版ロール31として説明したが、最初に印刷を行う版ロールを第2の版ロールと呼び、後に印刷を行う版ロールを第1の版ロールと呼ぶこともできる。
【0153】
版ロールの数が1つ、または、2つに限定されることはなく、3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0154】
1 第1の版ロール
2 ドラムロール
2b 弾性部材
3 第1の周速検出部
4 第1の角速度調整部
5 第1のモータ
6 ドラムロール用モータ
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G グラビア印刷装置
11 セル
20 印刷対象物
31 第2の版ロール
32 第2の周速検出部
33 第2の角速度調整部
34 第2のモータ
51 第3の周速検出部
52 第4の周速検出部
61 第1の角速度調整部
62 記憶部
63 回転位置検出部
71 第2の角速度調整部