(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】インダクタ部品およびインダクタ部品内蔵基板
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20221012BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20221012BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01F17/04 N
H01F17/00 B
H05K1/16 B
(21)【出願番号】P 2019147599
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩司
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 顕徳
(72)【発明者】
【氏名】蔵藤 大輔
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-032050(JP,A)
【文献】特開2018-046051(JP,A)
【文献】特開2007-066973(JP,A)
【文献】特開2000-294423(JP,A)
【文献】特開2006-024677(JP,A)
【文献】特開2019-075478(JP,A)
【文献】特開2019-046993(JP,A)
【文献】特開2017-107971(JP,A)
【文献】特開2019-012750(JP,A)
【文献】特開2016-167576(JP,A)
【文献】特開2013-157371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0137965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉と前記磁性粉を含有する樹脂とを含む平板状の本体と、
前記本体内に配置されたインダクタ配線と、
前記インダクタ配線と電気的に接続され、前記本体の主面から露出する外部端子と、
を備え、
前記磁性粉の平均粒径Xと、前記本体の前記主面に垂直な厚みTと、前記外部端子を通過する前記主面上の直線における前記外部端子と重なる部分を除いた一部分の第1算術平均粗さR
a1とが
X/10≦R
a1≦T/10・・・式(1)
を満たす、インダクタ部品。
【請求項2】
前記外部端子は、第1外部端子と第2外部端子とを有し、前記一部分は、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の部分を含む、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記本体の前記主面は、前記磁性粉の形状に対応する凹部を有する、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記厚みTが300μm以下である、請求項1
から3の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記外部端子の前記主面に垂直な厚みがT/10よりも小さい、請求項1
から4の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記外部端子を通過する前記主面上の前記直線における前記外部端子と重なる部分を含む全体部分の第2算術平均粗さR
a2が
R
a2<T/10・・・式(2)
を満たす、請求項1から
5の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記主面上を覆う非磁性体の被覆層をさらに備える、請求項1から
6の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記インダクタ配線が接触する非磁性体の絶縁体をさらに備える、請求項1から
7の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記絶縁体は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂およびこれらの混合物の何れかを含む、請求項
8に記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記インダクタ配線は、前記主面に対して平行に延びる、請求項1から
9の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記主面に対して垂直に延びて前記インダクタ配線及び前記外部端子と接続され、前記本体を貫通する垂直配線を更に備える、請求項
10に記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記インダクタ配線は、前記主面に直交する方向に複数配置されている、請求項
10または
11に記載のインダクタ部品。
【請求項13】
前記インダクタ配線は、同一平面内に複数配置されている、請求項
10または
11に記載のインダクタ部品。
【請求項14】
前記磁性粉は、Fe系磁性粉を含む、請求項1から
13の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項15】
前記磁性粉は、フェライト粉を含む、請求項1から
13の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項16】
前記本体は、絶縁体からなる非磁性粉をさらに含有する、請求項1から
15の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項17】
前記磁性粉を含有する樹脂は、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含む、請求項1から
16の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項18】
請求項1から
17の何れか一つに記載のインダクタ部品が埋め込まれた基板であって、
前記基板は、基板主面と、前記基板主面に沿って延びる基板配線と、前記基板主面に対して垂直に延在して前記基板配線に接続された基板ビア部とを有し、
前記インダクタ部品の外部端子は、前記基板ビア部と直接接続している、インダクタ部品内蔵基板。
【請求項19】
前記インダクタ部品の前記本体の前記主面と、前記基板主面とは平行である、請求項
18に記載のインダクタ部品内蔵基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品およびインダクタ部品内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2016-143759号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、磁性粉を含有する樹脂を含む本体と、本体の内部に配置されたスパイラル配線と、本体の外表面に形成されスパイラル配線に電気的に接続する外部端子とを有する。特許文献1では、インダクタ部品の製造において個々のチップ状に切断する際に、切断面において磁性粉を脱落させることなく切断していた。これにより、磁性粉の脱落がなく、磁気特性の劣化を少なくしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、例えば、特許文献1に記載のインダクタ部品では、本体の絶縁性やインダクタンス取得効率、機械的強度が不足する場合があることがわかった。従って、本開示の目的は、絶縁性、インダクタンス取得効率および機械的強度の低下を抑制するインダクタ部品を提供することである。また、本開示の別の目的は、そのようなインダクタ部品を搭載したインダクタ部品内蔵基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本体の切断面ではなく、本体の主面付近の磁性粉を介した外部端子間の電気的な短絡に着目し、敢えて本体の主面付近における磁性粉を所定量脱落(脱粒)させることで、本体の絶縁性の低下を抑制することを見出し、本開示を完成するに至った。すなわち、本開示は、以下の実施形態を含む。
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一実施形態であるインダクタ部品は、
磁性粉と前記磁性粉を含有する樹脂とを含む平板状の本体と、
前記本体内に配置されたインダクタ配線と、
前記インダクタ配線と電気的に接続され、前記本体の主面から露出する外部端子と、
を備え、
前記磁性粉の平均粒径Xと、前記本体の前記主面に垂直な厚みTと、前記外部端子を通過する前記主面上の直線における前記外部端子と重なる部分を除いた一部分の第1算術平均粗さRa1とが
X/10≦Ra1≦T/10・・・式(1)
を満たす。
【0007】
本明細書では、インダクタ配線とは、電流が流れた場合に磁性粉を含む本体(磁性体)に磁束を発生させることによって、インダクタ部品にインダクタンスを付与させるものであって、その構造、形状、材料などに特に限定はない。また、第1算術平均粗さRa1は、日本工業規格(JIS)B 0601-2001に準拠して算出される。
【0008】
本実施形態に係るインダクタ部品は、式(1)に示すように、第1算術平均粗さRa1がX/10以上であるため、当該直線の一部分において磁性粉が脱粒しており、磁性粉を経由する外部端子からの電気的な短絡の発生が抑制される。これにより、例えば、外部端子間の絶縁性の低下を抑制することができる。また、第1算術平均粗さRaがT/10以下であるため、磁性粉の脱粒が過度でなく、インダクタ部品のインダクタンスの取得効率の低下や、機械的強度の低下が抑制される。
従って、上記構成によれば、本体において適度に磁性粉が脱粒しており、絶縁性やインダクタンスの取得効率、機械的強度の低下を抑制することができる。
【0009】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記厚みTが300μm以下である。
【0010】
前記実施形態によれば、本体が薄いため、本体の表面積において、前述の切断面よりも主面の割合が大きくなり、上記の主面における磁性粉の脱粒に着目した効果がより効果的に奏される。また、例えば、インダクタ部品を薄型基板に埋め込むことや、半導体のシリコンダイと基板との間の隙間に実装することなどが可能となり、実装の自由度をさらに向上させることができる。
【0011】
また、前記インダクタ部品の一実施形態では、
前記外部端子の前記主面に垂直な厚みがT/10よりも小さい。
【0012】
前記実施形態によれば、外部端子の厚みが薄い分、外部端子に比べインダクタンスへの寄与が大きい本体の磁性粉を含有する樹脂部分の厚みを厚くすることができる。このため、インダクタ部品のインダクタンスを高めることができる。また、外部端子の厚みが薄いためインダクタ部品を埋め込む際に外部端子付近に熱や圧力によるストレスがかかりにくく、インダクタ部品の破損を抑制することができる。
【0013】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記外部端子を通過する前記主面上の前記直線における前記外部端子と重なる部分を含む全体部分の第2算術平均粗さRa2が
Ra2<T/10・・・式(2)
を満たす。
【0014】
本明細書では、第2算術平均粗さRa2は、JIS B 0601-2001に準拠して算出される。
【0015】
前記実施形態によれば、インダクタ部品の表面凹凸が小さいため、例えばインダクタ部品実装時の実装はんだや、インダクタ部品を埋め込む際の充填材によるインダクタ部品の表面全体に対する熱や外力によるストレスがかかりにくく、インダクタ部品の破損をさらに抑制することができる。
【0016】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記主面上を覆う非磁性体の被覆層をさらに備える。
【0017】
前記実施形態によれば、本体の主面上を覆い磁性粉を含まない被覆層をさらに備えると、例えば、外部端子間の絶縁性を高めることができる。また、主面の凹凸を被覆層で覆うことにより、インダクタ部品の外観を用いた認識精度が向上する。
【0018】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線が接触する非磁性体の絶縁体をさらに備える。
【0019】
前記実施形態によれば、インダクタ配線付近の絶縁性を高めることができる。
【0020】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記絶縁体は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂およびこれらの混合物の何れかを含む。
【0021】
前記実施形態によれば、絶縁体が上記樹脂を含むと、絶縁体と本体に含まれる樹脂との密着性を向上させることができ、結果としてインダクタ配線と本体との密着力を向上させることができる。また、絶縁体の上記樹脂は、無機系絶縁体に比べ柔らかいため、本体に柔軟性を付与することができ、外部応力に対する機械的強度を高めることができる。
【0022】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、前記主面に対して平行に延びる。
【0023】
前記実施形態によれば、インダクタ部品をさらに薄型にすることができる。
【0024】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記主面に対して垂直に延びて前記インダクタ配線及び前記外部端子と接続され、前記本体を貫通する垂直配線を更に備える。
【0025】
前記実施形態によれば、インダクタ配線と外部端子間を直線状に接続でき、余分な配線引き回しによる直流電気抵抗の増加や、インダクタンス取得効率の低下を抑制できる。
【0026】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、前記主面に直交する方向に複数配置されている。
【0027】
前記実施形態によれば、インダクタ配線を積層化することで実装面積への影響を低減することができる。さらに、積層化したインダクタ配線を直列に接続すると、インダクタ部品のインダクタンスを高めることができる。
【0028】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記インダクタ配線は、同一平面内に複数配置されている。
【0029】
前記実施形態によれば、厚みTへの影響を低減することができる。また、同一平面内に複数配置されたインダクタ配線によってインダクタアレイを構成することができる。
【0030】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記磁性粉は、Fe系磁性粉を含む。
【0031】
前記実施形態によれば、磁性粉はFe系磁性粉を含むことにより、インダクタ部品は優れた直流重畳特性を得ることができる。
【0032】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記磁性粉は、フェライト粉を含む。
【0033】
前記実施形態によれば、磁性粉はフェライト粉を含むことにより、インダクタ部品のインダクタンスを高めることができる。フェライト粉はFe系磁性粉に比べ絶縁性が高いため、本体の絶縁性をさらに高めることができる。
【0034】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記本体は、絶縁物からなる非磁性粉をさらに含有する。
【0035】
前記実施形態によれば、本体が絶縁物からなる非磁性粉を含有すると、本体の絶縁性をさらに高めることができる。
【0036】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記磁性粉を含有する樹脂は、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含む。
【0037】
前記実施形態によれば、本体の絶縁性をさらに高めることができる。また、高い応力緩和効果により本体の機械的強度をさらに高めることができる。
【0038】
本開示の一態様であるインダクタ部品内蔵基板は、
前記実施形態に係るインダクタ部品が埋め込まれた基板であって、
前記基板は、基板主面と、前記基板主面に沿って延びる基板配線と、前記基板主面に対して垂直に延在して前記基板配線に接続された基板ビア部とを有し、
前記インダクタ部品の外部端子は、前記基板ビア部と直接接続している。
【0039】
前記実施形態によれば、インダクタ部品内蔵基板は、絶縁性やインダクタンスの取得効率、機械的強度の低下が抑制されたインダクタ部品を有する。
【0040】
また、インダクタ部品内蔵基板の一実施形態では、
前記インダクタ部品の前記主面と、前記基板主面とは平行である。
【0041】
前記実施形態によれば、インダクタ部品内蔵基板をさらに薄型とすることができる。
【発明の効果】
【0042】
本開示によれば、絶縁性、インダクタンス取得効率および機械的強度の低下が抑制されたインダクタ部品、およびそのようなインダクタ部品を搭載したインダクタ部品内蔵基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】第1実施形態に係るインダクタ部品を示す透視平面図である。
【
図1B】第1実施形態に係るインダクタ部品を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るインダクタ部品の他の形態を示す断面図である。
【
図3A】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3B】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3C】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3D】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3E】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3F】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3G】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3H】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3I】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3J】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3K】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3L】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図3M】第1実施形態に係るインダクタ部品の製法を説明する説明図である。
【
図4】第2実施形態に係るインダクタ部品を示す透視平面図である。
【
図5】第3実施形態に係るインダクタ部品を示す透視断面図である。
【
図6A】第4実施形態に係るインダクタ部品を示す透視断面図である。
【
図6B】第4実施形態に係るインダクタ部品を示す断面図である。
【
図7】第5実施形態に係るインダクタ部品内蔵基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品およびインダクタ部品内蔵基板を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。また、特定のパラメータについて上限値および下限値が複数記載されている場合は、これらの上限値および下限値のうち任意の上限値と下限値とを組み合わせて好適な数値範囲とすることができる。
【0045】
<インダクタ部品>
[第1実施形態]
[構成]
図1Aおよび
図1Bを参照して、本開示の第1実施形態に係るインダクタ部品を説明する。
図1Aは、インダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。
図1Bは、第1実施形態に係るインダクタ部品を示す断面図(
図1AのX-X断面図)である。
【0046】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0047】
図1Aと
図1Bに示すように、インダクタ部品1は、平板状の本体11と、本実施形態におけるインダクタ配線の一例であるスパイラル配線21と、外部端子41~44とを備える。スパイラル配線21は、本体11内に配置されている。外部端子41~44は、スパイラル配線21と電気的に接続され、本体11の上下の主面12から露出する。
【0048】
図1Cは、
図1BのA部の拡大図を示す。
図1Cに示すように、本体11は、磁性粉13と磁性粉13を含有する樹脂14とを含む。したがって、本体11は、磁性粉13により直流重畳特性を向上でき、樹脂14により磁性粉13間が電気的に絶縁されるので、高周波でのロス(鉄損)が低減される。
【0049】
本体11の上下の主面12は、凹凸を有する。この凹凸は、主面12から磁性粉13のうちの一部を脱粒させることで、形成される。凹凸は、主として樹脂14部分の平坦性によるものと、磁性粉13の脱粒によって形成された凹部16によるものとから構成されるが、本実施形態の本体11の主面12においては、後述する算術平均粗さRa1、Ra2において支配的なのは後者の磁性粉13の脱粒によって形成された凹部16によるものである。凹部16には主面12と接触する層(例えば、被覆層50および第1外部端子41~第4外部端子44)が入り込むため、アンカー効果により本体11の主面12と主面12に接触する層との間の密着性が向上する。
【0050】
磁性粉の平均粒径Xと、本体11の主面12に垂直な厚みTと、外部端子41~42を通過する主面12上の直線における外部端子41~42と重なる部分を除いた一部分の第1算術平均粗さR
a1とが
X/10≦R
a1≦T/10・・・式(1)
を満たす。
なお、この実施形態では、直線は、第1外部端子41および第2外部端子42を通過するように引いた主面12上の直線であり、例えば、
図1AにおいてX-X断面線で示す位置における主面12上の直線(つまり、インダクタ部品1の幅方向中央位置の断面線(第1外部端子41の中心点と第2外部端子42の中心点とを結ぶ直線))をいい、
図1Bでは符号18で表される。直線18の一部分は、直線18において主面12上の外部端子41~42が設けられていない領域の直線部分からなり、より具体的には、
図1Bに示されるように、直線18の一部分は、外部端子41と外部端子42との間に位置する第1部分18aと、第1外部端子41の外側(本体11の側面側)に位置する第2部分18bと、第2外部端子42の外側(本体11の側面側)に位置する第3部分18cとから構成される。なお、第1外部端子41および第2外部端子42が本体11の側面に至るまで設けられる場合、第2部分18bおよび第3部分18cは存在せず、このとき、直線18の一部分は第1部分18aのみから構成される。
【0051】
式(1)に示すように、第1算術平均粗さRa1がX/10以上であるため、直線18の一部分において磁性粉13が脱粒しており、すなわち主面12で磁性粉13が適度に脱粒しており、磁性粉13を経由する外部端子41~44からの電気的な短絡の発生が抑制される。これにより、例えば、外部端子41~44間の絶縁性の低下を抑制することができる。また、第1算術平均粗さRa1がT/10以下であるため、主面12で磁性粉13の脱粒が過度ではなく、インダクタ部品1のインダクタンスの取得効率の低下や、機械的強度の低下が抑制される。
従って、上記構成によれば、本実施形態に係るインダクタ部品1は、本体11において適度に磁性粉13が脱粒しており、絶縁性やインダクタンスの取得効率、機械的強度の低下を抑制することができる。
【0052】
さらに、式(1)ではX≦Tが成立する。磁性粉13の平均粒径XがT以下であると、インダクタ部品1の機械的強度の低下を抑制することができる。これは、例えばX>Tの場合、磁性粉13の半分以上が本体11から突出するような粒径の磁性粉13が相当数存在することを意味し、インダクタ部品1の製造における研削工程において本体11の主面12から磁性粉13が過度に脱粒しやすくなる傾向があるからである。
【0053】
なお、本体11の主面12に適度に脱粒した凹凸が形成されることで、磁性粉13を経由する外部端子41~44からのインダクタ部品1の外部への電気的な短絡の発生を抑制することもできるため、第1実施形態に係るインダクタ部品1は、特に薄型で埋め込み用途に優れる。
【0054】
なお、下側の主面12においても、上述のように式(1)を満たす。すなわち、式(1)は外部端子41~44(さらに垂直配線51~54)が設けられた主面12において成立すればよい。直線は、上述のX-X断面線で示す位置における主面12上の直線に限らず、X-X断面線に交差して外部端子41,42を通過する直線であればよい。直線が1つの主面12において複数挙げられる場合、これら複数の直線のうち、少なくとも1つの直線について式(1)が成立すればよい。2つの主面にそれぞれ外部端子が設けられ、かつ直線が1つの主面12において複数挙げられる場合、各主面に対して少なくとも1つの直線について式(1)が成立すればよい。
【0055】
磁性粉13の平均粒径Xは、例えば0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上5μm以下である。磁性粉13の平均粒径が0.1μm以上である場合、樹脂14への均一な分散が容易となり、本体11の製造効率が向上する。また、磁性粉13の平均粒径が50μm以下である場合、直流重畳特性がより向上し、微粉によって高周波での鉄損を低減することができる。
磁性粉13の平均粒径Xは、金属磁性粉13を樹脂14に含有させる原料状態においてはレーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径(体積中位径D50)として算出することができる。
また、インダクタ部品1の完成品の状態では、金属磁性粉13の平均粒径Xは、本体11の主面12上の直線18を通る断面のSEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)画像を用いて測定する。具体的には、15個以上の磁性粉13が確認できる倍率のSEM画像において、各磁性粉13の面積を測定し、円相当径を{4/π×(面積)}^(1/2)から算出した上で、その算術平均値を磁性粉13の平均粒径Xとする。
【0056】
本体11の主面12に垂直な厚みTは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは100μm以上250μm以下である。本体11の主面12に垂直な厚みTが300μm以下である場合、本体11が薄いため、本体11の表面積において、前述の切断面よりも主面の割合が大きくなり、上記の主面12における磁性粉13の脱粒に着目した効果(すなわち、絶縁性、インダクタンスの取得効率および機械的強度の低下の抑制)がより効果的に奏される。また、例えば、インダクタ部品1を薄型基板に埋め込むことや、半導体のシリコンダイと基板との間の隙間に実装することなどが可能となり、実装の自由度をさらに向上させることができる。なお、厚みTは、走査型電子顕微鏡を用いて測定する。具体的には、外部端子41~42を通過する主面上の直線でインダクタ部品1を切断し、Z方向に平行な断面を形成する。得られたインダクタ部品1を測定対象とする。走査型電子顕微鏡を用いて、測定試料の断面からSEM画像を得る。SEM画像を用いて厚みTを測定する。
【0057】
第1算術平均粗さRa1は、磁性粉13を経由する外部端子41~44からの電気的な短絡の発生をさらに抑制する観点から、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.2μm以上0.4μm以下である。第1算術平均粗さRa1は、形状解析レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製「形状測定レーザマイクロスコープVK-X100」)を用いて測定することができる。具体的には、インダクタ部品1の被覆層50を剥離して、本体11の主面12を露出させる。露出した主面12において、外部端子41~42を通過する主面12上の直線を含む部分の第1算術平均粗さRa1を測定倍率は50倍で測定する。
【0058】
本体11は、絶縁物からなる非磁性粉をさらに含有してもよい。本体11が絶縁物からなる非磁性粉を含有すると、本体11の絶縁性をさらに高めることができる。
【0059】
磁性粉13は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、もしくはそれらのアモルファス合金、またはNiZn系やMnZn系などのフェライトである。これらの磁性粉は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0060】
好ましい一態様では、磁性粉13は、Fe系磁性粉を含む。磁性粉13がFe系磁性粉を含むと、本開示のインダクタ部品1は、優れた直流重畳特性を得ることができる。Fe系磁性粉としては、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、またはそれらのアモルファス合金である。これらのFe系磁性粉は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0061】
また、好ましい別の態様では、磁性粉13は、フェライト粉を含む。磁性粉13がフェライト粉を含むと、本開示のインダクタ部品1のインダクタンスを高めることができる。また、フェライト粉はFe系磁性粉に比べ絶縁性が高いため、本体11の絶縁性をさらに高めることができる。フェライト粉としては、例えば、NiZn系フェライト、およびMnZn系フェライトである。これらのフェライト粉は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0062】
好ましい一態様では、磁性粉13の含有率は、本体11全体に対して、好ましくは15vol%以上75vol%以下、より好ましくは20vol%以上70vol%以下である。磁性粉13の含有量が15vol%以上75vol%以下である場合、本開示のインダクタ部品1は優れた直流重畳特性および優れた絶縁性を有する。
【0063】
樹脂14は、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、およびビニルエーテル系樹脂のいずれかの樹脂を含み、好ましくはエポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含む。樹脂14がこれらの樹脂を含むことにより、インダクタ部品1の絶縁信頼性が向上する。本体11が特にエポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含むと、本体11の絶縁性をさらに高めることができる。また、高い応力緩和効果により本体11の機械的強度をさらに向上させることができる。さらに、かかる場合、磁性粉13間の絶縁性を担保することで、高周波でのロス(鉄損)を小さくできる。
【0064】
スパイラル配線21は、本体11内に配置され、所定の平面に沿ってスパイラル形状に延びるインダクタ配線である。好ましくは、スパイラル配線21は主面12に対して平行に延びる。すなわち、好ましくは、スパイラル配線21がスパイラル形状に延びる平面(例えば、巻回平面)と、主面12とが平行である。スパイラル配線21がスパイラル形状に延びる平面と主面12とが平行であると、インダクタ部品1をさらに薄型にすることができる。スパイラル配線21は、ターン数が1周を超えるスパイラル形状を有してもよい。かかる場合、スパイラル配線21は、例えば、上側からみた場合、
図1Aに示すように、外周端(第2パッド部202)から内周端(第1パッド部201)に向かって時計回り方向に渦巻状に巻回されている。
なお、スパイラル配線(スパイラル部)とは、平面上で延伸する曲線(2次元曲線)を意味し、ターン数が1周を超える曲線であってもよく、ターン数が1周未満の曲線であってもよい。また、スパイラル配線は、一部に直線を有していてもよい。
【0065】
スパイラル配線21のスパイラル形状に延びる平面に垂直な厚みは、例えば、40μm以上120μm以下であることが好ましい。スパイラル配線21の実施例として、厚みが45μm、配線幅が50μm、配線間スペースが10μmである。配線間スペースは3μm以上20μm以下が好ましい。
【0066】
スパイラル配線21は、導電性材料からなり、例えば、Cu、Ag、Au、Fe、もしくはこれらを含む合金などの低電気抵抗な金属材料からなる。スパイラル配線21の直流抵抗を下げることができる。本実施形態では、インダクタ部品1は、スパイラル配線21を1層のみ備えており、これによって、複数のスパイラル配線が積層される構成と比較して、インダクタ部品1の低背化を実現できる。
【0067】
スパイラル配線21は、第1方向Zに直交する第1平面上に配置されている。スパイラル配線21は、スパイラル部200と、第1パッド部201と、第2パッド部202と、引出部203とを有する。第1パッド部201は、第1垂直配線51および第4垂直配線54に接続され、第2パッド部202は、第2垂直配線52および第3垂直配線53に接続される。スパイラル部200は、第1パッド部201を内終端、第2パッド部202を外終端として第1パッド部201および第2パッド部202から第1平面上に延在し、渦巻状に巻回されている。引出部203は、第2パッド部202から第1平面上に延在し、本体11の第1方向Zに平行な第1側面10aから露出している。
【0068】
本開示のインダクタ部品1は、好ましくはスパイラル配線21が接触する絶縁体15をさらに備える。スパイラル配線21が接触する絶縁体15をさらに備えると、スパイラル配線21付近の絶縁性を高めることができる。例えば、
図1Aおよび
図1Bでは絶縁体15は、スパイラル配線21の表面をコーティングしている。より詳細には、絶縁体15は、スパイラル配線21の側面のすべてをコーティングし、スパイラル配線21の上面および底面については、ビア配線25との接続部分であるパッド部201,202を除いた部分をコーティングしている。絶縁体15は、スパイラル配線21のパッド部201,202に対応した位置に孔部を有する。孔部は、例えば、レーザ開口により形成することができる。本体11とスパイラル配線21の底面との間の絶縁体15の厚みは、例えば、10μm以下である。
【0069】
絶縁体15は、磁性体を含まない、すなわち非磁性体であり、絶縁性材料を含む。絶縁性材料は、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂およびこれらの混合物のいずれかを含む。絶縁体がこれらの樹脂を含むと、スパイラル配線21と本体11に含まれる樹脂14とが絶縁体15の上記樹脂を介して密着するため、結果としてスパイラル配線21と本体11との密着力を向上させることができる。また、絶縁体15の上記樹脂は、無機系絶縁体に比べ柔らかいため、本体11に柔軟性を付与することができ、外部応力に対する機械的強度を高めることができる。なお、絶縁体15は、シリカなどの非磁性体のフィラーを含んでいてもよく、この場合は、絶縁体15の強度や加工性、電気的特性の向上が可能である。
【0070】
なお、本開示のインダクタ部品1は、絶縁体15を備えなくてもよい。また、絶縁体15は、スパイラル配線21の一部のみを覆ってもよく、例えば、
図2に示すように、インダクタ部品1’において絶縁体15はスパイラル配線21の底面のみを覆ってもよい。
【0071】
本実施形態に係るインダクタ部品1は、垂直配線51~54をさらに備える。垂直配線51~54は、主面12に対して垂直に延びてスパイラル配線21及び外部端子41~44と接続される。すなわち、垂直配線51~54は、スパイラル配線21が延伸する平面に垂直にスパイラル配線と電気的に接続されている。垂直配線51~54は、スパイラル配線21と同様の導電性材料からなり、スパイラル配線21から第1方向Zに延在し、本体11を貫通している。インダクタ部品1が垂直配線51~54を備えることにより、スパイラル配線21と第1~第4外部端子41~44の間を直線状に接続できる。具体的には、垂直配線51,54により、スパイラル配線21と第1,第4外部端子41,44との間を直線状に接続できる。また、垂直配線52,53により、スパイラル配線21と第2,第3外部端子42,43との間を直線状に接続できる。これにより、余分な配線の引き回しによる直流電気抵抗の増加や、インダクタンス取得効率の低下を抑制できる。
【0072】
第1垂直配線51は、スパイラル配線21の第1パッド部201の上面から上側に延在し、絶縁体15の内部を貫通するビア配線25と、該ビア配線25から上側に延在する第1柱状配線31とを含む。第2垂直配線52は、スパイラル配線21の第2パッド部202の上面から上側に延在し、絶縁体15を貫通するビア配線25と、該ビア配線25から上側に延在する第2柱状配線32とを含む。第3垂直配線53は、スパイラル配線21の第2パッド部202の下面から下側に延在し、絶縁体15を貫通するビア配線25と、該ビア配線25から下側に延在する第3柱状配線33とを含む。第4垂直配線54は、スパイラル配線21の第1パッド部201の下面から下側に延在し、絶縁体15を貫通するビア配線25と、該ビア配線25から下側に延在する第4柱状配線34とを含む。
【0073】
外部端子41~44は、スパイラル配線21と電気的に接続され、本体11の主面12から露出する。外部端子41~44は、本体11の主面12の一部を覆い、垂直配線51~54を介してスパイラル配線21と電気的に接続する。
【0074】
第1外部端子41は、本体11の上面側の主面12の一部に設けられ、主面12から露出する第1柱状配線31の端面を覆っている。これにより、第1外部端子41は、スパイラル配線21の第1パッド部201に電気的に接続される。第2外部端子42は、本体11の上面側の主面12の一部に設けられ、主面12から露出する第2柱状配線32の端面を覆っている。これにより、第2外部端子42は、スパイラル配線21の第2パッド部202に電気的に接続される。第3外部端子43は、本体11の下面側の主面12の一部に設けられ、主面12から露出する第3柱状配線33の端面を覆っている。これにより、第3外部端子43は、スパイラル配線21の第2パッド部202に電気的に接続される。第4外部端子44は、本体11の下面側の主面12の一部に設けられ、主面12から露出する第4柱状配線34の端面を覆っている。これにより、第4外部端子44は、スパイラル配線21の第1パッド部201に電気的に接続される。
【0075】
外部端子41~44は、導電性材料から構成される。導電性材料は、例えば、Cu、Ni、およびAuの少なくとも一つ、またはそれらの合金である。また、外部端子41~44は、複数の金属膜が積層した多層金属膜であってもよい。多層金属膜は、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuからなる金属層が内側から外側に向かってこの順に積層された3層構成の金属膜である。
【0076】
外部端子41~44には、好ましくは、防錆処理が施されている。ここで、防錆処理とは、Niの金属層およびAuの金属層、または、Niの金属層およびSnの金属層などを外部端子41~44の表面上の被膜として形成することである。これにより、はんだによる銅喰われや、錆びを抑制することができ、実装信頼性の高いインダクタ部品1を提供できる。
【0077】
外部端子41~44の主面12に垂直な厚みは、好ましくはT/10よりも小さい。かかる場合、外部端子41~44の厚みが薄い分、外部端子41~44に比べインダクタンスへの寄与が大きい磁性粉13を含有する樹脂14部分の厚みを厚くすることができる。このため、インダクタ部品1のインダクタンスを高めることができる。また、外部端子41~44の厚みが薄いためインダクタ部品1を埋め込む際に外部端子41~44付近に熱や外力によるストレスがかかりにくく、インダクタ部品1の破損をさらに抑制することができる。
【0078】
好ましい一態様では、外部端子41~42を通過する主面12上の直線18における外部端子41~42と重なる部分を含む全体部分の第2算術平均粗さR
a2が
R
a2<T/10・・・式(2)
を満たす。
この実施形態では、直線18の全体部分は、直線18において主面12上の外部端子41~42が設けられている領域および設けられていない領域の直線部分からなり、より具体的には、
図1Bに示されるように、第1部分18aと、第2部分18bと、第3部分18cと、第1外部端子41と重なる第4部分13dと、第2外部端子42と重なる第5部分13eとから構成される。
本開示のインダクタ部品1が式(2)を満たす場合、インダクタ部品1の表面凹凸が小さいため、例えばインダクタ部品1実装時の実装はんだや、インダクタ部品1を埋め込む際の充填剤によるインダクタ部品1の表面全体に対する熱や外力によるストレスがかかりにくく、インダクタ部品1の破損をさらに抑制することができる。
なお、外部端子41~44(さらに垂直配線51~54)は上下の主面12のいずれか一方に設けられてもよい。この場合、外部端子41~44が設けられた主面12において式(1)を満たせばよい。
【0079】
本開示のインダクタ部品1は、主面12上を覆う被覆層50をさらに備える。主面12上に被覆層50を備えると、例えば、外部端子41~44間(より具体的には、第1外部端子41と第2外部端子との間、および第3外部端子43と第4外部端子44との間)の絶縁性を高めることができる。また、主面12の凹凸を被覆層50で覆うことによりインダクタ部品1の外観を用いた認識精度が向上する。
【0080】
被覆層50は、磁性体を含まない、すなわち非磁性体であり、例えば、絶縁体15の材料として例示した柱状配線および絶縁性材料からなり、本体11の主面12の一部を覆い、外部端子41~44の端面を露出させている。被覆層50によって、インダクタ部品1の表面の絶縁性を確保することができる。
【0081】
[インダクタ部品の製造方法]
図3A~
図3Mを参照して本実施形態に係るインダクタ部品1の製造方法の一例を説明する。
図3Aに示すようにダミーコア基板61を準備する。ダミーコア基板61の両面には基板銅箔を有する。本実施形態では、ダミーコア基板61は、ガラスエポキシ基板である。ダミーコア基板61の厚みは、インダクタ部品1の厚みに影響を与えないため、加工上のそりなどの理由から適便取り扱いやすい厚みのものを用いればよい。
【0082】
次に、基板銅箔の面上に銅箔(ダミー金属層)62を接着する。銅箔62は基板銅箔の円滑面に接着される。このため、銅箔62と基板銅箔の接着力を弱くすることでき、後工程において、ダミーコア基板61を銅箔62から容易に剥がすことができる。好ましくはダミーコア基板61と銅箔62を接着する接着剤は、低粘着剤とする。また、ダミーコア基板61と銅箔62の接着力を弱くするために、ダミーコア基板61と銅箔62の接着面を光沢面とすることが望ましい。
【0083】
その後、銅箔62上に絶縁体15を積層する。このとき絶縁体15は、真空ラミネータやプレス機などにより、熱圧着し、熱硬化する。
【0084】
図3Bに示すように、絶縁体15をレーザ加工などにより開口部63aを形成する。そして、
図3Cに示すように、絶縁体15上にダミー銅64aとスパイラル配線21を形成する。詳しくは、絶縁体15上に無電解めっきやスパッタリング、蒸着などによりSAPのための給電膜(図示せず)を形成する。給電膜の形成後、給電膜上に感光性のレジストを塗布や貼りつけ、フォトリソグラフィによって配線パターンとなる箇所に感光性レジストの開口部を形成する。その後、ダミー銅64a、スパイラル配線21に相当するメタル配線を感光性レジスト層の開口部に形成する。メタル配線形成後、感光性レジストを薬液により剥離除去し、給電膜をエッチング除去する。その後、さらにこのメタル配線を給電部として、追加の銅電解めっきを施すことで狭スペースな配線を得る。また、SAPにより
図3Bに形成された開口部63aには銅が充填される。
【0085】
そして、
図3Dに示すように、ダミー銅64a、スパイラル配線21を絶縁体15で覆う。絶縁体15は真空ラミネータやプレス機などにより、熱圧着し、熱硬化する。
【0086】
次に、
図3Eに示すように、レーザ加工などにより絶縁体15に開口部65aを形成する。
【0087】
その後、ダミーコア基板61を銅箔62から剥がす。そして、銅箔62をエッチングなどにより取り除き、ダミー銅64aをエッチングなどにより取り除いて、
図3Fに示すように、内磁路に相当する孔部66aと、外磁路に相当する孔部66bを形成する。
【0088】
その後、
図3Gに示すように、絶縁体開口部67aをレーザ加工などにより形成する。そして、
図3Hに示すように、SAPにより絶縁体開口部67aを銅により充填しビア配線25を形成し、絶縁体15上に柱状配線31~34を形成する。
【0089】
次に、
図3Iに示すように、磁性材料69(本体11)によりスパイラル配線21、絶縁体15、柱状配線31~34を覆って、インダクタ基板を形成する。磁性材料69は、真空ラミネータやプレス機などにより、熱圧着し、熱硬化する。このとき、磁性材料69は、孔部66a,66bにも充填される。
【0090】
そして、
図3Jに示すように、インダクタ基板の上下の磁性材料69を研削工法により薄層化する。このとき、柱状配線31~34の一部を露出されることで、磁性材料69の同一平面上に柱状配線31~34の露出部が形成される。このとき、インダクタンス値が得られるのに十分な厚みまで磁性材料69を研削することで、インダクタ部品1の薄型化を図ることができる。
ここで、
図1Cに示すように本体11の主面12の第1算術平均粗さR
a1が式(1)を満たすように制御して主面12に凹凸を形成する。例えば、磁性粉13と樹脂14との密着力が比較的弱い磁性材料69を熱圧着後熱硬化前に研削することで、本体11の主面12から意図的に磁性粉13を脱粒させ、凹凸を形成することができる。なお、研削後に熱硬化することで、インダクタ部品1の強度を向上できる。
【0091】
その後、
図3Kに示すように、印刷工法により本体11の主面12に被覆層50を形成する。ここで、被覆層50の開口部70aを、外部端子41~44の形成部分とする。本実施例では、印刷工法を用いたが、フォトリソグラフィ法によって開口部70aを形成してもよい。
【0092】
次に、
図3Lに示すように、無電解銅めっきや、NiおよびAuなどのめっき被膜し、第1外部端子41~第4外部端子44を形成し、
図3Mに示すように、破線部Lにてダイシングにより個片化し、
図1Aおよび
図1Bのインダクタ部品1を得る。なお、
図3B以降、記載を省略したが、ダミーコア基板61の両面にインダクタ基板を形成してもよい。これにより、高い生産性を得ることができる。
【0093】
なお、
図2に示すように、スパイラル配線21がその底面のみを絶縁体15で覆われているインダクタ部品1’は、
図3Dおよび
図3Eの工程を割愛し、ならびに
図3Gにおける上面側の絶縁体開口部67aを形成する工程を割愛する以外は、
図3A~
図3Mに示すインダクタ部品1の製造方法と同様にして製造することができる。
【0094】
[第2実施形態]
[構成]
図4は、インダクタ部品の第2実施形態を示す透視平面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、スパイラル配線の構成(より具体的には、スパイラル配線の形状および数)が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0095】
第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、
図4に示すように、スパイラル配線21A,22Aは、同一平面に対して半円部と直線部とで構成される略トラック状である。スパイラル配線21A,22Aは、第1方向Zからみて、内周端(第1パッド部201)から外周端(第2パッド部202)に向かって時計回りに渦巻き状に巻回されている。
【0096】
また、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、
図4に示すように、第1実施形態と比較して、スパイラル配線21A,22Aは、同一平面上に複数配置されている。第2実施形態のインダクタ部品1Aは、このようなアレイ構造を採用することにより、厚みTへの影響を低減することができる。また、同一平面内に複数配置されたスパイラル配線21A,22Aによってインダクタアレイを構成することができる。
【0097】
第1、第2スパイラル配線21A,22Aは、互いに近接している。すなわち、第1スパイラル配線21Aで発生した磁束は、近接する第2スパイラル配線22Aの周囲を回り込み、第2スパイラル配線22Aで発生した磁束は、近接する第1スパイラル配線21Aの周囲を回り込む。したがって、第1スパイラル配線21Aと、第2スパイラル配線22Aとの磁気結合は強くなる。
【0098】
なお、第1、第2スパイラル配線21A,22Aのうちの一方のスパイラル配線の内周端からその外周端に向かって、かつ他方のスパイラル配線の外周端から内周端に向かって同時に電流が流れた場合、互いの磁束は強めあう。これは、第1、第2スパイラル配線21A,22Aのうちの一方のスパイラル配線の内周端をパルス信号の入力側、その外周端をパルス信号の出力側とし、かつ他方のスパイラル配線の外周端をパルス信号の入力側、その内周端をパルス信号の出力側とした場合に、第1スパイラル配線21Aと第2スパイラル配線22Aとは正結合されていることを意味する。一方、第1、第2スパイラル配線21A,22A両方について内周端からその外周端に向かって、または外周端からその内周端に向かって同時に電流が流れた場合、互いの磁束は打ち消し合う。これは、第1、第2スパイラル配線21A,22Aの内周端をパルス信号の入力側、その外周端をパルス信号の出力側とするか、または外周端をパルス信号の入力側、その内周端をパルス信号の出力側とした場合に、第1スパイラル配線21Aと第2スパイラル配線22Aとは負結合されていることを意味する。
【0099】
第1スパイラル配線21Aと第2スパイラル配線22Aは、絶縁体15に一体に覆われており、第1スパイラル配線21Aと第2スパイラル配線22Aの電気的絶縁性を確保する。
【0100】
なお、インダクタ部品1Aでは、同一平面上に2つのスパイラル配線を配置しているが、同一平面上に3つ以上のスパイラル配線を配置してもよい。
また、この実施形態では、Ra1を規定する直線は、各スパイラル配線21A,22Aの外部端子41,42を通過する直線をいう。直線は、例えば、スパイラル配線21Aにおける第1外部端子41の中心点と第2外部端子42の中心点とを結ぶ直線、およびスパイラル配線22Aにおける第1外部端子41の中心点と第2外部端子42の中心点とを結ぶ直線である。これら2つの直線について式(1)が成立すればよい。ただし、直線は全ての外部端子41,42のうちの何れか2つを通過してもよい。直線が1つの主面12において複数挙げられる場合、これらの複数の直線のうち、少なくとも2つの直線について式(1)が成立すればよい。
【0101】
[第3実施形態]
[構成]
図5は、インダクタ部品の第3実施形態を示す透視平面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、スパイラル配線の構成(より具体的には、スパイラル配線の形状および数)が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0102】
第3実施形態のインダクタ部品1Bでは、
図5に示すように、スパイラル配線21B,22Bは、第1方向Zから見たときに同一平面に対して略半楕円形の弧状である。すなわち、スパイラル配線21B,22Bは、約半周分巻回された曲線状の配線である。また、スパイラル配線21B,22Bは、中間部分で直線部を含んでいる。
【0103】
スパイラル配線21B,22Bは、その両端が外側に位置する第1垂直配線51および第2垂直配線52に電気的に接続され、第1垂直配線51および第2垂直配線52からインダクタ部品1Bの中心側に向かって孤を描く曲線状である。
【0104】
ここで、スパイラル配線21B,22Bのそれぞれにおいて、スパイラル配線21B,22Bが描く曲線と、スパイラル配線21B,22Bの両端を結んだ直線とに囲まれる範囲を内径部分とする。このとき、第1方向からみて、いずれのスパイラル配線21B,22Bについても、その内径部分同士は重ならない。
【0105】
また、第3実施形態のインダクタ部品1Bでは、
図5に示すように、第1実施形態と比較して、スパイラル配線21B,22Bは、同一平面上に複数配置されている。第3実施形態のインダクタ部品1Bは、このようなアレイ構造を採用することにより、厚みTへの影響を低減することができる。また、同一平面内に複数配置されたスパイラル配線によってインダクタアレイを構成することができる。
【0106】
一方、第1、第2スパイラル配線21B,22Bは、互いに近接している。すなわち、第2実施形態で既に述べたように、第1スパイラル配線21Bと、第2スパイラル配線22Bとの磁気結合は強くなる。
【0107】
なお、第1、第2スパイラル配線21B,22Bにおいて、同じ側にある一端からその反対側にある他端に向かって同時に電流が流れた場合、互いの磁束は強めあう。これは、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bの同じ側にある各一端を共にパルス信号の入力側、その反対側にある各他端を共にパルス信号の出力側とした場合に、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bとは正結合されていることを意味する。一方、例えば、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bの一方のスパイラル配線では一端側を入力、他端側を出力とし、他方のスパイラル配線では一端側を出力、他端側を入力とすれば、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bとは負結合されている状態にすることができる。
【0108】
スパイラル配線21B,22Bの一端側に接続された第1垂直配線51、および、スパイラル配線21B,22Bの他端側に接続された第2垂直配線52は、それぞれ、本体11の内部を貫通し、上面において露出する。第1垂直配線51には、第1外部端子41が電気的に接続され、第2垂直配線52には、第2外部端子42が電気的に接続される。
【0109】
第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bは、絶縁体15に一体に覆われており、第1スパイラル配線21Bと第2スパイラル配線22Bの電気的絶縁性を確保する。
【0110】
スパイラル配線21B,22Bは、それぞれスパイラル部200と、パッド部(不図示)と、引出部203とを有する。スパイラル部200は、パッド部の間に電気的に接続されている。引出部203は、パッド部のそれぞれから本体11の第1方向Zに平行な側面に引き出され、本体11の側面から外部に露出している。
【0111】
第1スパイラル配線21Bにおいて、各引出部203は、スパイラル部200に対して180°の位置に延在し、第2スパイラル配線22Bにおいて、各引出部203は、スパイラル部200に対して180°の位置に延在している。
【0112】
この実施形態では、Ra1を規定する直線は、各スパイラル配線21A,22Aの外部端子41,42を通過する直線をいう。直線は、例えば、スパイラル配線21Bにおける第1外部端子41の中心点と第2外部端子42の中心点とを結ぶ直線、およびスパイラル配線22Bにおける第1外部端子41の中心点と第2外部端子42の中心点とを結ぶ直線である。これら2つの直線について式(1)が成立すればよい。なお、直線は全ての外部端子41,42のうちの何れか2つを通過してもよい。直線が1つの主面12において複数挙げられる場合、これらの複数の直線のうち、少なくとも2つの直線について式(1)が成立すればよい。
【0113】
[第4実施形態]
[構成]
図6Aは、インダクタ部品の第4実施形態を示す透視平面図である。
図6Bは、第4実施形態に係るインダクタ部品の断面図(
図6AのX-X断面図)である。第4実施形態は、第1実施形態に対して、スパイラル配線の構成(より具体的には、スパイラル配線の形状および数)、および第1スパイラル配線と第2スパイラル配線との間を直列に接続する第2ビア配線をさらに備える点で相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第4実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0114】
第4実施形態のインダクタ部品1Cでは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、スパイラル配線21C,22Cは、同一平面に対して半円部と直線部とで構成される略トラック状である。また、第1スパイラル配線21Cは第1方向Zから見たときに、外周端(第2パッド部202a)から内周端(第1パッド部201a)に向かって反時計回り渦巻き状に巻回されている。第2スパイラル配線22Cは、外周端(第3パッド部203a)から内周端(第4パッド部204a)に向かって時計回りに渦巻き状に巻回されている。
【0115】
また、第4実施形態のインダクタ部品1Cでは、
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1実施形態と比較して、スパイラル配線21C,22Cは、本体11の主面12に直交する方向(第1方向Z)に複数配置されている。第4実施形態のインダクタ部品1Cは、複数のスパイラル配線を積層化することで実装面積への影響を低減することができる。これにより、インダクタ部品1Cをさらに小型化することができる。さらに、積層化したスパイラル配線を直列に接続すると、インダクタ部品1Cのインダクタンスを高めることができる。
【0116】
第1スパイラル配線21Cの内周端(第1パッド部201a)は、その内周端の上側の第1垂直配線51(ビア配線25および第1柱状配線31)を介して、第1外部端子41に電気的に接続される。第1スパイラル配線21Cの外周端(第2パッド部202a)は、その外周端の上側の第2垂直配線52(ビア配線25および第2柱状配線32)を介して、第2外部端子42に電気的に接続される。
【0117】
第2スパイラル配線22Cは、第1スパイラル配線21Cの下側に配置されている。第2スパイラル配線22Cの内周端(第4パッド部204a)は、その内周端の下側の第4垂直配線54(ビア配線25および第4柱状配線34)を介して、第4外部端子44に電気的に接続される。第2スパイラル配線22Cの外周端(第3パッド部203a)は、その外周端の上側の第3垂直配線53(ビア配線25および第3柱状配線33)を介して、第3外部端子43に電気的に接続される。
【0118】
第1スパイラル配線21Cと第2スパイラル配線22Cとは、第2ビア配線28を介して直列に接続されている。これにより、インダクタ部品1Cでは、第2ビア配線28により第1スパイラル配線21Cと、第2スパイラル配線22Cとが直列に接続するので、ターン数を増やすことで、インダクタンス値を高くすることができる。また、第1~第4垂直配線51~54を第1、第2スパイラル配線21C、22Cの外周から出すことができるので、第1、第2スパイラル配線21C,22Cの内径を大きくとることができ、インダクタンス値を向上させることができる。
【0119】
なお、インダクタ部品1Cでは、第1方向Zにスパイラル配線を2つ配置しているが、当該直交する方向にスパイラル配線を3つ以上配置してもよい。
また、この実施形態では、Ra1を規定する直線は、全ての外部端子41,42,43のうちの何れか2つを通過してもよい。直線は、例えば、第2外部端子42の中心点と第3外部端子43の中心点とを結ぶ直線である。直線が1つの主面12において複数挙げられる場合、これらの複数の直線のうち、少なくとも1つの直線について式(1)が成立すればよい。
【0120】
[実施例]
(第1実施例)
第1実施例では、インダクタ部品1Cは、磁性粉13と磁性粉13を含有する樹脂14とを含む平板状の本体11と、本体11内に配置されたスパイラル配線21C,22Cと、スパイラル配線21C,22Cと電気的に接続され、本体11の主面12から露出する外部端子41~44とを備えていた。スパイラル配線21C,22Cは、主面12に直交する方向に複数配置されていた。第1実施例のインダクタ部品1では、磁性粉13の平均粒径X(D50)は2.5μmであり、第1算術平均粗さRa1は0.27μmであり、本体11の主面12に垂直な厚みTは、190μmであった。よって、第1実施例のインダクタ部品1は、式(1)を満たすものであった。
【0121】
また、インダクタ部品1の寸法は、幅1.2mm×長さ0.6mmであった。被覆層50の厚みは、10μmであった。外部端子41~44は、多層金属膜であり、本体の11の主面12のみから露出する底面電極であった。多層金属膜は、柱状配線31~34の端面から順にCu層(厚み5μm)、Ni層(厚み5μm)およびAu層(厚み0.1μm)が積層した金属膜であった。磁性粉13の含有率は、本体11全体に対して74vol%であった。また、柱状配線31~34は、略円柱形状を有していた。柱状配線31~34は、Z方向から見たときに略円形状を有し、その直径は60μmであった。測定倍率50倍、測定面積は100μm×100μmであった。
【0122】
また、第1実施例のインダクタ部品1では、インダクタンス値Lが5.0nHであり、直流の電気抵抗値Rdcが17.5Ω・cmであり、折接強度が5Nを超えており、固着力は9Nであった。つまり、第1実施例のインダクタ部品1は、絶縁性、インダクタンス取得効率および機械的強度の低下を抑制するものであった。
【0123】
(第2実施例)
第2実施例は、以下のX、およびRa1が異なる以外は、第1実施例と実質的に同一であった。磁性粉13の平均粒径X(D50)は30μmであり、第1算術平均粗さRa1は7.26μmであり、本体11の主面12に垂直な厚みTは、190μmであった。よって、第2実施例のインダクタ部品1は、式(1)を満たすものであった。
【0124】
<インダクタ部品内蔵基板>
[第5実施形態]
[構成]
図7は、インダクタ部品内蔵基板の第5実施形態を示す断面図である。
図7に示すように、本開示の第5実施形態のインダクタ部品内蔵基板5は、インダクタ部品1Dが埋め込まれた基板6である。基板6は、基板主面17と、基板主面17に沿って延びる基板配線6fと、基板主面17に対して垂直に延在して基板配線6fに接続された基板ビア部6eとを有する。インダクタ部品1Dの外部端子41~44は、基板ビア部6eと直接接続している。
【0125】
インダクタ部品1Dは、第1実施形態に係るインダクタ部品1とは、被覆層50を有しない点で相違する。なお、第5実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0126】
基板6は、コア材7と、絶縁層8と、基板主面17に沿った方向に延存するパターン部6a~6dとをさらに有する。インダクタ部品1Dは、コア材7の貫通孔7aに配置され、コア材7とともに絶縁層8で覆われている。絶縁層8は、凹凸を有する主面12を覆うため、アンカー効果により主面12と絶縁層8との間の密着性が向上する。
【0127】
インダクタ部品1Dの本体11の主面12と基板主面17とは平行であることが好ましい。インダクタ部品1Dの主面12と、基板主面17とが平行である場合、インダクタ部品内蔵基板をさらに薄型にすることができる。また、インダクタ部品1Dは、基板主面17と、本体11の主面12およびスパイラル配線21が巻回された平面とが実質的に平行な状態で、基板6に埋め込まれてもよい。かかる場合、インダクタ部品1Dにおける第1方向Z(スパイラル配線21が巻回された平面に対する法線方向)は、基板6における厚み方向と実質的に一致し、基板主面17と実質的に直交する。
【0128】
インダクタ部品1Dの外部端子41~43は、基板ビア部6eと直接接続している。つまり、基板配線6fは、基板ビア部6eにおいてインダクタ部品1Dの外部端子と接続している。また、基板ビア部6eは、第1方向Zの上側からインダクタ部品1Dに接続する第1ビア部と、第1方向Zの下側からインダクタ部品1Dに接続する第2ビア部とを含む。具体的に述べると、第1外部端子41は、第1外部端子41の上側の基板ビア部6e(第1ビア部)を介して、第1パターン部6aに接続される。第2外部端子42は、第2外部端子42の上側の基板ビア部6e(第1ビア部)を介して、第2パターン部6bに接続される。第3外部端子43は、第3外部端子43の下側の基板ビア部6e(第2ビア部)を介して、第3パターン部6cに接続される。本開示のインダクタ部品内蔵基板5は、このような構成を有するため、絶縁性やインダクタンスの取得効率、機械的強度の低下が抑制されたインダクタ部品を有する。
【0129】
したがって、インダクタ部品内蔵基板5では、インダクタ部品1Dのスパイラル配線21と、基板配線6fとが、第1方向Zに延在する垂直配線51~53および基板ビア部6eによって、接続されている。これはすなわち、スパイラル配線21と基板配線6fとが余分な配線の引き回しなく接続されることを意味する。インダクタ部品内蔵基板5では、この余分な引き回し分の省略によって空いた空間を有効に活用できるため、従来技術のインダクタ部品やインダクタ部品内蔵基板よりも回路設計の自由度を向上できる。
【0130】
また、インダクタ部品内蔵基板5では、余分な配線の引き回しがないため、配線抵抗を低減できる。さらに、インダクタ部品内蔵基板5では、比較的大きいインダクタ部品1Dを基板6に埋め込むことで、回路全体を小型化、薄型化できる。
【0131】
また、基板配線6fは、インダクタ部品1Dの第1方向Zの両側(上下)から電気的に接続されている(不図示)。この場合、基板配線がインダクタ部品1Dの一方側からしか接続されていない従来のインダクタ部品内蔵基板に比べて、パターン部6a~6dのレイアウトの選択肢が増え、回路設計の自由度が向上する。
【0132】
また、実施形態5のインダクタ部品内蔵基板5は、さらにダミー端子を備えてもよい。例えば、
図7において、第4垂直配線54を設けずに、基板ビア部6eを介して第4外部端子44を基板配線6fのパターン部6dに電気的に接続させた場合、第4外部端子44はダミー端子として機能し得る。かかる場合、インダクタ部品1Dは放熱経路として第4外部端子44および基板配線6fを確保できる。特に、基板配線6fは銅からなり、熱伝導率が非常に高いため、インダクタ部品1Dから発生した熱は、ダミー端子としての第4外部端子44から基板配線6fを介して効率的に放熱され、放熱性を向上できる。なお、基板配線6fのパターン部6dが接地線である場合は、第4を静電シールドとして機能させることができる。
【0133】
また、第1実施形態で説明したように、インダクタ部品1Dにおいて、第1方向Zからみて、外部端子の面積は、柱状配線31~34の面積よりも大きいので、外部端子の面積を大きくできる。したがって、インダクタ部品1Dを基板6に埋め込む際、インダクタ部品1Dの外部端子と接続する基板ビア部6eを基板6に設けるとき、外部端子に対する基板ビア部6eの形成位置のマージンを大きくとることができて、埋め込み時の歩留まりを向上できる。
【0134】
なお、
図7では、インダクタ部品内蔵基板5には、インダクタ部品1Dおよび基板配線6fのみしか記載されていないがインダクタ部品内蔵基板5には、半導体部品、コンデンサ部品、抵抗部品などの別の電子部品が埋め込まれていてもよい。また、基板主面17に別の電子部品を表面実装したり、半導体チップを接合したりしてもよい。
【0135】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、種々の態様において実施することができる。また、上記の実施形態で示す構成は、一例であり特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。例えば、外部端子が主面に1つのみ設けられている場合、Ra1を規定する直線は、1つの外部端子を通過する直線である。このとき、式(1)を満たすことにより、外部端子から他の配線などへの電気的な短絡の発生を抑制することができる。
また、上記の実施形態では、インダクタ配線スパイラル配線であるが、インダクタ配線は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば、ストレート形状、ミアンダ形状およびヘリカル形状のような公知の様々な構造、形状を有することができる。
【符号の説明】
【0136】
1,1A,1B,1C,1D インダクタ部品
5 インダクタ部品内蔵基板
6 基板
6e 基板ビア部
6f 基板配線
11 本体
12 主面
13 磁性粉
14 樹脂
15 絶縁体
17 基板主面
18 直線
21 スパイラル配線
41,42,43,44 外部端子
50 被覆層