(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】エアバッグドア構造
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2165 20110101AFI20221012BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20221012BHJP
【FI】
B60R21/2165
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2019188987
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 一
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 千春
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-023620(JP,A)
【文献】特開平11-348707(JP,A)
【文献】特開平11-091480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/2165
B60R 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側に表皮部材が配置されるベース基材と、前記ベース基材の裏側に配置される板状に形成されたドア部材と、からなるエアバッグドア構造であって、
前記ドア部材は、筒状に形成された枠部と、それぞれ前記枠部の一辺に接続され、エアバッグ展開時に開裂すべき所定分割線を挟んで区画された第一ドア部及び第二ドア部と、を有し、
前記ベース基材は、前記ベース基材の裏面における前記ドア部材の前記枠部よりも枠内側に形成されたティア部を有し、
前記ティア部は、前記ドア部材の前記枠部に沿って形成される枠沿線部と、前記所定分割線に沿って形成される分割線部と、それぞれ、前記枠沿線部よりも枠外方向に向けて突出すると共に、両側の裾野端が前記枠沿線部に連結しかつ頂点が前記分割線部の端部に連結するように形成された一対の突出部と、を有する、エアバッグドア構造。
【請求項2】
前記ドア部材は、前記ドア部材の前記枠部よりも枠内側にかつ前記ティア部よりも枠外側に形成されたリブを有する、請求項1に記載されたエアバッグドア構造。
【請求項3】
前記リブは、前記ドア部材の前記枠部から前記ティア部の前記突出部にかけて延びる短尺リブを含む、請求項2に記載されたエアバッグドア構造。
【請求項4】
前記リブは、前記ドア部材の前記枠部から前記ティア部にかけて前記所定分割線に平行に延びている、請求項2又は3に記載されたエアバッグドア構造。
【請求項5】
前記ドア部材の前記枠部は、四角筒状に形成されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載されたエアバッグドア構造。
【請求項6】
前記ドア部材の前記枠部は、前記ティア部の前記枠沿線部及び前記突出部の形状に合致する筒形状に形成されている、請求項1に記載されたエアバッグドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などに搭載されるエアバッグドア構造が知られている(例えば、特許文献1、2、及び3)。エアバッグドア構造は、表側に表皮部材が配置されるインストルメントパネルなどのベース基材と、ベース基材の裏側に配置される板状に形成されたドア部材と、からなる。ベース基材は、その裏面に形成されたティア部を有している。このティア部の形状は、例えばダブルY型やH型などである。
【0003】
特許文献1や2に記載される如く、ダブルY型において、ティア部は、中央ティアラインと、四つの側部ティアラインと、を有している。中央ティアラインは、矩形状のドア部材の第一ドア部と第二ドア部とを区画するように延びている。四つの側部ティアラインはそれぞれ、中央ティアラインの一端から第一ドア部の隅部へ延びるものと、中央ティアラインの一端から第二ドア部の隅部へ延びるものと、中央ティアラインの他端から第一ドア部の隅部へ延びるものと、中央ティアラインの他端から第二ドア部の隅部へ延びるものと、を含む。
【0004】
また、特許文献3に記載される如く、H型において、ティア部は、中央ティアラインと、二つの側部ティアラインと、を有している。中央ティアラインは、矩形状のドア部材の第一ドア部と第二ドア部とを区画するように延びている。側部ティアラインは、中央ティアラインの端部に接して中央ティアラインに直交する方向に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-112595号公報
【文献】特開2017-202700号公報
【文献】特開2011-245926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ティア部の形状が上記の如くダブルY型やH型であるものとすると、ドア部材がエアバッグの展開により第一ドア部と第二ドア部との間で開裂した際に、ベース基材の表側に配置される表皮部材が二方向に破断する必要がある。しかし、表皮部材が二方向に破断する必要があると、一方向に切れ易いが他方向には切れ難い材質の表皮部材に対応することが困難となり、その表皮部材をベース基材の表皮として採用することが難しくなる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、エアバッグ展開時に表皮部材を一方向に破断させるようにエアバッグドアを開裂させベース基材を破断させることが可能なエアバッグドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、表側に表皮部材が配置されるベース基材と、前記ベース基材の裏側に配置される板状に形成されたドア部材と、からなるエアバッグドア構造であって、前記ドア部材は、筒状に形成された枠部と、それぞれ前記枠部の一辺に接続され、エアバッグ展開時に開裂すべき所定分割線を挟んで区画された第一ドア部及び第二ドア部と、を有し、前記ベース基材は、前記ベース基材の裏面における前記ドア部材の前記枠部よりも枠内側に形成されたティア部を有し、前記ティア部は、前記ドア部材の前記枠部に沿って形成される枠沿線部と、前記所定分割線に沿って形成される分割線部と、それぞれ、前記枠沿線部よりも枠外方向に向けて突出すると共に、両側の裾野端が前記枠沿線部に連結しかつ頂点が前記分割線部の端部に連結するように形成された一対の突出部と、を有する、エアバッグドア構造である。
【0009】
この構成によれば、エアバッグ展開時、ドア部材の開裂及びベース基材の分割線部に沿った破断が、楕円形状の開口が形成されるように行われる。この場合は、ベース基材が分割線部の延びる方向に直交する方向に沿って破断することは回避されて、表皮部材が所定分割線に沿う方向とは異なる方向に沿って破断することは回避される。すなわち、エアバッグ展開時、表皮部材を所定分割線に沿った一方向に破断するようにドア部材を第一ドア部と第二ドア部との間で開裂させベース基材を分割線部に沿って破断させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るエアバッグドア構造(但し、ベース基材及び表皮部材を除いた状態)の正面図である。
【
図2】
図1に示すエアバッグドア構造のII-II断面図である。
【
図3】
図1に示すエアバッグドア構造のIII-III断面である。
【
図4】
図1に示すエアバッグドア構造のIV-IV断面図である。
【
図5】実施形態のエアバッグドア構造のエアバッグ展開時の正面図である。
【
図6】実施形態のエアバッグドア構造のエアバッグ展開時のII-II断面図である。
【
図7】一変形形態に係るエアバッグドア構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1-
図7を用いて、本発明に係るエアバッグドア構造の具体的な実施形態及び変形形態について説明する。
【0012】
実施形態のエアバッグドア構造1は、例えば車両に搭載されるエアバッグの展開時に開裂する扉の構造である。エアバッグドア構造1は、例えば車両の助手席前方に配置されて、助手席に着座する乗員を保護する際に開裂する扉に適用される。尚、エアバッグドア構造1は、車両の運転席前方に配置される扉に適用されてもよい。
【0013】
エアバッグドア構造1は、
図1、
図2、
図3、及び
図4に示す如く、ベース基材10と、ドア部材20と、表皮部材30と、からなる。ベース基材10は、例えばインストルメントパネルであって、表面全体が車室内に露出するように形成される部材である。ベース基材10は、例えば樹脂材料を射出して成形されている。ベース基材10は、板状に形成された基材本体部11を有している。
【0014】
ドア部材20は、エアバッグ展開時に開裂するドアである。ドア部材20は、四角形状(具体的には、長方形状)に形成されている。ドア部材20は、例えば樹脂材料を射出して成形されている。ドア部材20は、ベース基材10の裏側に配置されている。ドア部材20は、ベース基材10に取り付け固定されている。ドア部材20は、全体として板状に形成されている。ドア部材20は、枠部21を有している。枠部21は、筒状(具体的には、四角筒状)に形成されている。枠部21は、エアバッグ装置を収容する収容空間を形成している。
【0015】
ドア部材20は、第一ドア部22と、第二ドア部23と、を有している。第一ドア部22及び第二ドア部23は、枠部21の枠内側に配置されている。第一ドア部22及び第二ドア部23はそれぞれ、枠部21の一辺に接続されている。第一ドア部22が接続される枠部21の一辺と第二ドア部23が接続される枠部21の一辺とは、互いに対向して平行に延びる一対の辺である。第一ドア部22及び第二ドア部23は、エアバッグの展開時に開裂すべき所定分割線Lを挟んで区画されている。すなわち、第一ドア部22と第二ドア部23とは、所定分割線Lを挟んで互いに対向している。所定分割線Lは、直線状に形成された線である。
【0016】
第一ドア部22及び第二ドア部23はそれぞれ、四角形状(具体的には、長方形状)に形成されている。第一ドア部22は、互いに平行に延びる二つの長辺22a,22bと、互いに平行に延びる二つの短辺22c,22dと、長辺22a,22bと短辺22c,22dとが交わる隅部22e,22f,22g,22hと、を有している。第二ドア部23は、互いに平行に延びる二つの長辺23a,23bと、互いに平行に延びる二つの短辺23c,23dと、長辺23a,23bと短辺23c,23dとが交わる隅部23e,23f,23g,23hと、を有している。
【0017】
第一ドア部22における第二ドア部23寄りの長辺22bと第二ドア部23における第一ドア部22寄りの長辺23aとは、互いに接して或いは隙間を介して互いに離間して対向しており、互いに平行に延びている。上記の所定分割線Lは、これらの長辺22b及び長辺23aに沿って直線状に延びている。尚、以下では、長辺22bと長辺23aとの間に隙間Sが空いているものとする。
【0018】
第一ドア部22は、長辺22aが枠部21の一辺に接続される一方、長辺22b及び短辺22c,22dが枠部21などに対して非接続になるように形成されている。第一ドア部22は、長辺22aを中心にして回動可能である。また、第二ドア部23は、長辺23bが枠部21の一辺に接続される一方、長辺23a及び短辺23c,23dが枠部21などに対して非接続になるように形成されている。第二ドア部23は、長辺23bを中心にして回動可能である。
【0019】
ドア部材20の裏側には、エアバッグ装置(図示せず)が配置されている。エアバッグ装置は、ドア部材20の枠部21内の空間に収容されている。エアバッグ装置は、例えば車両衝突時などにエアバッグを枠部21内で展開させる。枠部21内で展開されたエアバッグは、ドア部材20の第一ドア部22及び第二ドア部23を車室内側へ押圧して開裂させると共に、ベース基材10を後述のティア部12の分割線部12bに沿って破断させ、その開口から車室内まで膨張される。
【0020】
ドア部材20は、また、鍔部24を有している。鍔部24は、ドア部材20の枠部21の枠外側に配置されている。鍔部24は、枠部21の外縁から枠外側に向けて突出して延びている。鍔部24は、第一ドア部22及び第二ドア部23と面一をなしている。上記の枠部21は、第一ドア部22、第二ドア部23、及び鍔部24の裏面からその裏面に直交する方向に向けて延びている。
【0021】
表皮部材30は、ベース基材10の表面を覆う部材である。表皮部材30は、ベース基材10の表側に配置されている。表皮部材30は、少なくとも一方向に切れる材質により形成されており、例えばファブリックなどが用いられる。
【0022】
ベース基材10は、ティア部12を有している。ティア部12は、エアバッグ展開時にその展開されたエアバッグの圧力によりベース基材10を破断させ或いは折り曲げるための部位である。ティア部12は、基材本体部11の裏面に断面形状が凹溝状やV溝状になるように形成されている。ティア部12は、ドア部材20の枠部21よりも枠内側に形成されている。ティア部12は、線状に形成されている。ティア部12は、枠沿線部12aと、分割線部12bと、突出部12cと、を有している。
【0023】
枠沿線部12aは、ドア部材20の枠部21に沿って形成される部位である。枠沿線部12aは、第一ドア部22に対応した第一ドア対応部12a-1と、第二ドア部23に対応した第二ドア対応部12a-2と、を含んでいる。第一ドア対応部12a-1は、基材本体部11の裏面に、第一ドア部22における第二ドア部23とは反対寄りの長辺22aに沿って平行に延びると共に、二つの短辺22c,22dそれぞれの一部に沿って平行に延びるようにコの字状に形成されている。第二ドア対応部12a-2は、基材本体部11の裏面に、第二ドア部23における第一ドア部22とは反対寄りの長辺23bに沿って平行に延びると共に、二つの短辺23c,23dそれぞれの一部に沿って平行に延びるようにコの字状に形成されている。
【0024】
枠沿線部12aは、長辺22a,23bに対しては相対的に近くなるように設けられていると共に、短辺22c,22d,23c,23dに対しては相対的に遠くなるように設けられている。すなわち、枠沿線部12aは、長辺22a,23bとの距離が近くかつ短辺22c,22d,23c,23dとの距離が遠くなるように形成されている。
【0025】
分割線部12bは、所定分割線Lに沿って形成される部位である。分割線部12bは、第一ドア部22の長辺22b及び第二ドア部23の長辺23aに沿って直線状に延びている。分割線部12bは、一端が第一ドア部22の長辺22bと短辺22cとが交わる隅部22f或いは第二ドア部23の長辺23aと短辺23cとが交わる隅部23eに近接して位置し、他端が第一ドア部22の長辺22bと短辺22dとが交わる隅部22g或いは第二ドア部23の長辺23aと短辺23dとが交わる隅部23hに近接して位置するように形成されている。分割線部12bは、その長さが枠沿線部12aの長辺22a,23aに沿った長さよりも長くなるように形成されている。
【0026】
突出部12cは、枠沿線部12aよりもドア部材20の枠部21に近づく枠外方向に向けて突出する部位である。尚、突出部12cの突出形状は、頂点が角張った三角形状であってもよいし、頂点が滑らかな半円状などの山型であってもよい。突出部12cは、ドア部材20の短辺22c,23c側と短辺22d,23d側とにそれぞれ設けられている。各突出部12cはそれぞれ、枠沿線部12aに連結している。
【0027】
具体的には、短辺22c,23c側(
図1において左側)の突出部12cは、枠沿線部12aの第一ドア対応部12a-1の一端と第二ドア対応部12a-2の一端との間に介在している。また、短辺22d,23d側(
図1において右側)の突出部12cは、枠沿線部12aの第一ドア対応部12a-1の他端と第二ドア対応部12a-2の他端との間に介在している。一対の突出部12cと枠沿線部12aとは、全体として環状をなしている。
【0028】
短辺22c,23c側の突出部12cは、枠沿線部12aの第一ドア対応部12a-1及び第二ドア対応部12a-2における短辺22c,23cに平行な部分よりもその短辺22c,23c側の枠外方向(
図1における左方)に向けて突出している。短辺22c,23c側の突出部12cは、両側の裾野端が第一ドア対応部12a-1の一端及び第二ドア対応部12a-2の一端に連結しかつ頂点が分割線部12bの一端(
図1における左端)に連結するように形成されている。
【0029】
短辺22d,23d側の突出部12cは、枠沿線部12aの第一ドア対応部12a-1及び第二ドア対応部12a-2における短辺22d,23dに平行な部分よりもその短辺22d,23d側の枠外方向(
図1における右方)に向けて突出している。短辺22d,23d側の突出部12cは、両側の裾野端が第一ドア対応部12a-1の他端及び第二ドア対応部12a-2の他端に連結しかつ頂点が分割線部12bの他端(
図1における右端)に連結するように形成されている。
【0030】
尚、
図1に示す如く、突出部12cにおける両側の裾野端間の距離Wは、枠沿線部12aの第一ドア対応部12a-1における長辺22a,22bに平行な辺と枠沿線部12aの第二ドア対応部12a-2における長辺23a,23bに平行な辺との距離Dに対して、例えば10%~100%に設定されていることが好ましい。また、突出部12cの裾野端から頂点までの高さHは、その両側の裾野端間の距離Wに対して、例えば30%~150%に設定されていることが好ましい。更に、突出部12cの裾野端と頂点とを結んだ線の角度θは、枠沿線部12aにおける短辺22c,22d,23c,23dに平行な辺に対して、例えば20°~70°に設定されていることが好ましい。
【0031】
一対の突出部12cは、それぞれの頂点が所定分割線L上に重なりかつそれら二つの頂点が所定分割線L上の異なる二点に位置するように形成されている。一対の突出部12cの頂点同士の距離は、分割線部12bの長さに一致し、枠沿線部12aの長辺22a,23aに沿った長さよりも長い。
【0032】
ドア部材20は、リブ25を有している。リブ25は、枠部21を補強してエアバッグ展開時の耐圧向上を図ると共に、展開されるエアバッグが押圧するドア部材20の押圧位置を制限する部位である。リブ25は、枠部21に一体化されている。リブ25は、枠部21の筒内面に接続されている。リブ25は、枠部21よりも枠内側にかつベース基材10のティア部12よりも枠外側に形成されている。リブ25は、枠部21からティア部12にかけて直線状に延びていると共に、枠部21の筒が延びる方向に沿って直線状に延びている。リブ25は、板状に形成されている。
【0033】
リブ25は、複数設けられている。各リブ25はそれぞれ、枠部21からティア部12にかけて所定分割線Lに平行に延びており、ティア部12側の端部がティア部12に近接して位置するように形成されている。リブ25は、長尺リブ25aと、短尺リブ25bと、を含む。長尺リブ25aは、枠部21からティア部12の枠沿線部12aの第一ドア対応部12a-1及び第二ドア対応部12a-2における短辺22c,22d,23c,23dに平行な部分にかけてその間を繋ぐように延びている。短尺リブ25bは、枠部21からティア部12の突出部12cにかけてその間を繋ぐように延びている。
【0034】
短尺リブ25bにおける枠部21とティア部12との間の延在長さは、長尺リブ25aにおける枠部21とティア部12との間の延在長さよりも短い。また、短尺リブ25bにおける枠部21とティア部12との間の延在長さは、所定分割線Lに近い短尺リブ25bほど短い。
【0035】
上記のエアバッグドア構造1において、エアバッグがドア部材20の枠部21内で展開されると、そのエアバッグがその枠部21内でその枠部21の枠内面及びリブ25の先端に沿って進行し、第一ドア部22及び第二ドア部23を車室内側へ押圧する。この押圧が生じると、第一ドア部22及び第二ドア部23がそれぞれ枠部21に接続される辺を中心にして回動するように変形して、ドア部材20が所定分割線Lに沿って開裂する。
【0036】
ドア部材20が所定分割線Lに沿って開裂すると、ベース基材10が表皮部材30と一体となってそのドア部材20から車室内側へ押圧される。この押圧が生じると、ベース基材10が、ティア部12の枠沿線部12a及び突出部12cに沿って折れ曲がりつつ、ティア部12の分割線部12bに沿って二分割されるように破断する。この場合、表皮部材30は、ベース基材10と同様に破断する(
図5及び
図6参照)。
【0037】
エアバッグから第一ドア部22及び第二ドア部23への押圧は、ドア部材20の中心ほど大きな押圧力が作用するものである。また、ベース基材10は、それぞれ枠沿線部12aよりも枠外方向に突出する一対の突出部12cと、それらの突出部12cの頂点同士を繋ぐ分割線部12bと、を有している。そして、ベース基材10の破断が生じる分割線部12bの長さは、ベース基材10の折れ曲がりが生じる枠沿線部12aの長辺22a,23aに沿った長さよりも長い。このため、上記したドア部材20の開裂及びベース基材10の分割線部12bに沿った破断は、
図5に示す如く、その開口形状が分割線部12bの中央部側ほど大きく分割線部12bの端部側ほど小さくなる楕円形状(すなわち、フィッシュマウス型)になるように行われる。
【0038】
そして、上記したドア部材20の開裂及びベース基材10の分割線部12bに沿った破断が生じると、エアバッグは、それらのドア部材20の開裂部やベース基材10及び表皮部材30の破断部の開口から車室内に膨張される。これにより、車両乗員は、その膨張展開されたエアバッグにより保護される。
【0039】
このように、エアバッグドア構造1においては、エアバッグ展開時、ドア部材20の開裂及びベース基材10の分割線部12bに沿った破断が、楕円形状(すなわち、フィッシュマウス型)の開口が形成されるように行われる。かかる開裂や破断が生じる場合は、ベース基材10が分割線部12bの延びる方向に直交する方向に沿って破断することは回避されるので、表皮部材30が所定分割線Lに沿う方向とは異なる方向に沿って破断することは回避される。
【0040】
すなわち、エアバッグ展開時、表皮部材30を所定分割線Lに沿った一方向に破断するようにドア部材20を第一ドア部22と第二ドア部23との間で開裂させベース基材10を直線状の分割線部12bに沿って破断させることができる。このため、エアバッグドア構造1においては、ベース基材10の表側を覆う表皮部材30の材質として、少なくとも一方向に破断できるものを用いることとすれば十分であるので、表皮部材30として用いる材質を広範囲まで拡大することができる。
【0041】
また、上記のエアバッグドア構造1においては、ドア部材20の枠部21よりも枠内側にかつベース基材10のティア部12よりも枠外側にリブ25が形成されている。このリブ25によれば、展開されるエアバッグが押圧するドア部材20の押圧位置を主にベース基材10のティア部12の枠内側範囲に制限することができる。このため、エアバッグ展開時におけるベース基材10での折れ曲がりや破断をティア部12に沿った位置に集中させることができ、そのベース基材10での折れ曲がりや破断を所望の状態にコントロールし易くなる。
【0042】
特に、上記のリブ25は、枠部21に一体化されており、枠部21からティア部12にかけて直線状に延びている。このため、枠部21を補強すると共にエアバッグにより押圧されるドア部材20の押圧位置を制限するためのリブ25の形成を容易に実現することができる。
【0043】
また、リブ25は、枠部21からティア部12の枠沿線部12aにおける短辺22c,22d,23c,23dに平行な部分にかけて延びる長尺リブ25aと、枠部21からティア部12の突出部12cにかけて延びる短尺リブ25bと、を含む。この構成において、各リブ25の先端同士を結んだ線は、ティア部12の枠沿線部12a及び突出部12cに沿うものとなる。このため、ベース基材10を、突出部12cを含むティア部12に沿って折れ曲がり易くかつ破断し易くすることができる。
【0044】
更に、リブ25は、枠部21からティア部12にかけて所定分割線Lに平行に延びている。この構成においては、リブ25をティア部12の枠沿線部12aや突出部12cに沿って或いは枠沿線部12aや突出部12cに平行に壁板状に形成することは不要であり、リブ25として、枠部21を補強する機能及びエアバッグによって押圧されるドア部材20の押圧位置を制限する機能の双方を実現することができる。
【0045】
ところで、上記の実施形態においては、ドア部材20の枠部21が四角筒状に形成されていると共に、ベース基材10のティア部12が、基材本体部11の裏面にドア部材20の枠部21の形状に単純に合致した四角形状に形成されることなく、枠沿線部12aから枠外方向に突出した突出部12cを有する形状に形成されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、エアバッグドア構造を
図7に示す如き構造100としてもよい。
【0046】
すなわち、この変形形態のエアバッグドア構造100において、ドア部材20の枠部21の形状は、ベース基材10のティア部12の枠沿線部12a及び突出部12cの形状に合致した筒形状であってよい。枠部21は、ベース基材10のティア部12の枠沿線部12a及び突出部12cに沿った筒形状に形成されると共に、第一ドア部22の短辺22c,22d側及び第二ドア部23の短辺23c,23d側は、その枠部21の筒内面に沿うようにすなわちベース基材10のティア部12の枠沿線部12a及び突出部12cに沿うように角部を含んだ形状に形成される。
【0047】
この変形形態においては、上記の実施形態と同様の効果を得ることが可能であると共に、上記の実施形態とは異なり、ドア部材20にリブ25を形成することが不要となる。
【0048】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:エアバッグドア構造、10:ベース基材、11:基材本体部、12:ティア部、12a:枠沿線部、12b:分割線部、12c:突出部、20:ドア部材、21:枠部、22:第一ドア部、23:第二ドア部、25:リブ、25a:長尺リブ、25b:短尺リブ、30:表皮部材、L:所定分割線、S:隙間。