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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20221012BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20221012BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20221012BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/14 B
H02K11/33
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019502949
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 JP2018006608
(87)【国際公開番号】W WO2018159471
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2017040683
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】本間 和博
(72)【発明者】
【氏名】樋口 孔二
(72)【発明者】
【氏名】伊東 陽介
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-328075(JP,A)
【文献】特開2016-096663(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083458(WO,A1)
【文献】特開2006-037828(JP,A)
【文献】特開2001-213336(JP,A)
【文献】特開2016-032330(JP,A)
【文献】特開2009-019522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 7/14
H02K 11/33
F04C 15/00
F04C 15/06
F04C 2/10
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸に沿って配置されたシャフトを有するモータ部と、
前記モータ部の軸方向一方側に位置し、前記モータ部によって前記シャフトを介して駆動されてオイルを吐出するポンプ部と、
前記モータ部の径方向外側に位置するインバータ回路と、を有し、
前記モータ部は、
前記シャフトの周囲において回転可能なロータと、
前記ロータと対向して配置されたステータと、
前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、を有し、
前記ハウジングは、外側面にヒートシンクを有し、
前記ヒートシンクは、
前記ポンプ部から送出された前記オイルを流す第1流路を有し、
前記ポンプ部は、
前記オイルを前記第1流路に送出するポンプ側送出口を有し、
前記モータ部は、
前記ポンプ側送出口から送出される前記オイルを充填可能な空間部を有し、
前記空間部と前記第1流路とが繋がり、
前記インバータ回路は、前記ヒートシンクと熱的に接触する
ポンプ装置。
【請求項2】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能に支持されたシャフトを有するモータ部と、
前記モータ部の軸方向一方側に位置し、前記モータ部によって前記シャフトを介して駆動されてオイルを吐出するポンプ部と、
前記モータ部の径方向外側に位置するインバータ回路と、を有し、
前記モータ部は、
前記シャフトの周囲において回転するロータと、
前記ロータと対向して配置されたステータと、
前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、を有し、
前記ハウジングは、外側面にヒートシンクを有し、
前記ヒートシンクは、
前記ポンプ部から送出された前記オイルを流す第2流路を有し、
前記モータ部は、さらに、前記第2流路から送出される前記オイルを前記モータ部内に吸引するモータ側吸入口と、を有し、
前記第2流路は、前記モータ側吸入口に繋がり、
前記モータ部は、前記モータ側吸入口から前記モータ部内に吸引される前記オイルを前記ステータに流す第3流路を有する
ポンプ装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、さらに、前記外側面に前記ヒートシンクとは別体の他のヒートシンクを有し、
前記他のヒートシンクは、
前記ポンプ部から送出された前記オイルを流す第1流路を有し、
前記モータ部の径方向外側に、前記インバータ回路とは別体の他のインバータ回路を配置し、
前記他のインバータ回路は、前記他のヒートシンクと熱的に接触する
請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記ヒートシンクは、前記ハウジングと別体であるとともに、前記ハウジングに熱的に接触する別部材である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記ポンプ部には、前記オイルを前記ポンプ部内に吸入するポンプ側吸入口が設けられ、
前記ポンプ側吸入口は、前記ポンプ部の負圧領域に設けられる
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記ポンプ側吸入口は、前記ポンプ部内に設けられたポンプロータの軸方向一方側の面に対向して配置されたポンプカバーに設けられる
請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記ポンプ側吸入口は、前記ポンプ部の側面に設けられる
請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記ポンプ側送出口は、前記ポンプ部の加圧領域に設けられている
請求項1又は3に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記ポンプ側送出口は、前記モータ部に対向して配置された前記ポンプ部のポンプボディに設けられている
請求項8に記載のポンプ装置。
【請求項10】
前記ポンプ部は、前記シャフトを通す貫通孔を有して前記モータ部に対向して配置されたポンプボディと、前記オイルを前記第1流路に送出するポンプ側送出口と、前記オイルを前記ポンプ側送出口より前記ポンプ部の加圧によって前記モータ部内へ送出する第5流路と、を有し、
前記第5流路は、前記貫通孔に通された前記シャフトと前記貫通孔との間の隙間を通る
請求項1又は3に記載のポンプ装置。
【請求項11】
前記ステータは、
前記ハウジングの内側面に嵌合するコアバック部を有し、
前記ヒートシンクは、軸方向に沿って延びる、
請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【請求項12】
前記ステータと前記ロータとの間には前記ポンプ側送出口から送出される前記オイルが流れる第4流路が設けられ、
前記第4流路は、前記モータ部に設けられるモータ側吐出口に繋がる
請求項8又は10に記載のポンプ装置。
【請求項13】
前記モータ部は、
前記モータ部内の前記オイルを前記モータ側吐出口より吐出する第6流路と、
前記ハウジングの軸方向他方側端部に保持され、前記シャフトを回転可能に支持する軸受部材と、を有し、
前記第6流路は、前記シャフトと前記軸受部材との間の隙間を通る
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項14】
前記モータ側吸入口は、前記ハウジングの側面であって前記ステータの軸方向他方側端よりも外側に設けられている
請求項2又は3に記載のポンプ装置。
【請求項15】
前記モータ側吸入口は、前記ハウジングの軸方向他方側端部に設けられたハウジング底部に設けられている
請求項2又は3に記載のポンプ装置。
【請求項16】
前記インバータ回路と前記ハウジングとは、絶縁性放熱材を介して接触する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項17】
前記インバータ回路と前記ヒートシンクとは、絶縁性放熱材を介して接触する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項18】
前記インバータ回路に設けられた発熱素子は、前記絶縁性放熱材を介して前記ハウジングと接触する
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項19】
前記インバータ回路に設けられた発熱素子は、前記絶縁性放熱材を介して前記ヒートシンクと接触する
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項20】
前記インバータ回路は、前記ステータのポンプ部側端部よりも前記ポンプ部側に位置する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項21】
前記インバータ回路は、複数の発熱素子を有し、
複数の前記発熱素子の少なくとも一部が、前記ステータのポンプ部側端部よりも前記ポンプ部側に位置する
請求項2に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トランスミッション等に使用する電動オイルポンプは、応答性が求められる。電動オイルポンプの応答性を実現するためには、電動オイルポンプ用のモータを高出力にする必要がある。
電動オイルポンプ用のモータを高出力にした場合、モータを駆動するためのインバータも高出力に耐えられる設計にする必要がある。つまり、大電流に耐えられる素子を使用したインバータが必要である。インバータに大電流が流れると、素子が発熱し、インバータの温度が上昇する虞がある。このため、インバータの温度上昇を抑えるため、電動オイルポンプに温度上昇抑制構造を設ける必要がある。
【0003】
特許文献1には、シャフトの一端側にモータロータを固着してモータケース内に収容し、シャフトの他端側に入力側歯車を固着してモータケースを塞ぐモータフランジ内に収容した電動ポンプユニットが開示される。
【0004】
この特許文献1に記載の電動ポンプユニットは、モータの下方にモータケース及び筐体を有し、この筐体内にコントローラとなる回路基板(インバータ回路)が収容される。このため、回路基板(インバータ回路)はモータの下方に位置するので、モータからの熱の影響を受けにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-229658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、筐体には回路基板(インバータ回路)に実装された電子部品から発生する熱を逃がすための手段が無い。このため、筐体内に熱がこもり、回路基板(インバータ回路)の温度が上昇する虞がある。
【0007】
本発明の目的は、電子部品から発生する熱によって回路基板(インバータ回路)が温度上昇する虞を抑制可能なポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の例示的な第1発明のポンプ装置は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能に支持されたシャフトを有するモータ部と、前記モータ部の軸方向一方側に位置し、前記モータ部によって前記シャフトを介して駆動されてオイルを吐出するポンプ部と、前記モータ部の径方向外側に位置するインバータ回路と、を有する。前記モータ部は、前記シャフトの周囲において回転可能なロータと、前記ロータと対向して配置されたステータと、前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、を有する。前記ハウジングは、外側面にヒートシンクを有する。前記ヒートシンクは、前記ポンプ部から送出されたオイルを流す第1流路を有し、前記インバータ回路は、前記ヒートシンクと熱的に接触する。
【発明の効果】
【0009】
本願の例示的な第1発明によれば、回路基板(インバータ回路)から発生する熱によってコントローラが温度上昇する虞を抑制可能なポンプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るポンプ装置の断面図である。
図2】ポンプ装置に設けられたヒートシンクの部分斜視図である。
図3】第2実施形態に係るポンプ装置の断面図である。
図4】第3実施形態に係るポンプ装置の断面図である。
図5】放熱材が設けられたインバータ回路の冷却構造を示した図である。
図6】モータ部から離れた位置にインバータ回路を配置したポンプ装置の変形例を示す図である。
図7】インバータ回路に表面実装された発熱素子の放熱構造を示した図である。
図8】インバータ回路に挿入実装された発熱素子の放熱構造を示した図である。
図9】インバータ回路に設けられた発熱素子とモータ部のステータとの位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るポンプ装置について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示される構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲を前述した内容に限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは一義的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度及び距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状及び円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状及び円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部及び面取り部等を含む形状も表すものとする。一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、図1に示す中心軸Jの軸方向一方向と平行な方向とする。X軸方向は、図1に示すポンプ装置の短手方向と平行な方向、すなわち、図1の上下方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0013】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「フロント側」と記し、Z軸方向の負の側(-Z側)を「リア側」と記す。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と記し、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と記し、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と記す。
【0014】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のポンプ装置の断面図である。
本実施形態のポンプ装置1は、図1に示すように、モータ部10と、ポンプ部30と、インバータ回路50と、を有する。モータ部10は、軸方向に延びる中心軸Jに沿って配置されたシャフト5を有する。ポンプ部30は、モータ部10の軸方向一方側に位置し、モータ部10によってシャフト5を介して駆動され、オイルを吐出する。つまり、モータ部10とポンプ部30とは、軸方向に沿って並んで設けられる。
【0016】
モータ部10は、ロータ11と、ステータ15と、ハウジング21とを有する。ロータ11は、シャフト5の外周面に固定されて、シャフト5の周囲において回転する。ステータ15は、ロータ11の径方向外側に配置される。このため、モータ部10は、インナーロータ型のモータである。
【0017】
ハウジング21は、ロータ11及びステータ15を収容する。ハウジング21は、フロント側(+Z側)及びリア側(-Z側)が開口しており、リア側のハウジング21の開口部には、ベアリング保持部22が挿入される。ハウジング21の外側面21aには、ヒートシンク60が接触して設けられる。ヒートシンク60内にはオイルが流通可能な図2に示す貫通孔64が設けられる。インバータ回路50は、ヒートシンク60と熱的に接触する。貫通孔64は、ポンプ部30から送出されたオイルをヒートシンク60内に流す流路である。この貫通孔64の流路を第1流路61と記す。以下、各部品について詳細に説明する。
【0018】
<ハウジング>
図1に示すように、ハウジング21は、筒状である。より詳細には、ハウジング21は、中心軸Jを中心とする両端が開口した円筒形状である。ハウジング21の材質は、例えば、金属である。ハウジング21は、モータ部10を保持する。
【0019】
ハウジング21の軸方向他端側の開口部21bには、ベアリング保持部22が嵌合して取り付けられる。ベアリング保持部22には、モータ側吐出口27及びベアリング23が設けられる。ベアリング23にはシャフト5の軸方向他端側端部が挿入されて、ベアリング23がシャフト5の軸方向他端側端部を支持する。ハウジング21の軸方向一方側の端部は、ポンプ部30のポンプボディ31の底面31aに接触した状態で接続される。
【0020】
ハウジング21の軸方向中間部の内側面には、ステータ15の外側面、すなわち、後述するコアバック部16の外側面が嵌合される。したがって、ハウジング21には、ステータ15が保持される。
【0021】
<ロ―タ>
ロータ11は、ロータコア12と、ロータマグネットと、を有する。ロータコア12は、シャフト5を軸周り(θ方向)に囲んで、シャフト5に固定される。ロータマグネットは、ロータコア12の軸周りに沿った外周部に固定される。ロータコア12及びロータマグネットは、シャフト5と一体となって回転する。
【0022】
<ステータ>
ステータ15は、ロータ11を軸周り(θ方向)に囲み、ロータ11を中心軸J周りに回転させる。ステータ15は、コアバック部16と、ティース部17と、図示しないコイルと、図示しないインシュレータ(ボビン)と、を有する。コアバック部16の形状は、シャフト5と同心の円筒状である。
【0023】
ティース部17は、コアバック部16の内側面からシャフト5に向かって延びる。ティース部17は、複数設けられ、コアバック部16の内側面の周方向に均等な間隔で配置される。コイルは、ティース部17に図示しない導電線が巻き回されて構成される。コイルは、インシュレータ(ボビン)に設けられている。インシュレータ(ボビン)は、各ティース部17に装着される。
【0024】
<ヒートシンク>
ヒートシンク60は、図1及び図2に示すように、モータ部10のハウジング21の外側面21aに接触してハウジング21の軸方向に沿って延びる。ヒートシンク60は、例えば、アルミニウム等の金属を押出し成形して作られる。図2に示した実施形態では、ヒートシンク60は、直方体状に形成されたヒートシンク本体部63と、ヒートシンク本体部63の両側から外側へ突出する複数の放熱板65と、を有する。ヒートシンク本体部63は、その底部にハウジング21の外側面21aが接触する凹部63aが設けられる。凹部63aは、ハウジング21の外側面21aに沿って湾曲した曲面を有する。したがって、ヒートシンク60はハウジング21に密着させた状態で固定することができる。
【0025】
つまり、ヒートシンク60は、ハウジング21と別体であるとともに、ハウジング21に熱的に接触した別部材である。なお、ヒートシンク60は、ハウジング21に直接に接触する場合に限るものではない。詳細は後述するが、ヒートシンク60は、絶縁性放熱材を介してハウジング21に接触してもよい。さらに、ヒートシンク60は、ハウジング21に対して隙間を有して設けられてもよい。この場合、ステータ15から生じる熱は、放射熱によってヒートシンク60に伝わる。したがって、ヒートシンク60は、ハウジング21に対して非接触の状態で配置された場合であっても、ヒートシンク60は、ハウジング21に熱的に接触していると言える。また、ヒートシンク60は、ハウジング21と別体に限るものではなく、ヒートシンク60及びハウジング21が単一の部材の部分であってもよい。
【0026】
ヒートシンク本体部63内には、一端が凹部63aの面の軸方向一方側に第1開口部64aが開口して、他端側がヒートシンク本体部63内を通って他端がヒートシンク本体部63の他方側端面に開口した第2開口部64bを有する貫通孔64が設けられる。この貫通孔64内にオイルが流れる。第1開口部64aは、ハウジング21に設けられ連通孔21cに対向して配置される。
【0027】
放熱板65は、平面視において長方形状に形成され、ヒートシンク本体部63の側面に上下方向に間隔を有して複数設けられる。なお、放熱板65は、ヒートシンク本体部63の両側の側面の一方にのみ有してもよい。また、放熱板65は、ヒートシンク本体部63の側面に上下方向に延びるとともに、ヒートシンク本体部63の軸方向に間隔を有して複数設けられてもよい。
【0028】
<インバータ回路>
インバータ回路50は、回路基板に発熱素子を実装したものであり、モータ部10のステータ15のコイルに駆動のための電力を供給すると共に、モータ部10の駆動、回転、停止等の動作を制御する。なお、インバータ回路とステータ15のコイルとの間の電力供給及び電気信号による通信は、図示しない被覆ケーブル等の配線部材を用いて、インバータ回路とコイルとの間を電気的に接続することによって行われる。図1に示す実施形態では、インバータ回路50は平面状に延びる。インバータ回路50は、ヒートシンク60上に密着して固定される。つまり、インバータ回路50は、ヒートシンク60と熱的に接触する。
【0029】
なお、インバータ回路50は、ヒートシンク60に直接に接触する場合に限るものではなく、詳細は後述するが、絶縁性放熱材を介してヒートシンクに接触してもよい。さらに、インバータ回路50は、ヒートシンク60に対して隙間を有して設けられてもよい。この場合、インバータ回路50から生じる熱は、放射熱によってヒートシンク60に伝わる。したがって、インバータ回路50がヒートシンク60に対して非接触の状態で配置された場合であっても、インバータ回路50はヒートシンク60に熱的に接触していると言える。インバータ回路50に実装される電子部品には、後述する発熱し易い発熱素子も含まれる。
【0030】
<ポンプ部>
ポンプ部30は、モータ部10の軸方向一方側、詳細にはフロント側(+Z軸側)に位置する。ポンプ部30は、モータ部10によってシャフト5を介して駆動される。ポンプ部30は、ポンプボディ31と、ポンプロータ35と、ポンプカバー32と、を有する。以下、ポンプカバー32及びポンプボディ31をポンプケース33と記す。
【0031】
ポンプボディ31は、モータ部10のフロント側においてハウジング21の端部に固定される。ポンプボディ31は、フロント側(+Z側)の面からリア側(-Z側)に窪みポンプロータ35を収容するポンプ室34を有する。ポンプ室34の軸方向から視た形状は、円形状である。
【0032】
ポンプボディ31は、軸方向両端が開口してシャフト5が通され、フロント側の開口がポンプ室34に開口する貫通孔31cを有する。貫通孔31cのリア側の開口は、モータ部10側に開口する。貫通孔31cは、シャフト5を回転可能に支持する軸受部材として機能する。
【0033】
ポンプロータ35は、シャフト5に取り付けられる。より詳細には、ポンプロータ35は、シャフト5のフロント側の端部に取り付けられる。ポンプロータ35は、シャフト5に取り付けられるインナーロータ35aと、インナーロータ35aの径方向外側を囲むアウターロータ35bと、を有する。インナーロータ35aは、円環状である。インナーロータ35aは、径方向外側面に歯を有する歯車である。
【0034】
インナーロータ35aは、シャフト5に固定される。より詳細には、インナーロータ35aの内側にシャフト5のフロント側の端部が圧入される。インナーロータ35aは、シャフト5と共に軸周り(θ方向)に回転する。アウターロータ35bは、インナーロータ35aの径方向外側を囲む円環状である。アウターロータ35bは、径方向内側面に歯を有する歯車である。
【0035】
インナーロータ35aとアウターロータ35bとは互いに噛み合い、インナーロータ35aが回転することでアウターロータ35bが回転する。すなわち、シャフト5の回転によりポンプロータ35は回転する。言い換えると、モータ部10とポンプ部30とは同一の回転軸を有する。したがって、電動オイルポンプが軸方向に大型化することを抑制できる。また、インナーロータ35aとアウターロータ35bとが回転することで、インナーロータ35aとアウターロータ35bの噛み合わせ部分の間の容積が変化する。容積が減少する領域が加圧領域Apとなり、容積が増加する領域が負圧領域Adとなる。ポンプロータ35の負圧領域Adの軸方向一方側には、ポンプ側吸入口32aが配置される。また、ポンプロータ35の加圧領域Apの軸方向一方側には、ポンプ側吐出口32bが配置される。ここで、ポンプ側吸入口32aからポンプ室34内に吸入されるオイルは、インナーロータ35aとアウターロータ35bの間の容積部分に収容され、ポンプ側吐出口32b側に送られる。その後、オイルは、ポンプ側吐出口32bから吐出される。
【0036】
ポンプボディ31には、ポンプ室34とモータ部10内とを繋ぐ送出孔37が設けられる。送出孔37のポンプ室34側の開口は、ポンプロータ35の加圧領域Apに繋がる。一方、送出孔37のモータ部10側の開口、即ちポンプ側送出口31bは、モータ部10内の空間部36に繋がる。つまり、ポンプ側送出口31b、ポンプロータ35の加圧領域Apに繋がる。このため、ポンプ部30の加圧によってポンプ部30内のオイルが送出孔37を介してポンプ側送出口31bから空間部36内に送出される。ここで、オイルをポンプ側送出口31bよりポンプ部30の加圧によってモータ部10内へ送出する流路を、第5流路38と記す。空間部36は、モータ部10よりも軸方向一方側であって、ハウジング21、ポンプボディ31、ステータ15及びロータ11の軸方向一方側端部とで囲まれた領域をいう。
【0037】
ポンプカバー32は、ポンプボディ31のフロント側に取り付けられる。ポンプカバー32は、径方向に拡がる円板状である。ポンプカバー32は、ポンプ室34のフロント側の開口を閉塞する。
【0038】
ポンプ部30は、ポンプ側吸入口32aを有する。ポンプ側吸入口32aは、ポンプカバー32に設けられる。ポンプ側吸入口32aは、ポンプ室34の負圧領域Adに繋がり、ポンプ室34へのオイルの吸入が可能である。なお、ポンプ側吸入口32aは、ポンプ部30内に設けられたポンプロータ35を収容するポンプボディ31のポンプロータ35の側面に対向する面に設けられてもよい。この場合には、ポンプロータ35の回転に伴って発生する負圧によってオイルがポンプロータ35の軸方向両側からポンプロータの負圧領域内に流入する。よって、オイルをポンプ部30に効率的に吸入することができる。
【0039】
本実施形態のポンプ装置1は、シャフト5が周方向一方向き(-θ向き)に回転する場合、ポンプ側吸入口32aからオイルがポンプ室34に吸入される。ポンプ室34に吸入されたオイルは、ポンプロータ35によって送出孔37側に送られる。送出孔37側に送られたオイルは、第5流路38、即ち、送出孔37を通ってポンプ側送出口31bからモータ部10の内部へ送出される。その後、オイルは第1流路61を通ってヒートシンク60内を流れる。したがって、オイルによってインバータ回路50の冷却が可能となる。
【0040】
次に、本実施形態に係るポンプ装置1が有するインバータ回路50の冷却構造について説明する。本実施形態では、外部装置から供給されたオイルがポンプロータ35によってポンプ側吸入口32aから送出孔37に流れて、モータ部10を介してヒートシンク60内を流通することでインバータ回路50を冷却することを実現する。
【0041】
<第1流路>
第1流路61は、ポンプ部30から送出されたオイルをヒートシンク60内に流す。図1及び図2に示す実施形態では、第1流路61は、貫通孔64の第1開口部64aと第2開口部64bとの間に設けられる。詳細には、第1流路61は、第1開口部64aからX軸方向+側へ延びて軸方向他方側へ屈曲し、ヒートシンク本体部63の長手方向に沿って軸方向他方側へ延びる。第1開口部64aは、円形状に開口し、連通孔21cに対向して配置されて連通孔21cと連通する。したがって、第1流路61は、連通孔21cを介して空間部36と繋がる。よって、ポンプ側送出口31bは、空間部36及び連通孔21cを介して第1流路61と繋がる。
【0042】
したがって、ポンプ部30の送出孔37を通ってポンプ側送出口31bから空間部36内に送出されたオイルは、空間部36内に移動した後に、第1流路61を通ってヒートシンク60内に導入されて、ヒートシンク60内を流れる。したがって、ヒートシンク60に接触(熱的に接触)しているインバータ回路50から発生した熱は、ヒートシンク60を介してオイルで吸収される。よって、インバータ回路50を冷却することができる。また、インバータ回路50はモータ部10よりもオイル流通方向の上流側に位置するので、熱を吸収する前のオイルによってインバータ回路50を冷却することができる。このため、インバータ回路50をより効率的に冷却することができる。また、ヒートシンク60は、モータ部10のハウジング21に接触しているので、モータ部10から発生した熱がハウジング21及びヒートシンク60を介してオイルで吸収される。したがって、モータ部10を冷却することができる。よって、インバータ回路50の温度上昇をより効率的に抑えられるポンプ装置1を実現することができる。
【0043】
なお、図1に示す実施形態では、ステータ15の内周面15aとロータ11の外周面11aとの間には、隙間19、即ち、オイルが流れる第4流路20が設けられる。また、モータ部10の軸方向他方側端よりもリア側であって、モータ部10の軸方向他方側端面とベアリング保持部22とハウジング21とで囲まれた領域には空間部39が設けられる。したがって、第4流路20は、フロント側の空間部36とリア側の空間部39とを繋ぐ。
【0044】
また、ベアリング保持部22には、モータ部10内のオイルを吐出するモータ側吐出口27が設けられる。図1に示す実施形態では、モータ側吐出口27は、ベアリング保持部22の周縁部に設けられる。
【0045】
したがって、ポンプ部30の送出孔37を通ってポンプ側送出口31bからフロント側の空間部36内に送出されたオイルは、フロント側の空間部36内に移動した後に、第4流路20を通ってモータ部10内に導入される。したがって、ステータ15に接触するオイルは、ステータ15から発生した熱を吸収する。よって、モータ部10をより効率的に冷却することができる。また、ロータマグネットの減磁を抑制することができる。
【0046】
なお、第4流路20は、ステータ15の内周面15aとロータ11の外周面11aとの間に限らない。第4流路20はハウジング21とステータ15との間に設けられてもよい。この場合、第4流路20は、直線状に延びたり、ステータ15の外側面を軸方向に進むにしたがってステータ15の周方向に進むような螺旋状に延びたりしてもよい。また、第4流路20は、ステータ15の外側面を軸方向に進むにしたがってステータ15の周方向一方側に向きを変えた後に周方向他方側に向きを変えるような波形状に延びてもよい。
【0047】
また、前述した実施形態では、送出孔37をオイルが流れる流路が第5流路38である場合を示したが、第5流路38は、ポンプボディ31に設けられた貫通孔31cに通されたシャフト5と貫通孔31cとの間の隙間42を通る流路でもよい。この場合には、送出孔37は無くなり、ポンプロータ35から供給されるオイルは、貫通孔31cのポンプロータ35側の開口から隙間42内に流入して第5流路38を流れてモータ部10内に流入する。第5流路38が、シャフト5と貫通孔31cとの間の隙間42とすることで、ポンプボディ31の構造がより簡素化され、ポンプ部30の製造工程及び製造コストの増大を抑制することができる。
【0048】
なお、第5流路38は、シャフト5と貫通孔31cとの間の隙間42である。このため、シャフト5が貫通孔31c内に設けられたベアリングを介して支持される場合には、第5流路38は、ベアリングの中でもよく、またベアリングとシャフト5との間の隙間でもよい。
【0049】
また、前述した実施形態では、第6流路25はモータ部10内のオイルがモータ側吐出口27より吐出する流路である場合を示したが、第6流路25は、ベアリング保持部22に設けられた軸受部材に通されたシャフト5と軸受部材との間の隙間を通る流路でもよい。図1に示した実施形態では、軸受部材はベアリング23である。この場合には、モータ側吐出口27は無くなり、モータ部10のロータ11とステータ15の間の第4流路20を流れるオイルは、空間部39に流入した後に、シャフト5とベアリング23との間の隙間、即ち、第6流路25を流れる。第6流路25が、シャフト5とベアリング23との間の隙間とする場合には、モータ側吐出口27が不要となる。このため、モータ部10の構造がより簡素化され、モータ部10の製造工程及び製造コストの増大を抑制することができる。
【0050】
なお、第6流路25はシャフト5と軸受部材との間の隙間であるので、軸受部材がベアリング23である場合には、第6流路25はベアリング23の中でもよい。
【0051】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係るポンプ装置2の断面図である。第2実施形態では、前述した第1実施形態との相違点のみについて説明し、第1実施形態と同一態様部分については同一符号を附してその説明を省略する。
【0052】
図3に示すように、ヒートシンク60'は、ポンプ部30から送出されたオイルを流す第2流路67を有する。図示した実施形態では、ヒートシンク60'はヒートシンク本体部63の一方側端から他方側端に貫通する貫通孔68を有し、この貫通孔68内を流れるオイルの流路が第2流路67である。
【0053】
また、ハウジング21は、第2流路67から送出されるオイルをモータ部10内に吸引するモータ側吸入口21dを有する。図示した実施形態では、モータ側吸入口21dは、ハウジング21の側面であってステータ15の軸方向他方側端よりも外側に設けられる。したがって、モータ側吸入口21dはリア側の空間部39に連通する。第2流路67とモータ側吸入口21dとは、連通路69を介して繋がる。
【0054】
モータ部10は、モータ側吸入口21dからモータ部10内に吸引されるオイルをステータ15に流す第3流路73を有する。図示した実施形態では、第3流路73は、ステータ15の内周面15aとロータ11の外周面11aとの間に設けられた隙間19が第3流路73となる。
【0055】
ポンプ部30のポンプボディ31には、ポンプ部30の負圧によってモータ部10内のオイルをポンプ部30内に導入するポンプ側導入口66が設けられる。図3に示す実施形態では、ポンプ側導入口66は、ポンプ室34の負圧領域Adとフロント側の空間部36とを繋ぐ導入孔41のリア側端部に開口する。ポンプ側導入口66は、モータ部10のフロント側の空間部36に開口する。ポンプカバー32には、ポンプ部30内を流れるオイルを吐出するポンプ側吐出口32bが設けられる。ポンプ側吐出口32bは、ポンプ部の加圧領域Apに開口する。一方、ポンプカバー32には、図1に示すポンプ側吸入口32aは設けられていない。
【0056】
ハウジング21の外側面21aには、インバータ回路50がハウジング21の軸方向に沿って接触して設けられる。インバータ回路50上にはヒートシンク60'が熱的に接触して設けられる。図示した実施形態では、インバータ回路50がヒートシンク60'に直接に接触して設けられる。なお、インバータ回路50は、ヒートシンク60'に直接に接触する場合に限るものではなく、詳細は後述するが、絶縁性放熱材を介してヒートシンク60'に接触してもよい。さらに、インバータ回路50は、ヒートシンク60'に対して隙間を有して設けられてもよい。この場合、インバータ回路50から生じる熱は、放射熱によって運ばれてヒートシンク60'に伝わる。このため、インバータ回路50がヒートシンク60'に対して非接触の状態で配置された場合であっても、インバータ回路50は、ヒートシンク60'に熱的に接触していると言える。
【0057】
したがって、ポンプ部30から供給されるオイルは、ヒートシンク60の第2流路67を流れて第2流路67のリア側から吐出し、連通路69及びモータ側吸入口21dを介してリア側の空間部39内に導入される。空間部39内に導入されたオイルは、第3流路73を流れ、導入孔41を通ってポンプ部30内に導入される。ポンプ部30内に導入されたオイルは、ポンプ部30内を流れてポンプ側吐出口32bから吐出される。
【0058】
このため、第2流路67にオイルが流れると、オイルによって、ヒートシンク60を介してインバータ回路50を冷却することができる。また、第2流路67から流出したオイルは、モータ側吸入口21dを通ってモータ部30内に流入する。このため、オイルがステータ15と接触して、ステータ15を冷却することができる。したがって、ステータ15から生じる熱がインバータ回路50に与える影響を小さくして、インバータ回路50の温度上昇をより効率的に抑えることができる。
【0059】
また、インバータ回路50はモータ部10よりもオイル流通方向の上流側に位置するので、熱を吸収する前のオイルによってインバータ回路50を冷却することができる。このため、インバータ回路50をより効率的に冷却することができる。
【0060】
なお、前述した実施形態では、ハウジング21にインバータ回路50が接触した場合を示したが、これに限るものではない。例えば、ヒートシンク60がハウジング21に接触して設けられ、インバータ回路50がヒートシンク60に接触して設けられてもよい。この場合には、ヒートシンク60によってステータ15から発生する熱をより効果的に冷却することができるので、ステータ15から発生する熱によってインバータ回路50が温度上昇する程度をより小さくすることができる。
【0061】
また、モータ側吸入口21dは、ハウジング21の軸方向他方側端部に設けられたハウジング底部に設けられてもよい。図示した実施形態では、モータ側吸入口21dはベアリング保持部22に設けられてもよい。この場合には、モータ側吸入口21dから吸入されたオイルの先にステータ15が位置するので、モータ部10内に流入したオイルの第3流路73内への供給を容易にすることができる。
【0062】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係るポンプ装置3の断面図である。第3実施形態のポンプ装置3は、前述した第1実施形態と第2実施形態の夫々の構成を組み合わせたものである。このため、第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態と同一態様部分については同一符号を附してその説明を省略する。
【0063】
図4に示すように、ハウジング21は、さらに、外側面21aにヒートシンク60'とは別体の他のヒートシンク60を有する。他のヒートシンク60は、ポンプ部30から送出されたオイルを流す第1流路61を有する。また、モータ部10の径方向外側には、インバータ回路50'とは別体の他のインバータ回路50が配置される。他のインバータ回路50は、他のヒートシンク60と熱的に接触する。なお、図4に示すポンプ装置3のベアリング保持部22には、図1に示すモータ側吐出口27及び第4流路20が設けられていない。
【0064】
したがって、第3実施形態に係るポンプ装置3は、モータ部10が駆動すると、ポンプ部30から供給されるオイルは、ヒートシンク60'の第2流路67を流れ、連通路69及びモータ側吸入口21dを介してリア側の空間部39内に導入される。空間部39内に導入されたオイルは、第3流路73を流れ、導入孔41を通ってポンプ部30内に導入される。
【0065】
このため、第2流路67にオイルが流れると、オイルによって、ヒートシンク60'を介してインバータ回路50'を冷却することができる。また、第2流路67から流出したオイルは、モータ側吸入口21dを通ってモータ部10内に流入する。このため、オイルがステータ15と接触して、ステータ15を冷却する。よって、インバータ回路50'の温度上昇をより効率的に抑えることができる。
【0066】
また、導入孔41を通ってポンプ部30内に導入されたオイルは、ポンプ部30内をポンプ側吐出口32b側へ流れる。ポンプ側吐出口32b側へ流れるオイルのうち一部は、ポンプ部30の送出孔37からフロント側の空間部36内に送出された後に、他のヒートシンク60内の第1流路61を流れる。このため、他のインバータ回路50から発生した熱は、ヒートシンク60を介してオイルに吸収される。このため、他のインバータ回路50の温度上昇を効率的に抑えることができる。
【0067】
(第1、第2、第3実施形態の変形例)
次に、第1、第2、第3実施形態に係るポンプ装置1、2,3の変形例について説明する。図5は、絶縁性放熱材75が設けられたインバータ回路50,50'の冷却構造を示した図である。図6は、モータ部10から離れた位置にインバータ回路50,50'を配置したポンプ装置1,2の変形例を示す図である。図7は、インバータ回路50,50'に表面実装された発熱素子79の放熱構造を示した図である。図8は、インバータ回路50,50'に挿入実装された発熱素子79の放熱構造を示した図である。図9は、インバータ回路50,50'に設けられた発熱素子79とモータ部10のステータ15との位置関係を説明するための図である。
【0068】
前述した第2実施形態及び第3実施形態では、インバータ回路50'がハウジング21に接触した場合を説明したが、図5Aに示すように、絶縁性放熱材75を介してインバータ回路50'がハウジング21に接触してもよい。絶縁性放熱材75は、シート状に形成されたものや、ペースト状のものでもよい。このように、絶縁性放熱材75を介してインバータ回路50'がハウジング21に接触することで、絶縁性放熱材75を介してインバータ回路50'とハウジング21との接触面積を増大することができる。このため、インバータ回路50'から発生する熱をより効率的にモータ部10側へ放熱することができる。したがって、インバータ回路50'の温度上昇をより効率的に抑えることができる。
【0069】
また、前述した第1実施形態及び第3実施形態では、インバータ回路50とヒートシンク60が接触した場合を説明したが、図5Bに示すように、絶縁性放熱材75を介してインバータ回路50とヒートシンク60とが接触してもよい。このように、絶縁性放熱材75を介してインバータ回路50とヒートシンク60とが接触することで、インバータ回路50とヒートシンク60との接触面積を増大することができる。このため、インバータ回路50から発生する熱をより効率的にヒートシンク60に放熱して冷却することができる。したがって、インバータ回路50の温度上昇をより効率的に抑えることができる。
【0070】
また、前述した第2実施形態及び第3実施形態では、インバータ回路50'が、ハウジング21とヒートシンク60'に接触した場合を説明したが、図5Cに示すように、絶縁性放熱材75を介してインバータ回路50'とヒートシンク60'とが接触してもよい。このように、絶縁性放熱材75を介してインバータ回路50'とヒートシンク60'とが接触することで、インバータ回路50'とヒートシンク60'との接触面積を増大することができる。このため、インバータ回路50'から発生する熱をより効率的にヒートシンク60'に放熱して冷却することができる。したがってインバータ回路50'の温度上昇をより効率的に抑えることができる。
【0071】
さらに、前述した第1実施形態及び第3実施形態では、ヒートシンク60、60'及びインバータ回路50,50'がステータ15の軸方向の範囲内に設けられた場合を説明したが、図6Aに示すように、インバータ回路50,50'がステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部側に位置してもよい。
【0072】
なお、図6Aに示す実施形態では、ヒートシンク60もステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部側に位置し、ヒートシンク60内にはオイルが流れない場合を示している。この場合、ポンプ部30からモータ部10に導入されたオイルは、送出孔37を通り、第4流路20を流れてモータ側吐出口27から排出される。このため、オイルによってインバータ回路50を冷却することができない。しかしながら、インバータ回路50がステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部側に位置しているので、インバータ回路50はステータ15から離れた位置にある。このため、ステータ15から発生する熱によってインバータ回路50の温度上昇を抑制することができる。
【0073】
また、前述した第2実施形態及び第3実施形態では、ヒートシンク60'及びインバータ回路50'がハウジング21の外側面にステータ15の軸方向の範囲内に設けられた場合を説明したが、図6Bに示すように、インバータ回路50'がステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部側に位置してもよい。
【0074】
図6Bに示す実施形態では、ヒートシンク60'もステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部側に位置している。また、ヒートシンク60'の第2流路67に流入したオイルは、第2流路67を通ってモータ部10のリア側の空間部39内に流入可能である。このように、インバータ回路50'は、ステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部側に位置しているので、ヒートシンク60'及びインバータ回路50'は、ステータ15の径方向においてステータ15と重ならない位置に設けられる。このため、ステータ15から発生する熱によってヒートシンク60'内を流れるオイルの温度上昇をより抑制することができるので、ステータ15を冷却して温度が上昇する前のオイルの温度上昇をより抑制することができる。したがって、インバータ回路50'の温度上昇をより効率的に抑えることができる。
【0075】
また、前述した第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態では、インバータ回路50、50'について説明したが、インバータ回路50、50'に発熱し易い発熱素子79を設け、発熱素子79を、絶縁性放熱材75を介してハウジング21と接触させてもよい。
【0076】
図7Aに示すように、インバータ回路50'上に表面実装される発熱素子79がハウジング21側を向いて実装され、発熱素子79とハウジング21との間に絶縁性放熱材75を設ける。インバータ回路50'にはヒートシンク60'が接触して設けられる。なお、発熱素子79は、例えば、電解コンデンサ、シャント抵抗等である。この場合には、発熱素子79から発生する熱は、絶縁性放熱材75を介してハウジング21に効率的に放熱することができる。したがって、発熱素子79からの熱によってインバータ回路50'の温度が上昇する虞を抑えることができる。なお、インバータ回路50'とヒートシンク60'との間に絶縁性放熱材75を設けてもよい。この場合には、インバータ回路50'の熱をより効率的にヒートシンク60'に伝熱することができる。
【0077】
また、図7Bに示すように、インバータ回路50'がハウジング21に接触して設けられ、インバータ回路50'上に表面実装される発熱素子79がヒートシンク60'側を向いて実装され、発熱素子79とヒートシンク60'との間に絶縁性放熱材75が設けられる。この場合には、発熱素子79から発生する熱は、絶縁性放熱材75を介してヒートシンク60'に効率的に放熱されてオイルで吸収される。このため、発熱素子79の冷却をより効率的に行うことができる。したがって、発熱素子79からの熱によってインバータ回路50'の温度が上昇する虞を抑えることができる。なお、インバータ回路50'がハウジング21との間に絶縁性放熱材75を設けてもよい。この場合には、インバータ回路50'の熱をハウジング21を介してモータ部10内を流れるオイルに効率的に伝熱することができる。
【0078】
また、図7Cに示すように、ヒートシンク60がハウジング21に接触して設けられ、インバータ回路50上に表面実装される発熱素子79がヒートシンク60側を向いて実装され、発熱素子79とヒートシンク60との間に絶縁性放熱材75が設けられる。この場合には、発熱素子79から発生する熱は、絶縁性放熱材75を介してヒートシンク60に効率的に放熱されてオイルで吸収される。このため、発熱素子79の冷却をより効率的に行うことができる。したがって、発熱素子79からの熱によってインバータ回路50の温度が上昇する虞を抑えることができる。
【0079】
また、前述した実施形態では、発熱素子79がインバータ回路50、50'に表面実装される場合を示したが、これに限るものではなく、発熱素子79'がインバータ回路50、50'に挿入実装してもよい。図8Aに示すように、インバータ回路50'がハウジング21に接触して設けられ、インバータ回路50'にヒートシンク60'が接触して設けられる場合において、発熱素子80をヒートシンク60'側から挿入実装してもよい。なお、図8Aでは、インバータ回路50'とハウジング21との間、及びインバータ回路50'とヒートシンク60'との間に隙間があるように描かれているが、実際には隙間はない。
【0080】
この場合、発熱素子80から延びるリード80a(端子)は、インバータ回路50'に形成されたスルーホール50aを貫通してインバータ回路50'の裏面に形成された電気回路に半田付けされる。また、インバータ回路50'の裏面から突出して半田付けされたリード80aの端子は、絶縁性放熱材75を介してハウジング21に接触する。また、発熱素子80の本体80bはヒートシンク60'に接触している。このため、発熱素子80から発生する熱は、発熱素子80のリード80a、スルーホール50a、半田付け及び絶縁性放熱材75を介して、ハウジング21に効率的に放熱されるとともに、発熱素子80の本体80bからヒートシンク60'に接放熱される。したがって、発熱素子80からの熱によってインバータ回路50'の温度を上昇させる虞を効率的に抑えることができる。
【0081】
また、図8Bに示すように、ヒートシンク60がハウジング21に接触して設けられ、ヒートシンク60にインバータ回路50が設けられ場合において、発熱素子80をヒートシンク60側と反対側から挿入実装してもよい。なお、図8Bでは、インバータ回路50とヒートシンク60との間に隙間があるように描かれているが、実際には隙間はない。この場合、発熱素子80から延びるリード80a(端子)は、インバータ回路50に形成されたスルーホール50aを貫通してインバータ回路50の裏面に形成された電気回路に半田付けされる。インバータ回路50の裏面から突出して半田付けされたリード80aの端部は、絶縁性放熱材75を介してヒートシンク60に接触する。このため、発熱素子80から発生する熱は、発熱素子80のリード80a、スルーホール50a、半田付け及び絶縁性放熱材75を介してヒートシンク60に効率的に放熱することができる。したがって、発熱素子80からの熱によってインバータ回路50の温度を上昇させる虞を効率的に抑えることができる。
【0082】
また、図8Cに示すように、インバータ回路50'がハウジング21に接触して設けられ、インバータ回路50'にヒートシンク60'が設けられた場合において、発熱素子80をハウジング21側から挿入実装してもよい。なお、図8Cでは、インバータ回路50'とハウジング21との間、及びインバータ回路50'とヒートシンク60'との間、に隙間があるように描かれているが、実際には隙間はない。この場合、発熱素子80から延びるリード80a(端子)は、インバータ回路50'に形成されたスルーホール50aを貫通してインバータ回路50'の裏面に形成された電気回路に半田付けされる。インバータ回路50'の裏面から突出して半田付けされたリード80aの端部は、絶縁性放熱材75を介してヒートシンク60'に接触する。このため、発熱素子80から発生する熱は、発熱素子80のリード80a、スルーホール50a、半田付け及び絶縁性放熱材75を介してヒートシンク60'に効率的に放熱することができる。したがって、発熱素子80からの熱によってインバータ回路50'の温度を上昇させる虞を効率的に抑えることができる。
【0083】
また、図9Aに示すように、インバータ回路50は、複数の発熱素子79を有し、複数の発熱素子79の少なくとも一部が、ステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部側に位置してもよい。図9Aに示す場合では、ヒートシンク60がハウジング21に接触して設けられ、ヒートシンク60にインバータ回路50が設けられる。また、インバータ回路50のヒートシンク60側には複数の発熱素子79がヒートシンク60の長手方向に間隔を有して配置される。図示した実施形態では、発熱素子79が4つの場合を例示した。そして、複数の発熱素子79のポンプ部30側に配置された2つの発熱素子79は、ステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部側に位置している。このため、これらの2つの発熱素子79は、ステータ15の軸方向一方側端よりもモータ部10側に位置する。このため、2つの発熱素子79はステータ15から離れた位置に設けられる。よって、これら2つの発熱素子79はステータ15からの熱の影響を受ける前のオイルによって冷却されるので、これら2つの発熱素子79を効率的に冷却することができる。
【0084】
また、図9Bに示すように、インバータ回路50'がハウジング21に接触して設けられ、インバータ回路50'にヒートシンク60'が設けられている。また、インバータ回路50'のヒートシンク60'側には複数の発熱素子79がヒートシンク60'の長手方向に間隔を有して配置される。図示した実施形態では、発熱素子79が4つの場合を例示した。そして、複数の発熱素子79のうちポンプ部30側に配置された2つの発熱素子79は、ステータ15のポンプ部側端部よりもポンプ部30側に位置する。このため、これらの2つの発熱素子79は、ステータ15の軸方向一方側端よりもモータ部側に位置する。したがって、2つの発熱素子79はステータ15から離れた位置に設けられる。よって、これら2つの発熱素子79はステータ15からの熱の影響を受ける前のオイルによって冷却されるので、これら2つの発熱素子79を効率的に冷却することができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0086】
前述した第1実施形態では、ヒートシンク60がハウジング21の外側面21aに接触した場合を説明したが、ヒートシンク60がハウジング21の外側面21aに非接触で設けられてもよい。この場合には、ヒートシンク60に対するステータ15からの熱の影響が小さくなる。このため、ヒートシンク60を流れるオイルによってインバータ回路50をより効率的に冷却することができる。
【0087】
前述した実施形態では、モータ部10がインナーロータ型のモータである場合について説明したが、モータ部10はアウターロータ型のモータでもよい。
【符号の説明】
【0088】
1、2,3 ポンプ装置
5 シャフト
10 モータ部
11 ロータ
15 ステータ
20 第4流路
21 ハウジング
21d モータ側吸入口
24、42 隙間
25 第6流路
27 モータ側吐出口
30 ポンプ部
31 ポンプボディ
31a ポンプ側送出口
31c 貫通孔
32a ポンプ側吸入口
36 空間部
38 第5流路
50、50' インバータ回路
52 第2流路
60、60' ヒートシンク、他のヒートシンク
61 第1流路
73 第3流路
75 絶縁性放熱材
79、80 発熱素子
Ad 負圧領域
Ap 加圧領域
J 中心軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9