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特許7156287Axl阻害剤を有効成分として含むがん治療剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】Axl阻害剤を有効成分として含むがん治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20221012BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K31/56
A61K31/553
A61K31/519
A61K31/496
A61K31/4184
A61K31/454
A61K31/704
A61K31/706
A61K31/7068
A61K31/5377
A61K31/517
A61K31/437
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/02
A61P1/18
A61P11/00
A61P17/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019537666
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2018031047
(87)【国際公開番号】W WO2019039525
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2017159839
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017159837
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017159841
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】康廣 とも子
(72)【発明者】
【氏名】田中 昂平
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/012298(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230991(US,A1)
【文献】国際公開第2016/193680(WO,A1)
【文献】特表2009-519242(JP,A)
【文献】Clinical Cancer Research,2014年,Vol.20, No.2 Supplement,Abstract B30,URL:http://clincancerres.aacrjournals.org/content/20/ 2_Supplement/B30,DOI:10.1158/1078-0432.14AACRIASLC-B30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 1/18
A61P 11/00
A61P 17/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗がん剤と組み合わせて投与されることを特徴とするAxl阻害剤を有効成分として含むがん治療剤であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容されるまたはそれらの水和物であり、
(A)前記がんが急性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病であり、前記抗がん剤がダウノルビシン、アザシチジン、シタラビン、AMD3100、ABBV-075、ABT-199、プラシノスタット、ジルテリチニブ、ミドスタウリン、GSK-2879552、イダサヌトリン、チラブルチニブおよびボラセルチブからなる群から選択される、または
(B)前記がんが膵臓がん、肺がんまたは皮膚がんであり、前記抗がん剤がゲムシタビン、ゲフィチニブ、アファチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、およびトラメチニブからなる群から選択される、がん治療剤。
【請求項2】
前記がんが急性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病であり、前記抗がん剤がダウノルビシン、アザシチジン、シタラビン、AMD3100、ABBV-075、ABT-199、プラシノスタット、ジルテリチニブ、ミドスタウリン、GSK-2879552、イダサヌトリン、チラブルチニブおよびボラセルチブからなる群から選択される、請求項1に記載のがん治療剤。
【請求項3】
前記がんが膵臓がん、肺がんまたは皮膚がんであり、前記抗がん剤がゲムシタビン、ゲフィチニブ、アファチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、およびトラメチニブからなる群から選択される、請求項1に記載のがん治療剤。
【請求項4】
抗がん剤と組み合わせて投与されることを特徴とするがん治療剤の製造のための、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容されるまたはそれらの水和物の使用であって、
(A)前記がんが急性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病であり、前記抗がん剤がダウノルビシン、アザシチジン、シタラビン、AMD3100、ABBV-075、ABT-199、プラシノスタット、ジルテリチニブ、ミドスタウリン、GSK-2879552、イダサヌトリン、チラブルチニブおよびボラセルチブからなる群から選択される、または
(B)前記がんが膵臓がん、肺がんまたは皮膚がんであり、前記抗がん剤がゲムシタビン、ゲフィチニブ、アファチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、およびトラメチニブからなる群から選択される、使
【請求項5】
Axl阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とする抗がん剤を有効成分として含むがん治療剤であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容されるまたはそれらの水和物であり、
(A)前記がんが急性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病であり、前記抗がん剤がダウノルビシン、アザシチジン、シタラビン、AMD3100、ABBV-075、ABT-199、プラシノスタット、ジルテリチニブ、ミドスタウリン、GSK-2879552、イダサヌトリン、チラブルチニブおよびボラセルチブからなる群から選択される、または
(B)前記がんが膵臓がん、肺がんまたは皮膚がんであり、前記抗がん剤がゲムシタビン、ゲフィチニブ、アファチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、およびトラメチニブからなる群から選択される、がん治療
【請求項6】
Axl阻害剤と抗がん剤とを組み合わせて投与されることを特徴とするがん治療のための医薬組成物であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容されるまたはそれらの水和物である医薬組成物であり、
(A)前記がんが急性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病であり、前記抗がん剤がダウノルビシン、アザシチジン、シタラビン、AMD3100、ABBV-075、ABT-199、プラシノスタット、ジルテリチニブ、ミドスタウリン、GSK-2879552、イダサヌトリン、チラブルチニブおよびボラセルチブからなる群から選択される、または
(B)前記がんが膵臓がん、肺がんまたは皮膚がんであり、前記抗がん剤がゲムシタビン、ゲフィチニブ、アファチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、およびトラメチニブからなる群から選択される、医薬組成
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一態様において、抗がん剤と組み合わせて投与されることを特徴とするAxl阻害剤を有効成分として含むがん治療剤であって、前記Axl阻害剤が一般式(I)
【化1】
(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表す。)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグであるがん治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
白血病、リンパ腫、骨髄腫などの血液がんは、病態が分子・遺伝子レベルで次々と明らかになり、診断法や治療法が急速に進歩している分野である。従来の標準的化学療法に加え、分子標的療法、造血幹細胞移植、抗腫瘍免疫療法、補助療法において毎年新たな報告がなされ、治療の選択肢が広がっている(非特許文献1参照)。
【0003】
Axl(別名:UFO、ARK、Tyro7)は、腫瘍細胞からクローニングされたTAMファミリー(Axl、MerおよびTyro3)に属する受容体型チロシンキナーゼである。細胞増殖停止時に特異的に発現する遺伝子としてクローニングされたGas6(growth-arrest-specific protein 6)が、Axlのリガンドとして知られている。Gas6の結合により活性化されたAxlは、リン酸化を介してシグナルを伝達する。そのシグナルは、Erk1/2経路やPI3K/Akt経路を活性化するため、Axlの活性化は、がん、免疫系疾患、循環器系疾患等の病態に関与することが知られている(非特許文献2参照)。
【0004】
特に、Axlと各種がんとの関連はよく知られており、例えば、Axlの発現が、乳がんの転移や予後に関与していること(非特許文献3参照)、Axlが急性骨髄性白血病(AML; acute myeloid leukemia)の病態に関与していること(非特許文献4参照)等が知られている。また、Axlを含むTAMファミリーは樹状細胞やマクロファージといった免疫細胞に発現しており、抗腫瘍免疫を抑制性に制御することが報告されている(非特許文献5参照)。したがって、Axlの活性化を阻害する化合物は、各種がん、免疫系疾患、循環器系疾患の治療に有用であると考えられる。
【0005】
特許文献1には、一般式(I)で示される化合物が、Axl阻害作用を有し、がん治療薬として有用であることが開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献2には、一般式(I)で示される化合物と、免疫チェックポイント阻害剤とを組み合わせることががん治療に有用であることが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/012298号
【文献】国際公開第2017/146236号
【非特許文献】
【0008】
【文献】日本血液学会造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版
【文献】クリニカル・サイエンス(Clinical Science)、第122巻、361-368ページ、2012年
【文献】プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the national academy of sciences of the United States of America)、第107巻、第3号、1124-1129ページ、2010年
【文献】ブラッド(Blood)、第121巻、2064-2073ページ、2013年
【文献】ネイチャー・レビューズ・キャンサー(Nature Reviews Cancer)、第14巻、769-785ページ、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、がん治療に有用な薬剤の組み合わせを見出し、医薬品として提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグであるAxl阻害剤と抗がん剤との組み合わせ(以下、本発明の組み合わせと略記することがある。)により、前記課題を解決できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1] 抗がん剤と組み合わせて投与されることを特徴とするAxl阻害剤を有効成分として含むがん治療剤、
[2] Axl阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とする抗がん剤を有効成分として含むがん治療剤、
[3] Axl阻害剤の有効量を抗がん剤と組み合わせて、がんの治療を必要とする哺乳動物(好ましくはヒト患者)に投与することを特徴とするがん治療方法、
[4] 抗がん剤と組み合わせてがん治療に使用されるAxl阻害剤、
[5] 抗がん剤と組み合わせて投与されることを特徴とするがん治療剤の製造のためのAxl阻害剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組み合わせは、がん治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1はヒト急性リンパ性白血病細胞株CCRF-HSB-2に対するN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(図中、化合物A)とデキサメタゾン(Dexamethasone)の単剤および併用による増殖抑制作用を表す。縦軸は媒体群における相対発光単位(RLU)に対する各化合物処置群のRLUの百分率(%)を示し、横軸はデキサメタゾンの濃度を示す。また、各群の値は平均値±標準誤差を示す。
図2図2はヒト急性リンパ性白血病細胞株CCRF-HSB-2に対するN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(図中、化合物A)とシタラビン(Cytarabine)の単剤および併用による増殖抑制作用を表す。縦軸は媒体群におけるRLUに対する各化合物処置群のRLUの百分率(%)を示し、横軸はシタラビンの濃度を示す。また、各群の値は平均値±標準誤差を示す。
図3図3はヒト急性リンパ性白血病細胞株CCRF-HSB-2に対するN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(図中、化合物A)とダウノルビシン(Daunorubicin)の単剤および併用による増殖抑制作用を表す。縦軸は媒体群におけるRLUに対する各化合物処置群のRLUの百分率(%)を示し、横軸はダウノルビシンの濃度を示す。また、各群の値は平均値±標準誤差を示す。
図4図4はマウス膵臓がん細胞株Pan02同所移植モデルに対するN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(図中、化合物A)とゲムシタビンによる抗腫瘍作用を表す。縦軸は生存率(%)を示し、横軸は移植後日数(0日目にそれぞれの投与を開始した)を示す。
図5図5はマウス大腸がん細胞株MC38皮下担がんモデルにおける抗PD-1抗体投与後の腫瘍中AxlおよびMerリガンド(Gas6)の変化量を表す。縦軸は各リガンドの相対的な発現量、横軸は抗PD-1抗体投与後の日数を示す。
図6図6はマウス大腸がん細胞株MC38皮下担がんモデルにおける抗PD-1抗体投与後の腫瘍中AxlおよびMerリガンド(Pros1)の変化量を表す。縦軸は各リガンドの相対的な発現量、横軸は抗PD-1抗体投与後の日数を示す。
図7図7はCTLA-4 Blockade Bioassayを用いた抗CTLA-4抗体による免疫細胞中のAxlおよびMerリガンド(Gas6(左)およびPros1(右))の変化量を表す。縦軸は各リガンドの相対的な発現量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)Axl阻害剤
本発明の組み合わせに用いられるAxl阻害剤は、一態様において、WO2015/012298に記載された一般式(I)
【化2】
[式中、R1は(1)1~5個のR11で置換されていてもよいC1~8アルキル基、(2)1~5個のR12で置換されていてもよいC3~7の炭素環、または(3)1~5個のR13で置換されていてもよい4~7員のヘテロ環を表し、
ここで、R1で表されるC1~8アルキル基が分枝鎖アルキル基の場合、同一の炭素原子から分枝したC1~3アルキル基は結合する炭素原子と一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく、
2は(1)C1~4アルキル基、(2)ハロゲン原子、(3)C1~4ハロアルキル基、(4)オキソ基、(5)-OR21基、または(6)=NR22基を表し、
3は(1)C1~4アルキル基、(2)ハロゲン原子、または(3)C1~4ハロアルキル基を表し、
4は(1)C1~4アルコキシ基、(2)C1~4ハロアルキル基、(3)-OR41基、(4)C1~4アルキル基、(5)C2~4アルケニルオキシ基、または(6)C2~4アルキニルオキシ基を表し、
5は(1)水素原子、(2)C1~4アルキル基、(3)ハロゲン原子、(4)C1~4ハロアルキル基、または(5)-OR21基を表し、
11は(1)-OR101基、(2)SO2102基、(3)NR103104基、または(4)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC3~7の炭素環を表し、
12は(1)水酸基で置換されていてもよいC1~8アルキル基、または(2)ハロゲン原子を表し、
13は(1)水酸基で置換されていてもよいC1~8アルキル基、または(2)ハロゲン原子を表し、
21は(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
22は(1)水酸基、または(2)C1~4アルコキシ基を表し、
41は(1)水素原子、
(2)(a)(i)C1~4アルキル基、(ii)C1~4ハロアルキル基、および(iii)ハロゲン原子からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されていてもよい5~7員の環状基、(b)NR401402、(c)水酸基、および(d)SO2403基からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されたC1~8アルキル基、
(3)(a)(i)C1~4アルキル基、(ii)C1~4ハロアルキル基、および(iii)ハロゲン原子からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されていてもよい5~7員の環状基、(b)NR401402、(c)水酸基、および(d)SO2403基からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されたC2~8アルケニル基、
または
(4)(a)(i)C1~4アルキル基、(ii)C1~4ハロアルキル基、および(iii)ハロゲン原子からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されていてもよい5~7員の環状基、(b)NR401402、(c)水酸基、および(d)SO2403基からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されたC2~8アルキニル基を表し、
101は(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
102は(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
103およびR104はそれぞれ独立して、(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
401およびR402はそれぞれ独立して、(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
403は(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
Aは(1)CH、または(2)窒素原子を表し、
Lは(1)-O-、(2)-NH-、(3)-C(O)-、(4)-CR67-、(5)-S-、(6)-S(O)-、または(7)-S(O)2-を表し、
6およびR7はそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)C1~4アルキル基、(4)水酸基、または(5)NH2を表し、
ring1は5~7員の環状基を表し、
【化3】
は一重結合または二重結合を表し、
mは0~5の整数を表し、
nは0~5の整数を表し、
pは0~2の整数を表し、
qは0~4の整数を表し、
mが2以上のとき、複数のR2は同じでも異なっていてもよく、ここで、2個のR2がC1~3アルキル基を表し、かつ同一の炭素原子上にあるとき、当該R2と結合する炭素原子が一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく、
nが2以上のとき、複数のR3は同じでも異なっていてもよく、
qが2以上のとき、複数のR4は同じでも異なっていてもよい。]で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグである。
【0015】
また、Axl阻害剤の別の態様として、国際公開2007/030680号、国際公開2007/057399号、国際公開2007/070872号、国際公開2008/045978号、国際公開2008/080134号、国際公開2008/083356号、国際公開2008/128072号、国際公開2008/083353号、国際公開2008/083354号、国際公開2008/083367号、国際公開2008/083357号、国際公開2009/007390号、国際公開2009/024825号、国際公開2009/047514号、国際公開2009/053737号、国際公開2009/054864号、国際公開2009/127417号、国際公開2010/005876号、国際公開2010/005879号、国際公開2010/090764号、国際公開2010/128659号、国際公開2012/028332号、国際公開2012/135800号、国際公開2013/074633号、国際公開2013/115280号、国際公開2013/162061号、国際公開2014/091265号、国際公開2016/006706号、国際公開2016/097918号、国際公開2016/183071号、国際公開第2017/028797号、国際公開第2017/172596、または国際公開第2018/071343号に記載されている化合物が挙げられる。
【0016】
本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。
【0017】
本発明において、C1~8アルキル基とは、直鎖状または分枝鎖状のC1~8アルキル基が含まれ、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、およびそれらの異性体が挙げられる。
【0018】
本発明において、C1~4アルキル基とは、直鎖状または分枝鎖状のC1~4アルキル基が含まれ、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル基が挙げられる。
【0019】
本発明において、C1~3アルキル基とは、直鎖状または分枝鎖状のC1~3アルキル基が含まれ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル基が挙げられる。
【0020】
本発明において、C1~4ハロアルキル基とは、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、1-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、3-フルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、4-ブロモブチル基を意味する。
【0021】
本発明において、C2~8アルケニル基とは、例えば、ビニル、プロぺニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル基、およびそれらの異性体等を意味する。
【0022】
本発明において、C2~8のアルキニル基とは、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル基、およびそれらの異性体等を意味する。
【0023】
本発明において、C1~4アルコキシ基とは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、またはtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0024】
本発明において、C2~4アルケニルオキシ基とは、例えば、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ、およびそれらの異性体等を意味する。
【0025】
本発明において、C2~4アルキニルオキシ基とは、例えば、エチニルオキシ、プロピニルオキシ、ブチニルオキシ、およびそれらの異性体等を意味する。
【0026】
本発明において、C3~7の炭素環とは、C3~7の単環式炭素環、その一部または全部が飽和されていてもよい炭素環を意味し、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、またはベンゼン環が挙げられる。
【0027】
本発明において、C5~7の炭素環とは、C5~7の単環式炭素環、その一部または全部が飽和されていてもよい炭素環を意味し、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、またはベンゼン環が挙げられる。
【0028】
本発明において、C3~7の飽和炭素環とは、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンが挙げられる。
【0029】
本発明において、4~7員のヘテロ環とは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1~5個のヘテロ原子を含む、一部または全部飽和された4~7員の単環ヘテロ環をいう。例えば、アゼチジン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、オキセタン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、チエタン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロフラザン、テトラヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、ジヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、ジチアン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、オキセピン、チオフェン、チオピラン、チエピン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、オキサジン、オキサジアジン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアジアゾール、チアジン、チアジアジン、チアゼピン、またはチアジアゼピン環が挙げられる。
【0030】
本発明において、5~7員の環状基とは、C5~7の炭素環および5~7員のヘテロ環を意味する。ここで、C5~7の炭素環は前記と同じ意味を表し、5~7員のヘテロ環とは、5~7員の不飽和ヘテロ環および5~7員の飽和ヘテロ環を含む。5~7員のヘテロ環としては、例えば、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロフラザン、テトラヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、ジヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、ジチアン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、オキセピン、チオフェン、チオピラン、チエピン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、オキサジン、オキサジアジン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアジアゾール、チアジン、チアジアジン、チアゼピン、またはチアジアゼピン環が挙げられる。
【0031】
本発明において、6員の環状基とは、C6の炭素環および6員のヘテロ環を意味する。例えば、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラン、チオピラン、オキサジン、オキサジアジン、チアジン、チアジアジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、ジオキサン、ジチアン環が挙げられる。
【0032】
本発明において、「R1で表されるC1~8アルキル基が分枝鎖アルキル基の場合、同一の炭素原子から分枝したC1~3アルキル基は一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく」とは、下記一般式(I)の部分構造
【化4】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)において、例えば、R1が上記式で示されるような分枝アルキル鎖であるとき、同一の炭素原子から当該分枝したアルキル基が、下記式
【化5】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるように、結合する炭素原子と一緒になって飽和炭素環を形成することを意味する。
【0033】
本発明において、「2個のR2がC1~3アルキル基を表し、かつ同一の炭素原子上にあるとき、当該R2と結合する炭素原子が一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく」とは、下記一般式(I)の部分構造
【化6】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)において、例えば、R2が上記式で示されるようなアルキル基であって、同一の炭素原子上にあるとき、当該R2が、下記式
【化7】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるように、結合する炭素原子と一緒になって飽和炭素環を形成することを意味する。
【0034】
本発明において、「2個のR2-1がC1~3アルキル基を表し、かつ同一の炭素原子上にあるとき、当該R2-1と結合する炭素原子が一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく」とは、上記「2個のR2がC1~3アルキル基を表し、かつ同一の炭素原子上にあるとき、当該R2と結合する炭素原子が一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく」のR2と同じ意味を表す。
【0035】
本発明において、mが1以上であるとき、R2の1つはオキソ基であることが好ましい。
【0036】
本発明において、Aとしては、CHが好ましい。
【0037】
本発明において、R4としては、C1~4アルコキシ基、または-OR41基が好ましい。
【0038】
本発明において、Lとしては、-O-、-NH-、または-C(O)-が好ましい。
【0039】
本発明において、ring1としては、6員の環状基が好ましく、ベンゼン、またはピリジンがより好ましい。
【0040】
本発明の組み合わせに用いられるAxl阻害剤としては、一般式(I-1)
【化8】
[式中、R2-1は(1)C1~4アルキル基、(2)ハロゲン原子、(3)C1~4ハロアルキル基、(4)-OR21基、または(5)=NR22基を表し、
m-1は0~4の整数を表し、
1は(1)-O-、(2)-NH-、または(3)-C(O)-を表し、
ring1-1はベンゼン、またはピリジンを表し、
m-1が2以上のとき、複数のR2-1は同じでも異なっていてもよく、
ここで、2個のR2-1がC1~3アルキル基を表し、かつ同一の炭素原子上にあるとき、当該R2-1と結合する炭素原子が一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく、
その他の記号は前記と同じ意味を表す。]で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグが好ましい。
【0041】
本発明において、ring1およびring1-1における2本の結合手は、パラ位に結合することが好ましい。
【0042】
本発明において、一般式(I-1)中、Aとしては、CHが好ましく、R4としては、C1~4アルコキシ基、または-OR41基が好ましい。
【0043】
本発明の組み合わせに用いられるAxl阻害剤としてより好ましくは、WO2015/012298の実施例に記載された化合物、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物であり、さらに好ましくは、(1)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(2)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-7,7-ジメチル-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(3)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(2,2-ジメチルプロピル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(4)N-[5-({7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-4-キノリニル}オキシ)-2-ピリジニル]2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(5)N-{4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-3-フルオロフェニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(6)N-{4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]フェニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(7)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(8)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(3-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(9)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(2-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(10)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キナゾリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(11)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キナゾリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(12)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-[(2S)-1-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタニル]-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(13)N-{4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-3-フルオロフェニル}-1-(3-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(14)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-6,6-ジメチル-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(15)N-[5-({6-メトキシ-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-4-キノリニル}オキシ)-2-ピリジニル]-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(16)N-(5-{[7-(3-ヒドロキシ-3-メチルブトキシ)-6-メトキシ-4-キノリニリル]オキシ}-2-ピリジニル)-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、または(17)N-[5-({6-メトキシ-7-[3-(1-ピロリジニル)プロポキシ]-4-キノリニル}オキシ)-2-ピリジニル]-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、それらの薬学的に許容される塩またはそれらの水和物である。
【0044】
特に好ましくは、以下の構造式
【化9】
で表されるN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(以下、化合物Aと略記することがある。)、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物である。
【0045】
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における幾何異性体(E体、Z体、シス体、トランス体)、不斉炭素原子の存在等による光学異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。また、本発明においては、互変異性体による異性体をもすべて包含する。
【0046】
また、本発明における光学異性体は、100%純粋なものだけでなく、50%未満のその他の光学異性体が含まれていてもよい。
【0047】
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【化10】
は紙面の向こう側(すなわちα配置)に結合していることを表し、
【化11】
は紙面の手前側(すなわちβ配置)に結合していることを表し、
【化12】
はα配置、β配置またはそれらの任意の比率の混合物であることを表す。
【0048】
一般式(I)で示される化合物は、公知の方法で相当する塩に変換される。塩は、薬学的に許容される塩が好ましく、また水溶性のものが好ましい。適当な塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N-メチル-D-グルカミン等)の塩、酸付加物塩(無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等)等)等が挙げられる。
【0049】
一般式(I)で示される化合物およびその塩は、溶媒和物に変換することもできる。溶媒和物は低毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば、水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)との溶媒和物が挙げられる。溶媒和物として好ましくは水和物である。
【0050】
一般式(I)で示される化合物のN-オキシド体とは、一般式(I)で示される化合物の窒素原子が、酸化されたものを表す。また、一般式(I)で示される化合物のN-オキシド体は、さらに上記のアルカリ(土類)金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、酸付加物塩となっていてもよい。
【0051】
また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、生体内において酵素や胃酸等による反応により、一般式(I)で示される化合物に変換する化合物をいう。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとしては、一般式(I)で示される化合物が水酸基を有する場合、該水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、本発明の組み合わせに用いられる化合物の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等);一般式(I)で示される化合物のカルボキシル基がエステル化、アミド化された化合物(例、一般式(I)で示される化合物のカルボキシル基がエチルエステル化、イソプロピルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物など);等が挙げられる。これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163~198頁に記載されているような、生理的条件で一般式(I)で示される化合物に変化するものであってもよい。さらに、一般式(I)で示される化合物は同位元素(例えば、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、35S、18F、36Cl、123I、125I等)等で標識されていてもよい。
【0052】
一般式(I)で示される化合物は、WO2015/012298に記載された方法に従い製造することができる。
【0053】
本発明の組み合わせで用いられるAxl阻害剤は、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。経口剤としては、例えば、内服用液剤(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤)、内服用固形剤(例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、ゼラチンカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤)等が挙げられる。非経口剤としては、例えば、液剤(例えば、注射剤(皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤等)、点眼剤(例えば、水性点眼剤(水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液等)、非水性点眼剤(非水性点眼液、非水性懸濁点眼液等))等)、外用剤(例えば、軟膏(眼軟膏等))、点耳剤等が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤、徐放性製剤などの放出制御剤であってもよい。これらの製剤は公知の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
【0054】
経口剤としての内服用液剤は、例えば、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化されることにより製造される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0055】
経口剤としての内服用固形剤は、例えば、有効成分を賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化される。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0056】
非経口剤としての外用剤は公知の方法または通常使用されている処方により製造される。例えば、軟膏剤は有効成分を基剤に研和、または溶融させて製造される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0057】
非経口剤としての注射剤には溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含される。注射剤は、例えば有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0058】
本発明の組み合わせに用いられるAxl阻害剤の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから1000mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、または成人一人当たり、一回につき、0.1ngから100mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0059】
例えば、化合物Aを使用する場合、投与量の一態様は、2mg/kg~20mg/kg体重であり、好ましくは1日あたり2mg/kg~20mg/kg体重である。
【0060】
(2)抗がん剤
本発明において、抗がん剤とは、血液がんおよび/または固形がんの治療のために投与される抗がん剤を意味する。抗がん剤としては、血液がんおよび/または固形がんの治療のために投与される抗がん剤であれば特に限定されないが、細胞障害性抗がん剤、分子標的薬、抗CTLA-4抗体、それ以外の抗がん剤が挙げられる。ただし、抗がん剤に抗CTLA-4抗体以外の免疫チェックポイント阻害剤は含まれない。
【0061】
本発明において、細胞障害性抗がん剤とはがん細胞のDNA合成や細胞分裂などを阻害することによりがん細胞に障害を与える作用を持つ抗がん剤を意味する。
【0062】
細胞障害性抗がん剤の例としては、アルキル化剤、抗がん性抗生物質、代謝拮抗薬、植物アルカロイドおよび白金製剤が挙げられる。
【0063】
アルキル化剤の例としては、イホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、ブスルファン、プロカルバジン、ベンダムスチン、メルファラン、ラニムスチン、カルムスチン(Carmustine)、クロラムブシル(Chlorambucil)、ロムスチン(Lomustine)、メクロレタミン(Mechlorethamine)、ニムスチン、カルボコン、またはチオテパが挙げられる。
【0064】
抗がん性抗生物質の例としては、イダルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、アクラルビシン、マイトマイシンC、アクラシノン、ジノスタチンスチマラマー、ネオカルチノスタチン、またはペプレオマイシンが挙げられる。
【0065】
代謝拮抗薬の例としては、アザシチジン、エノシタビン、クラドリビン、ゲムシタビン、シタラビン、チオグアニン、ネララビン、ヒドロキシウレア、フルダラビン、ペントスタチン、メトトレキサート、ペメトレキセド、メルカルトプリン、デシタビン(Decitabine)、グアデシタビン、CPX-351、クロファラビン、ヒドロキシカルバミド、カペシタビン、カルモフール、テガフール、TS-1、ドキシフルリジン、フルオロウラシルが挙げられる。
【0066】
植物アルカロイドの例としては、イリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、またはビノレルビンが挙げられる。
【0067】
白金製剤の例としては、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチンまたはオキサリプラチンが挙げられる。
【0068】
本発明の組み合わせのうち、血液がんの治療に用いられる細胞障害性抗がん剤として好ましくは、アルキル化剤、抗がん性抗生物質、代謝拮抗薬、植物アルカロイドまたは白金製剤であり、さらに好ましくは、抗がん性抗生物質または代謝拮抗薬である。
【0069】
血液がんの治療に用いられるアルキル化剤としてはイホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、ブスルファン、プロカルバジン、ベンダムスチン、メルファラン、ラニムスチン、カルムスチン、クロラムブシル、ロムスチン、メクロレタミンまたはニムスチンが好ましい。
【0070】
血液がんの治療に用いられる抗がん性抗生物質として好ましくは、イダルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、アクラルビシンまたはマイトマイシンCであり、さらに好ましくは、ダウノルビシンである。
【0071】
血液がんの治療に用いられる代謝拮抗薬として好ましくは、アザシチジン、エノシタビン、クラドリビン、ゲムシタビン、シタラビン、チオグアニン、ネララビン、ヒドロキシウレア、フルダラビン、ペントスタチン、メトトレキサート、メルカルトプリン、デシタビン、CPX-351、クロファラビンまたはヒドロキシカルバミドであり、さらに好ましくはアザシチジンまたはシタラビンである。
【0072】
血液がんの治療に用いられる植物アルカロイドとしてはイリノテカン、エトポシド、ソブゾキサン、ビンクリスチン、ビンデシンまたはビンブラスチンが好ましい。
【0073】
血液がんの治療に用いられる白金製剤としては、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチンまたはオキサリプラチンが好ましい。
【0074】
本発明の組み合わせのうち、固形がんの治療に用いられる細胞傷害性抗がん剤としては、アルキル化薬、代謝拮抗薬、植物アルカロイド、白金製剤、抗がん性抗生物質が好ましい。より好ましくは、代謝拮抗剤である。
【0075】
固形がんの治療に用いられるアルキル化薬としては、イホスファミド、カルボコン、シクロホスファミド、ダカルバジン、チオテパ、ニムスチン、メルファラン、ラニムスチンが好ましい。より好ましくは、シクロホスファミドである。
【0076】
固形がんの治療に用いられる代謝拮抗剤としては、カペシタビン、カルモフール、ゲムシタビン、シタラビン、テガフール、TS-1、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、メトトレキサートが好ましい。より好ましくは、ゲムシタビンである。
【0077】
固形がんの治療に用いられる植物アルカロイドとしては、イリノテカン、エトポシド、ドセタキセル、ノギテカン、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチンが好ましい。より好ましくは、パクリタキセルである。
【0078】
固形がんの治療に用いられる白金製剤としては、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチンが好ましい。より好ましくは、カルボプラチンである。
【0079】
固形がんの治療に用いられる抗がん性抗生物質としては、アクラシノン、エピルビシン、ジノスタチンスチマラマー、ドキソルビシン、ネオカルチノスタチン、ピラルビシン、ペプレオマイシン、マイトマイシンCが好ましい。より好ましくは、ドキサルビシンである。
【0080】
本発明において、分子標的薬とはがん細胞の増殖、浸潤、転移に係る分子を標的とする抗がん剤を意味する。
【0081】
血液がんの治療に用いられる分子標的薬としては、例えば、CD20、CD33、CD52、ABL、プロテアソーム、CCR4、JAK、CXCR4、BET、Bcl-2、HDAC、FLT3、LSD1、MDM2、IDH1、IDH2、Btk、PLK、HSP90、SMOおよびNEDD8からなる群から選択される分子の阻害剤が挙げられる。以下に分子標的薬の例を挙げるが、分子標的薬はこれらに限定されない。
【0082】
血液がんの治療に用いられる分子標的薬の例としては、抗CD20抗体、抗CD33抗体、抗CD52抗体、ABL阻害剤、プロテアソーム阻害剤、抗CCR4抗体、JAK阻害剤、CXCR4拮抗薬、BET阻害剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、FLT3阻害剤、LSD1阻害剤、MDM2阻害剤、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、Btk阻害剤、PLK阻害剤、HSP90阻害剤、SMO阻害剤、またはNEDD8阻害剤が挙げられる。
【0083】
抗CD20抗体の例としては、オファツムマブ、リツキシマブまたはオビヌツズマブが挙げられる。
【0084】
抗CD33抗体の例としては、ゲムツヅマブまたはゲムツヅマブ オゾガマイシンが挙げられる。
【0085】
抗CD52抗体の例としては、アレムツズマブが挙げられる。
【0086】
ABL阻害剤の例としては、イマチニブ、ダサチニブまたはニロチニブが挙げられる。
【0087】
プロテアソーム阻害剤の例としては、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブまたはイキサゾミブが挙げられる。
【0088】
抗CCR4抗体の例としては、モガムリズマブが挙げられる。
【0089】
JAK阻害剤の例としては、ルキソリチニブが挙げられる。
【0090】
CXCR4拮抗薬の例としては、AMD3100、BMS-936564、BL-8040、ドシパルスタットナトリウム(Dociparstat sodium)またはLY2624587(CXCR4阻害抗体)が挙げられる。
【0091】
BET阻害剤の例としては、OTX015、GSK525762、RVX-208、BMS-986158、PLX51107、CPI-0610、TEN-010、INCB054329、ABBV075またはGS-5829が挙げられる。
【0092】
Bcl-2阻害剤の例としては、ABT-199(ベネトクラックス)、ABT-263、GX15-070またはAT-101が挙げられる。
【0093】
HDAC阻害剤の例としては、プラシノスタット(Pracinostat)、ボリノスタット(Vorinostat)、ロミデプシン(Romidepsin)、パノビノスタット(Panobinostat)、ベリノスタット(Belinostat)、エンチノスタット(Entinostat)またはチダミド(Chidamide)が挙げられる。
【0094】
FLT3阻害剤の例としては、ジルテリチニブ(Gilteritinib)、ミドスタウリン(Midostaurin)、ソラフェニブ(Sorafenib)、ポナチニブ(Ponatinib)、クレノラニブ(Crenolanib)、タンズチニブ(Tandutinib)、スニチニブ(Sunitinib)、キザルチニブ(Quizartinib)またはパクリチニブ(Pacritinib)が挙げられる。
【0095】
LSD1阻害剤の例としては、GSK-2879552、INCB-59872またはORY-1001が挙げられる。
【0096】
MDM2阻害剤の例としては、イダサヌトリン(Idasanutlin)、SAR405838、DS-3032b、RG7112、HDM201、MK4828、AMG-232またはALRN-6924が挙げられる。
【0097】
IDH1阻害剤の例としては、イボシデニブ(Ivosidenib)が挙げられる。
【0098】
IDH2阻害剤の例としては、エナシデニブ(Enasidenib)が挙げられる。
【0099】
Btk阻害剤の例としては、ONO-4059(チラブルチニブ)、イブルチニブ、スペブルチニブ(Spebrutinib)、HM-71224(LY3337641)、アカラブルチニブ(Acalabrutinib)、SNS-062、BGB-311、GDC-0853、M2951、BMS-986142、PRN-1008、TAK-020、TAS5315、Pharmacyclics-3またはAC-0058TAが挙げられる。
【0100】
PLK阻害剤の例としては、ボラセルチブ(Volasertib)、GSK461364、リゴセルチブ(Rigosertib)、BI2536、HMN-176、NMS-P937、CYC-140またはRO3280が挙げられる。
【0101】
HSP90阻害剤の例としては,ガネテスピブ(Ganetespib)が挙げられる。
【0102】
SMO阻害剤の例としては、グラスデギブ(Glasdegib)、ビスモデギブ(Vismodegib)またはソニデギブ(Sonidegib)が挙げられる。
【0103】
NEDD8阻害剤の例としては、ペボネジスタット(Pevonedistat)が挙げられる。
【0104】
固形がんの治療に用いられる分子標的薬の例としては、EGFR阻害剤、Bcr-Abl阻害剤、VEGFR阻害剤、mTOR阻害剤、ALK阻害剤、PARP阻害剤、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、CDK阻害剤、HER2阻害剤、マルチキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、Bcl-2阻害剤、またはHDAC阻害剤等が挙げられる。
【0105】
EGFR阻害剤の例としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、ダコミチニブまたはバニツムマブが挙げられる。
【0106】
Bcr-Abl阻害剤の例としては、イマチニブが挙げられる。
【0107】
VEGFR阻害剤の例としては、ベバシズマブ、またはバゾバニブが挙げられる。
【0108】
mTOR阻害剤の例としては、エベロリムス、またはテムシロリムスが挙げられる。
【0109】
ALK阻害剤の例としては、セリチニブ、またはアレクチニブが挙げられる。
【0110】
PARP阻害剤の例としては、オラパリブ、ルカパリブ(Rucaparib)、またはニラパリブ(Niraparib)が挙げられる。
【0111】
BRAF阻害剤の例としては、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、またはエンコラフェニブ(Encorafenib)が挙げられる。
【0112】
MEK阻害剤の例としては、トラメチニブ、セルメチニブ(Selumetinib)、ビニメチニブ(Binimetinib)、またはCH4987655が挙げられる。
【0113】
CDK阻害剤の例としては、パルボシクリブ、またはディナシクリブ(Dinaciclib)が挙げられる。
【0114】
HER2阻害剤の例としては、ラパチニブ、またはトラスツズマブが挙げられる。
【0115】
マルチキナーゼ阻害剤の例としては、レゴラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、クリゾチニブ、またはソラフェニブが挙げられる。なお、スニチニブ、ソラフェニブは前記FLT3阻害剤の例としても挙げられる。
【0116】
プロテアソーム阻害剤の例としては、ボルテゾミブが挙げられる。
【0117】
HDAC阻害剤の例としては、パノビノスタットが挙げられる。
【0118】
本発明の組み合わせのうち、血液がんの治療に用いられる分子標的薬として好ましくは、抗CD20抗体、抗CD33抗体、抗CD52抗体、ABL阻害剤、プロテアソーム阻害剤、抗CCR4抗体、JAK阻害剤、CXCR4拮抗薬、BET阻害剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、FLT3阻害剤、LSD1阻害剤、MDM2阻害剤、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、Btk阻害剤またはPLK阻害剤であり、さらに好ましくはCXCR4拮抗薬、BET阻害剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、FLT3阻害剤、LSD1阻害剤、MDM2阻害剤、Btk阻害剤またはPLK阻害剤である。
【0119】
抗CD20抗体としてはオファツムマブ、リツキシマブまたはオビヌツズマブが好ましい。
【0120】
抗CD33抗体としてはゲムツヅマブまたはゲムツヅマブ オゾガマイシンが好ましい。
【0121】
抗CD52抗体としては、アレムツズマブが好ましい。
【0122】
ABL阻害剤としては、イマチニブ、ダサチニブまたはニロチニブが好ましい。
【0123】
プロテアソーム阻害剤としては、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブまたはイキサゾミブが好ましい。
【0124】
抗CCR4抗体としては、モガムリズマブが好ましい。
【0125】
JAK阻害剤としては、ルキソリチニブが好ましい。
【0126】
CXCR4拮抗薬として好ましくは、AMD3100、BMS-936564、BL-8040、ドシパルスタットナトリウム(Dociparstat sodium)またはLY2624587であり、さらに好ましくはAMD3100である。
【0127】
BET阻害剤として好ましくはABBV-075、GSK525762、RVX-208、BMS-986158、PLX51107、CPI-0610、TEN-010、INCB054329またはGS-5829であり、さらに好ましくは、ABBV-075である。
【0128】
Bcl-2阻害剤として好ましくは、ABT-199(ベネトクラックス)、ABT-263、GX15-070またはAT-101であり、さらに好ましくは、ABT-199(ベネトクラックス)である。
【0129】
HDAC阻害剤として好ましくは、プラシノスタット、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、ベリノスタット、エンチノスタットまたはチダミドであり、さらに好ましくは、プラシノスタットである。
【0130】
FLT3阻害剤として好ましくは、ジルテリチニブ、ミドスタウリン、ソラフェニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、タンズチニブ、スニチニブ、キザルチニブまたはパクリチニブであり、さらに好ましくは、ジルテリチニブまたはミドスタウリンである。
【0131】
LSD1阻害剤として好ましくは、GSK-2879552、INCB-59872またはORY-1001であり、さらに好ましくは、GSK-2879552である。
【0132】
MDM2阻害剤として好ましくは、イダサヌトリン、SAR405838、DS-3032b、RG7112、HDM201、MK4828、AMG-232またはALRN-6924であり、さらに好ましくは、イダサヌトリンである。
【0133】
IDH1阻害剤としては、イボシデニブが好ましい。
【0134】
IDH2阻害剤としては、エナシデニブが好ましい。
【0135】
Btk阻害剤として好ましくは、ONO-4059(チラブルチニブ)、イブルチニブ、スペブルチニブ、HM-71224、アカラブルチニブ、SNS-062、BGB-311、GDC-0853、M2951、BMS-986142、PRN-1008、TAK-020、TAS5315、Pharmacyclics-3またはAC-0058TAであり、さらに好ましくは、ONO-4059(チラブルチニブ)である。
【0136】
PLK阻害剤として好ましくは、ボラセルチブ、GSK461364、リゴセルチブ、BI2536、HMN-176、NMS-P937、CYC-140またはRO3280であり、さらに好ましくは、ボラセルチブである。
【0137】
本発明の組み合わせのうち、固形がんの治療に用いられる分子標的薬としては、EGFR阻害剤、Bcr-Abl阻害剤、VEGFR阻害剤、mTOR阻害剤、ALK阻害剤、PARP阻害剤、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、CDK阻害剤、HER2阻害剤、マルチキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、Bcl-2阻害剤、またはHDAC阻害剤が好ましい。
【0138】
EGFR阻害剤としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、またはバニツムマブが好ましい。より好ましくは、ゲフィチニブ、エルロチニブ、またはアファチニブである。
【0139】
Bcr-Abl阻害剤としては、イマチニブが好ましい。
【0140】
VEGFR阻害剤としては、ベバシズマブ、またはバゾバニブが好ましい。より好ましくは、ベバシズマブである。
【0141】
mTOR阻害剤としては、エベロリムス、またはテムシロリムスが好ましい。
【0142】
ALK阻害剤としては、セリチニブ、またはアレクチニブが好ましい。
【0143】
PARP阻害剤としては、オラパリブ、ルカパリブ、またはニラパリブが好ましい。
【0144】
BRAF阻害剤としては、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、またはエンコラフェニブが好ましい。より好ましくは、ベムラフェニブ、またはダブラフェニブである。
【0145】
MEK阻害剤としては、トラメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、またはCH4987655が好ましい。より好ましくは、トラメチニブである。
【0146】
CDK阻害剤としては、パルボシクリブ、またはディナシクリブが好ましい。
【0147】
HER2阻害剤としては、ラパチニブ、またはトラスツズマブが好ましい。
【0148】
マルチキナーゼ阻害剤としては、レゴラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、クリゾチニブ、またはソラフェニブが好ましい。
【0149】
プロテアソーム阻害剤としては、ボルテゾミブが好ましい。
【0150】
Bcl-2阻害剤としては、ベネトクラックスが好ましい。
【0151】
HDAC阻害剤としては、パノビノスタットが好ましい。
【0152】
本発明において、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原-4)は、タンパク質の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA-4は、T細胞の活性化を下方調節し、免疫抑制機能を発揮する。したがって、抗CTLA-4抗体は、CTLA-4の機能(シグナル)を抑制することから、免疫抑制機能を解除し、がんに対する免疫反応を活性化し得る。本発明の組合せに用いられる抗CTLA-4抗体としては、例えば、イピリムマブ(Ipilimumab(YERVOY(登録商標))、トレメリムマブ(Tremelimumab)、AGEN-1884が挙げられる。また、上記既知の抗CTLA-4抗体の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDRs)または可変領域(VR)を含む抗体も抗CTLA-4抗体の一態様である。例えば、抗CTLA-4抗体の更なる一態様としては、例えばイピリムマブの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDRs)または可変領域(VR)を含む抗体が挙げられる。
【0153】
本発明の組み合わせに用いられる抗CTLA-4抗体の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、最適な所望の効果をもたらすように調整される。
【0154】
抗CTLA-4抗体を使用する場合、投与量の一態様は、0.1~20mg/kg体重である。また、イピリムマブの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDRs)または可変領域(VR)を含む抗体(例えばイピリムマブ)を使用する場合、投与量の一態様は、0.3~10mg/kg体重であり、好ましくは、3mg/kg体重である。
【0155】
本発明において、それ以外の抗がん剤とは血液がんの治療のために投与される抗がん剤のうち、細胞障害性抗がん剤と分子標的薬以外の抗がん剤を意味する。血液がんの治療のためのそれ以外の抗がん剤の例としては、ステロイド剤、ビタミンA誘導体、抗ウイルス薬、L-アスパラギナーゼ、亜ヒ酸、インターフェロンα、シクロスポリン、サリドマイド、ポマリドミドおよびレナリドミドが挙げられる。
【0156】
ステロイド剤の例としては、デキサメタゾン、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロンが挙げられる。
【0157】
ビタミンA誘導体の例としては、オールトランス型レチノイン酸またはタミバロテンが挙げられる。
【0158】
抗ウイルス薬の例としては、アシクロビルまたはジドブジンが挙げられる。
【0159】
本発明の組み合わせに用いられる、血液がんの治療のためのそれ以外の抗がん剤として好ましくは、ステロイド剤、ビタミンA誘導体、抗ウイルス薬、L-アスパラギナーゼ、亜ヒ酸、インターフェロンα、シクロスポリン、サリドマイド、ポマリドミドまたはレナリドミドであり、さらに好ましくは、ステロイド剤である。
【0160】
ステロイド剤として好ましくは、デキサメタゾン、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロンであり、さらに好ましくは、デキサメタゾンである。
【0161】
ビタミンA誘導体としては、オールトランス型レチノイン酸またはタミバロテンが好ましい。
【0162】
抗ウイルス薬としては、アシクロビルまたはジドブジンが好ましい。
【0163】
本発明において、それ以外の抗がん剤とは、固形がんの治療のために投与される抗がん剤のうち、細胞傷害性抗がん剤および分子標的薬を除く抗がん剤を意味する。
【0164】
固形がんの治療のためのそれ以外の抗がん剤としては、例えば、ステロイド、ホルモン剤、アロマターゼ阻害剤、インターフェロンα等が挙げられる。
【0165】
本発明で組み合わせて用いられる、固形がんの治療のためのそれ以外の抗がん剤としては、ステロイド、ホルモン剤、アロマターゼ阻害剤、インターフェロンαが好ましい。より好ましくは、ホルモン剤、アロマターゼ阻害剤である。
【0166】
ステロイドとしては、デキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンが好ましい。より好ましくは、デキサメタゾンである。
【0167】
ホルモン剤としては、メドロキシプロゲステロン、メチルテストステロン、エチニルエストラジオール、ゴセレリン、リュープロレリン、クロルマジノン、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、トレミフェン、メピチオスタンが好ましい。より好ましくは、エチニルエストラジオールである。
【0168】
アロマターゼ阻害剤としては、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールが好ましい。より好ましくは、レトロゾールである。
【0169】
さらに本発明の組み合わせとして、細胞療法(例えば、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法等)を組み合わせてもよい。
【0170】
これら抗がん剤のうちのいずれか1種または任意の複数種を本発明にかかるAxl阻害剤と組み合わせて、がん治療に用いることができる。
【0171】
本発明の組み合わせに用いられる抗がん剤の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、最適な所望の効果をもたらすように調整される。
【0172】
[毒性]
本発明の組み合わせの毒性は十分に低いものであり、医薬品として安全に使用することができる。
【0173】
[医薬品への適用]
本発明の組み合わせ、またはAxl阻害剤である化合物Aによって治療される疾患の一態様として、血液がんが挙げられる。血液がんとしては、特に限定されないが、例えば、白血病、悪性リンパ腫および骨髄腫が挙げられる。
【0174】
白血病の例としては、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病(急性リンパ性白血病)、リンパ芽球性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、慢性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫および骨髄異形成症候群が挙げられる。
【0175】
急性骨髄性白血病の例としては、急性巨核芽球性白血病(AML-M7またはFAB分類-M7)が挙げられる。
【0176】
悪性リンパ腫の例としては、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病・リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型およびホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0177】
骨髄腫の例としては、多発性骨髄腫および多発性骨髄腫の類縁疾患が挙げられる。
【0178】
本発明の組み合わせによって治療される疾患の一態様として、固形がんが挙げられる。固形がんとしては、特に限定されないが、例えば、頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃食道接合部がん、食道腺がん、胃がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、小腸がん、肛門がん(例えば、肛門管がん)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん)、胆嚢がん、胆管がん、胆道がん、膵臓がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(例えば、扁平上皮非小細胞肺がん、非扁平上皮非小細胞肺がん)、小細胞肺がん)、乳がん、卵巣がん(例えば、漿液性卵巣がん、卵巣明細胞腺がん)、卵管がん、子宮がん(例えば、子宮頚がん、子宮体がん、子宮内膜がん)、膣がん、外陰部がん、陰茎がん、腎がん(例えば、腎細胞がん、淡明細胞型腎細胞がん)、副腎がん、尿路上皮がん(例えば、膀胱がん、上部尿路がん、尿管がん、腎盂がんおよび尿道がん)、前立腺がん、精巣腫瘍(例えば、胚細胞腫瘍)、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫および子宮体部平滑筋肉腫)、皮膚がん(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、メルケル細胞がん)、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、神経膠肉腫)、脳腫瘍(例えば、膠芽腫)、脊椎腫瘍、カポジ肉腫、扁平上皮がん、胸膜中皮腫、原発性腹膜がん、内分泌系がん、小児がんまたは原発不明がんが挙げられる。
【0179】
このうち、例えば、抗がん剤またはAxl阻害剤単独での治療効果が十分ではない血液がんおよび/または固形がん患者に対して、本発明の組み合わせは、特に、その抗腫瘍効果を最大限に発揮することが期待できる。また、本発明の組み合わせにより、それぞれの薬剤の用量を下げて投与することも可能となり、副作用の軽減が期待できる。
【0180】
本発明における肺がんには、EGFR遺伝子エクソン19欠失変異陽性肺がんが含まれる。EGFR遺伝子エクソン19欠失変異陽性肺がんとは、EGFR遺伝子変異陽性の肺がんである。
【0181】
本発明における悪性黒色腫には、BRAF遺伝子活性化変異陽性悪性黒色腫が含まれる。BRAF遺伝子活性化変異陽性悪性黒色腫とは、BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫である。
【0182】
本発明におけるAxl阻害剤による治療効果が十分でない固形がん患者とは、(1)Axl阻害剤が効きにくい固形がんに罹患した固形がん患者または(2)Axl阻害剤による治療中に増悪もしくは治療後に再燃した固形がん患者である。
【0183】
本発明における抗がん剤による治療効果が十分でない固形がん患者とは、(1)抗がん剤が効きにくい固形がんに罹患した患者または(2)抗がん剤による治療中に増悪もしくは治療後に再燃した固形がん患者である。
【0184】
本発明における抗がん剤が効きにくい固形がんとして、例えばゲムシタビン耐性膵臓がん、EGFR阻害剤耐性肺がん(例えば、ゲフィチニブ耐性肺がん)、BRAF阻害剤耐性悪性黒色腫(例えば、ベムラフェニブ耐性悪性黒色腫)が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0185】
本発明の組み合わせは、一態様として、転移性がんの治療や転移の抑制にも適用可能である。
【0186】
本発明の組み合わせは、一態様として、再発を抑制する。
【0187】
本発明において、治療は、無増悪生存期間(PFS)延長、全生存期間(OS)の延長、無病生存(DFS)の延長、無進行期間(TTP)の延長、無イベント生存(EFS)の延長、無再発生存(RFS)の延長、がん細胞数の減少、腫瘍サイズの低下、腫瘍の成長の抑制(遅延または停止)、腫瘍の転移の抑制(遅延または停止)、再発の抑制(防止または遅延)、およびがんと関連する一つ又は複数の症状の緩和のうち少なくとも1つの効果を生じさせることを意味する。
【0188】
本発明において、「組み合わせて投与される」とは、同じまたは異なる剤形における化合物の同時投与、あるいは化合物の別々の投与(例えば、逐次的投与)を含む。より具体的には、1つの製剤中にすべての成分を配合した配合剤の形態で投与されてもよく、または別々の製剤として投与される形態をとってもよい。この別々の製剤として投与される場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、Axl阻害剤を先に投与し、抗がん剤を後に投与してもよいし、抗がん剤を先に投与し、Axl阻害剤を後に投与してもよい。それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0189】
本発明において、本発明の組み合わせは、(1)治療効果の補完および/または増強、(2)動態・吸収改善、投与量の低減、および/または(3)副作用の軽減のために、さらに他の薬物(例えば、公知のがん治療剤)と組み合わせて、投与してもよい。
【0190】
本発明において、「抗がん剤による治療を受けている」患者、および「前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグによる治療を受けている」患者とは、本発明の組合せの他方の薬剤による治療を行う前に、「抗がん剤」または「前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグ」による治療を受けている患者、および本発明の組合せの他方の薬剤による治療中に、「抗がん剤」または「前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグ」による治療を受けている患者の双方の意味を有する。
【0191】
本願は、例えば、下記の実施様態を提供する。
[1] 抗がん剤と組み合わせて投与されることを特徴とするAxl阻害剤を有効成分として含むがん治療剤であって、前記Axl阻害剤が一般式(I)
【化13】
[式中、R1は(1)1~5個のR11で置換されていてもよいC1~8アルキル基、(2)1~5個のR12で置換されていてもよいC3~7の炭素環、または(3)1~5個のR13で置換されていてもよい4~7員のヘテロ環を表し、
ここで、R1で表されるC1~8アルキル基が分枝鎖アルキル基の場合、同一の炭素原子から分枝したC1~3アルキル基は結合する炭素原子と一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく、
2は(1)C1~4アルキル基、(2)ハロゲン原子、(3)C1~4ハロアルキル基、(4)オキソ基、(5)-OR21基、または(6)=NR22基を表し、
3は(1)C1~4アルキル基、(2)ハロゲン原子、または(3)C1~4ハロアルキル基を表し、
4は(1)C1~4アルコキシ基、(2)C1~4ハロアルキル基、(3)-OR41基、(4)C1~4アルキル基、(5)C2~4アルケニルオキシ基、または(6)C2~4アルキニルオキシ基を表し、
5は(1)水素原子、(2)C1~4アルキル基、(3)ハロゲン原子、(4)C1~4ハロアルキル基、または(5)-OR21基を表し、
11は(1)-OR101基、(2)SO2102基、(3)NR103104基、または(4)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC3~7の炭素環を表し、
12は(1)水酸基で置換されていてもよいC1~8アルキル基、または(2)ハロゲン原子を表し、
13は(1)水酸基で置換されていてもよいC1~8アルキル基、または(2)ハロゲン原子を表し、
21は(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
22は(1)水酸基、または(2)C1~4アルコキシ基を表し、
41は(1)水素原子、
(2)(a)(i)C1~4アルキル基、(ii)C1~4ハロアルキル基、および(iii)ハロゲン原子からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されていてもよい5~7員の環状基、(b)NR401402、(c)水酸基、および(d)SO2403基からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されたC1~8アルキル基、
(3)(a)(i)C1~4アルキル基、(ii)C1~4ハロアルキル基、および(iii)ハロゲン原子からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されていてもよい5~7員の環状基、(b)NR401402、(c)水酸基、および(d)SO2403基からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されたC2~8アルケニル基、
または
(4)(a)(i)C1~4アルキル基、(ii)C1~4ハロアルキル基、および(iii)ハロゲン原子からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されていてもよい5~7員の環状基、(b)NR401402、(c)水酸基、および(d)SO2403基からなる群から選択される1~2個の置換基で置換されたC2~8アルキニル基を表し、
101は(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
102は(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
103およびR104はそれぞれ独立して、(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
401およびR402はそれぞれ独立して、(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
403は(1)水素原子、または(2)C1~4アルキル基を表し、
Aは(1)CH、または(2)窒素原子を表し、
Lは(1)-O-、(2)-NH-、(3)-C(O)-、(4)-CR67-、(5)-S-、(6)-S(O)-、または(7)-S(O)2-を表し、
6およびR7はそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)ハロゲン原子、(3)C1~4アルキル基、(4)水酸基、または(5)NH2を表し、
ring1は5~7員の環状基を表し、
【化14】
は一重結合または二重結合を表し、
mは0~5の整数を表し、
nは0~5の整数を表し、
pは0~2の整数を表し、
qは0~4の整数を表し、
mが2以上のとき、複数のR2は同じでも異なっていてもよく、ここで、2個のR2がC1~3アルキル基を表し、かつ同一の炭素原子上にあるとき、当該R2と結合する炭素原子が一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく、
nが2以上のとき、複数のR3は同じでも異なっていてもよく、
qが2以上のとき、複数のR4は同じでも異なっていてもよい。]で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグであるがん治療剤(ただし、前記抗がん剤は抗CTLA-4抗体以外の免疫チェックポイント阻害剤を含まない)、
[2] Axl阻害剤が一般式(I-1)
【化15】
[式中、R2-1は(1)C1~4アルキル基、(2)ハロゲン原子、(3)C1~4ハロアルキル基、(4)-OR21基、または(5)=NR22基を表し、
m-1は0~4の整数を表し、
1は(1)-O-、(2)-NH-、または(3)-C(O)-を表し、
ring1-1はベンゼン、またはピリジンを表し、
m-1が2以上のとき、複数のR2-1は同じでも異なっていてもよく、
ここで、2個のR2-1がC1~3アルキル基を表し、かつ同一の炭素原子上にあるとき、当該R2-1と結合する炭素原子が一緒になってC3~7の飽和炭素環を形成してもよく、
その他の記号は前記と同じ意味を表す。]で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグである、前記[1]記載の剤、
[3] Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物である、前記[1]または前記[2]記載の剤、
[4] がんが血液がんである前記[1]から前記[3]のいずれか一項に記載の剤、
[5] 血液がんが白血病である、前記[4]記載の剤、
[6] 白血病が急性骨髄性白血病または急性リンパ芽球性白血病である、前記[5]記載の剤、
[7] 抗がん剤が細胞障害性抗がん剤、分子標的薬、ステロイド剤、ビタミンA誘導体、抗ウイルス薬、L-アスパラギナーゼ、亜ヒ酸、インターフェロンα、シクロスポリン、サリドマイド、ポマリドミドおよびレナリドミドからなる群から選択される前記[4]から前記[6]のいずれか一項に記載の剤、
[8] 抗がん剤が細胞障害性抗がん剤である前記[7]記載の剤、
[9] 細胞障害性抗がん剤がダウノルビシン、アザシチジンおよびシタラビンからなる群から選択される、前記[8]記載の剤、
[10] 抗がん剤が分子標的薬である前記[7]記載の剤、
[11] 分子標的薬が抗CD20抗体、抗CD33抗体、抗CD52抗体、ABL阻害剤、プロテアソーム阻害剤、抗CCR4抗体、JAK阻害剤、CXCR4拮抗薬、BET阻害剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、FLT3阻害剤、LSD1阻害剤、MDM2阻害剤、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、Btk阻害剤、PLK阻害剤、HSP90阻害剤、SMO阻害剤およびNEDD8阻害薬からなる群から選択される前記[10]記載の剤、
[12] 分子標的薬がCXCR4拮抗薬、BET阻害剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、FLT3阻害剤、LSD1阻害剤、MDM2阻害剤、Btk阻害剤およびPLK阻害剤からなる群から選択される、前記[10]または[11]記載の剤、
[13] 分子標的薬がAMD3100、ABBV-075、ABT-199、プラシノスタット、ジルテリチニブ、ミドスタウリン、GSK-2879552、イダサヌトリン、チラブルチニブおよびボラセルチブからなる群から選択される、前記[10]から前記[12]のいずれか一項に記載の剤、
[14] がんが固形がんである前記[1]から前記[3]のいずれか一項に記載の剤、
[15] 固形がんが頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃食道接合部がん、食道腺がん、胃がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、小腸がん、肛門がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、胆道がん、膵臓がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、卵管がん、子宮がん、膣がん、外陰部がん、陰茎がん、腎がん、副腎がん、尿路上皮がん、前立腺がん、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、皮膚がん、神経膠腫、脳腫瘍、脊椎腫瘍、カポジ肉腫、扁平上皮がん、胸膜中皮腫、原発性腹膜がん、内分泌系がん、小児がんまたは原発不明がんである、前記[14]記載の剤、
[16] 固形がんが膵臓がん、肺がんまたは皮膚がんである、前記[14]または前記[15]記載の剤、
[17] 抗がん剤が、細胞傷害性抗がん剤、分子標的薬、ステロイド、ホルモン剤、アロマターゼ阻害剤およびインターフェロンαからなる群から選択される、前記[14]から前記[16]のいずれか一項に記載の剤、
[18] 抗がん剤が細胞障害性抗がん剤である前記[17]記載の剤、
[19] 細胞障害性抗がん剤がアルキル化薬、代謝拮抗薬、植物性アルカロイド薬、白金製剤、抗がん性抗生物質からなる群から選択される、前記[18]に記載の剤、
[20] 細胞傷害性抗がん剤が代謝拮抗薬である前記[19]記載の剤、
[21] 代謝拮抗薬がゲムシタビンである、前記[20]記載の剤、
[22] 抗がん剤が分子標的薬である前記[17]記載の剤、
[23] 分子標的薬が、EGFR阻害剤、Bcr-Abl阻害剤、VEGFR阻害剤、mTOR阻害剤、ALK阻害剤、PARP阻害剤、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、CDK阻害剤、HER2阻害剤、マルチキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、Bcl-2阻害剤およびHDACβ阻害剤からなる群から選択される、前記[22]に記載の剤、
[24] 分子標的薬が、EGFR阻害剤、BRAF阻害剤およびMEK阻害剤からなる群から選択される、前記[22]または前記[23]記載の剤、
[25] EGFR阻害剤がゲフィチニブ、エルロチニブまたはアファチニブであり、BRAF阻害剤がベムラフェニブまたはダブラフェニブであり、MEK阻害剤がトラメチニブである、前記[24]記載の剤、
[26] 抗がん剤が、抗CTLA-4抗体である前記[1]から前記[3]のいずれか一項に記載の剤、
[27] 抗CTLA-4抗体が、イピリムマブ、トレメリムマブ、およびAGEN-1884からなる群から選択される、前記[26]記載の剤、
[28] 前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグの有効量を抗がん剤と組み合わせて、がんの治療を必要とする患者に投与することを特徴とするがん治療方法(ただし、前記抗がん剤は抗CTLA-4抗体以外の免疫チェックポイント阻害剤を含まない)、
[29] 抗がん剤と組み合わせてがん治療に使用される、前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグ(ただし、前記抗がん剤は抗CTLA-4抗体以外の免疫チェックポイント阻害剤を含まない)、
[30] 抗がん剤と組み合わせて投与されることを特徴とするがん治療剤の製造のための、前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグの使用(ただし、前記抗がん剤は抗CTLA-4抗体以外の免疫チェックポイント阻害剤を含まない)、
[31] Axl阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とする抗がん剤を有効成分として含むがん治療剤であって、前記Axl阻害剤が前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグであるがん治療剤(ただし、前記抗がん剤は抗CTLA-4抗体以外の免疫チェックポイント阻害剤を含まない)、
[32] Axl阻害剤と抗がん剤とを組み合わせて投与されることを特徴とするがん治療のための医薬組成物であって、前記Axl阻害剤が前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物、その塩、その溶媒和物、そのN-オキシド体またはそれらのプロドラッグである医薬組成物(ただし、前記抗がん剤は抗CTLA-4抗体以外の免疫チェックポイント阻害剤を含まない)等の実施態様が挙げられる。
【実施例
【0192】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0193】
一般式(I)に代表されるAxl阻害剤として、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(化合物A)を使用した。化合物Aは、公知の方法、例えば、WO2015/012298の実施例5に記載された方法により製造することができる。
【0194】
本明細書中、相乗分析に用いる組み合わせ指標(Combination Index)は、CiまたはCIで表記するものとする。
【0195】
生物学的実施例1:急性骨髄性白血病患者由来骨髄試料を用いた化合物Aと各種抗がん剤の単剤または併用による減少性試験または増殖性試験
初期評価:成人の急性骨髄性白血病患者より、骨髄試料を得た。各々の試料中の白血病細胞を同定するための最良のマーカーの組み合わせを決定するために、微量の試料を各種マーカーに特異的なモノクローナル抗体(MAb)で染色した。更に、細胞の初期生存率を評価するために、上記のMAbの組み合わせにアネキシンVを含めた。初期評価に用いたMAbの組み合わせを以下の表1に示す。
【表1】
【0196】
減少性試験:白血病細胞を含む骨髄試料全体を培地(20%FBS、2%HEPES、1%抗生物質及び1%L-グルタミンを含むRPMI1640)(以下、培地1)で希釈し、あらかじめ調製しておいた薬剤のDMSO溶液を含む96ウェルプレートに分注した(最終容量60μL/ウェル、DMSO濃度0.5%以下)。試料を含むプレートを37℃、5%CO2を含む加湿空気中で96時間インキュベートした。分析用試料を調製するため、インキュベーション終了後、赤血球を溶解し、次いで、試料中の白血病細胞を同定するための最良のMAbの組み合わせ及びアネキシンVで染色した。最後に、プレートをExviTech(登録商標)プラットフォームで分析した。
【0197】
増殖性試験:増殖はCFDA-SE色素を用いて測定した。事前に調製した色素を、1ウェル当たり約6000個の生存白血病細胞を得るのに十分な骨髄を含む15mLチューブに入れた。その後、それらを培地で総容量が1mLになるまで希釈した。ボルテックスでよく混ぜ合わせた後、遮光して、ローテーター上で、室温にて10分間インキュベートした。次いで、10%FBSを含む冷RPMI1640(培地2)でチューブを満たし、氷上で5分間インキュベートすることにより反応を停止させた。その後、細胞を培地2で2回洗浄した。プレーティング及びインキュベーション前の最終的な再懸濁には、サイトカインカクテルを補充した培地1を使用した。懸濁液をあらかじめ調製しておいた薬剤のDMSO溶液を含む96ウェプレートに分注した(最終容量60μL/ウェル、DMSO濃度0.5%以下)。試料を含むプレートを37℃、5%CO2を含む加湿空気中で96時間インキュベートした。分析用試料を調製するため、インキュベーション終了後、赤血球を溶解し、次いで、試料中の白血病細胞を同定するための最良のMAbの組み合わせ及びアネキシンVで染色した。最後に、プレートをExviTech(登録商標)プラットフォームで分析した。
【0198】
データ解析:相乗分析は、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、第70巻、第2号、440-446ページ、2010年に記載されているように、組合せ指数(Combination Index:Ci)を計算することにより算出した。この分析方法は薬物相互作用を測定する最も簡単で最も一般的な方法である。なお、Ci値の意味は次のように解される。
Ci<1:相乗作用、Ci=1:相加作用、Ci>1:拮抗作用
【0199】
減少性試験結果:表2に化合物Aと各種抗がん剤について算出したCiの中央値を示す。化合物AとOTX015、AMD3100、プラシノスタット、ダウノルビシン、ABT-199、イダサヌトリンまたはシタラビンを併用した場合のCiの中央値はいずれも1未満であり、化合物Aとこれら薬剤との併用は相乗作用を示すことが明らかとなった。以上のことから化合物Aとこれら薬剤との併用は強い抗腫瘍効果を発揮することが確認された。
【表2】
【0200】
増殖性試験結果:表3に化合物Aと各種抗がん剤について算出したCiの中央値を示す。化合物AとGSK-2879552、ジルテリチニブ、ONO-4059(チラブルチニブ)、アザシチジン、ミドスタウリンまたはボラセルチブを併用した場合のCiの中央値はいずれも1未満であり、化合物Aとこれら薬剤との併用は相乗作用を示すことが明らかとなった。以上のことから化合物Aとこれら薬剤との併用は強い抗腫瘍効果を発揮することが確認された。
【表3】
【0201】
生物学的実施例2:ヒト急性骨髄性白血病細胞株を用いた化合物AとABBV-075とのin vitro併用効果評価試験
ヒト急性骨髄性白血病細胞株CMK-11-5を10%FBSを含むRPMI培地(10%FBS-RPMI培地)にて約30000個/mLとなるよう調製し、96ウェルプレートに50μL/ウェルとなるように播種した。そこに最終濃度の4倍の濃度のABBV-075を含む10%FBS-RPMI培地を25μL/ウェルとなるように加えた。更に最終濃度の4倍の濃度の化合物Aを含む10%FBS-RPMI培地を25μL/ウェルとなるように加えた(最終容量100μL/ウェル、DMSO濃度0.2%)。プレートを37℃、5%CO2を含む加湿空気中で72時間インキュベートした。培養終了後にCell Counting Kit-8を用いて生細胞数と比例関係にあるホルマザン生成物の450nmの吸光度を測定した。媒体群における450nmの吸光度に対する各化合物処置群の450nmの吸光度の百分率(%)を算出した。
【0202】
結果を表4に示す。化合物AとABBV-075とを併用した場合の450nmの吸光度は、各単剤処置時と比べて低下し、化合物Aとこれら薬剤との併用は細胞株に対して強い増殖抑制作用を示した。更に、化合物AとABBV-075との併用におけるCiの中央値は1未満であり、化合物AとABBV-075との併用は相乗作用を示すことが明らかとなった。以上のことから化合物AとABBV-075との併用は強い抗腫瘍効果を発揮することが確認された。
【表4】
【0203】
生物学的実施例3:ヒト急性リンパ性白血病細胞株を用いた化合物Aと各種抗がん剤とのin vitro併用効果評価試験
ヒト急性リンパ性白血病細胞株CCRF-HSB-2を10%FBSを含むIMDM培地(10%FBS-IMDM培地)にて約200000個/mLとなるよう調製し、96ウェルプレートに50μL/ウェルとなるように播種した。そこに最終濃度の4倍の濃度のシタラビン、ダウノルビシンまたはデキサメタゾンを含む10%FBS-IMDM培地を25μL/ウェルとなるように加えた。更に最終濃度の4倍の濃度の化合物Aを含む10%FBS-IMDM培地を25μL/ウェルとなるように加えた(最終容量100μL/ウェル、DMSO濃度0.1%)。プレートを37℃、5%CO2を含む加湿空気中で72時間インキュベートした。培養終了後にCell Titer-Glo Luminescent Cell Viability Assay(登録商標)を用いて細胞内在性ATP量に比例した相対発光単位(RLU)を測定した。媒体群におけるRLUに対する各化合物処置群のRLUの百分率(%)を算出した。
【0204】
結果を表5および図1ないし3に示す。化合物Aとデキサメタゾン、シタラビンまたはダウノルビシンとを併用した場合のRLUは、各単剤処置時と比べて低下し、化合物Aとこれら薬剤との併用は細胞株に対して強い増殖抑制作用を示した。更に、化合物Aとこれら薬剤との併用におけるCiの中央値はいずれも1未満であり、化合物Aとこれら薬剤との併用は相乗作用を示すことが明らかとなった。以上のことから化合物Aとこれら薬剤との併用は強い抗腫瘍効果を発揮することが確認された。
【表5】
【0205】
生物学的実施例4:マウス膵臓がん細胞株PAN02同所移植モデルに対する化合物Aとゲムシタビン併用による抗腫瘍作用の評価(in vivo)
[操作]
化合物Aについて、混餌投与にて20mg/kg/dayとなるように、化合物Aを0.013%含有するマウス用飼料CRF-1を、オリエンタル酵母株式会社にて製造した。ゲムシタビンは和光純薬工業株式会社より入手した。C57/BL6マウス由来膵がん細胞株Pan02を同種同系マウス(C57/BL6、雌、6週齢(日本チャールズリバー社))の膵臓内に移植し、Pan02同所移植マウスを作成した。移植7日後に、体重に基づき媒体群、ゲムシタビン群、化合物A群、ゲムシタビン+化合物A併用群の4群に群分けし(各n=8~9)、群分け日をDay0とした。媒体群および化合物A群にはPBS(10mL/kg、週2回)を腹腔内投与し、ゲムシタビン群およびゲムシタビン+化合物A併用群にはゲムシタビン(60mg/10mL/kg、週2回)を腹腔内投与した。また、化合物A群およびゲムシタビン+化合物A併用群には、化合物Aを0.013%含有するCRF-1をDay0より給餌した。Day0よりDay95まで、各群における各マウスの生存期間を評価した。尚、動物倫理の観点から、両後肢麻痺により摂餌・摂水が不可能である、指先で軽い刺激を与えた際に無反応である、呼吸不全である、うずくまり全く動かない、2~3日の間で20%以上の体重減少、7日間で25%以上の体重減少、のいずれかを認めた個体は安楽死処置とし、その日を死亡日とした。
【0206】
[結果]
結果を表6および図4に示す。ゲムシタビン群の生存期間(群分け日から死亡日までの期間)中央値は67日であり、媒体群の52日と比べて有意に生存期間を延長した。ゲムシタビン+化合物A併用群の生存期間中央値は75日であり、ゲムシタビン群と比較して有意に生存期間を延長した。
【0207】
以上のことから、化合物Aをゲムシタビンと併用することで、強い抗腫瘍効果を発揮することが確認された。
【表6】
【0208】
生物学的実施例5:ゲフィチニブ(Gefitinib)耐性ヒト肺がん細胞株に対する化合物Aとゲフィチニブ併用による抗腫瘍作用の評価(in vitro)
[操作]
(1)細胞の培養
EGFR遺伝子エクソン19に欠失変異を有し、EGFR阻害剤に高感受性を示すヒト肺がん細胞株HCC827を用いた。HCC827に、ゲフィチニブをin vitroにて濃度を漸増しながら長期処置することで作出したゲフィチニブ耐性HCC827(HCC827GR(clone2)およびHCC827GR(clone13))を用いた。細胞は、10%非動化牛胎児血清、2mM L-glutamineを含むRPMI1640培地を用いて5%CO2、37℃の条件下で継代培養した。HCC827GR(clone2)およびHCC827GR(clone13)については、上記培地にゲフィチニブを42μMとなるよう加えて継代培養した。
【0209】
(2)細胞生存性評価
HCC827、HCC827GR(clone2)およびHCC827GR(clone13)細胞を用いて細胞生存性の評価を以下の手順により実施した。10%非動化牛胎児血清および2mM L-glutamineを含むRPMI1640培地(成長培地)に懸濁した細胞を、1ウェルあたり2.5×103cells/25μLの密度で384ウェルプレートに播種し、一晩5%CO2、37℃の条件下で培養した。(1)各最終濃度の2倍濃度のゲフィチニブまたは媒体および(2)各最終濃度の2倍濃度の化合物Aまたは媒体を含む成長培地を、1ウェルあたり25μLずつ添加し、72時間、5%CO2、37℃の条件下で培養した。なお、化合物Aとゲフィチニブを併用処置した群では、化合物Aとゲフィチニブのモル濃度が1:1となるよう調製した。72時間後、細胞生存率を測定した。測定は、Celltiter-Blue(登録商標)(プロメガ社製)を用いてキットの手順に従って行った。すなわち、Celltiter-Blue(登録商標) reagentを1ウェルあたり10μL添加し、3時間、5%CO2、37℃の条件下で培養した。3時間後、マイクロプレートリーダーで蛍光強度(励起波長:570nm、蛍光波長:600nm)を測定した。
【0210】
(3)データ解析
併用効果の解析は、蛍光強度を用いてED(Effective dose)50、ED75、ED90およびED95を算出し、アドバンスィズ イン エンザイム レギュレーション(Advances in enzyme regulation)、第22巻、1984年、27-55ページに記載のCombination index(CI)を算出することにより解析した。CIは併用効果の強度を判定するために一般的に用いられる方法である。CIのスコアは、CI<1が相乗効果、CI=1が相加効果、CI>1が拮抗作用を示したと判断した。
【0211】
[結果]
HCC827、HCC827GR(clone2)およびHCC827GR(clone13)細胞を用いた細胞生存性を指標とした化合物Aとゲフィチニブ併用による抗腫瘍作用の評価結果を表7に示す。化合物Aとゲフィチニブを併用した場合、いずれの細胞においてもCIの中央値(Median CI)は1未満であり、強い相乗効果を示した。以上のことから、化合物Aとゲフィチニブの併用は強い抗腫瘍効果を発揮することが確認された。
【表7】
【0212】
生物学的実施例6:ベムラフェニブ(Vemurafenib)耐性ヒト悪性黒色腫細胞株に対する化合物Aとベムラフェニブ、ダブラフェニブまたはトラメチニブ併用による抗腫瘍作用の評価(in vitro)
[操作]
(1)細胞の培養
BRAF遺伝子に活性化変異(V600E)を有し,BRAF阻害剤であるベムラフェニブに高感受性を示すヒト悪性黒色細胞腫株MEXF HT-144にベムラフェニブをin vitroにて濃度を漸増しながら最終的に6μMの濃度で長期処置することで作出したベムラフェニブ耐性細胞株MEXF HT-144R Vemurafenib 6μMおよび、BRAF遺伝子に活性化変異(V600K)を有し,ベムラフェニブに高感受性を示すヒト悪性黒色細胞腫株MEXF 394にベムラフェニブをin vitroにて濃度を漸増しながら最終的に4μMの濃度で長期処置することで作出したベムラフェニブ耐性細胞株MEXF 394R Vemurafenib 4μMを用いた。細胞は、10%非動化牛胎児血清および0.1mg/mL gentamicinを含むRPMI1640培地(L-glutamineおよび25mM HEPES含有)を用いて、MEXF 394R Vemurafenib 4μMの培地には4μM,MEXF HT-144R Vemurafenib 6μMの培地には6μMのベムラフェニブを添加して5%CO2、37℃の条件下で継代培養した。
【0213】
(2)3次元コロニー形成アッセイ
MEXF 394R Vemurafenib 4μMおよびMEXF HT-144R Vemurafenib 6μMを用いて3次元コロニー形成アッセイを実施した。アッセイは以下の手順により実施した。20%非動化牛胎児血清、0.01%gentamicinおよび0.4%寒天を含むIMDM培地に懸濁した細胞を1ウェル当たり2×103cells/50μLから1×104cells/50μLの密度で播種した。さらに、披験物質または媒体を含む溶液を100μL添加し、24時間、7.5%CO2、37℃の条件下で培養した。播種してから24時間後、寒天層に20%非動化牛胎児血清および0.01%gentamicinを含むIMDM培地(以下、細胞培養培地)を90μL添加した。続いて、終濃度の15倍濃度の被験化合物を含む細胞培養培地を1ウェルあたり10μL添加し、8日間から13日間、7.5%CO2、37℃の条件下で培養した。8日から13日後、コロニー数をThermo Scientific社製のCellinsight NXTを用いてカウントした。なお、直径が50μmより大きいコロニーをコロニーが形成されたと判断した。
【0214】
(3)データ解析
併用効果の解析は、各化合物の各処置濃度におけるCI値を算出することにより解析した。各CI値から中央値(Median CI)を算出し、CI<1が相乗効果、CI=1が相加効果、CI>1が拮抗作用を示したと判断した。
【0215】
[結果]
MEXF 394R Vemurafenib 4μMに対して化合物Aとベムラフェニブを併用したときのCI値を表8に、MEXF HT-144R Vemurafenib 6μMに対して化合物Aとベムラフェニブを併用したときのCI値を表9に示す。また、MEXF 394R Vemurafenib 4μMに対して化合物Aとダブラフェニブを併用したときのCI値を表10に示す。さらに、MEXF 394R Vemurafenib 4μMに対して化合物Aとトラメチニブを併用したときのCI値を表11に、MEXF HT-144R Vemurafenib 6μMに対して化合物Aとトラメチニブを併用したときのCI値を表12に示す。化合物Aとベムラフェニブ、ダブラフェニブまたはトラメチニブをそれぞれ併用した場合、いずれもMedian CIは1.0未満であり、相乗作用を示した。以上のことから、化合物Aとベムラフェニブ、ダブラフェニブまたはトラメチニブの併用は、強い抗腫瘍作用を発揮することが確認された。さらには、化合物A及びベムラフェニブ又はダブラフェニブ並びにトラメチニブの3剤併用が強い抗腫瘍作用を発揮する可能性も考えられる。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0216】
生物学的実施例7:EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子活性化変異陽性ヒト肺がん細胞株に対する化合物Aとエルロチニブ(Erlotinib)またはアファチニブ(Afatinib)併用による抗腫瘍作用の評価(in vitro)
[操作]
(1)細胞の培養
EGFR遺伝子のエクソン19が欠失したことでEGFRが異常活性化したヒト小細胞肺がん細胞株NCI―H1650(ATCCより入手)およびPC-3(JCRB細胞バンクより入手)を使用した。細胞は、10%非動化牛胎児血清、2mM L-glutamineを含むRPMI1640(以下、培地)を用いて5%CO2、37℃の条件下で継代培養した。
【0217】
(2)細胞生存性評価
培地に懸濁した細胞を、1ウェルあたり1.0×103cells/100μLの密度で96ウェルプレートに播種し、一晩5%CO2、37℃の条件下で培養した。各ウェルの培地を除去し、(1)各最終濃度の2倍濃度のエルロチニブ、アファチニブまたは媒体および(2)各最終濃度の2倍濃度の化合物Aまたは媒体を含む培地を、1ウェルあたり50μLずつ添加し、5%CO2、37℃の条件下で120時間培養した。培養終了後、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社製)を用いてキットの手順に従って細胞内在性のATPを定量することで、生存する細胞数を測定した。
【0218】
(3)データ解析
各化合物処置群における細胞増殖抑制率(%)を媒体処置群を100%とした相対値として算出した。算出した細胞増殖抑制率(%)を用いて、アドバンスィズ イン エンザイム レギュレーション(Advances in enzyme regulation)、第22巻、1984年、27-55ページに記載のCombination index(CI)値を算出した。各CI値から中央値(Median CI)を算出し、CI<1が相乗効果、CI=1が相加効果、CI>1が拮抗作用を示したと判断した。
【0219】
[結果]
NCI―H1650細胞を用いた細胞生存性を指標とした化合物Aとエルロチニブ併用による抗腫瘍作用の評価結果を表13に、PC-3細胞を用いた細胞生存性を指標とした化合物Aとエルロチニブ併用による抗腫瘍作用の評価結果を表14に示す。また、NCI-H1650細胞を用いた細胞生存性を指標とした化合物Aとアファチニブ併用による抗腫瘍作用の評価結果を表15に、PC-3細胞を用いた細胞生存性を指標とした化合物Aとアファチニブ併用による抗腫瘍作用の評価結果を表16に示す。化合物Aとエルロチニブまたはアファチニブをそれぞれ併用処置した場合、いずれの細胞においてもMedian CIは1未満であり、相乗効果を示した。以上のことから、化合物Aとエルロチニブまたはアファチニブの併用は強い抗腫瘍効果を発揮することが確認された。
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0220】
生物学的実施例8:マウス大腸がん細胞株MC38皮下担がんモデルにおける抗PD-1抗体投与後の腫瘍中AxlおよびMerリガンドの発現変化(in vivo)
抗マウスPD-1抗体4H2は北山ラベス株式会社にて調製したものを入手し使用した。C57/BL6マウス由来大腸がん細胞株MC38を同種同系マウス(C57/BL6、雌、6週齢(日本チャールスリバー社))の背部に皮下移植し、MC38皮下担がんマウスを作成した。腫瘍体積の平均が150mm3を示した日に、腫瘍体積に基づき群分けを実施し、群分け日をDay0とした。MC38皮下担がんマウスに対して、PBS(n=7)又は4H2(20mg/kg、n=7)をDay0に腹腔内投与し、Day3に腫瘍を採取した。MC38皮下担がんマウスに対して、PBS(n=7)又は4H2(20mg/kg、n=7)をDay0に腹腔内投与し、Day6に腫瘍を採取した。MC38皮下担がんマウスに対して、PBS(n=7)又は4H2(Day0に20mg/kg、Day6に10mg/kg、n=7)をDay0及びDay6に腹腔内投与し、Day10に腫瘍を採取した。採取した各腫瘍を凍結状態で破砕し、RNeasy Mini Kit(株式会社キアゲン)を用いてRNAを抽出した。RT-PCR法にて、化合物Aの標的であるAxlおよびMerのリガンドであるGas6およびPros1の遺伝子発現を測定した。結果はHPRTの遺伝子発現量を内部標準として補正し、PBS投与群に対する比で示した。その結果を図5および図6に示す。
【0221】
腫瘍中のGas6の遺伝子発現量は、Day6においてPBS投与群に対して4H2投与群で有意に高かった(3.56倍)。腫瘍中のPros1の遺伝子発現量は、Day10においてPBS投与群に対して4H2投与群で有意に高かった(1.58倍)。
【0222】
活性化した免疫細胞からGas6やPros1が放出され、AxlおよびMerを活性化することで免疫反応を不に制御するネガティブフィードバック機構が存在することが複数の論文に報告されている(例えば、セル(Cell)、第131巻、第6号、1124-1136ページ、2007年、ネイチャー・レビューズ・キャンサー(Nature Reviews Cancer)、第14巻、第12号、769-785頁、2014年)。これらの報告と上記の結果を合わせると、Axl阻害作用を有する化合物Aは、抗PD-1抗体と併用することにより、強い腫瘍免疫活性化作用を示すと考えられる。
【0223】
生物学的実施例9:CTLA-4 Blockade Bioassayを用いた抗CTLA-4抗体による免疫活性化作用におけるAxlおよびMerの機能評価(in vitro)
CTLA-4 Blockade Bioassay kitおよび抗ヒトCTLA-4抗体はプロメガ株式会社から購入した。本kitに含まれるエフェクター細胞(CTLA-4発現Jurkat細胞)および抗原提示細胞(Raji細胞)を培地でそれぞれ5倍及び10倍希釈した。希釈した両細胞を等量で混合し、PBS又は抗ヒトCTLA-4抗体(30μg/mL)を処置した(各n=3)。16時間インキュベート後、細胞を回収し、RNeasy Mini Kit(株式会社キアゲン)を用いて、RNAを抽出した。その後RT-PCR法にて、化合物Aの標的であるAxlおよびMerのリガンドであるGas6およびPros1の遺伝子発現を測定した。結果はGAPDHの遺伝子発現量を内部標準として補正し、PBS投与群に対する比で示した。その結果を図7に示す。
【0224】
抗CTLA-4抗体処置により、Gas6の発現量は有意に上昇した(7.22倍)。一方、Pros1の発現変動は認められなかった。生物学的実施例1に記載した文献報告、およびその結果を合わせて考察すると、Axl阻害作用を有する化合物Aは抗CTLA-4抗体と併用することで、強い腫瘍免疫活性化作用を示すと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明の組み合わせは、顕著な抗腫瘍効果を発揮するため、がん治療に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7