(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】電極付き巻線用コアおよびコイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20221012BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01F27/29 G
H01F27/29 123
H01F17/04 Z
(21)【出願番号】P 2020043235
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】和田 朋之
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004924(JP,A)
【文献】特開2019-216146(JP,A)
【文献】特開2019-050317(JP,A)
【文献】特開2011-253888(JP,A)
【文献】特開2015-103812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回されたワイヤが配置されるべき巻芯部ならびに前記巻芯部の軸線方向における互いに逆の第1端部、第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部、第2鍔部を有する、巻線用コアと、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々に設けられた複数の端子電極と、
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向く底面と、前記底面とは反対側の天面と、前記底面と前記天面とを連結しかつ前記巻芯部側に向く内側端面と、前記内側端面とは反対側の外側端面と、前記底面および前記天面間ならびに前記内側端面および前記外側端面間を連結しかつ互いに対向する第1側面および第2側面と、を有し、
前記端子電極は、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々の前記底面を覆う底面電極部と、前記底面電極部から前記外側端面の一部にまで延びる端面電極部とを有し、
前記第1側面および前記第2側面が対向する方向を幅方向としたとき、複数の前記端子電極は、前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々において、互いに間隔を隔てて前記幅方向に並んでおり、
前記端面電極部は端面下地電極層を有し、
前記端面下地電極層の前記幅方向の寸法は最大値で0.1mm未満である、
電極付き巻線用コア。
【請求項2】
前記端面下地電極層は、前記幅方向の寸法が最小値で0.06mmを超える、請求項1に記載の電極付き巻線用コア。
【請求項3】
前記端面下地電極層は金属膜を含む、請求項1または2に記載の電極付き巻線用コア。
【請求項4】
前記金属膜はスパッタリング膜を含む、請求項3に記載の電極付き巻線用コア。
【請求項5】
前記底面電極部は底面下地電極層を有し、前記端面下地電極層は前記底面下地電極層とは異なる材質からなる、請求項1ないし4のいずれかに記載の電極付き巻線用コア。
【請求項6】
前記底面下地電極層は、金属およびガラスを含む焼結体からなる、請求項5に記載の電極付き巻線用コア。
【請求項7】
前記端子電極は、前記底面下地電極層と前記端面下地電極層とを一連に覆うめっき膜を有する、請求項5または6に記載の電極付き巻線用コア。
【請求項8】
前記めっき膜の前記端面電極部における前記幅方向の寸法は最大値で0.1mm未満である、請求項7に記載の電極付き巻線用コア。
【請求項9】
前記端面電極部の前記幅方向の寸法は、前記底面電極部の前記幅方向の寸法より短い、請求項1ないし8のいずれかに記載の電極付き巻線用コア。
【請求項10】
前記端面下地電極層は、前記幅方向の両端を規定する第1辺および第2辺を有し、前記第1辺の形状と前記第2辺の形状とは互いに異なる、請求項1ないし9のいずれかに記載の電極付き巻線用コア。
【請求項11】
前記端面下地電極層の前記第1辺は、これと隣り合う前記端面下地電極層の前記第1辺に対して、向かい合うように位置しており、前記第1辺は、前記第2辺に比べて、直線性がより高い、請求項10に記載の電極付き巻線用コア。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の電極付き巻線用コアと、
各々が前記第1鍔部に設けられた複数の前記端子電極のいずれかと前記第2鍔部に設けられた複数の前記端子電極のいずれかとの間に接続されながら前記巻芯部のまわりに巻回された、複数本のワイヤと、
を備える、コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、巻線型のコイル部品において巻回されたワイヤを保持する電極付き巻線用コア、この電極付き巻線用コアを備えるコイル部品に関するもので、特に、電極付き巻線用コアに備える端子電極の形態に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明にとって興味ある技術が、たとえば特開2017-228766号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1に記載される技術は、巻線型のコイル部品に関するもので、コイル部品は、ドラム状のコアと、コアの巻芯部に巻回されたワイヤを有する。
【0003】
コアは、巻芯部と、巻芯部の互いに逆の第1端部、第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部、第2鍔部とを有する。
【0004】
第1鍔部および第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向く底面と、底面とは反対側の天面と、底面と天面とを連結しかつ巻芯部側に向く内側端面と、内側端面とは反対側の外側端面と、底面および天面間ならびに内側端面および外側端面間を連結しかつ互いに対向する第1側面および第2側面と、を有する。
【0005】
第1側面および第2側面が対向する方向を幅方向としたとき、第1鍔部には、2つの第1端子電極が互いに間隔を隔てて幅方向に並んで設けられ、第2鍔部には、2つの第2端子電極が互いに間隔を隔てて幅方向に並んで設けられる。
【0006】
上述の第1端子電極および第2端子電極の各々は、第1鍔部および第2鍔部の各々の底面を覆う底面電極部と、底面電極部から外側端面の一部にまで延びる端面電極部とを有する。これら端子電極は、金属電極を下地として、その上に導電性樹脂電極が形成された構造を有している。金属電極は、Ag、Cu、Niなどの金属を含み、これらの金属を含む導電性ペーストを焼付け処理することにより形成される。特許文献1の段落0034には、金属電極は、シート状金属部材を接着して形成されても、その他の成膜手段、たとえばスパッタリングなどにより形成されてもよいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車載用の巻線型のコイル部品などでは、高い信頼性や実装はんだの付着確認のため、実装はんだがフィレットを形成できるようにすることが要求されている。そのため、前述したように、端子電極は、底面電極部に加えて、実装時にフィレットの形成に寄与する部分である端面電極部を備えていなければならない。
【0009】
他方、コモンモードチョークコイルやトランスなどの多端子品としてのコイル部品では、端子電極が端面電極部を備える場合、鍔部の外側端面において、互いに間隔を隔てて複数の端面電極部が並ぶことになる。この場合、複数の端面電極部の各々の間で、所定の間隔が確保されなければならない。そのため、各端面電極部の幅方向の寸法をできるだけ狭くすることが望まれる。
【0010】
量産性の観点から、鍔部の外側端面に、複数の端面電極部を並べて形成する際には、端面電極部の形成位置が開口となるマスクを用意し、当該マスクを外側端面に配置し、マスク越しにスパッタリングや印刷を行ない、外側端面の所定の位置に端面電極部、より正確には、端面電極部の下地となる端面下地電極層を形成するという方法が採られるであろう。
【0011】
ここで、通常、上記マスクは金属板から構成され、開口は、金属板をエッチングすることによって形成される。しかし、このエッチングによって形成可能な開口の最小幅は、金属板の板厚程度が限界であることが知られている。巻線型のコイル部品の端面下地電極層の形成に用いられるマスクの実用的な板厚は最小0.1mm程度が限界であるため、開口の最小幅も0.1mm程度であり、したがって、端面下地電極層について、その幅方向の寸法を0.1mm未満にすることは困難である。実際、端面下地電極層の幅方向の寸法が0.1mm未満とされた製品は見当たらない。
【0012】
そこで、この発明の目的は、上記の困難を克服することによって可能とされた、幅方向の寸法の狭い端面電極部を備える、電極付き巻線用コアおよびこれを備えるコイル部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、巻回されたワイヤが配置されるべき巻芯部ならびに巻芯部の軸線方向における互いに逆の第1端部、第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部、第2鍔部を有する、巻線用コアと、第1鍔部および第2鍔部の各々に設けられた複数の端子電極と、を備える、電極付き巻線用コアにまず向けられる。
【0014】
第1鍔部および第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向く底面と、底面とは反対側の天面と、底面と天面とを連結しかつ巻芯部側に向く内側端面と、内側端面とは反対側の外側端面と、底面および天面間ならびに内側端面および外側端面間を連結しかつ互いに対向する第1側面および第2側面と、を有する。
【0015】
端子電極は、第1鍔部および第2鍔部の各々の底面を覆う底面電極部と、底面電極部から外側端面の一部にまで延びる端面電極部とを有する。
【0016】
第1側面および第2側面が対向する方向を幅方向としたとき、複数の端子電極は、第1鍔部および第2鍔部の各々において、互いに間隔を隔てて幅方向に並んでいる。
【0017】
この発明では、端面電極部は端面下地電極層を有し、この端面下地電極層の幅方向の寸法は最大値で0.1mm未満であることを特徴としている。
【0018】
この発明は、コイル部品にも向けられる。この発明に係るコイル部品は、上述した電極付き巻線用コアと、第1鍔部に設けられた複数の端子電極のいずれかと第2鍔部に設けられた複数の端子電極のいずれかとの間に接続されながら巻芯部のまわりに巻回された、複数本のワイヤと、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、端面下地電極層の幅方向の寸法は最大値で0.1mm未満と短いので、これを下地として形成される端面電極部についても、必然的に幅方向の寸法を短くすることができる。
【0020】
したがって、巻線用コアの幅方向の寸法を短くすることができ、この巻線用コアを備えるコイル部品も小型化することができる。
【0021】
また、巻線用コアについて同じ寸法を維持するとすれば、同じ寸法を維持しながらも、複数の端面電極部間の間隔を広く取ることができるので、実装信頼性を向上させることができる。あるいは、巻線用コアについて同じ寸法を維持しながら、より多くの端面電極部を鍔部の外側端面に配置することができる。
【0022】
また、端面電極部の幅方向の寸法を短くできるので、端面電極部の配置位置の自由度が向上ずる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の一実施形態によるコイル部品1の外観を示す斜視図であり、実装時において実装基板側に向けられる面を上方にして示している。
【
図2】
図1に示したコイル部品1に備える電極付き巻線用コア2を示す端面図であり、
図1とは上下逆に示している。
【
図3】
図2に示した電極付き巻線用コア2を示す端面図であり、端子電極15および17に備えるめっき膜27を形成する前の状態を示している。
【
図4】
図3に示した端面下地電極層24を形成する工程を説明するためのもので、
図3の線IV-IVに沿う断面に相当する断面を示す図である。
【
図6】
図4に示したマスク31の貫通通路32を
図4の下方から見て示した図である。
【
図7】
図4に相当する図であって、変形例としてのマスク31aを示す。
【
図8】変形例としての電極付き巻線用コア2aの一部を示す、
図2の線VIII-VIIIに沿う断面に相当する断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照して、この発明の一実施形態によるコイル部品1について説明する。
図1に示したコイル部品1は、実装時において実装基板側に向けられる面を上方に向けている。
【0025】
図1に示すように、コイル部品1は、巻線用コア2を備えている。巻線用コア2は、代表的にはフェライトから構成されるが、その他、たとえばアルミナなどの焼結体、金属磁性粉や絶縁フィラーを含有する樹脂などの成形体等から構成されてもよい。巻線用コア2は、巻芯部3ならびに巻芯部3の軸線方向(長さ方向)Lにおける互いに逆の第1端部、第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部5、第2鍔部6を有する。巻線用コア2は、軸線方向Lにおいて、たとえば2.0~4.5mm程度の寸法を有しているが、当該寸法については特に制限はない。
【0026】
巻線用コア2に備える第1鍔部5および第2鍔部6は、互いに対称な形状を有している。したがって、第1鍔部5について詳細に説明し、第2鍔部6については詳細な説明を省略する。
【0027】
第1鍔部5は、実装時において実装基板側に向く底面7と、底面7とは反対側の天面8と、底面7と天面8とを連結しかつ巻芯部3側に向く内側端面9と、内側端面9とは反対側の外側端面10と、底面7および天面8間ならびに内側端面9および外側端面10間を連結しかつ互いに対向する第1側面11および第2側面12と、を有する。また、底面7の中央部には、凹部13が設けられる。
【0028】
第1側面11および第2側面12が対向する方向を幅方向Wとし、底面7および天面8が対向する方向を高さ方向Hとしたとき、外側端面10は、たとえば、幅方向Wの寸法が1.2~3.2mm程度であり、高さ方向Hの寸法が1.0~1.7mm程度である。ただし、これらの寸法については特に制限はない。
【0029】
上述した第1鍔部5における底面、天面、内側端面、外側端面、第1側面、第2側面および凹部をそれぞれ指すために用いた参照符号7、8、9、10、11、12および13は、必要に応じて、第2鍔部6における対応の部分をそれぞれ指すためにも用いることがある。
【0030】
コイル部品1は、また、第1鍔部5および第2鍔部6の各々の天面8間を連結する天板14を備えていてもよい。天板14は、第1鍔部5および第2鍔部6の各々の天面8に接着剤を介して接合される。巻線用コア2および天板14が、ともに、フェライト等の磁性体またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂といった磁性体からなるとき、天板14は、巻線用コア2と協働して、閉磁路を構成する。天板14に代えて、樹脂または必要に応じて磁性材料粉末を含む樹脂によって、第1鍔部5および第2鍔部6の各々の天面8間を連結するようにコーティングしてもよい。
【0031】
図1に示すように、コイル部品1は、第1鍔部5に設けられた複数の端子電極、たとえば第1端子電極15および第3端子電極17と、第2鍔部6に設けられた複数の端子電極、たとえば第2端子電極16および第4端子電極18と、を備える。第1端子電極15および第3端子電極17は、第1鍔部5において、凹部13を挟みながら互いに間隔を隔てて幅方向Wに並んでいる。第2端子電極16および第4端子電極18は、第2鍔部6において、凹部13を挟みながら互いに間隔を隔てて幅方向Wに並んでいる。
【0032】
さらに、コイル部品1は、第1端子電極15と第2端子電極16との間に接続されながら巻芯部3のまわりに巻回された第1ワイヤ19と、第3端子電極17と第4端子電極18との間に接続されながら巻芯部3のまわりに巻回された第2ワイヤ20と、を備える。なお、
図1において、第1ワイヤ19および第2ワイヤ20は、各々の両端部のみが図示され、巻芯部3のまわりに巻回される部分の図示が省略されている。
【0033】
次に、
図1に加えて、
図2および
図3をも参照して、端子電極15~18の詳細な構造について説明する。なお、端子電極15~18の各々の形態および断面構造は実質的に共通しているので、以下には、
図1ないし
図3において比較的良く示されている第1端子電極15について詳細に説明し、他の端子電極16~18については詳細な説明を省略する。
【0034】
第1端子電極15は、第1鍔部5の底面7を覆う底面電極部21と、底面電極部21から第1鍔部5の外側端面10の一部にまで延びる端面電極部22と、を有する。
【0035】
底面電極部21は、
図3に示すように、下地となる底面下地電極層23を有する。底面下地電極層23は、たとえば、Agのような金属およびガラス成分としてのSiを含む焼結体からなる。たとえばAgおよびSiを含む底面下地電極層23は、導電成分としてのAg粉末を含むとともに、ガラス成分としてのSiを含む導電性ペーストを用意し、これをディップ法により鍔部5の底面7に付与し、次いで焼き付けることによって形成される。底面下地電極層23の厚みは3~15μm程度である。底面下地電極層23は、底面7上のみならず、底面7から底面7にそれぞれ隣接する外側端面10、内側端面9および第1側面11の各一部、ならびに第1側面11と平行な凹部13を規定する立ち上がり面の一部にまで延びるように形成されてもよい。
【0036】
端面電極部22は、
図3に示すように、下地となる端面下地電極層24を有する。端面下地電極層24は、上述した底面下地電極層23とは異なる材質からなる。たとえば、端面下地電極層24はガラス成分としてのSiを含まない金属膜からなる。この金属膜は、たとえば、NiおよびCrを含むスパッタリング膜をもって構成される。このように、端面下地電極層24がSiを含まない金属膜から構成されると、端面下地電極層24において非導電性成分が減るので、良好な導電性を確保しながら、端面下地電極層24を薄く形成することが可能となり、コイル部品1の外形寸法を低減することができる。なお、端面下地電極層24の形成方法については、
図4ないし
図6を参照して後述する。
【0037】
図3を参照して、端面下地電極層24は、その幅方向Wの両端を規定する第1辺25および第2辺26を有している。電極付き巻線用コア2において、端面下地電極層24の第1辺25および第2辺26間の間隔、すなわち、幅方向Wの寸法w1は最大値で0.1mm未満とされることを特徴としている。これにより、端面下地電極層24を下地として形成される端面電極部22についても、必然的に幅方向の寸法w2(
図2参照)を短くすることができるので、巻線用コア2の幅方向の寸法を短くすることができ、この巻線用コア2を備えるコイル部品1についても小型化することができる。また、巻線用コア2について同じ寸法を維持するとすれば、同じ寸法を維持しながらも、複数の端面電極部22間の間隔を広く取ることができるので、実装信頼性を向上させることができる。
【0038】
端面下地電極層24は、上記幅方向Wの寸法w1が最小値で0.06mmを超えることが好ましい。これにより、コイル部品1の実装時において、端面下地電極層24を下地として形成される端面電極部22に沿って、はんだフィレットをより確実に形成することができるばかりでなく、後述する理由により、電極付き巻線用コア2の製造効率および歩留まりを向上させることができる。
【0039】
図1および
図2に示すように、第1端子電極15は、さらに、底面下地電極層23と端面下地電極層24とを一連に覆うめっき膜27を有する。めっき膜27は、たとえば、下層側からCuめっき層、Niめっき層およびSnめっき層から構成される。めっき膜27の形成に伴うめっき成長のため、めっき膜27は、
図2に示すように、端面下地電極層24より広い面積をもって形成されるが、めっき膜27の端面電極部22における幅方向Wの寸法w2についても最大値で0.1mm未満であることが好ましい。ただし、上述のとおり、めっき成長を考慮すると、めっき膜27の端面電極部22における幅方向Wの寸法w2は、端面下地電極層24の幅方向Wの寸法w1より、0.05~0.15mm程度大きくてもよい。
【0040】
また、この実施形態では、端面電極部22の幅方向Wの寸法w2は、底面電極部21の幅方向Wの寸法w3より短いという特徴を有している。これによれば、コイル部品1の実装時の固着強度を実質的に低下させることなく、端面電極部22の幅方向Wの寸法w2を狭くすることができる。
【0041】
以上、第1端子電極15について詳細に説明したが、他の端子電極16~18についても実質的に同様の形態および断面構造を有している。なお、第1端子電極15における底面電極部、端面電極部、底面下地電極層、端面下地電極層、第1辺、第2辺およびめっき、をそれぞれ指すために用いた参照符号21、22、23、24、25、26および27は、必要に応じて、他の端子電極16~18における対応の部分をそれぞれ指すためにも用いることがある。
【0042】
次に、端子電極15~18、特に、端面下地電極層24の好ましい形成方法について
図4ないし
図6を参照して説明する。
図4には、第1鍔部5側に設けられる第1端子電極15および第3端子電極17の各々における端面下地電極層24が図示され、
図5には、第1端子電極15における底面下地電極層23および端面下地電極層24が図示されている。
【0043】
好ましくは、端面下地電極層24を形成するに先立って、底面下地電極層23が形成される。このような工程順が採用されるのは、底面下地電極層23は、前述したように、金属およびガラスを含む焼結体からなり、その形成過程において焼付け工程を伴うからである。すなわち、たとえばスパッタリング膜からなる端面下地電極層24が、底面下地電極層23を形成するための焼付け工程での高温にさらされると、不所望な酸化、劣化などがもたらされることがあるからである。
【0044】
次に、端面下地電極層24が形成される。端面下地電極層24を構成する金属膜は、たとえば、NiおよびCrを含むスパッタリング膜からなる。スパッタリング膜の厚みは、たとえば0.1~1.4μm程度である。端面下地電極層24を外側端面10の特定の領域に特定のパターンをもって形成するため、スパッタリング工程においてマスク31が用いられる。
【0045】
マスク31は、たとえば第1鍔部5の外側端面10に沿って配置され、端面下地電極層24のための金属材料を通過させる貫通通路32を厚み方向に形成している。貫通通路32は、
図6において、網掛けを施した領域に相当する。
【0046】
より具体的には、マスク31は、積み重ねられた複数のマスク板、たとえば第1マスク板33、第2マスク板34、第3マスク板35および第4マスク板36を備える。なお、マスク31が備えるべき複数のマスク板としては、第1マスク板33および第2マスク板34が特に重要な役割を果たし、他のマスク板35および36については、その数を必要に応じて任意に増減することができる。
【0047】
第1マスク板33、第2マスク板34、第3マスク板35および第4マスク板36は、それぞれ、上記貫通通路32の一部をそれぞれなす第1開口37、第2開口38、第3開口39および第4開口40を有している。
【0048】
第1鍔部5の外側端面10側に最も近い第1マスク板33の第1開口37および次に近い第2マスク板34の第2開口38に注目する。
【0049】
まず、第1マスク板33の第1開口37を規定する周縁部は、端面下地電極層24の第1辺25および第2辺26とそれぞれ平行またはほぼ平行に延びかつ互いに対向する第1端縁41および第2端縁42を有している。
【0050】
第2マスク板34の第2開口38を規定する周縁部は、端面下地電極層24の第1辺25および第2辺26とそれぞれ平行またはほぼ平行に延びかつ互いに対向する第3端縁43および第4端縁44を有している。
【0051】
第1マスク板33および第2マスク板34は、これらの主面に対して直交する方向に透視したとき、
図6によく示されているように、第1開口37の第1端縁41および第2端縁42の間に第2開口38の第4端縁44が位置し、かつ第2開口38の第3端縁43および第4端縁44の間に第1開口37の第1端縁41が位置するように位置決めされる。
【0052】
ここで、第1マスク板33と第2マスク板34との間における幅方向Wでの位置調整によって、第1開口37の第1端縁41と第2開口38の第4端縁44との間隔w4が0.1mm未満、たとえば0.075~0.08mmとされることができる。
【0053】
なお、
図6に示されるように、第1ないし第4開口37~40は、断面形状が長円形であるが、これは開口形成のために適用されるエッチングに由来するものにすぎず、たとえば長方形などの他の任意の形状を取り得る。
【0054】
マスク板33~36の各々の実用的な板厚は、前述したように、最小0.1mm程度が限界である。したがって、開口37~40の各々の幅方向Wの寸法、すなわち、第1開口37で言えば、第1端縁41と第2端縁42との間隔の最小幅も0.1mm程度が限界である。
【0055】
これに対して、上述したように、第1マスク板33と第2マスク板34とを重ね合わせることにより、貫通通路32における幅方向Wの最小寸法が上述の間隔w4によって決定されるので、当該最小寸法を0.1mm未満、たとえば0.075~0.08mmにまで容易に絞ることができる。
【0056】
マスク同士を貼合せる際の精度は、一般的に±0.03mm程度であり、最も悪い方向にばらついた場合(貫通通路32が塞がる方向にマスクがずれた場合)を考えると、貫通通路32は、最大で0.06mm、設計値よりも小さくなる。そこで、端面下地電極層24の幅方向Wの寸法w1が、前述したように、最小値で0.06mmを超えるようにすることにより、貫通通路32が塞がれることを低減でき、製造効率(歩留まり)を向上させることができる。
【0057】
なお、上述のように、第1マスク板33と第2マスク板34とを重ね合わせた状態で使用した場合、少なくとも第1開口37を通過する粒子が第1開口37の幅方向Wに多少広がることは避けられない。そのため、端面下地電極層24のパターンの周囲において、端面下地電極層24から遠ざかるに連れて粒子の分布密度が徐々に低くなる、いわゆる「ぼやけ」が生じやすい。
【0058】
特に、「ぼやけ」は、
図4の左側に示した第1端子電極15における端面下地電極層24について言えば、端面下地電極層24の左側の辺、すなわち第2辺26側において生じやすい。なぜなら、第2開口38を通過した粒子は、すべてが矢印47方向には直進せず、一部については第1開口37の幅方向Wに広がるためである。
【0059】
その結果、
図3に示すように、端面下地電極層24は、第1辺25の形状と第2辺26の形状とが互いに異なり、より具体的には、第1辺25は、第2辺26に比べて、直線性がより高い形状となる。このことは、端面下地電極層24を下地として形成される端面電極部22の外周縁形状にも影響を及ぼすことになる。したがって、このような手段を用いて、端面電極部22の外周縁形状を変更することにより、実装時のはんだの付着態様を変更でき、よって、実装基板へのコイル部品1の固着強度の調整を可能にする。
【0060】
特に、
図4に示した第1開口37および第2開口38の配置によれば、端面下地電極層24の直線性がより高い第1辺25は、これと隣り合う端面下地電極層24の直線性がより高い第1辺25に対して、向かい合うように位置する状態が得られる。したがって、第1端子電極15および第3端子電極17において、各々の端面電極部22間の間隔を安定して確保することができる。
【0061】
なお、端面下地電極層24の高さ方向Hの寸法は、特に、
図6に示した第1開口37および第2開口38の高さ方向Hでの寸法によって決まるが、たとえば、最大値で0.3~0.4mm程度とされる。しかし、この寸法については、制限はなく、たとえば、最大値で0.1mm未満であってもよい。
【0062】
また、端面下地電極層24は、その一部が底面下地電極層23と重なっていることが好ましい。端面下地電極層24と底面下地電極層23との間での接続信頼性を高めるためである。しかしながら、めっき膜27が端面下地電極層24と底面下地電極層23とを一連に覆っているため、このような重なりは必須ではない。たとえば、端面下地電極層24の端縁と底面下地電極層23の端縁とが突合せ状態となっていても、端面下地電極層24の端縁と底面下地電極層23の端縁とがわずかに離れていてもよい。
【0063】
以上、第1鍔部5側の第1端子電極15および第3端子電極17について説明したが、第2鍔部6側の第2端子電極16および第4端子電極18についても同様の説明が当てはまる。
【0064】
図7は、マスクの変形例を示す、
図4に相当する図である。
図7において、
図4に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0065】
図7に示したマスク31aは、第1マスク板33における隣り合う2つの第1開口37の配置ピッチと、第2マスク板34における隣り合う2つの第2開口38の配置ピッチと、が互いに等しく、第3マスク板35における隣り合う2つの第3開口39の配置ピッチと、第4マスク板36における隣り合う2つの第4開口40の配置ピッチと、が互いに等しいことを特徴としている。言い換えると、第1マスク板33と第2マスク板34とは互いに同じ設計のものであり、第3マスク板35と第4マスク板36とは互いに同じ設計のものである。したがって、第1マスク板33および第2マスク板34として共通のマスク板を用いることができ、また、第3マスク板35および第4マスク板36として共通のマスク板を用いることができるので、マスク31aのコストを低減することができる。
【0066】
図7に示したマスク31aを用いた場合、右側の第3端子電極17のための端面下地電極層24については、
図4に示した右側の端面下地電極層24の同様の形態のものが得られるが、左側の第1端子電極15のための端面下地電極層24については、直線性のより高い第1辺25が左側に現れる。
【0067】
図8には、変形例としての電極付き巻線用コア2aの一部が示されている。
図8において、
図1ないし
図5に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0068】
図8に示された第1鍔部5について説明すると、外側端面10には、第1端子電極15および第3端子電極17の各々のための端面電極部22が形成されるべき領域に、高さ方向H(
図1参照)に延びる凹溝49が設けられる。したがって、端面電極部22は凹溝49内に収まるようにされる。この構成によれば、端面電極部22の不所望な領域へのはみ出しが見分けやすいという利点を奏するとともに、コイル部品を製造する際の巻線機や、取り扱う際のマウンタ等の設備によって端面電極部22がこすられることを防止できるという利点を奏する。
【0069】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の実施形態が可能である。
【0070】
たとえば、一方の鍔部に設けられる端子電極の数は、図示した実施形態のように、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0071】
また、図示したコイル部品1は、2本のワイヤ19および20を備え、たとえばコモンモードチョークコイルを構成するものであったが、コモンモードチョークコイルに限らず、トランスやバランなどを構成するものであってもよい。したがって、ワイヤの数についても、コイル部品の機能に応じて変更され、それに応じて、上述のように、各鍔部に設けられる端子電極の数も変更され得る。
【0072】
また、この発明に係る電極付き巻線用コアおよびコイル部品を構成するにあたり、この明細書に記載された異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 コイル部品
2,2a 巻線用コア
3 巻芯部
5,6 鍔部
7 底面
8 天面
9 内側端面
10 外側端面
11,12 側面
15~18 端子電極
19,20 ワイヤ
21 底面電極部
22 端面電極部
23 底面下地電極層
24 端面下地電極層
25 第1辺
26 第2辺
27 めっき膜
L 軸線方向
W 幅方向
w1 端面下地電極層の幅方向Wの寸法