(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】バスバー、及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 4/34 20060101AFI20221012BHJP
H01R 4/38 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01R4/34
H01R4/38 C
(21)【出願番号】P 2021508698
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039260
(87)【国際公開番号】W WO2020194804
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019064325
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 将哉
(72)【発明者】
【氏名】大村 卓也
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3104579(JP,U)
【文献】特開2012-049504(JP,A)
【文献】実開平06-064362(JP,U)
【文献】特開2018-064428(JP,A)
【文献】特開2012-089788(JP,A)
【文献】特開平08-315890(JP,A)
【文献】特開2001-196046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/34
H01R 4/38
F16B 23/00
F16B 35/04
H01M 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の金属材が折り曲げられて形成されたバスバーであって、
前記バスバーと電気的接続を図る被接続部材を配置するための板状の本体部と、
前記本体部の幅方向側部に設けられた立設部と、を備え、
前記本体部は、ボルトの軸部が挿通される貫通孔を有し、
前記立設部は、前記ボルトの頭部が回転方向において当接可能な内側面を有
し、
前記立設部は、第1及び第2立設部を有し、
前記第1及び第2立設部は、前記ボルトの前記頭部が回転方向において当接可能な第1及び第2内側面をそれぞれ有し、
前記第1及び第2立設部は、前記貫通孔を挟んで対向し、前記本体部の側方視で前記本体部の長さ方向において前記第1及び第2立設部の少なくとも一部が重なり合うように配置されており、
前記本体部は、前記第1立設部に隣接する第1切り欠きと、前記第2立設部に隣接する第2切り欠きとを有し、
前記第1切り欠きと前記第2切り欠きとは、前記本体部の側方視で前記長さ方向において重なり合わないように該長さ方向の異なる位置に設けられているバスバー。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバーであって、
前記本体部は、前記立設部に隣接する凹部を有するバスバー。
【請求項3】
請求項
1または請求項2に記載のバスバーであって、
前記ボルトの前記頭部は、四角柱状をなすものであり、
前記第1及び第2内側面は、四角柱状の前記頭部のうち、対角に位置する2つの角部が共に当接可能に設定されているバスバー。
【請求項4】
第1電線と、第2電線と、請求項1から請求項
3の何れか1項に記載のバスバーとを備え、
前記第1電線は、前記バスバーを介して前記第2電線と電気的に接続されているワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バスバー、及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バスバーと端子の固定構造が示されている。この固定構造では、バスバーは、電池パックにおける複数の電池を接続するために電池の極柱側に配置されており、端子は電池の電圧を検出するためにバスバーの表面に配置されている。
【0003】
このバスバーと端子の固定構造では、バスバーの貫通孔に電池の極柱が挿通される、端子の貫通孔に電池の極柱が挿通される。そして、電池の極柱にナットが締結されてバスバーに端子が固定されると共にバスバーと端子とが電気的に接続される。
【0004】
特許文献1には、更にナットの締結時に端子の回り止めについても示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の上記固定構造では、バスバーは、回転不能とされた電池の極柱にナットによって締付けられる。本願発明者は、バスバーを、回転可能なボルトに固定するための固定構造を研究した。本願発明者は、ナットの締付け時に、バスバーを支持又は収容する合成樹脂製の筐体に、ボルトの多角形頭部と当接する回転防止壁部を設けて、ボルトの回転を抑制する参考例を検討した。しかしながら、この参考例では、ナットの締付けによりボルトの多角形頭部の角部が筐体の回転防止壁部を削ったり変形させたりして、ボルトがナットと共回りすることに本願発明者は気づいた。
【0007】
そこで、ボルトとナットとの共回りを抑制することができるバスバー、及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様のバスバーは、板状の金属材が折り曲げられて形成されたバスバーであって、前記バスバーと電気的接続を図る被接続部材を配置するための板状の本体部と、前記本体部の幅方向側部に設けられた立設部とを備え、前記本体部は、ボルトの軸部が挿通される貫通孔を有し、前記立設部は、前記ボルトの頭部が回転方向において当接可能な内側面を有する。
【0009】
本開示の一態様のワイヤハーネスは、第1電線と、第2電線と、バスバーとを備え、前記第1電線は、前記バスバーを介して前記第2電線と電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ボルトとナットとの共回りを抑制することができるバスバー、及びワイヤハーネスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるワイヤハーネスの代表的な構成例を説明する概略構成図である。
【
図2】
図2Aは、ボルトとナットによるバスバーの締結構造の斜視図であり、
図2Bはボルトの斜視図である。
【
図4】
図4は、曲げパンチを用いるバスバーの立設部の形成工程を示す模式図である。
【
図6】
図6は、バスバーと電線との電気的および機械的接続を説明するためのワイヤハーネスの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
[1]本開示の一態様のバスバーは、板状の金属材が折り曲げられて形成されたバスバーであって、前記バスバーと電気的接続を図る被接続部材を配置するための板状の本体部と、前記本体部の幅方向側部に設けられた立設部とを備え、前記本体部は、ボルトの軸部が挿通される貫通孔を有し、前記立設部は、前記ボルトの頭部が回転方向において当接可能な内側面を有する。
【0013】
バスバーの本体部に被接続部材を配置して固定及び電気的接続を図る際、ボルトの軸部に対するナットの締結時にボルトの頭部がナットと共回りしようとする。しかしながら、ボルトの頭部が回転方向においてバスバーの立設部の内側面に当接することでボルトのそれ以上の回転が規制されるため、ボルトとナットとの共回りを抑制することが可能となる。また、ボルトを回転規制する立設部は金属製のバスバーの一部で形成されて剛性も高いため、樹脂製の部材で回転規制を図る態様よりも、より確実にボルトの回転規制を行うことが可能である。
【0014】
[2]前記本体部は、前記立設部に隣接する凹部を有することが好ましい。立設部に隣接する凹部はストライキング加工により生じる凹部であり、本体部に凹部が設けられる、言い換えると、ストライキング加工にて本体部に対し立設部が折り曲げられることで、スプリングバックによって立設部の曲げ角度が所望または設計角度の例えば90度からずれてしまう懸念を解消することができるからである。また、ストライキング加工にて曲げられた本体部と立設部との間の内側角部に曲面部分が形成されないか、若しくは曲面部分が形成されてもその曲面部分は極めて小さく凹部内に収まるため、ボルトの頭部が内側角部の曲面部分を乗り上げることを未然に防止できる。また、回転規制を図る立設部を内側角部の曲面部分を気にすることなくボルトの頭部に近接して設けることも可能なため、ボルトの回転規制をより確実に行うことができるからである。
【0015】
[3]前記立設部は、第1及び第2立設部を有し、前記第1及び第2立設部は、前記ボルトの頭部が回転方向において当接可能な第1及び第2内側面をそれぞれ有すると良い。ボルトの頭部が第1及び第2内側面に共に当接、特に同時に当接させることにより、ボルトの回転規制をより確実とし、ボルトとナットとの共回りをより確実に抑制することができるからである。なお、第1及び第2内側面は、互いに平行な面、互いに交差する面となる配置が考えられる。
【0016】
[4]前記第1及び第2立設部は、前記貫通孔を挟んで対向し、前記本体部の側方視で前記本体部の長さ方向において少なくとも一部が重なり合うように配置されていると良い。第1及び第2立設部が貫通孔を挟んで対向、すなわちボルトの頭部を挟んで対向し、バスバーの本体部の長さ方向において少なくとも一部が重なり合う配置としているため、ボルトの頭部が頭部の両側に位置する第1及び第2立設部にてより確実に回転規制できるからである。
【0017】
[5]前記ボルトの頭部は、四角柱状をなすものであり、前記第1及び第2内側面は、四角柱状の前記頭部のうち、対角に位置する2つの角部が共に当接可能に設定されていると良い。ボルトの頭部の対角に位置する2つの角部が第1及び第2内側面に共に当接することにより、ナット締結時にボルトに作用する回転力をボルトの頭部の対角の2箇所で均等に受け止めることができるからである。
【0018】
[6]前記本体部は、前記第1立設部に隣接する第1切り欠きと、前記第2立設部に隣接する第2切り欠きとを有し、前記第1切り欠きと前記第2切り欠きとは、前記本体部の側方視で前記長さ方向において重なり合わないように該長さ方向の異なる位置に設けられていると良い。本開示の一態様のバスバーとは異なり、例えば、第1切り欠きと第2切り欠きとが、本体部の長さ方向において重なり合うように該長さ方向の同じ位置に設けられていると、切り欠きが設けられている部分において、本体部の長さ方向に直交する導体断面積(バスバーの本体部の断面積)が減少する。すると、導体断面積が減少した部分の電気抵抗が高くなり、バスバーの発熱量が増加する。この点、本開示の一態様のバスバーでは、第1切り欠きと第2切り欠きとが、本体部の長さ方向において重なり合わないように該長さ方向の異なる位置に設けられている。よって、第1切り欠きと第2切り欠きとが、本体部の長さ方向の同じ位置に設けられている場合に比べて、切り欠きが設けられている部分の導体断面積を増加させることができる。すなわち、本開示の一態様のバスバーによれば、第1切り欠きと第2切り欠きとが、本体部の長さ方向の同じ位置に設けられている場合に比べて、切り欠きが設けられている部分において、バスバーの本体部の電気抵抗が高くなることを抑制し、バスバーの本体部において発熱量が増加することを抑制することができるからである。
【0019】
[7]本開示の一態様のワイヤハーネスは、第1電線と、第2電線と、バスバーとを備え、前記第1電線は、前記バスバーを介して前記第2電線と電気的に接続されている。
上記バスバーが用いられることで、ボルトとナットとの共回りを抑制することができるワイヤハーネスの提供が可能となる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のバスバー、及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0021】
図1に示すワイヤハーネスWは、2個又は3個以上の電気機器を電気的に接続する。ワイヤハーネスWは、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vの前部に設置されたインバータM1と、そのインバータM1よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリM2とを電気的に接続する。ワイヤハーネスWは、例えば、車両Vの床下等を通るように配索される。インバータM1は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータと接続される。インバータM1は、高圧バッテリM2の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリM2は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0022】
ワイヤハーネスWは、導電路1と、導電路1の両端部に取り付けられたコネクタ2と、導電路1を包囲する保護管3とを有している。導電路1は、例えば、車両Vの前後方向に延びるように長尺状に形成されている。導電路1は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線により形成されることができる。導電路1は、例えば、各々が導電路1の全長よりも短い複数の電線W1、W2(
図6参照。分割電線と呼称することがある)を、後述するバスバー10であり得る中継接続部材を介して電気的に接続することによって構成される。
図1の例では、導電路1の一端部はコネクタ2を介してインバータM1と接続され、導電路1の他端部はコネクタ2を介して高圧バッテリM2と接続されている。導電路1の数及びコネクタ2の数は、例えば、ワイヤハーネスWによって電気的に接続される電気機器の種類や数に応じて予め決められる。
【0023】
保護管3は、導電路1の長さ形状に応じた形状を有することができる。保護管3は、導電路1の全体をまたは所定の長さ範囲のみを包囲するように構成されてよい。或る例では、導電路1は、複数の導電路1の束であってよく、この場合、保護管3は複数の導電路1の束を一括して包囲するように構成されてよく、複数の導電路1の束のうちの選択された一つ以上の導電路を包囲するように構成されてもよい。別の例では、導電路1は、幹線と一つ以上の分岐線とを含む分岐導電路であってよく、この場合、分岐導電路は、幹線のまたは一つ以上の分岐線の一端である一つ以上の導電性基端と、幹線のまたは一つ以上の分岐線の他端である一つ以上の導電性末端とを有することができる。保護管3は、幹線のみ、分岐線のみ、または、幹線及び分岐線を包囲するように構成されてよい。
【0024】
図2Aに示す例では、保護管3は、ケース3aとカバー3bとを有している。ケース3aとカバー3bは、合成樹脂の個別部品であってよい。保護管3は、例えば、飛翔物や水滴から導電路1を保護する。保護管3としては、例えば、金属製や樹脂製のパイプ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。
【0025】
図2A~
図6に示す例では、バスバー10は、導電路1の長さ方向の一部または全部を構成する2本の分割電線W1、W2を電気的に接続するためのものである。
図6に示すように、バスバー10は、第1電線W1の導電性端部と第2電線W2の導電性端部とを電気的に接続するように構成されており、中継接続部材と呼称することがある。第1電線W1の導電性端部は、例えば、貫通孔W1hを有する第1端子W1tであってよい。第2電線W2の導電性端部は、例えば貫通孔を有する第2端子W2tであってよい。バスバー10は、ケース3aとカバー3bとによって形成された保護管3に支持または固定されることができる。
【0026】
バスバー10は、導電材料製のワンピース品として構成されることができる。バスバー10は、板状の金属材が折り曲げられて形成されている。バスバー10の長さ方向の両端部には、円形の貫通孔11、12が形成されている。バスバー10の一端部に形成された貫通孔11には、
図6に示すように、ボルト4aの軸部5aが挿通される。このボルト4aの軸部5aは第1端子W1tの貫通孔W1hに挿通され、バスバー10の表面(後述する第1端子座または第1の端子支持面10a)に第1端子W1tが配置される。ボルト4aは、ケース3aの内面に形成されたボルト孔3dに締結される。このようにバスバー10は、第1端子W1tと共にケース3aに固定される。
【0027】
バスバー10の他端部に形成された貫通孔12には、ボルト4の軸部5が挿通される。そして、ボルト4の軸部5が第2端子W2t(被接続部材)の貫通孔W2hに挿通され、バスバー10の表面(後述する第2端子座または第2の端子支持面10b)に第2端子W2tが配置される。軸部5にナット7が締結される。これにより、バスバー10と第2端子W2tとが電気的に接続されると共に、第2端子W2tがバスバー10に固定される。
図2Bに示すように、例えば、ボルト4は四角柱状の頭部6を有することができる。
【0028】
バスバー10は、ボルト4とナット7との共回りを抑制するように構成されている。バスバー10のこの構成は、ボルト4の回転を防止する回転防止壁部をカバー3bに設けずに済み、カバー3bの構造を簡略化でき、カバー3bを形成するための金型コストを低減できる点、または、ボルト4の軸部5にナット7が締結される際に、四角柱状の頭部6が例えば樹脂製のカバー3bを削ることを防止できる点で有利である。
【0029】
バスバー10は、貫通孔11、12を有する板状の本体部13と、貫通孔12を挟むように本体部13の幅方向両側に設けられた立設部14、15とを備えている。立設部14と立設部15とは、本体部13の側方視で本体部13の長さ方向において立設部14と立設部15の一部が重なり合うように配置されている。立設部14が第1立設部の一例に相当し、立設部15が第2立設部の一例に相当する。
【0030】
バスバー10は、立設部14、15が本体部13からカバー3bに向かって下向きとなるように配置されている。ボルト4の頭部6は、立設部14、15の高さ領域に位置している。すなわち、ボルト4の頭部6の厚みは、立設部14、15の高さよりも小さい。ボルト4の軸部5は、貫通孔12を貫通し上に向かって突出している。頭部6は、軸部5を挟んだ2つの側面6a、6bを有している。側面6aは、立設部14の内側面14aに対向している。側面6bは、立設部15の内側面15aに対向している。内側面14aが第1内側面の一例に相当し、内側面15aが第2内側面の一例に相当する。
【0031】
また、四角柱状の頭部6は、対角に位置する2つの角部6c、6dを有している。ボルト4の軸部5にナット7が締結される際、角部6cが内側面14aに当接するとともに、角部6dが内側面15aに当接してボルト4の回転規制がなされるように、バスバー10の立設部14、15の位置及び寸法は設定されている。つまり、バスバー10の立設部14、15の内側面14a、15a間の間隔L1(
図3参照)に対し、ボルト4の頭部6の側面6a、6b間の長さL2(
図2B参照)は小さく(L2<L1)、頭部6の角部6c、6d間の長さL3は大きい(L3>L1)。間隔L1及び長さL2、L3の関係は、L3>L1>L2となるような寸法に設定されている。
【0032】
バスバー10の製造を説明する。
図4、本体部13の上面に曲げパンチ20がセットされた状態で、曲げパンチ20の角部形状に沿って本体部13の幅方向両側が折り曲げられることによって立設部14、15が形成される。曲げパンチ20には、ストライキング加工による曲げ加工を行うべく、曲げパンチ20の角部(折り曲げを行う一方の角部)に下方に突出する突部21が設けられている。
【0033】
すなわち、突部21でバスバー10を押さえつつ、曲げパンチ20の角部の形状に倣って本体部13から立設部14、15の折り曲げが行われる。これにより、立設部14、15に隣接する本体部13には、ストライキング加工の痕跡として突部21に対応するストライキング加工凹部16が形成される。ストライキング加工により本体部13から折り曲げられた立設部14、15の曲げ角度は、スプリングバックが生じ難いストライキング加工の特徴から、所望または設計角度(例えば90度)に維持可能である。また、ストライキング加工にて曲げられた本体部13と立設部14、15との間の各内側角部に曲面部分が形成されないか、若しくは曲面部分が形成されてもその曲面部分は極めて小さいため、曲面部分は凹部16内に収まるようになっている。なお、例えば、ストライキング加工凹部16の幅はバスバー10の板厚と同じ程度に設定され、ストライキング加工凹部16の深さは適宜調整される。
【0034】
図5に示すように、本体部13は、立設部14に隣接する第1切り欠き17と、立設部15に隣接する第2切り欠き18とを有している。第1切り欠き17は、曲げパンチ20にて立設部14を形成する際に必要な部位である。同様に、第2切り欠き18は、曲げパンチ20にて立設部15を形成する際に必要な部位である。第1切り欠き17と第2切り欠き18とは、本体部13の長さ方向において重なり合わないように該長さ方向の異なる位置に設けられている。
【0035】
図6に示すように、保護管3は、バスバー10を支持または固定または位置決めするためのバスバー位置決め構造(3c、3d、3e)を有することができる。バスバー位置決め構造は、ケース3aに形成された内側段差面3c及びボルト孔3dと、カバー3bに形成されたバスバー座3eとを含むことができる。ケース3aの内側段差面3cは、バスバー10を長さ方向に位置決めするように構成される。ボルト孔3dは、ボルト4aと協働してバスバー10をケース3aに固定する。カバー3bのバスバー座3eは、バスバー10を幅方向に位置決めするようにまたはバスバー10と接触しバスバー10をケース3aに対して押圧するように構成される。
【0036】
図6に示すように、バスバー10は、第1電線W1の第1端子W1tを支持する第1端子座または第1の端子支持面10aと、第2電線W2の第2端子W2tを支持する第2端子座または第2の端子支持面10bとを有することができる。第1の端子支持面10aは、板状の本体部13の第1面の一部であってよく、第2の端子支持面10bは、板状の本体部13の前記第1面の反対側の第2面の一部であってよい。
図6に示すように、バスバー10は、長さ方向において第1の端子支持面10aと第2の端子支持面10bとの中間に、ワイヤハーネスWの太さまたは厚みと同じかそれより大きい高さギャップを形成するように構成された、段差または屈曲部10cを有することができる。この屈曲部10cは、本体部13の長さ方向における中間部を折り曲げられて形成することができる。屈曲部10cは、ケース3aの内側段差面3cと直接接触または面接触するように構成されてよい。バスバー10の屈曲部10cは、長さ方向におけるバスバー10とケース3aとの相対移動を防止するストッパ面または位置決め面を提供することができる。第1の端子支持面10a及び第2の端子支持面10bは、第1電線W1の第1端子W1tと第2電線W2の第2端子W2tとを実質的にインラインに支持するように構成されてよい。
【0037】
第1電線W1及び第2電線W2の一方および両方をバスバー10に接続した後に、カバー3bはケース3aに固定的に結合される。カバー3bとケース3aとは、スナップフィット等の任意の結合手段によって結合されてよい。カバー3bとケース3aとを結合すると、カバー3bとケース3aとの間でバスバー10は位置決め及び固定される。バスバー位置決め構造(3c、3d、3e)は、保護管3内でのバスバー10のがたつきを低減するのに有利である。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ボルト4の軸部5に対するナット7の締結時にボルト4の頭部6がナット7と共回りしようとするが、ボルト4の頭部6が回転方向においてバスバー10の立設部14、15の内側面14a、15aに当接することでボルト4のそれ以上の回転が規制される。これにより、ボルト4とナット7との共回りを抑制することができる。また、ボルト4を回転規制する立設部14、15は金属製のバスバー10の一部で形成されて剛性も高いため、樹脂製の部材で回転規制を図る態様よりも、より確実にボルト4の回転規制を行うことができる。
【0039】
(2)立設部14、15に隣接するストライキング加工凹部16が本体部13に設けられる、言い換えると、ストライキング加工にて本体部13に対し立設部14、15が折り曲げられることで、スプリングバックによって立設部14、15の曲げ角度が所望または設計角度の例えば90度からずれてしまう懸念を解消することができる。なお、スプリングバックとは、曲げパンチ20を離すと、材料に施した変形が若干もとに戻る現象である。また、ストライキング加工にて曲げられた本体部13と立設部14、15との間の各内側角部に曲面部分が形成されないか、若しくは曲面部分が形成されてもその曲面部分は極めて小さく凹部16内に収まるため、ボルト4の頭部6が内側角部の曲面部分を乗り上げることを未然に防止することができる。また、回転規制を図る立設部14、15を内側角部の曲面部分を気にすることなくボルト4の頭部6に近接して設けることも可能となるため、ボルト4の回転規制をより確実に行うことができる。
【0040】
(3)ボルト4の頭部6が立設部14、15の内側面14a、15aに共に当接、特に同時に当接させることにより、ボルト4の回転規制をより確実とし、ボルト4とナット7との共回りをより確実に抑制することができる。
【0041】
(4)立設部14、15が貫通孔12を挟んで対向、すなわちボルト4の頭部6を挟んで対向し、バスバー10の本体部13の長さ方向において一部が重なり合う配置としているため、ボルト4の頭部6が頭部6の両側に位置する立設部14、15にてより確実に回転規制することができる。
【0042】
(5)ボルト4の頭部6の対角に位置する2つの角部6c、6dが内側面14a、15aに共に当接することにより、ナット7締結時にボルト4に作用する回転力を頭部6の対角の2箇所で均等に受け止めることができる。
【0043】
(6)本実施形態のバスバー10とは異なり、例えば、第1切り欠き17と第2切り欠き18とが、本体部13の長さ方向において重なり合うように該長さ方向の同じ位置に設けられていると、切り欠き17、18が設けられている部分において、本体部13の長さ方向に直交する導体断面積(バスバー10の本体部13の断面積)が減少する。すると、導体断面積が減少した部分の電気抵抗が高くなり、バスバーの発熱量が増加する。この点、本実施形態のバスバー10では、第1切り欠き17と第2切り欠き18とが、本体部13の長さ方向において重なり合わないように該長さ方向の異なる位置に設けられている。よって、第1切り欠き17と第2切り欠き18とが、本体部13の長さ方向の同じ位置に設けられている場合に比べて、切り欠き17、18が設けられている部分の導体断面積を増加させることができる。すなわち、本実施形態のバスバー10によれば、第1切り欠き17と第2切り欠き18とが、本体部13の長さ方向の同じ位置に設けられている場合に比べて、切り欠き17、18が設けられている部分において、バスバー10の本体部13の電気抵抗が高くなることを抑制し、バスバー10の本体部13において発熱量が増加することを抑制することができる。
【0044】
(7)バスバー10が用いられることで、ボルト4とナット7との共回りを抑制することができるワイヤハーネスWを提供することができる。
ボルト4の頭部6の側面6a、6bは、平坦側面であってよい。立設部14、15の内側面14a、15aは、ボルト4の頭部6の平坦側面と面接触する平坦面であってよく、当接面またはストッパ面と呼称することがある。立設部14、15は、ボルト回転ストッパ板と呼称することがある。
【0045】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
・立設部14、15を本体部13の幅方向両側に配置し内側面14a、15aを互いに平行な面としたが、これに代えて、本体部13の幅方向片側に一方側の立設部と長さ方向一端側に他方側の立設部を設け、各内側面が互いに交差(直交)する面としてもよい。貫通孔12の周囲において、頭部6が2箇所以上の立設部に当接されると良い。
【0046】
・立設部14、15のいずれか一方を割愛し、貫通孔12の周囲において頭部6が1箇所で当接されるようにしてもよい。
・上記実施形態では、ワイヤハーネスWは、インバータM1と高圧バッテリM2とを電気的に接続していたが、これに限定されない。ワイヤハーネスWは、車両Vに搭載された複数の電気機器を電気的に接続していればよく、例えば、ワイヤハーネスWは、低圧バッテリとリレーボックスとを電気的に接続してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…導電路
2…コネクタ
3…保護管
3a…ケース
3b…カバー
4…ボルト
5…軸部
6…頭部
6a,6b…側面
6c,6d…角部
7…ナット
10…バスバー
11,12…貫通孔
13…本体部
14…第1立設部としての立設部
14a…第1内側面としての内側面
15…第2立設部としての立設部
15a…第2内側面としての内側面
16…凹部としてのストライキング加工凹部
16a…内底面
17…第1切り欠き
18…第2切り欠き
20…曲げパンチ
21…突部
M1…インバータ
M2…高圧バッテリ
V…車両
W…ワイヤハーネス