(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】サブアレイアンテナ、アレイアンテナ、アンテナモジュール、および通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20221012BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20221012BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20221012BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q13/08
H01Q21/24
H01Q1/52
(21)【出願番号】P 2021522197
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019205
(87)【国際公開番号】W WO2020241271
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019102041
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 航大
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180720(JP,A)
【文献】特開2014-179985(JP,A)
【文献】米国特許第06496158(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/06
H01Q 13/08
H01Q 21/24
H01Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
平板状の複数のアンテナ素子とを備え、
前記基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面および前記第2面を接続する端面とを有し、
前記複数のアンテナ素子は、前記第1面に、または、前記第1面と前記第2面との間の層に、前記第1面に沿って等間隔に並べて配置され、
自由空間における電波の波長をλとするとき、
互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離はλ/2以上であり、
前記複数のアンテナ素子のうちの前記端面に隣接する位置に配置されるアンテナ素子である外側アンテナ素子の中心と前記端面との距離は、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離の半分以下であ
り、
前記基板は、
前記第2面に配置される接地端子と、
前記複数のアンテナ素子が配置される層と前記第2面との間に形成され、前記接地端子に接続される接地電極およびビアとをさらに有し、
前記接地電極および前記ビアの少なくとも一部は、前記外側アンテナ素子と前記端面との間の領域である外側領域に配置される、サブアレイアンテナ。
【請求項2】
前記接地電極は、前記端面に露出していない、請求項
1に記載のサブアレイアンテナ。
【請求項3】
前記接地端子は、前記外側領域よりも前記基板の内側の領域に配置される、請求項
1または
2に記載のサブアレイアンテナ。
【請求項4】
前記基板の前記第2面は、樹脂でモールドされている、請求項
1~
3のいずれかに記載のサブアレイアンテナ。
【請求項5】
基板と、
平板状の複数のアンテナ素子とを備え、
前記基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面および前記第2面を接続する端面とを有し、
前記複数のアンテナ素子は、前記第1面に、または、前記第1面と前記第2面との間の層に、前記第1面に沿って等間隔に並べて配置され、
自由空間における電波の波長をλとするとき、
互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離はλ/2以上であり、
前記複数のアンテナ素子のうちの前記端面に隣接する位置に配置されるアンテナ素子である外側アンテナ素子の中心と前記端面との距離は、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離の半分以下であり、
前記基板および前記複数のアンテナ素子の各々は略矩形状に形成され、
前記複数のアンテナ素子の各々は、第1方向を偏波方向とする電波と、前記第1方向と異なる第2方向を偏波方向とする電波とを放射するように構成され、
前記端面は、前記第1方向に垂直な第1端面と、前記第2方向に垂直な第2端面とを含み、
前記第1端面に隣接する前記外側アンテナ素子の中心と前記第1端面との距離、および前記第2端面に隣接する前記外側アンテナ素子の中心と前記第2端面との距離は、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離の半分以下である、サブアレイアンテナ。
【請求項6】
サブアレイアンテナがメイン基板上に並べて配置されるアレイアンテナであって、
前記サブアレイアンテナは、
基板と、
平板状の複数のアンテナ素子とを備え、
前記基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面および前記第2面を接続する端面とを有し、
前記複数のアンテナ素子は、前記第1面に、または、前記第1面と前記第2面との間の層に、前記第1面に沿って等間隔に並べて配置され、
自由空間における電波の波長をλとするとき、
互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離はλ/2以上であり、
前記複数のアンテナ素子のうちの前記端面に隣接する位置に配置されるアンテナ素子である外側アンテナ素子の中心と前記端面との距離は、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離の半分以下であり、
互いに隣り合う2つの前記サブアレイアンテナの前記外側アンテナ素子であって互いに隣り合う前記外側アンテナ素子の中心同士の距離が、各前記サブアレイアンテナ内において互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離と同じである、アレイアンテナ。
【請求項7】
基板と、
平板状の複数のアンテナ素子とを備え、
前記基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面よりも前記第2面側に窪んだ溝部とを有し、
前記複数のアンテナ素子は、前記第1面に、または、前記第1面と前記第2面との間の層に、前記第1面に沿って等間隔に並べて配置され、
自由空間における電波の波長をλとするとき、
互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離はλ/2以上であり、
前記複数のアンテナ素子のうちの前記溝部に隣接する位置に配置されるアンテナ素子の中心と前記溝部との距離は、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離の半分以下である、アレイアンテナ。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれかに記載のサブアレイアンテナ、または、請求項
6もしくは7に記載のアレイアンテナと、
前記複数のアンテナ素子に高周波信号を供給するように構成された給電回路とを備える、アンテナモジュール。
【請求項9】
請求項
8に記載のアンテナモジュールを搭載した、通信装置。
【請求項10】
基板と、
平板状の複数のアンテナ素子とを備え、
前記基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面および前記第2面を接続する端面とを有し、
前記複数のアンテナ素子は、前記第1面に、または、前記第1面と前記第2面との間の層に、前記第1面に沿って等間隔に並べて配置され、
互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離をPとするとき、
前記複数のアンテナ素子のうちの前記端面に隣接する位置に配置されるアンテナ素子である外側アンテナ素子の中心と前記端面との距離は、Pの9分の2以上、かつ、Pの半分以下であ
り、
前記基板は、
前記第2面に配置される接地端子と、
前記複数のアンテナ素子が配置される層と前記第2面との間に形成され、前記接地端子に接続される接地電極およびビアとをさらに有し、
前記接地電極および前記ビアの少なくとも一部は、前記外側アンテナ素子と前記端面との間の領域である外側領域に配置される、サブアレイアンテナ。
【請求項11】
基板と、
平板状の複数のアンテナ素子とを備え、
前記基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面および前記第2面を接続する端面とを有し、
前記複数のアンテナ素子は、前記第1面に、または、前記第1面と前記第2面との間の層に、前記第1面に沿って等間隔に並べて配置され、
互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離をPとするとき、
前記複数のアンテナ素子のうちの前記端面に隣接する位置に配置されるアンテナ素子である外側アンテナ素子の中心と前記端面との距離は、Pの9分の2以上、かつ、Pの半分以下であり、
前記基板および前記複数のアンテナ素子の各々は略矩形状に形成され、
前記複数のアンテナ素子の各々は、第1方向を偏波方向とする電波と、前記第1方向と異なる第2方向を偏波方向とする電波とを放射するように構成され、
前記端面は、前記第1方向に垂直な第1端面と、前記第2方向に垂直な第2端面とを含み、
自由空間における電波の波長をλとするとき、前記第1端面に隣接する前記外側アンテナ素子の中心と前記第1端面との距離、および前記第2端面に隣接する前記外側アンテナ素子の中心と前記第2端面との距離は、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離の半分以下である、サブアレイアンテナ。
【請求項12】
サブアレイアンテナがメイン基板上に並べて配置されるアレイアンテナであって、
前記サブアレイアンテナは、
基板と、
平板状の複数のアンテナ素子とを備え、
前記基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面および前記第2面を接続する端面とを有し、
前記複数のアンテナ素子は、前記第1面に、または、前記第1面と前記第2面との間の層に、前記第1面に沿って等間隔に並べて配置され、
互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離をPとするとき、
前記複数のアンテナ素子のうちの前記端面に隣接する位置に配置されるアンテナ素子である外側アンテナ素子の中心と前記端面との距離は、Pの9分の2以上、かつ、Pの半分以下であり、
互いに隣り合う2つの前記サブアレイアンテナの前記外側アンテナ素子であって互いに隣り合う前記外側アンテナ素子の中心同士の距離が、各前記サブアレイアンテナ内において互いに隣り合う2つの前記アンテナ素子の中心同士の距離と同じである、アレイアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナモジュールおよびそれを搭載した通信装置に関し、より特定的には、アレイアンテナの特性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-213927号公報には、多数のアンテナ素子が1つの基板に配列されたアレイアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2016-213927号公報に開示されたアレイアンテナでは、多数のアンテナ素子を1つの基板に直接配列するため、各アンテナ素子を実装する基板が大型化する傾向にある。そのため、各アンテナ素子を実装する基板が反りやすくなったり、各アンテナ素子を基板に実装するための設備が大型化したりすることが懸念される。
【0005】
その対策として、多数のアンテナ素子を複数のサブ基板(サブアレイアンテナ)に分割して配列し、複数のサブアレイアンテナをメイン基板上に配列することが想定される。しかしながら、このようなアレイアンテナにおいては、アンテナ素子とサブ基板の端面との距離関係によっては、アンテナ素子単体の特性が劣化したり、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルが上がったりすることが懸念される。
【0006】
また、他の対策として、多数のアンテナ素子が配列された1つの基板に、反りを吸入するための溝部(スリット)を設けることも想定される。しかしながら、このようなアレイアンテナにおいても、アンテナ素子と溝部との距離関係によっては、アンテナ素子単体の特性が劣化したり、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルが上がったりすることが懸念される。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数のサブアレイアンテナを配列してアレイアンテナとする場合において、アンテナ素子単体の特性を劣化させることなく、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルを抑制することである。
【0008】
また、本開示の他の目的は、溝部が設けられた基板に複数のアンテナ素子が配列されて形成されるアレイアンテナにおいて、アンテナ素子単体の特性を劣化させることなく、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によるサブアレイアンテナは、基板と、平板状の複数のアンテナ素子とを備える。基板は、第1面と、第1面と対向する第2面と、第1面および第2面を接続する端面とを有する。複数のアンテナ素子は、第1面に、または、第1面と第2面との間の層に、第1面に沿って等間隔に並べて配置される。自由空間における電波の波長をλとするとき、互いに隣り合う2つのアンテナ素子の中心同士の距離はλ/2以上である。複数のアンテナ素子のうちの端面に隣接する位置に配置されるアンテナ素子である外側アンテナ素子の中心と端面との距離は、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つのアンテナ素子の中心同士の距離の半分以下である。
【0010】
上記のサブアレイアンテナにおいては、外側アンテナ素子の中心とサブ基板の端面との距離が、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つのアンテナ素子の中心同士の距離の半分以下である。これにより、複数のサブアレイアンテナを配列してアレイアンテナとする場合において、アンテナ素子単体の特性を劣化させることなく、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルを抑制することができる。
【0011】
本開示によるアレイアンテナは、基板と、平板状の複数のアンテナ素子とを備える。基板は、第1面と、第1面と対向する第2面と、第1面よりも第2面側に窪んだ溝部とを有する。複数のアンテナ素子は、第1面に、または、第1面と第2面との間の層に、第1面に沿って等間隔に並べて配置される。自由空間における電波の波長をλとするとき、互いに隣り合う2つのアンテナ素子の中心同士の距離はλ/2以上である。複数のアンテナ素子のうちの溝部に隣接する位置に配置されるアンテナ素子の中心と溝部との距離は、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つのアンテナ素子の中心同士の距離の半分以下である。
【0012】
上記のアレイアンテナにおいては、溝部に隣接する位置に配置されるアンテナ素子の中心と溝部との距離が、λ/9以上、かつ、互いに隣り合う2つのアンテナ素子の中心同士の距離の半分以下である。これにより、アンテナ素子単体の特性を劣化させることなく、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルを抑制することができる。
【0013】
本開示による他のサブアレイアンテナは、基板と、平板状の複数のアンテナ素子とを備える。基板は、第1面と、第1面と対向する第2面と、第1面および第2面を接続する端面とを有する。複数のアンテナ素子は、第1面に、または、第1面と第2面との間の層に、第1面に沿って等間隔に並べて配置される。互いに隣り合う2つのアンテナ素子の中心同士の距離をPとするとき、複数のアンテナ素子のうちの端面に隣接する位置に配置されるアンテナ素子である外側アンテナ素子の中心と端面との距離は、Pの9分の2以上、かつ、Pの半分以下である。
【0014】
上記のサブアレイアンテナにおいては、外側アンテナ素子の中心とサブ基板の端面との距離が、P(互いに隣り合う2つのアンテナ素子の中心同士の距離)のλ/9以上、かつ、Pの半分以下である。これにより、複数のサブアレイアンテナを配列してアレイアンテナとする場合において、アンテナ素子単体の特性を劣化させることなく、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、アンテナ素子単体の特性を劣化させることなく、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】サブアレイアンテナの平面図(その1)である。
【
図4】サブアレイアンテナにおけるサブ基板の部分拡大図である。
【
図5】アンテナモジュールの断面図(その1)である。
【
図6】共振周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図7】放射特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図8】アイソレーション特性のシミュレーション結果の一例を示す図(その1)である。
【
図9】アンテナモジュールの断面図(その2)である。
【
図10】アイソレーション特性のシミュレーション結果の一例を示す図(その2)である。
【
図11】アンテナモジュールの断面図(その3)である。
【
図12】アンテナモジュールの断面図(その4)である。
【
図13】アンテナモジュールの断面図(その5)である。
【
図14】サブアレイアンテナの平面図(その2)である。
【
図15】
図3に示す各アンテナ素子から放射される、X軸方向を偏波方向とする電波の特性を示す図である。
【
図16】
図3に示す各アンテナ素子から放射される、Y軸方向を偏波方向とする電波の特性を示す図である。
【
図17】
図14に示す各アンテナ素子から放射される、X軸方向を偏波方向とする電波の特性を示す図である。
【
図18】
図14に示す各アンテナ素子から放射される、Y軸方向を偏波方向とする電波の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態に係るアンテナモジュール100が適用される通信装置1のブロック図の一例である。通信装置1は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。本実施の形態に係るアンテナモジュール100に用いられる電波の周波数帯域の一例は、たとえば28GHz、39GHzおよび60GHzなどを中心周波数とするミリ波帯の電波であるが、上記以外の周波数帯域の電波についても適用可能である。
【0019】
図1を参照して、通信装置1は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200とを備える。アンテナモジュール100は、給電回路の一例であるRFIC110と、複数のサブアレイアンテナ20と、フィルタ装置130とを備える。サブアレイアンテナ20は、複数の平板状のアンテナ素子(放射電極)22を含む。通信装置1は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ素子22から放射するとともに、アンテナ素子22で受信した高周波信号をダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
【0020】
なお、
図1においては、説明を容易にするために、1つのサブアレイアンテナ20のみ示され、同様の構成を有する他のサブアレイアンテナ20については省略されている。また、
図1では、説明を容易にするために、サブアレイアンテナ20に含まれる複数のアンテナ素子22のうち、4つのアンテナ素子22(22A~22D)に対応する構成のみ示され、同様の構成を有する他のアンテナ素子22に対応する構成については省略されている。また、
図1においては、サブアレイアンテナ20が、複数のアンテナ素子22が二次元のアレイ状に配置された二次元アレイである例が示されているが、サブアレイアンテナ20は、複数のアンテナ素子22が一列に配置された一次元アレイであってもよい。
【0021】
また、本実施の形態によるサブアレイアンテナ20は、各アンテナ素子22から互いに異なる偏波方向を有する2つの電波を放射することが可能な、いわゆるデュアル偏波タイプのアンテナ装置である。そのため、各アンテナ素子22には、RFIC110から、第1偏波用の高周波信号および第2偏波用の高周波信号が供給される。なお、サブアレイアンテナ20は、デュアル偏波タイプのアンテナ装置であることに限定されず、シングル偏波タイプのアンテナ装置であってもよい。
【0022】
RFIC110は、スイッチ111A~111H,113A~113H,117A,117Bと、パワーアンプ112AT~112HTと、ローノイズアンプ112AR~112HRと、減衰器114A~114Hと、移相器115A~115Hと、信号合成/分波器116A,116Bと、ミキサ118A,118Bと、増幅回路119A、119Bとを備える。このうち、スイッチ111A~111D,113A~113D,117A、パワーアンプ112AT~112DT、ローノイズアンプ112AR~112DR、減衰器114A~114D、移相器115A~115D、信号合成/分波器116A、ミキサ118A、および増幅回路119Aの構成が、第1偏波用の高周波信号のための回路である。また、スイッチ111E~111H,113E~113H,117B、パワーアンプ112ET~112HT、ローノイズアンプ112ER~112HR、減衰器114E~114H、移相器115E~115H、信号合成/分波器116B、ミキサ118B、および増幅回路119Bの構成が、第2偏波用の高周波信号のための回路である。
【0023】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A~111H,113A~113Hがパワーアンプ112AT~112HT側へ切換えられるとともに、スイッチ117A,117Bが増幅回路119A,119Bの送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A~111H,113A~113Hがローノイズアンプ112AR~112HR側へ切換えられるとともに、スイッチ117A,117Bが増幅回路119A,119Bの受信側アンプに接続される。
【0024】
フィルタ装置130は、フィルタ装置130A~130Hを含む。なお、以下の説明においては、フィルタ装置130A~130Hを包括して「フィルタ装置130」と称する場合がある。フィルタ装置130A~130Hは、RFIC110におけるスイッチ111A~111Hにそれぞれ接続される。後述するように、フィルタ装置130A~130Hの各々は、特定の周波数帯域の高周波信号を減衰させる機能を有する。
【0025】
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119A,119Bで増幅され、ミキサ118A,118Bでアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116A,116Bで4分波され、対応する信号経路を通過して、それぞれ異なる給電素子121に給電される。
【0026】
スイッチ111A,111Eからの高周波信号は、フィルタ装置130A,130Eをそれぞれ経由して給電素子121Aに供給される。同様に、スイッチ111B,111Fからの高周波信号は、フィルタ装置130B,130Fをそれぞれ経由して給電素子121Bに供給される。スイッチ111C,111Gからの高周波信号は、フィルタ装置130C,130Gをそれぞれ経由して給電素子121Cに供給される。スイッチ111D,111Hからの高周波信号は、フィルタ装置130D,130Hをそれぞれ経由して給電素子121Dに供給される。
【0027】
各信号経路に配置された移相器115A~115Hの移相度が個別に調整されることにより、アンテナ装置120の指向性を調整することができる。
【0028】
各給電素子121で受信された高周波信号である受信信号は、フィルタ装置130を介してRFIC110に伝達され、それぞれ異なる4つの信号経路を経由して信号合成/分波器116A,116Bにおいて合波される。合波された受信信号は、ミキサ118A,118Bでダウンコンバートされ、増幅回路119A,119Bで増幅されてBBIC200へ伝達される。
【0029】
RFIC110は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品として形成される。あるいは、RFIC110における各給電素子121に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、移相器)については、対応する給電素子121毎に1チップの集積回路部品として形成されてもよい。
【0030】
(アンテナモジュールの構成)
図2は、本実施の形態に係るアンテナモジュール100の平面図である。なお、以下では、
図2に示す平面の法線方向を「Z軸方向」、Z軸方向に垂直であってかつ互いに垂直な方向をそれぞれ「X軸方向」および「Y軸方向」とも称する。また、以下では、各図におけるZ軸の正方向を上面側、負方向を下面側として説明する。
【0031】
アンテナモジュール100は、RFIC110および複数のサブアレイアンテナ20に加えて、メイン基板10を含む。
図2に示す例では、メイン基板10の上面10aに、4個のサブアレイアンテナ20が2×2の二次元状に配列されている。
【0032】
各サブアレイアンテナ20は、サブ基板21と、複数のアンテナ素子22とを含む。
図2に示す例では、サブ基板21の上面21aに、16個のアンテナ素子22が4×4の二次元状に配列されている。
【0033】
このように、16個のアンテナ素子22をサブ基板21上に配列したサブアレイアンテナ20をメイン基板10上に4つ配列することによって、合計64個のアンテナ素子が8×8の二次元状に配列されたアンテナモジュール100が形成される。言い換えれば、アンテナモジュール100は、64個のアンテナ素子が4つのサブ基板21に分割して実装された、アレイアンテナである。
【0034】
各サブアレイアンテナ20内において、アンテナ素子22は、サブ基板21の上面21aに、X軸方向およびY軸方向に等間隔に並べて配置される。各サブアレイアンテナ20内において、X軸方向およびY軸方向に互いに隣り合う2つのアンテナ素子22の面中心(対角線の交点)同士の距離(以下「アンテナ素子間距離P」ともいう)は、いずれもλ/2以上の値に設定される。「λ」は、自由空間における電波の波長である。
【0035】
メイン基板10、サブ基板21およびアンテナ素子22は、Z軸方向から平面視した場合において、いずれも略矩形状に形成される。互いに隣り合うサブアレイアンテナ20のサブ基板21同士の間には、空間Sが形成される。
【0036】
サブ基板21の端面21bに隣接する位置に配置されるアンテナ素子22を「外側アンテナ素子」と定義するとき、互いに隣り合うサブアレイアンテナ20の外側アンテナ素子の面中心同士の距離(以下、単に「外側アンテナ素子間距離A」ともいう)は、各サブアレイアンテナ20内において互いに隣り合う2つのアンテナ素子22の面中心同士の距離である「アンテナ素子間距離P」と同じ値に設定されている。すなわち、アンテナモジュール100においては、すべてのアンテナ素子22がX軸方向およびY軸方向にλ/2以上の間隔で等ピッチに配列される。
【0037】
図3は、サブアレイアンテナ20の平面図である。上述したように、サブ基板21の上面21aには、16個のアンテナ素子22が4×4の二次元状に配列されている。また、アンテナ素子間距離Pは、λ/2以上の値に設定される。
【0038】
複数のアンテナ素子22のうちの、サブ基板21の端面21bに隣接する位置に配置されるアンテナ素子22が、上述の「外側アンテナ素子」である。本実施の形態においては、外側アンテナ素子の面中心Cと端面21bとの距離(以下「基板端距離B」ともいう)は、λ/9以上かつP/2以下の値に設定されている。
【0039】
ここで、アンテナ素子間距離Pはλ/2以上の値であり「λ≦2P」の関係が成立するため、基板端距離Bは、2P/9以上かつP/2以下の値と言い換えることができる。すなわち、基板端距離Bは、アンテナ素子間距離Pの9分の2以上、かつ、アンテナ素子間距離Pの半分以下である。
【0040】
なお、以下では、サブアレイアンテナ20をZ軸方向から平面視した場合において、外側アンテナ素子と端面21bとの間の領域(
図3に一点鎖線で示す枠線L1よりも外側の領域)を「外側領域Rout」とも記載し、外側領域Routよりも内側の領域(枠線L1よりも内側の領域)を「内側領域Rin」とも記載する。
【0041】
図4は、サブアレイアンテナ20におけるサブ基板21の部分拡大図である。上述したように、サブアレイアンテナ20は、いわゆるデュアル偏波タイプのアンテナ装置である。そのため、各アンテナ素子22には、2つの給電点SP1,SP2が設けられる。
【0042】
給電点SP1は、アンテナ素子22の面中心Cから、
図4のX軸の正方向にオフセットした位置に配置されている。給電点SP1には、RFIC110から第1偏波用の高周波信号が供給される。これにより、アンテナ素子22からは、X軸方向を偏波方向とする電波が放射される。
【0043】
給電点SP2は、アンテナ素子22の面中心Cから、
図4のY軸の負方向にオフセットした位置に配置されている。給電点SP2には、RFIC110から第2偏波用の高周波信号が供給される。これにより、アンテナ素子22からは、Y軸方向を偏波方向とする電波が放射される。
【0044】
サブ基板21は、上述のように略矩形状に形成されており、X軸方向に垂直な端面21b(以下「X端面21bx」ともいう)と、Y軸方向に垂直な端面21b(以下「Y端面21by」ともいう)を含む。
【0045】
外側アンテナ素子の面中心CとX端面21bxとの距離Bx、および外側アンテナ素子の面中心CとY端面21byとの距離Byは、いずれもλ/9以上かつP/2以下の値に設定される。
【0046】
なお、サブアレイアンテナ20がシングル偏波タイプのアンテナ装置である場合には、たとえば給電点SP2を省いて給電点SP1のみとすることができる。なお、たとえば給電点SP1のみとする場合、外側アンテナ素子の面中心CとX端面21bxとの距離Bxはλ/9以上の値に設定されるが、外側アンテナ素子の面中心CとY端面21byとの距離Byは、必ずしもλ/9以上の値でなくてもよい。
【0047】
図5は、アンテナモジュール100の
図2におけるV-V断面図である。アンテナモジュール100は、上述したように、メイン基板10と、メイン基板10の上面10aに配置される複数のサブアレイアンテナ20とを含む。メイン基板10は、接地端子11と、接地電極12とを含む。接地端子11は、メイン基板10の上面10aに配置され、ビアを介して接地電極12に接続される。
【0048】
各サブアレイアンテナ20は、サブ基板21と、アンテナ素子22とを含む。なお、
図5に示されるアンテナ素子22は、各サブアレイアンテナ20内においてサブ基板21の端面21bに隣接する位置に配置される「外側アンテナ素子」である。
【0049】
サブ基板21は、たとえば、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、あるいは、LTCC以外のセラミックス多層基板である。なお、サブ基板21は、多層基板に限らず単層構造の基板であってもよい。メイン基板10も、サブ基板21と同様の組成および層構造とすることができる。
【0050】
また、サブ基板21を多層樹脂基板とし、メイン基板10を低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板としてもよい。一般的に、アンテナ直下のフィルタの挿入損失は、送信電力(EIRP:Equivalent Isotropically Radiated Power)や受信感度と相関があり、無線機の性能向上のため、できるかぎり低損失であることが求められる。同時に、フィルタには、通過域近傍での減衰性能も必要である。このためフィルタのQ値を上げる必要がある。フィルタのQ値を上げるためには、基板厚みを増やすのが有意な方法である。ミリ波フィルタは、誘電率が高い基材を使うと小型化できるメリットがある。こうした観点で、メイン基板10をLTCC基板とするのが優位である。一方、パッチアンテナにおいても、帯域確保のためには基板厚が必要であるが、誘電率が低い方が帯域確保、利得向上に有利である。すなわち、フィルタとアンテナとは基材に求められる特性が異なっており、フィルタとアンテナとを同じ基材内で構成すると、どちらかの性能に制約が生じる。また、LTCC基板の場合、製造上可能な基板厚に限界があるため、同一基材で構成する場合、フィルタおよびアンテナの双方に厚み限界が生じ、フィルタおよびアンテナの双方の設計に制約が生じる。以上に鑑み、アンテナ素子22が配置されるサブ基板21とフィルタ装置130が配置されるメイン基板10とを別々の基材で構成する、具体的には、上述のように、サブ基板21を多層樹脂基板とし、メイン基板10を低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板としてもよい。
【0051】
サブ基板21は、上面21aと、上面21aと対向する下面21cと、上面21aおよび下面21cを接続する端面21bとを有する。また、サブ基板21は、給電配線23と、接地電極24,25と、ビア26,27と、接地端子28とを含む。
【0052】
給電配線23は、アンテナ素子22の給電点SP2に接続される。給電配線23は、X軸方向およびY軸方向に延在する層内に配置された配線パターンと、Z軸方向に延在するビアとで形成される。RFIC110からの高周波信号は、給電配線23を介して給電点SP2に伝達される。なお、
図5には示されてないが、サブ基板21には、アンテナ素子22の給電点SP1(
図4参照)に高周波信号を伝達するための給電配線も設けられる。
【0053】
接地端子28は、サブ基板21の下面21cに配置される。サブアレイアンテナ20がメイン基板10に実装された状態において、接地端子28は、はんだバンプ29を介して、メイン基板10の接地端子11に接続される。接地端子28およびはんだバンプ29は、外側領域Routに配置される。
【0054】
接地電極24は、ビア27を介して接地端子28に接続される。接地電極25は、接地電極24よりも上面21a側の層に配置され、ビア26を介して接地電極24に接続される。接地電極24,25およびビア26,27は、アンテナ素子22が配置される層と下面21cとの間の層に形成される。なお、サブ基板21が上基板と下基板とが重ねられた多層基板である場合、上基板にアンテナ素子22が配置され、下基板に接地電極24,25およびビア26,27が配置されていてもよい。
【0055】
接地電極24,25は、内側領域Rinから外側領域Routにまで延在している。すなわち、接地電極24,25の一部は外側領域Routに配置される。ただし、接地電極24,25の外側の端部は、端面21bには達していない。すなわち、接地電極24,25は、端面21bには露出していない。
【0056】
接地電極24と接地電極25とを接続するビア26、および接地電極24と接地端子28とを接続するビア27は、いずれも外側領域Routに配置されている。なお、ビア26,27の一部が内側領域Rinに配置されてもよい。
【0057】
アンテナ素子22は、無給電素子22aと、給電素子22bとを含む。無給電素子22aはサブ基板21の上面21aに配置され、給電素子22bは上面21aと下面21cとの間の層に上面21aに沿って配置される。
図2に示す例では、給電素子22bおよび無給電素子22aとして、ほぼ同じサイズの電極が用いられる。このような構成は、放射できる周波数帯域は1つであるが、無給電素子22aによって周波数帯域幅を拡大することができ、複数の周波数帯域に対応することも可能となる。
【0058】
また、アンテナ素子22は、給電素子22bのみを備えるものでもよい。この場合、給電素子22bは、
図5に示すように上面21aと下面21cとの間の層に配置されてもよいし、上面21aに配置されてもよい。
【0059】
なお、
図5において、アンテナ素子、電極、配線パターンおよびビア等を構成する導体は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、および、これらの合金を主成分とする金属で形成される。
【0060】
本実施の形態に係るアンテナモジュール100においては、サブアレイアンテナ20内において、接地電極24,25の一部およびビア26,27が、外側領域Routに配置されている。これにより、サブアレイアンテナ20内での接地が強化され、外側アンテナ素子の特性が劣化し難くなる。
【0061】
さらに、本実施の形態に係るアンテナモジュール100においては、
図2および
図5に示すように、各サブアレイアンテナ20において、基板端距離Bがλ/9以上の値に設定されている。これにより、外側アンテナ素子に対して外側領域Routにおける接地電極24,25の面積を確保することができ、外側アンテナ素子の特性が劣化することを抑制することができる。
【0062】
図6は、外側アンテナ素子の共振周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図6において、横軸は基板端距離Bを波長λで除算した値(=B/λ)を示し、縦軸は設計値(狙い値)に対する共振周波数のずれの割合を示す。なお、一般的に、設計値に対する共振周波数のずれの割合の許容値は2パーセント程度である。なお、
図6において、基板端距離Bは、外側アンテナ素子の面中心Cと、偏波方向に垂直な端面21b(偏波方向がX軸方向である場合にはX端面21bx、偏波方向がY軸方向である場合にはY端面21by)との距離である。
【0063】
図6に示すように、B/λが0.13未満になると、共振周波数のずれの割合が1よりも徐々に大きくなり、B/λが0.11(ほぼ1/9)になると、共振周波数のずれの割合が許容値の2パーセントに達する。このような実験結果を踏まえ、本実施の形態においては、基板端距離Bをλ/9以上の値に設定している。これにより、外側アンテナ素子の共振周波数のずれの割合を許容値の2パーセント未満に抑制することができる。
【0064】
なお、本実施の形態においては、外側アンテナ素子の面中心CとX端面21bxとの距離Bx、および外側アンテナ素子の面中心CとY端面21byとの距離Byは、いずれもλ/9以上の値に設定される(上述の
図4参照)。そのため、X軸方向を偏波方向とする電波、およびY軸方向を偏波方向とする電波の双方に対して、共振周波数のずれを許容値未満に抑制することができる。
【0065】
さらに、本実施の形態に係るアンテナモジュール100においては、
図2に示すように、多数のアンテナ素子22が複数のサブアレイアンテナ20に分割して実装されて形成される。そして、各サブアレイアンテナ20においては、基板端距離BがP/2以下の値に設定される。これにより、複数のサブアレイアンテナ20を配列してアンテナモジュール100とする際に、互いに隣り合うサブアレイアンテナ20のサブ基板21同士が干渉することなく、外側アンテナ素子間距離Aを、アンテナ素子間距離Pと同じ値に設定することができる。これにより、アンテナモジュール100において、すべてのアンテナ素子22をλ/2以上の間隔(アンテナ素子間距離P)で等ピッチに配列することができる。
【0066】
図7は、外側アンテナ素子間距離Aをアンテナ素子間距離Pと同じ値に設定した場合(本開示)と、外側アンテナ素子間距離Aをアンテナ素子間距離Pよりも大きい値に設定した場合(比較例)との、放射特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図7において、横軸はZ軸方向に対する角度を示し、縦軸にはゲインを示す。なお、
図7において、A=Pの場合(本開示)のシミュレーション結果が実線で示され、A>Pの場合(比較例)のシミュレーション結果が一点鎖線で示される。
【0067】
図7から理解できるように、A=Pの場合のゲイン(実線)は、A>Pの場合のゲイン(一点鎖線)に比べて、特にZ軸方向に対する角度の大きさが60°を超える範囲のゲインが小さくなっている。したがって、A=Pとすることによって、サイドローブを抑制することができる。すなわち、仮に基板端距離BがP/2よりも大きい値であると、互いに隣り合うサブ基板21同士が干渉して外側アンテナ素子間距離Aがアンテナ素子間距離Pよりも大きくなってアンテナモジュール100全体でのサイドローブレベルが悪化することが懸念されるが、本実施の形態においてはそのような悪化を抑制することができる。
【0068】
さらに、本実施の形態に係るアンテナモジュール100においては、互いに隣り合うサブ基板21同士が接することなく、サブ基板21よりも実効誘電率が低い空間Sが形成されている。これにより、互いに隣り合うサブアレイアンテナ20間のアイソレーションを確保し易くすることができる。また、互いに隣り合うサブ基板21同士の間に空間Sが形成されてサブ基板21同士が接しないことにより、X軸方向を偏波方向とする電波、およびY軸方向を偏波方向とする電波の双方に対して、ビームのばらつきを抑制することができる。
【0069】
さらに、本実施の形態に係るアンテナモジュール100においては、サブアレイアンテナ20内において、接地電極24,25の外側の端部は、端面21bには露出していない。これにより、互いに隣り合うサブアレイアンテナ20間のアイソレーションをより適切に確保することができる。
【0070】
図8は、互いに隣り合うサブアレイアンテナ20間のアイソレーション特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図8は、周波数に対するアイソレーションの変化を示すグラフであり、横軸には周波数が示され、縦軸にはアイソレーションが示される。なお、縦軸は、下側であるほど、アイソレーションが高いことを表わす。
【0071】
図8において、接地電極24,25が端面21bに露出していない場合(本開示)のシミュレーション結果が実線で示され、接地電極24,25が端面21bに露出している場合(比較例)のシミュレーション結果が一点鎖線で示される。
図8においては、アンテナモジュール100において、28GHzを中心周波数とする周波数帯域が使用されることを想定している。
【0072】
図8に示すシミュレーション結果から、アンテナモジュール100の周波数の使用帯域において、接地電極24,25が端面21bに露出していない場合(実線)は、接地電極24,25が端面21bに露出している場合(一点鎖線)に比べて、アイソレーションが大きいことが理解できる。すなわち、実施の形態のような構成を用いることで、アイソレーションをより適切に確保することができる。
【0073】
以上のように、本実施の形態によるサブアレイアンテナ20においては、外側アンテナ素子の面中心と端面21bとの距離である「基板端距離B」が、λ/9以上かつP/2以下の値に設定されている。これにより、外側アンテナ素子に対して外側領域Routにおける接地電極24,25の面積を確保しつつ、外側アンテナ素子間距離Aをアンテナ素子間距離Pと同じ値にしてすべてのアンテナ素子22を等ピッチに配列することができる。その結果、複数のサブアレイアンテナ20を配列してアレイアンテナとする場合において、アンテナ素子22単体の特性を劣化させることなく、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルを抑制することができる。
【0074】
<変形例1>
上述の実施の形態においては、接地端子28およびはんだバンプ29が外側領域Routに配置される例について説明した。しかしながら、接地端子28およびはんだバンプ29を内側領域Rinに配置するように変形してもよい。
【0075】
図9は、変形例1によるアンテナモジュール100Aの断面図である。
図9に示すアンテナモジュール100Aの断面図は、上述の
図5に示すアンテナモジュール100の断面図に対して、サブアレイアンテナ20をサブアレイアンテナ20Aに変更したものである。サブアレイアンテナ20Aは、上述のサブアレイアンテナ20に対して、接地端子28およびはんだバンプ29の位置を変更したものである。その他の構造については、上述のアンテナモジュール100と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0076】
サブアレイアンテナ20Aにおいては、接地端子28が内側領域Rinに配置される。これに伴い、はんだバンプ29も内側領域Rinに配置される。このように、接地端子28およびはんだバンプ29を内側領域Rinに配置することによって、互いに隣り合う一方のサブアレイアンテナ20Aの接地端子28から他方のサブアレイアンテナ20Aの接地端子28までの経路をより長くすることができる。そのため、互いに隣り合う一方のサブアレイアンテナ20Aの接地電極24から互いの接地端子28を介して他方のサブアレイアンテナ20Aの接地電極24に至るまでの経路をより長くすることができる。これにより、一方のサブアレイアンテナ20Aから互いの接地端子28を介して他方のサブアレイアンテナ20Aに回り込む電流を小さくすることができる。その結果、互いに隣り合うサブアレイアンテナ20A間のアイソレーションをより向上させることができる。
【0077】
図10は、互いに隣り合うサブアレイアンテナ20A間のアイソレーション特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図10は、上述の
図8と同様、周波数に対するアイソレーションの変化を示すグラフであり、横軸には周波数が示され、縦軸にはアイソレーションが示される。縦軸は、下側であるほど、アイソレーションが高いことを表わす。
【0078】
図10において、接地端子28およびはんだバンプ29を内側領域Rinに配置する場合(本変形例1)のシミュレーション結果が実線で示され、接地端子28およびはんだバンプ29を外側領域Routに配置する場合のシミュレーション結果が一点鎖線で示される。なお、
図10においても、
図8と同様、アンテナモジュール100Aにおいて、28GHzを中心周波数とする周波数帯域が使用されることを想定している。
【0079】
図10に示すシミュレーション結果から、アンテナモジュール100Aの周波数の使用帯域において、接地端子28およびはんだバンプ29を内側領域Rinに配置する場合(実線)は、接地端子28およびはんだバンプ29を外側領域Routに配置する場合(一点鎖線)に比べて、アイソレーションが高いことが理解できる。すなわち、本変形例1のような構成を用いることで、アイソレーションをより向上させることができる。
【0080】
<変形例2>
上述の実施の形態においては、サブ基板21の下面21cが露出している例について説明した。しかしながら、サブ基板21の下面21cを樹脂でモールドするようにしてもよい。
【0081】
図11は、変形例2によるアンテナモジュール100Bの断面図である。
図11に示すアンテナモジュール100Bの断面図は、上述の
図5に示すアンテナモジュール100の断面図に対して、サブアレイアンテナ20をサブアレイアンテナ20Bに変更したものである。サブアレイアンテナ20Bは、上述のサブアレイアンテナ20に対して、接地端子28を接地端子28Bに変更するとともに、サブ基板21の下面21c全体を封止樹脂Mでモールドしたものである。その他の構造については、上述のアンテナモジュール100と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0082】
封止樹脂Mは、Z軸方向に厚みを有している。接地端子28Bは、封止樹脂Mを貫通する状態でZ軸方向に延在する。接地端子28Bの一方の端部は封止樹脂Mの上面(サブ基板21の下面21c)においてビア27に接続され、接地端子28Bの他方の端部ははんだバンプ29を介してメイン基板10の接地電極12に接続される。なお、封止樹脂Mの下面とメイン基板10の上面10aとの間には、はんだバンプ29の厚みに相当する空間が形成される。
【0083】
このように、サブ基板21の下面21cがZ軸方向に厚みを有する封止樹脂Mでモールドされることによって、互いに隣り合う一方のサブアレイアンテナ20Bの接地電極24から互いの接地端子28Bを介して他方のサブアレイアンテナ20Bの接地電極24に至るまでの経路をより長くなる。そのため、互いに隣り合う一方のサブアレイアンテナ20Aから互いの接地端子28Bを介して他方のサブアレイアンテナ20Aに回り込む電流を小さくすることができる。その結果、互いに隣り合うサブアレイアンテナ20B間のアイソレーションをより向上させることができる。
【0084】
<変形例3>
上述の実施の形態においては、サブ基板21の下面21cとメイン基板10の上面10aとの間に空間が形成される例について説明した。しかしながら、サブ基板21の下面21cとメイン基板10の上面10aとの間を樹脂でモールドするようにしてもよい。
【0085】
図12は、変形例3によるアンテナモジュール100Cの断面図である。
図12に示すアンテナモジュール100Cの断面図は、上述の
図5に示すアンテナモジュール100の断面図に対して、封止樹脂M1を追加したものである。その他の構造については、上述のアンテナモジュール100と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0086】
封止樹脂M1は、サブ基板21の下面21cとメイン基板10の上面10aとの間に充填される。なお、
図12には、互いに隣り合うサブ基板21同士の空間Sの一部にも、封止樹脂M1が充填されている例が示されている。
【0087】
このように、サブ基板21の下面21cとメイン基板10の上面10aとの間が封止樹脂M1でモールドされてもよい。
【0088】
<変形例4>
上述の実施の形態においては、多数のアンテナ素子22が実装される基板が、複数のサブ基板21に分割される例について説明した。しかしながら、多数のアンテナ素子22が実装される基板は、必ずしも分割されていることに限定されず、1つの基板としてもよい。
【0089】
図13は、変形例4によるアンテナモジュール100Dの断面図である。
図13に示すアンテナモジュール100Dの断面図は、上述の
図5に示すアンテナモジュール100の断面図に示す空間Sの下面側の部分を連結させることによって、複数のサブ基板21を1つのサブ基板21Dに変更しつつ、上述の
図5に示す空間Sに相当する部分に溝部(スリット)Gを形成したものである。その他の構造については、上述のアンテナモジュール100と同じである。
【0090】
すなわち、アンテナモジュール100Dは、1つのサブ基板21Dと、平板状の複数のアンテナ素子22とを備える。サブ基板21Dは、上面21aと、上面21aと対向する下面21cと、上面21aよりも下面21c側に窪んだ溝部Gとを有する。複数のアンテナ素子22のうちの溝部Gに隣接する位置に配置されるアンテナ素子の面中心と溝部Gとの距離Bgが、λ/9以上かつP/2以下である。
【0091】
このようなアンテナモジュール100Dにおいても、上述の実施の形態と同様に、アンテナ素子22単体の特性を劣化させることなく、アレイアンテナ全体でのサイドローブレベルを抑制することができる。
【0092】
また、サブ基板21Dにおいては、熱などによるサブ基板21Dの変形を溝部Gにおいて吸収できる。そのため、サブ基板21Dが大型化しても、サブ基板21Dの反りを抑制することができる。
【0093】
<変形例5>
上述の実施の形態においては各サブ基板21に16個のアンテナ素子22を4×4の二次元状に配列する例について説明したが、各サブ基板におけるアンテナ素子22の数および配列はこれに限定されない。たとえば、各サブ基板に2個のアンテナ素子22を1×2の一次元状に配列するようにしてもよい。各サブ基板当たりのアンテナ素子22の個数を少なくして互いに隣り合うサブ基板同士の間により多くの空間(空気層)を形成することによって、各アンテナ素子22から放射されるビームのばらつきを一層抑制できる。
【0094】
図14は、本変形例5によるサブアレイアンテナ20Eの平面図である。各サブアレイアンテナ20Eにおいては、長方形状のサブ基板21Eの上面に、2個のアンテナ素子22が1×2の一次元状に配列されている。このようなサブ基板21Eが、メイン基板上に4×2の二次元状に8つ配列される。隣り合うサブ基板21E同士の間には空間(空気層)が形成される。このように、16個のアンテナ素子22を1つのサブ基板にまとめて配列するのではなく、8つのサブ基板21Eに分けて配列することによって、上述の
図3に示すサブアレイアンテナ20と同様に16個のアンテナ素子22を4×4の二次元状に配列しつつ、隣り合うサブ基板21E同士の間により多くの空間を形成して各アンテナ素子22から放射されるビームのばらつきを一層抑制することができる。
【0095】
なお、
図14において、16個のアンテナ素子22にそれぞれ付された1から16までの番号は、各アンテナ素子22の配置を示す。
【0096】
本願発明者等は、上述の
図3に示す場合(16個のアンテナ素子22が1つのサブ基板21にまとめて配置される場合)と、
図14に示す場合(16個のアンテナ素子22が8つのサブ基板21Eに分けて配置される場合)とのそれぞれにおいて、各アンテナ素子22から放射される電波の特性をシミュレーションによって確認した。
【0097】
図15は、
図3に示す各アンテナ素子22から放射される、X軸方向を偏波方向とする電波の特性を示す図である。
図16は、
図3に示す各アンテナ素子22から放射される、Y軸方向を偏波方向とする電波の特性を示す図である。
【0098】
図17は、
図14に示す各アンテナ素子22から放射される、X軸方向を偏波方向とする電波の特性を示す図である。
図18は、
図14に示す各アンテナ素子22から放射される、Y軸方向を偏波方向とする電波の特性を示す図である。
【0099】
なお、
図15~
図18において、横軸はZ軸方向を0度としたときの電波の放射角度を示し、縦軸は電波のゲインを示す。また、
図15~
図18に示される特性曲線に付された数値は、上述の
図14に示す各アンテナ素子22の配置に対応している。すなわち、たとえば、
図16および
図17において「16」が付された一点鎖線で示す曲線は、
図14において「16」と付された位置に配置されるアンテナ素子22から放射される電波の特性を示す。
【0100】
図15、
図16に示すシミュレーション結果から、
図3に示す場合(16個のアンテナ素子22が1つのサブ基板21にまとめて配置される場合)には、各アンテナ素子22から放射される電波のゲインのばらつきが比較的大きいことが理解できる。これに対し、
図17、
図18に示すシミュレーション結果から、
図14に示す場合(16個のアンテナ素子22が8つのサブ基板21Eに分けて配置される場合)には、
図3に示す場合に比べて、電波の放射角度のばらつきをほぼ同等にしつつ、電波のゲインのばらつきを抑制することができることが理解できる。
【0101】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
1 通信装置、10 メイン基板、10a,21a 上面、11,28,28B 接地端子、12,24,25 接地電極、20,20A,20B,20E サブアレイアンテナ、21,21D,21E サブ基板、21b 端面、21c 下面、22 アンテナ素子、22a 無給電素子、22b 給電素子、23 給電配線、26,27 ビア、29 はんだバンプ、100,100A,100B,100C,100D アンテナモジュール、111A~111H,113A~113H,117A,117B スイッチ、112AR~112DR ローノイズアンプ、112AT~112HT パワーアンプ、114A~114H 減衰器、115A~115H 移相器、116A,116B 信号合成/分波器、118A,118B ミキサ、119A,119B 増幅回路、130,130A~130H フィルタ装置、SP1,SP2 給電点。