IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

特許7156520表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法
<>
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図1
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図2
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図3
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図4
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図5
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図6
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図7
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図8
  • 特許-表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/22 20060101AFI20221012BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20221012BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20221012BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C03C17/22 Z
C09K3/18 101
H01G4/30 513
H01G4/30 517
H01G4/30 201F
H01F27/32 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021522707
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2020017226
(87)【国際公開番号】W WO2020241122
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019097689
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大川 紀行
(72)【発明者】
【氏名】野村 善行
(72)【発明者】
【氏名】森 智彦
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-206417(JP,A)
【文献】特開平09-194234(JP,A)
【文献】特開2002-043167(JP,A)
【文献】特開2016-031992(JP,A)
【文献】特開平05-090080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-23/00
C09D 1/00-10/00
101/00-201/10
C09K 3/18
H01C 1/00-1/16
H01F 27/00-27/06
H01G 4/00-4/10
4/14-4/22
4/224
4/255-4/40
13/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック素体と、
前記セラミック素体の表面の一部に設けられた電極層とを備える電子部品であって、
前記セラミック素体及び前記電極層の少なくとも一方の表面にガラスが存在し、
前記ガラスの表面にケイ酸塩皮膜が設けられており、
前記ガラスは、少なくとも1種の多価金属イオンを含み、
前記ケイ酸塩皮膜は、前記ガラスと共通する多価金属イオンを含む、電子部品。
【請求項2】
前記ガラスは、ホウケイ酸ガラスである、請求項に記載の電子部品。
【請求項3】
前記ガラス及び前記ケイ酸塩皮膜に共通して含まれる前記多価金属イオンは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びSnからなる群より選択される少なくとも1種のイオンである、請求項又はに記載の電子部品。
【請求項4】
セラミック素体と、前記セラミック素体の表面の一部に設けられた電極層とを備え、前記セラミック素体及び前記電極層の少なくとも一方の表面にガラスが存在し、前記ガラスは少なくとも1種の多価金属イオンを含む電子部品を用意する工程と、
前記ガラスの表面に、アルカリ金属ケイ酸塩を含むコート剤を塗布する工程を備え、
前記ガラスに含まれる前記多価金属イオンが前記ガラスの表面に溶出することにより、前記ガラスと共通する多価金属イオンを含むケイ酸塩皮膜が前記ガラスの表面に形成される、ケイ酸塩皮膜の形成方法。
【請求項5】
前記コート剤を塗布する工程では、前記電子部品の表面に前記コート剤が塗布され、
前記電子部品の表面のうち、前記ガラスの表面にのみ選択的に前記ケイ酸塩皮膜が形成される、請求項に記載のケイ酸塩皮膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの表面に水分が付着すると、金属イオンなどのガラス成分が溶出することが知られている。例えば、特許文献1には、ガラス基板の表面にシリコーン系樹脂皮膜を有する撥水ガラスにおいて、ガラス基板から溶出したアルカリ成分によってシリコーン系樹脂が加水分解を受け、撥水性が低下することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-330028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなガラス成分の溶出は、積層セラミックコンデンサなどの電子部品においても問題となる。積層セラミックコンデンサなどの電子部品を構成するセラミック素体又は外部電極の表面には、ガラスが存在することがある。その場合、外部電極の表面にめっき処理を実施する際や高湿環境下で電子部品を使用する際に、表面にガラスが存在する部分からガラス成分が溶出するおそれがある。ガラス成分が溶出した部分に水分が浸入すると、電気絶縁性や寿命特性の劣化が生じ、その結果、電子部品の耐湿信頼性が低下してしまう。
【0005】
電子部品への水分の浸入を防止する方法として、電子部品の表面に撥水膜を形成する方法が提案されている。撥水膜を形成することにより、ガラス成分が溶出した場合であっても、その部分に撥水性を付与することができる。しかし、撥水膜を形成する方法は、ガラス成分の溶出そのものを抑制する方法とは言えない。
【0006】
なお、上記の問題は、電子部品に限らず、表面に存在するガラスからガラス成分が溶出するおそれがある物品に共通する問題である。
【0007】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、ガラス成分の溶出を抑制することが可能なケイ酸塩皮膜がガラスの表面に設けられた表面改質ガラスを提供することを目的とする。本発明はまた、上記ケイ酸塩皮膜がガラスの表面に設けられた電子部品を提供すること、及び、上記ケイ酸塩皮膜をガラスの表面に形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面改質ガラスは、ガラスと、上記ガラスの表面に設けられたケイ酸塩皮膜とを備える表面改質ガラスであって、上記ガラスは、少なくとも1種の多価金属イオンを含み、上記ケイ酸塩皮膜は、上記ガラスと共通する多価金属イオンを含む。
【0009】
本発明の電子部品は、セラミック素体と、上記セラミック素体の表面の一部に設けられた電極層とを備える電子部品であって、上記セラミック素体及び上記電極層の少なくとも一方の表面にガラスが存在し、上記ガラスの表面にケイ酸塩皮膜が設けられており、上記ガラスは、少なくとも1種の多価金属イオンを含み、上記ケイ酸塩皮膜は、上記ガラスと共通する多価金属イオンを含む。
【0010】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法は、少なくとも1種の多価金属イオンを含むガラスの表面に、アルカリ金属ケイ酸塩を含むコート剤を塗布する工程を備え、上記ガラスに含まれる上記多価金属イオンが上記ガラスの表面に溶出することにより、上記ガラスと共通する多価金属イオンを含むケイ酸塩皮膜が上記ガラスの表面に形成される。
【0011】
本明細書において、多価金属イオンとは、価数が2価以上の金属イオンを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガラス成分の溶出を抑制することが可能なケイ酸塩皮膜をガラスの表面に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の表面改質ガラスの一例を模式的に示す側面図である。
図2図2は、外部電極の表面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す側面図である。
図3図3は、外部電極とセラミック素体との境界面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す側面図である。
図4図4は、セラミック素体の表面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す側面図である。
図5図5は、セラミック素体の表面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの別の一例を模式的に示す側面図である。
図6図6は、セラミック素体又は外部電極の表面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す拡大側面図である。
図7図7は、実施例2の試料に形成された外部電極の一部を示すTEM画像である。
図8図8は、図7中の破線で囲んだ部分を拡大したTEM画像である。
図9図9は、実施例2の試料を構成する皮膜及びガラスの組成を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の表面改質ガラス、電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0015】
以下に示す図面は模式的なものであり、その寸法や縦横比の縮尺などは実際の製品とは異なる場合がある。
【0016】
[表面改質ガラス]
図1は、本発明の表面改質ガラスの一例を模式的に示す側面図である。
図1に示す表面改質ガラス1は、ガラス2と、ケイ酸塩皮膜3とを備える。ケイ酸塩皮膜3は、ガラス2の表面に設けられている。
【0017】
本発明の表面改質ガラスを構成するガラスは、少なくとも1種の多価金属イオンを含む。多価金属イオンとしては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びSnからなる群より選択される少なくとも1種のイオンなどが挙げられる。
【0018】
本発明の表面改質ガラスにおいて、ガラスに含まれる多価金属イオンなどのイオンは、透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)により表面改質ガラスの組成を分析して、ガラスに含まれる元素の種類を分析することにより確認することができる。ガラスに含まれる多価金属イオンの価数は変動する場合もあるが、ガラスに含まれる元素の種類を分析すれば充分であり、価数まで分析する必要はない。本発明の電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法においても、同じ方法で確認することができる。
【0019】
本発明の表面改質ガラスを構成するガラスは、さらに、少なくとも1種の1価金属イオンを含んでもよい。1価金属イオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選択される少なくとも1種のイオンなどが挙げられる。
【0020】
本発明の表面改質ガラスを構成するガラスの種類は特に限定されないが、例えば、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0021】
本発明の表面改質ガラスにおいて、ガラスの形状などは特に限定されない。また、本発明の表面改質ガラスには、表面の一部にガラスが存在し、そのガラスの表面にケイ酸塩皮膜が設けられた物品も含まれる。
【0022】
本発明の表面改質ガラスを構成するケイ酸塩皮膜は、ガラスと共通する多価金属イオンを含む。
【0023】
本発明の表面改質ガラスを構成するケイ酸塩皮膜は、後述する[ケイ酸塩皮膜の形成方法]により形成されることが好ましい。この場合、ケイ酸塩皮膜は、ガラスに含まれる多価金属イオンとケイ酸イオンとが反応することにより形成されるため、ガラスに由来する多価金属イオンを含むことになる。
【0024】
したがって、ガラス及びケイ酸塩皮膜に共通して含まれる多価金属イオンとしては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びSnからなる群より選択される少なくとも1種のイオンなどが挙げられる。
【0025】
本発明の表面改質ガラスにおいて、ケイ酸塩皮膜に含まれる多価金属イオンなどのイオンは、TEM-EDXにより表面改質ガラスの組成を分析して、ケイ酸塩皮膜に含まれる元素の種類を分析することにより確認することができる。ケイ酸塩皮膜に含まれる多価金属イオンの価数は変動する場合もあるが、ケイ酸塩皮膜に含まれる元素の種類を分析すれば充分であり、価数まで分析する必要はない。本発明の電子部品、及び、ケイ酸塩皮膜の形成方法においても、同じ方法で確認することができる。
【0026】
本発明の表面改質ガラスにおいて、ケイ酸塩皮膜に含まれる多価金属イオンの含有量は、特に限定されるものではない。
【0027】
ケイ酸塩皮膜とガラスとの界面は、TEMを用いた断面観察により確認することができる。したがって、上述した方法により、ケイ酸塩皮膜の表面からガラスの内部に向かって深さ方向に表面改質ガラスの組成を分析した際、ケイ酸塩皮膜とガラスとの界面において各イオンの含有量が増加又は減少するかを確認すればよい。
【0028】
本発明の表面改質ガラスを構成するケイ酸塩皮膜は、さらに、少なくとも1種の1価金属イオンを含んでもよい。ケイ酸塩皮膜に含まれる1価金属イオンは、ガラスと共通してもよいし、共通しなくてもよい。
【0029】
本発明の表面改質ガラスを構成するケイ酸塩皮膜は、他のガラス成分を含んでもよい。例えば、本発明の表面改質ガラスを構成するガラスがホウケイ酸ガラスである場合、ケイ酸塩皮膜は、B(ホウ素)イオンを含んでもよい。
【0030】
[電子部品]
本発明の電子部品は、セラミック素体と、上記セラミック素体の表面の一部に設けられた電極層とを備える。本発明の電子部品では、セラミック素体及び電極層の少なくとも一方の表面にガラスが存在し、上記ガラスの表面にケイ酸塩皮膜が設けられている。
【0031】
以下、本発明の電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサを例にとって説明する。
【0032】
本発明において、電子部品は、積層セラミックコンデンサのようなチップ部品に限らず、回路モジュールのような複合部品であってもよいし、回路基板や多層基板のような電子基板であってもよい。さらに、電極層により構成される電極は、外部電極に限らず、任意の電極であってもよい。例えば、パッド電極、ランド電極、コイル状電極、回路パターン電極であってもよい。すなわち、本発明の電子部品は、外部電極などの電極に限らず、電子基板などの回路に適用してもよい。
【0033】
図2は、外部電極の表面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す側面図である。
図2に示す積層セラミックコンデンサ10は、直方体状又は略直方体状のセラミック素体11と、セラミック素体11の両端面にそれぞれ設けられた外部電極12及び13とを備える。
【0034】
図2に示す積層セラミックコンデンサ10では、外部電極12及び13の表面の一部にガラス14が存在し、ガラス14の表面にケイ酸塩皮膜15が設けられている。
【0035】
セラミック素体11の内部には、両端面に交互に引き出された複数の内部電極16及び17が設けられている。一方の端面に引き出された内部電極16は外部電極12に接続されており、他方の端面に引き出された内部電極17は外部電極13に接続されている。
【0036】
セラミック素体11は、例えば、チタンを含む金属酸化物を含有するセラミック材料から構成される。このような金属酸化物としては、例えばBaTiO等が挙げられる。
【0037】
外部電極12及び13は、それぞれ、1層の電極層から構成されていてもよいし、複数の電極層から構成されていてもよい。外部電極12及び13は、それぞれ、金属及びガラスを含む焼付け電極であってもよいし、金属及び樹脂を含む樹脂電極であってもよい。また、焼付け電極又は樹脂電極の表面にめっき電極が設けられていてもよい。
【0038】
図2では、外部電極12及び13は、セラミック素体11の端面に加えて、セラミック素体11の上下面の各一部にまで回り込んでいるが、セラミック素体11の表面のうち任意の部位に設けられていればよい。
【0039】
図3は、外部電極とセラミック素体との境界面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す側面図である。
図3に示す積層セラミックコンデンサ10Aでは、外部電極12とセラミック素体11との境界面の一部、及び、外部電極13とセラミック素体11との境界面の一部にガラス14が存在し、ガラス14の表面にケイ酸塩皮膜15が設けられている。ケイ酸塩皮膜15は、外部電極12又は13に覆われていないガラス14の表面に設けられている。
【0040】
図4は、セラミック素体の表面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す側面図である。
図4に示す積層セラミックコンデンサ10Bでは、セラミック素体11の表面の一部にガラス14が存在し、ガラス14の表面にケイ酸塩皮膜15が設けられている。
【0041】
図5は、セラミック素体の表面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの別の一例を模式的に示す側面図である。
図5に示す積層セラミックコンデンサ10Cでは、セラミック素体11の表面の全体にガラス14が存在し、ガラス14の表面にケイ酸塩皮膜15が設けられている。ただし、セラミック素体11の表面のうち、外部電極12と内部電極16とが接続されている部分、及び、外部電極13と内部電極17とが接続されている部分にはガラス14は存在していない。ケイ酸塩皮膜15は、外部電極12又は13に覆われているガラス14の表面にも設けられている。
【0042】
本発明の電子部品においては、電子部品の最も外側にケイ酸塩皮膜が設けられていればよい。そのため、本発明の電子部品には、以下の図6に示すような箇所にケイ酸塩皮膜が設けられている場合も含まれる。
【0043】
図6は、セラミック素体又は外部電極の表面にガラスが存在する積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す拡大側面図である。
ガラス14Aは外部電極12の一部が欠けた箇所におけるセラミック素体11及び外部電極12の表面に存在し、ガラス14Aの表面にケイ酸塩皮膜15Aが設けられている。ガラス14Bは外部電極12の一部が凹んだ箇所の表面に存在し、ガラス14Bの表面にケイ酸塩皮膜15Bが設けられている。ケイ酸塩皮膜15Bは外部電極12と接しておらず、離れている。ガラス14Cにはクラックが入っており、ガラス14Cのクラックの表面にケイ酸塩皮膜15Cが設けられている。
【0044】
本発明の電子部品を構成するガラスは、少なくとも1種の多価金属イオンを含む。多価金属イオンとしては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びSnからなる群より選択される少なくとも1種のイオンなどが挙げられる。
【0045】
本発明の電子部品を構成するガラスは、さらに、少なくとも1種の1価金属イオンを含んでもよい。1価金属イオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選択される少なくとも1種のイオンなどが挙げられる。
【0046】
本発明の電子部品を構成するガラスの種類は特に限定されないが、例えば、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0047】
本発明の電子部品を構成するケイ酸塩皮膜は、ガラスと共通する多価金属イオンを含む。
【0048】
本発明の電子部品を構成するケイ酸塩皮膜は、後述する[ケイ酸塩皮膜の形成方法]により形成されることが好ましい。この場合、ケイ酸塩皮膜は、ガラスに含まれる多価金属イオンとケイ酸イオンとが反応することにより形成されるため、ガラスに由来する多価金属イオンを含むことになる。
【0049】
したがって、ガラス及びケイ酸塩皮膜に共通して含まれる多価金属イオンとしては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びSnからなる群より選択される少なくとも1種のイオンなどが挙げられる。
【0050】
本発明の電子部品において、ケイ酸塩皮膜に含まれる多価金属イオンの含有量は、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明の電子部品を構成するケイ酸塩皮膜は、さらに、少なくとも1種の1価金属イオンを含んでもよい。ケイ酸塩皮膜に含まれる1価金属イオンは、ガラスと共通してもよいし、共通しなくてもよい。
【0052】
本発明の電子部品を構成するケイ酸塩皮膜は、他のガラス成分を含んでもよい。例えば、本発明の電子部品を構成するガラスがホウケイ酸ガラスである場合、ケイ酸塩皮膜は、B(ホウ素)イオンを含んでもよい。
【0053】
[ケイ酸塩皮膜の形成方法]
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法は、少なくとも1種の多価金属イオンを含むガラスの表面に、アルカリ金属ケイ酸塩を含むコート剤を塗布する工程を備える。本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法では、ガラスに含まれる多価金属イオンがガラスの表面に溶出することにより、ガラスと共通する多価金属イオンを含むケイ酸塩皮膜がガラスの表面に形成される。
【0054】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法においては、多価金属イオンの溶出を利用して、ガラスの表面にケイ酸塩皮膜を形成することを特徴としている。ケイ酸塩皮膜が形成されるメカニズムとしては、コート剤に含まれるケイ酸イオンの負電荷が、ガラスの表面から溶出した多価金属イオンの正電荷によって中和されるため、負電荷を失って析出することが考えられる。また、ガラスの表面から多価金属イオンが溶出することでガラスの表面の水の活量が低下するため、コート剤に含まれるケイ酸イオンが塩析することも考えられる。
【0055】
上記の方法によってケイ酸塩皮膜をガラスの表面に形成することにより、多価金属イオンなどのガラス成分が水又は水溶液などへ溶出することを抑制することができる。その結果、緻密なガラスが維持される。
【0056】
また、多価金属イオンが溶出した部分にケイ酸塩皮膜が形成されるため、ガラスの形状が複雑であってもケイ酸塩皮膜が均一に形成される。したがって、対象物の形状に関係なく、ケイ酸塩皮膜を均一に形成することができる。
【0057】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法は、対象物の表面の一部にガラスが存在するような場合に適用してもよい。この場合、対象物の表面の全体にコート剤を塗布したとしても、多価金属イオンが溶出するガラスの表面にのみ選択的にケイ酸塩皮膜を形成することができる。
【0058】
例えば、本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法は、セラミック素体と、上記セラミック素体の表面の一部に設けられた電極層とを備える電子部品を用意する工程をさらに備え、上記ガラスは、上記セラミック素体及び上記電極層の少なくとも一方の表面に存在してもよい。
【0059】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法を電子部品に適用する場合、ガラス成分の溶出を抑制することにより、[発明が解決しようとする課題]において説明した電子部品の耐湿信頼性の低下を抑制することができる。
【0060】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法を電子部品に適用する場合、コート剤を塗布する工程では、電子部品の表面にコート剤が塗布されてもよい。電子部品の表面にコート剤を塗布することにより、電子部品の表面のうち、ガラスの表面にのみ選択的にケイ酸塩皮膜が形成される。したがって、電極層の表面にめっき処理を実施する際にも、ケイ酸塩皮膜によってめっき処理が阻害されることがないため、良好なめっき付き性が得られる。
【0061】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法において用いられるガラスは、少なくとも1種の多価金属イオンを含む。多価金属イオンとしては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga及びSnからなる群より選択される少なくとも1種のイオンなどが挙げられる。
【0062】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法において用いられるガラスは、さらに、少なくとも1種の1価金属イオンを含んでもよい。1価金属イオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選択される少なくとも1種のイオンなどが挙げられる。
【0063】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法において用いられるガラスの種類は特に限定されないが、例えば、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0064】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法において用いられるコート剤は、アルカリ金属ケイ酸塩を含む。アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどの水ガラス系材料を用いることができる。また、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどの試薬を用いてもよいし、その他の水溶性のアルカリ金属ケイ酸塩を用いてもよい。例えば、日産化学株式会社、日本化学工業株式会社などから市販されているケイ酸リチウム溶液などを用いることができる。コート剤中のアルカリ金属ケイ酸塩の含有量は、例えば、0.1重量%以上、50重量%以下である。ケイ酸塩皮膜が薄くなるほど耐水性が向上しにくくなるため、コート剤中のアルカリ金属ケイ酸塩の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。一方、コート剤の粘度が高くなるほどコート剤が細孔に入りにくくなるため、コート剤中のアルカリ金属ケイ酸塩の含有量は50重量%以下であることが好ましい。
【0065】
コート剤は、溶剤をさらに含む。コート剤は、無機溶剤を含むことが好ましく、無機溶剤及び有機溶剤を含むことがより好ましい。
【0066】
無機溶剤としては、例えば、水などが挙げられる。コート剤が無機溶剤を含む場合、コート剤中の無機溶剤の含有量は、例えば、50重量%以上、99.9重量%以下である。
【0067】
有機溶剤としては、例えば、アルコール類やグリコール類などの水溶性の有機溶剤が挙げられる。コート剤が有機溶剤を含む場合、コート剤中の有機溶剤の含有量は、例えば、1重量%以上、30重量%以下である。有機溶剤が多くなるほどアルカリ金属ケイ酸塩がコート剤に溶けにくくなるため、コート剤中の有機溶剤の含有量は30重量%以下であることが好ましい。
【0068】
コート剤は、アルカリ金属ケイ酸塩及び溶剤に加えて、添加剤として、表面調整剤、カップリング剤、ガラスのエッチング剤、ケイ酸塩の硬化触媒、充填剤などを含んでもよい。コート剤が添加剤を含む場合、添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0069】
表面調整剤は、コート剤の表面張力を低下させるために用いられる。表面調整剤としては、例えば、水性シリコーン、アルコール類、グリコール類などが挙げられる。コート剤が表面調整剤を含む場合、コート剤中の表面調整剤の含有量は、例えば、0.01重量%以上、20重量%以下である。コート剤の表面張力が高くなるほどケイ酸塩皮膜を細孔に形成することが難しくなるため、コート剤中の表面調整剤の含有量は0.01重量%以上であることが好ましい。一方、表面調整剤が多くなるほどアルカリ金属ケイ酸塩がコート剤に溶けにくくなるため、コート剤中の表面調整剤の含有量は20重量%以下であることが好ましい。
【0070】
カップリング剤は、コート剤の表面張力を調整するために用いられる。コート剤がカップリング剤を含む場合、コート剤中のカップリング剤の含有量は、例えば、0.01重量%以上、5重量%以下である。
【0071】
ガラスのエッチング剤としては、例えば、フッ化物イオン、各種錯化剤などが挙げられる。錯化剤の具体例としては、エチレンジアミン、エチレンジアミン4酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、チオ尿素、アンモニア、酢酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、グリコール類、多価アルコールなどが挙げられる。酸はH型でもよいし、水溶性であればナトリウム、カリウム塩などでもよいが、多価金属塩はケイ酸と不溶性の塩を析出するので好ましくない。コート剤がガラスのエッチング剤を含む場合、コート剤中のガラスのエッチング剤の含有量は、例えば、1ppm以上、10,000ppm以下である。ガラスのエッチング剤が多くなるほどケイ酸塩皮膜の形成中にガラス成分が溶出しやすくなるため、コート剤中のガラスのエッチング剤の含有量は10,000ppm以下であることが好ましい。
【0072】
ケイ酸塩の硬化触媒としては、例えば、リン酸、多価アルコール、多価遷移金属などが挙げられる。ケイ酸塩の硬化触媒の具体例としては、ピロリン酸、グリオキザール、塩化亜鉛、塩化銅、塩化鉄、塩化アルミニウムなどが挙げられる。酸はH型でもよいし、水溶性であればナトリウム、カリウム塩などでもよいが、多価金属塩はケイ酸と不溶性の塩を析出するので好ましくない。また、金属イオンは硫酸塩、塩化物塩、炭酸塩など、水溶性であれば陰イオン種は選ばないが、配合量が多いとケイ酸塩と不溶性の塩を析出するので好ましくない。コート剤がケイ酸塩の硬化触媒を含む場合、コート剤中のケイ酸塩の硬化触媒の含有量は、例えば、1ppm以上、10,000ppm以下である。ケイ酸塩の硬化触媒が多くなるほどコート剤の貯蔵安定性(ポットライフ)が低下しやすくなるため、コート剤中のケイ酸塩の硬化触媒の含有量は10,000ppm以下であることが好ましい。
【0073】
充填剤は、水に分散可能で、かつケイ酸塩水溶液のアルカリ下で溶解しないものが好ましい。このような充填剤としては、例えば、ジルコニア、アルミナなどのナノフィラーが挙げられる。その他、シリカ、石英、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカなど、水に分散するものであれば特に限定されない。コート剤が充填剤を含む場合、コート剤中の充填剤の含有量は、例えば、1ppm以上、200,000ppm以下である。充填剤が多くなるほど皮膜強度が低下しやすくなるため、コート剤中の充填剤の含有量は200,000ppm以下であることが好ましい。
【0074】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法において、ガラスの表面にコート剤を塗布する方法としては、例えば、浸漬、スプレーコート、印刷、スピンコートなどの各種工法を用いることができる。
【0075】
ケイ酸塩皮膜を形成するためには、コート剤が液体である必要があり、また、ある程度低い粘度(例えば1Pa・s以下)を有する必要がある。そのため、ケイ酸塩皮膜を形成するための処理温度は、常温からコート剤が沸騰するまでの温度であることが好ましく、例えば、常温である。処理温度が低くなるほど反応性が低下しやすくなり、処理温度が高くなるほどコート剤の貯蔵安定性(ポットライフ)が低下しやすくなる。
本明細書において、常温とは、JIS Z 8703に規定される温度範囲を意味し、具体的には5℃以上35℃以下の温度範囲を意味する。
【0076】
ケイ酸塩皮膜を形成するための処理時間は、5秒間以上、24時間以下であることが好ましく、例えば、1分間である。
【0077】
コート剤の表面張力は、10mN/m以上、72mN/m以下であることが好ましい。
【0078】
コート剤のpHは、10以上、12.5以下であることが好ましい。
【0079】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法は、ガラスの表面にケイ酸塩皮膜が形成された後、洗浄工程をさらに備えることが好ましい。洗浄工程により、余分なコート剤などを洗い落とすことができる。
【0080】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法は、洗浄工程の後、乾燥工程をさらに備えてもよい。乾燥工程により、水分を除去することができる。
【0081】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法により、ガラスと共通する多価金属イオンを含むケイ酸塩皮膜がガラスの表面に形成される。すなわち、本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法により、本発明の表面改質ガラスを製造することができる。また、本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法を電子部品に適用することにより、本発明の電子部品を製造することができる。
【0082】
本発明のケイ酸塩皮膜の形成方法により形成されるケイ酸塩皮膜は、[表面改質ガラス]において説明したケイ酸塩皮膜と同じ構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【実施例
【0083】
以下、本発明の表面改質ガラス、及び、電子部品をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
ケイ酸リチウム溶液:25重量%、水:残りを含むコート剤を調製した。ホウケイ酸ガラスから構成される約1cm角のガラス基板を準備し、上記コート剤に常温で1分間浸漬させた。その後、ガラス基板を水洗し、乾燥させることにより、実施例1の試料を作製した。
【0085】
(比較例1)
実施例1と同様に、ホウケイ酸ガラスから構成される約1cm角のガラス基板を準備した。実施例1と異なり、ガラス基板を上記コート剤には浸漬させず、そのまま比較例1の試料とした。
【0086】
実施例1及び比較例1の試料を常温の純水に15分間浸漬させた。ホウケイ酸ガラスに含まれるAl、B、Ba及びCaが純水に溶出した量を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により定量した。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1より、実施例1では、比較例1に比べてガラス成分の溶出が抑制されていることが分かる。これは、ガラス基板をコート剤に浸漬させることにより、ガラスの表面にケイ酸塩皮膜が形成されたためと考えられる。
【0089】
(実施例2)
BaTiOを基材とするセラミック素体に対して、外部電極として、銅及びホウケイ酸ガラスを含む焼付け電極を形成することにより、積層セラミックコンデンサを作製した。得られた積層セラミックコンデンサを、実施例1で用いたコート剤に常温で1分間浸漬させた。その後、積層セラミックコンデンサを水洗し、乾燥させることにより、実施例2の試料を作製した。
【0090】
実施例2の試料に形成された外部電極について、以下の方法によりTEM観察を行った。
集束イオンビーム(FIB)加工により外部電極表面の断面サンプルを取り出し、TEM(JEOL社製、JEM-2200FS)にてTEM観察を実施した。FIB加工時のサンプルへのダメージを回避するために、外部電極表面には、FIB加工の前にPtスパッタ及びカーボンデポジションを行った。
【0091】
図7は、実施例2の試料に形成された外部電極の一部を示すTEM画像である。図8は、図7中の破線で囲んだ部分を拡大したTEM画像である。
図7及び図8に示すように、ガラスの表面には皮膜が形成されているのに対し、銅の表面には皮膜が形成されていないことが確認できる。
【0092】
さらに、深さ方向の組成を調査するため、TEM観察と同じ装置を用い、図8中のXからYに向かって、EDXによるライン分析を行った。スポット径は1.0nm、積算回数は100回とした。
【0093】
図9は、実施例2の試料を構成する皮膜及びガラスの組成を示すグラフである。
図9より、皮膜にはガラスと共通する多価金属イオンの元素が含まれていること、及び、皮膜とガラスとの境界を挟んで、各元素の含有量が緩やかに変化していることが確認できる。皮膜にはSiが含まれているため、ガラスの表面にケイ酸塩皮膜が形成されていることが分かる。
【0094】
多価金属イオンの元素のうち、第2族元素であるCa及びBaについては、ガラスとの界面に位置する皮膜に含まれるCa及びBaの含有量が、皮膜との界面に位置するガラスに含まれるCa及びBaの含有量よりも少なくなっている。一方、第2族元素以外の元素であるAl、Cu及びZnについては、ガラスとの界面に位置する皮膜に含まれるAl、Cu及びZnの含有量が、皮膜との界面に位置するガラスに含まれるAl、Cu及びZnの含有量よりも多くなっている。
【0095】
(実施例3)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:6重量%、無機溶剤としての水:94重量%を含むコート剤を調製した。コート剤の粘度、表面張力及びpHを測定した。コート剤の粘度は、粘度計(A&D製、SV-10)を用いて測定した。コート剤の表面張力は、滴数計(相互理化学硝子製作所製、JIS K-3362準拠)を用いて測定した。コート剤のpHは、pHメーター(堀場製作所製、pH電極として6367-10Dを使用)を用いて測定した。
【0096】
10mm角のガラス基板を準備し、上記コート剤に25℃で1分間、静置浸漬させた。その後、ガラス基板を水洗し、65℃で1時間乾燥させることにより、実施例3の試料を作製した。
【0097】
(実施例4)
ガラス基板をコート剤に静置浸漬させる時間を5分間に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4の試料を作製した。
【0098】
(実施例5)
ガラス基板をコート剤に静置浸漬させる時間を15分間に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例5の試料を作製した。
【0099】
(実施例6)
ガラス基板をコート剤に静置浸漬させる時間を30分間に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、実施例6の試料を作製した。
【0100】
(実施例7)
ガラス基板をコート剤に静置浸漬させる温度を15℃に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例7の試料を作製した。
【0101】
(実施例8)
ガラス基板をコート剤に静置浸漬させる温度を35℃に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例8の試料を作製した。
【0102】
(実施例9)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:1.2重量%、無機溶剤としての水:98.8重量%を含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例9の試料を作製した。
【0103】
(実施例10)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:3重量%、無機溶剤としての水:97重量%を含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例10の試料を作製した。
【0104】
(実施例11)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:12重量%、無機溶剤としての水:88重量%を含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例11の試料を作製した。
【0105】
(実施例12)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:18重量%、無機溶剤としての水:82重量%を含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例12の試料を作製した。
【0106】
(実施例13)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:12重量%、有機溶剤としてのブタノール:3重量%、無機溶剤としての水:残りを含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例13の試料を作製した。
【0107】
(実施例14)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:12重量%、ガラスのエッチング剤としてのエチレンジアミン4酢酸(EDTA):3,000ppm、無機溶剤としての水:残りを含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例14の試料を作製した。
【0108】
(実施例15)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:12重量%、ケイ酸塩の硬化触媒としてのピロリン酸:3,000ppm、無機溶剤としての水:残りを含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例15の試料を作製した。
【0109】
(実施例16)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:12重量%、充填剤としてのシリカ(日産化学社製、スノーテックス(登録商標)ST-UP):10,000ppm、無機溶剤としての水:残りを含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例16の試料を作製した。
【0110】
(実施例17)
アルカリ金属ケイ酸塩としてのケイ酸リチウム:12重量%、有機溶剤としてのブタノール:3重量%、ガラスのエッチング剤としてのエチレンジアミン4酢酸(EDTA):3,000ppm、ケイ酸塩の硬化触媒としてのピロリン酸:3,000ppm、充填剤としてのシリカ(日産化学社製、スノーテックス(登録商標)ST-UP):10,000ppm、無機溶剤としての水:残りを含むコート剤を調製したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例17の試料を作製した。
【0111】
(比較例2)
実施例3と同様に、10mm角のガラス基板を準備した。実施例3と異なり、ガラス基板をコート剤には静置浸漬させる処理を行わず、そのまま比較例2の試料とした。
【0112】
実施例3~17及び比較例2の試料を純水10gに浸漬し、60℃のオーブン中で2時間静置させた。その後、試料を取り出し、ICP発光分析により、純水に溶出したガラス成分の量[mmol]を定量した。さらに、実施例3~17については、ガラス成分の溶出量の抑制効果を評価するため、比較例2における溶出量に対する実施例3~17における溶出量の割合を求めた。結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2より、実施例3~17では、比較例2に比べてガラス成分の溶出が抑制されていることが分かる。そのため、実施例1と同様、ガラス基板をコート剤に浸漬させることにより、ガラスの表面にケイ酸塩皮膜が形成されたと考えられる。
【符号の説明】
【0115】
1 表面改質ガラス
2、14、14A、14B、14C ガラス
3、15、15A、15B、15C ケイ酸塩皮膜
10、10A、10B、10C 積層セラミックコンデンサ(電子部品)
11 セラミック素体
12、13 外部電極(電極層)
16、17 内部電極

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9