(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】超臨界流体クロマトグラフおよび超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/20 20060101AFI20221012BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20221012BHJP
G01N 30/16 20060101ALI20221012BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G01N30/20 Z
G01N30/02 N
G01N30/16 Z
G01N30/26 M
(21)【出願番号】P 2021525454
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2019023157
(87)【国際公開番号】W WO2020250318
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 克博
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-504238(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025547(WO,A1)
【文献】特開平05-307026(JP,A)
【文献】特表2015-509607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの吸引および吐出を行う吸引吐出部と、
前記吸引吐出部と第1流路を介して接続される第1サンプルループと、
前記第1サンプルループと第2流路を介して接続される第1流路切替部と、
前記第1流路切替部を第1切替状態としたときに第3流路を介して前記第2流路に接続されるサンプル容器と、
前記第1流路切替部を第2切替状態としたときに第4流路を介して前記第2流路に接続される第2流路切替部と、
を備え、
前記第2流路切替部を第3切替状態としたとき、前記第4流路が第2サンプルループに接続され、前記第2流路切替部を第4切替状態としたとき、前記第2サンプルループが超臨界流体としての溶媒が供給される分析流路に接続される、超臨界流体クロマトグラフ。
【請求項2】
前記第2流路切替部を前記第4切替状態として前記第2サンプルループが前記分析流路に接続されているとき、前記第1流路切替部を前記第1切替状態として前記吸引吐出部により前記サンプル容器内のサンプルを吸引し、前記第1サンプルループにサンプルを保持させる、請求項1に記載の超臨界流体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記超臨界流体クロマトグラフは、さらに、
前記分析流路に供給されたサンプルの検出を行う検出部と、
前記検出部において検出された特定のサンプルを回収する回収部と、
を備え、
前記分析流路に複数回に亘って供給されたサンプルに基づいて、前記回収部において前記特定のサンプルを回収する、請求項1または請求項2に記載の超臨界流体クロマトグラフ。
【請求項4】
前記超臨界流体クロマトグラフは、さらに、
前記第1流路切替部を第5切替状態としたときに第5流路を介して前記第2流路に接続される第1ドレイン、
を備える、請求項1に記載の超臨界流体クロマトグラフ。
【請求項5】
前記超臨界流体クロマトグラフは、さらに、
前記第2流路切替部を前記第3切替状態としたときに第6流路を介して前記第2サンプルループに接続される第2ドレイン、
を備える、請求項1に記載の超臨界流体クロマトグラフ。
【請求項6】
第1流路切替部を第1切替状態とすることにより、吸引吐出部およびサンプル容器を接続させ、前記吸引吐出部により前記サンプル容器内のサンプルを吸引し、前記吸引吐出部および前記第1流路切替部の間に配置された第1サンプルループにサンプルを保持させるステップと、
前記第1流路切替部を第2切替状態とすることにより、前記第1流路切替部および第2流路切替部の間の流路を接続させ、および、前記第2流路切替部を第3切替状態とすることにより前記第1サンプルループおよび第2サンプルループを接続させ、前記吸引吐出部により前記第1サンプルループ内に保持しているサンプルを吐出して、前記第2サンプルループにサンプルを注入するステップと、
前記第2流路切替部を第4切替状態とすることにより、前記第2サンプルループを前記第1サンプルループから切り離すとともに前記第2サンプルループを超臨界流体としての溶媒が供給される分析流路に接続させるステップと、
を含む、超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法。
【請求項7】
前記超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法は、さらに、
前記第2流路切替部を前記第4切替状態としてサンプルを前記分析流路に供給しているとき、前記第1流路切替部を前記第1切替状態として前記吸引吐出部により前記サンプル容器内の新たなサンプルを吸引し、前記第1サンプルループに新たなサンプルを保持させるステップ、
を含む、請求項6に記載の超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法。
【請求項8】
前記超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法は、さらに、
前記分析流路に供給されたサンプルの検出を行うステップと、
検出された特定のサンプルを回収するステップと、
を繰り返し実行する、請求項6または請求項7に記載の超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体クロマトグラフおよび超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルの分析手法として、移動相に超臨界流体が用いられる超臨界流体クロマトグラフィー(SFC:Supercritical Fluid Chromatography)がある。超臨界流体は液体および気体の両方の性質を持ち、液体よりも拡散性が高く粘性が低いという特徴がある。超臨界流体クロマトグラフは、このような性質の超臨界流体を溶媒として用いることで、高速、高分離または高感度でサンプルの分析を行うことができる。超臨界流体クロマトグラフでは、サンプルを保持するサンプルループを分析流路に導入するループ注入方式が採用される。
【0003】
また、検出器において検出されたサンプルの中から特定のサンプルを分取するための回収部を備える超臨界流体クロマトグラフがある。下記特許文献1においては、検出器の後段に回収容器を備えた超臨界流体装置が開示されている。
【0004】
分取を行う超臨界流体クロマトグラフにおいては、分析流路に連続的に複数回に亘ってサンプルを供給するために、一般的に、ループ注入方式の一つである引き込み注入方式が採用される。引き込み注入方式では、シリンジの吸引動作によって、サンプル容器内のサンプルが吸引される。吸引されたサンプルは、バルブを介してサンプルループに供給される。次に、バルブを切り替えることにより、サンプルループが超臨界流体が溶媒として供給される分析流路に組み込まれ、サンプルループに保持されているサンプルが分析流路に供給される。
【文献】国際公開2018-025547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引き込み注入方式において、サンプルループにサンプルが供給される前に、サンプルループを含む流路内をリンス液で満たす必要がある。これは、シリンジによって吸引および吐出されるサンプルの量を高精度で操作するためである。分取により特定のサンプルを回収するためには、複数回に亘りサンプルを供給する必要がある。引き込み注入方式においては、サンプルを吸引するたびに、その準備としてサンプルループを含む流路内をリンス液で満たす工程が必要である。このように、引き込み注入方式を採用する超臨界流体クロマトグラフにおいては、新たなサンプルを分析流路に供給するまでの時間が長いという問題がある。分取においては、サンプルを供給する回数が多くなればなる程、この問題は顕著となる。
【0006】
引き込み注入方式においては、サンプルループ内のサンプルが全て分析流路へと送り出された後に、新たなサンプルがサンプルループに供給される。このことも、引き込み注入方式を採用する超臨界流体クロマトグラフにおいて、新たなサンプルを分析流路に供給するまでの時間を長くする要因となっている。分取においては、サンプルを供給する回数が多くなればなる程、この問題は顕著となる。
【0007】
本発明の目的は、超臨界流体クロマトグラフにおいて、新たなサンプルを分析流路に供給するまでの時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従う超臨界流体クロマトグラフは、サンプルの吸引および吐出を行う吸引吐出部と、吸引吐出部と第1流路を介して接続される第1サンプルループと、第1サンプルループと第2流路を介して接続される第1流路切替部と、第1流路切替部を第1切替状態としたときに第3流路を介して前記第2流路に接続されるサンプル容器と、第1流路切替部を第2切替状態としたときに第4流路を介して前記第2流路に接続される第2流路切替部とを備える。第2流路切替部を第3切替状態としたとき、第4流路が第2サンプルループに接続され、第2流路切替部を第4切替状態としたとき、第2サンプルループが超臨界流体としての溶媒が供給される分析流路に接続される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超臨界流体クロマトグラフにおいて、新たなサンプルを分析流路に供給するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る超臨界流体クロマトグラフの全体図である。
【
図2】
図2は、サンプル供給部における動作Aを示す図である。
【
図3】
図3は、サンプル供給部における動作Bを示す図である。
【
図4】
図4は、サンプル供給部における動作Cを示す図である。
【
図5】
図5は、サンプル供給部における動作Dを示す図である。
【
図6】
図6は、サンプル供給部における動作Eを示す図である。
【
図7】
図7は、サンプル供給部における動作Fを示す図である。
【
図8】
図8は、サンプル供給部における動作Gを示す図である。
【
図9】
図9は、サンプル供給部における動作Hを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る超臨界流体クロマトグラフの構成について説明する。
【0012】
(1)超臨界流体クロマトグラフの全体構成
図1は、本実施の形態に係る超臨界流体クロマトグラフ10の全体構成図である。超臨界流体クロマトグラフ10は、二酸化炭素ボンベ11、モディファイア容器12、第1ポンプ13、第2ポンプ14、ミキサ15、サンプル供給部SS、分離カラム16、検出器17、背圧制御バルブ(BPR:Back Pressure Regulator)18および回収部19を備える。
【0013】
二酸化炭素ボンベ11には、液化二酸化炭素が貯留される。第1ポンプ13を駆動することにより、二酸化炭素ボンベ11内の液化二酸化炭素が、流路R11に送液される。モディファイア容器12には、モディファイアが貯留される。第2ポンプ14を駆動することにより、モディファイア容器12内のモディファイアが、流路R12に送液される。モディファイアとしては、例えばメタノール、エタノール等の有機溶媒が用いられる。
【0014】
流路R11内を送液される液化二酸化炭素および流路R12内を送液されるモディファイアは、ミキサ15において混合される。二酸化炭素は、比較的低温度および低圧力で超臨界状態が得られる。モディファイアは、測定対象であるサンプルの溶解性を高めるために用いられる。
【0015】
ミキサ15によって混合された液化二酸化炭素およびモディファイアは、移動相として分析流路ARに供給される。分析処理中においては、分析流路ARの内圧は、検出器17の下流に設けられた背圧制御バルブ18によって10MPa以上に調整される。また、分析流路ARの温度は、二酸化炭素を超臨界流体の状態とするために適切な温度(31.1度以上)に調整される。これにより、分析流路ARに供給される移動相は超臨界流体の状態となる。
【0016】
ミキサ15で混合された移動相は、サンプル供給部SSに送られる。サンプル供給部SSにおいて、第2サンプルループ7に保持されたサンプルが分析流路AR内を流れる移動相に溶解する。サンプル供給部SSの構成については後述する。
【0017】
第2サンプルループ7を通過する間にサンプルが溶解した超臨界流体である移動相は、分離カラム16に送られる。分離カラム16において、移動相が分離カラム16内の固定相を通過する間に、サンプルの分離が行われる。分離カラム16から流出したサンプルが溶解した移動相は、検出器17に送られる。
【0018】
検出器17には、分離カラム16においてサンプルが分離された移動相が供給される。検出器17において、サンプルの検出が行われる。検出器17としては、例えば、紫外線検出器、可視光検出器または蛍光検出器等が用いられる。
【0019】
検出器17の下流には、背圧制御バルブ18が設けられる。上述したように、背圧制御バルブ18を制御することにより、分析流路AR内の圧力が調整される。背圧制御バルブ18の下流には、回収部19が設けられる。回収部19において、検出器17において検出されたサンプルの中で特定のサンプルが回収される。このように、本実施の形態の超臨界流体クロマトグラフ10は、検出器17においてサンプルの検出を行うとともに、回収部19において特定のサンプルの分取を行う。
【0020】
(2)サンプル供給部の構成
次に、サンプル供給部SSの構成について説明する。
図1に示すように、サンプル供給部SSは、リンス容器2、シリンジ3、サンプル容器4、第1サンプルループ6および第2サンプルループ7を備える。リンス容器2は、リンス液を貯留する。シリンジ3は、リンス液またはサンプルの吸引および吐出を行う。サンプル容器4は、サンプルを貯留する。第1サンプルループ6は、シリンジ3により吸引されたサンプルを保持する。第1サンプルループ6は、分析流路ARには組み込まれることなく、サンプルの供給過程でサンプルを仮保持する。第2サンプルループ7は、シリンジ3により吐出されたサンプルを保持する。第2サンプルループ7は、分析流路ARに組み込まれることにより、第2サンプルループ7において保持したサンプルを分析流路ARに供給する。本実施の形態の超臨界流体クロマトグラフ10では、第2サンプルループ7に対するサンプルの供給方法として、押し込み注入方式が採用される。
【0021】
サンプル供給SSは、また、第1バルブ51、第2バルブ52および第3バルブ53を備える。第1バルブ51は、3ポジションロータリーバルブである。第1バルブ51には、流路R2、流路R3、流路R4および流路R5が接続される。第1バルブ51のポジションを切り替えることにより、流路R2を、流路R3、流路R4または流路R5のいずれかの流路と択一的に接続させることができる。
【0022】
流路R2は、第1サンプルループ6の一端に接続される。流路R3は、サンプル容器4に接続される。流路R4は、第2バルブ52に接続される。流路R5は、第1ドレイン81に接続される。
【0023】
第2バルブ52は、6方2ポジション切替バルブである。第2バルブ52には、流路R4、流路R6、流路R7、流路R8、流路R13および流路R14が接続される。第2バルブ52を2ポジションのうち、一方のポジションに切り替えることにより、流路R4および流路R7が接続され、流路R6および流路R8が接続され、流路R13および流路R14が接続される。第2バルブ52を2ポジションのうち、他方のポジションに切り替えることにより、流路R4および流路R6が接続され、流路R7および流路R13が接続され、流路R8および流路R14が接続される。
【0024】
流路R7は、第2サンプルループ7の一端に接続される。流路R8は、第2サンプルループ7の他端に接続される。流路R6は、第2ドレイン82に接続される。流路R13はミキサ15に接続される。流路R14は、分離カラム16に接続される。
【0025】
第3バルブ53は、2ポジションロータリーバルブである。第3バルブ53には、流路R1、流路R9および流路R10が接続される。第3バルブ53の2ポジションを切り替えることにより、流路R9を、流路R1または流路R10のいずれかの流路と択一的に接続させることができる。
【0026】
流路R1は、第1サンプルループ6の端部(流路R2が接続される一端とは反対側の他端)に接続される。流路R9はシリンジ3に接続される。流路R10は、リンス容器2に接続される。
【0027】
(3)サンプル供給部の動作
次に、
図2~
図9を参照しながら、サンプル供給部SSの動作について説明する。サンプル供給部SSは、次の動作A~動作Hを実行することにより、分析流路ARに複数回に亘って連続的にサンプルを供給する。
【0028】
(動作A:リンス液の吸引)
図2は、シリンジ3によりリンス液を吸引する動作(動作A)を示す図である。第1バルブ51は、流路R2および流路R4が接続されるように切り替えられる。第2バルブ52は、流路R4および流路R6が接続され、流路R7および流路R13が接続され、流路R8および流路R14が接続されるように切り替えられる。これにより、第2サンプルループ7が分析流路ARに組み込まれる。第3バルブ53は、流路R9および流路R10が接続されるように切り替えられる。
【0029】
図2に示す状態で、シリンジ3は吸引動作を行い、リンス容器2内のリンス液を吸引する。リンス容器2から吸引されたリンス液は、流路R10および流路R9を介して、シリンジ3に吸引される。
【0030】
(動作B:リンス液の吐出)
図3は、シリンジ3によりリンス液を吐出する動作(動作B)を示す図である。第1バルブ51および第2バルブ52は、
図2の動作Aの状態を維持している。つまり、第2サンプルループ7は、流路R4を含むサンプルの供給流路から切り離されている。第3バルブ53は、流路R9および流路R1が接続されるように切り替えられる。
【0031】
図3に示す状態で、シリンジ3は吐出動作を行い、シリンジ3内のリンス液を吐出する。シリンジ3から吐出されたリンス液は、流路R9、流路R1、第1サンプルループ6、流路R2、流路R4および流路R6を介して、第2ドレイン82から流出する。これにより、流路R9、流路R1、第1サンプルループ6、流路R2、流路R4および流路R6には、リンス液が満たされた状態となる。以上の動作Aおよび動作Bにより、リンス液の供給動作が終了する。
【0032】
(動作C:サンプルの吸引)
図4は、シリンジ3によりサンプルを吸引する動作(動作C)を示す図である。第1バルブ51は、流路R2および流路R3が接続されるように切り替えられる。第2バルブ52および第3バルブ53は、
図3の動作Bの状態を維持している。つまり、第2サンプルループ7は、流路R4を含むサンプルの供給流路から切り離されている。シリンジ3は、流路R1と接続されている。
【0033】
図4に示す状態で、シリンジ3は吸引動作を行い、サンプル容器4内のサンプルを吸引する。サンプル容器4から吸引されたサンプルは、流路R3および流路R2を介して第1サンプルループ6に供給される。
【0034】
なお、動作Cの前に、第1バルブ51は一旦、流路R2および流路R5が接続される状態に切り替えられる。この状態でシリンジ3に吸引動作させることにより、動作Bで供給された流路R2内のリンス液と動作Cで吸引されるサンプルとの間にエア層が形成される。エア層を形成することにより、リンス液とサンプルの界面において、サンプルがリンス液と混ざることを防いでいる。
【0035】
(動作D:リンス液およびサンプルの吸引)
図5は、シリンジ3によりリンス液およびサンプルを吸引する動作(動作D)を示す図である。第1バルブ51は、流路R2および流路R4が接続されるように切り替えられる。第2バルブ52および第3バルブ53は、
図4の動作Cの状態を維持している。つまり、第2サンプルループ7は、流路R4を含むサンプルの供給流路から切り離されている。シリンジ3は、流路R1と接続されている。
【0036】
図5に示す状態で、シリンジ3は吸引動作を行い、流路R2において保持されているサンプル、並びに、流路R4および流路R6において保持されているリンス液を吸引する。この吸引動作により、流路R2内のサンプルは、第1サンプルループ6内に供給される。動作Cおよび動作Dにより、第1サンプルループ6内にサンプルが保持された状態となる。
【0037】
なお、動作Dの前に、第1バルブ51は一旦、流路R2および流路R5が接続される状態に切り替えられる。この状態でシリンジ3に吸引動作させることにより、動作Cで供給されたサンプル液と動作Dで吸引される流路R4内のリンス液との間にエア層が形成される。
【0038】
(動作E:サンプルの第2サンプルループへの注入)
図6は、シリンジ3によりサンプルを第2サンプルループ7に注入する動作(動作E)を示す図である。第1バルブ51および第3バルブ53は、
図5の動作Dの状態を維持している。つまり、流路R2は流路R4に接続されている。シリンジ3は、流路R1と接続されている。第2バルブ52は、流路R4および流路R7が接続され、流路R6よび流路R8が接続され、流路R13および流路R14が接続されるように切り替えられる。つまり、第2サンプルループ7は、分析流路ARからは切り離され、サンプル供給部SSにおけるサンプルの供給路に組み込まれる。
【0039】
図6に示す状態で、シリンジ3は吐出動作を行い、第1サンプルループ6において保持されているサンプルを送り出す。この吐出動作により、第1サンプルループ6において保持されているサンプルは、流路R2、流路R4および流路R7を介して第2サンプルループ7に注入される。この動作Eにより、第2サンプルループ7内にサンプルが保持された状態となる。
【0040】
(動作F:第2サンプルループの分析流路への組み込み)
図7は、サンプルが保持された第2サンプルループ7を分析流路ARに組み込む動作(動作F)を示す図である。第1バルブ51および第3バルブ53は、
図6の動作Eの状態を維持している。つまり、流路R2は流路R4に接続されている。シリンジ3は、流路R1と接続されている。第2バルブ52は、流路R4および流路R6が接続され、流路R7および流路R13が接続され、流路R8および流路R14が接続されるように切り替えられる。つまり、第2サンプルループ7は、分析流路ARに組み込まれる。
【0041】
図7に示す状態で、超臨界流体である移動相が、流路R13および流路R7を介して、第2サンプルループ7に供給される。第2サンプルループ7内のサンプルは、移動相に溶解されて、流路R8および流路R14を介して
図1で示す分離カラム16に送られる。分離カラム16において分離されたサンプルは、移動相とともに検出器17に送られ検出処理が行われる。さらに、検出器17において検出された特定のサンプルが回収部19において回収される。
【0042】
(新たなサンプルの供給動作)
上記のように、動作Fにより第2サンプルループ7が分析流路ARに組み込まれた後、分析流路ARにおいて第2サンプルループ7内のサンプルに対する分析処理が実行される。この分析処理の間、第2バルブ52は、
図7に示す状態を維持している。つまり、分析処理中においては、第2バルブ52は、流路R4および流路R6が接続され、流路R7よび流路R13が接続され、流路R8および流路R14が接続される状態が維持される。
【0043】
この状態で、サンプル供給部SSは、新たなサンプルの供給動作を行う。新たなサンプルの供給動作において、第3バルブ53は、流路R9および流路R1が接続された状態を維持する。まず、第1バルブ51が、流路R2および流路R5が接続される状態に切り替えられる。この状態でシリンジ3に吸引動作を行わせることにより、第1ドレイン81からエアを吸引し、流路R2に保持されているリンス液の下流側(サンプル供給部SSにおいて、シリンジ3の配置されている側を上流とする。)にエア層が形成される。
【0044】
続いて、第1バルブ51が、流路R2および流路R3が接続される状態に切り替えられる。この状態でシリンジ3に吸引動作を行わせることにより、サンプル容器4からサンプルが吸引される。これにより流路R2にはエア層に続いてサンプルが供給される。再び、第1バルブ51が、流路R2および流路R5が接続される状態に切り替えられる。この状態でシリンジ3に吸引動作を行わせることにより、流路R2に保持されているサンプルの下流側にエア層が形成される。さらにシリンジ3による吸引動作を行わせることにより、流路R2内のサンプルが第1サンプルループ6内で保持される。
【0045】
(動作G:二酸化炭素の排出)
図8は、二酸化炭素の排出動作(動作G)を示す図である。動作Gは、分析処理後に再び第2サンプルループ7がサンプル供給部SS内のサンプルの供給路に組み込まれることにより実行される。動作Gにおいて、第3バルブ53は、流路R1および流路R9が接続された状態を維持している。第2バルブ52を
図8の状態に切り替える前に、まず、第1バルブ51は、流路R2および流路R5が接続されるように切り替えられる。これにより、流路R9、流路R1、第1サンプルループ6および流路R2にリンス液およびサンプルを満たした状態で、これら流路を流路R4から切り離す。
【0046】
続いて、第2バルブ52は、
図8の状態に切り替えられる。つまり、第2バルブ52は、流路R4および流路R7が接続され、流路R6および流路R8が接続され、流路R13および流路R14が接続されるように切り替えられる。これにより、流路R7、第2サンプルループ7および流路R8内の超臨界流体が、流路R4および流路R6に流出する。流路R6は第2ドレイン82に接続されているため、超臨界流体の二酸化炭素は、大気圧下において気化する。流路R4、流路R7、第2サンプルループ7、流路R8および流路R6内の二酸化炭素は、第2ドレイン82から排出される。二酸化炭素の排出が終了すると、次の動作Hに移る。
【0047】
(動作H:新たなサンプルの第2サンプルループへの注入)
図9は、再び第2サンプルループ7にサンプルを供給する動作(動作H)を示す図である。動作Hにおいて、第3バルブ53は、流路R1および流路R9が接続された状態を維持している。動作Hにおいて、第2バルブ52は、
図8の動作Gの状態を維持している。つまり、第2サンプルループ7は、流路R4および流路R6に接続される。第1バルブ51は、流路R2および流路R4が接続されるように切り替えられる。この状態で、シリンジ3の吐出動作を行うことにより、第1サンプルループ6で保持されているサンプルが、流路R2、流路R4および流路R7を介して、第2サンプルループ7に注入される。つまり、動作Fにおける分析処理の実行中に、第1サンプルループ6に保持されたサンプルが、動作Hにおいて第2サンプルループ7に注入される。この動作は、動作Eと同様の動作である。
【0048】
動作Hの後は、上述した動作Fを行い、新たに供給されたサンプルに対する分析処理を実行する。そして、新たに供給されたサンプルに対する分析処理の実行中は、上記の(新たなサンプルの供給動作)を再び実行し、さらに次のサンプルを第1サンプルループ6に保持させる。このような処理を繰り返し、連続的に複数回に亘って第2サンプルループ7にサンプルを注入する。そして、連続的に複数回に亘ってサンプルを分析流路ARに供給し、連続的な検出処理および回収処理を実行する。
【0049】
このように、本実施の形態の超臨界流体クロマトグラフ10は、連続的に複数回に亘ってサンプルが供給され、検出処理および回収処理が繰り返される。このとき、上述したように、サンプル供給部SSにおいてリンス液の供給が行われるのは最初の1回だけである。サンプルの吸引量および吐出量の精度を高めるためには、サンプルを吸引する流路に液体を満たしておく必要がある。上述したように、本実施の形態のサンプル供給部SSにおいては、シリンジ3によりリンス液を吸引する処理(動作A)および吐出する動作(動作B)は最初の1回だけである。これにより、本実施の形態の超臨界流体クロマトグラフ10は、複数回に亘りサンプルを供給する処理を実行する場合に、処理時間を大幅に短縮することができる。
【0050】
また、上述したように、本実施の形態の超臨界流体クロマトグラフ10は、(動作F)により分析処理を実行している間に、新たなサンプルの供給動作を実行することが可能である。これにより、本実施の形態の超臨界流体クロマトグラフ10は、複数回に亘りサンプルを供給する処理を実行する場合に、処理時間を大幅に短縮することができる。
【0051】
(4)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。上記の実施の形態では、シリンジ3が吸引吐出部の例であり、流路R1~流路R6が、第1流路~第6流路の例である。また、第1バルブ51が第1流路切替部の例であり、第2バルブ52が第2流路切替部の例である。
【0052】
また、上記の実施の形態では、第1バルブ51が流路R2および流路R3が接続されるように切り替えられた状態が第1切替状態の例であり、第1バルブ51が流路R2および流路R4が接続されるように切り替えられた状態が第2切替状態の例である。また、第2バルブ52が、流路R4および流路R7が接続されるとともに、流路R6および流路R8が接続されるように切り替えられた状態が第3切替状態の例である。また、第2バルブ52が、流路R4および流路R6が接続されるとともに、第2サンプルループ7が分析流路ARに組み込まれるように切り替えられた状態が第4切替状態の例である。また、第1バルブ51が流路R2および流路R5が接続されるように切り替えられた状態が第5切替状態の例である。
【0053】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する種々の要素を用いることもできる。
【0054】
(5)他の実施の形態
上記の実施の形態においては、超臨界流体クロマトグラフ10が回収部19を備え、特定のサンプルを分取する場合を例に説明した。本発明は、回収部19を備えない超臨界流体クロマトグラフ10にも適用可能である。その場合であっても、連続的に複数回に亘ってサンプルを供給して分析処理を実行する場合に、処理時間を短縮させることができる。
【0055】
上記の実施の形態においては、第1バルブ51に1つのサンプル容器4が接続される場合を例に説明した。他の例として、第1バルブ51に接続される複数の流路を介して複数のサンプル容器が接続されてもよい。第1バルブ51のポジションを切り替えることにより、これら複数のサンプル容器からサンプルを吸引することで、複数のサンプル容器に貯留されているサンプルを分析流路ARに供給することができる。
【0056】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施の形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【0057】
(6)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0058】
(第1項)一態様に係る超臨界流体クロマトグラフは、
サンプルの吸引および吐出を行う吸引吐出部と、
前記吸引吐出部と第1流路を介して接続される第1サンプルループと、
前記第1サンプルループと第2流路を介して接続される第1流路切替部と、
前記第1流路切替部を第1切替状態としたときに第3流路を介して前記第2流路に接続されるサンプル容器と、
前記第1流路切替部を第2切替状態としたときに第4流路を介して前記第2流路に接続される第2流路切替部と、
を備え、
前記第2流路切替部を第3切替状態としたとき、前記第4流路が第2サンプルループに接続され、前記第2流路切替部を第4切替状態としたとき、前記第2サンプルループが超臨界流体としての溶媒が供給される分析流路に接続される。
【0059】
第1流路切替部を第2切替状態以外の状態とすることにより、第1サンプルループを含む流路が、第4流路から切り離される。これにより、第2サンプルループを分析流路に接続させている間を含め、第1流路、第1サンプルループおよび第2流路内の液体を保持することができる。第1サンプルループに新たなサンプルを供給する前に、第1サンプルループを含む流路に液体を満たす工程を省略することができるので、新たなサンプルを分析流路に供給するまでの時間を短縮することができる。
【0060】
(第2項)第1項に記載の超臨界流体クロマトグラフにおいて、
前記第2流路切替部を前記第4切替状態として前記第2サンプルループが前記分析流路に接続されているとき、前記第1流路切替部を前記第1切替状態として前記吸引吐出部により前記サンプル容器内のサンプルを吸引し、前記第1サンプルループにサンプルを保持させてもよい。
【0061】
第2サンプルループを分析流路に接続させ、分析処理を実行している間に、第1サンプルループ内にサンプルを保持させることができる。これにより、新たなサンプルを分析流路に供給するまでの時間を短縮することができる。
【0062】
(第3項)第1項または第2項に記載の超臨界流体クロマトグラフは、さらに、
前記分析流路に供給されたサンプルの検出を行う検出部と、
前記検出部において検出された特定のサンプルを回収する回収部と、
を備え、
前記分析流路に複数回に亘って供給されたサンプルに基づいて、前記回収部において前記特定のサンプルを回収してもよい。
【0063】
サンプルを複数回に亘って分析流路に供給することにより特定のサンプルを回収する分取において、特定のサンプルを回収するための時間を短縮することができる。
【0064】
(第4項)第1項に記載の超臨界流体クロマトグラフは、さらに、
前記第1流路切替部を第5切替状態としたときに第5流路を介して前記第2流路に接続される第1ドレイン、
を備えてもよい。
【0065】
第1流路切替部を第5切替状態とすることにより、第2流路に空気を供給することができる。サンプルとサンプル以外の液体との間にエア層を生成することができる。
【0066】
(第5項)第1項に記載の超臨界流体クロマトグラフは、さらに、
前記第2流路切替部を前記第3切替状態としたときに第6流路を介して前記第2サンプルループに接続される第2ドレイン、
を備えてもよい。
【0067】
第2流路切替部を第3切替状態とすることにより、分析処理後の第2サンプルループ内の超臨界流体を大気圧下に放出することができる。
【0068】
(第6項)他の態様に係る超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法は、
第1流路切替部を第1切替状態とすることにより、吸引吐出部およびサンプル容器を接続させ、前記吸引吐出部により前記サンプル容器内のサンプルを吸引し、前記吸引吐出部および前記第1流路切替部の間に配置された第1サンプルループにサンプルを保持させるステップと、
前記第1流路切替部を第2切替状態とすることにより、前記第1流路切替部および第2流路切替部の間の流路を接続させ、および、前記第2流路切替部を第3切替状態とすることにより前記第1サンプルループおよび第2サンプルループを接続させ、前記吸引吐出部により前記第1サンプルループ内に保持しているサンプルを吐出して、前記第2サンプルループにサンプルを注入するステップと、
前記第2流路切替部を第4切替状態とすることにより、前記第2サンプルループを前記第1サンプルループから切り離すとともに前記第2サンプルループを超臨界流体としての溶媒が供給される分析流路に接続させるステップと、
を含む。
【0069】
第1流路切替部を第2切替状態以外の状態とすることにより、第1流路切替部および第2流路切替部が切り離される。これにより、第2サンプルループを分析流路に接続させている間を含め、第1サンプルループを含む流路内の液体を保持することができる。第1サンプルループに新たなサンプルを供給する前に、第1サンプルループを含む流路に液体を満たす工程を省略することができるので、新たなサンプルを分析流路に供給するまでの時間を短縮することができる。
【0070】
(第7項)第6項に記載の超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法は、さらに、
前記第2流路切替部を前記第4切替状態としてサンプルを前記分析流路に供給しているとき、前記第1流路切替部を前記第1切替状態として前記吸引吐出部により前記サンプル容器内の新たなサンプルを吸引し、前記第1サンプルループに新たなサンプルを保持させるステップ、
を含んでもよい。
【0071】
第2サンプルループを分析流路に接続させ、分析処理を実行している間に、第1サンプルループ内にサンプルを保持させることができる。これにより、新たなサンプルを分析流路に供給するまでの時間を短縮することができる。
【0072】
(第8項)第6項または第7項に記載の超臨界流体クロマトグラフにおけるサンプル供給方法は、さらに、
前記分析流路に供給されたサンプルの検出を行うステップと、
検出された特定のサンプルを回収するステップと、
を繰り返し実行してもよい。
【0073】
サンプルを複数回に亘って分析流路に供給することにより特定のサンプルを回収する分取において、特定のサンプルを回収するための時間を短縮することができる。