(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】止水構造
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2022120664
(22)【出願日】2022-07-28
【審査請求日】2022-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】奈良 正
(72)【発明者】
【氏名】家根 拓矢
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3425153(EP,A1)
【文献】特開2010-77685(JP,A)
【文献】特開2021-105263(JP,A)
【文献】特開2015-161130(JP,A)
【文献】特開2014-37726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E04H 9/14
E02B 3/04-3/14
E02B 7/20、7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から所定の領域に水が浸入することを抑制するために設けられる止水構造であって、
立設する柱部材と、
複数の止水パネルと、
面内方向に隣り合う前記止水パネル同士を面内方向に横方向に横締めするための横締め部材と、
前記複数の止水パネルそれぞれの下端部に、前記複数の止水パネルの止水面が連なる方向に延びるように取り付けられた第1の弾性部材と、
前記複数の止水パネルのうち、面内方向に隣り合う止水パネルの側端面同士の間に当該側端面が延びる方向に設けられた第2の弾性部材と、
前記複数の止水パネルのうち、面内方向に前記柱部材と隣り合う止水パネルの側端面と前記柱部材との間に当該側端面が延びる方向に設けられた第3の弾性部材と、
を備え、
前記複数の止水パネルは、上方から見て前記複数の止水パネルの各止水面が前記所定の領域へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように配置されるとともに、それぞれの前記止水パネルは前記止水面の面内方向に隣り合うように立設されており、
前記複数の止水パネルのそれぞれには前記横方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記横締め部材は、少なくとも一端部が前記柱部材に固定されるとともに、面内方向に隣り合う前記止水パネルそれぞれの前記貫通孔を貫通して設けられることを特徴とする止水構造。
【請求項2】
前記複数の止水パネルそれぞれに設けられる前記貫通孔は、略同一の高さ位置で前記横方向に貫通するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項3】
前記複数の止水パネルそれぞれに設けられる前記貫通孔は上下に2つあり、上下に2つの前記貫通孔のうち、上の前記貫通孔同士は略同一の高さ位置にあり、下の前記貫通孔同士は略同一の高さ位置にあることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項4】
前記止水パネルに着脱可能で、前記第2の弾性部材と鋼板とを有して構成されている側端面止水治具を備えており、
面内方向に隣り合う前記止水パネルの側端面同士の間に前記第2の弾性部材と前記鋼板が配置されており、
前記第2の弾性部材は、第1層と第2層を有して構成されており、前記第1層と前記第2層の間に前記鋼板が配置されることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項5】
前記止水パネルはプラスチック製であることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項6】
前記止水パネルの角部は面取りがされており、前記面取りに対応する空間を埋める埋め合わせ部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項7】
前記柱部材は着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項8】
上方から見て、前記外部から前記所定の領域へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように設けられたベース部と、
前記柱部材の下端部が、前記ベース部に形成された溝部内に固定されるとともに、前記複数の止水パネルの下端部が前記溝部内に配置されており、
前記第1の弾性部材は、前記複数の止水パネルそれぞれの止水面の前記溝部内に位置する部位に取り付けられ、前記溝部の内面に密着していることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項9】
前記溝部の内面は、前記複数の止水パネルの止水面が連なる方向に延びる2つの鉛直面と1つの水平面とを有して構成されており、
前記複数の止水パネルの前記止水面とは反対側の面の前記溝部内の部位には、該反対側の面に直交する方向に力を加える荷重負荷手段が設けられており、前記複数の止水パネルの前記止水面の前記溝部内の部位に取り付けられた前記第1の弾性部材は、前記溝部の内面のうち、前記2つの鉛直面の一方に、前記荷重負荷手段によって押圧されて密着することを特徴とする請求項8に記載の止水構造。
【請求項10】
前記ベース部は、断面コの字形の鋼材を有して構成されており、前記溝部は、内空部が上方に開口するように配置された前記断面コの字形の鋼材の前記内空部で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の止水構造。
【請求項11】
上方から見て、前記外部から前記所定の領域へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように設けられたベース部と、
前記複数の止水パネルそれぞれを前記ベース部との間で縦方向に締め付ける縦締め部材と、
を備え、
前記柱部材は、前記ベース部に固定されており、
前記複数の止水パネルは、前記縦締め部材で前記ベース部に連結されており、
前記第1の弾性部材は、前記複数の止水パネルそれぞれの下端面に取り付けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の止水構造。
【請求項12】
前記複数の止水パネルそれぞれは、面内方向を縦方向に貫通する縦貫通孔を有し、前記縦締め部材は、前記縦貫通孔を挿通していて、下端部が前記ベース部に固定されており、前記複数の止水パネルの下端面にそれぞれ取り付けられた前記第1の弾性部材は、前記複数の止水パネルの下端面と前記ベース部との間に配置されて押圧されていることを特徴とする請求項11に記載の止水構造。
【請求項13】
前記ベース部には、上方に開口するように雌ねじアンカーが設けられており、
前記縦締め部材は、上端部が前記止水パネルの上端面に連結されており、下端部が前記雌ねじアンカーに連結されていることを特徴とする請求項11に記載の止水構造。
【請求項14】
前記ベース部は、基礎コンクリートと、該基礎コンクリートの上面に設けられたベースプレートとを備え、
前記複数の止水パネルの下端面にそれぞれ取り付けられた前記第1の弾性部材は、前記複数の止水パネルの下端面と前記ベースプレートとの間に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の止水構造。
【請求項15】
一方のフランジが前記止水パネルの止水面とは反対側の面の下端部に沿うように設けられた押さえL形鋼を備え、該押さえL形鋼の他方のフランジは前記止水パネルの下端面の下方に位置し、
前記第1の弾性部材は上層と下層とに分かれて構成されており、
前記上層と前記下層の間に前記押さえL形鋼の他方のフランジが配置されていることを特徴とする請求項11に記載の止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水構造に関し、特に、構造物の出入口に設置する止水構造として好適に適用可能な止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ゲリラ豪雨、線状降水帯の発生、台風の巨大勢力化等により、我が国国内において水害が多発している。水害被害が河川の氾濫にまで至らなくても、特に都市部や工業地帯では、地下道および地下街等の地下構造物内や、ビル、家屋および工場等の地上構造物内へ、出入口から水が流入することによる浸水被害が数多く発生している。
【0003】
構造物内へ出入口から水が流入することによる浸水被害を防止または軽減するための対策としては、土嚢による止水が一般的に行われてきたが、土嚢による止水では、土嚢を作るのに手間がかかる上に、土嚢は重く、土嚢を積み上げる作業は重労働であり、また、土嚢同士の間にすき間が生じるため、止水性に難がある。このため、土嚢以外による止水方法が種々提案されてきており、例えば、着脱式の止水板を用いる止水構造が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1、2で提案されている止水構造は、構造物の出入口の左右側壁に止水板固定手段を取り付け、該固定手段により止水板を構造物の出入口に固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5694054号公報
【文献】特許第7010528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2で提案されている止水構造は、大きめの幅の止水板を用意しておくことで、構造物の出入口の開口幅がある程度変わっても対応できると考えられるが、例えば、工場の建屋の出入口のように、構造物の出入口の開口幅が極めて大きい場合には対応することが困難であると考えられる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、水が浸入する浸入口となる開口幅が一定以上に大きい場合であっても対応することができる止水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記課題を解決する発明であり、以下のような止水構造である。
【0009】
即ち、本発明に係る止水構造の第1の態様は、外部から所定の領域に水が浸入することを抑制するために設けられる止水構造であって、立設する柱部材と、複数の止水パネルと、面内方向に隣り合う前記止水パネル同士を面内方向に横方向に横締めするための横締め部材と、前記複数の止水パネルそれぞれの下端部に、前記複数の止水パネルの止水面が連なる方向に延びるように取り付けられた第1の弾性部材と、前記複数の止水パネルのうち、面内方向に隣り合う止水パネルの側端面同士の間に当該側端面が延びる方向に設けられた第2の弾性部材と、前記複数の止水パネルのうち、面内方向に前記柱部材と隣り合う止水パネルの側端面と前記柱部材との間に当該側端面が延びる方向に設けられた第3の弾性部材と、を備え、前記複数の止水パネルは、上方から見て前記複数の止水パネルの各止水面が前記所定の領域へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように配置されるとともに、それぞれの前記止水パネルは前記止水面の面内方向に隣り合うように立設されており、前記複数の止水パネルのそれぞれには前記横方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記横締め部材は、少なくとも一端部が前記柱部材に固定されるとともに、面内方向に隣り合う前記止水パネルそれぞれの前記貫通孔を貫通して設けられることを特徴とする止水構造である。
【0010】
ここで、前記止水パネルの下端部とは、当該止水パネルの下端面だけでなく、該下端面から一定以内の距離にある当該止水パネルの両方の面内方向の側面(止水面とその反対側の面)も含む。本願の他の箇所の記載も同様である。
【0011】
また、本願において、止水パネルに関し、面内方向とは、当該止水パネルの止水面と平行な方向のことを意味するものとする。
【0012】
また、本願において、延びる方向、面内方向、横方向等のように方向を示す文言は、厳密な意味で一定の方向であるということまで意味しているわけではなく、ある程度の誤差を許容するものである。
【0013】
また、本願において、前記横締め部材の少なくとも一端部が「前記柱部材に固定され」とは、前記横締め部材材の少なくとも一端部が前記柱部材に直接的に固定された場合だけでなく、他の部材を介して前記横締め部材の少なくとも一端部が前記柱部材に間接的に固定されたような固定状態も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0014】
本発明に係る止水構造の第2の態様は、前記第1の態様の止水構造において、前記複数の止水パネルそれぞれに設けられる前記貫通孔は、略同一の高さ位置で前記横方向に貫通するように設けられる、ように構成されている態様である。
【0015】
本発明に係る止水構造の第3の態様は、前記第1の態様の止水構造において、前記複数の止水パネルそれぞれに設けられる前記貫通孔は上下に2つあり、上下に2つの前記貫通孔のうち、上の前記貫通孔同士は略同一の高さ位置にあり、下の前記貫通孔同士は略同一の高さ位置にある、ように構成されている態様である。
【0016】
本発明に係る止水構造の第4の態様は、前記第1~前記第3の態様のいずれかの態様の止水構造において、前記止水パネルに着脱可能で、前記第2の弾性部材と鋼板とを有して構成されている側端面止水治具を備えており、面内方向に隣り合う前記止水パネルの側端面同士の間に前記第2の弾性部材と前記鋼板が配置されており、前記第2の弾性部材は、第1層と第2層を有して構成されており、前記第1層と前記第2層の間に前記鋼板が配置される、ように構成されている態様である。
【0017】
本発明に係る止水構造の第5の態様は、前記第1~前記第4の態様のいずれかの態様の止水構造において、前記止水パネルがプラスチック製であるように構成されている態様である。
【0018】
本発明に係る止水構造の第6の態様は、前記第1~前記第5の態様のいずれかの態様の止水構造において、前記止水パネルの角部は面取りがされており、前記面取りに対応する空間を埋める埋め合わせ部材を備えている、ように構成されている態様である。
【0019】
本発明に係る止水構造の第7の態様は、前記第1~前記第6の態様のいずれかの態様の止水構造において、前記柱部材が着脱可能であるように構成されている態様である。
【0020】
本発明に係る止水構造の第8の態様は、前記第1~前記第7の態様のいずれかの態様の止水構造において、上方から見て、前記外部から前記所定の領域へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように設けられたベース部と、前記柱部材の下端部が、前記ベース部に形成された溝部内に固定されるとともに、前記複数の止水パネルの下端部が前記溝部内に配置されており、前記第1の弾性部材は、前記複数の止水パネルそれぞれの止水面の前記溝部内に位置する部位に取り付けられ、前記溝部の内面に密着している、ように構成されている態様である。
【0021】
本発明に係る止水構造の第9の態様は、前記第8の態様の止水構造において、前記溝部の内面は、前記複数の止水パネルの止水面が連なる方向に延びる2つの鉛直面と1つの水平面とを有して構成されており、前記複数の止水パネルの前記止水面とは反対側の面の前記溝部内の部位には、該反対側の面に直交する方向に力を加える荷重負荷手段が設けられており、前記複数の止水パネルの前記止水面の前記溝部内の部位に取り付けられた前記第1の弾性部材は、前記溝部の内面のうち、前記2つの鉛直面の一方に、前記荷重負荷手段によって押圧されて密着する、ように構成されている態様である。
【0022】
本発明に係る止水構造の第10の態様は、前記第9の態様の止水構造において、前記ベース部は、断面コの字形の鋼材を有して構成されており、前記溝部は、内空部が上方に開口するように配置された前記断面コの字形の鋼材の前記内空部で形成されている、ように構成されている態様である。
【0023】
本発明に係る止水構造の第11の態様は、前記第1~前記第7の態様のいずれかの態様の止水構造において、上方から見て、前記外部から前記所定の領域へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように設けられたベース部と、前記複数の止水パネルそれぞれを前記ベース部との間で縦方向に締め付ける縦締め部材と、を備え、前記柱部材は、前記ベース部に固定されており、前記複数の止水パネルは、前記縦締め部材で前記ベース部に連結されており、前記第1の弾性部材は、前記複数の止水パネルそれぞれの下端面に取り付けられている、ように構成されている態様である。
【0024】
本発明に係る止水構造の第12の態様は、前記第11の態様の止水構造において、前記複数の止水パネルそれぞれは、面内方向を縦方向に貫通する縦貫通孔を有し、前記縦締め部材は、前記縦貫通孔を挿通していて、下端部が前記ベース部に固定されており、前記複数の止水パネルの下端面にそれぞれ取り付けられた前記第1の弾性部材は、前記複数の止水パネルの下端面と前記ベース部との間に配置されて押圧されている、ように構成されている態様である。
【0025】
ここで、前記縦締め部材の下端部が「前記ベース部に固定され」とは、前記縦締め部材の下端部が前記ベース部に直接的に固定された場合だけでなく、他の部材を介して前記縦締め部材の下端部が前記ベース部に間接的に固定されたような固定状態も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0026】
本発明に係る止水構造の第13の態様は、前記第11または前記第12の態様の止水構造において、前記ベース部には、上方に開口するように雌ねじアンカーが設けられており、前記縦締め部材は、上端部が前記止水パネルの上端面に連結されており、下端部が前記雌ねじアンカーに連結されている、ように構成されている態様である。
【0027】
ここで、前記縦締め部材の上端部が「前記止水パネルの上端面に連結され」とは、前記縦締め部材の上端部が前記止水パネルの上端面に直接的に接して力の伝達ができるように連結された場合だけでなく、他の部材を介して前記縦締め部材の上端部が前記止水パネルの上端面と間接的に力の伝達ができるような連結状態も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0028】
また、前記縦締め部材の下端部が「前記雌ねじアンカーに連結され」とは、前記縦締め部材の下端部が前記雌ねじアンカーに直接的に連結して力の伝達ができるように連結された場合だけでなく、他の部材を介して前記縦締め部材の下端部が前記雌ねじアンカーと間接的に力の伝達ができるような連結状態も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0029】
本発明に係る止水構造の第14の態様は、前記第11~前記第13の態様のいずれかの態様の止水構造において、前記ベース部は、基礎コンクリートと、該基礎コンクリートの上面に設けられたベースプレートとを備え、前記複数の止水パネルの下端面にそれぞれ取り付けられた前記第1の弾性部材は、前記複数の止水パネルの下端面と前記ベースプレートとの間に配置されている、ように構成されている態様である。
【0030】
本発明に係る止水構造の第15の態様は、前記第11~前記第14の態様のいずれかの態様の止水構造において、一方のフランジが前記止水パネルの止水面とは反対側の面の下端部に沿うように設けられた押さえL形鋼を備え、該押さえL形鋼の他方のフランジは前記止水パネルの下端面の下方に位置し、前記第1の弾性部材は上層と下層とに分かれて構成されており、前記上層と前記下層の間に前記押さえL形鋼の他方のフランジが配置されている、ように構成されている態様である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、水が浸入する浸入口となる開口幅が一定以上に大きい場合であっても対応することができる止水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る止水構造10を施設外側の斜め上方から見た斜視図
【
図2】本発明の第1実施形態に係る止水構造10を施設内側の斜め上方から見た斜視図
【
図3】本発明の第1実施形態に係る止水構造10の一部を施設内側の斜め上方から見た拡大斜視図
【
図4】本発明の第1実施形態に係る止水構造10を止水面14Aと平行に側方から見た図
【
図5】本発明の第1実施形態に係る止水構造10を上方から見た図
【
図6】本発明の第1実施形態に係る止水構造10の荷重負荷手段40を施設内側から見た拡大斜視図
【
図7】本発明の第1実施形態に係る止水構造10の柱部12の上方から下方に向かって見た拡大図
【
図8】本発明の第1実施形態に係る止水構造10の柱部12の下端部を施設内側から見た拡大斜視図
【
図9】本発明の第1実施形態に係る止水構造10の柱部12の柱部下端プレート12Bを中心とする領域を施設内側から見た拡大斜視図
【
図10】本発明の第1実施形態に係る止水構造10の側端面止水治具42を中心とする領域を斜め上方から見た拡大斜視図
【
図11】本発明の第2実施形態に係る止水構造50を施設外側の斜め上方から見た斜視図
【
図12】本発明の第2実施形態に係る止水構造50を施設内側の斜め上方から見た斜視図
【
図13】本発明の第2実施形態に係る止水構造50を止水面14Aと略平行に側方から見た図
【
図14】本発明の第2実施形態に係る止水構造50を斜め側方から見た図
【
図15】本発明の第2実施形態に係る止水構造50を上方から見た図
【
図16】本発明の第2実施形態に係る止水構造50の縦貫通孔20およびその周辺の部位を斜め上方から見た拡大斜視図
【
図17】本発明の第2実施形態に係る止水構造50の柱部12の下端部を施設内側から見た拡大斜視図
【
図18】本発明の第2実施形態に係る止水構造50の柱部12の柱部下端プレート12Bおよびベースプレート62を中心とする領域を施設外側から見た拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明に係る止水構造の実施形態を詳細に説明する。ここでは、水が浸入し得る開口部を有する工場の建屋等の施設の開口部への適用を想定し、当該施設の内部への水の浸入を抑制することを念頭に置いて、本発明に係る止水構造の実施形態を説明するが、本発明は、具体的な構造物の内部への水の浸入を抑制するように使用することのみに用途が限定されるわけではなく、例えば、工場敷地内への水の浸入を抑制するように、当該敷地を取り囲むように使用することもでき、所定の領域に外部から水が浸入することを抑制することを目的として広く使用することができる。
【0034】
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10を施設外側の斜め上方から見た斜視図であり、
図2は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10を施設内側の斜め上方から見た斜視図であり、
図3は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10の一部を施設内側の斜め上方から見た拡大斜視図であり、
図4は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10を止水面14Aと平行に側方から見た図であり、
図5は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10を上方から見た図であり、
図6は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10の荷重負荷手段40を施設内側から見た拡大斜視図であり、
図7は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10の柱部12の上方から下方に向かって見た拡大図であり、
図8は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10の柱部12の下端部を施設内側から見た拡大斜視図であり、
図9は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10の柱部12の柱部下端プレート12Bを中心とする領域を施設内側から見た拡大斜視図であり、
図10は、本発明の第1実施形態に係る止水構造10の側端面止水治具42を中心とする領域を斜め上方から見た拡大斜視図である。
【0035】
本第1実施形態に係る止水構造10は、工場の建屋等の施設内に外部から水が浸入する浸入口となる開口部又はその近傍に設けられた止水構造であり、
図1~
図3に示すように、柱部12と、止水パネル14と、横締め部材16と、第1の止水ゴム22と、第2の止水ゴム24と、第3の止水ゴム26と、ベース部30と、溝部32と、荷重負荷手段40と、を有してなる。面内方向(止水面14Aと平行な方向)に隣り合う止水パネル14同士は、横締め部材16によって面内方向に横締めされて連結されており、横締め部材16の両端部は柱部12に連結している。第1の止水ゴム22、第2の止水ゴム24、および第3の止水ゴム26は、弾性水密部材であり、水密性を確保するための部材である。
【0036】
柱部12は、本第1実施形態に係る止水構造10の全体を、ベース部30に固定して、止水構造10の全体を安定的に立設させる役割を有する。柱部12は、
図3および
図7~
図9に示すように、断面H形の鋼材である柱部本体部12Aと、柱部本体部12Aの下端に溶接された柱部下端プレート12Bとで構成されている。柱部下端プレート12Bには貫通孔が設けられており、この貫通孔を、ベース部30の基礎コンクリート30Aに固定されたアンカーボルト36が上下に挿通していて、ナット36Aが締め込まれており、柱部下端プレート12Bがアンカーボルト36およびナット36Aによって固定されていて、ベース部30の溝部32内に配置された柱部12の下端部は、ベース部30の基礎コンクリート30Aに固定されている。本第1実施形態に係る止水構造10において、柱部12は、ナット36Aの取り付けおよび取り外しを行うことにより、着脱可能である。
【0037】
横締め部材16による横締めによって、面内方向(止水面14Aと平行な方向)に隣り合う止水パネル14同士を面内方向に確実に横締めする観点から、例えば、柱部下端プレート12Bの貫通孔を止水面14Aと平行な方向に長い長孔としてもよい。このようにすることにより、横締め部材16によって横締めした際に、柱部12は止水面14Aと平行な方向にある程度移動できるようになり、横締め部材16によって横締めした後にナット36Aを締め込んで柱部12をベース部30の基礎コンクリート30Aに固定することにより、面内方向(止水面14Aと平行な方向)に隣り合う止水パネル14同士を横締め部材16による横締めによって面内方向に確実に横締めして、柱部12に固定することができる。
【0038】
ベース部30は、本第1実施形態に係る止水構造10の基礎となる部位であり、溝部32を有しており、上方から見て、施設内へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように、施設内への水の浸入口となる開口部又はその近傍に設けられていて、地表面に埋め込まれて固定されている。ベース部30は、基礎コンクリート30Aと、断面コの字形の鋼材34とを有して構成されている。断面コの字形の鋼材34は、内空部が上方に開口するように、かつベース部30が延びる方向と略同一の方向に延びるように、基礎コンクリート30Aの上層部に配置されており、断面コの字形の鋼材34の内空部が溝部32を形成している。
図8に示すように、断面コの字形の鋼材34は、フランジ34A、34Bとウェブ34Cとを有して構成されており、溝部32の内面は、断面コの字形の鋼材34のフランジ34Aの内面である鉛直面34A1と、断面コの字形の鋼材34のフランジ34Bの内面である鉛直面34B1と、断面コの字形の鋼材34のウェブ34Cの内面である水平面34C1とを有して構成されている。
【0039】
止水パネル14は、止水構造10の主たる構造となる大面積のパネルであり、施設内への水の浸入を遮るパネルである。止水パネル14は、止水面14Aが施設の外部を向くように配置されていて、止水面14Aが施設内に浸入する水の方向に向くように配置されている。止水パネル14の材質は、浸入しようとする水の水圧に耐え得る機械的特性を有し、かつ、水を浸透させない材質であればよく、特には限定されないが、具体的には例えば、プラスチックや金属であり、耐水性、重量、価格等の観点から、プラスチックであることが好ましく、本第1実施形態に係る止水構造10では、止水パネル14をプラスチック製としている。
【0040】
止水パネル14の下端部は、
図3および
図4に示すように、ベース部30の溝部32内に配置されており、止水パネル14の止水面14Aの溝部32内の部位には、
図4に示すように、第1の止水ゴム22が止水パネル14の幅方向に全幅にわたって取り付けられている。
【0041】
止水パネル14の止水面14Aとは反対側の施設側の面14Bの溝部32内の部位には、
図2~
図6に示すように、施設側の面14Bに直交する方向に力を加える荷重負荷手段40が設けられている。止水パネル14の止水面14Aの溝部32内の部位に取り付けられた第1の止水ゴム22は、溝部32の内面の鉛直面34A1に、荷重負荷手段40によって押圧されて密着しており、止水パネル14の止水面14Aと溝部32の鉛直面34A1との間の水密性が確保されている。
【0042】
荷重負荷手段40は、
図6に示すように、本体部40Aと、ハンドル40Bと、支圧板40Cと、支圧ゴム40Dと、を有して構成されており、ハンドル40Bを回すことによって支圧板40Cが前後に移動するように構成されている。支圧板40Cの前面には支圧ゴム40Dが設けられていて、ハンドル40Bを回して支圧板40Cを前進させると、支圧ゴム40Dが止水パネル14の施設側の面14Bの溝部32内の部位を押圧して、止水パネル14の止水面14Aの溝部32内の部位に取り付けられた第1の止水ゴム22を、溝部32の内面の鉛直面34A1に押圧して密着させる。
【0043】
横締め部材16は、面内方向(止水面14Aと平行な方向)に隣り合う止水パネル14同士を面内方向に横方向に横締めする部材であり、面内方向に隣り合う止水パネル14同士は、横締め部材16によって面内方向に横方向に横締めされて連結されており、横締め部材16の両方の端部はねじが切られており、
図7に示すように、ナット16Aで締め込まれて柱部12に固定されている。
【0044】
止水パネル14は、それぞれ、略同一の高さ位置で面内方向に横方向に貫通する横貫通孔18を上下2列に有しており、横締め部材16は、面内方向に隣り合う止水パネル14それぞれの上段の横貫通孔18を挿通していて、両端部がナット16Aで締め込まれて柱部12に固定されている。止水パネル14の大きさは特には限定されないが、標準的には、高さ1000mm~1300mm、幅700mm~1500mm、厚さ120mm~160mmである。
【0045】
止水パネル14は、略同一の高さ位置に面内方向に横方向に貫通する横貫通孔18を上下2列に有しているだけでなく、面内方向を縦方向に貫通する縦貫通孔20も左右2列に有しており、それらの貫通孔の分だけ軽量化されており、さらに材質がプラスチック製である。このため、止水パネル14は、人力で設置可能な重量になっている。なお、本第1実施形態に係る止水構造10では、上段の横貫通孔18を横締め部材16の貫通孔として使用するが、縦貫通孔20は止水パネル14の締め付け用に使用しない(後述する第2実施形態に係る止水構造50において使用する。)。また、横貫通孔18および縦貫通孔20は、フォークリフト等の運搬機械の荷役用のつめ(フォーク)を差し込む差込口として使用することもでき、また、止水パネル14は積み重ねることもできるので、運搬がしやすくなっている。
【0046】
また、本第1実施形態に係る止水構造10において、止水パネル14は、横締め部材16の取り付けおよび取り外しならびに荷重負荷手段40による押圧およびその解除を行うことにより、着脱可能である。
【0047】
図1および
図2では、本第1実施形態に係る止水構造10として、2つの柱部12間に止水パネル14を面内方向に隣り合うように2つ配置した態様を記載しているが、同様の構成を面内方向に追加して面内方向の幅を大きくしていくことができ、本第1実施形態に係る止水構造10は、開口幅の極めて大きい箇所の止水にも対応することができる。本第1実施形態に係る止水構造10は、具体的には例えば、工場建屋の幅の広い開口部に対する適用や、工場の敷地を囲むような態様への適用も可能である。
【0048】
横締め部材16は、必要な機械的特性を有していれば、特に材質を問わずに用いることができるが、少なくとも一方の端部はナットで締め込むので、ねじが切られていることが必要である。具体的には例えば、ねじが切られた端部を有するPC鋼棒や総ねじPC鋼棒を用いることができる。また、ねじ切り加工した鋼材を端部に用いたワイヤーやケーブルを用いることもできる。横締め部材16が、面内方向に隣り合う止水パネル14同士を面内方向に横方向に横締めしているため、水圧を受けても止水パネル14が面外方向にずれることは起こりにくいが、万一面外方向にずれた場合でも面外方向のずれを小さく抑える観点から、剛で曲がりにくいPC鋼棒を横締め部材16として用いることが好ましい。
【0049】
面内方向に隣り合う止水パネル14の側端面同士の間には、側端面止水治具42が配置されており、
図10に示すように、左側の止水パネル14の右側端面には側端面止水治具42Aが配置され、右側の止水パネル14の左側端面には側端面止水治具42Bが配置されている。
【0050】
側端面止水治具42は、止水パネル14の頂部に被さるように配置される断面コの字形の頂部鋼板42Xと、止水パネル14の側端面に沿って側端面の上端から下端まで配置される側端面鋼板42Yによって形作られている。頂部鋼板42Xは3枚の鋼鈑が断面コの字形となるように溶接されて組み立てられていて、頂部鋼板42Xに側端面鋼板42Yの上部が溶接されて連結されており、側端面鋼板42Yが下方に延びるように構成されている。
図10の左側の側端面止水治具42Aの側端面鋼板42Yには、内面側の面(止水パネル14の側端面に面する面)に第2の止水ゴム24の第1層24Aが設けられており、外面側の面(止水パネル14の側端面に面する面とは反対側の面)に第2の止水ゴム24の第2層24Bが設けられている。
図10の右側の側端面止水治具42Bの側端面鋼板42Yには、内面側の面(止水パネル14の側端面に面する面)に第2の止水ゴム24の第3層24Cが設けられている。なお、側端面鋼板42Yには、横締め部材16が挿通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0051】
このため、
図10の左側の止水パネル14の右側端面に側端面止水治具42Aを配置し、右側の止水パネル14の左側端面に側端面止水治具42Bを配置して、横締め部材16で横方向に横締めを行うと、面内方向に隣り合う止水パネル14の側端面同士の間には、
図10において左側から順に、第2の止水ゴム24の第1層24A、側端面鋼板42Y、第2の止水ゴム24の第2層24B、側端面鋼板42Y、第2の止水ゴム24の第3層24Cが配置されて密着し、面内方向に隣り合う止水パネル14同士の側端面の間の水密性が確保されるようになっている。つまり、本第1実施形態に係る止水構造10では、第2の止水ゴム24は3層(第1層24A、第2層24B、第3層24C)で構成されている。
図10に示すように、第2の止水ゴム24の第1層24Aと第2の止水ゴム24の第3層24Cは、上部の両端部が断面コの字形の頂部鋼板42Xで拘束されており、横締めをした際に止水パネル14の面外方向にずれることが抑制されている。
【0052】
また、
図10の右側の止水パネル14の左側端面に配置する側端面止水治具42Bを省略し、
図10の左側の止水パネル14の右側端面に側端面止水治具42Aのみを配置するようにしてもよい。このようにした場合、横締め部材16で横締めを行うと、面内方向に隣り合う止水パネル14の側端面同士の間には、左側から順に、第2の止水ゴム24の第1層24A、側端面鋼板42Y、第2の止水ゴム24の第2層24Bが配置されて密着し、面内方向に隣り合う止水パネル14同士の側端面の間の水密性が確保される。この場合は、第2の止水ゴム24は2層(第1層24A、第2層24B)で構成されることになる。ただし、この場合でも、右側の止水パネル14の左側端部の上部に断面コの字形の頂部鋼板42Xを配置して、第2の止水ゴム24の第2層24Bの上部の両端部を拘束することが好ましい。
【0053】
側端面止水治具42は、面内方向に隣り合う止水パネル14同士の側端面の間の水密性の確保に寄与するとともに、止水パネル14の側端面への第2の止水ゴム24の迅速な設置を可能にし、有事の際に止水構造10を素早く組み立てることに寄与する。
【0054】
柱部12と止水パネル14との間には、
図7等に示すように、第3の止水ゴム26が上下方向(止水パネル14の側端面が延びる方向)に2列に設けられていて水密性が確保されている。
図7等に示すように、第3の止水ゴム26は、止水パネル14の側端面に該側端面が延びる方向に設けられているが、間隔を空けて2列に設けられており、横締め部材16と干渉しないような位置に配置されている。前述した第2の止水ゴム24については、明確な図示はしていないが、第3の止水ゴム26と同様に、止水パネル14の側端面に上下方向(止水パネル14の側端面が延びる方向)に設けられているが、間隔を空けて2列に設けられており、横締め部材16と干渉しないような位置に配置されている。
【0055】
また、止水パネル14の角部が面取りされている場合には、
図9に示すように、面取りによるすき間を埋め合わせる埋め合わせ部材38を柱部12の下端部に設ける。
【0056】
(2)第2実施形態
図11は、本発明の第2実施形態に係る止水構造50を施設外側の斜め上方から見た斜視図であり、
図12は、本発明の第2実施形態に係る止水構造50を施設内側の斜め上方から見た斜視図であり、
図13は、本発明の第2実施形態に係る止水構造50を止水面14Aと略平行に側方から見た図であり、
図14は、本発明の第2実施形態に係る止水構造50を斜め側方から見た図であり、
図15は、本発明の第2実施形態に係る止水構造50を上方から見た図であり、
図16は、本発明の第2実施形態に係る止水構造50の縦貫通孔20およびその周辺の部位を斜め上方から見た拡大斜視図であり、
図17は、本発明の第2実施形態に係る止水構造50の柱部12の下端部を施設内側から見た拡大斜視図であり、
図18は、本発明の第2実施形態に係る止水構造50の柱部12の柱部下端プレート12Bおよびベースプレート62を中心とする領域を施設外側から見た拡大斜視図である。なお、
図14では、説明の都合上、基礎コンクリート60Aの記載は省略している。
【0057】
第1実施形態に係る止水構造10では、止水パネル14に対する固定態様は、面内方向に隣り合う止水パネル14同士を横締め部材16によって面内方向に横方向に締め付けて柱部12に固定する横締め態様と、止水パネル14の施設側の面14Bの溝部32内の部位を荷重負荷手段40によって押圧して、止水パネル14の止水面14Aの溝部32内の部位に取り付けられた第1の止水ゴム22を、溝部32の内面の鉛直面34A1に押圧して密着させて固定する押圧態様であったが、本第2実施形態に係る止水構造50における止水パネル14に対する固定態様は、面内方向に隣り合う止水パネル14同士を横締め部材16によって面内方向に横方向に締め付けて柱部12に固定する横締め態様と、止水パネル14を縦締め部材52によってベース部60との間で縦方向に締め付けてベース部60に固定する縦締め態様である。本第2実施形態に係る止水構造50における止水パネル14に対する固定態様においては、横締めだけでなく、縦締めも行っているが、荷重負荷手段40による押圧は行っておらず、第1実施形態に係る止水構造10におけるような溝部32は設けていない。以上述べた点が、本第2実施形態に係る止水構造50と第1実施形態に係る止水構造10との大きな相違点であるが、その他の点については共通する点も多いので、第1実施形態に係る止水構造10の部材や部位と対応する部材や部位には同一の符号を用い、原則として説明は省略するか、簡略に説明する。
【0058】
本第2実施形態に係る止水構造50も、第1実施形態に係る止水構造10と同様に、工場の建屋等の施設内に外部から水が浸入する浸入口となる開口部又はその近傍に設けられた止水構造であり、
図11、
図12、
図14に示すように、柱部12と、止水パネル14と、横締め部材16と、縦締め部材52と、第1の止水ゴム56と、第2の止水ゴム24と、第3の止水ゴム26と、ベース部60と、ベースプレート62と、を有してなる。面内方向(止水面14Aと平行な方向)に隣り合う止水パネル14同士は、横締め部材16によって面内方向に横方向に横締めされて連結されており、横締め部材16の両端部は柱部12に連結している。第1の止水ゴム56、第2の止水ゴム24、および第3の止水ゴム26は、弾性水密部材であり、水密性を確保するための部材である。
【0059】
柱部12は、本第2実施形態に係る止水構造50の全体を、ベース部60に固定して、止水構造50の全体を安定的に立設させる役割を有する。柱部12は、
図17および
図18に示すように、断面H形の鋼材である柱部本体部12Aと、柱部本体部12Aの下端に溶接された柱部下端プレート12Bとで構成されている。柱部下端プレート12Bには貫通孔が設けられており、この貫通孔を、ベース部60の基礎コンクリート60Aに固定されたアンカーボルト66が上下に挿通していて、ナット66Aが締め込まれており、柱部下端プレート12Bがアンカーボルト66およびナット66Aによって固定されていて、柱部12の下端部は、ベース部60の基礎コンクリート60Aに固定されている。本第2実施形態に係る止水構造50において、柱部12は、ナット66Aの取り付けおよび取り外しを行うことにより、着脱可能である。
【0060】
横締め部材16による横締めによって、面内方向(止水面14Aと平行な方向)に隣り合う止水パネル14同士を面内方向に確実に横締めする観点から、例えば、柱部下端プレート12Bの貫通孔を止水面14Aと平行な方向に長い長孔としてもよい。このようにすることにより、横締め部材16によって横締めした際に、柱部12は止水面14Aと平行な方向にある程度移動できるようになり、横締め部材16によって横締めした後にナット66Aを締め込んで柱部12をベース部60の基礎コンクリート60Aに固定することにより、面内方向(止水面14Aと平行な方向)に隣り合う止水パネル14同士を横締め部材16による横締めによって面内方向に確実に横締めして、柱部12に固定することができる。また、同じく面内方向に隣り合う止水パネル14同士を面内方向に確実に横締めする観点から、横締め部材16による横締めを行った後に、縦締め部材52による縦締めを行うのがよい。
【0061】
ベース部60は、本第2実施形態に係る止水構造50の基礎となる部位であり、上方から見て、施設内へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように、施設内への水の浸入口となる開口部又はその近傍に設けられていて、地表面に埋め込まれて固定されている。ベース部60は、基礎コンクリート60Aと、ベースプレート62とを有して構成されている。ベースプレート62には厚さ方向に貫通孔が設けられており、この貫通孔を、ベース部60の基礎コンクリート60Aに固定されたアンカーボルト64が上下に挿通していて、ナット64Aが締め込まれており、ベースプレート62がアンカーボルト64およびナット64Aによって固定されていて、ベースプレート62は、基礎コンクリート60Aの上面に固定されている。
【0062】
止水パネル14の下端面は、
図11~
図14に示すように、ベース部60のベースプレート62の上方に配置されており、止水パネル14の下端面には、
図11に示すように、第1の止水ゴム56が止水パネル14の下端面に幅方向に全幅にわたって取り付けられている。ただし、第1の止水ゴム56は、縦締め部材52と干渉しないように、止水パネル14の下端面に間隔を空けて2列に設けられている。
【0063】
止水パネル14の厚さ方向中央部の下方には、雌ねじアンカー68(
図14参照)が、雌ねじ穴が上方に開口するようにベース部60上層部に設けられており、縦締め部材52のねじが切られた下端部が雌ねじアンカー68の雌ねじ穴に螺合して固定されるようになっている。また、
図11、
図12、
図15、
図16に示すように、止水パネル14の縦貫通孔20の上部には、止水パネル14の厚さと同幅を持ち、かつ、中央部に貫通孔が設けられた天端プレート54が止水パネル14の上端面に係止するように配置されていて、縦締め部材52のねじが切られた上端部が、天端プレート54の中央部の貫通孔を挿通して天端プレート54の上面よりも上方に突出しており、この突出した縦締め部材52の上端部にナット52Aが螺合して締め込まれるようになっている。
【0064】
縦締め部材52は、天端プレート54とベース部60との間で止水パネル14を上下方向に締め付ける部材であり、縦締め部材52の両端部はねじが切られている。縦締め部材52の下端部は、ベース部60に設けられた雌ねじアンカー68の雌ねじ穴に螺合させ、また、縦締め部材52の上端部は天端プレート54の中央部の貫通孔を挿通させて天端プレート54の上面よりも上方に突出させてナット52Aを螺合させる。
【0065】
縦締め部材52は、必要な機械的特性を有していれば、特に材質を問わずに用いることができるが、前述したように両端部は螺合させるので、ねじが切られていることが必要である。縦締め部材52として、具体的には例えば、ねじが切られた両端部を有するPC鋼棒や総ねじPC鋼棒を用いることができる。また、ねじ切り加工した鋼材を両端部に用いたワイヤーやケーブルを用いることもできる。横締め部材16が、面内方向に隣り合う止水パネル14同士を面内方向に横締めし、かつ、縦締め部材52が止水パネル14を天端プレート54とベース部60との間で上下方向に縦締めするため、水圧を受けても止水パネル14が面外方向にずれることは起こりにくいが、万一面外方向にずれた場合でも面外方向のずれを小さく抑える観点から、剛で曲がりにくいPC鋼棒を縦締め部材52として用いることが好ましい。
【0066】
本第2実施形態に係る止水構造50では、縦締め部材52によって、天端プレート54とベース部60との間で止水パネル14を面内方向の上下方向に縦締めすることにより、止水パネル14の下端面に幅方向に全幅にわたって取り付けられた第1の止水ゴム56をベースプレート62に密着させることができるようになっており、止水パネル14の下端面とベースプレート62の上面との間の水密性を確保できるように構成されている。
【0067】
また、本第2実施形態に係る止水構造50では、
図12、
図17、
図18に示すように、止水パネル14の下端面の下方に、押さえL形鋼58の水平フランジ58Aが位置し、止水パネル14の施設側の面14Bの下端部には押さえL形鋼58の鉛直フランジ58Bが位置するように、押さえL形鋼58が配置されている。押さえL形鋼58は、面内方向に隣り合う止水パネル14同士が面外方向にずれないように、止水パネル14を整然と配列する役割を有する部材である。
図18に示すように、押さえL形鋼58の水平フランジ58Aの上面には第1の止水ゴム56の第1層56Aが設けられ、押さえL形鋼58の水平フランジ58Aの下面には第1の止水ゴム56の第2層56Bが設けられており、本第2実施形態に係る止水構造50では、第1の止水ゴム56は、2層(第1層56A、第2層56B)で構成されている。
【0068】
また、止水パネル14の角部が面取りされている場合は、
図18に示すように、押さえL形鋼58の水平フランジ58Aの端部に、面取りによるすき間を埋める埋め合わせ部材70を設けて、面取りによるすき間を埋めるようにする。
【0069】
ただし、押さえL形鋼58は必須の部材というわけではなく、省略可能な部材であり、押さえL形鋼58を設けない場合には、止水パネル14の下端面に、第1の止水ゴム56を1層構成で設ける。また、押さえL形鋼58を設けない場合には、面取りによるすき間を埋める埋め合わせ部材70は、柱部12の下端部に設けるようにする。
【0070】
また、本第2実施形態に係る止水構造50において、止水パネル14は、横締め部材16および縦締め部材52の取り付けおよび取り外しを行うことにより、着脱可能である。
【0071】
図11および
図12では、本第2実施形態に係る止水構造50として、2つの柱部12間に止水パネル14を面内方向に隣り合うように2つ配置した態様を記載しているが、同様の構成を面内方向に追加して面内方向の幅を大きくしていくことができ、本第2実施形態に係る止水構造50は、第1実施形態に係る止水構造10と同様に、開口幅の極めて大きい箇所の止水にも対応することができる。本第2実施形態に係る止水構造50は、具体的には例えば、工場建屋の幅の広い開口部に対する適用や、工場の敷地を囲むような態様への適用も可能である。
【0072】
(3)補足
以上説明した第1実施形態に係る止水構造10および第2実施形態に係る止水構造50は、2本の柱部12の間に面内方向に2つの止水パネル14を隣り合うように配置し、両端部が柱部12に固定された横締め部材16で横締めして2つの止水パネル14を固定するように構成しているが、2本の柱部12の間に配置する止水パネル14の数は2つに限定されるわけではなく、3つ以上にすることも可能である。
【0073】
説明した第1実施形態に係る止水構造10および第2実施形態に係る止水構造50では、上段の横貫通孔18に1本の横締め部材16を配置するのみで横締めを行ったが、下段の横貫通孔18にも横締め部材16を1本配置して横締めを行い、止水パネル14に面内方向に横方向に加える横締め力を増加させるようにしてもよく、2本の柱部12の間に配置する止水パネル14の数を3つ以上にする場合には、下段の横貫通孔18にも横締め部材16を1本配置して横締めを行い、止水パネル14に面内方向に横方向に加える横締め力を増加させるようにしてもよい。また、2本の柱部12の間に配置する止水パネル14の数が2つの場合であっても、想定される水圧等の条件によっては、下段の横貫通孔18にも横締め部材16を1本配置して横締めを行い、止水パネル14に面内方向に横方向に加える横締め力を増加させるようにしてもよい。また、上段および下段の横貫通孔18に配置する横締め部材16の本数はどちらも1本に限定されるわけではなく、上段および下段の少なくともどちらか一方の横貫通孔18に複数本の横締め部材16を配置して面内方向に横方向に止水パネル14を締め付ける横締め力を増加させるようにしてもよい。
【0074】
また、第2実施形態に係る止水構造50では、左右の縦貫通孔20それぞれに1本ずつの縦締め部材52を配置して止水パネル14の面内方向に縦方向に縦締めを行うようにしたが、左右の縦貫通孔20に配置する縦締め部材52の本数はどちらも1本に限定されるわけではなく、左右の縦貫通孔20の少なくともどちらか一方に複数本の縦締め部材52を配置して面内方向に縦方向に止水パネル14を締め付ける縦締め力を増加させるようにしてもよい。
【0075】
また、横締め部材16の両端部を柱部12に固定するようにしたが、例えば、一端部を柱部12に固定し、他端部を例えば他の構造部の部位に固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10、50…止水構造
12…柱部
12A…柱部本体部
12B…柱部下端プレート
14…止水パネル
14A…止水面
14B…施設側の面
16…横締め部材
16A、36A、52A、64A、66A…ナット
18…横貫通孔
20…縦貫通孔
22…第1の止水ゴム
24…第2の止水ゴム
24A…第1層
24B…第2層
24C…第3層
26…第3の止水ゴム
30、60…ベース部
30A、60A…基礎コンクリート
32…溝部
34…断面コの字形の鋼材
34A、34B…フランジ
34C…ウェブ
34A1、34B1…鉛直面
34C1…水平面
36、64、66…アンカーボルト
38、70…埋め合わせ部材
40…荷重負荷手段
40A…本体部
40B…ハンドル
40C…支圧板
40D…支圧ゴム
42、42A、42B…側端面止水治具
42X…頂部鋼板
42Y…側端面鋼板
52…縦締め部材
54…天端プレート
56…第1の止水ゴム
56A…第1層
56B…第2層
58…押さえL形鋼
58A…水平フランジ
58B…鉛直フランジ
62…ベースプレート
68…雌ねじアンカー
【要約】
【課題】水が浸入する浸入口となる開口幅が一定以上に大きい場合であっても対応することができる止水構造を提供する。
【解決手段】立設する柱部材12と、複数の止水パネル14と、面内方向に隣り合う止水パネル14同士を面内方向に横方向に横締めするための横締め部材16と、第1、第2、第3の弾性部材22、24、26と、を備え、複数の止水パネル14は、上方から見て複数の止水パネル14の各止水面14Aが所定の領域へ浸入する水の経路と交差する方向に延びるように配置されるとともに、それぞれの止水パネル14は止水面14Aの面内方向に隣り合うように立設されており、複数の止水パネル14のそれぞれには前記横方向に貫通する貫通孔18が設けられ、横締め部材16は、少なくとも一端部が柱部材12に固定されるとともに、面内方向に隣り合う止水パネル14それぞれの貫通孔18を貫通して設けられる。
【選択図】
図1