(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20221012BHJP
B62D 3/12 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D3/12 503Z
(21)【出願番号】P 2022520982
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2021046066
【審査請求日】2022-04-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土谷 悠太
(72)【発明者】
【氏名】安田 要
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-071684(JP,A)
【文献】特開2020-199926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062677(US,A1)
【文献】特開2013-091386(JP,A)
【文献】特開2014-129034(JP,A)
【文献】特開2004-243988(JP,A)
【文献】特開2013-063723(JP,A)
【文献】特開2015-186973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
B62D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトに連結され、且つ、外周に第1ピニオン歯を有する操舵ピニオン軸と、
第1ラック歯および第2ラック歯が外周に設けられ、前記第1ラック歯が前記第1ピニオン歯と噛み合い、且つ、第1方向に延びるラック軸と、
前記第2ラック歯と噛み合う第2ピニオン歯が外周に設けられるアシストピニオン軸と、
前記アシストピニオン軸に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部を有するウォームホイールと、
前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部が外周に設けられ、且つ、アシストモータの出力軸に取り付けられるウォームシャフトと、
前記ラック軸における前記第1方向の一方側を収容する第1ラック軸収容部と、前記第1ラック軸収容部における前記第1方向の他方側の端部に設けられた第1結合部と、前記アシストピニオン軸を収容するアシストピニオン軸収容部と、前記ウォームホイールを収容するウォームホイール収容部と、前記ウォームシャフトを収容するウォームシャフト収容部と、が一体成形された第1ハウジングと、
前記ラック軸における前記第1方向の他方側を収容する第2ラック軸収容部と、前記第2ラック軸収容部における前記第1方向の一方側の端部に設けられ、かつ前記第1結合部と連結する第2結合部と、前記操舵ピニオン軸を収容する操舵ピニオン軸収容部と、が一体成形された第2ハウジングと、
を
備え、
前記第2ハウジングは、車体に取り付けられるマウント部材を有し、
前記ウォームシャフト収容部は、前記第1方向に沿う中心軸の軸方向に延びる筒状の本体部と、前記本体部における前記第1方向の前記他方側の端部から径方向外側に延びるフランジと、を有し、
前記フランジは、
前記第1方向の前記他方側に面し、且つ、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる環状部と、
前記環状部の径方向内側に設けられ、且つ、前記環状部よりも前記第1方向の前記一方側に凹む凹部と、を有し、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、
前記フランジの前記凹部は、前記操舵ピニオン軸収容部または前記マウント部材の少なくとも一部と重畳し、
前記ウォームシャフトにおける前記第1方向の前記他方側の端部には、前記アシストモータの前記出力軸が挿入されて取り付けられ、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、前記アシストモータおよび前記第1結合部のそれぞれの少なくとも一部同士が重畳しており、
前記出力軸の先端から前記ウォームシャフトにおける前記第1方向の前記他方側の端までの前記第1方向に沿った第1距離は、
前記アシストモータの前記第1方向の前記他方側の端から前記第1結合部までの前記第1方向に沿った第2距離よりも小さい、
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
ステアリングシャフトに連結され、且つ、外周に第1ピニオン歯を有する操舵ピニオン軸と、
第1ラック歯および第2ラック歯が外周に設けられ、前記第1ラック歯が前記第1ピニオン歯と噛み合い、且つ、第1方向に延びるラック軸と、
前記第2ラック歯と噛み合う第2ピニオン歯が外周に設けられるアシストピニオン軸と、
前記アシストピニオン軸に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部を有するウォームホイールと、
前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部が外周に設けられ、且つ、アシストモータの出力軸に取り付けられるウォームシャフトと、
前記ラック軸における前記第1方向の一方側を収容する第1ラック軸収容部と、前記第1ラック軸収容部における前記第1方向の他方側の端部に設けられた第1結合部と、前記アシストピニオン軸を収容するアシストピニオン軸収容部と、前記ウォームホイールを収容するウォームホイール収容部と、前記ウォームシャフトを収容するウォームシャフト収容部と、が一体成形された第1ハウジングと、
前記ラック軸における前記第1方向の他方側を収容する第2ラック軸収容部と、前記第2ラック軸収容部における前記第1方向の一方側の端部に設けられ、かつ前記第1結合部と連結する第2結合部と、前記操舵ピニオン軸を収容する操舵ピニオン軸収容部と、が一体成形された第2ハウジングと、
を備え、
前記第2ハウジングは、車体に取り付けられるマウント部材を有し、
前記ウォームシャフト収容部は、前記第1方向に沿う中心軸の軸方向に延びる筒状の本体部と、前記本体部における前記第1方向の前記他方側の端部から径方向外側に延びるフランジと、を有し、
前記フランジは、
前記第1方向の前記他方側に面し、且つ、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる環状部と、
前記環状部の径方向内側に設けられ、且つ、前記環状部よりも前記第1方向の前記一方側に凹む凹部と、を有し、
前記フランジの前記凹部の径方向内側に、前記ウォームシャフト収容部の前記本体部が配置され、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、
前記本体部は、前記操舵ピニオン軸収容部または前記マウント部材の少なくとも一部と重畳し、
前記ウォームシャフトにおける前記第1方向の前記他方側の端部には、前記アシストモータの前記出力軸が挿入されて取り付けられ、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、前記アシストモータおよび前記第1結合部のそれぞれの少なくとも一部同士が重畳しており、
前記出力軸の先端から前記ウォームシャフトにおける前記第1方向の前記他方側の端までの前記第1方向に沿った第1距離は、
前記アシストモータの前記第1方向の前記他方側の端から前記第1結合部までの前記第1方向に沿った第2距離よりも小さい、
電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記第1ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、
前記フランジの前記凹部は、前記第1結合部と重畳しない、
請求項
1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記第1結合部と前記第2結合部とは、ノックピンを介して位置合わせされる、
請求項
1から3のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記第1結合部と前記第2結合部とは、リーマボルトを介して位置合わせされる、
請求項
1から3のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記第1結合部と前記第2結合部とは、接着剤を介して接合される、
請求項
1から3のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、いわゆるデュアルピニオン式のパワーステアリング装置が開示される。特許文献1および特許文献2に記載されたパワーステアリング装置は、ラック軸と、操舵ピニオン軸と、アシストピニオン軸と、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、ハウジングと、を備える。車両の左右方向の一方側であるアシスト側には、アシストピニオン軸が設けられ、アシストピニオン軸の下端部に設けられるピニオン歯は、ラック軸におけるラック歯と噛み合う。また、アシストピニオン軸の上端部には、ウォームホイールが取り付けられ、ウォームホイールは、ウォームシャフトと噛み合う。車両の左右方向の他方側であるステアリングホイール側には、操舵ピニオン軸が設けられ、操舵ピニオン軸の下端部に設けられるピニオン歯は、ラック軸の別のラック歯と噛み合う。
【0003】
ここで、特許文献1では、ハウジングは一体成形されている。即ち、一体成形された1つのハウジングによって、ラック軸、操舵ピニオン軸、アシストピニオン軸、ウォームホイールおよびウォームシャフトの全てを収容する。
【0004】
また、特許文献2では、ハウジングは、3つに分割されている。具体的には、ハウジングは、車両の左右方向の一方側であるアシスト側に位置するアシスト側ハウジングと、アシスト側ハウジングに組み付けられる減速機ハウジング(減速機収容部)と、車両の左右方向の他方側であるステアリングホイール側に位置する操舵側ハウジングと、に分かれる。アシスト側ハウジングには、アシストピニオン軸と、ラック軸における左右方向の一方側の部位と、が収容される。減速機ハウジング(減速機収容部)には、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、が収容される。操舵側ハウジングには、操舵ピニオン軸と、ラック軸における左右方向の他方側の部位と、が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-199926号公報
【文献】特許第6067251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、ハウジングにおける減速機収容部を工作機械を用いて加工する場合、工作機械を減速機収容部まで移動させようとすると、工作機械がハウジングの一部に干渉して減速機収容部まで到達できず、減速機収容部を加工できない可能性がある。特許文献2では、ハウジングが3つに分割されているため、パワーステアリング装置全体として部品点数が多くなってしまう。
【0007】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、部品点数がより少なく、且つ、減速機収容部を機械加工することが可能な電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、一態様に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリングシャフトに連結され、且つ、外周に第1ピニオン歯を有する操舵ピニオン軸と、第1ラック歯および第2ラック歯が外周に設けられ、前記第1ラック歯が前記第1ピニオン歯と噛み合い、且つ、第1方向に延びるラック軸と、前記第2ラック歯と噛み合う第2ピニオン歯が外周に設けられるアシストピニオン軸と、前記アシストピニオン軸に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部を有するウォームホイールと、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部が外周に設けられ、且つ、アシストモータの出力軸に取り付けられるウォームシャフトと、前記ラック軸における前記第1方向の一方側を収容する第1ラック軸収容部と、前記第1ラック軸収容部における前記第1方向の他方側の端部に設けられた第1結合部と、前記アシストピニオン軸を収容するアシストピニオン軸収容部と、前記ウォームホイールを収容するウォームホイール収容部と、前記ウォームシャフトを収容するウォームシャフト収容部と、が一体成形された第1ハウジングと、前記ラック軸における前記第1方向の他方側を収容する第2ラック軸収容部と、前記第2ラック軸収容部における前記第1方向の一方側の端部に設けられ、かつ前記第1結合部と連結する第2結合部と、前記操舵ピニオン軸を収容する操舵ピニオン軸収容部と、が一体成形された第2ハウジングと、を備える。
【0009】
まず、前述したように、特許文献1では、ハウジング全体が1つに一体成形されており、ウォームホイール収容部およびウォームシャフト収容部を含む減速機収容部を備える。特許文献1において、工作機械を減速機収容部まで移動させようとすると、工作機械がハウジングの一部に干渉し減速機収容部まで到達できないため、減速機収容部を加工できない可能性がある。これに対して、本開示では、ハウジングが、第1ハウジングと第2ハウジングとに分割されているため、第2ハウジングを第1ハウジングから分離させた状態で、第1ハウジングのみを加工することができる。従って、工作機械を移動させる際に、第2ハウジングに工作機械が干渉しないため、第1ハウジングに含まれる減速機収容部を加工することできる。なお、ハウジングを例えば鋳造で成形する場合、本開示では、ハウジングが第1ハウジングと第2ハウジングとに分割されているため、特許文献1のハウジングよりも、小型のダイキャストマシンで成形することが可能となる。
【0010】
また、前述したように、特許文献2では、ハウジングが3つに分割されているため、パワーステアリング装置全体として部品点数が多くなってしまう。これに対して、本開示では、ウォームホイール収容部およびウォームシャフト収容部(減速機収容部)が、第1ハウジングと一体成形されているため、本開示に係るハウジングは、第1ハウジングおよび第2ハウジングの2つである。従って、電動パワーステアリング装置全体としての部品点数が特許文献2に係るパワーステアリング装置よりも少なくなる。
【0011】
以上のように、本開示によれば、部品点数がより少なく、且つ、減速機収容部を機械加工することが可能な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0012】
望ましい態様として、前記第2ハウジングは、車体に取り付けられるマウント部材を有し、前記ウォームシャフト収容部は、前記第1方向に沿う中心軸の軸方向に延びる筒状の本体部と、前記本体部における前記第1方向の前記他方側の端部から径方向外側に延びるフランジと、を有し、前記フランジは、前記第1方向の前記他方側に面し、且つ、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる環状部と、前記環状部の径方向内側に設けられ、且つ、前記環状部よりも前記第1方向の前記一方側に凹む凹部と、を有し、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、前記フランジの前記凹部は、前記操舵ピニオン軸収容部または前記マウント部材の少なくとも一部と重畳する。
【0013】
第1ハウジングに設けられたフランジに第1方向の他方側から加工を施す際に、工作機械を第1方向の一方側に向けて移動させると、第2ハウジングに設けられた操舵ピニオン軸収容部またはマウント部材と工作機械とが干渉し、工作機械がフランジまで到達できず、第1ハウジングのフランジを加工することが困難である。
【0014】
しかし、本開示では、ハウジングが、第1ハウジングと第2ハウジングとに分割されているため、第2ハウジングを第1ハウジングから分離させた状態で、第1ハウジングのみを加工することができる。従って、工作機械を移動させる際に、第2ハウジングに工作機械が干渉しないため、第1ハウジングのフランジを露出させた状態で、当該フランジを加工して凹部を形成することができる。
【0015】
望ましい態様として、前記第2ハウジングは、車体に取り付けられるマウント部材を有し、前記ウォームシャフト収容部は、前記第1方向に沿う中心軸の軸方向に延びる筒状の本体部と、前記本体部における前記第1方向の前記他方側の端部から径方向外側に延びるフランジと、を有し、前記フランジは、前記第1方向の前記他方側に面し、且つ、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる環状部と、前記環状部の径方向内側に設けられ、且つ、前記環状部よりも前記第1方向の前記一方側に凹む凹部と、を有し、前記フランジの前記凹部の径方向内側に、前記ウォームシャフト収容部の前記本体部が配置され、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、前記本体部は、前記操舵ピニオン軸収容部または前記マウント部材の少なくとも一部と重畳する。
【0016】
本開示によれば、第1ハウジングに設けられたウォームシャフト収容部に対して工作機械を用いて機械加工することできる。具体的には、凹部の径方向内側の部分を第1方向に沿って切削加工することにより、ウォームシャフト収容部の本体部の内周面が形成される。その際、工作機械を第1方向の一方側に向けて移動させると、第2ハウジングに設けられた操舵ピニオン軸収容部またはマウント部材と工作機械とが干渉し、工作機械が凹部の径方向内側の部分まで到達できず、当該部分に対して機械加工を行うことが困難である。
【0017】
しかし、本開示では、ハウジングが、第1ハウジングと第2ハウジングとに分割されているため、第2ハウジングを第1ハウジングから分離させた状態で、第1ハウジングのみを加工することができる。そして、フランジの凹部の部分を露出させた状態で、当該部分を機械加工することができる。
【0018】
望ましい態様として、前記ウォームシャフトにおける前記第1方向の前記他方側の端部には、前記アシストモータの前記出力軸が挿入されて取り付けられ、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、前記アシストモータおよび前記第1結合部のそれぞれの少なくとも一部同士が重畳しており、前記出力軸の先端から前記ウォームシャフトにおける前記第1方向の前記他方側の端までの前記第1方向に沿った第1距離は、前記アシストモータの前記第1方向の前記他方側の端から前記第1結合部までの前記第1方向に沿った第2距離よりも小さい。
【0019】
これによれば、第1方向の他方側から見た場合に、アシストモータおよび第1結合部それぞれの少なくとも一部同士が重畳している場合であっても、ウォームシャフトにおける第1方向の他方側の端部に、アシストモータの出力軸を挿入して嵌合させることができる。以下、簡単に説明する。
【0020】
ウォームシャフトにおける第1方向の他方側の端部の嵌合穴に、アシストモータの出力軸を挿入するには、アシストモータを第1方向の一方側に移動させて出力軸の先端から嵌合穴に挿入させる。そして、この状態で、アシストモータを第1方向の一方側に更に移動させたのち、例えば、アシストモータのいずれかの部位がウォームシャフト収容部のいずれかの部位に突き当たったときに、出力軸の嵌合穴への挿入が完了した挿入完了状態となる。
【0021】
ここで、第1距離が第2距離よりも大きいと、アシストモータが第1結合部に干渉してしまい、出力軸の先端から嵌合穴に挿入させることができない。従って、第1距離を第2距離よりも小さくすることにより、アシストモータおよび第1結合部それぞれの少なくとも一部同士が重畳している場合であっても、ウォームシャフトにおける第1方向の他方側の端部の嵌合穴に、アシストモータの出力軸を挿入して嵌合させることができる。
【0022】
望ましい態様として、前記第1ハウジングを前記第1方向の前記他方側から見た場合に、前記フランジの前記凹部は、前記第1結合部と重畳しない。これによれば、第2ハウジングを第1ハウジングから分離させ、フランジを露出させた状態で、当該フランジを機械加工することができる。
【0023】
望ましい態様として、前記第1結合部と前記第2結合部とは、ノックピンを介して位置合わせされる。これによれば、貫通孔にノックピンを圧入するという簡単な作業で第1結合部と第2結合部との位置合わせを行うことができる。なお、ノックピンによれば、通常のボルト締結よりも位置決め精度が高くなる。
【0024】
望ましい態様として、前記第1結合部と前記第2結合部とは、リーマボルトを介して位置合わせされる。これによれば、貫通孔にリーマボルトを挿入してナットで締結するという簡単な作業で第1結合部と第2結合部との位置合わせを行うことができる。なお、リーマボルトによれば、通常のボルト締結よりも位置決め精度が高くなる。
【0025】
望ましい態様として、前記第1結合部と前記第2結合部とは、接着剤を介して接合される。これによれば、水などの液体に対するシール性能が向上する。また、単にボルトのみで第1結合部および第2結合部を固定する場合よりも、固定強度が向上する。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、部品点数がより少なく、且つ、減速機収容部を機械加工することが可能な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【
図8】
図8は、
図6の第1ハウジングのみをA方向から見た側面図である。
【
図9】
図9は、ハウジングの組立方法を説明する模式図である。
【
図10】
図10は、第1ハウジングと第2ハウジングを組み付けた状態のハウジングに対して、工作機械を用いて機械加工を開始した状態を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第1ハウジングのみに対して、工作機械を用いて機械加工をしている状態を示す模式図である。
【
図13】
図13は、変形例1に係る、第1結合部と第2結合部との位置決め構造を示す模式的な断面図であり、
図12のXIII-XIII線による断面図である。
【
図14】
図14は、変形例2に係る、第1結合部と第2結合部との位置決め構造を示す模式的な断面図であり、
図13に相当する図である。
【
図15】
図15は、変形例3に係る、第1結合部と第2結合部との結合構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、同一構造の部位には同一符号を付けて、説明を省略する。なお、本実施形態において、X方向を第1方向と呼ぶ。Z方向は、X方向と交差する。Y方向は、X方向およびZ方向と交差する。また、X1側を第1方向の一方側とも呼び、X2側を第1方向の他方側とも呼ぶ。
【0029】
[実施形態]
実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。
図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2は、
図1の一部を示す斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線による断面図である。
図4は、
図2の一部を示す斜視図である。
図5は、
図2のV-V線による断面図である。
図6は、
図4を別の方向から見た斜視図である。
図7は、
図6をA方向から見た側面図である。
図8は、
図6の第1ハウジングのみをA方向から見た側面図である。
【0030】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、第2ステアリングシャフト83と、操舵ピニオン軸84と、ラック軸85と、タイロッド86と、アシストピニオン軸1と、ウォームホイール2と、ウォームシャフト3と、アシストモータ100と、第1ハウジング41と、第2ハウジング42と、を備える。電動パワーステアリング装置80は、例えばいわゆるデュアルピニオンタイプのステアリング装置である。本実施形態では、ハウジング4は、第1ハウジング41と、第2ハウジング42と、に分割されている。つまり、第1ハウジング41はX1側に位置し、第2ハウジング42はX2側に位置し、互いに連結されることによってハウジング4が構成される。
【0031】
図1に示すように、ステアリングホイール81は、第1ステアリングシャフト82に連結され、第1ステアリングシャフト82は、ユニバーサルジョイント821を介して第2ステアリングシャフト83に連結される。第2ステアリングシャフト83は、ユニバーサルジョイント831を介して操舵ピニオン軸84に連結される。操舵ピニオン軸84の下端部の外周には、第1ピニオン歯841が形成される。
【0032】
図1および
図2に示すように、ラック軸85は、X方向(第1方向)に延びる。換言すると、ラック軸85の中心軸AX2は、X方向(第1方向)に延びる。そして、ラック軸85は、中心軸AX2の軸方向に延び、且つ、中心軸AX2の軸回り方向に回転可能である。X方向(第1方向)は、例えば車両の車幅方向である。ラック軸85は、X1側(第1方向の一方側)に位置する第1部位85aと、X2側(第1方向の他方側)に位置する第2部位85bと、を備える。第1部位85aは、第1ハウジング41に収容され、第2部位85bは、第2ハウジング42に収容される。第2部位85bの外周には、第1ラック歯851が設けられ、第1部位85aの外周には、第2ラック歯852が設けられる。第1ラック歯851は、操舵ピニオン軸84の第1ピニオン歯841と噛み合う。第2ラック歯852は、アシストピニオン軸1の第2ピニオン歯1aと噛み合う。ラック軸85のX1側およびX2側の両端部は、タイロッド86を介して車輪101に連結される。
【0033】
また、
図2に示すように、第1ハウジング41のX1側の端部には、マウント部材103が設けられ、第2ハウジング42のX2側の端部には、マウント部材105が設けられる。マウント部材103、105は、車体に取り付けられる。マウント部材103は、上側(Z1側)および下側(Z2側)に上下一対に設けられる。マウント部材103には、貫通孔が設けられ、当該貫通孔の内方には円筒状のラバーブッシュ103bが嵌合され、ラバーブッシュ103bの径方向中央部には挿通孔103aが貫通する。マウント部材105は、上側(Z1側)および下側(Z2側)に上下一対に設けられる。マウント部材105には、貫通孔が設けられ、当該貫通孔の内方には円筒状のラバーブッシュ105bが嵌合され、ラバーブッシュ105bの径方向中央部には挿通孔105aが貫通する。挿通孔103a、105aにそれぞれ締結部材(例えばボルト)を挿入して当該締結部材を車体に締結することにより、第1ハウジング41および第2ハウジング42が車体に取り付けられる。なお、
図2に示すラバーブッシュ103bの外周部分103cおよびラバーブッシュ103bの表面は、平坦な面に形成されている。ラバーブッシュ105bの外周部分105cおよびラバーブッシュ105bの表面も、平坦な面に形成されている。
【0034】
第2ハウジング42は、第2ラック軸収容部422と、第2結合部421と、操舵ピニオン軸収容部5と、マウント部材105と、が一体成形されたハウジングである。以下、具体的に説明する。
【0035】
第2ラック軸収容部422は、ラック軸85におけるX2側(第1方向の他方側)を収容する。マウント部材105は、第2ラック軸収容部422におけるX2側(第1方向の他方側)の端部に設けられる。第2結合部421は、第2ラック軸収容部422におけるX1側(第1方向の一方側)の端部に設けられる。第2結合部421は、中心軸AX2の径方向外側に延びるフランジであり、ボルト孔が設けられる。操舵ピニオン軸収容部5は、操舵ピニオン軸84を収容する。操舵ピニオン軸84の中心軸AX4は、ラック軸85の中心軸AX2と交差する。即ち、
図2に示すように、Y方向から見た場合に、中心軸AX4は、Z1側とX2側との中間の方向に沿って斜めに延びている。即ち、Y方向から見た場合に、中心軸AX4は、Z1側よりもX2側に傾いている。操舵ピニオン軸収容部5は、本体部50と、取付フランジ51、52、53と、を有する。本体部50は、中心軸AX4の軸方向に延びる。取付フランジ51、52、53は、本体部50の上端から中心軸AX4の径方向に突出する。
図6に示すように、取付フランジ51は、X1側とY1側との中間の方向に向けて突出する。取付フランジ52は、Y1側とX2側との中間の方向に向けて突出する。取付フランジ53は、X2側とY2側との中間の方向に向けて突出する。即ち、取付フランジ51、52、53は、中心軸AX4の軸回りの周方向に沿って等間隔に配置される。なお、取付フランジ51、52、53のそれぞれには、ボルト孔51a、52a、53aが貫通する。そして、
図2に示すように、取付フランジ51、52、53の上側(Z1側)には、トルク検出装置ハウジング54が取り付けられる。トルク検出装置ハウジング54は、ボルトBLを介して取付フランジ51、52、53のボルト孔51a、52a、53aに締結される。トルク検出装置ハウジング54の内方には、トルク検出装置が収容される。トルク検出装置は、例えば、磁気式トルクセンサまたは光学式トルクセンサ等の種々のセンサが適用可能である。操舵ピニオン軸84は、トルク検出装置ハウジング54の上面よりも上側(Z1側)に突出している。以上説明した第2ラック軸収容部422と、第2結合部421と、操舵ピニオン軸収容部5と、マウント部材105と、が一体成形されて第2ハウジング42となる。
【0036】
図2に示すように、第1ハウジング41の第1結合部411と、第2ハウジング42の第2結合部421とは、ボルトBLを介して固定される。これにより、第1ハウジング41と第2ハウジング42とが連結される。
【0037】
図1、
図2、
図4および
図6に示すように、第1ハウジング41は、第1ラック軸収容部412と、アシストピニオン軸収容部440と、ウォームホイール収容部413と、ウォームシャフト収容部419と、マウント部材103と、が一体成形されたハウジングである。なお、減速機ハウジング200は、ウォームホイール収容部413とウォームシャフト収容部419とを含む。以下、具体的に説明する。
【0038】
第1ラック軸収容部412は、ラック軸85におけるX1側(第1方向の一方側)を収容する。マウント部材103は、第2ラック軸収容部422におけるX1側(第1方向の一方側)の端部に設けられる。第1結合部411は、第1ラック軸収容部412におけるX2側(第1方向の他方側)の端部に設けられる。第1結合部411は、中心軸AX2の径方向外側に延びるフランジである。アシストピニオン軸収容部440は、アシストピニオン軸1を収容する。アシストピニオン軸1は、
図1に示すように、Z2側の端部に第2ピニオン歯1aを有し、Z1側の端部にウォームホイール2を有する。アシストピニオン軸1は、中心軸AX1(
図3参照)に沿って延び、且つ、中心軸AX1の軸回り方向に回転する。ウォームホイール収容部413には、ウォームホイール2が収容される。ウォームホイール収容部413は、減速機ハウジング200に含まれる。
図5に示すように、ウォームホイール2は、芯金部21と、ホイール歯部22と、を有する。芯金部21は、例えば金属で形成され、中心軸AX1の軸回り方向に沿って環状の形状を有する。ホイール歯部22は、芯金部21の外周側に設けられる。ホイール歯部22は、中心軸AX1の軸回り方向に沿って環状の形状を有する。ホイール歯部22は、例えば樹脂で形成される。ウォームホイール収容部413は、開口部を有し、当該開口部は、蓋部材414で封止される。
図2、
図3、
図4および
図6に示すように、ウォームシャフト収容部419は、ウォームシャフト3を収容する。ウォームシャフト収容部419は、減速機ハウジング200に含まれる。ウォームシャフト収容部419は、本体部430と、モータ取付フランジ(フランジ)45と、カバー431と、を有する。なお、ウォームシャフト3の中心軸は、中心軸AX3である。
【0039】
本体部430は、中心軸AX3の軸方向に延びる筒状形状を有する。本体部430の内方434にウォームシャフト3が収容される。
図3および
図4に示すように、本体部430の円筒面の一部は開口し、当該開口部はウォームホイール収容部413と連通する。これにより、ウォームシャフト3のシャフト歯部31がウォームホイール2のホイール歯部22に噛み合うことができる。カバー431は、本体部430のX1側の端を封止する。カバー431は、例えばボルトを介して本体部430に取り付けられる。また、
図3に示すように、ウォームシャフト3におけるX2側の端部は、軸受61を介して本体部430の内周面432に回転可能に支持され、ウォームシャフト3におけるX1側の端部は、軸受62を介して本体部430の内周面432に回転可能に支持される。軸受62は、軸受ホルダー62Aの内周側に保持される。軸受61の内輪は、スペーサ63およびスペーサ64を介してウォームシャフト3の外周に固定される。内周面432は、中心軸AX3の軸回りの周方向に延びる円筒面である。また、
図3に示すように、ウォームシャフト3におけるX2側の端部には、X方向(第1方向)に延びる嵌合穴32が設けられ、嵌合穴32は、X2側が開口している。嵌合穴32には、アシストモータ100の出力軸122がスプライン嵌合される。即ち、嵌合穴32の内周33には、スプライン内歯が設けられ、出力軸122の外周122bには、スプライン外歯が設けられ、出力軸122の外周122bを嵌合穴32の内周33に挿入してスプライン嵌合させることにより、出力軸122と共にウォームシャフト3が回転可能となる。なお、嵌合穴32の内周33は、X2側の端34まで延びている。
【0040】
図3および
図6に示すように、モータ取付フランジ(フランジ)45は、本体部430におけるX2側の端部433から中心軸AX3の径方向外側に延びる。モータ取付フランジ45は、環状部450と、凹部454と、突出部451、452、453と、を有する。
【0041】
環状部450は、X2側に面する。環状部450は、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って延びる。環状部450におけるX2側の端面450aは、中心軸AX3に対して直交して延びる平坦面である。環状部450には、中心軸AX3の径方向外側に突出する3つの突出部451、452、453が設けられる。突出部451、452、453のそれぞれには、ボルト孔451a、452a、453aが貫通する。ここで、後述する
図8に示すように、X2側から見て、突出部451は、Y1側とZ1側との中間の方向に向けて突出する。突出部452は、Y2側に向けて突出する。突出部453は、Y1側とZ2側との中間の方向に向けて突出する。
【0042】
図3および
図6に示すように、環状部450および凹部454は、X2側に面する。環状部450の径方向内側には、凹部454が設けられる。即ち、凹部454におけるX2側の端面454aは、環状部450の端面450aよりもX1側に位置する。このように、凹部454は、環状部450よりもX1側に凹んでいる凹部形状を有する。端面454aおよび端面450aは、中心軸AX3に対して直交して延びる平坦面である。
【0043】
図3に示すように、端面450aは、径方向外側端450cから径方向内側端450bまで径方向に沿って延びる。また、円筒面455は、端面454aにおける径方向外側端454bからX2側に延びる。円筒面455は、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って延びる。円筒面455は、モーターハウジング110の突起部111bの外周面と当接するインロー部である。円筒面455は、後述するように、機械加工の対象部位である。また、端面454aにおける径方向内側端454cから端454dまで円筒面456が延びている。円筒面456には、軸受61の外輪が当接する。円筒面456の径方向内側には、端面456aが設けられる。端面456aは、円筒面456と、本体部430の内周面432とを連結する。すなわち、内周面432は、円筒面456および端面456aを有する。円筒面456は、軸受61の外輪の外周面に当接し、端面456aは、軸受61の外輪の側面に当接する。
【0044】
図3に示すように、本体部430の内周面432は、端面454aにおける径方向内側端454cよりも径方向内側に位置する。即ち、
図3に示すように、X2側から見た場合に、凹部454の径方向内側に、本体部430の内周面432が位置する。なお、円筒面455、凹部454の端面454a、円筒面456、端面456aおよび本体部430の内周面432は、機械加工を施す加工面である。また、
図6に示すように、突出部451、452、453のボルト孔451a、452a、453aの穴開け加工(機械加工)によって成形される。また、前述したように、軸受62は、軸受ホルダー620の内周側に保持される。
図3に示すように、軸受ホルダー620は、外周面621および側面622を有する。また、内周面432は、当接部432aおよび段差部432bを有する。当接部432aは、軸受ホルダー620の外周面621に当接する。段差部432bは、当接部432aにおけるX1側の端から、中心軸AX3の軸方向に直交する径方向の外側に向けて(すなわち、Z方向に沿って)延びる。段差部432bは、軸受ホルダー620の側面622に当接する。これらの当接部432aおよび段差部432bには、機械加工が施される。
【0045】
また、内周面432は、前述したように、円筒面456および端面456aを有する。円筒面456は、軸受61の外輪の外周面に当接し、端面456aは、軸受61の外輪の側面に当接する。これらの円筒面456および端面456aには、機械加工が施される。
【0046】
さらに、前述したように、
図3に示す円筒面455も、機械加工が施される。換言すると、端面454aは、機械加工を行わなくてもよい。また、内周面432上において、軸受61、62と当接する箇所を除く箇所についても、機械加工を行わなくてもよい。
【0047】
次に、アシストモータ100について説明する。
図3に示すように、アシストモータ100は、モータ本体121と、出力軸122と、ECU123と、モーターハウジング110と、後側カバー113と、を備える。
【0048】
モータ本体121は、図外のロータおよびステータを有し、ステータに対してロータが回転する。出力軸122は、ロータに接続され、ロータと共に回転可能である。ECU123は、モータ本体121の動作を制御する。即ち、例えば、ECU123は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出し、補助操舵指令値に基づいてモータ本体121へ供給する電力値を調節する。
【0049】
モータ本体121は、モーターハウジング110の内側に収容され、ECU123は、後側カバー113の内側に収容される。モーターハウジング110は、前面部111と、円筒部112と、を有する。前面部111は、モータ本体121のX1側に設けられ、円筒部112は、モータ本体121の側面の外側に設けられる。前面部111は、略円板形状を有し、中央に貫通孔が設けられる。当該貫通孔から出力軸122がX1側に向けて突出する。前面部111には、径方向外側部111aと、突起部111bと、径方向内側部111cと、が設けられる。径方向外側部111aは、前面部111における径方向外側の端部に配置される。径方向外側部111aの端面111dは、環状部450の端面450aに当接する。突起部111bは、径方向外側部111aの径方向内側に配置される。突起部111bは、円筒面455の径方向内側に位置する。突起部111bは、円筒面455に当接することにより、モータ取付フランジ45と前面部111との相対的な径方向位置の位置決めがされる。径方向内側部111cは、突起部111bの径方向内側に配置される。前面部111における径方向外側端からX2側に向けて円筒部112が設けられる。円筒部112は、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って延びる。
【0050】
後側カバー113は、略円板形状の後面113aと、円筒部113bと、を備える。後面113aは、ECU123のX2側の端面に対向する。円筒部113bは、後面113aにおける径方向外側端からX1側に向けて延びる。円筒部113bは、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って延びる。円筒部113bにおけるX1側の端部は、円筒部112におけるX2側の端部と嵌合する。なお、後面113aの部位のうち、後端113cが最もX2側に位置する。
【0051】
なお、アシストモータ100がウォームシャフト収容部419に組み付けられた状態において、出力軸122のX1側の先端122aと、嵌合穴32の内周33におけるX2側の端34との、X方向に沿った距離は、第1距離D1である。また、
図2に示すように、アシストモータ100がウォームシャフト収容部419に組み付けられた状態において、第1結合部411におけるX1側の端と、後側カバー113の後面113aとのX方向に沿った距離は、第2距離D2である。
【0052】
ここで、アシストモータ100をウォームシャフト収容部419に組み付ける手順を簡単に説明する。
【0053】
まず、
図2に示すように、X方向において、第1結合部411とモータ取付フランジ45との間において、アシストモータ100を上側(Z1側)から下側(Z2側)に下降させる。
【0054】
そして、
図3に示すように、アシストモータ100の中心軸が、ウォームシャフト3の中心軸AX3と一致した状態で、アシストモータ100をX1側に移動させる。具体的には、アシストモータ100を中心軸AX3の軸方向に移動させて出力軸122の先端122aから嵌合穴32に挿入させ、そのままアシストモータ100を中心軸AX3の軸方向に更に移動させると、出力軸122が、嵌合穴32の内周33に当接しつつ嵌合穴32に挿入される。こののち、径方向外側部111aの端面111dが、環状部450の端面450aに当接すると、出力軸122の嵌合穴32への挿入が完了した挿入完了状態となる。換言すると、端面111dと端面450aとが当接した状態が、出力軸122の嵌合穴32への挿入が完了した挿入完了状態である。なお、前述した第1距離D1は、挿入完了状態における出力軸122の先端122aから嵌合穴32の内周33におけるX2側の端34までのX方向に沿った距離である。そして、第2距離D2は、第1距離D1よりも大きい。換言すると、第1距離D1は、第2距離D2よりも小さい。
【0055】
図7を参照して、X2側から見た場合におけるハウジング4を説明する。なお、
図7および
図8では、アシストモータ100を組み付けていないため、環状部450および凹部454が露出している。
【0056】
図7に示すように、ハウジング4をX2側から見た場合に、取付フランジ51は、Z1側に向けて突出しており、取付フランジ52は、Y1側に向けて突出している。そして、X2側から見た場合に、凹部454は、取付フランジ51の一部、取付フランジ52の一部、本体部50の一部と、重なっている。さらに、X2側から見た場合に、凹部454は、マウント部材105の一部と重なっている。具体的には、上下一対のマウント部材105のうちの上側(Z1側)のマウント部材105の一部と凹部454とが重なっている。
【0057】
また、
図7に示すように、ウォームシャフト収容部419の本体部430の内方434は、X2側から見た場合に、取付フランジ51の一部および本体部50の一部と重なっている。
【0058】
図8を参照して、第1ハウジング41のみをX2側から見た状態を説明する。
図8に示すように、X2側から見た場合に、モータ取付フランジ45の凹部454およびウォームシャフト収容部419の本体部430の内方434は、露出し、重畳する部品がない。なお、
図8の斜線部で示すように、端面450aの一部450dと第1角部411aの一部とが重なる。以下、具体的に説明する。
【0059】
図8に示すように、第1結合部411は、第1角部411aと、第2角部411bと、第3角部411cと、を有する。X2側から見た場合に、第1角部411a、第2角部411bおよび第3角部411cのそれぞれは、略三角形状である。第1角部411aは、Z1側とY2側とのとの中間の方向に突出する。第1角部411aには、ボルト孔411dが設けられる。第2角部411bは、Y1側に突出する。第2角部411bには、ボルト孔411eが設けられる。第3角部411cは、Z2側とY2側とのとの中間の方向に突出する。第3角部411cには、ボルト孔411fが設けられる。なお、環状部450の端面450aの一部450dは、
図8の斜線部に示すように、第1角部411aと重なる。ここで、斜線部は、端面450aの一部450dと第1角部411aとが重なる部位を明瞭にするために形式的に記載したものであり、断面ハッチングではない。以上より、X方向から見た場合において機械加工の対象となる凹部454の端面454aおよび本体部430の内周面432は、第1結合部411と重畳せず、露出している。
【0060】
なお、
図3を参照して説明したように、円筒面455は、モーターハウジング110の突起部111bの外周面と当接するインロー部である。
図8に示すように、X方向から見た状態で、第1結合部411は円筒面455と重ならない。換言すると、X方向から見た状態で、第1結合部411は、外周縁411gを有するが、この外周縁411gで囲まれる略三角形の内側部分と、円筒面455とは、重畳しない。これによれば、工作機械300を用いて円筒面455(インロー部)を機械加工する際に、工作機械300が第1結合部411に干渉しないため、円筒面455(インロー部)の加工が容易になる。
【0061】
また、
図8に示すように、X方向から見た状態で、第1結合部411はボルト孔453aと重ならない。換言すると、X方向から見た状態で、第1結合部411の外周縁411gで囲まれる略三角形の内側部分と、ボルト孔453aとは、重畳しない。これによれば、工作機械300を用いてボルト孔453aを機械加工する際に、工作機械300が第1結合部411に干渉しないため、ボルト孔453aの加工が容易になる。
【0062】
次に、ハウジングの組立方法を説明する。
図9は、ハウジングの組立方法を説明する模式図である。本実施形態では、第1ハウジング41と第2ハウジング42とを、互いの位相を揃えた状態(互いの周方向の位置を合わせた状態)で結合(連結)させる。
【0063】
なお、前述したように、第1ハウジング41のX1側の端部にはマウント部材103が設けられ、第2ハウジング42のX2側の端部にはマウント部材105が設けられる。また、
図5を参照して前述したように、マウント部材103の表面103d(ラバーブッシュ103bの外周部分103cおよびラバーブッシュ103bの表面)は、平坦な面に形成されている。また、マウント部材105の表面105d(ラバーブッシュ105bの外周部分105cおよびラバーブッシュ105bの表面)も、平坦な面に形成されている。以下に、ハウジングの組立方法を、順を追って具体的に説明する。
【0064】
まず、
図9に示すように、二点鎖線で示す定盤500の上に、第1ハウジング41をX方向に沿って載置する。マウント部材103がX1側に位置し、第1結合部411がX2側に位置するように載置する。このとき、定盤500の表面500aにマウント部材103の表面103dを当接させる。定盤500の表面500aは平坦であり、マウント部材103の表面103dも平坦である。従って、定盤500の表面500aに対する第1ハウジング41の位相(周方向位置)が決まる。
【0065】
次に、同じ定盤500の上に、第1ハウジング41に対してX2側に第2ハウジング42を載置する。具体的には、第1ハウジング41と第2ハウジング42とが直線状になるように配置する。マウント部材105がX2側に位置し、第2結合部421がX1側に位置するように載置する。これにより、第2ハウジング42の第2結合部421が、第1ハウジング41の第1結合部411とX方向で対向するような配置となる。このとき、定盤500の表面500aにマウント部材105の表面105dを当接させる。定盤500の表面500aは平坦であり、マウント部材105の表面105dも平坦である。以上より、定盤500の表面に対する第2ハウジング42の位相(周方向位置)が決まる。また、同時に、第1ハウジング41および第2ハウジング42の位相合わせが完了する。このとき、第1結合部411のボルト孔411d、411e、411f(
図8を参照)と、第2結合部421のボルト孔とが同一位置に配置される。そして、第1ハウジング41の第1結合部411と、第2ハウジング42の第2結合部421とを、ボルトBLを介して固定する。これにより、第1ハウジング41と第2ハウジング42とが連結される。
【0066】
このように、ハウジングの組立方法は、定盤500の表面500aに、第1ハウジング41のマウント部材103の表面103dを当接させるステップと、定盤500の表面500aに、第2ハウジング42のマウント部材105の表面105dを当接させるステップと、定盤500と、マウント部材103、105とを当接させた状態で、第1ハウジング41と第2ハウジング42とを結合(連結)するステップと、を備える。なお、定盤500の表面500aにマウント部材103の表面103dを当接させるステップと、定盤500の表面500aにマウント部材105の表面105dを当接させるステップとは、どちらを先にしてもよく、両ステップを同時に行ってもよい。
【0067】
図10は、第1ハウジングと第2ハウジングを組み付けた状態のハウジングに対して、工作機械を用いて機械加工を開始した状態を示す模式図である。
図11は、第1ハウジングのみに対して、工作機械を用いて機械加工をしている状態を示す模式図である。
【0068】
工作機械300は、機械本体320と、工具310と、を備える。機械本体320の内部には、例えばモータが収容されており、モータの出力軸に工具310が取り付けられている。従って、モータの出力軸と共に工具310が回転して、被加工物に対して機械加工を施すことができる。工作機械300は、図外のレール上をX方向に沿って移動可能である。工具310は、例えば、カッターやドリルである。カッターによって、平面加工を行うことができ、ドリルによって穴開け加工を行うことができる。従って、工作機械300を加工対象部までX方向に沿って移動させたのち、工具310を回転させることによって、機械加工を行う。
【0069】
なお、
図3を参照して説明したように、円筒面455、円筒面456、端面456aおよび本体部430の内周面432における軸受61、62に当接する部位は、機械加工される加工面である。また、
図6を参照して説明したように、突出部451、452、453のボルト孔451a、452a、453aも機械加工される。
【0070】
ここで、
図10に示すように、工作機械300を矢印の方向に、即ち、X1側に向けて移動させようとすると、工作機械300におけるいずれかの部位が、第2ハウジング42におけるいずれかの部位と干渉するため、工作機械300が加工対象まで到達できない。
【0071】
つまり、
図7を参照して説明したように、機械加工の対象となるモータ取付フランジ45の凹部454やウォームシャフト収容部419の本体部430は、取付フランジ51の一部、取付フランジ52の一部、本体部50の一部、およびマウント部材105の一部と重なっている。
【0072】
従って、工作機械300の大きさを小さくしても、取付フランジ51、取付フランジ52、本体部50またはマウント部材105と干渉してしまい、工作機械300が機械加工の対象部分まで移動できない。
【0073】
これに対して、
図8を参照して説明したように、X方向から見た場合において機械加工の対象となる部位は、例えば、
図3を参照して前述した本体部430の内周面432における当接部432a、段差部432b、円筒面456および端面456aである。これらの部位は、第1結合部411と重畳せず、露出している。従って、機械加工の対象部分であるモータ取付フランジ45まで工作機械300が移動し、モータ取付フランジ45に対して機械加工を施すことができる。
【0074】
以上説明したように、電動パワーステアリング装置80は、外周に第1ピニオン歯841を有する操舵ピニオン軸84と、第1ラック歯851および第2ラック歯852が外周に設けられ、第1ラック歯851が第1ピニオン歯841と噛み合い、且つ、X方向(第1方向)に延びるラック軸85と、第2ラック歯852と噛み合う第2ピニオン歯1aが外周に設けられるアシストピニオン軸1と、アシストピニオン軸1に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部22を有するウォームホイール2と、ホイール歯部22と噛み合うシャフト歯部31が外周に設けられ、且つ、アシストモータ100の出力軸122に取り付けられるウォームシャフト3と、第1ハウジング41と、第2ハウジング42と、を備える。第1ハウジング41は、ラック軸85におけるX1側(第1方向の一方側)を収容する第1ラック軸収容部412と、第1ラック軸収容部412におけるX2側(第1方向の他方側)の端部に設けられた第1結合部411と、アシストピニオン軸1を収容するアシストピニオン軸収容部440と、ウォームホイール2を収容するウォームホイール収容部413と、ウォームシャフト3を収容するウォームシャフト収容部419と、が一体成形される。第2ハウジング42は、ラック軸85におけるX2側(第1方向の他方側)を収容する第2ラック軸収容部422と、第2ラック軸収容部422におけるX1側(第1方向の一方側)の端部に設けられた第2結合部421と、操舵ピニオン軸84を収容する操舵ピニオン軸収容部5と、が一体成形される。そして、第1結合部411と第2結合部421とが連結される。
【0075】
このように、本実施形態に係るハウジングは、第1ハウジング41と第2ハウジング42とに分割され、且つ、減速機ハウジング200(ウォームホイール収容部413およびウォームシャフト収容部419)が、第1ハウジング41と一体成形されている。従って、減速機ハウジング200を機械加工することが可能で、且つ、部品点数がより少ない、電動パワーステアリング装置80を提供することができる。以下、詳細に説明する。
【0076】
まず、前述したように、特許文献1では、ハウジング全体が1つに一体成形されており、ウォームホイール収容部およびウォームシャフト収容部を含む減速機収容部を備える。特許文献1において、工作機械を減速機収容部まで移動させようとすると、工作機械がハウジングの一部に干渉し減速機収容部まで到達できないため、減速機収容部を加工できない可能性がある。これに対して、本実施形態では、ハウジングが、第1ハウジング41と第2ハウジング42とに分割されているため、第2ハウジング42を第1ハウジング41から分離させた状態で、第1ハウジング41のみを加工することができる。従って、工作機械300を移動させる際に、第2ハウジング42に工作機械300が干渉しないため、第1ハウジング41に含まれる減速機ハウジング200を加工することできる。なお、ハウジングを例えば鋳造で成形する場合、本実施形態では、ハウジングが第1ハウジング41と第2ハウジング42とに分割されているため、特許文献1のハウジングよりも、小型のダイキャストマシンで成形することが可能となる。
【0077】
また、前述したように、特許文献2では、ハウジングが3つに分割されているため、パワーステアリング装置全体として部品点数が多くなってしまう。これに対して、本実施形態では、減速機ハウジング200(ウォームホイール収容部413およびウォームシャフト収容部419)が、第1ハウジング41と一体成形されているため、本実施形態に係るハウジングは、第1ハウジング41および第2ハウジング42の2つである。従って、電動パワーステアリング装置80全体としての部品点数がより少なくなる。
【0078】
以上のように、本実施形態によれば、部品点数がより少なく、且つ、減速機ハウジング200を機械加工することが可能な電動パワーステアリング装置80を提供することができる。
【0079】
第2ハウジング42は、車体に取り付けられるマウント部材105を有し、ウォームシャフト収容部419は、X方向(第1方向)に沿う中心軸AX3の軸方向に延びる筒状の本体部430と、本体部430におけるX2側(第1方向の他方側)の端部433から径方向外側に延びるモータ取付フランジ45(フランジ)と、を有する。モータ取付フランジ45(フランジ)は、X2側(第1方向の他方側)に面する環状部450と、環状部450の径方向内側に設けられ、且つ、環状部450よりもX1側(第1方向の一方側)に凹む凹部454と、を有する。第1ハウジング41および第2ハウジング42をX2側(第1方向の他方側)から見た場合に、モータ取付フランジ45(フランジ)の凹部454は、操舵ピニオン軸収容部5またはマウント部材105の少なくとも一部と重畳する。
【0080】
第1ハウジング41と第2ハウジング42とを組み付けた状態において、第1ハウジング41に設けられたモータ取付フランジ45(フランジ)の凹部454にX2側(第1方向の他方側)から機械加工を施す場合、工作機械300をX1側(第1方向の一方側)に向けて移動させると、第2ハウジング42に設けられた操舵ピニオン軸収容部5またはマウント部材105と工作機械300とが干渉し、工作機械300がモータ取付フランジ45(フランジ)まで到達できない。
【0081】
ここで、本実施形態では、第1ハウジング41と第2ハウジング42とに分割されているため、第1ハウジング41と第2ハウジング42とを分離させて第1ハウジング41のみの状態とすることで、第1ハウジング41のモータ取付フランジ45(フランジ)を加工することができる。
【0082】
第2ハウジング42は、車体に取り付けられるマウント部材105を有し、ウォームシャフト収容部419は、X方向(第1方向)に沿う中心軸AX3の軸方向に延びる筒状の本体部430と、本体部430におけるX2側(第1方向の他方側)の端部から径方向外側に延びるモータ取付フランジ45(フランジ)と、を有する。モータ取付フランジ45(フランジ)は、X2側(第1方向の他方側)に面する環状部450と、環状部450に対して径方向内側に設けられ、且つ、環状部450よりもX1側(第1方向の一方側)に凹む凹部454と、を有し、第1ハウジング41および第2ハウジング42をX2側(第1方向の他方側)から見た場合に、凹部454の径方向内側に、ウォームシャフト収容部419の本体部430の内周面432が位置し、本体部430は、操舵ピニオン軸収容部5またはマウント部材105の少なくとも一部と重畳する。
【0083】
本実施形態によれば、第1ハウジング41に設けられたウォームシャフト収容部419に対して工作機械300を用いて機械加工することできる。具体的には、
図3を参照して前述したように、機械加工の対象となる部位である、本体部430の内周面432における当接部432a、段差部432b、円筒面456および端面456aを切削加工する。その際、工作機械300をX1側(第1方向の一方側)に向けて移動させると、第2ハウジング42に設けられた操舵ピニオン軸収容部5またはマウント部材105と工作機械300とが干渉し、工作機械300がモータ取付フランジ45(フランジ)まで到達できず、機械加工を行うことが困難である。
【0084】
しかし、本実施形態では、第1ハウジング41と第2ハウジング42とに分割されているため、第1ハウジング41のみの状態で、第1ハウジング41の凹部454の径方向内側の部分をX方向(第1方向)に沿って切削加工することができる。
【0085】
ウォームシャフト3におけるX2側(第1方向の他方側)の端部には、X方向(第1方向)に延びる嵌合穴32が設けられ、嵌合穴32には、アシストモータ100の出力軸122が嵌合され、第1ハウジング41および第2ハウジング42をX2側(第1方向の他方側)から見た場合に、アシストモータ100および第1結合部411それぞれの少なくとも一部同士が重畳しており、アシストモータ100をX1側(第1方向の一方側)に移動させて出力軸122の先端122aから嵌合穴32に挿入させる際、出力軸122の嵌合穴32への挿入が完了した挿入完了状態における出力軸122の先端122aから嵌合穴32の内周33におけるX2側(第1方向の他方側)の端までのX方向(第1方向)に沿った第1距離D1は、挿入完了状態におけるアシストモータ100のX2側(第1方向の他方側)の端(後端113c)から第1結合部411までのX方向(第1方向)に沿った第2距離D2よりも小さい。
【0086】
これによれば、X2側(第1方向の他方側)から見た場合に、アシストモータ100および第1結合部411それぞれの少なくとも一部同士が重畳している場合であっても、ウォームシャフト3の嵌合穴32に、アシストモータ100の出力軸122を挿入して嵌合させることができる。以下、簡単に説明する。
【0087】
ウォームシャフト3の嵌合穴32に、アシストモータ100の出力軸122を挿入するには、アシストモータ100をX1側(第1方向の一方側)に移動させて出力軸122の先端122aから嵌合穴32に挿入させる。そして、この状態で、アシストモータ100をX1側(第1方向の一方側)に更に移動させ、例えば、アシストモータ100のいずれかの部位がウォームシャフト収容部419のいずれかの部位に突き当たったときに、出力軸122の嵌合穴32への挿入が完了した挿入完了状態となる。
【0088】
ここで、第1距離D1が第2距離D2よりも大きいと、アシストモータ100が第1結合部411に干渉してしまい、出力軸122の先端122aから嵌合穴32に挿入させることができない。従って、第1距離D1を第2距離D2よりも小さくすることにより、アシストモータ100および第1結合部411それぞれの少なくとも一部同士が重畳している場合であっても、ウォームシャフト3の嵌合穴32に、アシストモータ100の出力軸122を挿入して嵌合させることができる。
【0089】
第1ハウジング41をX2側(第1方向の他方側)から見た場合に、モータ取付フランジ45(フランジ)の凹部454は、第1結合部411と重畳しない。これによれば、第1ハウジング41に対して工作機械300を用いて機械加工して凹部454を形成することができる。
【0090】
[変形例1]
次に、変形例1を説明する。
図12は、
図6の第1ハウジングをA方向から見た側面図であり、
図8に相当する。
図13は、変形例1に係る、第1結合部と第2結合部との位置決め構造を示す模式的な断面図であり、
図12のXIII-XIII線による断面図である。
【0091】
変形例1では、第1結合部411と第2結合部421との位置決めにノックピン503を用いる。以下、具体的に説明する。
【0092】
図12は、第1ハウジング41のみの図であり、主にボルトBL1、BL2、BL3の位置関係を示すために記載している。
図13は、
図12を適用して、ボルトBL3における第1結合部411と第2結合部421との断面構造を示している。従って、
図12と
図13を参照すると、
図12においては、第1結合部411の紙面の手前側(X2側)に第2結合部421が配置され、第1結合部411の紙面の奥側(X1側)にボルトBL3の頭部501が配置される。また、
図13においては、第2結合部421は、仮想線としての二点鎖線で記載するが、ボルトBL3は実線で記載する。なお、
図13において、第1結合部411と第2結合部421とは、接している。
【0093】
つまり、
図12に示すように、第1結合部411と第2結合部421とは、3つのボルトBL1、BL2、BL3を介して固定される。変形例1では、最もZ2側のボルトBL3にノックピン503を適用した例を示す。なお、ノックピン503を適用するボルトは限定されず、ボルトBL1またはBL2に適用してもよい。
図13に示すように、第1結合部411には、貫通孔415が貫通する。また、第1結合部411は、貫通孔415に面する内壁415aを有する。第2結合部421には、貫通孔416が貫通する。また、第2結合部421は、貫通孔416に面する内壁416aを有する。
【0094】
貫通孔415、416には、円筒状のノックピン503が圧入される。よって、ノックピン503の外周面503aは、内壁415a、416aによって径方向内側に押圧される。また、ノックピン503の内周には、ボルトBL3が挿入される。ボルトBL3は、頭部501と、雄ねじ部502と、を有する。雄ねじ部502には、ナット504の雌ねじ部504aが噛み合っている。従って、ノックピン503によって第1結合部411と第2結合部421との位置合わせ(位相合わせ)を行い、ボルトBL3およびナット504の締結によって、第1結合部411と第2結合部421との固定(結合)を行う。
【0095】
以上説明したように、変形例1では、第1結合部411と第2結合部421との位置合わせ(位相合わせ)にノックピン503を用いている。ノックピン503によれば、通常のボルト締結よりも位置決め精度が高くなる。
【0096】
[変形例2]
次に、変形例2を説明する。
図14は、変形例2に係る、第1結合部と第2結合部との位置決め構造を示す模式的な断面図であり、
図13に相当する図である。なお、
図14において、第1結合部411と第2結合部421とは、接している
【0097】
変形例2では、第1結合部411と第2結合部421との位置決めにリーマボルト510を用いる。以下、具体的に説明する。
【0098】
変形例2において、リーマボルト510は、
図12におけるボルトBL3に適用する。なお、リーマボルト510を適用する部位は限定されず、ボルトBL1またはBL2に適用してもよい。
【0099】
図14に示すように、第1結合部411には、貫通孔415が貫通する。また、第1結合部411は、貫通孔415に面する内壁415aを有する。第2結合部421には、貫通孔416が貫通する。また、第2結合部421は、貫通孔416に面する内壁416aを有する。
【0100】
リーマボルト510は、頭部511と、ストレート部512と、雄ねじ部513とを備える。また、雄ねじ部513には、ナット520が噛み合う。ストレート部512は、頭部511に固定され、X2側に向けて軸方向に延びる。ストレート部512の先端側(X2側)には、雄ねじ部513が設けられる。雄ねじ部513の外径は、ストレート部512の外径よりも小さい。ナット520は、雌ねじ部521を有するため、ナット520の雌ねじ部521が雄ねじ部513に噛み合うことで、ナット520が雄ねじ部513に固定される。
【0101】
ここで、ストレート部512の外径は、内壁415a、416aの内径よりもわずかに大きいため、ストレート部512を貫通孔415、416に圧入した状態では、ストレート部512の外周面が、内壁415a、416aから径方向内側に向けて押圧される。従って、リーマボルト510におけるストレート部512によって第1結合部411と第2結合部421との位置合わせ(位相合わせ)を行い、ナット520の雌ねじ部521が雄ねじ部513に噛み合うことによって、第1結合部411と第2結合部421との固定(結合)を行う。
【0102】
以上説明したように、変形例2では、第1結合部411と第2結合部421との位相合わせの位置決め(位相合わせ)にリーマボルト510を適用する。リーマボルト510によれば、通常のボルト締結よりも位置決め精度が高くなる。
【0103】
[変形例3]
次に、変形例3を説明する。
図15は、変形例3に係る、第1結合部と第2結合部との結合構造を示す断面図である。
【0104】
変形例3では、第1結合部411および第2結合部421を構造用接着剤(接着剤)550を介して接着している。以下、具体的に説明する。
【0105】
図15に示すように、第1結合部411は、X2側に突出する突出部530を有する。第2結合部421は、X1側に突出する突出部540を有する。突出部540は、突出部530の外周側に位置する。また、突出部530の外周面531と突出部540の外周面541との間には間隙が設けられる。当該間隙に構造用接着剤550が充填されている。
【0106】
なお、第1結合部411と第2結合部421との組付手順は、例えば、まず、突出部530の外周面531に構造用接着剤550を塗布したのち、突出部530を突出部540の内周側に挿入し、ボルトBLで第1結合部411および第2結合部421を締結する手順が適用可能である。
【0107】
以上説明したように、変形例3によれば、第1結合部411および第2結合部421を構造用接着剤550を介して接着するため、水などの液体に対するシール性能が向上する。また、単にボルトBLのみで第1結合部411および第2結合部421を固定する場合よりも、固定強度が向上する。
【0108】
なお、本発明は、前述した実施形態および変形例に限定されず種々の変更および変形が可能である。例えば、
図12に示したように、第1結合部411と第2結合部421との位置決め(位相合わせ)に位置決めピン560を適用することができる。位置決めピン560は、
図12においては、ボルトBL2とボルトBL3との間に配置しているが、位置決めピン560を設ける位置は限定されない。
【符号の説明】
【0109】
1 アシストピニオン軸
1a 第2ピニオン歯
2 ウォームホイール
3 ウォームシャフト
4 ハウジング
5 操舵ピニオン軸収容部
21 芯金部
22 ホイール歯部
31 シャフト歯部
32 嵌合穴
33 内周
34 端
41 第1ハウジング
42 第2ハウジング
45 モータ取付フランジ(フランジ)
50 本体部
51 取付フランジ
51a ボルト孔
52 取付フランジ
52a ボルト孔
53 取付フランジ
53a ボルト孔
54 トルク検出装置ハウジング
61 軸受
62 軸受
62A 軸受ホルダー
63、64スペーサ
80 電動パワーステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 第1ステアリングシャフト
83 第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)
84 操舵ピニオン軸
85 ラック軸
85a 第1部位
85b 第2部位
86 タイロッド
100 アシストモータ
101 車輪
103 マウント部材
103a 挿通孔
103b ラバーブッシュ
103c 外周部分
103d 表面
105 マウント部材
105a 挿通孔
105b ラバーブッシュ
105c 外周部分
105d 表面
110 モーターハウジング
111 前面部
111a 径方向外側部
111b 突起部
111c 径方向内側部
111d 端面
112 円筒部
113 後側カバー
113a 後面
113b 円筒部
113c 後端
121 モータ本体
122 出力軸
122a 先端
122b 外周
123 ECU
200 減速機ハウジング
300 工作機械
310 工具
320 機械本体
411 第1結合部
411a 第1角部
411b 第2角部
411c 第3角部
411d ボルト孔
411e ボルト孔
411f ボルト孔
411g 外周縁
412 第1ラック軸収容部
413 ウォームホイール収容部
414 蓋部材
415 貫通孔
415a 内壁
416 貫通孔
416a 内壁
419 ウォームシャフト収容部
421 第2結合部
422 第2ラック軸収容部
430 本体部
431 カバー
432 内周面
432a 当接部
432b 段差部
433 端部
434 内方
440 アシストピニオン軸収容部
450 環状部
450a 端面
450b 径方向内側端
450c 径方向外側端
450d 一部
451 突出部
451a ボルト孔
452 突出部
452a ボルト孔
453 突出部
453a ボルト孔
454 凹部
454a 端面
454b 径方向外側端
454c 径方向内側端
454d 端
455 円筒面
456 円筒面
456a 端面
500 定盤
500a 表面
501 頭部
502 雄ねじ部
503 ノックピン
503a 外周面
504 ナット
504a
510 リーマボルト
511 頭部
512 ストレート部
513 雄ねじ部
520 ナット
521 雌ねじ部
530 突出部
531 外周面
540 突出部
541 外周面
550 構造用接着剤(接着剤)
560 位置決めピン
620 軸受ホルダー
621 外周面
622 側面
821 ユニバーサルジョイント
831 ユニバーサルジョイント
841 第1ピニオン歯
851 第1ラック歯
852 第2ラック歯
AX1 中心軸
AX2 中心軸
AX3 中心軸
AX4 中心軸
BL ボルト
BL1 ボルト
BL2 ボルト
BL3 ボルト
D1 第1距離
D2 第2距離
【要約】
電動パワーステアリング装置は、操舵ピニオン軸と、ラック軸と、アシストピニオン軸と、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、を備える。ラック軸における第1方向の一方側を収容する第1ラック軸収容部と、第1結合部と、アシストピニオン軸収容部と、ウォームホイール収容部と、ウォームシャフト収容部と、が一体成形された第1ハウジングを備える。ラック軸における第1方向の他方側を収容する第2ラック軸収容部と、第2結合部と、操舵ピニオン軸収容部と、が一体成形された第2ハウジングを備える。