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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20221012BHJP
   B65G 35/06 20060101ALI20221012BHJP
   G05D 3/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F16H19/04 J
B65G35/06 Z
G05D3/00 A
G05D3/00 X
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018176129
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020046020
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】302069930
【氏名又は名称】NECエンベデッドプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】小玉 康彦
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196487(JP,A)
【文献】特開2004-301255(JP,A)
【文献】特開2002-598(JP,A)
【文献】実開昭61-163610(JP,U)
【文献】特開2018-105413(JP,A)
【文献】特開2019-90459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/04
B65G 35/06
G05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送体を表面に沿う二方向に搬送する搬送装置であって、
被搬送体の表面に沿う二方向に向けて所定ピッチで凹凸部が形成される平面ギアと、
この平面ギアに噛み合う複数の駆動ギアを有しこれら駆動ギアを互いに異なる方向へ駆動する駆動モータ部と、
前記平面ギアの移動に伴う前記凹凸部の通過を検出する平面ギア検出センサと、
この平面ギア検出センサの出力に基づき、前記平面ギアの凹凸部と前記駆動モータ部の駆動ギアとの噛み合い状態を判定する判定部と、を具備し、
前記平面ギアの凹凸部として四角錐が一定間隔でマトリックス状に配列され、
前記四角錐を構成する4枚の傾斜面の内、隣接する2枚の傾斜面と、他の2枚の傾斜面とで光線の反射特性を互いに異ならせることにより、2種類の被検出面が構成されることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記2種類の被検出面は、反射特性の異なる表面処理が周期的に施されたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記2種類の被検出面として黒色の被検出面と白色の被検出面とが設けられることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記平面ギア検出センサは、前記平面ギアの凸部の頂上と凹部の谷底との間隔とは異なる間隔をおいて複数設けられた請求項1~3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記平面ギア検出センサからの出力電圧の周期変動の乱れを監視し、その監視結果に基づき脱調が生じているか否かの異常状況を判定することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記判定部は前記平面ギア検出センサからの出力電圧が予め定めた基準電圧に到達したか否かにより異常状況を判定することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記判定部では、前記平面ギアの凹凸部に対応して高電圧側の基準電圧と、低電圧側の基準電圧とが設定され、前記平面ギア検出センサからの出力電圧がこれら基準電圧に到達しない場合に搬送異常と判定することを特徴とすることを特徴とする請求項に記載の搬送装置。
【請求項8】
被搬送体を表面に沿う二方向に搬送するための搬送方法であって、
被搬送体の表面に沿う二方向に向けて所定ピッチで凹凸部が形成された平面ギアに噛み合うことで、該被搬送体を互いに異なる方向へ駆動する駆動段階と、
平面ギア検出センサにより前記平面ギアの移動に伴う前記凹凸部の通過を検出する検出段階と、
前記平面ギア検出センサの出力に基づき前記平面ギアの凹凸部と駆動モータ部の駆動ギアとの噛み合い状態を判定する判定段階と、を有し、
前記平面ギアの凹凸部として四角錐が一定間隔でマトリックス状に配列され、
前記四角錐を構成する4枚の傾斜面の内、隣接する2枚の傾斜面と、他の2枚の傾斜面とで光線の反射特性を互いに異ならせることにより、2種類の被検出面が構成されることを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を搬送するための搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、ロボットアーム等の被作動体を被駆動体となるXYステージにより回転制御する技術が知られている。
例えば、特許文献1に示される多方向駆動装置では、XY方向に平面歯車を有する被駆動体と、該被駆動体の平面歯車に噛合して該被駆動体を第1の方向に駆動する第1駆動歯車と、該被駆動体の平面歯車に噛合して該被駆動体を第1の方向とは異なる第2の方向に駆動する第2駆動歯車と、を具備する。
また、上記多方向駆動装置では、被駆動体の平面歯車と第1、第2駆動歯車とが歯筋方向に相互変位可能となっており、これにより被駆動体の進行を自在に調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-196487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の多方向駆動装置では、被駆動体の平面歯車に噛み合う駆動歯車が外れ、あるいは所定の噛み合い位置からずれてしまい、駆動歯車を駆動するステッピングモータに駆動の乱れ(以下、この現象を脱調という)が生じることがある。
そして、上記多方向駆動装置では、ステッピングモータが脱調を起こすと、被駆動体となる搬送パネルを所定位置まで搬送できなくなり、搬送作業に支障が生じる。
【0005】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、脱調を検出することで、搬送作業の効率化を図ることが可能な搬送装置及び搬送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第1態様は、被搬送体を表面に沿う二方向に搬送する搬送装置であって、被搬送体の表面に沿う二方向に向けて所定ピッチで凹凸部が形成された平面ギアと、この平面ギアに噛み合う複数の駆動ギアを有しこれら駆動ギアを互いに異なる方向へ駆動する駆動モータ部と、前記平面ギアの移動に伴う前記凹凸部の通過を検出する平面ギア検出センサと、この平面ギア検出センサの出力に基づき、前記平面ギアの凹凸部と前記駆動モータ部の駆動ギアとの噛み合い状態を判定する判定部と、を具備することを特徴とする。
【0007】
本発明の第2態様は、被搬送体を表面に沿う二方向に搬送するための搬送方法であって、被搬送体の表面に沿う二方向に向けて所定ピッチで凹凸部が形成された平面ギアに噛み合うことで、該被搬送体を互いに異なる方向へ駆動する駆動段階と、前記平面ギアの移動に伴う前記凹凸部の通過を平面ギア検出センサにより検出する検出段階と、前記平面ギア検出センサの出力に基づき前記平面ギアの凹凸部と前記駆動モータ部の駆動ギアとの噛み合い状態を判定する判定段階と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送装置に生じた異常状況を即座に作業員に認識させることができ、搬送作業の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る搬送装置の概略構成図であって、(A)は全体図、(B)は全体図に符号Bで示す箇所を拡大した図である。
図2】本発明の実施形態に係る搬送装置の外観図である。
図3】被搬送体の平面ギアを平面から視た図である。
図4】(A)本発明の実施形態に係る平面ギアを正面側から視た図、(B)平面ギアとピニオンギアとの噛み合いが正常な場合における反射センサの出力電圧を示すグラフである。
図5】(A)本発明の実施形態に係る平面ギアを正面側から視た図、(B)平面ギアとピニオンギアとの噛み合いに異常が生じている場合における反射センサの出力電圧を示すグラフである。
図6】判定部の処理内容を示すフローチャートである。
図7】反射センサの配置例を示す図であって、(A)反射センサの検出領域を四角錐の凸部中央部に設定した例、(B)反射センサの検出領域を四角錐の凹部中央部に設定した例、(C)反射センサの検出領域を四角錐の凸部及び凹部中央部に設定した例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の最小構成について、図1を参照して説明する。
本発明に係る搬送装置100は、被搬送体Pに形成された平面ギア1と、平面ギア1に噛み合う駆動ギア2を駆動する駆動モータ部3と、平面ギア1の移動を検出する平面ギア検出センサ4と、平面ギア1及び駆動ギア2との噛み合いを判定する判定部5と、を主な構成要素とする。
なお、被搬送体Pはこれ自体が搬送荷物であっても良いし、その上面に別途、搬送荷物を載置しても良い。
【0011】
平面ギア1は、被搬送体Pの下面に沿う二方向(矢印Xで示される水平方向及び紙面に直交する方向)に、所定ピッチを持って凹凸部6が配置されたものである。
駆動モータ部3は、平面ギア1に噛み合う複数の駆動ギア2を有し、これら駆動ギア2を互いに異なる二方向へ駆動するためのものである(図面では矢印X方向に搬送する駆動ギア2のみが記載される)。
【0012】
平面ギア検出センサ4は、平面ギア1の移動に伴う凹凸部6の通過を検出する。
判定部5は、平面ギア検出センサ4の出力に基づき、平面ギア1の凹凸部6と駆動モータ部3の駆動ギア2との噛み合い状態を判定する。
【0013】
以上のように構成された搬送装置100によれば、平面ギア検出センサ4にて、被搬送体Pの下面に設けられる平面ギア1の移動に伴う凹凸部6の通過を検出し、さらに判定部5にて、平面ギア検出センサ4の出力に基づき平面ギア1の凹凸部6と駆動モータ部3の駆動ギア2との噛み合い状態を判定する。
そして、判定部5にて、平面ギア1の凹凸部6と駆動モータ部3の駆動ギア2との噛み合い不良が生じて、駆動モータ部3に脱調が生じているとの異常判定をした場合に、当該異常判定結果に基づき、駆動モータ部3の駆動を速やかに停止させることができる。
これにより、作業員は、搬送装置100に生じた異常状況を即座に解消することができ、搬送作業の効率化を図ることが可能となる。
【0014】
なお、本発明の搬送装置100では、被搬送体Pの表面に沿う二方向に向けて所定ピッチで凹凸部6が形成される平面ギア1に噛み合うことで、該被搬送体Pを互いに異なる方向へ駆動する駆動段階と、平面ギア1の移動に伴う凹凸部6の通過を平面ギア検出センサ4により検出する検出段階と、平面ギア検出センサ4の出力に基づき平面ギア1の凹凸部6と駆動モータ部3の駆動ギア2との噛み合い状態を判定する判定段階と、からなる搬送方法が採用されている。
【0015】
(実施形態)
本発明の実施形態について、図2図7を参照して説明する。
実施形態に係る搬送装置101は、図2に示されるように、被搬送体となる搬送パネルP1に形成された平面ギア11と、平面ギア11に噛み合う駆動ギア12を有する駆動モータ部13と、平面ギア11の移動を検出する平面ギア検出センサ14と、平面ギア11及び駆動ギア12との噛み合いを判定する判定部15と、を主な構成要素とする。
なお、搬送パネルP1はこれ自体が荷物であっても良いし、その上面に別途、荷物を載置しても良い。
【0016】
平面ギア11は、搬送パネルP1の下面に沿う二方向(矢印Xで示される水平方向及び紙面に直交するY方向)に、所定ピッチを持って凹凸部16を有する構成である。
図3は、搬送パネルP1を平面ギア11の側から見た平面図である。この図を参照して分かるように、平面ギア11の凹凸部16は反射特性の異なる表面処理が周期的に施された2種類の被検出面(F1,F2及びF3,F4)を有するように構成されている。
具体的には、平面ギア11の凹凸部16は、複数の四角錐20がマトリックス状に配置された形状をしており、この四角錐20を形成する4面の中で、90°隣り合う面F1,F2が黒色に塗装され、対角の面F3,F4が搬送パネルP1の色と同じ白色に塗装されている。
【0017】
駆動モータ部13は、平面ギア11に噛み合う複数の駆動ギア12を有する搬送テーブルTB1、TB2により構成されている。
なお、本例では、図2に示されるように、搬送テーブルTB1,TB2がX方向に沿って2台配置された例が示されているが、実際には、X方向及びY方向に複数台が配置されている。
また、図2では搬送パネルP1を矢印X方向に搬送するための駆動ギア12のみが記載されているが、実際には矢印Y方向に搬送するための駆動ギアも複数設置されている。
【0018】
また、搬送テーブルTB1,TB2の駆動ギア12として、図2ではPG11,PG12,PG21及びPG22からなる4つのピニオンギアが示されている。
また、これらピニオンギア(PG11,PG12,PG21,PG22)は、プーリ21,22及びベルト23からなる動力伝達機構を介して、ステッピングモータ(M1、M2)によりそれぞれ駆動される。
また、図2中、符号L1,L2,L3で示される範囲は、ピニオンギア(PG11,PG12,PG21)により、搬送パネルP1がX方向に移動する搬送距離をそれぞれ示している。
【0019】
平面ギア検出センサ14は、平面ギア11の移動に伴う凹凸部16の通過を検出する反射センサSにより構成されたものであって、矢印X方向に沿う搬送テーブルTB1、TB2の各天面24に配置されている。
また、この平面ギア検出センサ14は、矢印Y方向に沿う搬送テーブルの天面24にも配置されているが、図面では省略されている。
【0020】
また、各反射センサSは、図4(A)に示されるように、上方にある平面ギア11の四角錐20に向けて赤外線の光を投影する発光ダイオードからなる発光部30と、四角錐20で反射した赤外線の光を受光するフォトトランジスタからなる受光部31とから構成され、いずれも平面ギア11に向かい合うように設置されている。
また、図4において、Vddは反射センサSへの供給電圧、R1は反射センサSの負荷抵抗、V1は反射センサSの出力電圧をそれぞれ示している。
そして、反射センサSにて、発光ダイオードに電流を流すと、該発光ダイオードから赤外線の光が投射され、搬送パネルP1に当たる。搬送パネルP1に当たった光は、反射光として、反射センサSのフォトトランジスタで受光される。これにより、反射センサSでは、フォトトランジスタにコレクタ電流が流れ、抵抗R1を通り、V1に出力電圧となる電位が生じる。
【0021】
判定部15は、平面ギア検出センサ14である反射センサSの出力電圧V1に基づき、平面ギア11の凹凸部16と駆動モータ部13の駆動ギア12との噛み合い状態を判定するためのものであって、詳細は図6を参照して後述する。
【0022】
そして、以上のように構成された実施形態に係る搬送装置101において、搬送パネルP1を搬送する場合について図2にて説明する。
図2に矢印Xで示す搬送方向に向けて、搬送テーブルTB1から搬送テーブルTB2に搬送パネルP1を搬送させる場合には、ステッピングモータM1及びM2を同時に駆動させる。
このとき、搬送装置101では、搬送パネルP1が搬送距離L2の距離を移動し、搬送パネルP1の先端がピニオンギアPG21にかかるまで加速処理を行なった後、ピニオンギアPG21にかかるところで定速制御を行う。
その後、搬送装置101では、搬送パネルP1の後端がピニオンギアPG12から抜けた場合に減速処理を行う。
【0023】
そして、搬送装置101では、上記のように引き渡す側の搬送テーブル(TB1)と受け取る側の搬送テーブル(TB2)をセットとして、同時にステッピングモータM1,M2を駆動することで、ピニオンギア(PG11,PG12,PG21,PG22)の位相の同期を図ることができる。
このとき、搬送装置101では、搬送テーブルTB1,TB2の各天面24に設置された反射センサSの出力電圧V1に基づき、搬送パネルP1の有無を判断する。
なお、本例では、反射センサSの出力電圧V1に基づき、搬送パネルP1の有無検出とともに、上述した搬送パネルP1の搬送距離L1~L3の移動検出、及びステッピングモータM1,M2の脱調の判別(後述する)を行うことができる。
【0024】
次に、図3図4及び図5を参照して、正常時と脱調時の反射センサSの出力電圧(V1)の相違について説明する。
搬送装置101では、上述したように、平面ギア11の凹凸部16を構成する四角錐20の4傾斜面に対し、90°隣の2面(F1,F2)に黒色を着色し、残り2面(F3,F4)は白色のままとする。このストライプは、搬送テーブルTB1,TB2の各天面24に設置した反射センサSにて読み取られる。
このとき、判定部15では、反射センサSの出力電圧V1に基づき、四角錐20の白い部分と黒い部分の反射率(電圧変動)を検出し、このスパンを検出することで搬送パネルP1の移動量、脱調を検出する。
【0025】
具体的には、マトリックス状に配置される四角錐20は頂点から谷まで深さがある。これにより、ステッピングモータM1及びM2の駆動により、搬送パネルP1を矢印X方向に移動させた場合には、反射センサSの出力電圧V1が、赤外線光の反射率の差により、四角錐20の頂点から谷、谷から頂点で三角波のようにリニアに変化する。
そして、反射センサSにて、このリニアな変化を細かく検出することにより高精度で搬送パネルP1の移動量を検出することができる。
【0026】
図4及び図5では、(A)に平面ギアを正面側から視た図を示し、(B)に平面ギアとピニオンギアとの噛み合いが正常な場合/脱調した場合における反射センサSの出力電圧V1と経過時間tを現したグラフを示している。
また、図4(A)及び図5(A)では、搬送パネルP1の移動に伴い、平面ギア11の四角錐20が、符号G1,G2,G3,G4で示す順番に反射センサSを通過する例が示されている。
【0027】
まず、図4(B)に示されるように、搬送パネルP1が矢印X方向に正常に搬送される状態で、赤外線の光が投射され傾斜面F4の白色に当たった場合は、反射センサSから遠い白の傾斜面は、反射率が低く、出力電圧V1も低い。
また、反射センサSから近い白の傾斜面は反射率が高く、出力電圧V1も高くなる。よって、出力電圧V1は搬送パネルP1の移動とともにリニアに上昇する。
反対に傾斜面F2の黒色に差し掛かった場合は、反射率が急激に低くなるため、出力電圧V1も下がる。そこから反射センサSから遠ざかるにつれ反射率が下がるので、出力電圧V1も搬送パネルP1の移動とともにリニアに下降する。
【0028】
よって、出力電圧V1は、図4(B)に示されるような、反射センサSの出力電圧V1と経過時間tを現したグラフのような特性になる。従って、判別部15のマイコンにて、上記特性を利用し、基準となる閾値VR(図5(B)ではHIGH側閾値VRu、LOW側閾値VRL)を設けることにより、「V1>VR」のとき、又は「V1<VR」のときを検出することにより、搬送パネルP1が順調に搬送されているか否かを監視することが可能となる。
【0029】
次に、図5を参照して、ステッピングモータM1,M2が脱調したときの反射センサSの出力電圧V1について説明する。
ステッピングモータM1,M2の脱調はいつ生じるか分からないため、図5(B)では閾値を「HIGH側閾値VRu」、「LOW側閾値VRL」の2つを設定する。
例えば、図5(B)は符号bで示す位置で脱調を起こした場合の例である。このとき反射センサSの出力電圧V1は、モータの脱調による振動で、小刻みに振れてしまう。
【0030】
このため、図5(B)では、反射センサSの出力電圧V1に基づき、「V1>HIGH側閾値VRu」をマイコンが検出した後で「LOW側閾値VRL」を検出できなかった場合、又は「V1<LOW側閾値VRL」をマイコンが検出した後で「HIGH側閾値VRu」を検出できなかった場合に、脱調が生じたと判断し、異常処理に進む(後述する)。
【0031】
次に、反射センサSの出力電圧V1に基づき、平面ギア11の凹凸部16と駆動モータ部13の駆動ギア12との噛み合い状態(正常又は脱調状態)を判定する判定部15の処理内容を示すフローチャートについて、図6を参照して説明する。
【0032】
《ステップS1》
フロー開始時に、変数STEP、HIGHカウント、変数STEP2、LOWカウント及び変数CTNは、いずれもクリアにして0としておく。
【0033】
《ステップS2》
変数STEPをSTEP1と比較し、「STEP1>変数STEP」ではないNOの場合に次のステップS3に進み、「STEP1>変数STEP」となるYESの場合に次のステップS4に進む。
なお、STEP1は、搬送プレートが傾斜面F4,F2,F4,F2と移動するときの想定ステップで、傾斜面F4~F3の白の先端から末端までの想定されるモータのステップ数である。
【0034】
《ステップS3》
ステップS2にて「STEP1>変数STEP」とならないNOの場合に、脱調が生じているとして異常信号(例えば、アラーム信号、搬送停止信号)を出力する。
なお、このステップS3は、変数STEPが想定STEP1を越えてカウントされているにも関わらず、反射センサSの出力電圧V1が、「HIGH側閾値VRu」を越えない場合(ステップS5でNOを経た後)に、脱調が生じているとして異常信号を出力する。
【0035】
《ステップS4》
ステップS2にて、変数STEPが想定STEP1のステップ数まで満たない場合は、変数STEPに1を足し、次のステップS5に進む。
【0036】
《ステップS5》
反射センサSのセンサ出力電圧V1が「HIGH側閾値VRu」を超えたか否かの判断を行う。センサ出力電圧V1が「HIGH側閾値VRu」を超えない場合は、ステップS2に戻り、ステップS2,S4及びS5を繰り返す。
このとき、ステップS2にて「STEP1<変数STEP」になった場合は、想定STEP1内で、センサ出力電圧V1が「HIGH側閾値VRu」を超えない状態となり、脱調が生じているとして異常信号を出力する。
【0037】
《ステップS6》
想定ステップSTEP1内で、センサ出力電圧V1が「HIGH側閾値VRu」を超えた場合は、マイコンにてHIGHをカウントする。
【0038】
《ステップS7》
変数STEP2をSTEP3と比較し、「STEP3>変数STEP2」とならないNOの場合に次のステップS8に進み、「STEP3>変数STEP2」となるYESの場合に次のステップS9に進む。
なお、STEP3は、搬送プレートP1が傾斜面F4,F2,F4,F2の順で示すように移動するときの想定ステップで、傾斜面F1~F2の黒の先端から末端までの想定されるモータのステップ数である。
【0039】
《ステップS8》
ステップS7にて「STEP3>変数STEP2」とならないNOの場合に、脱調が生じているとして異常信号(例えば、アラーム信号、搬送停止信号)を出力する。
なお、このステップS8は、変数STEP2が想定STEP3を越えてカウントされているにも関わらず、反射センサSの出力電圧V1が、「LOW側閾値VRL」を下回らない場合(ステップS10でNOを経た後)に、脱調が生じているとして異常信号を出力する。
【0040】
《ステップS9》
変数STEP2が、想定されるSTEP3のステップ数まで満たない場合は、変数STEP2に1を足し、次のステップS10に進む。
【0041】
《ステップS10》
反射センサSのセンサ出力電圧V1が「LOW側閾値VRL」を下回らないか否かの判断を行う。センサ出力電圧V1が「LOW側閾値VRL」を下回らない場合は、ステップS7に戻り、ステップS7,S9及びS10を繰り返す。
このとき、ステップS7にて「STEP3<変数STEP2」になった場合は、想定STEP3内で、センサ出力電圧V1が「LOW側閾値VRL」を下回らない状態となり、脱調が生じているとして異常信号を出力する。
【0042】
《ステップS11》
想定ステップSTEP3内で、センサ出力電圧V1が「LOW側閾値VRL」を下回った場合は、マイコンにてLOWをカウントする。
【0043】
《ステップS12~S13》
ステップS12で示されるCNTは変数CNTであり(ステップS1で0にクリアされている)、CNT1は1つの搬送パネルP1を搬送するのに必要な四角錐20の数を示す想定ステップ数(想定CNT1)である。そして、このステップS12にて、変数CNTが想定CNT1に到達したか否か、すなわち「想定CNT1=変数CNT」となったか否かを判断する。
そして、ステップS12でNOの場合に、次のステップS13にて「変数CNT」を1アップし、先のステップS2に戻る。また、ステップ12でYESの場合に本スローチャートを終了する。
【0044】
以上のように構成された搬送装置101によれば、反射センサSにて、搬送パネルP1の下面に設けられる平面ギア11の移動に伴う凹凸部16の通過を検出し、さらに判定部15にて、反射センサSの出力電圧V1に基づき平面ギア11の凹凸部16と駆動モータ部13の駆動ギア12との噛み合い状態を判定する。
具体的には、判定部15にて、駆動モータ部13内のステッピングモータM1,M2の脱調判定のために、図5(B)に示すような「HIGH側閾値VRu」及び「LOW側閾値VRL」という2つの基準値を設定した上で、反射センサSの出力電圧V1が、これら基準値が越えたか否かの判定結果に基づき、搬送異常を検出するようにした。
これにより、本実施形態の搬送装置101では、駆動モータ部13のステッピングモータM1,M2に脱調が生じているか否かの異常判定結果に基づき、駆動モータ部13の駆動を速やかに停止させることができる(ステップS3,S8)。
その結果、作業員は、搬送装置101に生じた異常状況を即座に解消することができ、搬送作業の効率化を図ることが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態の搬送装置101は以下のように変形しても良い。
(変形例1)
上記実施形態では、図3に示されるように、平面ギア11の四角錐20を構成する4枚の傾斜面の内、隣接する2枚の傾斜面(F1,F2)の反射特性が、他の2枚の傾斜面(F3,F4)の反射特性と異なるようにした。
このとき、隣接する2枚の傾斜面の反射特性を同一にすることに限定されず、4枚の隣接する傾斜面(F1~F4)の反射特性を交互に異ならせるようにしても良い。すなわち、離間する2枚の傾斜面(F1,F3)の反射特性が、他の2枚の傾斜面(F2,F4)の反射特性と異ならせるようにしても良い。
【0046】
(変形例2)
上記実施形態では、図3に示されるように、平面ギア11の四角錐20を構成する4枚の傾斜面の内、隣接する2枚の傾斜面(F1,F2)を黒色としたが、黒色に限定されず、他の暗色を採用しても良い。また、他の2枚の傾斜面(F3,F4)の白色としたが、白色に限定されず、他の明るい色を採用しても良い。
また、上記実施形態では、平面ギア11の凹凸部16を四角錐20により構成したが、完全な四角錐に限定されず、例えば、四角錐の頂部を平坦にした形状を採用しても良い。
【0047】
(変形例3)
上記実施形態では、平面ギア検出センサ14となる反射センサSの検出領域40が、例えば、図7(A)で示すように平面ギア11の四角錐20の凸部中央領域に設定されている。
しかし、これに限定されず、反射センサSの検出領域40は、図7(B)に示すように平面ギア11の四角錐20の凹部中央領域に設定しても良いし、図7(C)に示すように平面ギア11の四角錐20の凸部中央領域及び凹部中央領域の双方に設定しても良い。
このとき、図7(C)では、四角錐20の凸部中央領域及び凹部中央領域の双方にて、駆動モータ部13に脱調が生じているか否かの異常判定をしても良い。
また、図7(A)~(C)で示すように、反射センサSは、矢印X方向に沿う搬送テーブルP1の平面ギア11を検出するために図中側方に垂直配列されているが、矢印Y方向に沿う搬送テーブルP1の平面ギア11を検出するために、図中上方に水平配列しても良い。
このとき、これら複数の反射センサSの設置は、凸部(山の頂上)と凹部(谷底)との距離(ピッチ)とは異なる間隔(すなわち、小さい間隔又は大きい間隔)としても良い。
そして、判定部15では、反射センサSからの出力電圧を微分処理等することで、周期変動の乱れを監視し、反射センサSの出力電圧が閾値に達したか否かに関わらず、その監視結果に基づき脱調が生じているか否かの異常判定をしても良い。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、パネル等の被搬送物を搬送するための搬送装置及び搬送方法に関する。
【符号の説明】
【0050】
1 平面ギア
2 駆動ギア
3 駆動モータ部
4 平面ギア検出センサ
5 判定部
6 凹凸部
11 平面ギア
12 駆動ギア
13 駆動モータ部
14 平面ギア検出センサ
15 判定部
16 凹凸部
20 四角錐
24 天面
30 発光部
31 受光部
100 搬送装置
101 搬送装置
P 搬送パネル
P1 搬送パネル
TB1 搬送テーブル
TB2 搬送テーブル
PG11 ピニオンギア
PG12 ピニオンギア
PG21 ピニオンギア
PG22 ピニオンギア
M1 ステッピングモータ
M2 ステッピングモータ
S1 反射センサ
VR 閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7