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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】車両用心電検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/304 20210101AFI20221012BHJP
   A61B 5/26 20210101ALI20221012BHJP
【FI】
A61B5/304
A61B5/26 100
A61B5/26 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019024824
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020130343
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】古池 竜也
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄介
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-7885(JP,A)
【文献】特開2008-237379(JP,A)
【文献】特開2009-142576(JP,A)
【文献】特開2017-71319(JP,A)
【文献】特開2016-203660(JP,A)
【文献】特開2013-27414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が接触する位置に各々設けられた一対の電極と、
前記一対の電極の差動電圧を検出する検出部と、
前記電極と前記検出部との間に設けられて、前記電極が前記検出部に接続された状態と接地された状態とに切り替える切替部と、
運転者が帯電して除電が必要か否かを判定するための除電情報を検出する除電情報検出部と、
前記除電情報検出部によって検出された前記除電情報に基づいて運転者が帯電して除電が必要か否かを判定して除電が必要な場合に、前記電極が接地された状態に切り替えるように前記切替部を制御する制御部と、
を含む車両用心電検出装置。
【請求項2】
前記一対の電極の各々がステアリングホイールの運転者の両手に対応する位置に設けられて、運転者による前記ステアリングホイールの持ち手を検出する持ち手検出部を更に含み、
前記制御部は、前記持ち手検出部によって検出された運転者による前記ステアリングホイールの持ち手が片手である場合に、前記一対の電極のうちステアリングホイールを把持した手に対応する方の前記電極が前記検出部に接続された状態に切り替え、他方の前記電極が接地された状態に切り替えるように前記切替部を制御する請求項1に記載の車両用心電検出装置。
【請求項3】
前記一対の電極の各々がステアリングホイールの運転者の両手に対応する位置に設けられて、運転者による前記ステアリングホイールの持ち手を検出する持ち手検出部を更に含み、
前記制御部は、前記持ち手検出部によって検出された運転者による前記ステアリングホイールの持ち手が両手である場合に、前記一対の電極のうち一方の電極が前記検出部に接続された状態に切り替え、他方の電極が接地された状態に切り替えるように前記切替部を制御する請求項1に記載の車両用心電検出装置。
【請求項4】
前記一対の電極のうち一方の電極は、ステアリングホイールに設けられ、他方の電極は、車両用シートに設けられた請求項1に記載の車両用心電検出装置。
【請求項5】
前記一対の電極の各々は、ステアリングホイールまたは車両用シートに設けられた請求項に記載の車両用心電検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、運転者の心電波形を検出する車両用心電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールや車両用シートに電極を設けて、乗員の心電波形を検出する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両のステアリングホイールに取り付けられ、運転者の身体電位を検出する第1、第2、及び第3の直接電極と、前記車両のシートに取り付けられ、非接触により前記運転者の身体電位を検出する静電容量結合型電極と、前記第1及び第2の直接電極間の電圧を測定する第1の電圧測定手段と、前記第3の直接電極及び前記静電容量結合型電極の電圧を測定する第2の電圧測定手段と、を備え、前記第1の電圧測定手段の測定結果と前記第2の電圧測定手段の測定結果の、双方又はいずれか一方に基づき運転者の心電図波形を計測する、車両用心電計測装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-24902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、静電気が発生した場合、静電気によるノイズの影響を受けて正確に心電波形を検出できない場合があるため、静電気によるノイズの影響を考慮するためには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、静電気が発生しても適切な心電波形を得ることが可能な車両用心電検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1の態様は、運転者が接触する位置に各々設けられた一対の電極と、前記一対の電極の差動電圧を検出する検出部と、前記電極と前記検出部との間に設けられて、前記電極が前記検出部に接続された状態と接地された状態とに切り替える切替部と、を含む。
【0008】
第1の態様によれば、一対の電極は、運転者が接触する位置に各々設けられ、検出部は一対の電極の差動電圧を検出する。すなわち、運転者が一対の電極の各々に接触することにより容量結合が生じてコンデンサを形成し、一対の電極の差動電圧を検出することで、心臓の心拍における電気活動に伴うイオン電流変化を電流信号として検出して心電波形を得ることが可能となる。
【0009】
また、切替部では、電極と検出部との間に設けられて、電極が検出部に接続された状態と接地された状態とに切り替えられる。すなわち、切替部により、電極が検出部に接続された状態に切り替えることで、心電波形を得ることができる。一方、切替部により、電極が接地された状態に切り替えることにより、運転者に帯電した静電気を放電して除電することが可能となる。これにより、静電気が発生しても適切な心電波形を得ることが可能となる。
【0010】
なお、運転者が帯電して除電が必要か否かを判定するための除電情報を検出する除電情報検出部と、除電情報検出部によって検出された除電情報に基づいて運転者が帯電して除電が必要か否かを判定して除電が必要な場合に、電極が接地された状態に切り替えるように切替部を制御する制御部と、を更に含んでもよい。
【0011】
また、予め定めた時間毎に、電極が検出に接続された状態と接地された状態とに切り替えるように切替部を制御する制御部を更に含んでもよい。
【0012】
また、一対の電極の各々がステアリングホイールの運転者の両手に対応する位置に設けられて、運転者によるステアリングホイールの持ち手を検出する持ち手検出部を更に含み、制御部は、持ち手検出部によって検出された運転者によるステアリングホイールの持ち手が片手である場合に、一対の電極のうちステアリングホイールを把持した手に対応する方の電極が検出部に接続され状態に切り替え、他方の電極が接地された状態に切り替えるように切替部を制御してもよい。
【0013】
また、一対の電極の各々がステアリングホイールの運転者の両手に対応する位置に設けられて、運転者によるステアリングホイールの持ち手を検出する持ち手検出部を更に含み、制御部は、持ち手検出部によって検出された運転者によるステアリングホイールの持ち手が両手である場合に、一対の電極のうち一方の電極が検出部に接続された状態に切り替え、他方の電極が接地された状態に切り替えるように切替部を制御してもよい。
【0014】
また、一対の電極のうち一方の電極は、ステアリグホイールに設けられ、他方の電極は、車両用シートに設けられてもよい。
【0015】
或いは、一対の電極の各々は、ステアリングホイールまたは車両用シートに設けられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、静電気が発生しても適切な心電波形を得ることが可能な車両用心電検出装置を提供できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る車両用心電検出装置の概略構成を示す図である。
図2】従来の車両用心電検出装置に設けられるバッファ回路の構成を示す図である。
図3】第1実施形態に係る車両用心電検出装置に設けられたバッファ回路の構成を示す図である。
図4】第1実施形態に係る車両用心電検出装置の信号処理部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】正常な心電波形の場合にインピーダンス切替部を高インピーダンスに切り替え、異常な心電波形の場合に低インピーダンスに切り替える例を示す図である。
図6】カーブ路が予測される場合にインピーダンス切替部を低インピーダンスに切り替え、直進路が予測される場合に高インピーダンスに切り替える例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る車両用心電検出装置の概略構成を示す図である。
図8】第2実施形態に係る車両用心電検出装置の一対のステアリング電極が接続されたバッファ回路を説明するための図である。
図9】第2実施形態に係る車両用心電検出装置の信号処理部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】ステアリング電極とシート電極の代わりに、シートバックに設けた一対のシート電極を用いた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る車両用心電検出装置の一例を詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る車両用心電装置について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用心電検出装置の概略構成を示す図である。
【0020】
本実施形態に係る車両用心電検出装置10は、心電波形生成装置12、ステアリング電極16、シート電極18A、18B、及びバッファ回路32、34を備えている。
【0021】
ステアリング電極16及びシート電極18A、18Bは、運転者が接触する位置に設けられた電極として設けられている。
【0022】
ステアリング電極16は、車両の操舵操作を行うためのステアリングホイール14の周方向全域に渡って設けられている。運転者がステアリングホイール14を把持すると、運転者の手がステアリング電極16に近接され、運転者の手とステアリング電極16との間に容量結合が生じてコンデンサを形成する。また、ステアリング電極16は、心電波形生成装置12に電気的に接続されており、心電波形生成装置12は、ステアリング電極16から、心臓の心拍における電気活動に伴うイオン電流変化(交流電流)を電流信号として検出する。
【0023】
シート電極18A、18Bは、車両用シート20に着座した運転者の心臓の位置より車両下側の車両用シート20のシートクッション20Aに設けられており、シートカバー(図示省略)に被覆されている。シート電極18A、18Bは、乗員が車両用シート20に着座することで、乗員の着衣及びシートカバーを介して、乗員の臀部と近接する。一方のシート電極18Bは、心電波形生成装置12に接続され、他方のシート電極18Aは接地されている。なお、図1では、車両の幅方向(運転者の左右)にシート電極18A、18Bを配列した例を示すが、配列はこれに限るものではない。例えば、車両前後方向(運転者の前後)にシート電極18A、18Bを配列してもよい。或いは、他の方向にシート電極18A、18Bを配列してもよい。
【0024】
バッファ回路32は、ステアリング電極16と心電波形生成装置12との間に設けられており、ステアリング電極16からの信号をバッファして心電波形生成装置12に出力する。
【0025】
バッファ回路34は、シート電極18Bと心電波形生成装置12との間に設けられており、シート電極18Bからの信号をバッファして心電波形生成装置12に出力する。
【0026】
心電波形生成装置12は、検出部としての差動増幅器22、フィルタ増幅部24、及び信号処理部26を含んで構成され、ステアリング電極16及びシート電極18Bから入力される電流信号に基づいて、運転者の心電波形を生成する。
【0027】
差動増幅器22は、2つの入力端子にステアリング電極16及びシート電極18Bが接続されており、2つの入力の差動電圧を検出してフィルタ増幅部24に出力する。具体的には、差動増幅器22は、ステアリング電極16とシート電極18Bからの2つの入力信号の差分を一定係数で増幅する。
【0028】
フィルタ増幅部24は、差動増幅器22の出力信号を増幅すると共に、予め定めたフィルタを用いて予め定めた範囲の周波数の信号に変換する処理等を行って処理結果を信号処理部26へ出力する。予め定めたフィルタとしては、例えば、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ等のフィルタを適宜適用する。また、フィルタ増幅部24は、本実施形態では、アナログ信号をデジタル信号に変換する処理を行ってから信号処理部26に処理結果を出力するものとする。
【0029】
信号処理部26は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含むコンピュータで構成されている。CPUは、メモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより、波形生成部28の機能を実行する。
【0030】
波形生成部28は、フィルタ増幅部24から得られる信号を用いて、心電波形を生成して出力する。
【0031】
続いて、本実施形態に係る車両用心電検出装置10に設けられたバッファ回路32、34について詳細に説明する。図2は、従来の車両用心電検出装置に設けられるバッファ回路70の構成を示す図であり、図3は、本実施形態に係る車両用心電検出装置10に設けられたバッファ回路32、34の構成を示す図である。なお、本実施形態では、バッファ回路32、34は共に図3に示す構成として説明するが、シート電極18Bに接続されるバッファ回路34は図2に示す従来の構成のものを適用してもよい。
【0032】
従来のバッファ回路70は、オペアンプOP、抵抗R、及びコンデンサCを含むブートストラップ(boot-strap)と呼ばれる正帰還回路で構成されている。従来の車両用心電検出装置では、絶縁体を介して非接触で心電波形を計測するために、バッファ回路70のインピーダンスを超高インピーダンスとして前段の回路の影響を抑制していた。
【0033】
しかしながら、運転時にシートと体が擦れる等により静電気が発生すると、運転者が帯電し、心電波形のノイズ源となってしまう。特に、冬の空気が乾燥した時期は、大気中への静電気放電がし難く、運転者の体に静電気が溜まりやすい。
【0034】
そこで、本実施形態に係る車両用心電検出装置10では、バッファ回路32、34にバッファ入力インピーダンスを切り替えるインピーダンス切替部40を備えている。
【0035】
インピーダンス切替部40は、ステアリング電極16及びシート電極18BのそれぞれがオペアンプOPを介して差動増幅器22に接続された状態と接地された状態とに切替可能とされている。図3に示すように、高インピーダンス側(図3中の高)となる差動増幅器22に接続された状態に切り替えた場合には、従来同様に動作する。一方、低インピーダンス側(図3中の低)となる接地された状態に切り替えた場合には、電極(ステアリング電極16及びシート電極18B)が接地され、運転者に帯電した静電気が除電されるようになっている。
【0036】
また、本実施形態に係る車両用心電検出装置10は、図3に示すように、除電情報検出部42及び制御部44を備えており、除電情報検出部42の検出結果に基づいて、制御部44が、インピーダンス切替部40の切り替えを制御する。例えば、制御部44は、心電波形生成装置12内の機能として設けられている。
【0037】
除電情報検出部42は、除電する必要があるかを判断するための除電情報を検出する。例えば、インピーダンス切替部を高インピーダンス側に切り替えた状態で計測した心電波形の検出可否を表す情報、または心電波形のS/N比(信号雑音比)を除電情報として検出する。或いは、GPS(Global Positioning System)情報や、舵角、走行路等の情報を除電情報として検出する。或いは、温度や湿度等を検出することにより、静電気が発生しやすい環境を除電情報として検出する。
【0038】
そして、制御部44は、除電情報検出部42によって検出された除電情報から、運転者が静電気により帯電して除電が必要であるか否かを判定し、除電が必要な場合に、インピーダンス切替部40を低インピーダンス側に切り替えて除電する制御を行う。そして、制御部44は、除電後に、インピーダンス切替部40を高インピーダンス側に切り替えて心電波形の検出を行う。これにより、静電気によるノイズを除去することができるので、静電気が発生しても適切な心電波形を得ることが可能となる。
【0039】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る車両用心電検出装置10の信号処理部26で行われる具体的な処理について説明する。図4は、本実施形態に係る車両用心電検出装置10の信号処理部26で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図4の処理は、例えば、図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合に開始してもよいし、心電波形の検出開始を表す指示が信号処理部26に対して行われた場合に開始してもよい。
【0040】
ステップ100では、信号処理部26が、心電波形を検出してステップ102へ移行する。
【0041】
ステップ102では、信号処理部26が、運転者の除電が必要であるか否かを判定する。該判定は、制御部44が、除電情報検出部42の検出結果に基づいて除電が必要であるか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ104へ移行し、肯定された場合にはステップ106へ移行する。
【0042】
ステップ104では、信号処理部26が、検出した心電波形を出力してステップ100に戻って上述の処理を繰り返す。すなわち、波形生成部28が差動増幅器22の出力から心電波形を生成して出力する。
【0043】
一方、ステップ106では、信号処理部26が、バッファ回路32、34のインピーダンス切替部40を低インピーダンス側に切り替えてステップ108へ移行する。すなわち、制御部44がインピーダンス切替部40を制御して低インピーダンス側に切り替えることにより、電極を接地して除電することができる。
【0044】
ステップ108では、信号処理部26が、予め定めた時間経過したか否かを判定する。該判定が肯定されるまで待機してステップ110へ移行する。なお、予め定めた時間は、運転者に帯電した静電気が除電されるのに必要な時間が予め定められているものとする。
【0045】
ステップ110では、信号処理部26が、バッファ回路32、34のインピーダンス切替部40を高インピーダンス側に切り替えてステップ100に戻って上述の処理を繰り返す。すなわち、制御部44がインピーダンス切替部40を制御して高インピーダンス側に切り替えることにより、心電波形の計測が行われる。運転者が除電されてから心電波形の計測が行われるので、静電気が発生しても適切な心電波形を得ることが可能となる。
【0046】
例えば、図5に示すように、除電情報検出部42が心電波形の検出可否を表す情報を検出する場合には、制御部44が除電情報検出部42の検出結果から異常な心電波形であるか否かを判定する。例えば、ピーク値間の時間が予め定めた範囲内か否か等を判定する。そして、異常な心電波形の場合には、制御部44がインピーダンス切替部40を低インピーダンスに切り替えて除電してから高インピーダンスに切り替えて心電波形を検出することにより、適切な心電波形を得ることが可能となる。
【0047】
また、除電情報検出部42がGPS情報や、舵角、走行路等の情報を検出、或いは、温度や湿度等を検出することにより静電気が発生しやすい環境を検出する場合には、制御部44が、除電が必要な状況(走行状態または環境)であるかを予測する。例えば、図6に示すように、カーブ路が予測される場合には、制御部44がインピーダンス切替部40を低インピーダンスに切り替えて除電する。そして、直線路が予測される場合に、制御部44がインピーダンス切替部40を高インピーダンスに切り替えて心電波形を検出することにより、適切な心電波形を得ることが可能となる。
【0048】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る車両用心電検出装置について説明する。図7は、第2実施形態に係る車両用心電検出装置の概略構成を示す図である。なお、図1と同一構成については同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0049】
本実施形態に係る車両用心電検出装置11も、上記実施形態と同様に、心電波形生成装置12、ステアリング電極16(16A、16B)、シート電極18A、18B、及びバッファ回路34、36を備えている。
【0050】
上記の実施形態では、ステアリング電極16は1つであったが、本実施形態では一対のステアリング電極16A、16Bを備えており、バッファ回路36には、一対のステアリング電極16A、16Bが接続されている。
【0051】
一対のステアリング電極16A、16Bが接続されたバッファ回路36は、2つの電極が接続されるため、上記実施形態とは異なる構成とされている。図8は、本実施形態に係る車両用心電検出装置11の一対のステアリング電極16A、16Bが接続されたバッファ回路36を説明するための図である。
【0052】
バッファ回路36は、上記のインピーダンス切替部40の代わりに、接続切替部46を備えている。接続切替部46は、一方のステアリング電極16Aが接地された状態またはオペアンプOPを介して差動増幅器22に接続された状態とに切り替えると共に、他方のステアリング電極16Bが接地された状態またはオペアンプOPを介して差動増幅器22に接続された状態とに切り替える。接続切替部46は、上記のインピーダンス切替部40と同様に、制御部44の制御によって切替が制御され、何れか一方のステアリング電極16がオペアンプOPに接続された状態に切り替え、他方のステアリング電極16が接地された状態に切り替える。すなわち、一方を高インピーダンスのオペアンプOPに接続し、他方を低インピーダンスの接地電極に接続する。
【0053】
また、心電波形生成装置12は、基本的には上記実施形態と同一構成とされている。すなわち、差動増幅器22、フィルタ増幅部24、及び信号処理部26を含んで構成され、ステアリング電極16A、16B及びシート電極18Bから入力される電流信号に基づいて、運転者の心電波形を生成する。
【0054】
さらに、本実施形態では、ステアリングホイール14の持ち手を検出するために、カメラ50及び持ち手検出部30を備えている。
【0055】
持ち手検出部30には、運転者の腕周辺を撮影するカメラ50が接続されており、カメラ50によって撮影された運転者の撮影画像を表す画像データが入力される。持ち手検出部30は、カメラ50によって撮影された運転者の撮影画像を表す画像データから運転者によるステアリングホイール14の持ち手が検出される。例えば、カメラ50は、車室内のルームミラー付近等に設けられて運転者の腕周辺を撮影する。そして、持ち手検出部30が、撮影された撮影画像を表す画像データに対した画像処理を行うことにより、運転者のステアリングホイール14の持ち手を検出し、検出結果を波形生成部28に出力する。ステアリングホイール14の持ち手の検出方法としては、例えば、パターン認識等の画像処理の技術を利用して検出する。なお、本実施形態では、持ち手検出部30がカメラ50によって撮影された撮影画像から運転者のステアリングホイール14の持ち手を検出する例を説明するが、持ち手検出部30による持ち手の検出方法はこれに限るものではない。例えば、ステアリングホイール14に光センサや、タッチセンサ等を設けて、センサの検出結果に基づいて持ち手を検出する方法などの他の方法を適用してもよい。
【0056】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る車両用心電検出装置11の信号処理部26で行われる具体的な処理について説明する。図9は、本実施形態に係る車両用心電検出装置11の信号処理部26で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図9の処理は、例えば、図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合に開始してもよいし、心電波形の検出開始を表す指示が信号処理部26に対して行われた場合に開始してもよい。
【0057】
ステップ200では、信号処理部26が、運転者によるステアリングホイール14の持ち手を検出する持ち手検出処理を行ってステップ202へ移行する。具体的には、持ち手検出処理は、持ち手検出部30が、カメラ50によって撮影された運転者の撮影画像を表す画像データを取得して、撮影画像を表す画像データから運転者のステアリングホイール14の持ち手を検出する。本実施形態では、運転者がステアリングホイール14を片手で把持しているか、両手で把持しているか、或いはステアリングホイール14を把持していない状態かを、撮影画像を表す画像データに対して画像処理を行うことにより検出する。
【0058】
ステップ202では、信号処理部26が、持ち手検出部30による検出結果がステアリングホイール14を非把持状態であるか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ204へ移行し、否定された場合にはステップ206へ移行する。
【0059】
ステップ204では、信号処理部26が、バッファ回路36の接続切替部46の一対のステアリング電極16A、16Bを低インピーダンスに切り替えてステップ200に戻って上述の処理を繰り返す。すなわち、制御部44が接続切替部46を制御して一対のステアリング電極16A、16Bを共に低インピーダンスに切り替えることにより、電極を接地して除電することができる。なお、ステップ204は省略してそのままステップ200に戻るようにしてもよい。
【0060】
ステップ206では、信号処理部26が、持ち手検出部30による検出結果がステアリングホイール14を両手で把持した状態であるか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ208へ移行し、否定された場合にはステップ216へ移行する。
【0061】
ステップ208では、信号処理部26が、バッファ回路36の接続切替部46において一対のステアリング電極16A、16Bのうち一方を高インピーダンスに接続し、他方を低インピーダンスに切り替えてステップ210へ移行する。すなわち、制御部44が接続切替部46を制御して一対のステアリング電極16A、16Bのうち一方を高インピーダンスに切り替えることで、一方のステアリング電極16とシート電極18Bとによって心電波形の検出が可能となる。また、制御部44が接続切替部46を制御して一対のステアリング電極16A、16Bのうち他方を低インピーダンスに切り替えることで、電極を接地して除電することができる。
【0062】
ステップ210では、信号処理部26が、心電波形を検出してステップ212へ移行する。
【0063】
ステップ212では、信号処理部26が、運転者の除電が必要であるか否かを判定する。該判定は、制御部44が、除電情報検出部42の検出結果に基づいて除電が必要であるか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ214へ移行し、否定された場合にはステップ228へ移行する。
【0064】
ステップ214では、信号処理部26が、バッファ回路36の接続切替部46において一対のステアリング電極16A、16Bのうち他方を高インピーダンスに接続し、一方を低インピーダンスに切り替えてステップ228へ移行する。すなわち、制御部44が接続切替部46を制御して一対のステアリング電極16A、16Bのうち低インピーダンスに接続されていた他方を高インピーダンスに切り替えることで、他方のステアリング電極16による心電波形が検出可能となる。また、制御部44が接続切替部46を制御して一対のステアリング電極16A、16Bのうち高インピーダンスに接続されていた一方を低インピーダンスに切り替えることで、電極を接地して除電することができる。
【0065】
一方、ステップ216では、信号処理部26が、バッファ回路36の接続切替部46の持ち手の方のステアリング電極16を高インピーダンスに接続し、他方のステアリング電極16を低インピーダンスに接続してステップ218へ移行する。すなわち、制御部44が接続切替部46を制御して持ち手の方のステアリング電極16を高インピーダンスに切り替えることで、持ち手のステアリング電極16とシート電極18Bとを用いて心電波形が検出可能となる。また、制御部44が接続切替部46を制御して他方のステアリング電極16を低インピーダンスに切り替えることで、電極を接地して除電することができる。
【0066】
ステップ218では、信号処理部26が、心電波形を検出してステップ220へ移行する。
【0067】
ステップ220では、信号処理部26が、運転者の除電が必要であるか否かを判定する。該判定は、制御部44が、除電情報検出部42の検出結果に基づいて除電が必要であるか否かを判定する。該判定が肯定された場合にはステップ222へ移行し、否定された場合にはステップ228へ移行する。
【0068】
ステップ222では、信号処理部26が、バッファ回路36の接続切替部46の持ち手のステアリング電極16を低インピーダンスに切り替えてステップ224へ移行する。すなわち、制御部44が接続切替部46を制御して持ち手のステアリング電極16を低インピーダンスに切り替えることにより、電極を接地して除電することができる。
【0069】
ステップ224では、信号処理部26が、予め定めた時間経過したか否かを判定する。該判定が肯定されるまで待機してステップ226へ移行する。なお、予め定めた時間は、運転者に帯電した静電気が除電されるのに必要な時間が予め定められているものとする。
【0070】
ステップ226では、信号処理部26が、バッファ回路36の接続切替部46を高インピーダンス側に切り替えてステップ228へ移行する。すなわち、制御部44がインピーダンス切替部40を制御して高インピーダンス側に切り替えることにより、以降の処理で心電波形の計測が行われる。運転者が除電されてから心電波形の計測が行われるので、静電気が発生しても適切な心電波形を得ることが可能となる。
【0071】
ステップ228では、信号処理部26が、検出した心電波形を出力してステップ200に戻って上述の処理を繰り返す。すなわち、波形生成部28が差動増幅器22の出力から心電波形を生成して出力する。なお、心電波形を出力する際には、運転者によるステアリングホイール14の持ち手により波形が異なるため、持ち手検出部30により検出された持ち手情報を含めて心電波形を出力してもよい。
【0072】
このように、本実施形態では、運転者によるステアリングホイール14の持ち手を検出して、接続切替部46を制御することにより、第1実施形態よりも運転者に帯電した静電気の除電を効率的に行うことが可能となる。
【0073】
なお、第1実施形態では、ステアリング電極16が1つであったが、第2実施形態のように、一対のステアリング電極16A、16Bとしてもよい。この場合には、図8に示すように、インピーダンス切替部40の代わりに、第2実施形態と同様に、接続切替部46によってインピーダンスの切替を行えばよい。
【0074】
また、上記の各実施形態では、2つのシート電極18A、18Bを備える例を説明したが、これに限定されるものではなく、接地されたシート電極18Aは省略してもよい。接地されたシート電極18Aによりノイズを抑制することが可能であるが、シート電極18Aを省略しても心電波形を生成することは可能である。
【0075】
また、第2実施形態では、一対のステアリング電極16A、16Bを備える形態としたが、ステアリング電極16A、16Bは、一対に限るものではなく、3つ以上備えてそれぞれインピーダンスの切替が可能な形態としてもよい。
【0076】
また、上記の各実施形態では、運転者に帯電した静電気の除電が必要か否かを判定してインピーダンスの切替を行う形態として説明したが、これに限るものではない。例えば、予め定めた時間毎等のように定期的にインピーダンス切替部40または接続切替部46を制御してインピーダンスの切替を行ってもよい。
【0077】
また、上記の各実施形態では、ステアリング電極16と、シート電極18Bとを用いて心電波形を検出する形態として説明したが、これに限るものではない。例えば、第1実施形態のステアリング電極16とシート電極18Bの代わりに、図10に示すように、シートバック20Bに設けた一対のシート電極18C、18Dを適用してもよい。この場合は、一対のシート電極18C、18Dをバッファ回路32、34を介して差動増幅器22の入力端子に接続して心電波形を検出すればよい。
【0078】
また、上記の実施形態における信号処理部26で行われる処理は、ソフトウエアの処理としてよいし、ハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ハードウエアとソフトウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。
【0079】
また、上記の実施形態における信号処理部26で行われる処理は、プログラムとして記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0080】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
10・・・車両用心電検出装置、11・・・車両用心電検出装置、12・・・心電波形生成装置、14・・・ステアリングホイール、16・・・ステアリング電極、16A・・・ステアリング電極、16B・・・ステアリング電極、18A・・・シート電極、18B・・・シート電極、18C・・・シート電極、18D・・・シート電極、20・・・車両用シート、22・・・差動増幅器、24・・・フィルタ増幅部、26・・・信号処理部、28・・・波形生成部、30・・・持ち手検出部、32・・・バッファ回路、34・・・バッファ回路、36・・・バッファ回路、40・・・インピーダンス切替部、42・・・除電情報検出部、44・・・制御装置、46・・・接続切替部、50・・・カメラ
図1
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図10