(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】前立腺癌検出のための組成物と方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20221012BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221012BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
G01N33/574 A
G01N33/53 D ZNA
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2020503356
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2018058330
(87)【国際公開番号】W WO2018178352
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】CNCM I-5158
(73)【特許権者】
【識別番号】519349702
【氏名又は名称】イー、シー、エス、プロガストリン、エス、エー
【氏名又は名称原語表記】ECS-PROGASTRIN SA
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル、プリュール
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0232399(US,A1)
【文献】特表2013-516437(JP,A)
【文献】特表2013-516438(JP,A)
【文献】特表2016-540503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
C12N 15/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における前立腺癌のインビトロ診断のための方法であって、
(a)前記対象由来
の生体試料を少なくとも1種類のプロガストリン結合
抗体またはその抗原結合断片と接触させる工程、
(b)前記試料中のプロガストリンへの前記プロガストリン結合
抗体またはその抗原結合断片の結合を検出する工程を含み、
前記生体試料が血液、血清および血漿から選択され、かつ、
前記結合が前記対象における前立腺癌の存在の指標となる前記方法。
【請求項2】
工程(b)がプロガストリン濃度を決定することをさらに含み、前記生体試料における少なくとも10pMのプロガストリン濃度によって前記対象における前立腺癌の存在が示される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(c)参照試料中のプロガストリン参照濃度を決定する工程、
(d)前記生体試料中のプロガストリン濃度を前記プロガストリン参照濃度と比較する工程、
(e)前立腺癌の存在を工程(d)の比較から判定する工程
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片がN末端抗プロガストリンモノクローナル抗体およびC末端抗プロガストリンモノクローナル抗体から選択される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
プロガストリンに結合する前記抗体が以下からなる群から選択されるモノクローナル抗体:
-それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体
、
-それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ
、少なくとも2つ、
または3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体
および
-2016年12月27日にフランス国75724パリ・セデックス15、ドクトル・ルー通り25-28のパスツール研究所CNCMにI-5158の照会番号で寄託されたハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体
である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が以下からなる群から選択されるモノクローナル抗体:
-配列番号41のアミノ酸配列の重鎖と配列番号42のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、
-配列番号43のアミノ酸配列の重鎖と配列番号44のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、
-配列番号45のアミノ酸配列の重鎖と配列番号46のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、
-配列番号47のアミノ酸配列の重鎖と配列番号48のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、
-配列番号49のアミノ酸配列の重鎖と配列番号50のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、および
-配列番号51のアミノ酸配列の重鎖と配列番号52のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体
である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料を
、前記工程(a)において、
プロガストリンの
C末端部分に結合する第1
抗体またはその抗原結合断片と
プロガストリンの
N末端部分に結合する第2
抗体またはその抗原結合断片に接触させ
、
前記プロガストリンのC末端部分が配列番号3で定義され、かつ、
前記プロガストリンのN末端部分が配列番号2で定義される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1抗体またはその抗原結合断片がプロガストリンのC末端内のエピトープに結合するものであり、前記エピトープが以下からなる群から選択される:
-配列番号1の残基71~74に対応するアミノ酸配列、
-配列番号1の残基69~73に対応するアミノ酸配列、
-配列番号1の残基71~80に対応するアミノ酸配列、
-配列番号1の残基76~80に対応するアミノ酸配列、および
-配列番号1の残基67~74に対応するアミノ酸配列、
である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1抗体が2016年12月27日にフランス国75724パリ・セデックス15、ドクトル・ルー通り25-28のパスツール研究所CNCMにI-5158の照会番号で寄託されたハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2抗体またはその抗原結合断片がプロガストリンのN末端内のエピトープに結合するものであり、前記エピトープが以下からなる群から選択される:
-配列番号1の残基10~14に対応するアミノ酸配列、
-配列番号1の残基9~14に対応するアミノ酸配列、
-配列番号1の残基4~10に対応するアミノ酸配列、
-配列番号1の残基2~10に対応するアミノ酸配列、および
-配列番号1の残基2~14に対応するアミノ酸配列、
である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2抗体が、
プロガストリンのN末端内のエピトープに結合するポリクローナル抗体、または
それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3とを含むものクローナル抗体
である、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1抗体が不溶性担体または部分可溶性担体に結合し、かつ、前記第2抗体が検出可能部分で標識される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記生体試料が血漿であり、少なくとも10pMのプロガストリン濃度によって前記対象における前立腺癌の存在が示される、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前立腺癌のインビトロ診断のための請求項
4~6のいずれか一項に記載されるプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌のインビトロ(in vitro)診断に関し、より具体的には前立腺癌のインビトロ診断のための方法に関する。本発明による組成物は、プロガストリン結合分子、具体的には抗hPG抗体を含み、一方、本発明による方法は、プロガストリン結合分子の使用、具体的には抗hPG抗体の使用を含む。
【背景技術】
【0002】
国際癌研究機関によると、前立腺癌(PC)は男性において2番目に最も一般的な癌であり、男性における癌関連死の5番目の主要な死因である。2012年では前立腺癌は110万人の男性に発生し、307,000件の死亡件数の原因となった。米国では前立腺癌は男性におけるもっとも一般的な皮膚癌以外の癌である。生涯に前立腺癌であると診断される男性は白人男性では6人に1人、黒人男性では5人に1人と推定されており、その可能性は年齢と共に上昇する。
【0003】
大半(95%)の前立腺癌は腺癌、すなわち腺組織に由来する癌であり、正常な精液分泌前立腺細胞が癌細胞に変異すると発生する。前立腺癌の事例の約4%が移行細胞形態を有しており、前立腺部尿道の尿路上皮裏層より生じると考えられている。神経内分泌形態を有する少数の事例は前立腺に通常存在する神経内分泌幹細胞から生じるか、または細胞形質転換中の異常分化プログラムのために生じると考えられている。扁平上皮癌は全ての前立腺癌の1%未満を構成する。前立腺癌は局所的に進行した後に骨、リンパ節に転移することが最も一般的であり、直腸、膀胱、および下部尿管に浸潤することもある。
【0004】
治療には、手術、化学療法、放射線療法、および標的療法の単独または組合せが通常は含まれる。しかしながら、その成果は世界的に5年生存率が10%未満といった不十分であることがよくある。これは大半の人では疾患が進行してからでしか発見されないことを主な理由とするものであり、それが生存率に対する直接的な結果を有している。いくつかのアジア諸国では検診の取り組みがより高い生存率と関連することが示されている。
【0005】
前立腺癌の集団全体の5年生存率は非常に高い(約99%)。しかしながら、この癌が転移するとこの比率はかなり低下する(約28.5%)。幸いなことに、患者の約80%は局所的疾患で診断される(Surveillance E; End Results Program (SEER). Surveillance, Epidemiology, and Ends Results Program. Fast Stats; 2016[2016年9月12日引用]http://seer.cancer.gov/faststats/selections.phpにおいて入手可能)。これは大部分が検診方法の改善に起因する。しかしながら、最も一般的に使用されるバイオマーカーである前立腺特異的抗原(PSA)はその限界のために診断方法として議論の的になっている。
【0006】
したがって、前立腺癌の短時間で済み、信頼性があり、かつ、費用効果のある診断を可能にする方法の必要性が依然として存在する。
【0007】
これが本発明の目的である。
【発明の具体的な説明】
【0008】
本発明が提供するのは前立腺癌のインビトロ診断のための方法であって、前記方法は対象由来の生体試料中のプロガストリンの検出を含んでなる。好ましくは、前記試料中のプロガストリンの量を決定し、それによってプロガストリンを定量する。
【0009】
101アミノ酸ペプチド(アミノ酸配列参照番号:AAB19304.1)であるヒトプレプロガストリンは、ガストリン遺伝子の主要な翻訳産物である。プロガストリンは、プレプロガストリンから最初の21アミノ酸(シグナルペプチド)を切断することによって形成される。プロガストリンの80アミノ酸鎖は、切断酵素と修飾酵素によってさらに処理されていくつかの生物学的活性型のガストリンホルモン:プロガストリンのアミノ酸38~71を含んでなるガストリン34(G34)およびグリシン伸長ガストリン34(G34-Gly)、プロガストリンのアミノ酸55~71を含んでなるガストリン17(G17)およびグリシン伸長ガストリン17(G17-Gly)になる。
【0010】
抗ヒトプロガストリン(抗hPG)モノクローナル抗体と治療のためのそれらの使用については、以下の文書:結腸直腸癌についての国際公開第2011/083088号、乳癌についての国際公開第2011/083090号、膵臓癌についての国際公開第2011/083091号、結腸直腸と胃腸癌についての国際公開第2011/116954号、および肝臓疾患についての国際公開第2012/013609号と国際公開第2011/083089号に記載されている。
【0011】
本発明は、本明細書において示される詳細な説明と添付図面からさらに十分に理解されることになるが、それらの説明と図面は例として示されるにすぎず、本発明の意図されている範囲を限定するものではない。
【0012】
第1の態様では、本発明は、前立腺癌が存在するリスクのインビトロ評価のための方法に関し、前記方法は対象由来の生体試料中のプロガストリンを検出する工程を含んでなる。試料中のプロガストリンの存在は、前立腺癌が存在するリスクがあることを示す。
【0013】
したがって、第1の実施形態では、本発明は対象における前立腺癌が存在するリスクを評価するためのインビトロ方法に関し、前記方法は次の工程:
a)前記対象由来の生体試料を少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記試料中のプロガストリンへの前記プロガストリン結合分子の結合を検出する工程であって、前記結合が前立腺癌の存在のリスクを示すものである工程
を含んでなる。
【0014】
プロガストリン結合分子の結合は、当業者に利用可能な種々のアッセイ法によって検出され得る。それらのアッセイ法を実施するための任意の適切な手段が本発明に含まれるが、特にFACS、ELISA、RIA、ウエスタンブロットおよびIHCを挙げることができる。
【0015】
好ましい実施形態では、対象における前立腺癌が存在するリスクのインビトロ評価のための本発明による方法は、次の工程:
a)前記対象由来の前記生体試料を少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、
b)前記生体試料中のプロガストリン濃度を決定する工程であって、前記生体試料における少なくとも10pMのプロガストリン濃度によって前立腺癌が存在するリスクが示される工程、
を含んでなる。
【0016】
試料中に存在するプロガストリンの濃度を決定すると、その結果は被検試料と同様にして採取される対照試料(前立腺癌を罹患していないことが知られている個体由来のものを除く)のプロガストリン濃度と比較することができる。被検試料においてプロガストリン濃度が有意により上昇している場合には、その被検試料が由来する対象は前立腺癌を有する可能性が高いと結論され得る。
【0017】
したがって、より好ましい実施形態では、本発明の方法は、次の工程:
c)参照試料中のプロガストリンの参照濃度を決定する工程、
d)前記生体試料中のプロガストリン濃度を前記プロガストリン参照濃度と比較する工程、
e)前立腺癌が存在するリスクを工程d)の比較から評価する工程
をさらに含んでなる。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、対象の前立腺癌を診断するためのインビトロ方法に関し、前記方法は次の工程:
a)前記対象由来の生体試料を少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記試料中のプロガストリンへの前記プロガストリン結合分子の結合を検出する工程であって、前記結合が前記対象における前立腺癌の存在を示す工程
を含んでなる。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明は、対象の前立腺癌のインビトロ診断のための方法に関し、次の工程:
a)前記対象由来の前記生体試料を少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、
b)前記生体試料中のプロガストリン濃度を決定する工程であって、前記生体試料における少なくとも10pMのプロガストリン濃度が前記対象の前立腺癌の存在を示す工程
を含んでなる。
【0020】
本発明による方法のより具体的な実施形態では、前記生体試料中の少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリン濃度が、前記対象の前立腺癌の存在を示す。
【0021】
より好ましい実施形態では、本発明の方法は、次の工程:
a)参照試料中のプロガストリン参照濃度を決定する工程、
b)前記生体試料中のプロガストリン濃度をプロガストリンの前記参照レベルまたは参照濃度と比較する工程、
c)前立腺癌の存在を工程d)の比較から診断する工程
をさらに含んでなる。
【0022】
別の態様によれば、本発明は対象の転移した前立腺癌を診断するためのインビトロ方法に関し、前記方法は次の工程:
a)前記対象由来の生体試料を少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記試料中のプロガストリンへの前記プロガストリン結合分子の結合を検出する工程であって、前記結合が前記対象の転移した前立腺癌の存在を示す工程
を含んでなる。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明は、対象の転移した前立腺癌のインビトロ診断のための方法に関し、前記対象の生体試料由来であって、次の工程:
a)前記生体試料を少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、
b)前記生体試料中のプロガストリンのレベルまたは濃度を生化学アッセイにより決定する工程であって、前記生体試料中の少なくとも10pMより高いプロガストリン濃度が前記対象の転移した前立腺癌の存在を示す工程
を含んでなる。
【0024】
本発明による方法のより具体的な実施形態では、前記生体試料中の少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pM、少なくとも40pMまたは少なくとも50pMのプロガストリン濃度が前記対象の転移した前立腺癌の存在を示す工程
を含んでなる。
【0025】
より好ましい実施形態では、本発明の方法は、次の工程:
a)参照試料中のプロガストリン参照濃度を決定する工程、
b)前記生体試料中のプロガストリン濃度を前記プロガストリン参照濃度と比較する工程、
c)転移した前立腺癌の存在を工程d)の比較から診断する工程
をさらに含んでなる。
【0026】
具体的な実施形態では、本発明は、対象の前立腺癌のインビトロ診断のための方法に関し、生体試料中のプロガストリン濃度の決定および取得した前記値を参照試料中のプロガストリン濃度との比較を含んでなる。
【0027】
より具体的な実施形態では、本発明による前立腺癌の診断のための方法において、前記対象の生体試料を少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させるものであって、前記プロガストリン結合分子は抗体またはその抗原結合断片である。
【0028】
「対象に前立腺癌が存在するリスクの評価」という表現は、参照対象または参照値と比較した場合に、対象が前立腺癌に罹患している相対的な確率を決定することを意味する。本発明による方法は、臨床検査、生検および前立腺癌の公知のバイオマーカー、例えば前立腺特異的抗原(PSA)などのレベルの決定などの他の方法または指標と組み合わせた前記リスクの評価ツールである。
【0029】
「インビトロ診断」という表現は、対象が特定の疾患を罹患しているかを決定することを意味する。前立腺癌の診断には前記対象の症状の臨床観察とPSAの検出が少なくとも含まれることが知られている。現在、PSA検査はバイオマーカーとして使用されている。しかしながら、PSAは特にその有意性に関する全般的な不確実性のために理想的なバイオマーカーではなく、それによって米国予防医学専門委員会は2012年には検診のためにPDAレベルを使用することを推奨していない(Gaudreau et al, Biomark Cancer. 2016, 8(Suppl 2): 15-33)。いくつかのバイオマーカーが発見段階で同定されたが、主に全身性評価プロセスの欠如のためにそれらのバイオマーカーを臨床段階へ移行させることは未だに大きな難題である(McGrath et al., Prostate Int. 2016, 4(4): 130-135; Gaudreau et al, Biomark Cancer. 2016, 8(Suppl 2): 15-33; Saini, Cell Oncol (Dordr). 2016, 39(2): 97-106)。
【0030】
したがって、本発明による前立腺癌のインビトロ診断のための方法は、診断プロセス内のツールとして考慮することができる。
【0031】
より具体的な実施形態では、本発明は、対象の前立腺癌のインビトロ診断のための方法に関し、前記生体試料中のプロガストリン濃度の決定および前立腺癌の公知のバイオマーカー、好ましくはPSAの決定を含んでなる。
【0032】
「前立腺癌」という表現は、前立腺に起源を有するいずれかの型の癌を意味する。前立腺癌には、特に「前立腺腺癌」が含まれるが、前立腺内に生じることもある肉腫、小細胞癌、神経内分泌腫瘍、移行上皮癌も含まれる。「前立腺癌」という表現には、特には骨、リンパ節といった転移を伴う前立腺癌も含まれるが、直腸、膀胱および下部尿管への転移を伴う前立腺癌も含まれる。
【0033】
「プロガストリン」という用語は、哺乳類プロガストリンペプチド、特にヒトプロガストリンを意味する。誤解を避けるため、いかなる特定も伴わない「ヒトプロガストリン」という表現は、配列番号1の配列のヒトPGを意味する。ヒトプロガストリンは、上述の生物学的活性型のガストリンホルモンには存在しないN末端ドメインとC末端ドメインを特に含んでなる。好ましくは、前記N末端ドメインの配列は配列番号2によって表される。別の好ましい実施形態では、前記C末端ドメインの配列は配列番号3によって表される。
【0034】
プロガストリン濃度の決定は、本発明による方法では、生化学分野の当業者に知られているいずれかの方法によって実施される。
【0035】
好ましくは、試料中のプロガストリンレベルの決定には、前記試料をプロガストリン結合分子と接触させ、プロガストリンへの前記プロガストリン結合分子の結合を測定することが含まれる。
【0036】
発現レベルをタンパク質レベルで測定する場合、例えば、抗体などの特異的なプロガストリン結合分子を使用して、特にビオチン標識または他の同等の技法を使用する細胞膜染色とその後の特異的抗体による免疫沈降、ウエスタンブロット、ELISAまたはELISPOT、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光(IF)、抗体マイクロアレイ、または免疫組織化学と連結させた組織マイクロアレイなどの周知技術を使用して実施してもよい。他の適切な技法には、FRETまたはBRET、単一励起波長または多重励起波長を使用し、かつ、適応光学的方法、電気化学的方法(電圧測定法や電流測定法)などのいずれかの適応光学的方法を適用した単一細胞顕微鏡的または組織化学方法、原子間力顕微鏡法、および例えば多重共鳴分光法などの高周波方法、共焦点または非共焦点の、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率および複屈折または屈折率(例えば、表面プラズモン共鳴、楕円偏光法、共振ミラー法、回折格子カプラー導波管法または干渉法)の検出、細胞ELISA、フローサイトメトリー、放射性同位体画像法、磁気共鳴画像法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE);HPLC-質量分析;液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー/マススペクトロメトリー(LC-MS/MS))が含まれる。これらの全ての技法は当技術分野においてよく知られており、ここでさらに詳細に説明する必要はない。これらの異なる技法によりプロガストリンレベルを測定することができる。
【0037】
前記方法は、特に免疫検出に基づく方法、ウエスタンブロットに基づく方法、マススペクトロメトリーに基づく方法、クロマトグラフィーに基づく方法、およびフローサイトメトリーに基づく方法から選択されるものであってよい。それらのアッセイ法を実施するためのいずれの適切な手段が本発明に含まれるがFACS、ELISA、RIA、ウエスタンブロットおよびIHCなどの方法が本発明の方法の実施に特に有用である。
【0038】
より具体的な実施形態では、本発明による前立腺癌のインビトロ診断のための方法は、免疫酵素アッセイ法を使用して、好ましくはRIAおよびELISAから選択される技法に基づいて対象由来の生体試料をプロガストリン結合分子と接触させることを含んでなる。
【0039】
本明細書において使用される「生体試料」とは、核酸またはポリペプチドを含有する生体組織または体液の試料、例えば前立腺癌のタンパク質、ポリヌクレオチドまたは転写物の試料である。このような試料はプロガストリンの発現レベルの決定を可能にするものでなければならない。プロガストリンは分泌タンパク質であることが知られている。したがって、プロガストリンタンパク質のレベルを決定するための好ましい生体試料には生体液が含まれる。本明細書において使用される「生体液」とは、生体起源の物質を含むあらゆる体液を意味する。本発明における使用のための好ましい生体液には、動物、例えば、哺乳類、好ましくはヒト対象の体液が含まれる。体液は、どんな体液であってもよく、限定されるものではないが、血液、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液(CSF)、唾液、汗および尿が含まれる。好ましくは、前記の液体生体試料には、血液試料、血漿試料、または血清試料などの試料が含まれる。より好ましくは、前記生体試料は血液試料である。実際には、このような血液試料は患者からの完全に無害な採血によって得られる場合があり、したがってその対象が腫瘍を発生するリスクの非侵襲的な評価を可能にする。
【0040】
本明細書において使用される「生体試料」には、癌が固形癌である場合、被験者である患者の固形癌試料も含まれる。このような固形癌試料は、本発明のバイオマーカーのレベルのあらゆるタイプの測定を実施可能とする。いくつかの事例では、本発明による方法は、患者から固形癌試料を採取する予備的な工程をさらに含んでもよい。「固形癌試料」とは、腫瘍組織試料を意味する。癌患者でさえ、腫瘍部位である組織には依然として健康な非腫瘍組織が含まれる。したがって、「癌試料」は患者から採取される腫瘍組織に限定されるべきである。前記「癌試料」は生検試料であっても外科的切除療法から採取された試料であってもよい。
【0041】
生体試料は真核生物から取得されることが典型的であり、最も好ましくは哺乳類、または鳥類、爬虫類、または魚類から取得されることである。実際には、本明細書に記載される方法の対象となり得る「対象」は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ(pig)、ブタ(swine)、ヒツジおよびサルを含む哺乳類動物のいずれか、または鳥類、爬虫類、若しくは魚類であってよい。好ましくは、対象がヒトであり、ヒト対象が「患者」として知られていてもよい。
【0042】
本明細書では「生体試料を取得する」とは、本発明において記載される方法における使用のための生体試料を取得することを意味する。最も多くの場合、これは動物から細胞の試料を取り出すことによってこれを行うが、予め単離した細胞(例えば、別の者により、別のときに、および/または別の目的で単離された)を使用することにより、またはイン・ビボ(in vivo)で本発明の方法を実施することにより達成することもできる。治療または治療結果の履歴を有する記録保存的な組織が特に有用である。
【0043】
この試料は当業者に公知の方法に従って取得することができ、必要であれば調製することができる。特に、試料が空腹時の対象から採取すべきであることが当技術分野では周知である。
【0044】
プロガストリン濃度の決定は既知の容積の試料中のプロガストリン量の決定に関する。プロガストリン濃度は、参照試料に対して相対的に、例えば、比率またはパーセンテージとして表してもよい。その濃度はまた、前記濃度の決定に使用される方法に応じてシグナルの強度または局在として表してもよい。好ましくは、試料中のある化合物の濃度は、前記試料中の関連化合物の総濃度について正規化した後に表してもよく、例えば、あるタンパク質のレベルまたは濃度はその試料中のタンパク質の総濃度について正規化した後に表される。
【0045】
好ましくは、前記対象が前立腺癌を罹患するリスクは、前記生体試料で測定されたプロガストリンレベルを参照レベルと比較することにより決定される。
【0046】
本明細書において使用される場合、「参照レベル」という用語は、参照試料における検討中の前立腺癌マーカー、すなわちプロガストリンの発現レベルのことを意味する。本明細書において使用される場合、「参照試料」は、その疾患がないことが知られている対象、好ましくは2人以上の対象から、または、代わりに、一般集団から取得される試料を意味する。プロガストリンの適切な参照発現レベルは、数人の適切な対象において前記マーカーの発現レベルを測定することにより決定することができ、そのような参照レベルは特定の対象集団に対して調整することができる。参照値または参照レベルは、絶対値;相対値:上限または下限を有する値;値の範囲;平均値(average value);中央値;平均値(mean value)、または特定の対照値若しくは基線値に対する比較値とすることができる。参照値は、個々の試料値、例えば被験対象由来の試料から取得される値(初期のポイントを除く)などに基づくことができる。その参照値は、多数の試料、例えば暦上の年齢が合致する群の対象からなる集団に由来する試料、または検査を受ける試料を包含もしくは除外した試料のプールに基づくことができる。
【0047】
有利な点として、「参照レベル」は、癌に関して既知の特定の状態を有する対象由来の生体試料から取得される、あらかじめ決定されたプロガストリンレベルである。具体的な実施形態では、工程(b)で被検試料との比較に使用される参照レベルは、健康な対象由来の生体試料、または癌を罹患している対象由来の生体試料から取得されたものであってよい:参照発現プロファイルは健康な対象の生体試料のプールまたは癌を有する対象由来の試料のプールから取得可能であることが理解される。
【0048】
本発明の方法の具体的な実施形態では、参照試料はどのような癌もなく、好ましくはどのような病気もない対象から採取される。患者から採取される生体試料の性質に応じて、参照試料は前記生体試料と同じ性質の生体試料であると理解される。
【0049】
プロガストリンレベルは、本方法ではプロガストリン結合分子、好ましくはプロガストリンを認識する抗体と結合するプロガストリンの量を測定することにより決定される。
【0050】
本明細書では「プロガストリン結合分子」とは、プロガストリンに結合するが、ガストリン17(G17)、ガストリン34(G34)、グリシン伸長ガストリン17(G17-Gly)、またはグリシン伸長ガストリン34(G34-Gly)には結合しないあらゆる分子を意味する。本発明のプロガストリン結合分子は、あらゆるプロガストリン結合分子、例えば抗体分子または受容体分子などであってよい。好ましくは、プロガストリン結合分子は抗プロガストリン抗体またはその抗原結合断片である。
【0051】
具体的な実施形態によれば、本発明は、対象由来の生体試料中のプロガストリン濃度の決定を含んでなる前立腺癌のインビトロ診断方法に関し、前記対象は少なくとも1つの前立腺癌の臨床症状を示す。
【0052】
別の具体的な実施形態によれば、本発明は、癌および/または転移の少なくとも1つの臨床症状を示す対象由来の生体試料中のプロガストリン濃度の決定を含んでなる前立腺癌のインビトロ診断方法に関し、前記対象は少なくとも一つの癌および/または転移の臨床症状を示す。
【0053】
「結合する」、「結合」などの用語により、抗体またはその抗原結合断片が生理的条件下で比較的安定な抗原と複合体を形成することを意図している。2つの分子が結合するかどうかを判定するための方法は当技術分野において周知であり、例えば、平衡透析法、表面プラズモン共鳴法などが含まれる。具体的な実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片は、BSAまたはカゼインなどの非特異的分子への結合についての親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性でプロガストリンに結合する。より具体的な実施形態では、前記抗体またはその抗原結合断片はプロガストリンのみに結合する。
【0054】
具体的な実施形態では、本発明による前立腺癌の診断のための方法では、対象由来の生体試料を少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させ、前記分子のプロガストリンに対する親和性は上記のような方法で決定されると少なくとも100nM、少なくとも90nM、少なくとも80nM、少なくとも70nM、少なくとも60nM、少なくとも50nM、少なくとも40nM、少なくとも30nM、少なくとも20nM、少なくとも10nM、少なくとも5nM、少なくとも1nM、少なくとも100pM、少なくとも10pM、または少なくとも1pMである。
【0055】
具体的な実施形態では、本発明は前立腺癌の診断のための方法に関し、対象由来の生体試料中のプロガストリン濃度の検出を含んでなり、前記生体試料を抗hPG抗体、またはその抗原結合断片と接触させる。
【0056】
本明細書において使用される「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体が含まれるものとする。抗体(または「免疫グロブリン」)はジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含んでなる糖タンパク質からなる。各重鎖は重鎖可変領域(またはドメイン)(本明細書ではHCVRまたはVHと略記される)と重鎖定常領域を含んでなる。重鎖定常領域はCH1、CH2およびCH3の3つのドメインを含んでなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略記される)と軽鎖定常領域を含んでなる。軽鎖定常領域はCLの1つのドメインを含んでなる。VH領域とVL領域は「相補性決定領域」(CDR)または「超可変領域」と呼ばれる非常に変化しやすい領域にさらに細分化可能であり、それらの領域は抗原のエピトープとの結合に主な役割を担っており、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存度が高い領域がそれらの領域に散在する。抗体の軽鎖内と重鎖内のCDRを同定し、それらの配列を決定するための方法は当業者に周知である。誤解を避けるため、反対する内容が文中に示されない場合には、CDRという表現はIMGTによって定義されるような抗体の重鎖と軽鎖の超可変領域を意味し、IMGTユニークナンバリングによってフレームワーク領域と相補性決定領域について標準化された境界(CDR1-IMGT:27~38、CDR2)が設定される。
【0057】
IMGTユニークナンバリングは、任意の抗原受容体、鎖の型、または種における可変ドメインを比較するために規定されている[Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999) / Lefranc, M.-P., Pommie, C., Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003)]。IMGTユニークナンバリングでは、保存されているアミノ酸、例えばシステイン23(第1CYS)、トリプトファン41(保存TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(第2CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J-PHEまたはJ-TRP)は常に同じ位置を有する。IMGTユニークナンバリングによってフレームワーク領域(FR1-IMGT:位置1~26、FR2-IMGT:位置39~55、FR3-IMGT:位置66~104、およびFR4-IMGT:位置118~128)と相補性決定領域(CDR1-IMGT:位置27~38、CDR2-IMGT:位置56~65、およびCDR3-IMGT:位置105~117)の標準化された境界が設定される。ギャップは占有されていない位置を表すため、CDR-IMGTの長さ(例えば[8.8.13]のように括弧の間に示されており、ドットによって分けられている)が重要な情報になる。IMGTユニークナンバリングはIMGTコリエ・ド・ペルル(Colliers de Perles)と呼ばれる2D図形表現[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002) / Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]、およびIMGT/3D構造DB内の3D構造に使用される[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]。
【0058】
各VHおよび各VLは3つのCDRと4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んでいる。重鎖と軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または宿主因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。抗体は様々なアイソタイプ(すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM)のものであってよい。
【0059】
具体的な実施形態では、前記プロガストリン結合抗体、またはその抗原結合断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体およびIgM抗体からなる群より選択される。
【0060】
「ポリクローナル抗体」は、1つ以上の他の同一ではない抗体の中でまたはこのような抗体の存在下で産生された抗体である。一般的に、ポリクローナル抗体は同一でない抗体を産生するいくつかの他のBリンパ球の存在下でBリンパ球から産生される。通常、ポリクローナル抗体は免疫された動物から直接的に取得される。
【0061】
「モノクローナル抗体」という用語は、ほぼ同質の抗体集団であって、最小限の割合で見いだされる場合がある少数のあり得る天然の突然変異を除いて同一の抗体を含む集団から生じる抗体を指す。モノクローナル抗体はハイブリドーマなどの単一の細胞クローンの増殖から生じ、かつ、1つのクラスおよびサブクラスの重鎖と1つの型の軽鎖を特徴とする。
【0062】
抗体の「抗原結合断片」という表現は、前記抗体の標的(一般的に抗原とも呼ばれる)、概ね同じエピトープに結合する能力を保持し、かつ、前記抗体のアミノ酸配列のうちの少なくとも5連続アミノ酸残基、少なくとも10連続アミノ酸残基、少なくとも15連続アミノ酸残基、少なくとも20連続アミノ酸残基、少なくとも25連続アミノ酸残基、少なくとも40連続アミノ酸残基、少なくとも50連続アミノ酸残基、少なくとも60連続アミノ酸残基、少なくとも70連続アミノ酸残基、少なくとも80連続アミノ酸残基、少なくとも90連続アミノ酸残基、少なくとも100連続アミノ酸残基、少なくとも125連続アミノ酸残基、少なくとも150連続アミノ酸残基、少なくとも175連続アミノ酸残基、または少なくとも200連続アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含むあらゆるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のことを示すものとする。
【0063】
具体的な実施形態では、前記抗原結合断片はその抗原結合断片が由来する抗体の少なくとも1つのCDRを含んでなる。さらに好ましい実施形態では、前記抗原結合断片は、その抗原結合断片が由来する抗体の2つ、3つ、4つまたは5つのCDR、より好ましくは6つのCDRを含んでなる。
【0064】
前記「抗原結合断片」は、以下に限定されないが、Fv、scFv(scは単鎖)、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv-Fc断片もしくは二重特異性抗体、またはXTEN(伸長組換えポリペプチド)もしくはPASモチーフなどの変性ペプチドとの融合タンパク質、またはポリ(アルキレン)グリコールの付加、例えばポリ(エチレン)グリコールの付加(「PEG化」)などの化学修飾により半減期が増加することになるそれらのあらゆる断片(Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab’)2-PEGまたはFab’-PEGと呼ばれるPEG化断片)(「PEG」はポリ(エチレン)グリコール)、またはリポソーム内への組み込みにより半減期が増加することになるそれらのあらゆる断片からなる群において選択することができ、前記断片は本発明による抗体の特徴的なCDRのうちの少なくとも1つを有する。好ましくは、前記「抗原結合断片」はそれらの抗原結合断片が由来する抗体の重鎖または軽鎖の可変鎖の部分配列から構成されるかまたはそのような部分配列を含んでなり、前記部分配列はその部分配列が由来する抗体と同じ結合特異度を保持し、かつ、標的に対する十分な親和性、好ましくはその部分配列が由来する抗体の親和性の少なくとも1/100、より好ましくは少なくとも1/10に等しい親和性を保持する。
【0065】
別の具体的な実施形態では、本発明による前立腺癌の診断のための方法では、対象由来の生体試料をプロガストリンに結合する抗体と接触させ、前記抗体はプロガストリンのアミノ酸配列の全体または一部を含んでなるアミノ酸配列のペプチドを免疫原として使用して当業者に知られている免疫方法によって取得される。より具体的には、前記免疫原は、次の中から選択されるペプチドを含んでなる:
・アミノ酸配列が全長プロガストリンのアミノ酸配列、具体的には配列番号1の全長ヒトプロガストリンのアミノ酸配列を含んでなる、またはそのアミノ酸配列からなるペプチド、
・アミノ酸配列がプロガストリンのアミノ酸配列の一部、具体的には配列番号1の全長ヒトプロガストリンのアミノ酸配列の一部に対応するペプチド、
・アミノ酸配列がプロガストリンのN末端部分の一部または全体のアミノ酸配列に対応するペプチド、具体的にはアミノ酸配列SWKPRSQQPDAPLG(配列番号2)を含んでなる、またはそのアミノ酸配列からなるペプチド、および
・アミノ酸配列がプロガストリンのC末端部分の一部または全体のアミノ酸配列に対応するペプチド、具体的にはアミノ酸配列QGPWLEEEEEAYGWMDFGRRSAEDEN(配列番号3)を含んでなる、またはそのアミノ酸配列からなるペプチド、
・アミノ酸配列がプロガストリンのC末端部分の一部のアミノ酸配列に対応するペプチド、具体的にはプロガストリンのアミノ酸71~80に対応するアミノ酸配列FGRRSAEDEN(配列番号40)を含んでなるペプチド。
【0066】
当業者は、所望の通りに、そのような免疫化がポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを作製するために使用されることを理解する。これらのタイプの抗体の各々を取得する方法は、当技術分野において周知である。したがって、当業者は、あらゆる所与の抗原に対するポリクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体を作製する方法を容易に選択および実施する。
【0067】
ヒトプロガストリンのアミノ酸配列1~14(N末端)に対応する、アミノ酸配列「SWKPRSQQPDAPLG」を含んでなる免疫原を使用することで作製されたモノクローナル抗体の例には、限定されるものではないが、以下の表1~表4に記載されるようなmAb3、mAb4、mAb16、mAb19およびmAb20と呼ばれるモノクローナル抗体が含まれる。他のモノクローナルの記載があるが、これらの抗体が実際にプロガストリンに結合するかは不明である(国際公開第2006/032980号)。エピトープマッピングの実験結果は、mAb3、mAb4、mAb16、mAb19およびmAb20は前記hPGのN末端アミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合することを示す。配列番号2で表されるプロガストリンのN末端内のエピトープを特異的に認識するポリクローナル抗体が当技術分野において記載されている(例えば、国際公開第2011/083088号参照)。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
ヒトプロガストリンのアミノ酸配列55~80に対応するアミノ酸配列「QGPWLEEEEEAYGWMDFGRRSAEDEN」(プロガストリンのC末端部分)を含んでなる免疫原を使用して作製できるモノクローナル抗体の例には、限定されるものではないが、以下の表5および表6においてmAb8およびmAb13と呼ばれる抗体が含まれる。エピトープマッピングの実験結果は、mAb13は前記hPGのC末端アミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合することを示す。このようにして作製することができるモノクローナル抗体の別の例は、国際公開第2011/083088号に記載されるハイブリドーマ2H9F4B7によって産生される抗体Mab14である。ハイブリドーマ2H9F4B7は、ブダペスト条約に基づき2016年12月27日にフランス国75724パリ・セデックス15、ドクトル・ルー通り25-28のパスツール研究所CNCMにI-5158の照会番号で寄託された(国際公開第2017/114973号参照)。
【0073】
【0074】
【0075】
他の例には、配列番号40のアミノ酸配列を含んでなる免疫原を使用することで作製された抗hPGモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体が含まれる。
【0076】
より具体的な実施形態では、本発明による方法では前記生体試料を抗hPG抗体またはその抗原結合断片と接触させ、前記抗hPG抗体はN末端抗hPG抗体およびC末端抗hPG抗体から選択される。
【0077】
「N末端抗hPG抗体」および「C末端抗hPG抗体」という用語は、hPGのN末端部分に位置するアミノ酸を含んでなるエピトープに結合する抗体またはhPGのC末端部分に位置するアミノ酸を含んでなるエピトープに結合する抗体をそれぞれ意味する。好ましくは、「N末端抗hPG抗体」という用語は、配列番号2によって表される配列を有するプロガストリンのドメイン内に位置するエピトープに結合する抗体を意味する。別の好ましい実施形態では、「C末端抗hPG抗体」という用語は、配列番号3によって表される配列を有するプロガストリンのドメイン内に位置するエピトープに結合する抗体を意味する。
【0078】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原の領域を意味する。エピトープは構造的または機能的なものとして定義されてもよい。機能的エピトープは、一般的に構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接的に寄与するアミノ酸を有する。エピトープはまた、立体構造的であってもよい。ある実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子の化学的活性表面基である決定基を含むことがあり、ある実施形態では、特定の三次元構造特性、および/または特定の電荷特性を有することもある。抗体が結合するエピトープの決定は当業者に知られているいずれかのエピトープマッピング法によって実施される。エピトープは、タンパク質のアミノ酸配列内に連続的に配置されている異なるアミノ酸を含んでもよい。エピトープはまた、タンパク質のアミノ酸配列内に連続的に配置されていないアミノ酸を含んでもよい。
【0079】
具体的な実施形態では、前記抗体は下記からなる群から選択されるモノクローナル抗体である:
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号4、5および6の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列、または、それぞれ配列番号7、8および9の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号10、11および12の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列、または、それぞれ配列番号13、14および15の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号16、17および18の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列、または、それぞれ配列番号19、20および21の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号22、23および24の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26、および27のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号25、26および27の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号28、29および30の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号31、32および33の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、および
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号34、35および36の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号37、38および39の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的に少なくとも2つ、優先的に3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体。
【0080】
本発明の意味において、2つの核酸配列またはアミノ酸配列の間での「パーセンテージ同一性」または「%同一性」とは、最適な配列アラインメントの後に得られる、比較される2つの配列の間での同一なヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは純粋に統計学上の値であり、それらの2つの配列の間の差異はそれらの配列の長さに沿って無作為に分布する。2つの核酸配列またはアミノ酸配列の比較は、伝統的にはそれらの配列を最適なアラインメントとなるように整列させた後にそれらの配列を比較することで実施され、前記比較は区域毎にまたは「アラインメントウインドウ」を使用することで実行可能である。比較のための配列の最適アラインメントは、手作業による比較に加えて、当業者に知られている方法によって実施することができる。
【0081】
参照アミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を示すアミノ酸配列について、好ましい例には、参照配列、ある修飾、特に少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加もしくは置換、短縮または伸長を含有するアミノ酸配列が含まれる。1つ以上の連続アミノ酸または非連続アミノ酸の置換の場合、置換されるアミノ酸が「等価」のアミノ酸によって置き換えられる置換が好ましい。ここで、「等価アミノ酸」という表現は、構造的アミノ酸のうちの1つに対して置換される可能性があるものの、対応する抗体および以下に定義されるそれらの具体例の生物学的活性を修飾することがないあらゆるアミノ酸を示すものとする。
【0082】
等価アミノ酸は、置換対象のアミノ酸に対する構造的相同性に基づいて決定されるか、または生成される可能性がある様々な抗体と抗体との間での生物学的活性の比較検査の結果に基づいて決定することができる。
【0083】
より具体的な実施形態では、前記抗体は次の群から選択されるモノクローナル抗体である:
・配列番号41のアミノ酸配列の重鎖と配列番号42のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、
・配列番号43のアミノ酸配列の重鎖と配列番号44のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、
・配列番号45のアミノ酸配列の重鎖と配列番号46のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、
・配列番号47のアミノ酸配列の重鎖と配列番号48のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、
・配列番号49のアミノ酸配列の重鎖と配列番号50のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体、および
・配列番号51のアミノ酸配列の重鎖と配列番号52のアミノ酸配列の軽鎖を含んでなるモノクローナル抗体。
【0084】
別の具体的な実施形態では、本発明の方法で使用される抗体はヒト化抗体である。
【0085】
本明細書において使用される場合、「ヒト化抗体」という表現は、非ヒト起源の抗体に由来するCDR領域を含有し、抗体分子の他の部分が1つまたはいくつかのヒト抗体に由来する抗体を意味する。加えて、骨格セグメント残基(フレームワークでFRと呼ばれる)の中には当業者に知られている技術によって修飾されて結合親和性を保存することが可能なものもある(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986)。ヒト化の目的はヒトに導入するための異種抗体、例えばマウス抗体の免疫原性を低減し、その一方でその抗体の十分な抗原結合親和性および特異性を維持することである。
【0086】
本発明のヒト化抗体または同抗体の断片は当業者に知られている技法(例えば、Singer et al., J. Immun., 150:2844-2857, 1992といった文書に記載されている技法など)によって調製することができる。このようなヒト化抗体はインビトロでの診断またはインビボでの予防および/または治療を含む方法で使用されることが好ましい。その他のヒト化技法も当業者に知られている。実際に、抗体は、CDRグラフティング(欧州特許第0451261号、欧州特許第0682040号、欧州特許第0939127号、欧州特許第0566647号、米国特許第5530101号、米国特許第6180370号、米国特許第5585089号、米国特許第5693761号、米国特許第5639641号、米国特許第6054297号、米国特許第5886152号、および米国特許第5877293号)、ベニヤリングまたはリサーフェイシング(欧州特許第0592106号、欧州特許第0519596号、Padlan E. A., 1991 , Molecular Immunology 28(4/5): 489-498、Studnicka G. M. et al., 1994, Protein Engineering 7(6): 805-814、Roguska M.A. et al., 1994, Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A., 91:969-973)、およびチェーンシャフリング(米国特許第5565332号)を含む様々な技法を用いてヒト化され得る。ヒト抗体はファージディスプレイ法を含む当技術分野において公知の様々な方法によって作製することができる。米国特許第4444887号、同第4716111号、同第5545806号、および同第5814318号、並びに国際特許出願国際公開第98/46645号、同98/50433号、同98/24893号、同98/16654号、同96/34096号、同96/33735号、および同91/10741号も参照されたい。
【0087】
より具体的な実施形態では、前記抗体は、次の群から選択されるヒト化抗体:
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号4、5および6の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号7、8および9の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号10、11および12の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号13、14および15の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号16、17および18の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号19、20および21の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号22、23および24の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号25、26および27の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号28、29および30の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列またはそれぞれ配列番号31、32および33の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、および
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号34、35および36の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号37、38および39の配列との最適整列の後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるヒト化抗体
であって、前記抗体はまたヒト抗体に由来する軽鎖と重鎖の定常領域も含んでなるヒト化抗体である。
【0088】
別のより具体的な実施形態では、前記抗体は次の群から選択されるヒト化抗体:
・配列番号53のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号54のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;
・配列番号55のアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号56のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;
・配列番号57、58、および59の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号60、61、および62の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;
・配列番号63、64、および65の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号66、67、および68の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;
・配列番号69および71の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号70および72の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;および
・配列番号75および76の間で選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、配列番号77および78の間で選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;
であって、前記抗体はまたヒト抗体に由来する軽鎖と重鎖の定常領域も含んでなるヒト化抗体である。
【0089】
第1の実施形態では、本発明による方法は、生体試料をhPGのエピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含んでなり、前記エピトープはhPGのC末端部分に位置するエピトープまたはhPGのN末端部分に位置する。
【0090】
より具体的な実施形態では、本発明による方法は、生体試料をhPGのエピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含んでなり、前記エピトープには配列番号1であるhPGのアミノ酸配列のうちhPGのアミノ酸10~14、hPGのアミノ酸9~14、hPGのアミノ酸4~10、hPGのアミノ酸2~10およびhPGのアミノ酸2~14に対応するアミノ酸配列から選択されるプロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列が含まれる。
【0091】
より具体的な実施形態では、本発明による方法は、生体試料をhPGのエピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含んでなり、前記エピトープには配列番号1であるhPGのアミノ酸配列のうちhPGのアミノ酸71~74、hPGのアミノ酸69~73、hPGのアミノ酸71~80(配列番号40)、hPGのアミノ酸76~80およびhPGのアミノ酸67~74に対応するアミノ酸配列から選択されるプロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列が含まれる。
【0092】
第1の実施形態では、本発明による組成物は、プロガストリンのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むエピトープを認識する抗体を含んでなる。
【0093】
より具体的な実施形態では、本発明による組成物は、プロガストリンのエピトープを認識する抗体を含んでなり、前記エピトープはプロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は配列番号1であるhPGのアミノ酸配列のうち、hPGの残基10~14、hPGの残基9~14、hPGの残基4~10、hPGの残基2~10またはhPGの残基2~14に対応するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0094】
より具体的な実施形態では、本発明による組成物は、プロガストリンのエピトープを認識する抗体を含んでなり、前記エピトープはプロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は配列番号1であるhPGのアミノ酸配列のうち、hPGの残基71~74、hPGの残基69~73、hPGの残基71~80(配列番号40)、hPGの残基76~80またはhPGの残基67~74に対応するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0095】
本発明による前立腺癌のインビトロ診断のための方法の具体的な実施形態では、前記方法は、対象由来の生体試料をプロガストリンの第1部分に結合する第1分子およびプロガストリンの第2部分に結合する第2分子と接触させる工程を含んでなる。より具体的な実施形態では、前記プロガストリン結合分子が抗体である場合に対象由来の生体試料をプロガストリンの第1エピトープに結合する抗体およびプロガストリンの第2エピトープに結合する第2の抗体と接触させる。
【0096】
本発明の方法の具体的な実施形態では、前記方法は、対象由来の生体試料をプロガストリンの第1部分に結合する第1薬剤およびプロガストリンの第2部分に結合する第2薬剤と接触させる工程を含んでなる。より具体的な実施形態では、前記プロガストリン結合分子が抗体である場合に対象由来の生体試料をプロガストリンの第1エピトープに結合する抗体およびプロガストリンの第2エピトープに結合する第2の抗体と接触させる。
【0097】
好ましい実施形態によると、前記第1抗体は不溶性担体または部分可溶性担体に結合している。前記第1抗体のプロガストリンへの結合によって前記生体試料からプロガストリンが捕捉される。好ましくは、前記第1抗体はhPGのエピトープに結合する抗体であり、前記エピトープには上記のようなプロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列が含まれる。より好ましくは、前記第1抗体は国際公開第2011/083088号に記載されるハイブリドーマ2H9F4B7によって産生されるモノクローナル抗体Mab14である。ハイブリドーマ2H9F4B7は、ブダペスト条約に基づき2016年12月27日にフランス国75724パリ・セデックス15、ドクトル・ルー通り25-28のパスツール研究所CNCMにI-5158の照会番号で寄託された(国際公開第2017/114973号参照)。
【0098】
別の好ましい実施形態によると、前記第2抗体は以下に記載されるように検出可能部分で標識される。第2抗体のプロガストリンへの結合によって前記生体試料内に存在したプロガストリン分子の検出が可能になる。さらに、第2抗体のプロガストリンへの結合によって生体試料内に存在したプロガストリン分子の定量が可能になる。好ましくは、前記第2抗体はhPGのエピトープに結合する抗体であり、前記エピトープには上記のようなプロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列が含まれる。より好ましくは、前記N末端抗体は上記のようにポリクローナル抗体である。あるいは、プロガストリンのN末端内のエピトープに結合するモノクローナル抗体、例えば上記のN末端モノクローナル抗体等、特にそれぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体を使用することも可能である。
【0099】
特に好ましい実施形態では、第1抗体は不溶性担体または部分可溶性担体に結合しており、第2抗体は検出可能部分で標識されている。
【0100】
好ましい実施形態では、前立腺癌の診断のための本発明の方法は、ヒト対象由来の生体試料中のプロガストリンの検出を含んでなる。
【0101】
より好ましい実施形態では、前立腺癌の診断のための本発明の方法は、ヒト対象由来の生体試料中のプロガストリン濃度の決定を含んでなる。
【0102】
別の具体的な実施形態では、前立腺癌の診断のための本発明の方法は、ヒト対象由来の生体試料中のプロガストリン濃度の検出を含んでなり、前記生体試料は血液、血清および血漿から選択される。
【0103】
さらに好ましい実施形態では、本発明の方法は、前記対象由来の試料を上記の抗hPG抗体と試料を接触させることを含んでなり、試料中での前記抗hPG抗体の結合が前記対象における前立腺癌の存在を示す。
【0104】
より具体的な実施形態では、本発明の方法は、前記対象由来の試料を上記の抗hPG抗体と接触させることを含んでなり、前記血漿中で10pMを超えるプロガストリン濃度が前記対象における前立腺癌の存在を示す。
【0105】
より好ましくは、本発明の方法は、前記対象由来の試料を上記の抗hPG抗体と前記対象由来の試料を接触させることを含んでなり、前記試料中で10pM、20pM、30pMまたは40pMを超えるプロガストリン濃度が前記対象における前立腺癌の存在を示す。
【0106】
さらにより好ましくは、本発明の方法は、前記対象由来の試料を上記の抗hPG抗体と接触させることを含んでなり、前記試料中で10pM、好ましくは20pM、より好ましくは30pM、さらにより好ましくは40pM、一層より好ましくは50pMを超えるプロガストリン濃度が前記対象における転移した前立腺癌の存在を示す。
【0107】
本発明はまた、化学療法、生物学的療法、免疫療法または抗体療法などの患者の前立腺癌の治療の有効性をモニターするための方法に関し、前立腺癌の治療前の患者から得られる前立腺癌の体液または生検などの第1試料中のプロガストリン濃度を決定し、その後に治療後の同じ患者から得られる第2試料中のプロガストリン濃度を前記第1試料中のプロガストリン濃度と比較することによりモニターし、前記第1試料と比較して前記第2試料中でのプロガストリン濃度の低下はその治療が有効であったことを示す。
【0108】
具体的な実施形態では、本発明による方法は患者より得られる生体試料中のプロガストリン濃度をその試料中のプロガストリン濃度のあらかじめ決められた値と比較することを含んでなり、より具体的な実施形態では、前記のあらかじめ決められた値は、前立腺癌のない集団における平均値(mean)または平均値(average)の決定に基づいた平均値(mean)または平均値(average)、その患者に前立腺癌がないことが知られている時に得られたプロガストリン濃度の中から選択される。
【0109】
具体的な実施形態では、前立腺癌のインビトロ診断のための本発明による方法は、前記患者由来の試料中のプロガストリン濃度の決定と、前立腺癌の第2診断検査とを含んでなる。より具体的な実施形態では、前立腺癌のインビトロ診断のための本発明による方法は、前記患者由来の試料中のプロガストリン濃度の決定と、前立腺癌の第2診断検査とを含んでなり、前記第2診断検査は例えばPSA、カリクレイン、PCa抗原3(PCa3)、TMPRSS2-ERG、SChLAP1、3つのエクソーム遺伝子(ERG、PCA3、SPDEF)、尿中の2つの遺伝子からなる組合せ(HOXC6とDLX1)、並びに当業者に知られている他のあらゆる前立腺癌バイオマーカー(例えば、McGrath et al., Prostate Int. 2016, 4(4): 130-135参照)などの特定のバイオマーカーの検出を含んでなる。
【0110】
本発明の具体的な実施形態では、本発明による方法は、前立腺癌であるまたは前立腺癌の治療を受けている患者由来の試料中の経時的なプロガストリンレベルの決定を含んでなる。
【0111】
本発明は以下の通りである。
[1]対象における前立腺癌のインビトロ診断のための方法であって、
(a)前記対象由来の前記生体試料を少なくとも1種類のプロガストリン結合分子と接触させる工程、
(b)前記試料中のプロガストリンへの前記プロガストリン結合分子の結合を検出する工程を含み、
前記結合が前記対象における前立腺癌の存在の指標となる前記方法。
[2]工程(b)がプロガストリン濃度を決定することをさらに含み、前記生体試料における少なくとも10pMのプロガストリン濃度によって前記対象における前立腺癌の存在が示される、上記[1]に記載の方法。
[3](c)参照試料中のプロガストリン参照濃度を決定する工程、
(d)前記生体試料中のプロガストリン濃度を前記プロガストリン参照濃度と比較する工程、
(e)前立腺癌の存在を工程(d)の比較から判定する工程
をさらに含む、上記[2]に記載の方法。
[4]前記プロガストリン結合分子が抗体、またはその抗原結合断片である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記抗体またはその抗原結合断片がN末端抗プロガストリンモノクローナル抗体およびC末端抗プロガストリンモノクローナル抗体から選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]プロガストリンに結合する前記抗体が以下からなる群から選択されるモノクローナル抗体:
-それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、および
-それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうちの少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含む軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体
である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記生体試料をプロガストリンの第1部分に結合する第1分子とプロガストリンの第2部分に結合する第2分子に接触させる、上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記生体試料が血液、血清および血漿から選択される、上記[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記生体試料が血漿であり、少なくとも10pMのプロガストリン濃度によって前記対象における前立腺癌の存在が示される、上記[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前立腺癌のインビトロ診断のための上記[1]~[6]のいずれかに記載されるプロガストリン結合抗体またはその抗原結合断片の使用。
本発明の実施形態の特徴は、以下の実施例の詳細な説明からさらに明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1】
図1は、肺癌患者由来の40血漿試料と健常ドナー由来の119血漿試料においてELISAキットDECODE Lab(捕捉抗体:Mab14、検出抗体:抗hPGポリクローナル)を使用して測定したプロガストリン濃度を示す。
【実施例】
【0113】
実施例1:ポリクローナル抗体を使用する血漿中プロガストリン濃度の検出
血漿中プロガストリンレベルは2つの特異的抗プロガストリン抗体を使用してELISAにより定量した。捕捉抗体はプレートのウェルにコーティングし、一方で顕色抗体はプロガストリンを検出するために使用しシグナルの顕色を媒介する。
【0114】
本実施例では、定量は、反応により発光する基質を使用して捕捉抗体により保持された抗原に結合した抗体の発光量に比例する値を決定することができるELISA法に基づいている。
【0115】
材料
試薬と装置は表7に記載されている。
【0116】
【0117】
ポリクローナル抗体は、標準的なプロトコルによって、N末端プロガストリン(配列番号2)またはhPGのアミノ酸71~80に対応しかつ配列FGRRSAEDEN(配列番号40)を有するC末端プロガストリンでウサギを免疫することによって得た。
【0118】
本アッセイにおいて使用されるプロガストリンに対するポリクローナル抗体の結合特性は以下の通りである:G34-Gly、G34、G17-Gly、G17への結合がなく、全長プロガストリンに結合する。
【0119】
96ウェルプレートは、100mlのMilliQ水に1カプセルの内容物を溶解し50mMでpH9.6の炭酸-炭酸水素ナトリウム溶液を調製することでコーティングする。プロガストリンのC末端FGRRSAEDEN(配列番号40)を使用して得られたポリクローナル抗体に対応する捕捉抗体の溶液(3μg/ml)を炭酸緩衝液中で調製する。100マイクロリットルの抗体溶液を各ウェルに添加し、4℃で16時間(一晩)にわたってインキュベートする。その後、プレートは、抗体溶液の除去と、300μlの1×PBS/0.1%Tween-20による3回の洗浄、その後のウェル当たり200μlのブロッキング緩衝液(1×PBS/0.1%Tween-20/0.1%BSA)の添加によりブロッキングし、22℃で2時間インキュベートする。その後、ブロッキング緩衝液を除去し、ウェルは300μlの1×PBS/0.1%Tween-20で3回洗浄する。
【0120】
血漿の希釈は、以下のように実施する。血漿をそのままか、1/2、1/5および1/10に希釈して使用する。希釈液は1×PBS/0.1%Tween20/0.1%BSA中の純粋な血漿から調製する。
【0121】
対照試験、既知の濃度のプロガストリンの存在下でのELISAでは、プロガストリン希釈液を次のように調製する。ストック組換えPG(フランス、パリのパスツール研究所に由来する、大腸菌内で産生され、かつ、グルタチオンアガロース/タグの除去(Tev)/IMACカウンター精製/透析で親和性精製された全長ヒトプロガストリン)を3組0.45mg/ml(45μM)の濃度で調製する。プロガストリン濃度の範囲は以下のように調製した。
-溶液A:1/10プレ希釈液、2μlのストック+18μlの緩衝液
-溶液B:1/100プレ希釈液、10μlのA+90μlの緩衝液
-溶液C:1/1000プレ希釈液、10μlのB+90μlの緩衝液
-溶液D:500pM、5.55μlのC+494.5μlの希釈液
-溶液E:250pM、250μlのD+250μlの希釈液
-溶液F:100pM、200μlのE+300μlの希釈液
-溶液G:50pM、250μlのF+250μlの希釈液
-溶液H:25pM、200μlのG+200μlの希釈液
-溶液I:10pM、100μlのH+150μlの希釈液
【0122】
組換えPGの範囲は直線的であり、したがって使用する抗体次第で範囲を広げるか狭めることができる。
【0123】
被検試料の調製のため、各試料の約500μlを取っておき、結果の分析(と必要に応じて確認)まで保管する。この濃度範囲の各点および/または血漿の100μlをそのままか、1/2、1/5および1/10に希釈してアッセイし、プレート上で22℃で2時間インキュベートする。
【0124】
顕色試験では、プレートは300μlの1×PBS/0.1%Tween-20で3回洗浄する。ポリクローナルウサギ抗プロガストリン抗体の溶液は、前記抗体は免疫原としてプロガストリンのN末端部分を使用することにより得られ、0.5μg/mlでビオチンに結合させたものであるが、1×PBS/0.1%Tween-20/0.1%BSA中で希釈して調製する。100μlのこの溶液を各ウェルに添加する。インキュベートは22℃で1時間行う。ストレプトアビジンによる顕色は、検出抗体の除去、300μlの1×PBS/0.1%Tween-20による3回の洗浄、その後の1×PBS/0.1%Tween-20/0.1%BSA中での20ng/mlの濃度で希釈してストレプトアビジン-HRP溶液の調製、100μlのこの溶液を各ウェルに添加した後に22℃で1時間インキュベートすることで実施する。
【0125】
検出は、ストレプトアビジン-HRPの除去、300μlの1×PBS/0.1%Tween-20による3回の洗浄、その後にウェル当たり100μlの化学発光基質溶液を添加することからなる。基質溶液は、SuperSignal ELISA Femtoキットの2つの溶液を等量ずつ、20ml+20mlで混合して使用する30分前に調製し、室温で暗所に保管する。発光は暗所において室温で5分間インキュベートした後に読む。
【0126】
各条件において、試験を3回実施し、濃度範囲の結果はプロガストリン濃度に応じた発光の変化を示すグラフとして提示する。各血漿希釈液について、プロガストリンの濃度は対応する範囲(範囲1/10は1/10に希釈された試料である)の線形回帰直線の式を使用して決定される。
【0127】
方法と結果
プロガストリンの血漿中濃度の中央値は対照患者では0pMであり、一方で前立腺癌の患者(n=103)では有意なプロガストリンの血漿中濃度を検出することができる。したがって、前立腺癌の患者は健常対照の個人と比較して高い血漿中プロガストリンレベルを有する。
【0128】
実施例2:モノクローナル抗プロガストリン抗体を使用するプロガストリン濃度の検出
Nunc MaxiSORP 96ウェルプレートのウェルは、次のように第1プロガストリン特異的抗体でコーティングする。プロガストリンのカルボキシ末端領域に特異的な抗プロガストリンモノクローナル抗体は、MilliQ水中の50mM、pH9.6の炭酸/炭酸水素ナトリウム緩衝液中に3μg/mlの濃度まで希釈する。
【0129】
その後、総量100μlの抗体溶液を前記96ウェルプレートの各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートする。結合後、抗体溶液をウェルから除去し、100μlの洗浄緩衝液(1×PBS/0.1%Tween-20)でウェルを3回洗浄する。その後、総量100μlのブロッキング緩衝液(1×PBS/0.1%Tween-20/0.1%BSA)を各ウェルに添加し、22℃で2時間インキュベートする。その後、ブロッキング緩衝液を除去し、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄する。その後、患者から単離した血漿試料または血清試料の希釈シリーズ、典型的には1:1、1:2、1:5および1:10の希釈液を100μlの体積でウェルに添加し、その後22℃で2時間インキュベートする。血漿試料または血清試料を2回分析する。
【0130】
アッセイはまた2本の検量線を含む。第1の検量線は、ウェル当たり1ng、0.5ng、0.25ng、0.1ng、0.05ng、0.01ngおよび0ngの最終量まで組換えプロガストリンの希釈液を使用して作成する。陰性対照として機能する第2の検量線は、被検試料と同じ希釈度で、すなわち1:1、1:2、1:5および1:10でブロッキング緩衝液中において希釈したプロガストリン陰性ヒト血清から作成する。あるいは、血漿試料をアッセイする場合、陰性対照として機能する第2検量線は、被検試料と同じ希釈度で、すなわち1:1、1:2、1:5および1:10でブロッキング緩衝液中において希釈したプロガストリン陰性ヒト血漿から作成する。
【0131】
血漿試料または血清試料とのインキュベーションが完了した後、ウェルの内容物を除去し、100μl/ウェルの洗浄緩衝液でウェルを3回洗浄し、その後以下のようにプロガストリンに特異的な第2抗体を使用して第1抗体に結合したプロガストリンを検出する。
【0132】
プロガストリンのアミノ末端領域に特異的なビオチン結合抗プロガストリンモノクローナル抗体は、抗体に応じて0.1~10μl g/mlの濃度までブロッキング緩衝液中において希釈する。その後、総量100μlの抗体溶液を各ウェルに添加し、22℃で1時間インキュベートする。
【0133】
二次抗体の結合が完了した後、100μl/ウェルの洗浄緩衝液で前記プレートを3回洗浄し、その後各ウェルに100μlのストレプトアビジン-HRP溶液(ブロッキング緩衝液中25ng/ml)を添加し、22℃で1時間インキュベートする。ストレプトアビジン-HRP溶液とのインキュベーションが完了した後、100μl/ウェルの洗浄緩衝液で前記プレートを3回洗浄する。その後、Pierce SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity化学発光基質キットを使用して調製した100μlの化学発光基質を各ウェルに添加し、暗所において室温で5分間インキュベートし、その後ルミノメーター上で読み取る。
【0134】
ルミノメーターでの読み取りデータに基づき、線形回帰分析を用いて検量線データに対応する直線の式を得る。その後、この式を使用して様々な患者試料におけるプロガストリン濃度を算出する。
【0135】
前立腺癌の患者のプロガストリンの血漿中濃度の中央値を算出し、対照患者の血漿中のプロガストリンの血漿中濃度の中央値と比較する。これらのデータは前立腺癌の患者では健常対照の個人と比較して血漿中のプロガストリンレベルが上昇していることを示す。
【0136】
実施例3:ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の組合せを使用する血漿中プロガストリン濃度の検出
本実施例では、血漿中プロガストリンレベルを96ウェルプレート上にプレコーティングされたヒトプロガストリン(hPG)特異的抗体を使用してELISAにより定量する。標準物質および試料をウェルに添加し、存在するあらゆるhPGが固定化した捕捉抗体に結合する。ウェルを洗浄し、抗hPG検出抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートを添加して抗体-抗原-抗体「サンドイッチ」を作製する。2回目の洗浄後、TMB基質溶液を添加し、最初の試料に存在するhPGの量に正比例してその基質溶液が青色を生じる。停止溶液によって色が青色から黄色へ変化し、マイクロプレートリーダーにより450nmでウェルを読み取る。
【0137】
標準的なプロトコルによって、ポリクローナル抗体は、N末端プロガストリン(配列番号2)またはhPGのアミノ酸71~80に対応しかつ配列FGRRSAEDEN(配列番号40)を有するC末端プロガストリンでウサギを免疫することによって得る。
【0138】
標準的なプロトコルによって、モノクローナル抗体は、N末端プロガストリン(配列番号2)またはhPGのアミノ酸71~80に対応しかつ配列FGRRSAEDEN(配列番号40)を有するC末端プロガストリンに対する抗体を産生するハイブリドーマを使用することで得る。
【0139】
本アッセイにおいて使用されるプロガストリンに対するポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の結合特性は以下の通りである:G34-Gly、G34、G17-Gly、G17への結合はなく、全長プロガストリンには結合する。
【0140】
対照試験、既知の濃度のプロガストリンの存在下でのELISAでは、プロガストリン希釈液を次のように調製する。ストック組換えPG(フランス、パリのパスツール研究所に由来する、大腸菌内で作製され、かつ、グルタチオンアガロース/タグの除去(Tev)/IMACカウンター精製/透析で親和性精製された全長ヒトプロガストリン)を3組0.45mg/ml(45μM)の濃度で調製する。プロガストリン濃度範囲を以下のように調製する。
・溶液A:1/10プレ希釈液、2μlのストック+18μlの緩衝液
・溶液B:1/100プレ希釈液、10μlのA+90μlの緩衝液
・溶液C:1/1000プレ希釈液、10μlのB+90μlの緩衝液
・溶液D:500pM、5.55μlのC+494.5μlの希釈液
・溶液E:250pM、250μlのD+250μlの希釈液
・溶液F:100pM、200μlのE+300μlの希釈液
・溶液G:50pM、250μlのF+250μlの希釈液
・溶液H:25pM、200μlのG+200μlの希釈液
・溶液I:10pM、100μlのH+150μlの希釈液
【0141】
組換えPGの範囲は直線的であり、したがって使用する抗体次第で広げるか狭めることができる。
【0142】
方法と結果
プロガストリンレベルは、後に前立腺癌を発症したことがわかった対象由来の血漿試料中で決定する。国際公開第2011/083088号に記載されるハイブリドーマ2H9F4B7(ハイブリドーマ2H9F4B7はブダペスト条約に基づき2016年12月27日にフランス国75724パリ・セデックス15、ドクトル・ルー通り25-28のパスツール研究所CNCMにI-5158の照会番号で寄託されている)によって産生されるC末端モノクローナル抗体mAb14でプロガストリンを捕捉する。検出は、N末端に特異的な標識ポリクローナル抗体で実施する。
【0143】
対照は一般集団由来の血漿試料で構成される。
【0144】
このデータは、前立腺癌の患者が検出可能なレベルの血漿中プロガストリンを有し、一方で健常対照の個人は有しないことを示す。
【0145】
実施例4:DECODE Labキットを使用する血漿中プロガストリン濃度の検出
この検査によってELISAによる血漿EDTA中のhPGが測定される。
【0146】
このキットは96ウェルプレートにプレコートしたhPG特異的捕捉抗体を利用する。ウェルに添加された標準物質および試料に存在するhPGは、固定化した捕捉抗体に結合した。ウェルを洗浄し、hPG検出抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートを添加し、抗体-抗原-抗体複合体が生じた。2回目の洗浄後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液を添加し、最初の試料中に存在するhPGの量に正比例してその基質溶液が青色を生じた。停止溶液の色が青色から黄色へ変化し、マイクロプレートリーダーを使用して450nmでウェルを読み取った。
【0147】
方法と結果
製造業者の推奨に従ってELISAキットDECODE Lab(捕捉抗体:Mab14、検出抗体:抗hPGポリクローナル)を使用してプロガストリン濃度を測定するために肺癌患者由来の40血漿試料と健常ドナー由来の119血漿試料を使用した。
【0148】
簡単に説明すると
(1)1×コンジュゲートを除き前の節で指示されたように全ての試薬、対照、および試料を調製する。
(2)マイクロタイタープレートのフレームから超過したストリップを取り外し、それらをプレートパケットに戻し、そして2~8℃で保管する。
(3)試料と対照は二回検査されなくてはならない。96ウェル・ディープウェル ポリプロピレンマイクロプレートのウェルに複製試験区当たり65μlを添加して対照と試料のプレローディングを調製する。
(4)キットに含まれる96プレコートウェルプレートストリップの使用される全てのウェルに50μlの試料希釈緩衝液を添加する。
(5)マルチチャンネルピペット(8チャンネル)で前記プレローディング96ウェル・ディープウェル・ポリプロピレンマイクロプレートからキットに含まれる96プレコートウェルプレートストリップに50μlの対照と試料を移す。対照のレイアウトの例を以下に示す。負荷時間は10分を超えてはならない。
【0149】
【0150】
(6)プラスチックパラフィンでプレートをカバーし37℃(±2℃)で3時間±5分間インキュベートする。
(7)第10.2節に記載されているように1×複合体を調製する。
(8)インキュベーション工程の終わりに、プレートを逆さにすることでウェルから全ての液体を取り除く。ウェル当たり300μlの1×洗浄溶液を添加することにより完全な洗浄工程に進む。プレートを逆さにして1×洗浄溶液を取り除き、吸収紙上にマイクロタイタープレートのフレームを裏表逆さにして念入りに軽くたたいて乾燥させる。洗浄工程を6回繰り返す。洗浄工程の終わりにウェルからの液体の完全な除去を確実にする。ペーパータオル上に液体の兆候が残らない場合にすべての液体の除去が成功している。洗浄の手順が重要である。不十分な洗浄によって低い精度と誤って上昇した吸光度の読み取り値が生じる場合がある。
(9)100μlの1×複合体を各ウェルに添加する。
(10)プレートにプラスチックパラフィンでカバーし21℃(±5℃)で30分間±3分間インキュベートする。
(11)インキュベーション工程の終わりに、プレートを逆さにすることでウェルから全ての液体を取り除く。ウェル当たり300μlの1×洗浄溶液を添加することにより完全な洗浄工程に進む。プレートを逆さにして1×洗浄溶液を取り除き、吸収紙上にマイクロタイタープレートのフレームを裏表逆さにして念入りに軽くたたいて乾燥させる。洗浄工程を6回繰り返す。洗浄工程の終わりに、ウェルからの液体の完全な除去を確実にする。ペーパータオル上に液体の兆候が残らない場合にすべての液体の除去が成功している。洗浄の手順が重要である。不十分な洗浄によって低い精度と誤って上昇した吸光度の読み取り値が生じることになる。
(12)100μlの基質溶液を各ウェルに添加する。基質溶液を添加すると、陽性対照1と陽性対照2のウェルの中身が青色になる。
(13)暗所において21℃(±5℃)で15分間±2分間インキュベートする。
(14)ウェルの内容物を除去することなく、反応を停止させるために各ウェルに100μlの停止溶液を添加する。停止溶液を添加すると、陽性対照1と陽性対照2のウェルの内容物が黄色になる。
(15)450nmで光学密度(O.D.)を読み取り記録する。
【0151】
図1に示されるように、対照患者(n=119)のプロガストリンの血漿中濃度の中央値は0pMであり、一方で前立腺癌の患者(n=40)では有意なプロガストリンの血漿中濃度が検出された。したがって、前立腺癌の患者は健常対照の個人よりも高い血漿中プロガストリンレベルを有する。
【配列表】