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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】調理容器把持具
(51)【国際特許分類】
   A47J 45/07 20060101AFI20221012BHJP
   A47J 45/10 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A47J45/07 A
A47J45/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018138756
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020014610
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】599103122
【氏名又は名称】精宏機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】特許業務法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北脇 武
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真也
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2006-0108597(KR,A)
【文献】特開2011-206510(JP,A)
【文献】実開平05-070436(JP,U)
【文献】実開平05-068448(JP,U)
【文献】特開2001-037655(JP,A)
【文献】特表2011-513025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 45/07
A47J 45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の円弧を描いて線状に連なる外向凸部を有する内側当接体と、単一の円弧を描いて線状に連なる内向凸部を有する外側当接体と、前記内側当接体と前記外側当接体とを、前記外向凸部と前記内向凸部とが互いに近接し、両凸部の間に把持対象物である調理容器の側壁を挟んで把持する把持位置と、前記外向凸部と前記内向凸部とが互いに離間した待機位置との間で、相対的に移動可能に支持する支持手段とを有し、前記外向凸部が描く前記単一の円弧の中心角をA 、前記内向凸部が描く前記単一の円弧の中心角をA としたとき、A 、A が共に40度~110度の範囲内にある調理容器把持具。
【請求項2】
前記外向凸部及び/又は前記内向凸部が、断面形状において円弧状又は楕円弧状に突出している凸部である請求項1記載の調理容器把持具。
【請求項3】
前記外向凸部及び/又は前記内向凸部が、円弧を描いて線状に連なる連続した凸部である請求項1又は2記載の調理容器把持具。
【請求項4】
前記外向凸部及び/又は前記内向凸部が、円弧を描いて線状に連なる断続した凸部である請求項1又は2記載の調理容器把持具。
【請求項5】
前記外向凸部が描く前記単一の円弧の中心角をA、前記内向凸部が描く前記単一の円弧の中心角をAとしたとき、A≦Aの関係にある請求項1~のいずれかに記載の調理容器把持具。
【請求項6】
前記支持手段が、前記内側当接体と前記外側当接体とを、共通する回転軸の回りに相対的に回転可能に支持する手段である請求項1~のいずれかに記載の調理容器把持具。
【請求項7】
前記支持手段が、前記内側当接体と前記外側当接体とを、相対的に平行移動可能に支持する手段である請求項1~のいずれかに記載の調理容器把持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋などの調理容器を把持するための調理容器把持具に関し、特に、丼物の具材などを調理するときに用いる比較的底の浅い鍋を把持するのに適した調理容器把持具に関する。
【背景技術】
【0002】
カツ丼や親子丼などの丼物を商業的規模で効率よく製造する装置として、例えば特許文献1においては、丼加工機が提案されている。この丼加工機は、並列に並べた多数の鍋を一定方向に向かって搬送しながら、鍋の下側又は上側或いはその双方から加熱することによって丼物の具材を加熱調理する装置であり、前記搬送行程の適宜の位置で丼の種類に応じた具材や調味料等が鍋内に投入され、鍋がちょうど搬送行程の末端に到達したときに具材の加熱調理が完了するように構成されている。
【0003】
加熱調理が完了した具材は、次いで、丼内に盛られた米飯等の上に載せられて丼物となるが、通常、この鍋から米飯上への具材の載せ替え作業は、人力による手作業で行われている。すなわち、丼加工機に使用される鍋には、特許文献1の図8に番号26で示される鍋にも見られるとおり、作業者が持ち易いように取っ手が取り付けられており、作業者はこの取っ手を持って鍋を持ち上げて移動させ、米飯等が盛られている丼の上で、反転させるか、大きく傾斜させながら揺することにより、加熱調理済みの具材を鍋から米飯上に載せ替えている。
【0004】
しかしながら、鍋に取っ手があると、例えば、丼加工機に多数の鍋をセットするときにも、取っ手の分だけ余分なスペースを必要とする上に、取っ手が作業者が掴み易い方向に向くように鍋の向きを考えてセットしなければならないという不便さがあり、さらには、加熱調理後に鍋を洗浄する際や保管時にも、飛び出した取っ手の存在は大きな障害となっていた。
【0005】
もっとも、丼の具材調理用の鍋に限らなければ、従来から取っ手のない鍋は多数存在し、取っ手のない鍋用の鍋把持具も幾つか提案されている。例えば、特許文献2には、ペンチのように先端部が接近/離隔自在に支持された一対の部材の先端に挟持駒と挟持片とを備えた調理用把手が開示されている。しかし、この調理用把手は、前記挟持駒と挟持片とが特殊な形状をしており、容器上端部に外側に広がる横フランジと、前記横フランジから更に上方に立ち上がる縦フランジを備えた調理容器に特化したものであり、どのような形状の鍋でも把持できるというものではない。
【0006】
また、特許文献3の図1には、先行技術として、同じくペンチ型の調理容器把持具が開示されているが、この把持具は、基本的に、ペンチ先端に位置する一対の支持片の面と面との間に調理容器を把持するものであり、この把持具を用いて調理容器を安定的に把持するには、一対の支持片のうちの一方を調理容器の内側に深さ方向に一定距離以上挿入しなければならず、鍋の底が浅く被調理物が鍋の比較的上部にまで充填されている場合には、支持片の先端が鍋内の被調理物と接触し、衛生性に問題があるとともに、自身が汚損してしまうという不都合がある。さらに、この調理容器把持具は、主として、例えばオーブンレンジなどから調理容器を取り出す際などに調理容器を把持することを念頭においており、調理容器を反転させたり、大きく傾けて揺すったりすることは想定しておらず、安定性の面で十分にしっかりしたものであるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3725138号公報
【文献】特開2001-145578号公報
【文献】実用新案登録第3099535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の調理容器把持具の欠点を解消するために為されたもので、汎用性があり、かつ、把持部を調理容器内に挿入する深さが浅くて済み、しかも、調理容器を把持したまま調理容器を反転させたり、大きく傾けて揺すったりしても安定な把持状態を維持することができる調理容器把持具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意研究努力を重ねた結果、本発明者は、一対の把持部の面と面との間に調理容器を挟み込んで把持するという従来の発想を変え、一対の把持部を円弧を描いて線状に連なる凸部とし、その線状に連なる凸部と凸部の間に調理容器を挟み込んで調理容器を把持することによって、把持具先端を調理容器内部に挿入する深さを浅くすることができ、しかも、大きな角度での傾斜や反転にも十分に対応できる安定な把持具を実現できることを見出して本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、円弧を描いて線状に連なる外向凸部を有する内側当接体と、円弧を描いて線状に連なる内向凸部を有する外側当接体と、前記内側当接体と前記外側当接体とを、前記外向凸部と前記内向凸部とが互いに近接し、両凸部の間に把持対象物である調理容器の側壁を挟んで把持する把持位置と、前記外向凸部と前記内向凸部とが互いに離間した待機位置との間で、相対的に移動可能に支持する支持手段とを有する調理容器把持具を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0011】
上記のとおり、本発明の調理容器把持具は、内側当接体が有する円弧を描いて線状に連なる外向凸部と、外側当接体が有する同じく円弧を描いて線状に連なる内向凸部との間に調理容器の側壁を挟んで把持することを特徴としており、外向凸部と内向凸部とは、いずれも円弧を描いて線状に連なる凸部であるので、調理容器は、この上下一対の円弧を描いて線状に連なる凸部の間に挟まれて、把持されることになる。
【0012】
なお、本明細書において内側、外側とは、内側当接体及び外側当接体が有する外向凸部及び内向凸部が描く円弧を基準にして、相対的に内側か外側であることをいい、外向、内向とは、同じく、内側当接体及び外側当接体が有する外向凸部及び内向凸部が描く円弧を基準にして、円弧の外側を向いているか、内側を向いているかをいうものとする。また、内側当接体は、調理容器を把持する際、調理容器の側壁の内側に位置する当接体であり、外側当接体は外側に位置する当接体であるので、内側当接体の外向凸部は、調理容器を把持する際、調理容器の側壁の内周面と当接する凸部であり、内向凸部は外周面と当接する凸部であるともいえる。
【0013】
また、外向凸部又は内向凸部が円弧を描いて線状に連なるとは、外向凸部又は内向凸部の頂点をつないだ線が円弧になることを意味しており、外向凸部又は内向凸部の頂点が円弧の全長にわたって連続して線状に連なって円弧を描いていても良いし、円弧の全長中、1又は複数箇所において、円弧を描く凸部(又はその頂点)が存在せず、凸部の頂点が不連続に断続して線状に連なって円弧を描いていても良い。
【0014】
前記外向凸部及び内向凸部は、凸部であれば良く、凸部の断面形状には特段の制限はないけれども、断面形状において、円弧状又は楕円弧状に突出している凸部であるのが好ましい。因みに、外向凸部又は内向凸部の断面形状とは、外向凸部又は内向凸部が描く円弧のそれぞれの位置における円周方向と直交する平面で切断したときの断面形状をいうものとする。
【0015】
外向凸部及び内向凸部が、断面形状において、円弧状又は楕円弧状に突出している凸部である場合には、対象とする調理容器を挟み込む角度や挟み込む位置が多少変化した場合でも、突部の頂点若しくはその近傍部分が調理容器の壁面と当接することができるとともに、特に、対象とする調理容器が側壁上端部に外側に広がる鍔状部を有している場合には、内向凸部が調理容器の側壁外周面だけでなく、鍔状部の下面とも当接することができるので、対象とする調理容器をより安定的に把持することができるという利点が得られる。なお、外向凸部の断面形状と内向凸部の断面形状は同じであっても良いし、異なっていても良い。また、外向凸部及び内向凸部の断面形状は、円弧を描いて線状に連なる外向凸部又は内向凸部の全長において同じであっても良いし、異なる断面形状の凸部が混在していても良い。なお、円弧を描いて線状に連なる場合の円弧には楕円弧を含むものとする。
【0016】
本発明に係る調理容器把持具においては、外向凸部が描く円弧の中心角をA、内向凸部が描く円弧の中心角をAとしたとき、A、Aが共に30度~120度の範囲内にあるのが好ましく、40度~110度の範囲内にあるのがより好ましい。A又はAのいずれか一方、或いは双方が30度未満であっても、調理容器を把持できなくなるというわけではないが、A、Aが共に30度以上の場合には、外向凸部及び内向凸部が調理容器側壁の円周方向における広い範囲で調理容器側壁と当接することができるので、調理容器をより安定的に把持することができる。また、A又はAのいずれか一方、或いは双方が120度超であっても、調理容器の把持に特段支障があるというわけではないが、外向凸部を有する内側当接体及び内向凸部を有する外側当接体の長さが長くなり、調理容器把持具としての操作性に劣る恐れがあるので好ましくない。
【0017】
本発明に係る調理容器把持具においては、前記外向凸部が描く円弧の中心角をA、前記内向凸部が描く円弧の中心角をAとしたとき、A≦Aの関係にあるのが好ましく、A<Aの関係にあるのがより好ましい。A>Aの関係にあっても、調理容器を把持できなくなるというわけではないが、把持した調理容器を大きく傾けたり、反転させたりする場合には、調理容器の側壁と下側から当接する内向凸部が描く円弧の長さが、外向凸部が描く円弧の長さよりも長い方が、より安定して調理容器を操作することができるので好ましい。
【0018】
因みに、外向凸部が描く円弧の曲率半径をR、内向凸部が描く円弧の曲率半径をRとしたとき、R及びRは、把持対象とする調理容器の側壁の水平断面形状における曲率半径に合わせて適宜設定すれば良い。外向凸部が調理容器の側壁の内周面と当接し、内向凸部が調理容器の側壁の外周面と当接することになるので、RとRは、通常、R<Rの関係にある。なお、RとRの絶対的な大きさには特段の制限はなく、水平断面形状が円形ではなく四角形の調理容器を対象とする場合には、RとRは無限大であっても良い。
【0019】
本発明の調理容器把持具は、外向凸部を有する内側当接体と、内向凸部を有する外側当接体とを、外向凸部と内向凸部とが互いに近接し、両凸部の間に把持対象物である調理容器の側壁を挟んで把持する把持位置と、外向凸部と内向凸部とが互いに離間した待機位置との間で、相対的に移動可能に支持する支持手段を備えている。このような支持手段は、内側当接体と外側当接体とを、前記把持位置と待機位置との間で相対的に移動可能に支持することができれば良く、その構造や機構に特段の制限はない。
【0020】
ただし、本発明に係る調理容器把持具は、その好ましい一態様において、前記支持手段として、内側当接体と外側当接体とを、共通する回転軸の回りに相対的に回転可能に支持する手段を有している。支持手段が、このようなものである場合には、外向凸部を有する内側当接体を相対的に移動させて、調理容器の上部から調理容器の側壁内周面に当接させることができるので、調理容器が浅い鍋である場合にも、外向凸部が調理容器内に収容された被調理物と接触する恐れが少ないという利点が得られる。
【0021】
また、本発明に係る調理容器把持具は、その好ましい他の一態様において、前記支持手段として、内側当接体と外側当接体とを、相対的に平行移動可能に支持する手段を有している。支持手段が、このようなものである場合には、内側当接体を外側当接体に向かって相対的に平行移動させるだけで調理容器の側壁内周面と当接させることができるので、待機位置から把持位置への内側当接体又は外側当接体の移動がコンパクトになり、上下方向のスペースが限られた空間内に調理容器が位置している場合にも、その隙間から調理容器把持具を差し込んで、調理容器を把持することができるという利点が得られる。
【0022】
上述した支持手段は人力で作動させても良いし、適宜のアクチュエータに連結し、電動機、電磁石、又は流体圧等の適宜の動力源からの動力によって作動させるようにしても良い。前記支持手段を適宜の動力源からの動力によって作動させるときには、その作動を適宜の電気信号等によって制御することができるので、本発明に係る調理容器把持具を任意の調理装置又は調理システムの一要素として組込んで、本発明に係る調理容器把持具を有する調理装置又は調理システムとすることができる。
【0023】
本発明の調理容器把持具が対象とする調理容器は、円弧を描いて線状に連なる外向凸部と、円弧を描いて線状に連なる内向凸部との間に挟持される部分を有する調理容器であれば良く、その形状、構造、大きさには基本的に特段の制限はないが、例えば、上述した丼物の具材の加熱調理に用いられる比較的に底の浅い鍋を把持対象とする場合には、鍋の内壁と当接する内側当接体の外向凸部を鍋内に挿入する深さが浅くて良いので、特に好適である。また、把持対象となる調理容器は、側壁の上端部が垂直に立ち上がった形状の調理容器であっても良いが、側壁の上端に、外側に向かって滑らかに曲折した鍔状部を有している調理容器を対象とする場合には、外側当接体の内向凸部を、側壁外周面だけでなく、鍔状部の外周下面にも当接させて調理容器を把持することができるので、より安定した把持が可能となるので好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の調理容器把持具によれば、円弧を描いて線状に連なる外向凸部と同じく円弧を描いて線状に連なる内向凸部との間に調理容器を挟み込んで把持するので、調理容器を安定して把持することができ、調理容器を反転させたり、大きく傾斜させた状態で揺らしたりしても、把持が不安定になることがないという利点が得られる。また、本発明の調理容器把持具によれば、調理容器内への外向凸部の挿入深さは浅くて良いので、比較的底の浅い鍋を把持するに際しても、外向凸部や内側当接体が、鍋内の被調理物と接触する可能性が小さく、衛生的であるとともに、自身の汚れも少ないという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の調理容器把持具の一例を示す正面図である。
図2】本発明の調理容器把持具の一例を示す平面図である。
図3】本発明の調理容器把持具の一例を示す右側面図である。
図4図2の一部をX-X’線に沿って切断した部分拡大断面図である。
図5】内側当接体を図4のZ方向からみた図である。
図6】外側当接体を図4のZ方向からみた図である。
図7】内側当接体と外側当接体とが待機位置にある調理容器把持具の正面図である。
図8】内側当接体と外側当接体とが把持位置にある調理容器把持具の正面図である。
図9】内側当接体と外側当接体とが把持位置にある調理容器把持具の部分平面図である。
図10】外側当接体と内向凸部の他の一例を示す図である。
図11】外側当接体の断面形状を表す拡大図である。
図12】内側当接体と外向凸部及び外側当接体と内向凸部のさらに他の一例を示す図である。
図13】本発明の調理容器把持具の他の一例を示す部分切断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0027】
図1は、本発明に係る調理容器把持具の一例を示す正面図である。図1において、1は調理容器把持具、2は第一操作腕、2gは第一操作腕2の握り部、3は第二操作腕、3gは第二操作腕3の握り部である。4はロックナットであり、6は第一操作腕2の先端部に設けられた上顎、7は第二操作腕3の先端部に設けられた下顎、8は上顎6に取り付けられた内側当接体、9は下顎7に取り付けられた外側当接体、10は座金である。
【0028】
図2は、図1に示す調理容器把持具1の平面図であり、同じ部材には同じ符号を付してある。図2において、5はトラスネジであり、その軸部が第一操作腕2、座金10、及び第二操作腕3を貫通し、先端部にロックナット4が取り付けられている。これにより、第一操作腕2と第二操作腕3とは、トラスネジ5の軸を回転軸として相対的に回転自在に支持されている。なお、第一操作腕2と第二操作腕3とを回転軸の回りに相対的に回転自在に支持する手段は、トラスネジ5とロックナット4の組み合わせに限られず、2つの物体を相対的に回転可能に支持することができる他の適宜の手段であっても良いことは勿論である。
【0029】
図3は、図1に示す調理容器把持具1の右側面図であり、同じ部材には同じ符号を付してある。図3に見られるとおり、第一操作腕2の握り部2g、及び第二操作腕3の握り部3gは、それぞれ膨らみを有しており、握りやすい形状とされている。
【0030】
図1図3に示すとおり、内側当接体8と外側当接体9とは、いずれも、円弧状に折り曲げられた丸棒から構成されており、その長手方向のほぼ中央部で、内側当接体8は第一操作腕2の先端部に位置する上顎6に、外側当接体9は第二操作腕3の先端部に位置する下顎7に、それぞれ固定されている。
【0031】
図4は、調理容器把持具1の一部を図2のX-X’線に沿って切断した部分拡大断面図である。便宜上、上顎6の一部を破線で示してある。上述したとおり、本例の調理容器把持具1においては、内側当接体8と外側当接体9とは、共に円弧状に折り曲げられた丸棒から構成されているので、その断面形状は、図4に示されるとおり、いずれも円形である。
【0032】
図4に示す内側当接体8の円形の断面において黒矢印で示す部分は、外側に位置する外側当接体9に向かって突出した外向凸部αであり、外側当接体9の円形断面において白矢印で示す部分は、内側に位置する内側当接体8に向かって突出した内向凸部βである。本例において、内側当接体8及び外側当接体9の断面は共に円形であるので、外向凸部α及び内向凸部βは、共に、断面形状において円弧状に突出している凸部ということになる。
【0033】
なお、内側当接体8及び外側当接体9を構成する部材は丸棒に限られず、断面楕円形の棒材であっても良いし、断面円形の中空管や断面楕円形の楕円中空管であっても良い。さらには、長尺状の部材に断面が半円形又は半楕円形の棒材又は管が取り付けられたものから構成されていても良い。また、内側当接体8と外側当接体9とは、その全長において、一様な形状、構造でなくても良く、例えば、部分的に断面が円形の部材と楕円形の部材とが混在していても良い。さらには、内側当接体8と外側当接体9とは、必ずしも同じ形状、構造、材質である必要はなく、それぞれが異なる形状、構造、材質の部材で構成されていても良い。
【0034】
いずれにせよ、外向凸部α及び内向凸部βは、断面形状において突出する凸部であれば良く、望ましくは、断面形状において円弧状又は楕円弧状に突出する凸部であるのが好ましい。因みに、断面形状とは、後述するとおり、円弧を描いて線状に連なる外向凸部α及び内向凸部βを、それぞれが描く円弧の円周方向と直交する平面で切断したときの断面形状を意味している。
【0035】
図5は、内側当接体8を図4に示すZ方向からみた図であり、内側当接体8にとっては背面図に相当する。図5に示すとおり、内側当接体8が円弧状であるので、内側当接体8の各断面において外側当接体9に向かって突出した凸部に相当する外向凸部αも円弧を描きながら線状に連なっている。なお、L1~L5は、それぞれが外向凸部αと交わる位置において、外向凸部αが描く円弧の円周方向と直交する平面を表しており、この内、平面L3で内側当接体8を切断した断面が図4に示されている断面に相当するが、本例の場合、平面L1~L5での内側当接体8の断面形状はいずれも等しく、内側当接体8の全長にわたって、外向凸部αは断面形状において円弧状に突出する凸部として存在している。
【0036】
図6は、外側当接体9を図4に示すZ方向からみた図であり、外側当接体9にとっては平面図に相当する。図6に示すとおり、外側当接体9が円弧状であるので、外側当接体9の各断面において内側当接体8に向かって最も突出した凸部に相当する内向凸部βも円弧を描きながら線状に連なっている。なお、P1~P5は、それぞれが内向凸部βと交わる位置において、内向凸部βが描く円弧の円周方向と直交する平面を表しており、平面P3で外側当接体9を切断した断面が図4に示されている断面に相当するが、本例の場合、平面P1~P5での外側当接体9の断面形状はいずれも等しく、外側当接体9の全長にわたって、内向凸部βは断面形状において円弧状に突出する凸部として存在している。
【0037】
なお、図5において、Aは内向凸部βが描く円弧の中心角、Rは内向凸部βが描く円弧の曲率半径であり、図6において、Aは外向凸部αが描く円弧の中心角、Rは外向凸部αが描く円弧の曲率半径である。外向凸部αの中心角A及び内向凸部βの中心角Aは、対象とする調理容器の側壁の内周面又は外周面と当接して、調理容器を把持することができる限り、何度であっても良いが、A及びA共に30度~120度の範囲内にあるのが好ましく、40度~110度の範囲内にあるのがより好ましい。また、調理容器をより安定的に把持するという観点からは、A≦Aであるのが好ましく、A<Aであるのがより好ましい。
【0038】
因みに、外向凸部αが描く円弧の曲率半径R及び内向凸部βが描く円弧の曲率半径Rは、把持対象とする調理容器の径に合わせて適宜設定すれば良い。すなわち、本発明に係る調理容器把持具1は、通常、外向凸部αを調理容器側壁の内周面と、内向凸部βを調理容器側壁外周面と、それぞれ当接させて、両凸部αβの間に調理容器の側壁を挟みこんで把持するので、外向凸部αが描く円弧の曲率半径Rは、調理容器の側壁の厚み分だけ、内向凸部βが描く円弧の曲率半径Rよりも小さくするのが良い。
【0039】
次に、図7図9を用いて、本発明に係る調理容器把持具1の使用状態について説明する。
【0040】
図7は、第一操作椀2と第二操作椀3との間隔を広げ、内側当接体8と外側当接体9とを互いに離間した待機位置とした状態にある調理容器把持具1を示している。便宜上、内側当接体8と外側当接体9のみ、図2のX-X’線に沿って切断した断面図として示してある。Mは、把持対象とする調理容器である鍋であり、比較的底が浅く、側壁wの上端部に、外側に向かって広がる鍔状部tを有している。
【0041】
図8は、図7に示す状態から調理容器把持具1を鍋Mに接近させ、第一操作椀2と第二操作椀3とを相対的に接近する方向に回転させ、外側当接体9の内向凸部βを鍋Mの側壁wの外周面に当接させるとともに、内側当接体8の外向凸部αを鍋Mの側壁wの内周面に当接させて鍋Mを把持した状態を示している。この状態において、内側当接体8と外側当接体9とは、外向凸部αと内向凸部βとが互いに近接し、両凸部の間に鍋Mの側壁wを挟んで鍋Mを把持する把持位置にあることになる。なお、外側当接体9が有している内向凸部βは、断面形状において円弧状に突出する凸部であるので、内向凸部βの頂点が鍋Mの側壁wの外周面に当接するとともに、内向凸部βの他の一部は鍋Mの外側に向かって広がる鍔状部tの下面とも当接し、安定して鍋Mを把持することができる。
【0042】
図9は、図8に示す状態にある調理容器把持具1を上からみた平面図であり、便宜上、第一操作椀2及び第二操作椀3の一部は省略してある。図9に示すとおり、内側当接体8と外側当接体9とが把持位置にあるとき、円弧を描いて線状に連なる外向凸部α及び内向凸部βは、鍋Mの側壁wの円弧に沿って側壁wの内周面及び外周面とそれぞれ線状に当接している。
【0043】
このように、外向凸部α及び内向凸部βが、それぞれ円弧を描いて線状に連なる凸部であるので、内側当接体8と外側当接体9とは、それぞれが有する凸部を、鍋Mの深さ方向には浅いものの、円周方向には比較的広い範囲で鍋Mの側壁wを当接し、調理容器把持具1は鍋Mを安定して把持することができる。このため、例えば図9に矢印で示すように、鍋Mを把持したまま調理容器把持具1をその長手方向の回りに回転させて鍋Mを反転させたり、大きく傾斜させたり、大きく傾斜させたままで鍋Mを揺すったりすることも可能である。
【0044】
しかも、調理容器把持具1は、鍋Mを把持するにあたり、内側当接体8の円弧を描いて線状に連なる外向凸部αを、鍋Mの側壁wの内周面と極めて浅い位置で当接させるだけであるので、鍋M内に被調理物が収容されている場合であっても、内側当接体8やその外向凸部αが被調理物と接触する恐れは少なく、極めて衛生的である。
【0045】
図10は、本発明に係る調理容器把持具の他の一例を示す図であり、外側当接体9と、外側当接体9が有する内向凸部βの変形例を示している。図10に示すとおり、本例においては、内向凸部βは、中心角Aの円弧を描いて線状に連なってはいるが、円弧の全域にわたって連続してはおらず、不連続で、断続的である点が、先に説明した例とは異なっている。
【0046】
図11(A)は、図10における平面P3、P6、又はP9の位置で外側当接体9を切断した断面形状をやや拡大して示した図である。図11(A)にみられるとおり、内向凸部βは、それぞれの位置において、断面形状が円弧状に突出した凸部として存在している。図11(B)は、同様に、図10における平面P7又はP8の位置で外側当接体9を切断した断面形状をやや拡大して示した図である。図11(B)にみられるとおり、断面形状において突出した凸部は存在しない。なお、平面P6~P9は、先に示したP3と同様に、それぞれの位置において、外側当接体9又は内向凸部βの円周方向と直交する平面である。
【0047】
このように、内向凸部βは、それが描く円弧の全域にわたって連続して存在している必要はなく、断続的に存在していても良い。内向凸部βが、円弧を描きながら線状に断続的に連なっている場合には、内向凸部βが存在しない箇所において内向凸部βを構成する材料が存在しない分だけ外側当接体9を軽量化できるという利点が得られる。なお、図示はしないけれども、図10及び図11に基づいて外側当接体9と内向凸部βについて上に述べたことは、内側当接体8と、内側当接体8が有する外向凸部αについても当てはまる。
【0048】
図12は、本発明に係る調理容器把持具のさらに他の一例を示す図であり、内側当接体8とそれが有する外向凸部α、並びに外側当接体9とそれが有する内向凸部βの変形例を示している。図12に示すとおり、本例においては、内側当接体8が有する外向凸部αが描く円弧の曲率半径、並びに外側当接体9が有する内向凸部βが描く円弧の曲率半径が、共に無限大である点が、先に述べた例とは異なっている。すなわち、本例においては、内側当接体8が有する外向凸部α、及び外側当接体9が有する内向凸部βは、共に、曲率半径が無限大の円弧、換言すれば、線分を描いて線状に連なっている凸部である。
【0049】
内側当接体8が有する外向凸部α及び外側当接体9が有する内向凸部βが、共に線分を描いて線状に連なっている場合、両凸部αβの間に、水平断面形状が正方形又は長方形等である角形の調理容器の側壁を挟み込んで把持することができる。なお、図12において、左右外側に示してあるのは、それぞれ平面P3及びL3の位置で外側当接体9及び内側当接体8を切断した断面図であり、本例の場合、内側当接体8及び外側当接体9はその長手方向に一様な丸棒で構成されているので、どの位置で切断しても、その断面形状は平面P3又はL3の位置で切断したものと同じである。図に示されるとおり、内向側凸部β及び外向凸部αは、いずれも断面形状において円弧状に突出した凸部である。
【0050】
図13は、本発明に係る調理容器把持具のさらに他の一例を示す正面部分断面図である。図13において、1は調理容器把持具、6は上顎、7は下顎、8は上顎6に取り付けられた内側当接体、9は下顎7に取り付けられた外側当接体、αは、内側当接体8が有する円弧を描いて線状に連なる外向凸部、βは外側当接体9が有する円弧を描いて線状に連なる内向凸部であり、ここまでは先に述べた例と同じである。
【0051】
11は、調理容器把持具1の本体ケース、12は本体ケース11の下側を覆う下カバー、13は、本体ケース11と下カバー12との間に形成されている内部空間S内に水平方向にスライド自在に収容された摺動体である。本体ケース11の先端部には前述した上顎6が、そして、摺動体13の先端部には前述した下顎7が設けられている。
【0052】
14はレバーであり、レバー14は、その一端において、回転軸Vによって下カバー12に回動自在に連結されている。15、15は連接棒であり、連接棒15はケース本体11の空間Sの内側に設けられた回動支点16と、レバー14に設けられた回動支点16とを連結しており、連接棒15はレバー14に設けられた回動支点16と摺動体13の後端部に設けられた回動支点16とを連結している。Hはレバー14に設けられた回動支点16のスライド用の溝であり、回動支点16は、このスライド用の溝H内を図中双方向の矢印で示すようにスライド移動可能にレバー14に取り付けられている。17は、ケース本体11の空間Sの内側と摺動体13の後端部との間に配設されたバネであり、摺動体13に回動支点16の方向に引き戻すテンションを付与している。
【0053】
図13に示す位置において、外向凸部αと内向凸部βとは互いに離間しており、内側当接体8と外側当接体9とは、外向凸部αと内向凸部βとが互いに離間した待機位置にある。この状態で、調理容器把持具1を把持対象とする調理容器(図示せず)に接近させ、内側当接体8を調理容器の側壁内側に位置させた後、レバー14を本体ケース11の方向に図中矢印で示すように回転移動させると、レバー14に取り付けられている回動支点16も、連接棒15に押されて、スライド用の溝H内を回転軸Vの方向にスライドしながら本体ケース11の方向に回転移動し、その移動に伴い、連接棒15を介して摺動体13を前方、すなわち、内側当接体8の方向に押し出す。これにより、摺動体13に取り付けられている外側当接体9が有する内向凸部βは、上顎6に取り付けられている内側当接体8が有する外向凸部αと近接し、両凸部の間に把持対象である調理容器の側壁を挟んで調理容器を把持することになる。
【0054】
このように、本例における調理容器把持具1においては、内側当接体8と外側当接体9の把持位置と待機位置との間での相対的な移動は、外側当接体9の内側当接体8に対する相対的な平行移動によって行われており、内側当接体8と外側当接体9とを把持位置と待機位置との間で相対的に移動可能に支持する支持手段は、内側当接体と外側当接体とを相対的に平行移動可能に支持する手段である。内側当接体8と外側当接体9とを把持位置と待機位置との間で相対的に移動可能に支持する支持手段が両者を相対的に平行移動可能に支持する手段である場合には、待機位置から把持位置への移動に際し、内側当接体8及び/又は外側当接体9を大きく回転移動させる必要がないので、上下間のスペースが限られた場所などでも、対象とする調理容器を把持することができるので便利である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上述したとおり、本発明の調理容器把持具によれば、円弧を描いて線状に連なる外向凸部と内向凸部との間で調理容器の側壁を把持するので、両凸部が調理容器の側壁と接触する範囲が大きく、調理容器を安定して把持することができる。加えて、把持具の先端部分を調理容器内に深さ方向に深く差し入れることなく調理容器を把持することができるので、衛生面でも十分に満足のできる把持が可能となる。本発明の調理容器把持具の産業上の利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0056】
1 調理容器把持具
2 第一操作腕
3 第二操作腕
4 ロックナット
5 トラスネジ
6 上顎
7 下顎
8 内側当接体
9 外側当接体
10 座金
11 本体ケース
12 下カバー
13 摺動体
14 レバー
15、15 連接棒
16、16、16 回動支点
17 バネ
α 外向凸部
β 内向凸部
H スライド用の溝
M 鍋
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13