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  • 特許-歯科治療椅子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】歯科治療椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/06 20060101AFI20221012BHJP
   A61G 15/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61G 15/10 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61G15/06
A61G15/00 P
A61G15/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018177746
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020044299
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 清
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-226066(JP,A)
【文献】特開2004-073418(JP,A)
【文献】特開2011-010874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 15/00-15/18
A47C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起倒、昇降、傾動の各動作が可能な歯科治療椅子であって、
該歯科治療椅子の乗降時に患者に把持可能なサポートアームと、
該サポートアームに取り付けられ、該サポートアームへの接触を検知する接触センサと、
前記サポートアームへの接触が検知された際に、前記歯科治療椅子の各動作を禁止させる制御部と、
を備えることを特徴とする歯科治療椅子。
【請求項2】
前記接触センサが前記サポートアームの表面に取り付けられ、
前記接触センサから前記制御部までの信号線が前記サポートアームの内部に通されていることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療椅子。
【請求項3】
前記接触センサが発泡ウレタン製のグリップカバーで覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の歯科治療椅子。
【請求項4】
前記グリップカバーがオレンジ色に着色されていることを特徴とする請求項3に記載の歯科治療椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療椅子に関し、詳細には、起倒、昇降、傾動の各動作が可能な歯科治療椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体不自由者は、健常者に比べて、歯科治療椅子に乗り降りする際に不安定な姿勢になりやすい。例えば、特許文献1には、サポートアーム(手摺部材)を搭載した歯科治療椅子の構造が開示されている。サポートアームは患者の体重を支持可能に構成されており、サポートアームを握ることにより、患者は安定した姿勢で乗り降りできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-226066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯科治療椅子には、例えばバックレスト等に、起倒、昇降、傾動の各動作を開始させる操作スイッチを設けたものがある。しかしながら、患者の乗降中に操作スイッチを操作した場合には、歯科治療椅子の動作が開始するので、患者の姿勢が不安定になる。このため、乗降時における患者の安全性を高くすることが望まれる。
【0005】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、乗降時における患者の安全性を高めた歯科治療椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、起倒、昇降、傾動の各動作が可能な歯科治療椅子であって、該歯科治療椅子の乗降時に患者に把持可能なサポートアームと、該サポートアームに取り付けられ、該サポートアームへの接触を検知する接触センサと、前記サポートアームへの接触が検知された際に、前記歯科治療椅子の各動作を禁止させる制御部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記接触センサが前記サポートアームの表面に取り付けられ、前記接触センサから前記制御部までの信号線が前記サポートアームの内部に通されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記接触センサが発泡ウレタン製のグリップカバーで覆われていることを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記グリップカバーがオレンジ色に着色されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サポートアームへの接触が検知された場合には椅子の動作を禁止するので、患者の乗降中に、仮に椅子の操作スイッチが操作されたとしても、椅子は動作しない。よって、乗降時における患者の安全性が高い歯科治療椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の歯科治療椅子を搭載した歯科治療ユニットを説明する斜視図である。
図2】歯科治療ユニットの平面図である。
図3】サポートアームの構成図である。
図4】歯科治療椅子の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の歯科治療椅子について説明する。図1は、本発明の一実施形態の歯科治療椅子を搭載した歯科治療ユニットを説明する斜視図であり、図2は、歯科治療ユニットの平面図である。また、図3は、サポートアームの構成図であり、図4は、歯科治療椅子の機能ブロック図である。
【0013】
図1,2に示すように、歯科治療ユニットは歯科治療椅子1を有し、歯科治療椅子1の側方には、歯科用スピットン2が配置されている。なお、図示は省略するが、歯科治療ユニットは、歯科治療椅子1の周辺に、無影灯や、種々の歯科用インスツルメントがホルダを保持するワークテーブル、フットスイッチ等を備えている。
歯科治療椅子1は、昇降部4によって上下動や傾斜動が可能に構成されている。昇降部4は、基台3上に例えば回転可能に設置され、コンターシート7の下側に連結されている。
【0014】
コンターシート7の後方には、バックレスト6やヘッドレスト(安頭台)5が設けられている。バックレスト6の側方には、アームレスト8が設けられる。コンターシート7の前方には、レッグレスト9が設けられている。
レッグレスト9の前方には、ステップ10が設けられており、患者は、ステップ10の上に乗った後、コンターシート7に腰掛けることができる。このように、本実施形態の歯科治療椅子1は、前方からの乗り降りが容易である。
【0015】
コンターシート7は基台3に対して上下方向に昇降でき、例えば図4で後述するコンターシート用モータ53の駆動力で動作する。
バックレスト6はコンターシート7に対して起倒可能に構成され、バックレスト用モータ52の駆動力で動作する。なお、ヘッドレスト5は、例えば手動でバックレスト6に対して昇降できる。
【0016】
レッグレスト9はコンターシート7に対して傾動可能に構成されており、レッグレスト用モータ54の駆動力で動作する。
また、歯科治療椅子1は傾動動作が可能であり、チルト用モータ51の駆動力により、前方に5°程度傾斜でき(前チルトともいう)、ステップ10の位置を低くすることが可能である。一方、歯科治療椅子1は、円背の患者の姿勢に合うように、後方に傾斜することもできる(後チルトともいう)。この後チルトもチルト用モータ51の駆動力で動作可能である。
【0017】
なお、例えばバックレスト6の側面には、図4に示す操作スイッチ35が設けられている。操作スイッチ35の操作によって、上述したコンターシート7の昇降、バックレスト6の起倒、レッグレスト9の傾動等の各動作を実行可能である。
歯科治療椅子1は、乗降時に患者の例えば手で把持されるサポートアーム20を有する。サポートアーム20は、歯科治療椅子1の側方に設けられ、図2に示すように、歯科治療椅子1に固定される台座27に対して回動可能に構成されている。
【0018】
サポートアーム20は例えば中空丸棒で形成されたアーム本体21を有する。アーム本体21は、上下方向に延びた支柱部22と、支柱部22の一端から例えば略水平方向に延びた把持部23とからなる。把持部23の表面には、図3で説明する接触センサ33が設置され、把持部23の周囲には、例えばオレンジ色に着色された発泡ウレタン製のグリップカバー34が取り付けられている。グリップカバー34の直径は、患者が握りやすいように、例えば35mm程度に設定されている。
【0019】
このように、サポートアーム20に発泡ウレタン製のグリップカバー34を設ければ、患者が仮に濡れた手で握っても滑りにくくなる。また、グリップカバー34は容易に変形することから、これまでと同じ握力でもしっかり握ることができる。よって、患者を確実に支えるサポートアーム20を提供することができる。
また、オレンジ色に着色されたグリップカバー34は視認性が高い。このため、例えば白内障や緑内障等で視力の低下が予測される患者であっても、サポートアーム20に容易に気付くことができる。
【0020】
図3に示すように、接触センサ33は、例えば帯状に形成され、グリップカバー34の内側で、アーム本体21の把持部23の稜線部分に配置される。接触センサ33は、例えばテープスイッチであり、上下の電極がゴム等の樹脂で覆われてテープ状に形成されている。患者がグリップカバー34を握って押圧したときにオンになり、サポートアーム20への接触を検知できる。なお、図3では、帯状の接触センサ33の例を挙げて説明したが、線状で形成してもよい。
【0021】
接触センサ33に電気的に接続される信号線33aは、把持部23に形成された開口23aを介してアーム本体21の内部を通り、台座27から歯科治療椅子1内に向かい、図4に示す制御部40を搭載した基板に接続される。このように、接触センサ33の信号線33aをサポートアーム20の内部に配置すれば、乗降時に邪魔にならない。制御部40は、CPUやメモリ等からなり、メモリの例えばROMに格納されている各種プログラムやデータをRAMにロードし、各種プログラムを実行することにより、歯科治療ユニットの動作を制御することができる。
【0022】
図3に示すように、アーム本体21の支柱部22の下方には、フランジ部24が設けられている。フランジ部24の下面には、支柱部22と同心で中空形状の軸25が下方に向けて延びている。また、フランジ部24の下面には、軸25よりも外側に1本のピン26が下方に向けて延びている。ピン26は軸25よりも短く形成される。
【0023】
一方、台座27は例えば断面U字状に形成され、U字状の開口を下方に向けて昇降部4に固定される。台座27には、フランジ部24を支持する支持部28が設置されている。支持部28やフランジ部24は、台座27上で筒体32内に収納される。
支持部28は円筒状に形成され、上下で貫通した中央穴29を有する。中央穴29にはスリーブ31が嵌合される。このスリーブ31には、フランジ部24の下面に形成された軸25を挿入可能である。
【0024】
サポートアーム20は、グリップカバー34(把持部23)の先端がレッグレスト9に向けて延びたポジションA(図1,2に実線で示す)と、グリップカバー34が歯科治療椅子1の前後方向と平行に延びたポジションB(図1,2に破線で示す)と、グリップカバー34の先端がレッグレスト9から離れるように延びたポジションC(図1,2に2点鎖線で示す)を採ることができる。サポートアーム20は、ポジションAからポジションBを経由してポジションCまでの間で回動可能であり、各ポジションA、B、Cで固定(ロック)できる。
【0025】
具体的には、図3に示すように、支持部28には、中央穴29の周囲に、ピン26を挿入可能なピン穴30A,30B,30Cが形成されている。ピン穴30A,30B,30Cは、支持部28の上面から1段下がった位置で、支持部28の周方向に沿って設けられている。ピン穴30A,30B,30Cの各位置は、ポジションA,B,Cにそれぞれ対応している。
【0026】
患者がコンターシート7に腰掛けている場合にはポジションCを選択する。サポートアーム20を、ピン26がピン穴30A(あるいはピン穴30B)から抜ける高さまで持ち上げると、サポートアーム20は、軸25を回動中心として回動可能になる。そして、サポートアーム20をポジションCに回動し、サポートアーム20を下げてピン26をピン穴30Cに係合させると、サポートアーム20がポジションCの位置にロックされる。
【0027】
このように、サポートアーム20がポジションCでロックされる場合に、例えば操作スイッチ35を操作すると、制御部40は、操作スイッチ35の操作内容に応じた信号をモータ50に出力し、歯科治療椅子1の起倒、昇降、傾動の各動作が実行される。
【0028】
これに対し、高齢者や身体不自由者が乗降する場合や車椅子を利用する患者が乗降する場合にはポジションAあるいはポジションBを選択する。サポートアーム20を、ピン26がピン穴30Cから抜ける高さまで持ち上げた後、ポジションA(あるいはポジションB)に回動し、サポートアーム20を下げてピン26をピン穴30A(あるいはピン穴30B)に係合させると、サポートアーム20がポジションA(あるいはポジションB)の位置にロックされる。
【0029】
そして、グリップカバー34が握られてサポートアーム20への接触が検知され、制御部40が接触センサ33の検知結果を受け取ると、制御部40はモータ50の駆動禁止を決定する。これにより、仮に操作スイッチ35を操作しても、歯科治療椅子1の各動作、つまり、チルト用モータ51による歯科治療椅子1の傾動、バックレスト用モータ52によるバックレスト6の起倒、コンターシート用モータ53によるコンターシート7の昇降、レッグレスト用モータ54によるレッグレスト9の傾動等は実行されない。よって、患者が安全に乗り降りできる歯科治療椅子1を提供することができる。
【0030】
上記実施形態では、接触センサ33としてテープセンサを一例に挙げて説明したが、本発明の接触センサは、接触を検知可能な構造であればテープ状とは異なる形態であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…歯科治療椅子、2…歯科用スピットン、3…基台、4…昇降部、5…ヘッドレスト、6…バックレスト、7…コンターシート、8…アームレスト、9…レッグレスト、10…ステップ、20…サポートアーム、21…アーム本体、22…支柱部、23…把持部、23a…開口、24…フランジ部、25…軸、26…ピン、27…台座、28…支持部、29…中央穴、30A,30B,30C…ピン穴、31…スリーブ、32…筒体、33…接触センサ、33a…信号線、34…グリップカバー、35…操作スイッチ、40…制御部、50…モータ、51…チルト用モータ、52…バックレスト用モータ、53…コンターシート用モータ、54…レッグレスト用モータ。
図1
図2
図3
図4