(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
G01D5/347 110C
(21)【出願番号】P 2018211350
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】小金平 和雄
(72)【発明者】
【氏名】内藤 俊司
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-045063(JP,A)
【文献】特開2001-099683(JP,A)
【文献】特許第4763914(JP,B2)
【文献】特許第5011799(JP,B2)
【文献】特開平11-353976(JP,A)
【文献】特許第4467423(JP,B2)
【文献】特許第7085754(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第104535092(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転自在に軸支され且つ光反射面を設けた回転体と、
前記回転体の光反射面に向けて光を発射する発光素子と、
前記回転体の光反射面で反射された光を受光する受光素子と、
前記回転体の下側に配置され、上面に前記発光素子と前記受光素子を設置してなる回路基板と、
を有し、
且つ、前記回転体の光反射面に、前記発光素子から受けた光を反射する高反射部及び低反射部を形成し、これら高反射部と低反射部によって反射された光を前記受光素子が受光する受光量に応じて前記回転体の回転状態を検出する光学式エンコーダにおいて、
前記高反射部は、光反射面上に印刷によって形成され、
前記低反射部は、前記回転体を構成する合成樹脂自体の面を露出して形成され
、
前記回路基板の上面から軸部を立設し、
前記回転体の光反射面には凹部からなる軸受け部を設け、
前記回転体の軸受け部に、前記回路基板から立設する軸部を回転自在に挿入して当該軸部の上面を当該軸受け部の底面に当接させることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式エンコーダであって、
前記回路基板の下面側に位置する底部と、前記回路基板の周囲を囲むように立設する側壁部とを有することで、前記回路基板の上面側に収納部を形成したケースと、
前記ケースの収納部を覆うと共に、中央に貫通孔を有する軸受部を形成してなるカバーと、
を有し、
前記回転体は、下面を前記光反射面とした本体部と、当該本体部の上面から突出するつまみ部とを具備し、
前記回転体のつまみ部を、前記カバーの軸受部に挿入して回転自在に軸支することを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学式エンコーダであって、
前記高反射部を形成するために印刷するインクの明度は、前記回転体を構成する合成樹脂材料の明度よりも高いことを特徴とする光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて電気的出力信号を変化させる光学式エンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学式エンコーダに用いる回転体は、例えば特許文献1の
図1に示す回転体(11)のように、円板(13)の下面に形成されたスケール部(14)の下面に、反射部(15a)と非反射部(15b)とを交互に円周状に配列するように形成され、このスケール部(14)に照射した光の反射の状態を光センサ(16)で検出し、これによって、回転体(11)の回転の状態を検出するように構成されていた。
【0003】
そして、上記回転体(11)への反射部(15a)と非反射部(15b)の形成は、円板(13)の下面にアルミなどの金属材料を蒸着によってスケール部(14)を形成し、このスケール部(14)の下面をフォトエッチングすることによって行われていた。
【0004】
また従来、反射部と非反射部の形成方法は、上記方法に限られず、反射面となる回転体の下面に金属板を貼り付け、またはメッキによって金属層を形成し、その後これらをエッチングする方法などもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のように、回転体の反射面に反射部と非反射部を形成するために、反射面に金属層や金属板を形成したり、これをエッチングしたりする作業は煩雑であり、また製造設備も大掛かりになり、製造コストの増大を招いていた。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、製造が容易で、且つ正確な信号が得られる光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転軸を中心に回転自在に軸支され且つ光反射面を設けた回転体と、前記回転体の光反射面に向けて光を発射する発光素子と、前記回転体の光反射面で反射された光を受光する受光素子と、前記回転体の下側に配置され、上面に前記発光素子と前記受光素子を設置してなる回路基板と、を有し、且つ、前記回転体の光反射面に、前記発光素子から受けた光を反射する高反射部及び低反射部を形成し、これら高反射部と低反射部によって反射された光を前記受光素子が受光する受光量に応じて前記回転体の回転状態を検出する光学式エンコーダにおいて、前記高反射部は、光反射面上に印刷によって形成され、前記低反射部は、前記回転体を構成する合成樹脂自体の面を露出して形成され、前記回路基板の上面から軸部を立設し、前記回転体の光反射面には凹部からなる軸受け部を設け、前記回転体の軸受け部に、前記回路基板から立設する軸部を回転自在に挿入して当該軸部の上面を当該軸受け部の底面に当接させることを特徴としている。
本発明によれば、高反射部を印刷によって形成し、且つ、低反射部を回転体となる合成樹脂自体の露出面によって形成したので、回転体となる合成樹脂の材料(色彩)として反射しにくい材料(色彩)を用い、且つ高反射部を印刷によって形成するだけで、容易に高反射部と低反射部を形成することができる。また印刷に用いる設備は、蒸着やエッチングなどに用いる設備に比べて安価な設備とすることができる。これらのことから、製造コストの削減化を図ることができる。
また本発明は、上記特徴に加え、前記回路基板の下面側に位置する底部と、前記回路基板の周囲を囲むように立設する側壁部とを有することで、前記回路基板の上面側に収納部を形成したケースと、前記ケースの収納部を覆うと共に、中央に貫通孔を有する軸受部を形成してなるカバーと、を有し、前記回転体は、下面を前記光反射面とした本体部と、当該本体部の上面から突出するつまみ部とを具備し、前記回転体のつまみ部を、前記カバーの軸受部に挿入して回転自在に軸支することを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記高反射部を形成するために印刷するインクの明度は、前記回転体を構成する合成樹脂材料の明度よりも高いことを特徴としている。
本発明によれば、高反射部で反射する反射光の光量と、低反射部で反射する反射光の光量との差を大きくすることができ、確実(正確)なオンオフ信号を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学式エンコーダの製造を容易に行え、また反射部(高反射部と低反射部)による正確な信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図8】フォトセンサ33(又は35)と、高反射部615a及び低反射部615bの関係を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態に係る光学式エンコーダ(以下単に「エンコーダ」という)1の斜視図、
図2はエンコーダ1の分解斜視図、
図3は
図1のA-A概略断面図である。これらの図に示すように、エンコーダ1は、回路基板30を収納したケース10と、回転体60と、カバー80とを具備して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは回路基板30から回転体60を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0014】
図4は回路基板30を示す斜視図である。同図に示すように回路基板30は、硬質で略矩形状の絶縁基板31を有し、この絶縁基板31の中央に、貫通する位置決め孔313を形成し、その周囲を囲む位置に複数(この例では4つ)の貫通孔315を設けている。また絶縁基板31の上側の面(以下「上面」という)311の所定位置には、2つのフォトセンサ(受発光素子)33,35と、信号処理回路37とが設置され、また絶縁基板31の1辺近傍の上面には、複数本(この例では6本)の端子板39の一端が並列に当接されている。
【0015】
2つのフォトセンサ33,35は、同一形式の反射型フォトセンサ(フォトリフレクタ)であって、それぞれ発光素子331,351と受光素子333,353とを有している。発光素子331から発射された光を受光素子333が受光することで、出力電圧が発生する。同様に、発光素子351から発射された光を受光素子353が受光することで、出力電圧が発生する。
【0016】
信号処理回路37は、前記両フォトセンサ33,35からの出力信号を入力し、これらの入力信号(電気信号)を矩形状の電気信号(オンオフ信号)に変換し且つその電流値を増幅して出力する回路(波形整形回路)である。この信号処理回路は、IC回路や、その他の各種半導体回路などによって構成することができる。この例の場合、フォトセンサ33,35からの信号の入力波形の電圧値が所定値を超えるとスイッチがオンし、前記所定値を下回るとスイッチがオフし且つ電流値を増幅するスイッチング回路を設置している。このスイッチング回路は出力信号の電流増幅を行うので、より正確な出力信号を得ることができる。そして、信号処理回路37の出力信号は、回路基板30の1辺に並列に設けた図示しない接続パターンに引き出され、その上に当接する各端子板39に電気的に接続される。
【0017】
ケース10は、
図2,
図3に示すように、合成樹脂を上面が開放された箱形に成形して構成されている。ケース10の上面側には、矩形凹状の収納部11が形成されている。収納部11の底面には、このケース10内にインサート成形した前記回路基板30の上面が露出し、さらに回路基板30の上面中央には、ケース10の一部を構成する円形で柱状の軸部13が立設している。軸部13の中央には円形の貫通する孔14が形成されている。言い換えれば、ケース10は、略矩形状の底部15と、底部15の周囲を囲むように立設する側壁部17と、底部15の中央から回路基板30を貫通してその上面側に突出する軸部13とを具備して構成されており、ケース10の一つの側壁部17からは、6本の端子板39の先端側部分をその外方に向けて突出している。各端子板39の回路基板30に当接した部分は、ケース10を構成する合成樹脂によって固定され、回路基板30の各接続パターンとの接続状態を良好に保持している。また、側壁部17の2つの角部の上面からは小突起状の位置決め部19が突出している。
【0018】
ケース10を製造するには、ケース10の形状のキャビティーを有する金型内に、回路基板30と端子板39とを収納し、その際、各端子板39の一端側の部分を回路基板30の図示しない各接続パターンに当接しておく。そしてこの状態でキャビティー内に溶融した合成樹脂を注入し、合成樹脂が固化した後に金型を取り外せば、回路基板30と端子板39をインサート成形したケース10が完成する。このときケース10の軸部13と底部15は、回路基板30に設けた4つの貫通孔315を通して接続されている。また、孔14は、回路基板30の位置決め孔313を介してケース10の底部15の上下面に貫通するように形成されているが、その理由は以下のとおりである。即ち、上述のように、金型内に回路基板30などを収納した際、金型から突出する図示しない位置決め突起を回路基板30の位置決め孔313に挿入して回路基板30を位置決めするが、例えばそのときの金型内の回路基板30の向きを、
図3に示す水平な回路基板30を紙面に向かって90度回転して垂直になるような向きとしたような場合でも、この回路基板30を確実に位置決めできるように(位置決め突起から回路基板30が外れないように)、金型のキャビティー内を貫通する(即ち、孔14が貫通孔になる)位置決め突起を設けたのである。
【0019】
図5は回転体60を下側から見た斜視図、
図6は回転体60の側断面図(
図3の断面より回転方向に90度回転した位置での断面図)、
図7は回転体60の底面図である。これらの図及び
図1~
図3に示すように、回転体60は合成樹脂製(この例ではポリカーボネート樹脂)であり、円板状の本体部61と、本体部61の上面中央から突出する円形柱状のつまみ部(シャフト)63とを一体に成形して構成されている。この回転体60を構成する合成樹脂の色彩は、黒色、即ち光を反射しにくい色彩の合成樹脂で構成されている。本体部61の下面は、光反射面62となっている。本体部61の外径寸法は、前記ケース10の収納部11に収納される寸法に形成されている。本体部61下面の光反射面62の中央には、円形の凹部からなる軸受け部611が形成されている。光反射面62の軸受け部611の周囲を囲む位置には、円周状の反射部615が形成されている。
【0020】
反射部615は、複数組の高反射部615aと低反射部615bを、連続して円周状に等間隔に、エンドレスに交互に形成して構成されており、円周状の反射軌跡面(反射トラック面)となっている。低反射部615bは、黒色の合成樹脂自体の表面を露出することによって形成されている。高反射部615aは、光反射面62の表面に白色の塗料を印刷することによって形成されている。即ち、反射部615は、回転体60を構成する合成樹脂自体の色彩(黒色)によって形成される低反射部615bと、その表面に白色の印刷インク(塗料)を印刷することによって形成される高反射部615aと、を交互に形成することで構成されている。高反射部615aと低反射部615bは何れも扇形状であり、回転体60の回転軸L1(
図6,
図7参照)から放射状に伸びる線上に高反射部615aと低反射部615bの左右両側辺が位置するように形成されている。
【0021】
反射部615を形成するには、光反射面62上に、前記回転体60を構成する合成樹脂の明度よりも高い明度の印刷インク、具体的には上記白色の印刷インク(塗料)を、前記高反射部615aの形状に印刷(塗布)して着色することによって行われる。この例では、パッド印刷によって印刷が行われている。
【0022】
また、この回転体60によれば、この回転体60の下側を軸支するための突出する軸の代わりに軸受け部611となる凹部を設けたので、光反射面62から突出する部分が無くなる。このため、光反射面62への上記印刷作業を容易に行うことが可能になる。なお、回転体60の上側はつまみ部63によって軸支される。
【0023】
カバー80は、金属板製であって、略矩形状で前記ケース10の収納部11を覆う寸法形状のカバー本体部81と、カバー本体部81の対向する一対の両側辺に接続されて略直角に下方向に折り曲げられる側面部83,83とを有して構成されている。カバー本体部81の中央には、円筒状の軸受部811が形成され、その中央は貫通孔となっている。また、カバー本体部81の2つの角部近傍には、前記ケース10の位置決め部19を挿入する小孔からなる位置決め部813が形成されている。各側面部83の下辺の中央部分には、下方向に向かって突出する他部材取付部831が形成され、また他部材取付部831の両側には、下方向に向かって突出するケース取付部833が形成されている。
【0024】
次に、このエンコーダ1を組み立てるには、前記ケース10の収納部11内に回転体60の本体部61を収納する。このとき、ケース10の軸部13を、回転体60の軸受け部611に挿入し、これによって回転体60を回転自在に支持すると同時に、本体部61の下面と、2つのフォトセンサ33,35の発光素子331,351及び受光素子333,353との間の離間距離を所定の離間距離とする。つまりケース10の軸部13と回転体60の軸受け部611によって、回転体60の回転動作と、発光素子331,351及び受光素子333,353と反射部615間の離間距離の正確な設定と、を同時に行っている。
【0025】
次に、前記回転体60の本体部61を収納したケース10の上面にカバー80のカバー本体部81を被せてケース10の収納部11を塞ぐ。このとき同時に回転体60のつまみ部63をカバー80の軸受部811に挿入し、回転体60を回転自在に軸支する。そして、カバー80の各ケース取付部833を、ケース10の下面側に折り曲げれば、カバー80がケース10に固定され、
図1に示すエンコーダ1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0026】
以上のように構成されたエンコーダ1において、まず何れかの端子板39に電圧を印可して回路基板30上の電気回路を起動しておく。ここで
図8は、2つの内の一方のフォトセンサ33(又は35)と、高反射部615a及び低反射部615bの関係を示す概略説明図である。なお図示の都合上、回転体60の回転方向Eと、フォトセンサ33(又は35)に設けた一対の発光素子331(又は351)と受光素子333(又は353)の配列方向とを同一に示しているが、実際には両者の方向は直交している。同図に示すように、フォトセンサ33(又は35)の発光素子331(又は351)から回転体60下面の反射部615(615a,615b)に光が照射され、照射された部分が高反射部615aの場合は当該光の多くは反射されてフォトセンサ33(又は35)の受光素子333(又は353)に受光され、一方照射された部分が低反射部615bの場合は当該光の多くは反射されずフォトセンサ33(又は35)の受光素子333(又は353)に受光されない。従って、回転体60を回転すると、受光素子333(又は353)での受光状態に応じて、フォトセンサ33(又は35)からの出力信号が変化する。具体的には、高反射部615aと低反射部615bによる反射状態の相違に応じたオンオフ信号が得られる。
【0027】
さらに両フォトセンサ33,35は、回転体60の回転軸L1を中心にした同一円周上に位置し、且つ2つのフォトセンサ33,35にそれぞれ対向する位置にある高反射部615a(または低反射部615b)に対して円周方向に少しずれた位置となるように配置されている。このため、回転体60が回転した際に一方のフォトセンサ33が対向する位置にある高反射部615a(または低反射部615b)を通過するタイミングと、他方のフォトセンサ35が対向する位置にある高反射部615a(または低反射部615b)を通過するタイミングとが少しずれる。そしてこの出力信号は、端子板39に出力される。このようにして得られた出力信号を用いれば、位相がずれた一対のオンオフ波形を解析することで、回転体60の回転方向や回転速度などを測定することができる。
【0028】
なお、上記各実施形態では、何れも発光素子と受光素子を一体化したフォトセンサを用いた例を説明したが、発光素子と受光素子は別々の素子として構成し、これらをそれぞれ設置しても良い。
【0029】
以上説明したように、エンコーダ1は、回転軸L1を中心に回転自在に軸支され且つ光反射面62を設けた回転体60と、回転体60の光反射面62に向けて光を発射する発光素子331,351と、回転体60の光反射面62で反射された光を受光する受光素子333,353と、を有し、且つ、回転体60の光反射面62に、発光素子331,351から受けた光を反射する高反射部615a及び低反射部615bを形成し、これら高反射部615aと低反射部615bによって反射された光を受光素子333,353が受光する受光量に応じて回転体60の回転状態を検出するエンコーダ1において、前記高反射部615aは、光反射面62上に印刷によって形成され、前記低反射部615bは、回転体60を構成する合成樹脂自体の面を露出して形成されている。このように、高反射部615aを印刷によって形成し、且つ、低反射部615bを回転体60となる合成樹脂自体の露出面によって形成したので、回転体60となる合成樹脂の材料(色彩)として反射しにくい材料(色彩)を用い、且つ高反射部615aを印刷によって形成するだけで、容易に高反射部615aと低反射部615bを形成することができる。また印刷に用いる設備は、蒸着やエッチングなどに用いる設備に比べて安価な設備とすることができる。これらのことから、製造コストの削減化を図ることができる。
【0030】
さらに言えば、エンコーダ1は、高反射部615aを形成するために印刷するインクの明度を、回転体60を構成する合成樹脂材料の明度よりも高くしたので、高反射部615aで反射する反射光の光量と、低反射部615bで反射する反射光の光量との差を大きくすることができ、確実(正確)なオンオフ信号を得ることができる。
【0031】
特にこのエンコーダ1においては、回路基板30の上面中央から突出するケース10の軸部13が、回転体60の下面中央に設けた凹状の軸受け部611に回動自在に軸支されるが、両者の接触面積は小さいので、摩耗の少ない構造となっている。同時にこの軸部13の上面は軸受け部611の底面に当接することで回転体60を上下方向に支えるので、回路基板30の上面と回転体60の下面の間の隙間寸法を正確に所望の寸法とすることができる。これによって、フォトセンサ(発光素子)33,35の発光部331,351から発射された光を反射部615で反射してフォトセンサ(受光素子)33,35の受光部333,353に受光する機構を、精度よく構成することができ、精度のよい出力信号を得ることができる。
【0032】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記例では、印刷による高反射部を白色、回転体自体の合成樹脂の露出面による低反射部を黒色で構成したが、要は、高反射部の明度が低反射部の明度よりも高いものであれば、どのような色彩であってもよい。例えば、高反射部の色彩として銀色や黄色などを用い、低反射部の色彩として濃い灰色や濃い青色や濃い緑色などを用いてもよい。
【0033】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1 エンコーダ(光学式エンコーダ)
60 回転体
L1 回転軸
62 光反射面
611 軸受け部
615 反射部
615a 高反射部
615b 低反射部
30 回路基板
33,35 フォトセンサ
331,351 発光素子
333,353 受光素子