(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20221012BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A01G7/00 603
A01G27/00 504B
(21)【出願番号】P 2018213352
(22)【出願日】2018-11-13
(62)【分割の表示】P 2018516076の分割
【原出願日】2017-09-08
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2016175970
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016226371
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516271068
【氏名又は名称】株式会社プラントライフシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】松岡 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】原 正憲
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】三宅 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慶一
(72)【発明者】
【氏名】大澤 直也
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101117(JP,A)
【文献】特開平06-319393(JP,A)
【文献】特開2016-049102(JP,A)
【文献】特開2015-188328(JP,A)
【文献】特開2013-005725(JP,A)
【文献】特開2012-187074(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0041703(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第104521699(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 27/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土又は培地に水及び肥料を供給して植物生育を行う際に適用される情報処理装置であって、
計測または観察された植物の状況、および、当該計測または観察に係る時刻または時間を入力する第1の入力部と、
計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種を入力する第2の入力部と、
計測または観察された土又は培地中の水分量を入力する第3の入力部と、
前記第1~第3の入力部により入力された、前記植物の状況および前記計測または観察に係る時刻または時間と、日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種と、土又は培地中の水分量とを含む情報に基づき、所定時間経過後の植物の生育段階を予測するための予測部と、
前記所定時間経過後の予測した植物の生育段階において、土又は培地中の水分が所定の量となるような水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出する算出部
とを含み、
前記生育段階には生育良否は含まれず、
前記植物は、トマトであり、
前記生育段階は、トマトの花房の段階である情報処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記培地は、固形培地または非固形培地である情報処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記土又は培地は、サンゴ砂礫を含む情報処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記第1の入力部に入力される前記植物の状況は、生育状況、植物の葉の状況および病気の有無の群から選択される少なくとも1種である情報処理装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記水を含む液は、肥料を含む情報処理装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記土又は培地中の水分量は、水分計測部により計測されたデータである情報処理装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記第3の入力部には、前記土又は培地中の湿度および前記土又は培地中の温度の少なくとも一方が入力される情報処理装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記土又は培地に含まれる水又は肥料の量が閾値以下又は閾値未満であるかどうかを判断基準として、前記水を含む液体を前記土又は培地に供給するかどうか決定する決定部を含む情報処理装置。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記水を含む液体の前記土又は培地に対する供給は、供給装置により行われ、
前記算出部において算出された水を含む液体の供給量を前記供給装置に対して指示
する指示部を含む情報処理装置。
【請求項10】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記算出部は、所定時間経過時における前記水および肥料の少なくとも一方の土又は培地中の含有量を予測し、その含有量を考慮して水を含む液体および肥料の少なくとも一方の供給量および供給タイミングを算出する情報処理装置。
【請求項11】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記予測部および前記算出部の少なくとも一方は、補正可能な関数に基づき情報処理がなされ、
水を含む液体を供給した後の植物の状況が第1の入力部に入力された場合に、その入力された植物の状況を含む第1~第3の入力部により入力されたデータに基づき、前記予測部および前記算出部の少なくとも一方の関数を補正する補正部を含む情報処理装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記補正部が前記関数を補正する際に、その入力された植物の状況を含む第1~第3の入力部により入力されたデータの考慮期間は、最新の入力時点を起算として可変可能であり、
前記補正部は、前記関数の補正の際に、当該考慮期間より前のデータは考慮しない情報処理装置。
【請求項13】
土又は培地に水及び肥料を供給して植物生育を行う際に適用される情報処理方法であって、
第1の入力部が、計測または観察された植物の状況、および、当該計測または観察に係る時刻または時間を入力するステップと、
第2の入力部が、計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種を入力するステップと、
第3の入力部が、計測または観察された土又は培地中の水分量を入力するステップと、
予測部が、前記第1~第3の入力部により入力された、前記植物の状況および前記計測または観察に係る時刻または時間と、日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種と、土又は培地中の水分量とを含む情報に基づき、所定時間経過後の植物の生育段階を予測するためのステップと、
算出部が、前記所定時間経過後の予測した植物の生育段階において、土又は培地中の水分が所定の量となるような水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出するステップとを含
み、
前記生育段階には生育良否は含まれず、
前記植物は、トマトであり、
前記生育段階は、トマトの花房の段階である情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータに、
土又は培地に水及び肥料を供給して植物生育を行う際に適用される情報処理方法を実行させるためのプログラムであって、
第1の入力部が、計測または観察された植物の状況、および、当該計測または観察に係る時刻または時間を入力するステップと、
第2の入力部が、計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種を入力するステップと、
第3の入力部が、計測または観察された土又は培地中の水分量を入力するステップと、
予測部が、前記第1~第3の入力部により入力された、前記植物の状況および前記計測または観察に係る時刻または時間と、日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種と、土又は培地中の水分量とを含む情報に基づき、所定時間経過後の植物の生育段階を予測するためのステップと、
算出部が、前記所定時間経過後の予測した植物の生育段階において、土又は培地中の水分が所定の量となるような水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出するステップとを実行させるためのプログラム
であり、
前記生育段階には生育良否は含まれず、
前記植物は、トマトであり、
前記生育段階は、トマトの花房の段階であるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培支援に係る情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
栽培支援装置として、成長データを格納部に格納しておき、栽培支援する作物の計測値を取得して当該中間時点の中間目標値と比較し、両者の相違に基づいて指導内容格納手段から指導内容を選択して出力する指導内容を選択する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、適切に植物の栽培支援を行うことができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.情報処理装置
本発明の情報処理装置は、
土又は培地に水及び肥料を供給して植物生育を行う際に適用される情報処理装置であって、
計測または観察された植物の状況、および、当該計測または観察に係る時刻または時間を入力する第1の入力部と、
計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種を入力する第2の入力部と、
計測または観察された土又は培地中の水分量を入力する第3の入力部と、
前記第1~第3の入力部により入力された、前記植物の状況および前記計測または観察に係る時刻または時間と、日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種と、土又は培地中の水分量とを含む情報に基づき、所定時間経過後の植物の生育段階を予測するための予測部と、
前記所定時間経過後の予測した植物の生育段階において、土又は培地中の水分が所定の量となるような水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出する算出部とを含む。
【0006】
本発明は、現在の植物の状況から過去のデータで近似した情報を抽出し、次にどのような行動を行うかを示すものではない。つまり、将来の生育段階を予測し、その将来の生育段階に沿った土又は培地に水を含む液体を供給する量及び供給タイミングを提示するものである。本願発明者らは、将来の生育段階を予測し、その生育段階に沿った水を含む液体を供給する量及び供給タイミングを提示することで、熟練作業者でなくとも、収量を伸ばすことができることを見出した。
【0007】
本発明において、前記培地は、固形培地または非固形培地であることができる。
【0008】
本発明において、前記土又は培地は、サンゴ砂礫を含むことができる。これによれば、培地自体の殺菌効果を高めることができる。
【0009】
本発明において、前記第1の入力部に入力される前記植物の状況は、生育状況、植物の葉の状況および病気の有無の群から選択される少なくとも1種であることができる。本発明は、二酸化炭素濃度を計測しなくても、所定の効果を発揮できる意義がある。
【0010】
本発明において、前記水を含む液は、肥料を含むことができる。水のみならず、肥料も含むことで作業効率を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記土又は培地中の水分量は、水分計測部により計測されたデータであることができる。
【0012】
本発明において、前記第3の入力部には、前記土又は培地中の湿度および前記土又は培地中の温度の少なくとも一方が入力されることができる。これによれば、より正確な将来予測を行うことができる。
【0013】
本発明において、前記土又は培地に含まれる水又は肥料の量が閾値以下又は閾値未満であるかどうかを判断基準として、前記水を含む液体を前記土又は培地に供給するかどうか決定する決定部を含むことができる。これによれば、土又は培地に含まれる水の量が過剰になったり、又は、土又は培地に含まれる水の量が欠乏するのを抑えることができる。土又は培地に含まれる水又は肥料の量の閾値は、適切と考えられる量の上限値であっても、下限値であってもよい。土又は培地に含まれる水又は肥料の量の閾値が、水を含む液体の供給すべき範囲の下限値であるときに、閾値以下又は閾値未満の場合に水を含む液を供給する場合には、土又は培地に含まれる水の量が欠乏するのを抑えることができる。土又は培地に含まれる水又は肥料の量の閾値が、水を含む液体の供給すべき範囲の上限値であるときに、閾値以下又は閾値未満の場合に水を含む液を供給する場合には、土又は培地に含まれる水の量が過剰になるのを抑えることができる。
【0014】
本発明において、前記水を含む液体の前記土又は培地に対する供給は、供給装置により行われ、前記算出部において算出された水を含む液体の供給量を前記供給装置に対して指示を行う指示部を含むことができる。これによれば、水を含む液の自動供給が可能となる。
【0015】
本発明において、前記算出部は、所定時間経過時における前記水および肥料の少なくとも一方の土又は培地中の含有量を予測し、その含有量を考慮して水を含む液体および肥料の少なくとも一方の供給量および供給タイミングを算出することができる。これによれば、過剰な水を含む液の供給を抑えることができる。
【0016】
本発明において、前記予測部および前記算出部の少なくとも一方は、補正可能な関数に基づき情報処理がなされ、水を含む液体を供給した後の植物の状況が第1の入力部に入力された場合に、その入力された植物の状況を含む第1~第3の入力部により入力されたデータに基づき、前記予測部および前記算出部の少なくとも一方の関数を補正する補正部を含むことができる。ここで、関数の補正とは、関数の補正は、式自体の補正、若しくは、係数の補正、又は両者であってもよい。これによれば、逐次、予測部および算出部の少なくとも一方の処理アルゴリズムをより適切なものに改変することができ、内容の質を高めることができる。
【0017】
本発明において、前記補正部が前記関数を補正する際に、その入力された植物の状況を含む第1~第3の入力部により入力されたデータの考慮期間は、最新の入力時点を起算として可変可能であり、前記補正部は、前記関数の補正の際に、当該考慮期間より前のデータは考慮しないとすることができる。本発明は、過去の所定時期より前のデータを考慮しなくとも植物育成のための支援のための情報処理を行うことができるという意義がある。また、過去の所定時期より前のデータを考慮しなくてもいいため、データを蓄える記憶部の容量も少なくてよい。
【0018】
2.情報処理方法
本発明の情報処理方法は、
土又は培地に水及び肥料を供給して植物生育を行う際に適用される情報処理方法であって、
第1の入力部が、計測または観察された植物の状況、および、当該計測または観察に係る時刻または時間を入力するステップと、
第2の入力部が、計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種を入力するステップと、
第3の入力部が、計測または観察された土又は培地中の水分量を入力するステップと、
予測部が、前記第1~第3の入力部により入力された、前記植物の状況および前記計測または観察に係る時刻または時間と、日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種と、土又は培地中の水分量とを含む情報に基づき、所定時間経過後の植物の生育段階を予測するためのステップと、
算出部が、前記所定時間経過後の予測した植物の生育段階において、土又は培地中の水分が所定の量となるような水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出するステップとを含む。
【0019】
3.プログラム
本発明のプログラムは、
コンピュータに、
土又は培地に水及び肥料を供給して植物生育を行う際に適用される情報処理方法を実行させるためのプログラムであって、
第1の入力部が、計測または観察された植物の状況、および、当該計測または観察に係る時刻または時間を入力するステップと、
第2の入力部が、計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種を入力するステップと、
第3の入力部が、計測または観察された土又は培地中の水分量を入力するステップと、
予測部が、前記第1~第3の入力部により入力された、前記植物の状況および前記計測または観察に係る時刻または時間と、日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種と、土又は培地中の水分量とを含む情報に基づき、所定時間経過後の植物の生育段階を予測するためのステップと、
算出部が、前記所定時間経過後の予測した植物の生育段階において、土又は培地中の水分が所定の量となるような水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出するステップとを実行させるためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置と利用者端末との関係を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る情報処理装置の情報処理の概念図である。
【
図3】実施の形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る情報処理装置の処理フローを示す図である。
【
図6】実施の形態に係る生育段階と水分量の閾値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
1.情報処理装置
情報処理装置10の一例として、
図1に示すようなインターネットなどの情報通信網30を介して、利用者端末20と通信可能に接続されている情報処理装置10を説明する。
【0023】
情報処理装置10は、土又は培地に水及び肥料を供給して植物生育を行う際に適用されるものである。情報処理装置10は、入力部12と、処理部14と、出力部16とを含む。土は、植物が生育し得る鉱物(たとえば、岩石)が粒状に分解したものを含むものである。土は、好ましくは有機物(たとえば、アミノ酸などの有機肥料)を含んでもの、たとえば土壌を挙げることができる。培地は、固形培地または非固形培地(たとえば液状)であることができる。培地は、多孔質素材であることにより、灌水の間隔を長くすることができる。
【0024】
土又は培地には、サンゴ砂礫を含むことができ、サンゴ砂礫からなる培地が好適である。サンゴ砂礫からなる培地にすることにより、抗菌作用による根系の病害減少、その抗菌作用により培養液の殺菌設備が不要か又は簡素化が可能であり、さらには、入れ替えや廃棄を極力抑えることができる。サンゴ砂礫の粒径は、たとえば、1~10mm、好ましくは3~5mmとすることができる。
【0025】
入力部12は、第1の入力部12aと、第2の入力部12bと、第3の入力部12cとを含む。
【0026】
第1の入力部12aは、計測または観察された植物の状況、および、当該計測または観察に係る時刻または時間を入力するものである。第1の入力部12aに入力される植物の状況は、生育状況、植物の葉の状況および病気の有無の群から選択される少なくとも1種であることができる。生育状況としては、トマトを例にとると、たとえば、花房段数、花房開花期を挙げることができる。
【0027】
第2の入力部12bは、計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種を入力するものである。第2の入力部12bは、好ましくは、計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速、気温および気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種を入力するものある。本実施の形態においては、一般的には必須の考慮要素とされる二酸化炭素濃度を考慮しなくてもいいという利点がある。消費した肥料の量は、たとえば肥料がタンク内に貯留されている場合に、その貯留されている肥料が減じた量とすることができる。
【0028】
第3の入力部12cは、計測または観察された土又は培地中の水分量を入力するものである。土又は培地中の水分量は、水分計測部により計測されたデータであることができる。土又は培地中の水分量を計測するための水分計測部は、公知のものを適用することができる。第3の入力部12cは、土又は培地中の湿度および温度が入力されてもよい。土又は培地中の湿度の計測センサーは、公知のものを適用することができる。土又は培地中の温度の計測センサーは、公知のものを適用することができる。
【0029】
第1の入力部12a~第3の入力部12cは、同一の入力機能部から構成されてもよいし、または、別の入力機能部から構成されてもよい。入力機能部は、情報を入力することができるものであれば特に限定されない。第1~第3の入力部12a,12b,12cの入力部12の概念には、情報通信網30から情報を受信する受信部を含む概念であり、第1~第3の入力部12a,12b,12cは一つの受信部により実現してもよい。
【0030】
処理部14は、予測部14aと算出部14bとを含み、必要に応じて、さらに、供給決定部14c、補正部14e、指示部14dを含む。
【0031】
予測部14aは、第1~第3の入力部12cにより入力された情報、具体的には、植物の状況および計測または観察に係る時刻または時間と、日照量、土又は培地中の肥料濃度、消費した肥料の量、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速および気温、並びに、気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種と、土又は培地中の水分量とを含む情報に基づき、所定時間経過後の植物の生育段階を予測するためのものである。この予測部14aの予測は、補正可能な第1の関数に基づき予測することができる。その関数は、予測関数(y1=a1×f(x11)+b1×f(x12)+c1×f(x13)・・・)、a1、b1、c1・・・は任意の係数であり、xは第1の入力部から第3の入力部により入力された情報の少なくともいずれかである)とすることができる。生育段階とは、たとえば、全生育過程における区分された各段階を含む概念であり、トマトを例にとると、たとえば、花房の段階を挙げることができる。予測部14aは、補正可能な関数に基づき情報処理がなされることができる。この関数の補正は、たとえば、式自体の補正もあるが、予測関数の係数を補正することにより行うことができる。第1の関数の係数は、任意の係数とすることができ、植物育成条件によって異なる。
【0032】
算出部14bは、所定時間経過後の予測した植物の生育段階において、土又は培地中の水分が所定の量となるような水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出するものである。水を含む液は、水のみでもよいし、水と液体肥料又は固体肥料(たとえば粒状の肥料)とを含むものであってもよい。肥料は、たとえば、アミノ酸などの有機肥料が挙げられる。
【0033】
算出部14bは、所定時間経過時における前記水および肥料の少なくとも一方の土又は培地中の含有量を予測し、その含有量を考慮して水を含む液体および肥料の少なくとも一方の供給量および供給タイミングを算出してもよい。算出部14bは、補正可能な第2の関数に基づき情報処理がなされることができる。その関数は、供給関数(y2=a2×f(x21)+b2×f(x22)+c2×f(x23),・・・,y1,z1)、a2、b2、c2・・・は任意の係数であり、xは第1の入力部から第3の入力部により入力された情報の少なくともいずれかである)とすることができる。供給関数のZ1は、所定時間経過後の水または肥料の量の予測であり、この水または肥料の量は算出14bにより算出してもよいし、または、入力部により入力したものであってもよい。第2の関数の係数は、任意の係数とすることができ、植物育成の求める結果(糖度や成長スピードなど)によって、設定されることができる。
【0034】
補正部14eは、予測部14aおよび算出部14bの少なくとも一方が補正可能な関数に基づき情報処理がなされる場合に、水を含む液体を供給した後の植物の状況が第1の入力部12aに入力された場合に、その入力された植物の状況を含む第1~第3の入力されたデータに基づき、予測部14aおよび算出部14bの少なくとも一方の関数を補正するものである。関数の補正は、式自体の補正、若しくは、係数の補正、又は両者であってもよい。
【0035】
補正部14eが予測部14aおよび算出部14bの少なくとも一方の関数を補正する際に、その入力された植物の状況を含む第1~第3の入力部12a,12b,12cより入力されたデータの考慮期間は、最新の入力時点を起算として可変可能とすることができる。また、補正部14eは、関数の補正の際に、当該考慮期間より前のデータは考慮しないことができる。つまり、本実施の形態によれば、補正のために過去の蓄積したすべてのデータを考慮することがないため、過去のデータを記憶させる記憶部18の容量が少なくて済む。また、多くのデータを加工又はそれらデータから意味を抽出する際に、その情報処理は複雑なアルゴリズムになるが、そのような複雑なアルゴリズムの情報処理が不要であり、情報処理に伴うハードウエア資源が簡易なもので済む。
【0036】
決定部14cは、土又は培地に含まれる水又は肥料の量が閾値以下又は閾値を下回る場合に、水を含む液体を土又は培地に供給するかどうか決定するものである。算出部14bにて水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出するが、実際に水を含む液を供給するに当たって、土又は培地に含まれる水又は肥料の量が閾値以下又は閾値未満であるかどうかを判断基準に水を含む液体を土又は培地に供給するかどうか決定することができる。土又は培地に含まれる水又は肥料の量が閾値以下又は閾値を下回る場合に、水を含む液体を土又は培地に供給する場合には、
図6に示すように、水分量が閾値を下回らないように、水を含む液の供給量および供給タイミングを算出することができる。生育段階によって、閾値を変え、灌水量と灌水タイミングを変えることができる。生育段階Aの期間は、生育段階Aの閾値を適用し、生育段階Bの期間は生育段階Bの閾値を適用することができる。
【0037】
指示部14dは、水を含む液体の前記土又は培地に対する供給が供給装置により行われ場合において、算出部14bにおいて算出された水を含む液体の供給量を供給装置に対して指示を行うものである。
【0038】
出力部16は、送信部16aを含む。送信部16aは、情報通信網30を介して、利用者端末20に情報処理に基づくデータを送信するものである。
【0039】
記憶部18は、第1~第3の入力部12a,12b,12cにより入力されたデータを記憶したり、処理部14の種々の機能部の情報処理結果を記憶させておくことができる。記憶部18は、ROMやハードディスクなどの公知の記憶装置により実現することができる。予測部14a、算出部14b、供給決定部14c、補正部14e、指示部14dは、CPUなどの演算装置により実現することができる。
【0040】
情報処理装置10に対して情報処理を実行させるプログラムは、情報処理装置10に含まれる記憶装置(たとえば、ROM、ハードディスク)などに格納することができる。種々の情報処理は、CPUなどの演算装置により実行することができる。データベース12は、ハードディスクなどの記憶装置に格納することができる。
【0041】
利用者端末20は、たとえば、入出力機能があるコンピュータや携帯電話などの携帯端末からなることができる。
【0042】
情報処理装置10は、通信可能なコンピュータなどの自動計算機や携帯電話などの携帯端末を適用することができる。
【0043】
上記の実施の形態においては、情報処理装置10として、インターネットなどの情報通信網30に接続して、利用者端末20との間で情報の送受信する例を説明した。しかし、これに限定されず、
図4に示すように、情報処理装置10自体に、出力部16としてディスプレイなどの表示部16bを設け、情報処理装置10のみで情報処理を完結させてもよい。この場合、その情報処理装置10に表示手段を設け、種々の情報を表示してもよい。
【0044】
情報処理装置10は、コンピュータなどの公知の電子計算機により実現することができる。
【0045】
2.処理フロー
2.1 基本処理フロー
図2を参照しながら、実施の形態に係る情報処理装置10の基本的処理フローを説明する。
【0046】
第1~第3の入力部より所定の情報が入力される(P1)。入力された情報と、第1の関数(予測関数)に基づき情報とに基づき、第1の情報処理がなされる(P2)。所定時間経過後の予測される生長段階(y1)を算出するとともに、所定時間経過後の水または肥料の予測量を算出または入力し(P3)、所定時間経過後の予測される生長段階と、所定時間経過後の水または肥料の量の予測(Z1)と、第2の関数に基づき情報処理が行われ(P4)、水又は肥料の供給量及び供給タイミングが決定される(P5)。水又は肥料を決定された供給タイミング(供給時期)および供給量にて供給される(P6)。観察又は計測された植物の状況が入力される(P1)。入力された情報に基づき、第1の関数および第2の関数を補正することができる。
【0047】
2.2 具体的処理フロー
以下、
図5を参照しながら、実施の形態に係る情報処理装置10の処理フローを説明する。
【0048】
第1の入力部12aにより、計測または観察された植物の状況、および、当該計測または観察に係る時刻または時間が入力される(S1)。
【0049】
次に、第2の入力部12bにより、計測または観察された日照量、土又は培地中の肥料濃度、二酸化炭素濃度、湿度、将来、現在または過去の天気、風速、気温および気温の積算温度の群から選択される少なくとも1種が入力される(S2)。
【0050】
次に、第3の入力部12cにより、計測または観察された土又は培地中の水分量が入力される(S3)。この際、第3の入力部12cには、土又は培地中の水分の湿度および土又は培地中の温度の少なくとも一方を入力してもよい。
【0051】
次に、予測部14aが、第1~第3の入力部12a,12b,12cにより入力された、植物の状況および計測または観察に係る時刻または時間と、日照量、土又は培地中の肥料濃度および気温の群から選択される少なくとも1種と、土又は培地中の水分量とに基づき、所定時間経過後の植物の生育段階を予測する(S4)。予測部14aは、補正可能な関数に基づき情報処理がなされることができる。
【0052】
次に、算出部14bが、所定時間経過後の予測した植物の生育段階において、土又は培地中の水分が所定の量となるような水を含む液の次の供給量および供給タイミングを算出する(S5)。算出部14bは、所定時間経過時における水および肥料の少なくとも一方の土又は培地中の含有量を予測し、その含有量を考慮して水を含む液体および肥料の少なくとも一方の供給量および供給タイミングを算出してもよい。
【0053】
次に、ステップ5(S5)の後に、算出部14bで算出された水を含む液の次の供給量および供給タイミングに基づき、水を含む液を土又は培地に供給する(S6)。この際に、決定部14cが、土又は培地に含まれる水又は肥料の量が閾値以下又は閾値未満であるかどうかを判断基準として、水を含む液体を土又は培地に供給するかどうか決定することができる。
【0054】
次に、水を含む液を土又は培地に供給した後に、植物の状況を観察又は計測し、第1の入力部12aにより入力される(S7)。
【0055】
次に、第1の入力部12aに入力された場合であって、予測部14aおよび算出部14bの少なくとも一方が補正可能な関数に基づき情報処理がなされる場合に、補正部14eが、水を含む液体を供給した後の植物の状況が第1の入力部12aに入力された場合に、その入力された植物の状況を含む第1~第3の入力部12a,12b,12cに入力されたデータに基づき、予測部14aおよび算出部14bの少なくとも一方の関数を補正する(S8)。補正部14eが前記関数を補正する際に、その入力された植物の状況を含む第1~第3の入力部12a,12b,12cにより入力されたデータの考慮期間は、最新の入力時点を起算として可変可能とすることでき、補正部14eは、関数の補正の際に、当該考慮期間より前のデータは考慮しないこととすることができる。
【0056】
3.作用効果
本発明は、植物工場などでみられる、多くのデータを蓄え、それらデータから植物生理の傾向を発見し、その傾向に基づく情報処理により生育方法を提供するものではない。本発明は、植物の状況などの情報の入力で植物の生長段階を予測し、予測した生長段階に応じた水を含む液体又は肥料の供給タイミングを提供するものである。植物の育成分野において、現状の段階に基づき、何をするべきかというアプローチの研究がなされてきたが、本発明は植物の育成分野にはなかった全く異なるアプローチによる植物生育を支援する情報処理に関するものである。つまり、巨大で複雑なデータ集合の集積物、いわゆるビッグデータを用いることなく適切な植物の栽培支援を行うことができる。
【0057】
つまり、本願発明者らは、将来の生育段階を予測し、その生育段階に沿った水を含む液体を供給する量及び供給タイミングを提示することで、作業者が楽に収量を伸ばすことができることを見出した。
【0058】
より具体的には、本実施の形態によれば、生育段階に応じて適切な水を含む液体の供給量と供給タイミングとを提案することができる。このため、植物の収量を増やすことができ、熟練者ではなくても、所定収量の植物を生育することができる。また、作業者の作業も明確になると共に、楽になる。作業計画も立てやすいというメリットもある。糖度調整も行いやすいというメリットもある。
【0059】
植物生育の状態を把握するに当たって、一般的には二酸化炭素濃度が必須の考慮要素とされる。しかし、本実施の形態においては、二酸化炭素濃度を考慮しなくてもいいという利点がある。
【0060】
また、生長段階の予測や、水又は肥料の供給量及び供給時期を導く情報処理は、関数に基づき行うことができ、それら関数の補正により関数を補正して、より正確な情報処理ができる点で、特に意義がある。
【0061】
本実施の形態によれば、補正のために過去の蓄積したすべてのデータを考慮することがないため、過去のデータを記憶させる記憶部18の容量が少なくて済む。また、多くのデータを加工又はそれらデータから意味を抽出する際に、その情報処理は複雑なアルゴリズムになるが、そのような複雑なアルゴリズムの情報処理が不要であり、情報処理に伴うハードウエア資源が簡易なもので済む。
【0062】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、植物育成に関する支援システムおよび支援方法として適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 情報処理装置
12 入力部
12a 第1の入力部
12b 第2の入力部
12c 第3の入力部
14 処理部
14a 予測部
14b 算出部
14c 供給決定部
14d 指示部
14e 補正部
16 出力部
16a 送信部
16b 表示部
18 記憶部
20 利用者端末
30 情報通信網