(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】燃料供給容器を搭載した走行集材機械及びそれを用いた注油・集材方法
(51)【国際特許分類】
B60P 3/41 20060101AFI20221012BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20221012BHJP
B60P 1/54 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B60P3/41
B60K15/063 A
B60P1/54 B
(21)【出願番号】P 2019230136
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2021-11-16
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519216770
【氏名又は名称】株式会社リタプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】藤川 靖治
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3002906(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0240080(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0129379(US,A1)
【文献】国際公開第2016/176411(WO,A1)
【文献】特開2003-102293(JP,A)
【文献】特開2009-078644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/41
B60K 15/063
B60P 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
森林作業道を走行可能な走行集材機械において、
他の機械に対して燃料を供給するための燃料供給容器を搭載し、走行部を設けた基台の上部前側に運転室を設けるとともに、基台の上部後側に荷台を設け、運転室と荷台との間にクレーンを設け、燃料供給容器を、前記運転室と前記荷台との間の前記クレーンの側方であって、前記クレーンの操作席への乗降通路とは反対側に搭載したことを特徴とする燃料供給容器を搭載した走行集材機械。
【請求項2】
他の機械に対して燃料を供給するための燃料供給容器を搭載した走行集材機械を用いて伐採した木材を土場に集積させる注油・集材方法において、
伐採現場の他の機械に燃料を補給する必要がある場合には、土場に設けられた燃料を供給するための燃料供給装置から前記燃料供給容器に燃料を貯留した後に、前記走行集材機械で森林作業道を走行して伐採現場に往き、伐採現場で他の機械に対して前記燃料供給容器から燃料を供給するとともに、伐採現場で前記走行集材機械に伐採した木材を積載し、
その後、前記走行集材機械で森林作業道を走行して土場に復ることを特徴とする燃料供給容器を搭載した走行集材機械を用いた注油・集材方法。
【請求項3】
前記請求項1に記載の走行集材機械を用いることを特徴とする請求項2に記載の燃料供給容器を搭載した走行集材機械を用いた注油・集材方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給容器を搭載した走行集材機械及びそれを用いた注油・集材方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
林業においては、森林における木材の伐採等の森林施業を効率的に行うために路網が整備される(たとえば、特許文献1参照。)。この路網においては、トラック等のホイール車両が走行できる林業専用道が林道から分岐して形成されるとともに、各種の林業機械(フェラーバンチャやフォワーダなど)等のクローラ車両が走行できる森林作業道が林業専用道から分岐して形成される。
【0003】
そして、伐採現場でフェラーバンチャ等の走行伐採機械によって伐採された木材は、伐採現場でフォワーダ等の走行集材機械に積載され、走行集材機械で森林作業道を走行して、森林作業道と林業専用道との分岐部に形成された土場に運搬され、その後、トラック等の運搬車両で土場から搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来においては、伐採現場と土場とを結ぶ森林作業道がクローラ車両等の特殊車両でしか走行できず、燃料供給装置が土場に設置されているために、伐採現場で作業を行う走行伐採機械は、注油時に伐採現場と土場との間の森林作業道を往復しなければならなかった。
【0006】
そのため、注油のたびに森林作業道を往復するといった多大な時間や労力を要していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、森林作業道を走行可能な走行集材機械において、他の機械に対して燃料を供給するための燃料供給容器を搭載し、走行部を設けた基台の上部前側に運転室を設けるとともに、基台の上部後側に荷台を設け、運転室と荷台との間にクレーンを設け、燃料供給容器を、前記運転室と前記荷台との間の前記クレーンの側方であって、前記クレーンの操作席への乗降通路とは反対側に搭載することにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、他の機械に対して燃料を供給するための燃料供給容器を搭載した走行集材機械を用いて伐採した木材を土場に集積させる注油・集材方法において、伐採現場の他の機械に燃料を補給する必要がある場合には、土場に設けられた燃料を供給するための燃料供給装置から前記燃料供給容器に燃料を貯留した後に、前記走行集材機械で森林作業道を走行して伐採現場に往き、伐採現場で他の機械に対して前記燃料供給容器から燃料を供給するとともに、伐採現場で前記走行集材機械に伐採した木材を積載し、その後、前記走行集材機械で森林作業道を走行して土場に復ることにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1に係る走行集材機械を用いることにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、森林作業道を走行可能な走行集材機械において、他の機械に対して燃料を供給するための燃料供給容器を搭載することにしているために、不整地な森林作業道の先の伐採現場で走行伐採機械等の他の機械に注油をすることができる。
【0012】
特に、前記燃料供給容器を、前記運転室と前記荷台との間の前記クレーンの側方であって、前記クレーンの操作席への乗降通路とは反対側に搭載することにした場合には、走行集材機械のスペースを有効に利用することができるとともに、既存の走行集材機械に燃料供給容器を追加して搭載することが容易にできる。
【0013】
また、本発明では、上記の燃料供給容器を搭載した走行集材機械を用いて伐採した木材を土場に集積させる注油・集材方法において、土場に設けられた燃料を供給するための燃料供給装置から前記燃料供給容器に燃料を貯留した後に、前記走行集材機械で森林作業道を走行して伐採現場に往き、伐採現場で他の機械に対して前記燃料供給容器から燃料を供給するとともに、伐採現場で前記走行集材機械に伐採した木材を積載し、前記走行集材機械で森林作業道を走行して土場に復ることにしているために、走行集材機械でしか走行できない森林作業道の先の伐採現場で走行伐採機械等の他の機械に注油をすることができ、従来注油のたびに要していた森林作業道を往復するといった時間や労力を省略することができ、森林施業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る燃料供給容器を搭載した走行集材機械を示す右側面図(正面視左側面図)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る燃料供給容器を搭載した走行集材機械及びそれを用いた注油・集材方法の具体的な構成について図面を参照して説明する。
【0016】
図1~
図3に示すように、走行集材機械(ここでは、フォワーダ)1は、前後に伸延する基台2の左右側部に不整地を走行可能なクローラ式の走行部3,3を設けて、森林作業道を往復移動できるようにしている。なお、走行集材機械1は、不整地である森林作業道を走行して木材を積載できるものであればよく、フォワーダに限られず、走行部3もクローラ式のものに限られない。
【0017】
また、走行集材機械1は、基台2の上部左前側(正面視上部右前側)に運転操作を行うための運転室4を設けるとともに、基台2の上部右前側(正面視上部左前側)にエンジン等を収容した駆動室5を設けている。
【0018】
また、走行集材機械1は、基台2の上部後側に木材を積載するための荷台6を設けるとともに、基台2の上部中央前側(運転室4及び駆動室5と荷台6との間)に木材の搬入及び搬出を行うためのクレーン7を設けている。
【0019】
クレーン7は、基台2の左右中央に取付けたベース8の上部に左右幅方向へ向けて伸延させたシリンダ9で旋回駆動されるコラム10が取付けられている。このコラム10の上端には、折り曲げ式のブーム11が取付けられ、ブーム11の先端に木材を掴むグラップル12が取付けられている。また、コラム10の上部後側には、ブーム11やグラップル12を操作するための操作席13や操作具14が取付けられている。
【0020】
このクレーン7の左側(正面視右側)には、シリンダ9が突出しており、そのシリンダ9の上部に足場板15が取付けられている。また、運転室4の後側には、ラダー16が取付けられている。これにより、クレーン7の左側には、操作席13への乗降通路が形成されている。
【0021】
一方、クレーン7の右側(正面視左側)には、シリンダ9が突出しており、そのシリンダ9の上部に載置板17が取付けられ、その載置板17の上部に燃料供給容器18を取付けている。これにより、燃料供給容器18は、運転室4及び駆動室5と荷台6との間のクレーン7の右側方であって、クレーン7の操作席13への乗降通路とは反対側に搭載されている。
【0022】
燃料供給容器18は、内部に燃料を貯留することができる容器で、伐採現場で走行伐採機械等の他の機械に対して燃料を供給するものである。この燃料供給容器18は、燃料を貯留するタンクを有していればよいが、燃料を供給するポンプなどをも有するものが望ましい。
【0023】
走行集材機械1は、以上に説明したように構成しており、森林における木材の伐採等の森林施業においては、
図4に示すように、荷台6が空の状態で土場から森林作業道を通って伐採現場に往き(森林作業道往路工程)、伐採現場で走行伐採機械等によって伐採された木材をブーム11及びグラップル12を用いて荷台6に積載し(木材積載工程)、その後、荷台6に木材を積載した状態で伐採現場から森林作業道を通って土場に復り(森林作業道復路工程)、土場でブーム11及びグラップル12を用いて荷台6に積載された木材を土場に集積する(木材集積工程)。
【0024】
森林施業において、走行集材機械1は、上記した森林作業道往路工程、木材積載工程、森林作業道復路工程、木材集積工程を繰り返して行うが、伐採現場の走行伐採機械等に燃料を補給する必要がある場合には、土場に設置されている燃料供給装置から燃料供給容器18に燃料を貯留し(燃料貯留工程)、荷台6が空の状態で土場から森林作業道を通って伐採現場に往き(森林作業道往路工程)、伐採現場で走行伐採機械等の他の機械に対して燃料を供給し(燃料供給工程)、伐採現場で走行伐採機械等によって伐採された木材をブーム11及びグラップル12を用いて荷台6に積載し(木材積載工程)、その後、荷台6に木材を積載するとともに燃料供給容器18内の燃料が減った状態で伐採現場から森林作業道を通って土場に復り(森林作業道復路工程)、土場でブーム11及びグラップル12を用いて荷台6に積載された木材を土場に集積する(木材集積工程)。
【0025】
なお、上記工程では、他の機械への燃料補給が必要となった時に燃料貯留工程及び燃料供給工程を行うようにしているが、これに限られず、予め燃料貯留工程を行い、必要に応じて燃料供給工程を行うようにしてもよい。
【0026】
以上に説明したように、上記走行集材機械1は、他の機械に対して燃料を供給するための燃料供給容器18を搭載した構成となっている。
【0027】
そのため、上記構成の走行集材機械1では、クローラ車両等の特殊車両でしか走行できない不整地な森林作業道の先の伐採現場で走行伐採機械等の他の機械に注油をすることができる。
【0028】
また、上記走行集材機械1は、燃料供給容器18を、運転室4と荷台6との間のクレーン7の側方であって、クレーン7の操作席13への乗降通路とは反対側に搭載した構成となっている。
【0029】
そのため、上記構成の走行集材機械1では、クレーン7の操作席13への乗降を妨げることなく、走行集材機械1のスペースを有効に利用することができるとともに、既存の走行集材機械1に燃料供給容器18を追加して搭載することが容易にできる。
【0030】
また、上記燃料供給容器18を搭載した走行集材機械1を用いて伐採した木材を土場に集積させる集材方法は、土場に設けられた燃料を供給するための燃料供給装置から燃料供給容器18に燃料を貯留した後に、走行集材機械1で森林作業道を走行して伐採現場に往き、伐採現場で他の機械に対して燃料供給容器18から燃料を供給するとともに、伐採現場で走行集材機械1に伐採した木材を積載し、走行集材機械1で森林作業道を走行して土場に復る構成となっている。
【0031】
そのため、上記構成の集材方法では、走行集材機械1でしか走行できない森林作業道の先の伐採現場で走行伐採機械等の他の機械に注油をすることができ、従来注油のたびに要していた森林作業道を往復するといった時間や労力を省略することができ、森林施業の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 走行集材機械 2 基台
3 走行部 4 運転室
5 駆動室 6 荷台
7 クレーン 8 ベース
9 シリンダ 10 コラム
11 ブーム 12 グラップル
13 操作席 14 操作具
15 足場板 16 ラダー
17 載置板 18 燃料供給容器