(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置および/または動作半径を決定するための測定方法ならびに装置
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20221012BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61H1/02 N
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2019567536
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 DE2018100587
(87)【国際公開番号】W WO2019001636
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】102017114290.8
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518093178
【氏名又は名称】リアクティブ ロボティックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】パール,ヘルフリート
(72)【発明者】
【氏名】ツィリヒ,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】メッツナー,フィリップ
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-076329(JP,A)
【文献】特表2018-531676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節部(98)、膝関節部(93)、および/または大腿部(96)といった寝たきり患者(90)の下肢の長さ条件、位置、および
、動作半径
のうちの少なくとも1つを決定するための測定方法であって、
-リハビリテーション機構(30)の少なくとも1つの膝モジュール(50)は、作用点(AP)を介して前記患者(90)の脚部(92)に有効に連結して
おり、
-測定装置(68)が、前記リハビリテーション機構(30)の前記膝モジュール(50)に
よる前記脚部(92)の動作中に
、単に前記作用点(AP)のみの軌道(T
n;T
n+1)を記録および/または決定するために使用され
、
-モデル生成手段(69)は、こうして得られたデータから、前記患者(90)の前記下肢のうち少なくとも一部の前記長さ条件、前記位置、および/または前記動作半径の運動学的モデルを作成するために使用され
、
少なくとも一方法の工程において、決定した2次座標(Y
1
/Z
1
、Y
2
/Z
2
、・・・、Y
n
/Z
n
)または3次座標(Y
1
/Z
1
/t
1
;Y
2
/Z
2
/t
2
;・・・/・・・;Y
n
/Z
n
/t
n
)は、曲線フィッティングによって、回動点(DP)の位置(Y
H
(t)/Z
H
(t))、および/または、作用点(AP)と回動点(DP)との間の長さ(L0)、ならびに前記軌道(T
n
;T
n+1
)上の2つの点と前記回動点(DP)との間の角度(θ_DP)が決定され、
-モデル関数として、楕円の座標方程式(数1の式)を使用し、
【数1】
-前記楕円の中心点は、前記回動点(DP)の前記位置(Y
H
(t)/Z
H
(t))による関数(M
Y
(Y
H
)/M
Z
(Z
H
))で表され、
-前記楕円の長半径として、作用点(AP)と回動点(DP)との間の前記寝たきり患者(90)の前記長さ(L
0
)を使用し、
L
0
±ΔLは、動作中の前記回動点(DP)の前記位置(Y
H
(t)/Z
H
(t))の起こり得る移動を表す、測定方法。
【請求項2】
前記作用点(AP)は、前記患者(90)の前記膝関節部(93)である、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
一方法の工程において、前記脚部(92)は、膝装具(51)を用いて、作用点(AP)を介して
、前記膝モジュール(50)に固定され
、前記作用点(AP)は、前記膝関節部(93)、前記大腿部(96)及び下腿部(97)の1つである、請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
一方法の工程において、前記測定装置(68)は、開始位置(P
0)から進めて、前記脚部(92)の手動で誘導されおよび/または自動化された動作を
、作用点(AP)
の軌道(T
n;T
n+1)として、2次座標(Y
1/Z
1、Y
2/Z
2、・・・、Y
n/Z
n)の形式で、または、経時的な3次座標(Y
1/Z
1/t
1、Y
2/Z
2/t
2、・・・、Y
n/Z
n/t
n)の形式で記録する、請求項1~3のうち一項に記載の測定方法。
【請求項5】
前記測定装置(68)は、前記作用点(AP)
の軌道(T
n;T
n+1)を、電動モータによって駆動される
、前記膝モジュール(50)に配置された偏心器(63;64)の角度位置から少なくとも2つのセンサ(681;682)の助けを借りて、2次座標(Y
1/Z
1、Y
2/Z
2、・・・、Y
n/Z
n)の前記形式で、または、経時的な3次座標(Y
1/Z
1/t
1、Y
2/Z
2/t
2、・・・、Y
n/Z
n/t
n)の
形式で決定する、請求項1
に記載の測定方法。
【請求項6】
前記回動点(DP)の位置(Y
H
(t)/Z
H
(t))は、前記寝たきり患者(90)の前記股関節部(98)の位置、および/または、
前記作用点(AP)と前記回動点(DP)との間の長さ(L0)は、前記寝たきり患者(90)の前記大腿部(96)の前記長さ、である、請求項1に記載の測定方法。
【請求項7】
一方法の工程において、制御モジュール(60)は、前記膝モジュール(50)を用いて前記寝たきり患者(90)の前記脚部(92)のうち少なくとも関節、筋肉、および腱の計画的なリハビリテーション動作を制御するために提供され、前記制御モジュール(60)は
、
-前記運動学的モデルから生成される患者固有のデータから、軌道(T
n;T
n+1)
を、前記作用点(AP)
に対する患者(90)の前記脚部(92)の前記リハビリテーション動作のために決定し、
-これらの軌道(T
n;T
n+1)
に基づいて
、前記膝モジュール(50)を制御する、請求項
1に記載の測定方法。
【請求項8】
前記リハビリテーション機構(30)および/または前記膝モジュール(50)は、前記脚部(92)の手動で誘導されおよび/または自動化された動作中に、前記リハビリテーション機構(30)および/または前記寝たきり患者(90)の前記脚部(92)上の前記膝モジュール(50)を通して、作用点(AP)および回動点(DP)によって規定される軸に沿った力(N2)の影響が回避され
るように、前記制御モジュール(60)の助けを借りて制御される、請求項
7に記載の測定方法。
【請求項9】
前記制御モジュール(60)は、前記作用点(AP)
の算出軌道(Tn;Tn+1)に基づいて、前記膝モジュール(50)および/または前記リハビリテーション機構(30)を、前記作用点(AP)
が、前記膝モジュール(50)
の助けを借りて、これらの新たに修正した軌道(Tn;Tn+1)に沿って移動するような方法で制御する、請求項
7または8に記載の測定方法。
【請求項10】
一方法の工程において、前記脚部(92)の各々の自動化された動作後に、前記作用点(AP)の各々の新たな経時的に記録された軌道(T
n+1)から、
-作用点(AP)と回動点(DP)との間の前記長さ(L0)と、前記回動点DPの前記位置Y
H(t)/Z
H(t)と、
-前記軌道(T
n;T
n+1)上の2つの点と前記回動点(DP)との間の前記角度(θ_DP)として、新しい値が計算され、
これらの新しい値はすでに測定された軌道(T
n)の対応する値と比較される、請求項
7~9のうち一項に記載の測定方法。
【請求項11】
一方法の工程において、
2つの連続して測定された軌道(T
n
、T
n+1
)における、
-作用点(AP)と回動点(DP)との間の前記長さ(L0)
の値と、
-前記回動点の前記位置(Y
H(t)/Z
H(t))
の値と、
-前記軌道(T
n;T
n+1)上の2の点と前記回動点(DP)との間の前記角度
の値の比較に基づいて
、
-作用点(AP)と回動点(DP)との間の前記長さ(L
0)
の改善された値と、
-前記回動点DPの前記位置
(Y
H(t)/Z
H(t)
)の改善された値と、
-前記軌道(T
n;T
n+1)上の前記2つの点と前記回動点(DP)との間の角度(θ_DP)
の改善された値
を備えた更新モデルが、最適化アルゴリズム
を用いて生成される、請求項
7~10のうち一項に記載の測定方法。
【請求項12】
前記最適化アルゴリズムが最小二乗アルゴリズムである、請求項11に記載の測定方法。
【請求項13】
一方法の工程において、前記更新
モデルの値は、前記脚部(92)のさらなる自動化された動作の基礎として役立つ、請求項
11または12に記載の測定方法。
【請求項14】
請求項1~1
3のうち一項
に記載の股関節部(98)、膝関節部(93)、および/または大腿部(96)といった、寝たきり患者(90)の前記下肢の前記長さ条件、前記位置、および
、前記動作半径
のうちの少なくとも1つを決定するための測定方法を実行する装置(1)であり、少なくとも、
-患者(90)の脚部(92)に作用点(AP)を介して有効に接続することができ、
膝モジュール(50)に配置された少なくとも2つの偏心器(63;64)を駆動するための少なくとも1つの電動モータ(62)を備える少なくとも1つの膝モジュール(50)を有したリハビリテーション機構(30)、を備える装置(1)において、
-前記脚部(92)の前記動作中に、前記作用点(AP)
の軌道(T
n;T
n+1)を記録および/または決定するための測定装置(68)と;
-こうして得られたデータから、前記患者(90)の前記下肢のうち少なくとも一部の前記長さ条件、前記位置、および/または前記動作半径の運動学的モデルを作成するためのモデル生成手段(69)とを特徴とする装置(1)。
【請求項15】
前記測定装置(68)は、前記電動モータ(62)および/または前記偏心器(63;63)の軸の
角度位置を決定するための少なくとも2つのセンサ(681;682)を備える
、および/または、
前記測定装置(68)は、前記膝モジュール(50)を用いて前記寝たきり患者(90)の前記脚部(92)のうち少なくとも関節、筋肉、および腱の計画的なリハビリテーション動作を制御するための制御モジュール(60)を備え、前記制御モジュール(60)は、前記運動学的モデルから生成される前記患者固有のデータから、軌道(T
n
;T
n+1
)、新たに修正した軌道(T
n
;T
n+1
)を、前記作用点(AP)に対する患者(90)の前記脚部(92)の前記リハビリテーション動作のために決定して、これらの軌道(T
n
;T
n+1
)に基づいて前記膝モジュール(50)を制御するように構成される、請求項
14に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記膝モジュール(50)は、
-前記寝たきり患者(90)の前記膝関節部(93)を受け入れる少なくとも1つの膝装具(51)と;
-前記膝装具(51)に連結した連結要素(52)と;前記連結要素(529
)が固定される延長アーム(53)と;
-制御モジュール(60)を用いて駆動することができる機械的装置(61)とを備え;
前記脚部(92)の前記関節、筋肉、および腱
が、
作用箇所(AP)
を介して、計画的なリハビリテーション動作を実行する
ように、前記機械的装置(61)は、前記延長アーム(53)および前記連結要素(52)を介して、規定の力(N)を前記膝装具(51)にもたらすことを特徴とする、請求項
14または15に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記リハビリテーション機構(30)は、
-連結要素(52)によって前記膝装具(51)および/または延長アーム(53)に採用される前記角度を監視する少なくとも1つの角度センサ(55);ならびに/または、
-前記延長アーム(53)および前記連結要素(52)を介して前記膝装具(51)にもたらす前記力(N)を監視する力覚センサを備えることを特徴とする、請求項
16に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節部、膝関節部、および/または大腿部といった、寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための測定方法、ならびに、そのような方法を実行するための装置に関し、患者の膝関節部に動作可能に連結することができ、少なくとも2つの偏心器を駆動するための少なくとも1つの電動モータを備える少なくとも1つの膝モジュールを有するリハビリテーション機構を少なくとも備える。
【背景技術】
【0002】
寝たきり患者(特に意識があるか意識がないかにかかわらず、医学的理由で、ほんの少しでも単独でベッドから降りることができない患者として以下に理解される)は、定期的な理学療法で利益を得ることが示されている。
【0003】
ベッドへの拘束が長い局面において、理学療法運動は、ほとんどの場合、患者は理学療法において特別に訓練した人の助けを借りて実行し、患者の可動性および筋肉量を維持して、身体を巡る血液の循環を促進することで、例えば、凝固の危険性を低減させることができる。
【0004】
意識のない寝たきり患者の場合には、脚部の動作によって、身体の大きな筋肉群を鍛えることで、より大きな刺激を患者の脳に対して誘発することができるので、下肢の運動療法は有効であることが特に証明されている。したがって、理学療法運動は、脳の損傷領域の治療を加速することさえでき、昏睡から覚醒するのを容易にすることができる。
【0005】
しかしながら、運動療法の広範囲にわたる医学的使用に対して低減している要因には、病院に配置される人員および関連する経済的負担に関する相当なコストが含まれ、これらのコストは、多くの場合、ヘルスケアシステムの法的枠組みの範囲内で満たすことができない。その上、特に昏睡患者にとっては、運動はあまり頻繁には行われず、継続時間があまりに短い。
【0006】
このために、近年、以前から理学療法士によって手動で行われている寝たきり患者の運動療法を次第に自動化する試みがなされている。
【0007】
出願人による特開2005-334385号公報(特許文献1)、特開平10-258101号公報(特許文献2)、国際公開第00/61059号(特許文献3)、特開2003-225264号公報(特許文献4)、さらには国際公開2017/063639号(特許文献5)は、理学療法運動、特に歩行治療を自動化された方法で実行することができる様々なリハビリテーション機構の例を開示している。
【0008】
このような運動療法の過程において、また他の医学的な調査方法および/または治療方法にとっても、得られたデータを活用して特定の患者に使用される検査および/または治療装置に適応させるために、日々の病院の日常業務において、個々の長さ条件、個々の関節の位置、および特定の患者の動作半径を測定することが必要である。通常、このような測定は、独国実用新案第8514240号明細書(特許文献6)より公知であるように、巻尺を使用するか、または、例えば、横臥の患者の身体部分の周囲および長さを測定する装置を使用して手動で行われ、その場合には、異なる人が、装置の職責に応じてこれらの測定を実行することが多い。不必要な繰り返しの他に、この実行には、異なる人が測定を行うために多くの場合異なる結果になるといった欠点も有し、その結果、特に測定値の平均値が相当な誤差を有し得る。特に治療が成功し、したがってさらなる治療工程の計画が患者の動作半径の変化に依存するようになる場合、誤差に対する測定値の感受性は大きな欠点となる。
【0009】
この問題を解決するために、国際公開第2015/127396号(特許文献7)は、互いに隣接した骨の相対的な向きおよび位置を測定するための方法および装置を開示している。当該方法および当該装置は、特に、整形外科手術中に整形外科インプラントの非常に正確な位置決めを可能にするために、患者の四肢の異なる長さおよび向きのパラメータを手術中に決定することを目的とする。このために、当該方法は、患者の股関節および大腿骨に磁気および/もしくは光学センサならびに/または加速度センサの直接的な(外科的な)取り付けを必要とする。測定することになる骨にセンサを直接固定することは、測定パラメータの比較的高い精度を可能にする。しかしながら、その侵襲的性質のために、それは特定の患者に大きな負担をかけ、このため、手術中の測定に対してのみ適しており、患者の下肢の手術に対する指示がない場合、理学療法的運動療法のための測定値を得ることに対しては適していない。
【0010】
さらに、独国特許出願公開第10060466号(特許文献8)は、脚の動作を測定し、動作、環境、および地表面のシミュレーションのための装置を開示しており、その装置によって、歩行/走行動作を三次元で決定することができ、シミュレーションのコンテキストで仮想環境に「投影」することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-334385号公報
【文献】特開平10-258101号公報
【文献】国際公開第00/61059号
【文献】特開2003-225264号公報
【文献】国際公開2017/063639号
【文献】独国実用新案第8514240号明細書
【文献】国際公開第2015/127396号
【文献】独国特許出願公開第10060466号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このことから、本発明の目的は、寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための改善された測定方法および改善された装置を利用可能とすることであり、その改善された測定方法および改善された装置は、非侵襲的な方法で患者データを決定し、そのデータは、さらに、そして、特に自動化された運動療法にも、さらには、他の医学的な調査方法および/または治療方法にも使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、第1に、独立請求項1の特徴を有する、股関節部、膝関節部、および/または大腿部といった、寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための測定方法によって、および、独立請求項15の特徴を有する、このような測定方法を実行するための装置によって達成される。さらに有利な実施形態および発展形態は、個別または互いに組み合わせて使用することができる、従属請求項の主題である。
【0014】
本発明による測定方法は、リハビリテーション機構の少なくとも1つの膝モジュールが、作用点を介して患者の脚部に動作可能に接続しており;測定装置が、リハビリテーション機構の膝モジュールによって脚部の動作中に単に作用点のみの軌道を記録および/または決定するために使用され;モデル生成手段が、こうして得られたデータから、患者の下肢のうち少なくとも一部の長さ条件、位置、および/または動作半径からなる運動学的モデルを作成するために使用されることを特徴とする。
【0015】
作用点は、有利なことに、患者の膝関節部であることができる。
【0016】
作用点、特に膝関節部からなる単に軌道のみの決定によって、動作中に、特に、療法士によって誘導される第1の動作中、または、自動化された動作中に、有利なことに、決定されたデータから患者の下肢のうち少なくとも一部分の長さ条件、位置、および/または動作半径の運動学的モデルの作成が可能となる。続いて、リハビリテーション機構の膝モジュールが、有利なことに、この軌道に沿って独立して動くことができ、その際に、寝たきり患者の下肢、特に脚部を誘導することができる。したがって、特定の患者の解剖学的健康状態に適した歩行治療が、治療要員の稼働率とは独立して可能である。
【0017】
さらに、第1の動作で生成される運動学的モデルは、有利なことに、患者の解剖学的パラメータ、例えば患者の大腿部の長さ、股関節部の位置、および実際の動作半径を提供する。これらのパラメータを他の治療形態で使用することができるだけなく、他の治療機器を制御するために、特に治療機器(ロボット)を自動的に駆動させるために、それらは、規則的な時間間隔で実施される測定の場合には、治療の過程の監視およびそれぞれの治療動作の適応も可能にする。
【0018】
好ましくは、一方法の工程では、脚部は、膝装具を用いて、作用点を介して、特に膝関節部、大腿部、および/または下腿部を介して、膝モジュールに固定される。脚部を膝モジュールに固定することによって、有利なことに、まず第1に、膝関節部の軌道を測定および/または決定するプロセス中に、脚部の第1の誘導された動作における脚部から膝モジュールへ、したがって測定装置に力の伝達が可能となり、その上、治療中に、治療動作の自動実行における膝モジュールから脚部への力の伝達が可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、一方法の工程において、測定装置は、開始位置から進むことで、手動で誘導されおよび/または自動化された脚部の動作を、特に作用点、特に膝関節部の軌道として、2次座標の形式でまたは経時的に3次座標の形式で記録することが好ましい。開始位置は、特定の患者のとり得る動作に基づいて療法士によって手動で確立され、さもなければ、特定の患者の解剖学的健康状態の妥当な推定値に基づいて自動化された手段で確立される。作用点、特に膝関節部の得られる位置は、有利なことに、治療のその後の過程におけるさらなる動作のために基準点を形成することができる。
【0020】
一実施形態では、測定装置が、電動モータによって駆動される偏心器の角度位置から少なくとも2つのセンサの助けを借りて、2次座標の形式でまたは経時的に3次座標の形式で、取り付け箇所、特に膝関節部の軌道を決定することが好都合であると判明している。偏心器の角度位置から、作用点、特に膝関節部の軌道の2次座標または3次座標の座標を決定することによって、有利なことに、他のセンサを不要とすることが可能である。これは、有利なことに、付加的なセンサ技術のためのコスト、ならびに、センサーベースおよび/または手動よる測定のために費やす時間を削減することができ、比較的正確で再現性のある測定結果を同時に提供することができ、さらには、これは寝たきり患者の非常に正確かつ再現性のあるモデルを生成するためにも使用することができる。
【0021】
本発明によれば、少なくとも一方法の工程において、決定された2次座標または3次座標が、座標方程式の形式でモデル関数と比較され、このようにして、曲線フィッティングのコンテキストにおいて、回動点、特に股関節部の位置、および/または、作用点と回動点との間の長さ、特に寝たきり患者の大腿部の長さ、ならびに、軌道(Tn;Tn+1)の2つの位置と回動点(DP)との間の角度(θ_DP)が、2次または3次座標から決定されることがさらに好ましい。カーブフィッティングは、特にモデル関数またはいわゆるスプライン補間からも始まる測定データの最小自乗の最適化に基づいて、作用点、特に膝関節部のそれぞれ決定された軌道に対して、有利なことに、回動点、特に股関節部の位置の決定が可能になり、さらには、作用点(AP)と回動点(DP)との間の長さ、特に大腿部の長さを、単に作用点、特に膝関節部のすでに記録された軌道のみから、手動で誘導されたおよび/または自動化された動作中に決定することが可能となる。この「初期化」動作は必須であり、実際には患者が管理することができる動作半径を決定するために、どんな場合でも療法士によって実行されなければならない。
【0022】
一実施形態では、特に(若い)患者では、ほぼ一定の位置の回動点、特に股関節部によって、モデル関数として、特に円に対して座標方程式(Yn - YH)2+(Zn - ZH)2=LO
2を使用する場合は、都合がよいことが証明されており;円の中心点のパラメータとして、回動点、特に股関節部の位置を使用し、円の半径として、作用点と回動点との間の長さ、特に寝たきり患者の大腿部の長さを使用する。
【0023】
あるいは、一実施形態では、特に(高齢の)患者では、回動点、特に股関節部の「可変的な」位置、すなわち、動作中に変化する回動点の位置によって、モデル関数として、特に楕円に対して座標方程式の式(1)を使用する場合も都合がよいことが証明されており;楕円の中心点のパラメータとして、回動点、特に股関節部の位置に従う関数を使用し、楕円の長半径として、作用点と回動点との間の長さ、特に寝たきり患者の大腿部の長さを使用する。
【0024】
【0025】
モデル関数のような円の座標方程式の使用は、有利なことに、回動点、特に股関節部の位置、および、作用点と回動点との間の長さ、特に患者の大腿部の長さを決定する数学的に単純な可能性を提供することができるが、他のより複雑なモデル関数、例えば楕円の座標方程式の使用は、有利なことに、回動点、特に患者の股関節部の位置が脚部の動作中にわずかに変化する(異なる)場合を反映することができる。
【0026】
本発明のさらなる実施形態では、一方法の工程において、制御モジュールが、膝モジュールを用いて少なくとも寝たきり患者の脚部の関節、筋肉、および腱の計画的なリハビリテーション動作を制御するために提供され、当該制御モジュールは、好ましくは、運動学的モデルから生成される患者固有のデータから、軌道、特に新たに修正した軌道を、作用点、特に膝関節部に対する患者の脚部のリハビリテーション動作のために決定し、これらの軌道に基づいて、好ましくは利用者の入力によって膝モジュールを制御する場合は都合がよいことが証明されている。続いて、作用点、特に膝関節部の手動で誘導されたおよび/または自動化された軌道の1回のみの記録の後、すでに記録された軌道が再生され、および/または、新たに修正した軌道に従って修正された動作が、リハビリテーション機構および/または膝モジュールの助けを借りて実行されることが実際の運動療法中に可能である。このようにして、寝たきり患者の運動療法を、医療従事者の稼働率とは独立して実行することができ、いつでも、必要なだけ提供することができる。
【0027】
また、リハビリテーション機構および/または膝モジュールは、脚部の手動で誘導されおよび/または自動化された動作中に、作用点および回動点によって定められる軸に沿った力の影響が、リハビリテーション機構および/または寝たきり患者の脚部上の膝モジュールを通して回避されるといった方法で、制御モジュールの助けを借りて制御される実施形態が有利である。このようにして、療法士によって手動でおよび/または自動化された方法で誘導される第1の動作において、有利なことに、患者の自然な動作に関してリハビリテーション機構の影響および/または膝モジュールによる測定値のずれを回避することが可能になる。さらに、このような制御は、装置の機械的抵抗が療法士によって補正される必要がないので、リハビリテーション機構および/または膝モジュールの操作をより容易に行うことができる。
【0028】
さらに、本発明による測定方法の実施形態は、制御モジュールは、寝たきり患者の作用点、特に膝関節部が、膝モジュールおよび任意の膝装具の助けを借りて、新たに修正した軌道に沿って移動するといった方法で、作用点、特に膝関節部の算出軌道に基づいて、膝モジュールおよび/またはリハビリテーション機構を制御することが好都合であると証明されている。新たな測定が実行されなければならないことはなく、したがって、理学療法運動中の動作シーケンスは、特に変化する患者の動作半径または可動範囲に関して、治療プロファイルに自動的に適応することができる。
【0029】
本発明による好ましい実施形態では、一方法の工程において、脚部の各々の自動化された動作の後に、新たな値が、作用点と回動点との間の長さ、回動点の位置、および軌道上の2つの位置と回動点との間の角度に対して、作用点の各々の新たな経時的に記録された軌道から計算されて、これらの新たな値が、すでに測定された軌道の対応する値と比較される場合は都合がよいことが証明されている。
【0030】
本発明によれば、一方法の工程において、作用点と回動点との間の長さ、回動点の位置、および軌道上の2つの位置と回動点との間の角度に対する値の比較に基づいて、2つの連続して測定された軌道の各々の場合では、作用点と回動点との間の長さ、回動点の位置、および軌道上の2つの位置と回動点との間の角度に対する改良された値によって更新されたモデルが、最適化アルゴリズム、特に最小二乗アルゴリズムを用いて生成されるとすればさらに好ましい。
【0031】
最後に、一実施形態では、一方法の工程において、更新されたモデルの値が、脚部のさらなる自動化された動作の基礎として役立つことが都合よく証明されている。
【0032】
脚部の各自動化された動作の後に、新たな値は、作用点と回動点との間の長さ、回動点の位置、および軌道上の2つの位置と回動点との間の角度に対する作用箇所の各新たな経時的に記録された軌道から計算され、これらの新しい値は、以前のサイクルの測定値と比較され、以前のサイクルの軌道、すなわち患者の脚部の以前の自動化された動作を考慮に入れて最適化され、したがって、作用点と回動点との間の長さ、回動点の位置、および軌道上の2つ点と回動点との間の角度に最適化される値が、脚部の更なる自動化された動作の基礎として使用される場合、リハビリテーション機構によって自動化された方法で誘導される治療動作は、有利なことに、治療中に特定の患者の解剖学的健康状態に適応することができる。このようにして、リハビリテーション機構には、例えば膝装具の滑りおよび/またはリハビリテーション機構に対する患者の全身の移動によるずれに対して、または、他の変化に対して、ほぼ即座に、特に各サイクルの後に、すなわち患者の脚部の自動化された完全な治療動作後に、同様に自動化された方法で反応する可能性を有し、適切な場合には、誤差限界値に基づいて、自動化された治療動作に対する補正を実行する可能性も有する。
【0033】
「機械学習」のこの可能性は、有利なことに、リハビリテーション機構の助けを借りて、提供される誤り補正の可能性によって、装置自体の変化によって生じるか、または、使用中の患者の変化によって生じるかどうかにかかわらず、外部干渉に対して強い運動療法の個別化された形態を患者に提供することを可能にする。
【0034】
問題のタイプの装置と比較して、このような測定方法を実行する本発明による装置は、脚部の動作中に単に作用点、特に膝関節部のみの軌道を記録および/または決定する測定装置;ならびにこうして得られたデータから患者の下肢の少なくとも一部の長さ条件、位置、および/または動作半径の運動学的モデルを作成するモデル生成手段を特徴とする。
【0035】
本発明による装置は、有利なことに、寝たきり患者の脚部の動作中に、単に運動学的動作データのみから、他のセンサ、例えば光学センサを使用することなく、作用点、特に膝関節部の軌道の自動化された記録および/または決定を可能にする。本発明による装置は、有利なことに、こうして得られたデータから、患者の下肢のうち少なくとも一部の長さ条件、位置、および/または動作半径からなる運動学的モデルを作成することも可能にする。
【0036】
装置の好ましい実施形態では、測定装置は、電動モータのおよび/または偏心器の軸の角度位置を決定するための少なくとも2つのセンサを備える。このようにして、サーボモータのロータリエンコーダをセンサをとして使用することができるので、さらなるセンサ技術を必要としないことが有利である。
【0037】
膝モジュールを用いて寝たきり患者の脚部の少なくとも関節、筋肉、および腱の計画的なリハビリテーション動作を制御するのための制御モジュールが設けられており、制御モジュールは、好ましくは、運動学的モデルから生成される患者固有のデータから、軌道、特に新たに修正した軌道を、作用点、特に膝関節部に対する患者の脚部のリハビリテーション動作に対して決定するように、および、これらの軌道に基づいて、好ましくは利用者の入力によって膝モジュールを制御するように構成される場合も有利である。制御モジュールの助けを借りて、リハビリテーション動作がすでに定めた軌道に続くような方法で、リハビリテーション機構および/または膝モジュールを有利に制御することができる。
【0038】
装置のさらなる好ましい実施形態では、膝モジュールは、寝たきり患者の膝関節部を受け入れる少なくとも1つの膝装具;膝装具に連結している連結要素;連結要素が固定される延長アーム;および制御モジュールを用いて駆動することができ、脚部の関節、筋肉、および腱は、作用箇所、特に寝たきり患者のその中に受け入れられた膝関節部を介して、計画的なリハビリテーション動作を実行するといった方法で、延長アームおよび連結要素を介して、規定の力を膝装具にもたらす機械的装置を備える。この種の構成は、有利なことに、膝モジュールに対する膝装具の動作を可能にし、したがって、治療動作の動作の自由度を有利に増加させることができる。
【0039】
最後に、一実施形態によれば、リハビリテーション機構は、連結要素によって膝装具および/または延長アームに採用される角度を監視する少なくとも1つの角度センサ;および/または延長アームおよび連結要素を介して膝装具にもたらす力を監視する力覚センサを備える場合に有利である。膝モジュールに対して可動である膝装具の場合、それは、有利なことに、治療動作のための動作の自由度の数を増加させることができ、角度センサは、センサと組み合わせて、膝関節部の軌道の自動化された記録および/または決定を可能にする。
【0040】
本発明は、有利なことに、患者の少なくとも1つの初期化動作中に、作用点、特に膝関節部の軌道の記録および/または決定のみに基づいて、外科的介入なしに、股関節部、膝関節部、および/または大腿部といった、寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径の決定を可能にする。本発明は、複雑かつ高価なセンサ技術の必要性を排除して、有利なことに、患者の動作半径の運動学的モデルを利用可能とし、その運動学的モデルのパラメータは、運動療法内で新たな治療手法を確立するための基礎として役立つことができ、さらに、他の自動化された治療法および調査方法の開始モデルとしても役立つことができる。「機械学習」機能によって、本発明は、リハビリテーション機構の助けを借りて、提供される誤り補正の可能性により、外部干渉に対して強い個別化された運動療法を患者にも提供することを可能にする。
【0041】
本発明のさらなる詳細および尚一掃の利点は、好ましい例示的実施形態に基づいて、しかしながら本発明がそれに限定されずに、添付の概略図と併せて以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】股関節部、膝関節部、および/または大腿部といった、寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための測定方法の第1のフローチャートを示す。
【
図2a】運動療法中に脚部のとり得る動作における寝たきり患者の脚部および胴体を示す。
【
図2b】基準となる座標系中の3つの2次座標、および、カーブフィッティング前のとり得るモデル関数に基づいた、
図2aの動作から得られる膝関節部の軌道を示す。
【
図2c】ここで円の形の適合したモデル関数、さらには、大腿部の長さおよび股関節部の位置に対する適合から生成されるパラメータによって、
図2bによる膝関節部の軌道を示す。
【
図3】膝関節部の軌道の2次座標に、楕円モデル関数を適合したものを示す。
【
図4】本発明による方法を実施する装置のリハビリテーション機構からなる膝モジュールの左側伸長アームの斜視図を示す。
【
図5】
図4による伸長アームの一例を拡大した側面図で示す。
【
図6】ベッドが垂直位置へ移動する前の従来技術による従来のベッド、特にリハビリテーション機構の適用された膝モジュールおよび足モジュールを備えた集中治療ベッドに固定した寝たきり患者の斜視図を示す。
【
図7a】患者の脚部の屈曲または伸展のために、膝装具を介してリハビリテーション機構によって作り出される軌道を示す。
【
図7b】患者の脚部の屈曲または伸展のために、膝装具を介してリハビリテーション機構によって作り出される軌道を示す。
【
図7c】患者の脚部の屈曲または伸展のために、膝装具を介してリハビリテーション機構によって作り出される軌道を示す。
【
図8】適合したモデル関数による患者の大腿部の作用点からなる軌道、ならびに、脚部がリハビリテーション機構および/または膝モジュールによって上昇するときに、作用点を介して患者の脚部に及ぼされる力、さらには、作用点および回転点によって定められる軸に沿った寝たきり患者の脚部上の力の作用を示す。
【
図9】軌道上の2つの位置と回転点との間の、ここで具体的には、作用点の最大仰角を有する角度θ
maxと作用点の最小仰角を有する角度θ
minとの間のカーブフィッティングの関係において、決定される角度を示す。
【
図10a】自動誤り補正および外部干渉への迅速な適応の可能性を備えた、股関節部、膝関節部、および/または大腿部といった寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための本発明による好ましい測定方法からなる第2のフローチャート(2つ図に分けられた)を示す。
【
図10b】自動誤り補正および外部干渉への迅速な適応の可能性を備えた、股関節部、膝関節部、および/または大腿部といった寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための本発明による好ましい測定方法からなる第2のフローチャート(2つ図に分けられた)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明では、同一の参照符号は、同一または同等の構成要素を示す。
【0044】
図1は、股関節部98、膝関節部93、および/または大腿部96といった、寝たきり患者90の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための測定方法のフローチャートを示す。
【0045】
第1に、リハビリテーション機構30の少なくとも1つの膝モジュール50が、患者90の膝関節部93に動作可能に接続している。このために、脚部92、特に膝関節部93、大腿部96、および/または下腿部97は、例えば膝装具51を用いて膝モジュール50に固定させることができる(
図4および
図6も参照)。
【0046】
続いて、第2の方法の工程では、測定装置68を用いることで、膝関節部93の軌道Tを、脚部92の動作中に、特に療法士によって行われる初期化動作中に、リハビリテーション機構30の膝モジュール50によって、記録および/または決定することができる。この初期化動作の間、脚部92の手動で誘導した動作を通じて、リハビリテーション機構30および/または膝モジュール50による寝たきり患者90の脚部92に及ぼした力Nの影響が回避されるというような方法で、リハビリテーション機構30および/または膝モジュール50は制御モジュール60の助けを借りて制御される場合、それは有利であり得る。
【0047】
図10aおよび10bは、自動誤り補正および外部干渉への迅速な適応の可能性を備えた股関節部98、膝関節部93、および/または大腿部96といった、寝たきり患者の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための本発明による好ましい測定方法からなる第2のフローチャート(2つ図に分けられている)を示す。モデルの初期化は、
図1の第1のフローチャートに示されたそれと同等の方法でもたらされ、測定装置68は、このときに開始位置P
0から開始して、脚部92の手動での誘導および/または自動化された動作、特に経時的方法で3次座標Y
1/Z
1/t
1、Y
2/Z
2/t
2、・・・、Y
n/Z
n/t
nの形式で作用点APからなる軌道T
n;T
n+1を記録する。リハビリテーション機構30の少なくとも1つの膝モジュール50が患者90の脚部92に動作可能に接続している作用点APとして、膝関節部93、大腿部96、もしくは下腿部97、または、実際は脚部92のいかなる位置も選択することが可能であることが好ましい。
【0048】
測定装置68は、作用点AP、特に膝関節部93の軌道Tn;Tn+1を、順次、電動モータによって駆動される偏心器63;64の角度位置から少なくとも2つのセンサ681;682の助けを借りて、3次座標Y1/Z1/t1、Y2/Z2/t2、・・・、Yn/Zn/tnの形式で決定することができる。
【0049】
3次座標Y1/Z1/t1、Y2/Z2/t2、・・・、Yn/Zn/tnの形式で作用点APからなる軌道Tn;Tn+1の経時的記録は、まず第1に、計測時間t1、t2、…、tnを、測定された2次座標Y1/Z1、・・・、Yn/Znに割り当てることによって、有利なことに、脚部92の上昇動作と下降動作を分けることが可能であるといった利点をもたらす。第2に、このようにして決定することができる測定値のシーケンスを、有利なことに、最適化アルゴリズムを用いて最適化中に考慮することができ、したがって最適化の結果を改善することができる。これは、時間内で互いに隣接して存在している測定値が、測定された軌道Tn;Tn+1上にも隣接しているべきであり、ゆえに同様の物理的特性も有しているべきであるとの理解に基づいている。
【0050】
初期化に続いて、脚部92の各々が自動化された動作の後に、作用点APと回動点DPとの間の長さL0の新たな値、回動点DPの位置YH(t)/ZH(t)、および、軌道Tn+1上の2つの位置と回動点DPとの間の角度θ_DPを、各々が新たに経時的に記録された軌道Tn+1から計算して、すでに測定された軌道Tnの対応する値と比較することができるようになる。回動点DPの位置YH(t)/ZH(t)は、例えば回動点DPは患者90の股関節部98とすることができ、空間、すなわち実際の回転「位置」におけるYH(t1)=YH(t2)=・・・=YH(tn)およびZH(t1)=ZH(t2)=…=ZH(tn)を有するおおよその固定位置YH(t)/ZH(t)とすることができ、または、特に寛骨臼の摩耗のために高齢患者90での事例ではよくありえることだが、それは、動作中に位置が変化する回動点DP、特に患者90の股関節部98の「可変的な」経時的位置YH(t)/ZH(t)とすることができる。
【0051】
同時に、作用点APと回動点DP間との長さL0、回動点DPの位置YH(t)/ZH(t)、および、軌道Tn;Tn+1上の2つの位置と各場合における2つの連続して測定された軌道Tn,Tn+1の回動点DPとの角度の値との比較に基づいて、最適化アルゴリズム、特に最小二乗アルゴリズムを用いて、作用点APと回動点Dとの間の長さL0、回動点DPの位置YH(t)/ZH(t)、および、軌道Tn;Tn+1上の2つの位置と回動点DPとの間の角度θ_DPに対する改善された値を備えた更新モデルを生成することが可能であり、更新モデルのその値は、有利なことに、脚部92のさらなる自動化された動作の基礎としての役目を果たすことができる。
【0052】
したがって、本発明による測定方法は、このような測定方法を実行するための本発明による装置1が、有利なことに、自動動作シーケンス(「周期」)中に治療動作の「機械学習」を経ることができることを意味する。「機械学習」のこの可能性は、有利なことに、リハビリテーション機構30の助けを借りて、提供された誤り補正の可能性によって、リハビリテーション機構30自体の変化によって生じるか、または、使用中の患者90の変化によって生じるかを問わず、外部干渉に対して強い個別形式の運動療法を患者90に提供することを可能にする。
【0053】
図2a~2cは、記録および/または決定プロセスを図示する。
【0054】
図2aは、運動療法中に脚部92のとり得る動作における寝たきり患者90の脚部92および胴体を示す。
【0055】
図2bは、この動作から生じる、基準となる座標系中の3つの2次座標Y
n/Z
nに基づく膝関節部93の軌道T、さらにはカーブフィッティング前のとり得るモデル関数Fを示す。開始位置P
0から始まり、手動で誘導される脚部92の動作中に、膝関節部93の軌道Tを、好ましくは測定装置68によって、特に2次座標Y
1/Z
1、Y
2/Z
2、・・・、Y
n/Z
nの形式で記録することができる。2次座標Y
1/Z
1、Y
2/Z
2、…、Y
n/Z
nの決定には、有利なことに、少なくとも2つのセンサ681;682を活用して、電動モータによって駆動する偏心器63;64の角度位置からもたらせることで可能である(
図4、5、7a~c参照)。
【0056】
軌道Tは、有利なことに、特定された2次座標Y1/Z1;Y2/Z2;…/…;Yn/Znを、座標方程式の形式のモデル関数と比較することによって決定される。
【0057】
モデル関数Fとして、例えば、股関節部98の位置YH/ZHを円の中央点として、寝たきり患者90の大腿部部96の長さL0を円の半径とした円に対して、座標方程式(Yn-YH)2+(Zn-ZH)2=L0
2を使用することができる。
【0058】
図2cは、円の座標方程式の形式の適合したモデル関数Fによって、
図2bによる膝関節部93の軌道Tを示し、さらには、適合から生成され、大腿部96の長さL
0および股関節部98の位置Y
H/Z
Hに対するパラメータも示す。
【0059】
これに代えて、モデル関数Fとして楕円の座標方程式式(1)を使用することもでき、楕円の中心点のパラメータは、ここで、股関節部98の位置YH/ZHに基づいた関数MY(YH)/MZ(ZH)とすることができて、楕円の長半径のパラメータは、寝たきり患者90の大腿部96の長さL0とすることができる。用語「L0±ΔL」は、動作中の股関節部98の位置YH/ZHの起こり得る移動を表す。
【0060】
図3は、膝関節部93の軌道Tの2次座標Y
n/Z
nに対する楕円のモデル関数Fのそのような適合例を示し、股関節部98の位置Y
H/Z
Hの移動から生じる関数M
Y(Y
H)/M
Z(Z
H)を、楕円関数と分かるように、しかしモデル楕円の長半径に垂直な長半径によって、同様に表すことができる。
【0061】
最後に、こうして得られたデータから、モデル生成手段69の助けを借りて、患者90の下肢のうち少なくとも一部の長さ条件、位置、および/または動作半径からなる運動学的モデルを作成することが可能である。
【0062】
続いて、膝モジュール50を用いて寝たきり患者90の脚部92の少なくとも関節、筋肉、および腱の計画的なリハビリテーション動作を制御するのための制御モジュール60の助けを借りて、さらなる方法の工程では、好ましくは運動学的モデルから生成される患者固有のデータを使用して、膝関節部93のリハビリテーション動作のための軌道T、特に新しい修正した軌道Tを決定して、これらの軌道Tに基づいて、好ましくは利用者の入力に従って膝モジュール50を制御することが可能である。膝関節部93の算出軌道Tに基づいて、制御モジュール60は、膝モジュール50および任意に膝装具51の助けを借りて、これらの特に新しくかつ修正した軌道Tに沿って、寝たきり患者90の膝関節部93を移動するといった方法で、膝モジュール50および/またはリハビリテーション機構30を制御することができる。
【0063】
図8は、適合したモデル関数Fによって患者90の大腿部96上の作用点APの軌道T
n;T
n+1、ならびに、リハビリテーション機構30および/または膝モジュール50によって脚部92の上昇中に作用点APを介して患者90の脚部部92に及ぼされる力N1、さらには、作用点AP-回動点DP軸に沿った寝たきり患者90の脚部92上の力N2の影響をそれらに応じて示す。
【0064】
図9は、いずれの場合での軌道T
n;T
n+1の2点と回動点DPとの間のカーブフィッティングのコンテキストで決定される2つの角度θ_DPを一例として示し、ここで具体的には、作用点の最大仰角を有する角度θ
maxおよび作用点の最小仰角を有する角度θ
minを示す。
【0065】
角度θminおよびθmaxの差は、有利なことに、患者90の可動性、したがって治療によってなされる経過に関して情報を提供する。
【0066】
図4~7cは、例として、本発明による測定方法を実施する装置からなる実施形態の様々な図を示す。このようにリハビリテーション機構30および膝モジュール50の機械的機能に関しては、出願人による国際公開第2017/063639号(特許文献5)の全体を参照されたい。
【0067】
図4および5(国際公開第2017/063639号(特許文献5)の
図3および12に対応)は、例として、本発明による測定方法を実施するための装置のリハビリテーション機構30の膝モジュール50の左延長アーム53を、斜視図(
図4)および拡大側面図(
図5)にて示す。
【0068】
図6(国際公開第2017/063639号(特許文献5)の
図4に対応)は、従来技術による従来のベッド、特に集中治療ベッドに固定される寝たきり患者90の斜視側面図を示し、ベッドが垂直姿勢へ移動する前のリハビリテーション機構30の取り付けられた膝モジュール50および足モジュール40を備えたベッドである。
【0069】
測定方法を実行するための本発明による装置は、患者90の膝関節部93に動作可能に接続することができる少なくとも1つの膝モジュール50を有する少なくとも1つのリハビリテーション機構30を備え、少なくとも1つの電動モータ62、または、
図4に示すように、少なくとも2つの偏心器63;64を駆動するための少なくとも2つの電動モータ62を備える。
【0070】
本発明による装置は、脚部92の動作中に膝関節部93の軌道Tを記録しておよび/または決定するための測定装置68をさらに備え、測定装置68は、好ましくは、1つまたは複数の電動モータ62および/または偏心器63;63の軸の角度位置を決定するための少なくとも2つのセンサ681;682を備えることができる。
【0071】
さらに、本発明による装置1は、脚部92の動作中に膝関節部93の軌道Tを記録および/または決定する測定装置68によって得られたデータから、患者90の下肢のうち少なくとも一部の長さ条件、位置、および/または動作半径の運動学的モデルを作成するためのモデル生成手段69を備える。
【0072】
図6は、膝モジュール50を用いて、寝たきり患者90の脚部92の少なくとも関節、筋肉、および腱の計画的なリハビリテーション動作を制御するための制御モジュール60をさらに示し、計画的なリハビリテーション動作は、制御モジュール60を、好ましくは、運動学的モデルから生成される患者固有のデータから、膝関節部93のリハビリテーション動作に対する軌道T、特に新たな修正した軌道Tを決定して、これらの軌道Tに基づいて、好ましくは利用者の入力に従って膝モジュール50を制御するように構成することができる。
【0073】
膝モジュール50は、好ましくは、寝たきり患者90の膝関節部93を受け入れる少なくとも1つの膝装具51、膝装具51に連結した連結要素52、連結要素52が固定される延長アーム53、および、制御モジュール60を用いて制御されることができ、延長アーム53および連結要素52を介して、脚部92の関節、筋肉、および腱が、寝たきり患者90の膝関節部93を介して計画的なリハビリテーション動作を実行するといった方法で、規定の力Nを膝装具51にもたらす機械的装置61を備える。
【0074】
図7a~7cは、患者90の脚部92の屈曲および伸展のために、膝装具51を介してリハビリテーション機構30によって生成される軌道Tを図示する。連結要素52を経由して、膝装具51は、延長アーム53に堅く連結することもできるか、または、ここで分かるように、それは延長アーム53に可動に関節で連なることもできる。延長アーム53に可動に関節で連なる場合には、すなわち可動関節および関連するより大きな自由度の場合には、さらなる測定装置68を、特に角度センサ55の形態で、膝関節部93の軌道Tの正確な記録および/または決定のために提供できることが好ましい。
【0075】
最後に、
図5は、膝装具51および/または延長アーム53への連結要素52によって採用される角度を監視する角度センサ55を備えたリハビリテーション機構30の実施例を示す。これに代えてまたはこれに加えて、延長アーム53および連結要素52を介して膝装具51にもたらす力Nを監視する力覚センサ56を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、寝たきり患者90の下肢の長さ条件、位置、および/または動作半径を決定するための測定方法、ならびに、このような方法を実行するための装置1に関し、装置1では、リハビリテーション機構30の少なくとも1つの膝モジュール50が、患者90の膝関節部93に動作可能に接続しており、測定装置68が、リハビリテーション機構30の膝モジュール50によって脚部92の動作中に膝関節部93の軌道Tを記録および/または決定するため使用され、こうして得られたデータから、運動学的モデルが、モデル生成手段69によって作成される。これによって、有利なことに、少なくとも1つの初期化動作中に外科的介入なしに長さ条件、位置、および/または動作半径の決定が可能になる。高価なセンサ技術を必要とすることなく、本発明は、有利なことに、患者90の動作半径の運動学的モデルを利用可能とし、そのモデルパラメータは、運動療法内で新たな治療手法を確立するための基礎として、さらに、自動化された治療法および調査方法の開始モデルとして役立つことができる。
【符号の説明】
【0077】
10 ベッド、特に介護ベッド、医療ベッド、病院ベッド、または集中治療ベッド
11 ベッドフレーム
12 長手方向側面
13 横方向側面
14 長手方向の柵
15 横方向の柵
16 キャスタ
17 マットレス
21マットレスフレーム
30 リハビリテーション機構
32 ベッドフレーム11またはマットレスフレーム21に固定可能な、リハビリテーション機構30用支持プレート
40 足モジュール
41 固定手段
42 踏み面
43 固定ストラップ
50 膝モジュール
51 膝装具
52 連結要素
53 延長アーム
531 延長アーム53の遠位部分
532 延長アーム53の近位部分
533 延長アーム53の中間部分
54 受け入れ位置
55 角度センサ
56 力覚センサ
57 蝶ナット
60 制御モジュール
61 機械的装置
62 電動モータ
63 第1の偏心器
631 第1の偏心器63の偏心軸
632 第1の偏心器63の偏心ディスク
633 第1の偏心器63の制御ピン
64 第2の偏心器
641 第2の偏心器64の偏心軸
642 第2の偏心器64の偏心ディスク
643 第2の偏心器64の制御ピン
65 ラジアル軸受
66 すべり軸受
67 スライドブロック
68 測定装置
681 第1の偏心器63のセンサ
682 第2の偏心器64のセンサ
69 モデル生成手段
70 調整機構
80 安定化機構
90 患者
91 胸部-心臓/肺
92 脚部
93 膝関節部
94 足部
95 足底部
96 大腿部
97 下腿部
98 股関節部
F モデル関数
N1 作用点APを介して患者90の脚部92に及ぼされる力
N2 軸:作用点AP-回動点DPに沿った力
Tn;TN+1 軌道
L0 大腿部96の長さ
YN 膝関節部93の軌道TのY座標
Zn 膝関節部93の軌道TのZ座標
t1、t2、・・・、tn 測定時間
YH/ZH 寝たきり患者90の股関節部98の位置
AP 作用点
DP 回動点
θ_DP 軌道(Tn;Tn+1)上の2つの位置と回動点(DP)との間の角度