(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】脳情報取得用キャップ、および脳情報取得用キャップの生産方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20221012BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20221012BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221012BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20221012BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20221012BHJP
【FI】
A61B5/256
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y50/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2020196203
(22)【出願日】2020-11-26
(62)【分割の表示】P 2017073445の分割
【原出願日】2017-04-03
【審査請求日】2020-11-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)「笑顔で使えるブレイン・マシン・インタフェースの研究開発」に係わる委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(72)【発明者】
【氏名】森重 健一
(72)【発明者】
【氏名】大洞 裕
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-124380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0157777(US,A1)
【文献】国際公開第2016/061502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の開口部を有し、脳情報を取得するためのセンサが保持される複数の保持部を有する脳情報取得用キャップの生産方法であって、
ユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する頭部形状取得ステップと、
前記頭部形状取得ステップで取得した頭部の立体形状を示す情報について、脳情報を取得するためのセンサが保持される複数の保持部が配置される位置情報と、前記保持部間を接続するロッドであるリンク部が配置される位置情報とを取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップで取得した保持部が配置される位置情報が示す位置に保持部の立体形状を示す情報を配置し、前記位置情報取得ステップで取得したリンク部が配置される位置情報が示す位置にロッド状の立体形状を示す情報を配置して脳情報取得用キャップの立体形状を示す情報を取得するキャップ形状取得ステップと、
前記キャップ形状取得ステップで取得した立体形状を示す情報を用いて脳情報取得用キャップを成形する成形ステップと、を備えた脳情報取得用キャップの生産方法。
【請求項2】
ユーザの頭部の異なる位置において取得された複数の断層画像を受け付ける受付ステップを更に備え、
前記頭部形状取得ステップは、前記受付ステップにおいて受け付けた複数の断層画像を用いて、ユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する請求項1記載の脳情報取得用キャップの生産方法。
【請求項3】
前記キャップ形状取得ステップは、前記保持部の形状情報を用いて、前記脳情報取得用キャップの立体形状を示す情報を取得する請求項1または請求項2記載の脳情報取得用キャップの生産方法。
【請求項4】
前記成形ステップは、前記キャップ形状取得ステップで取得した立体形状を示す情報を用いて、3Dプリンタを用いた3Dプリントにより脳情報取得用キャップを成形する請求項1から請求項3いずれか一項記載の脳情報取得用キャップの生産方法。
【請求項5】
前記保持部は、貫通孔を有しており、
前記成形ステップにより成形した前記保持部の貫通孔を塞ぐように、伸縮性を有する生地を取付けるステップと、
前記貫通孔に取り付けられた生地に、センサが取り付けられるセンサアダプタを
、当該貫通孔内において動くことができるとともに、ユーザの頭部側に付勢されるよう取り付けるステップと、をさらに備えた請求項1から請求項4いずれか一項記載の脳情報取得用キャップの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波等の脳に関する情報を取得するために用いられるキャップ等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、脳波計測用電極を備える脳波計測用電極付キャップが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-240485号公報(第1頁、第1図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の脳波計測用電極付キャップ等の脳に関する情報を取得するために用いられるキャップにおいては、布等の素材で構成されて頭部全体を覆う形状を有しているため、通気性が悪い、という課題があった。
【0005】
例えば、キャップの通気性が悪いと、キャップを頭部にかぶった際に、被験者に不快感を与えてしまい、正確な脳に関する情報を取得できなくなる恐れがある。また、通気性が悪いため、頭部にかぶった際に、被験者の頭部に異常な発汗が生じて頭皮表面等の電気抵抗等が変化してしまい、正確な脳に関する情報を取得できなくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解消するためになされたものであり、通気性を向上させた脳情報取得用キャップ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の脳情報取得用キャップは、脳情報を取得するためのセンサを保持するための複数の保持部と、保持部と接続された複数のリンク部とを備えた脳情報取得用キャップである。
【0008】
かかる構成により、通気性を向上させることができる。これにより、例えば、適切な脳情報の取得が可能となる。
【0009】
また、本発明の脳情報取得用キャップは、前記脳情報取得用キャップにおいて、保持部およびリンク部は、樹脂製である脳情報取得用キャップである。
【0010】
かかる構成により、保持部とリンク部とを容易に一体成型することができる。
【0011】
また、本発明の脳情報取得用キャップは、前記脳情報取得用キャップにおいて、リンク部と保持部とは、リンク部の端部の側面が、保持部の、上面側または下面側に埋め込まれるよう接続されている脳情報取得用キャップである。
【0012】
かかる構成により、保持部とリンク部との接続強度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の脳情報取得用キャップは、前記脳情報取得用キャップにおいて、リンク部と保持部との接続部分において、リンク部と、保持部の側面との境界が曲面となっている脳情報取得用キャップである。
【0014】
かかる構成により、保持部とリンク部との接続強度を高めることができる。
【0015】
また、本発明の脳情報取得用キャップは、前記脳情報取得用キャップにおいて、保持部は、1以上のリンク部を介して、直接または間接的に、他の保持部と接続されている脳情報取得用キャップである。
【0016】
かかる構成により、ユーザの頭部に合せた自由な形状の脳情報取得用キャップを得ることができる。
【0017】
また、本発明の脳情報取得用キャップは、前記脳情報取得用キャップにおいて、保持部は貫通孔を有しており、貫通孔内に、センサが取付けられるセンサアダプタが、ユーザの頭部側に付勢されるよう保持される脳情報取得用キャップである。
【0018】
かかる構成により、センサを頭部に適切に当接させることができる。
【0019】
また、本発明の脳情報取得用キャップの生産方法は、1以上の開口部を有し、脳情報を取得するためのセンサが保持される複数の保持部を有する脳情報取得用キャップの生産方法であって、ユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する頭部形状取得ステップと、頭部形状取得ステップで取得した頭部の立体形状を示す情報について、脳情報を取得するためのセンサが保持される複数の保持部が配置される位置情報を取得する位置情報取得ステップと、位置情報取得ステップで取得した位置情報を用いて脳情報取得用キャップの立体形状を示す情報を取得するキャップ形状取得ステップと、キャップ形状取得ステップで取得した立体形状を示す情報を用いて脳情報取得用キャップを成形する成形ステップと、を備えた脳情報取得用キャップの生産方法である。
【0020】
かかる構成により、ユーザの頭部形状に合わせた適切な脳情報取得用キャップを生産することができる。
【0021】
また、本発明の脳情報取得用キャップの生産方法は、前記脳情報取得用キャップの生産方法において、ユーザの頭部の異なる位置において取得された複数の断層画像を受け付ける受付ステップを更に備え、頭部形状取得ステップは、受付ステップにおいて受け付けた複数の断層画像を用いて、ユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する脳情報取得用キャップの生産方法である。
【0022】
かかる構成により、各ユーザの断層画像を用いて、各ユーザの頭部に合った脳情報取得用キャップを生産することができる。また、断層画像を有効利用して、適切な脳情報取得用キャップを生産することができる。
【0023】
また、本発明の脳情報取得用キャップの生産方法は、前記脳情報取得用キャップの生産方法において、キャップ形状取得ステップは、保持部の形状情報を用いて、脳情報取得用キャップの立体形状を示す情報を取得する脳情報取得用キャップの生産方法である。
【0024】
かかる構成により、予め決められた形状の保持部を配置した脳情報取得用キャップを生産することができる。
【0025】
また、本発明の脳情報取得用キャップの生産方法は、前記脳情報取得用キャップの生産方法において、成形ステップは、キャップ形状取得ステップで取得した立体形状を示す情報を用いて、3Dプリンタを用いた3Dプリントにより脳情報取得用キャップを成形する脳情報取得用キャップの生産方法である。
【0026】
かかる構成により、3Dプリントにより、ユーザに合せた適切な脳情報取得用キャップを、一体単位から、オンデマンドで生産することができる。
【0027】
また、本発明の脳情報取得用キャップの生産方法は、前記脳情報取得用キャップの生産方法において、脳情報取得用キャップは、複数の保持部と接続された複数のリンク部と、を備えている脳情報取得用キャップの生産方法である。
【0028】
かかる構成により、ユーザの頭部形状に合わせた通気性を向上させた脳情報取得用キャップを生産することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、通気性を向上させた脳情報取得用キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態における脳情報取得用キャップの一例を示す斜視図(
図1(a))、上面図(
図1(b))、正面図(
図1(c))、および右側面図(
図1(d))
【
図2】同脳情報取得用キャップの保持部とリンク部との接続部分を下面側から見た拡大斜視図(
図2(a))、および保持部とリンク部との接続部分の変形例を示す側面図(
図2(b))
【
図3】同脳情報取得用キャップに取付けられるセンサアダプタの一例を示す側面図(
図3(a))、センサアダプタの蓋部の平面図(
図3(d))を示す図、センサアダプタの対向部の平面図(
図3(c))、および対向部の断面図(
図3(d))
【
図4】同脳情報取得用キャップの脳波計の電極を保持する保持部の配置を説明するための模式図
【
図5】同脳情報取得用キャップの保持部に対してセンサアダプタを取付けた状態を示す側面図(
図5(a))、およびセンサアダプタを取付けた脳情報取得用キャップをユーザの頭部に装着した場合の、保持部近傍の断面図(
図5(b))
【
図6】同脳情報取得用キャップの保持部に対するセンサアダプタの取付け方を示す分解斜視図
【
図7】同脳情報取得用キャップを生産するためのキャップ生産システムのブロック図
【
図8】同脳情報取得用キャップの生産方法について説明するフローチャート
【
図9】同脳情報取得用キャップの生産方法を説明するための、キャップ生産システムの図示しない表示部等によりモニタに表示される表示例を示す図(
図9(a)~
図9(b))
【
図10】同脳情報取得用キャップの生産方法を説明するための、キャップ生産システムの図示しない表示部等によりモニタに表示される表示例を示す図(
図10(a)~
図10(b))
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、脳情報取得用キャップ等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0032】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における脳情報取得用キャップの一例を示す斜視図(
図1(a))、上面図(
図1(b))、正面図(
図1(c))、および右側面図(
図1(d))である。
図1(b)において正面側は右側である。
【0033】
図2は、本実施の形態における脳情報取得用キャップの一部である保持部とリンク部との接続部分を模式的に示した下面側から見た拡大斜視図(
図2(a))、および保持部とリンク部との接続部分の変形例を示す側面図(
図2(b))である。
【0034】
図3は、本実施の形態における脳情報取得用キャップに取付けられるセンサアダプタの一例を示す側面図(
図3(a))、センサアダプタの蓋部の平面図(
図3(b))、センサアダプタの対向部の平面図(
図3(c))、および対向部の断面図(
図3(d))である。
【0035】
脳情報取得用キャップ1は、脳情報を取得するために用いられるキャップである。キャップは、例えば、頭部に装着されるものである。キャップを頭部に装着することは、キャップを頭部にかぶることも含む概念である。脳情報とは、ユーザの脳に関する情報である。脳に関する情報とは、例えば、脳波(Electroencephalogram:EEG)である。また、脳に関する情報は、例えば、脳の活動によって変化する頭皮表面の温度等示す情報であってもよく、脳から発生する音や、脳により反射される音等の情報であっても良い。ここでのユーザとは、例えば、検査対象者や被験者と考えてよい。脳情報取得用キャップ1は、例えば、脳情報を取得するための1以上のセンサ(図示せず)や、センサの電極等のセンサの一部(図示せず)等が取付け可能なものである。なお、本実施の形態においては、脳情報を取得するための1以上のセンサやセンサの一部等が取付けられていないものを脳情報取得用キャップ1と考えているが、センサ等が取付けられているものを、脳情報取得用キャップ1と考えても良い。なお、本実施の形態においては、脳情報取得用キャップ1を用いて取得する脳情報が脳波である場合を例に挙げて説明する。
【0036】
脳情報取得用キャップ1は、複数の保持部101と、保持部101と接続された複数のリンク部102とを備えている。各保持部101は、1以上のリンク部102と接続されている。脳情報取得用キャップ1は、例えば、ユーザの頭部に沿って配置された複数の保持部101を、複数のリンク部102で接続したものである。例えば、複数の保持部101が、複数のリンク部102により適宜接続されていることにより、脳情報取得用キャップ1は、ユーザの頭部に装着すること(例えば、かぶせること)が可能な形状となっている。脳情報取得用キャップ1は、例えば、複数の保持部101を接続用の部材として用いて複数のリンク部102を網目状に接続したキャップと考えても良く、複数のリンク部102を複数の保持部101を交点として網目状に接続したキャップと考えてもよい。なお、
図1においては、複数のリンク部102のそれぞれが1以上の保持部101と接続されている脳情報取得用キャップ1について示しているが、本発明においては、脳情報取得用キャップ1は、保持部101と接続されていないリンク部を有していても良い。
【0037】
複数の保持部101は、脳情報を取得するためのセンサ(図示せず)を保持するためのものである。保持部101は、例えば、脳情報取得用キャップ1のセンサを保持する部分である。保持部101は、例えば、脳情報取得用キャップ1を構成する部材であって、センサを保持するための部材であってもよい。複数の保持部101がセンサを保持するということは、複数の保持部101のそれぞれが1以上のセンサを保持することであってもよく、複数の保持部101が一または二以上のセンサの一部をそれぞれ保持することであっても良い。ここでのセンサの一部とは、例えば、センサのユーザの頭皮に接触する、あるいは近接して配置される部分であり、例えば、センサの電極や、物理量を電気信号に変換するトランスデューサ等である。ただし、トランスデューサをセンサ自身と考えてもよい。例えば、脳情報取得用キャップ1の複数の保持部101は、一のセンサの頭皮に接触させる複数の部分をそれぞれ保持するものであっても良い。ここでは、複数の保持部101のそれぞれが、脳波を検出する一のセンサである脳波計(図示せず)の複数の電極を一つずつ保持するものである場合を例に挙げて説明する。なお、脳波計をセンサと考える代わりに、複数の電極を用いて電気信号を取得する手段(図示せず)等をセンサ等と考え、このセンサが取得した情報を脳波計に送信するようにしてもよい。保持部101には、センサ、またはセンサの一部が直接保持されても良く、ホルダ(図示せず)等に取付けられたセンサまたはセンサの一部が、各保持部101に保持されること等により、センサ、またはセンサの一部が間接的に保持されても良い。ここでは、一例として、脳波計の複数の電極が、
図3に示すようなセンサアダプタ3に取付けられ、このセンサアダプタ3が、脳情報取得用キャップ1に取付けられる場合を例に挙げて説明する。
【0038】
本実施の形態の脳情報取得用キャップ1が有する保持部101は、上面と下面とを有する部材である。保持部101の上面とは、保持部101の、ユーザの頭部側とは逆側となる面であり、脳情報取得用キャップ1の外側の面と考えてもよい。。保持部101は、その上面から下面までを貫通する貫通孔1011を有している。保持部101は、環状の形状を有する環状部材である。貫通孔1011の上面側の平面形状と下面の平面形状とは半径が異なる同心円形状となっており、下面側の半径が、上面側の半径よりも小さくなっている。例えば、貫通孔1011は略円錐台形状を有している。保持部101の外周の平面形状が円形であり、貫通孔1011の平面形状が円形であるため、保持部101の平面形状は円環形状となっている。センサアダプタ3は、その一部が、各保持部101の貫通孔1011内に配置される。なお、本発明においては、1以上の保持部101の貫通孔1011の形状が、接続されるロッド1011等との位置関係によって、他とは異なる形状を有していても良い。また、本発明においては、保持部101の貫通孔1011の平面形状は、円形でなくても良い。また、貫通孔1011は、例えば、略円錐台形状でなくてもよい。また、保持部101の外形は円形でなくてもよく、例えば多角形であってもよい。また、保持部101は、例えば、環状部材でなくてもよく、例えば、環状の一部に切り欠きを有する平面形状がC字形状の部材等であってもよい。複数の保持部101は、同じ形状であっても良く、異なる形状であっても良く、同じ形状のものと異なる形状のものが混在していてもよい。
【0039】
本実施の形態の脳情報取得用キャップ1においては、例えば、取得する脳情報に応じた数の保持部101が、取得する脳情報に応じて決定される位置に配置される。このようには位置した複数の保持部101に、脳情報を取得するセンサやセンサの一部を保持させることで、取得する脳情報に応じた位置にセンサやセンサの一部を配置することが可能となる。本実施の形態においては、脳情報取得用キャップ1を用いて脳波を取得するため、脳情報取得用キャップ1の複数の保持部101を、この脳情報取得用キャップ1を装着したユーザの脳波を測定する際の、脳波計の複数の電極が配置される複数の位置にそれぞれ配置する例について説明する。
【0040】
取得する脳情報が脳波である場合、脳波計の電極の取付け位置は、例えば、国際10-20法と呼ばれる電極位置の決め方に従って決定される。このため、複数の保持部101も、この国際10-20法と呼ばれる方法で決定される位置に配置してもよい。国際10-20法とは、複数の電極位置を、鼻根部と後頭結節、左右の耳介前点を基準にして、ユーザの頭部を、距離の10%または20%で区切って決定する方法である。例えば、ユーザの鼻根部と後頭結節を頭皮に沿って結ぶ曲線を、その長さの10%または20%で区切った場合の、区切られた各点が電極の取付け位置となる。
【0041】
図4は、本実施の形態の脳波計の電極を保持する保持部101の配置の例を説明するための図であり、ユーザの頭部を、頭頂側から見た場合の模式図である。図において、文字が配置されている丸い図形は、保持部101の配置される位置を示しており、ここでは、その文字は、位置の識別子であるとする。
【0042】
以下、本実施の形態の保持部101の配置について、
図4を用いて説明する。ユーザの頭部を頭頂側から見て、鼻根部41と後頭結節42とを結んだ線と、左の耳介前点43と右の耳介前点44とを結んだ線との両方を2分する点をCzとする。なお、
図4の識別子Czで示される位置をここでは単にCzと呼ぶ。かかることは他の位置についても同様である。Czを通って鼻根部41から後頭結節42とを結ぶ頭皮に沿った曲線を、その長さの10%毎に分割した点と後頭結節42とを、それぞれ保持部101を配置する位置に設定する。また、Czを通って左の耳介前点43と右の耳介前点44とを結ぶ頭皮に沿った曲線を、その長さの10%毎に分割した点を、それぞれ保持部101を配置する位置に設定する。また、上記で設定した鼻根部41に最も近いFpzと、左の耳介前点43に最も近いT7と、後頭結節42の位置を除く後頭結節42に最も近い位置(ただし、後頭結節42の位置を除く)であるOzを結ぶ頭部の外周に沿った曲線を、その長さの10%毎に分割した点を、それぞれ保持部101を配置する位置に設定する。また、上記で設定した鼻根部41に最も近いFpzと、右の耳介前点44に最も近いT8と、後頭結節42の位置を除く後頭結節42に最も近い位置(ただし、後頭結節42の位置を除く)であるOzを結ぶ頭部の外周に沿った曲線を、その長さの10%毎に分割した点を、それぞれ保持部101を配置する位置に設定する。さらに、上記で設定した各位置を結ぶ頭部に沿った曲線を2以上に分割する位置(例えば、2以上に等分する位置)を適宜設定し、その他の電極の配置が必要な位置を設定することで、
図4に示すように、複数の保持部101の配置が決定される。なお、その他の電極とは、例えば、オペアンプ(図示せず)のグランドに相当する電極や、基準電極と呼ばれる0Vを決めるために用いられる電極であり、ここでは、CMSおよびDRLに配置される。
図4においては、64チャンネルの脳波計測用電極をそれぞれ保持するための保持部101と、オペアンプのグランドに相当する電極と、基準電極との2チャンネルの電極をそれぞれ保持する保持部101とを配置する例を示している。
【0043】
なお、ここで述べた複数の保持部101の配置は一例であり、本発明においては、上記以外の配置としても良いことはいうまでもなく、また、上記以外の数の保持部101を配置するようにしてもよい。例えば、上記において、Czを通って鼻根部41から後頭結節42とを結ぶ頭皮に沿った曲線を、その長さの10%、20%、20%、20%、20%、および10%に分割した点を保持部101の配置としても良い。例えば、複数の保持部101が保持するセンサが、脳波以外の脳情報を取得するセンサである場合、上記以外の配置としても良い。
【0044】
本実施の形態の脳情報取得用キャップ1の複数の保持部101は、それぞれ、ユーザが脳情報取得用キャップ1を装着状態で、保持部101が保持するセンサの頭皮に当接される部分が、ユーザの頭部に対して対向するように配置される。例えば、保持部101が、上記のような環状部材である場合、ユーザが脳情報取得用キャップ1をかぶった状態で、保持部101の貫通孔1011を有する面の一方が、ユーザの頭部に対して対向するように配置される。保持部101は、例えば、ユーザの頭部表面の、この保持部101の貫通孔1011の中心軸と交わる位置における法線が、この保持部101の貫通孔1011の中心軸とほぼ一致するよう配置されることが好ましい。あるいは、保持部101は、例えば、この保持部のユーザの頭部側の面が、ユーザの頭部のこの面に対向する領域において接する面に平行となるように配置されることが好ましい。貫通孔1011の中心軸とは、例えば、貫通孔1011の伸びる方向に伸びる直線であって、貫通孔1011の平面形状である円の中心を通る直線である。また、貫通孔1011の中心軸とは、例えば、貫通孔1011の伸びる方向に伸びる軸であって、この中心軸上の2以上の点から貫通孔1011の側面に降ろした複数の垂線の長さがほぼ同じとなる軸であってもよい。
【0045】
なお、本実施の形態の脳情報取得用キャップ1には、保持部101と同様の形状の部材であって、センサを保持しない保持部が設けられていても良い。また、複数の保持部101は、それぞれ、センサが保持できるものであれば良く、センサを常時保持していなくても良く、例えば、センサを必要に応じて保持させることが可能なものであっても良い。また、必要に応じて、1以上の保持部101にセンサを保持させずに、脳情報を取得するようにしてもよい。
【0046】
リンク部102は、保持部101と接続されたロッドである。ロッドとは、例えば、棒状の部材である。ただし、本発明においては、リンク部102は、保持部101と接続されるものであれば、ロッドでなくても良く、例えば、帯状の部材であっても良い。リンク部102であるロッドの断面形状は、円形である。ただし、断面形状は、どのような形状であっても良く、例えば多角形であっても良い。本実施の形態の脳情報取得用キャップ1においては、複数のリンク部102が、長手方向において湾曲したロッドである場合について説明している。複数のリンク部102は、例えば、ユーザの頭部の形状に沿って湾曲したロッドであることが好ましい。ただし、本実施の形態の脳情報取得用キャップ1が有する複数のリンク部102の少なくとも一部は、例えば、直線状に伸びるロッドや、折れ曲がったロッドであってもよい。
【0047】
本実施の形態においては、各リンク部102が、二つの保持部101を接続している。各リンク部102は、二つの保持部101間を直接接続している。ただし、リンク部102は、2つの保持部101を間接的に接続するものであっても良い。2つの保持部101を間接的に接続するということは、例えば、二つの保持部101に、それぞれ異なるリンク部102が接続されるとともに、この異なるリンク部102同士を直接接続することや、他の部材(図示せず)を介してこの異なるリンク部102同士を接続されていることである。この他の部材は、例えば、リンク部102同士を連結するための部材である。この他の部材は、例えば、センサやセンサの一部の保持に用いられない保持部101と同様の形状を有する部材や、リンク部102同士を連結するための部材である。例えば、本実施の形態においては、脳情報取得用キャップ1が、複数の保持部101と、複数のリンク部102とにより構成されている場合を示しているが、更に、上記のような他の部材等を有しているようにして、保持部101の少なくとも一部がリンク部102により上記のような他の部材を介して間接的に接続されているようにしても良い。
【0048】
また、本発明においては、脳情報取得用キャップ1は、二つの保持部間を接続していない1以上のリンク部102を有していても良い。例えば、脳情報取得用キャップ1は、一つの保持部101だけに接続されている1以上のロッド状の部材等の、保持部101同士の接続に寄与していないロッド状の部材等の部材を有していても良い。
【0049】
脳情報取得用キャップ1は、複数の保持部101が、複数のリンク部102により適宜接続されて一体化された構造を有している。本実施の形態においては、
図4のFpzから、Fp1、AF7、F7、FT7、T7、TP7、P7、PO7、およびO1を経てOzに至る経路の保持部101、Fpzから、AFz、Fz、FCz、Cz、CPz、Pz、POz、およびOzを経てIzに至る経路の保持部101、並びにFpzから、Fp2、AF8、F8、FT8、T8、TP8、P8、PO8、およびO2を経てOzに至る経路の保持部101が、それぞれ経路順にリンク部102により接続されている。また、Fp1から、AF3、F3、FC3、C3、CP3、P3、およびPO3を経てO1に至る経路の保持部101、並びにFp2から、AF4、F4、FC4、C4、CP4、P4、およびPO4を経てO2に至る経路の保持部101が、それぞれ経路順に複数のリンク部102により接続されている。また、AFzから、AF3、AFz、およびAF4を経てAF8に至る経路の保持部101、F7から、F5、F3、F1、Fz、F2、F4、およびF6を経てF8に至る経路の保持部101、FT7、FC5、FC3、FC1、FCz、FC2、FC4、およびFC6を経てFT8に至る経路の保持部101、Tzから、C5、C3、C1、Cz、C2、C4、およびC6を経てT8に至る経路の保持部101、TP7から、CP5、CP3、CP1、CPz、CP2、CP4、およびCP6を経てTP8に至る経路の保持部101、P9から、P7、P5、P3、P1、Pz、P2、P4、P6、およびP8を経てP10に至る経路の保持部101、PO7から、PO3、CMS、POz、DRL、およびPO4を経て、PO8に至る経路の保持部101が、それぞれ経路順に複数のリンク部102より接続されている。また、TP7から、P9、Iz、P10を経てTP8に至る経路の保持部が、それぞれ経路順に複数のリンク部102により接続されている。
【0050】
ただし、脳情報を取得するために配置された複数の保持部101のうちのどの保持部101間を、複数のリンク部102で接続するかは問わない。例えば、上記のような接続の仕方に加えて、さらに、Fpzから、F1、FC1、C1、CP1、およびP1を経てOzに至る経路の保持部101を経路順にリンク部102により接続するようにしても良い。リンク部102の数を増加させると、脳情報取得用キャップ1の強度は高くなるが、柔軟性は低くなり、頭部に装着しにくくなる可能性がある。また、リンク部102の長さが長くなると、そのリンク部102が破損しやすくなるため、長さをできるだけ短くすることが好ましく、例えば、隣り合った保持部101同士をリンク部102で接続することが好ましい。
【0051】
保持部101およびリンク部102は、例えば、樹脂製である。保持部101およびリンク部102の素材として用いられる条件としては、例えば、測定する脳波が電気信号であるため、絶縁性であること、ユーザに大きな負担がかからない軽い素材であること、利用者の頭部に装着する際に、柔軟性と靱性とが必要であること、および水で洗うことができるよう耐水性があること、という4つの条件が考えられる。保持部101およびリンク部102として用いられる樹脂は、この4つの条件を満たす樹脂であることが好ましく、例えば、ポリプロピレンが好ましい。ただし、保持部101およびリンク部102として用いられる樹脂は、ポリプロピレン以外の樹脂であっても良く、例えば、アクリル樹脂やABS樹脂等であってもよい。また、3Dプリンタによる3Dプリントに用いられる樹脂として知られているいわゆるアクリルライク樹脂、ABSライク樹脂、ラバーライク樹脂等であってもよい。また、保持部101およびリンク部102として用いられる樹脂は、熱可塑性の樹脂であっても良く、熱硬化性の樹脂であってもよく、紫外線等で硬化する樹脂等であっても良い。保持部101およびリンク部102は、変形しにくい樹脂であることが好ましい。変形しにくい樹脂とは、例えば、ユーザの頭部に対して装着した際に、各保持部101の位置関係が変化しにくい樹脂である。脳情報取得用キャップ1は、樹脂により一体成型されたものであることが好ましい。なお、保持部101およびリンク部102は、樹脂製以外であっても良く、例えば、金属製であってもよく、木製であってもよい。また、保持部101とリンク部102とは、異なる材質であっても良く、また、複数の保持部101や複数のリンク部102は、異なる材質のものが混在していてもよい。
【0052】
一の保持部101と一のリンク部102とは、リンク部102の一の端部の側面が、保持部101の、上面側または下面側に埋め込まれるよう接続されている。保持部101の上面側および下面側は、保持部101の貫通孔1011が設けられている面である。
図2(a)には、リンク部102の一の端部の側面が、保持部101の、下面側に埋め込まれるよう接続されている部分の拡大斜視図を示している。リンク部102の端部の側面が、保持部101の、上面側または下面側に埋め込まれるよう接続されているということは、例えば、リンク部102の端部の側面と保持部101の上面または下面とが接続されていることと考えてもよく、リンク部102の端部の側面の一部が、保持部101の上面または下面側に露出するようリンク部102と保持部101とが接続されていることと考えてもよい。このように接続することで、リンク部102の伸びる方向に加えられる牽引力等に対して、接続部分が破損しにくくすることができる。なお、更に、リンク部102を、その中心軸の延長上に、保持部101の中心軸が位置するように保持部101に接続することで、応力の集中を防いで接続部分を破損しにくくすることができる。保持部101の中心軸とは、例えば、保持部101の表面の中心と、裏面の中心とを結ぶ軸や、保持部101の貫通孔1011の中心軸である。また、このように接続する場合、リンク部102の端部が、環状の保持部の保持部101の貫通孔1011内に突出しないようにすることが好ましい。ただし、一の保持部101と一のリンク部102とは、上記以外の態様で接続されていても良い。
【0053】
なお、
図2(b)に示すように、リンク部102と保持部101との接続部分において、リンク部102と保持部101の側面との境界102aが、曲面となるようにリンク部102と保持部101とを接続することが好ましい。具体的には、リンク部102と保持部101の側面との境界102aが、リンク部102と保持部101とが接続されている側に向かって凸となる曲面となるように、リンク部102と保持部101とを接続することが好ましい。このようにリンク部102と保持部101とを接続することで、接続部分が破損しにくくすることができる。なお、リンク部102と保持部101の側面との境界102aが、リンク部102と保持部101とが接続されている側に向かって凸となる曲面となるように接続するということは、リンク部102の、保持部101の側面と接続される部分が、外側に向かって広がるようテーパー形状となるよう接続されることも含むと考えてもよい。
【0054】
センサである脳波計が有する複数の電極(図示せず)は、それぞれ、
図3に示すようなセンサアダプタ3に取付けられ、保持部101の貫通孔1011内に取付けられる。
図3に示すように、センサアダプタ3は、ユーザの頭部に対向して配置される対向部301と、脳情報取得用キャップの外側に配置される蓋部302とを有している。対向部301は、上部側においては、上方に向かって半径が小さくなる円盤形状を有しており、その中心部分には、貫通孔3011が設けられている。対向部301の最も半径が大きい部分は、センサアダプタ3が取付けられる保持部101の貫通孔1011を通過できないサイズおよび形状であることが好ましい。ここでは、保持部101の貫通孔1011の、ユーザの頭部とは反対側の半径が、対向部301の最も半径が大きい部分の半径よりも小さくなっている
【0055】
図5は、保持部101に対してセンサアダプタを取付けた状態を示す側面図(
図5(a))、およびセンサアダプタ3を取付けた脳情報取得用キャップ1をユーザの頭部に装着した場合の、センサアダプタ3の断面図(
図5(b))である。なお、
図5(b)においては、センサアダプタ3に脳波計の電極65を取付けた状態を一例として示している。
【0056】
図6は、保持部101に対するセンサアダプタ3の取付け方を示す分解斜視図である。なお、
図5および
図6においては、保持部101に接続されるリンク部は省略している。
【0057】
センサの電極65は、脳情報取得用キャップ1の外側(つまり頭部とは反対側)からセンサアダプタ3の蓋部302の開口部3021を介して、センサアダプタ3の対向部301の貫通孔3011に取付けられる。センサの電極65は、貫通孔3011に挿入した状態で、開口部3021に対向する部分が、開口部3021と嵌合する形状を有している。ここでは、例えば、平面形状が同じ半径の円形形状を有している。これにより、電極65がセンサアダプタ3に固定される。ただし、嵌合する形状を有していなくても良く、電極65がどのようにセンサアダプタ3に固定されるようにしても良い。また、電極65は、どのようにセンサアダプタ3のセンサの電極65は、ユーザの頭部に当接させる部分が、センサアダプタ3の下面である対向面3012側において露出するよう、貫通孔3011内に配置される。ここでは、貫通孔3011の下部側は、上方に向かって半径が小さくなる形状を有しており、センサの電極65をユーザの頭部に当接させた場合に、センサの電極65が、貫通孔3011の側面等に接触しないようにしている。センサの電極65に取付けられた線路(図示せず)は、例えば、脳波計に接続される。なお、線路は、図示しないトランスミッタ等に接続され、トランスミッタが電極65から取得した信号を、無線通信等により、脳波計等に送信するようにしてもよい。対向部301の上面の貫通孔3011の周囲には、複数のピン3013が設けられている。また、蓋部302の開口部3021の周囲には、上記の複数のピン3013が配置されている位置に対応した位置に、複数のピン3013にそれぞれ嵌合する孔3022が設けられ、複数のピン3013を、孔3022に嵌め合わせることで、貫通孔3011と、開口部3021とが連通するよう対向部301の上部に蓋部302が取付けられる。後述する生地60をピン3013に突き刺して、対向部301と、蓋部302との間にはさみ込むことで、センサアダプタ3に生地60を取付けることができる。蓋部302は、上方からみて、一の方向に伸びる形状を有する部分であるタブ部3023を有している。蓋部302の上面において、蓋部302の開口部3021の中心から、蓋部302のタブ部3023以外の端部までの距離は、保持部101の貫通孔1011の半径よりも小さくなっており、タブ部3023の、蓋部302の開口部3021の中心から最も離れている端までの距離は、保持部101の貫通孔1011の半径よりも大きくなっている。タブ部3023には、センサアダプタ3に取付ける電極65の識別子等を配置することが可能である。
【0058】
複数の保持部101には、それぞれ、センサアダプタ3の対向部301の対向面3012が、ユーザの頭部側となるように、センサアダプタ3が取付けられる。
図6に示すように、センサアダプタ3は、対向部301の上面側が保持部101の貫通孔1011内に位置するように保持部101に取付けられる。センサアダプタ3は、例えば、
図5(a)に示すように、伸縮性を有する生地60を介して、ユーザの頭部方向に付勢されるよう保持部101に取付けられる。伸縮性を有する生地60は、例えば、弾性糸を用いた生地である。伸縮性を有する生地60は、例えば、弾性糸を用いたメッシュ状の生地である。生地60は、例えば、ポリエステル製のメッシュである。生地60は、センサアダプタ3を、ユーザの頭部側に付勢するよう保持するための布状の部材と考えてもよい。
【0059】
以下、センサアダプタ3の保持部101への取付け方について説明すると、保持部101の貫通孔1011をユーザの頭部側となる面から塞ぐように、生地60を保持部101に接着剤等により取付ける。このとき生地60の保持部101の貫通孔1011のほぼ中心に位置する部分に開口部61を設けておく。開口部61の半径は、例えば、蓋部302の開口部3021とほぼ同じ半径、もしくはこれより小さい半径とする。そして、
図6に示すように、この開口部61と蓋部302の開口部3021と対向部301の貫通孔1011とが連通するとともに、生地60の開口部61の周囲が保持部101の上面と蓋部302との間にはさみ込まれる位置に、対向部301、生地60、および蓋部302を配置し、複数のピン3013を孔3022に嵌め込んで、対向部301と蓋部302との間に生地60をはさみ込むことで、
図5(a)に示すように、センサアダプタ3が、保持部101の貫通孔1011に取付けられる。脳波計の電極61は、センサアダプタ3の蓋部302側から、蓋部302の開口部3021および対向部301の貫通孔1011内に挿入される。生地60によって、センサアダプタ3の対向面を、ユーザの頭部方向に付勢することができるため、脳情報取得用キャップ1をユーザの頭部70に装着した場合に、
図5(b)に示すように、センサアダプタ3に取付けられた電極65を確実にユーザの頭部70に当接させることが可能となる。
【0060】
本実施の形態においては、センサアダプタ3の形状、例えば、センサアダプタ3の貫通孔3011や開口部3021の形状を、センサアダプタ3で保持するセンサの電極65等を取付け可能な形状とすることで、様々なセンサの電極65を、脳情報取得用キャップ1に取付けることが可能となる。また、伸縮性を有する生地60でセンサの電極65を取付けたセンサアダプタ3をユーザの頭部に付勢することができるため、例えば、付勢のための特別な機構等を有さないセンサの電極65を用いた場合においても、センサの電極65を、ユーザの頭部70に適切に当接させることができる。
【0061】
なお、上記においては、センサアダプタ3に脳波計の電極65が保持される場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、電極が脳波計の電極でない場合や、センサアダプタ3に電極の代わりに、個々のセンサ等が保持される場合においても同様に適用できるものである。
【0062】
また、ここでは、保持部101の貫通孔1011内に、センサが取付けられたセンサアダプタ3が、生地60により、ユーザの頭部側に付勢されるよう保持される場合について説明したが、本発明においては、保持部101の貫通孔1011内に、センサアダプタ3をユーザの頭部側に付勢されるよう保持することが可能であれば、生地60の代わりに、センサアダプタ3を頭部側に付勢するためのバネ等の他の付勢手段等を用いるようにしても良い。なお、この付勢手段は、センサアダプタ3を着脱可能に保持するものであることが好ましい。
【0063】
また、本発明においては、上述した複数のセンサアダプタ3や、このセンサアダプタ3を保持部101に保持する生地60等の付勢手段を、脳情報取得用キャップ1の一部と考えても良く、脳情報取得用キャップ1とは異なるものと考えてもよい。
【0064】
以下、本実施の形態の脳情報取得用キャップ1の使用方法について、脳波を測定する場合を例に挙げて説明する。
【0065】
まず、脳波計の複数の電極(図示せず)を脳情報取得用キャップ1に保持させるために、センサアダプタ3を、脳情報取得用キャップ1の複数の保持部101のそれぞれの貫通孔1011に生地60を介して取付ける。脳情報取得用キャップ1の外側から、センサアダプタ3の開口部3021を介して貫通孔3011にセンサの電極65を挿入する。電極65の開口部3021内に位置する部分が、開口部3021と嵌め合わさり、電極65がセンサアダプタ3に固定される。挿入された脳波計の電極に接続された信号線等の線路(図示せず)は、脳情報取得用キャップ1の外側に伸びている。この状態の脳情報取得用キャップ1をユーザの頭部に装着すると、各保持部101に設けられたセンサアダプタ3は伸縮性を有する生地60によってユーザの頭部側に付勢されているため、センサアダプタ3の対向面3012側に露出している脳波計の電極が、ユーザの頭部70に当接される。これにより、脳波を適切に測定することが可能となる。
【0066】
なお、脳情報取得用キャップ1は、図示しないアゴひも等を用いて、頭部に固定することが好ましい。
【0067】
次に、本実施の形態の脳情報取得用キャップ1を生産するためのキャップ生産システム、および脳情報取得用キャップ1の生産方法について説明する。
【0068】
図7は、本実施の形態の脳情報取得用キャップ1を生産するためのキャップ生産システム2のブロック図である。キャップ生産システム2は、受付部201、頭部形状取得部202、位置情報取得部203、キャップ形状取得部204、および成形部205を備えている。
【0069】
受付部201は、ユーザの頭部の異なる位置において取得された複数の断層画像を受け付ける。例えば、受付部201は、MRIやCTスキャン等により得られた複数の断層画像を受け付ける。ここでの断層画像は、断層画像の情報と考えてもよい。ここでの受付は、記録媒体等からの断層画像の読み出しや、ネットワーク等による断層画像の受信である。なお、断層画像を受け付けるということは、断層画像を構成するために取得された測定情報等の情報等を受け付けることと考えてもよい。また、複数の断層画像を受け付けるということは、複数の断層画像に加えて、複数の断層画像を取得するための設定値等の情報を更に受け付けることも含むと考えてもよい。
【0070】
頭部形状取得部202は、ユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する。例えば、頭部の立体形状を示す情報は、頭部の立体形状を示す3Dデータである。頭部の立体形状を示す3Dデータは、例えば、頭部ポリゴンデータであってもよい。3Dデータのデータ形式等は問わない。頭部形状取得部202が、ユーザの頭部の立体形状を示す情報を、どのように取得するかは問わない。例えば、頭部形状取得部202は、図示しない3Dスキャナ等を用いて頭部の立体形状を示す情報を取得しても良い。また、頭部形状取得部202は、ユーザの頭部を異なる位置から撮影して得られた複数の画像を用いて、頭部の立体形状を示す情報を取得しても良い。また、受付部201が受け付けた複数の断層画像を用いて、頭部の立体形状を示す情報を取得しても良い。これらの処理については、公知技術であるため、詳細な説明は省略する。なお、3Dスキャナ等を用いて取得された頭部の立体形状を示す情報を、図示しない記録媒体等から読み出しても良く、外部の装置等から受信しても良い。このような読み出しや受信も、ここでは、取得と考えてもよい。
【0071】
以下、本実施の形態においては、受付部201がユーザについて取得した頭部の複数の断層画像を用いて、このユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する場合を例に挙げて説明する。各ユーザの断層画像を用いて、脳情報取得用キャップ1を生産することで、各ユーザの頭部に合った、各ユーザ向けの脳情報取得用キャップを生産することができる。また、ユーザである患者が、検査の一つとして、既にMRIやCTスキャン等を行なっており、自身の頭部の複数の断層画像を有している場合においては、この断層画像をそのまま利用できるため、断層画像を用いることは、頭部の立体形状を示す情報を取得するために用いられる情報の取得を省略でき、ユーザの負担や、検査者等の負担を軽減できる利点がある。
【0072】
頭部形状取得部202が断層画像からユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する場合、受付部201が受け付けた断層画像に対して、適宜フォーマット変換や、画像補整等を行なっても良い。なお、ユーザの頭部の断層画像からユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する処理は、公知技術であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0073】
位置情報取得部203は、頭部形状取得部202が取得した頭部の立体形状を示す情報について、脳情報を取得するためのセンサが配置される複数の保持部101の位置情報を取得する。複数の保持部が配置される位置は、複数の保持部101にそれぞれ保持されるセンサやセンサの一部配置される位置と考えてもよい。複数の保持部101が配置される位置情報は、例えば、センサとして脳波計を用いる場合は、脳波計の複数の電極が配置される位置情報と考えても良く、複数のセンサの配置される位置情報と考えてもよい。例えば、頭部形状取得部202が取得した立体形状を示す情報を用いてレンダリング等を行なって、図示しない表示部が、ユーザの頭部の3D形状を示す画像を、図示しないモニタ等に表示し、マウスやタブレット、タッチパネル等の入力デバイスを用いて、このユーザの頭部の3D形状を画像において、複数の保持部を配置する位置を順次指定すると、位置情報取得部203は、ユーザがマウスクリックした位置や、タッチパネルでタッチした位置の指定を受け付けて、この位置を示す情報を、複数の保持部101がそれぞれ配置される位置の位置情報として取得する。位置情報は、例えば、3次元座標の情報である。なお、モニタに表示されたユーザの頭部の3D形状を示す画像に対して、図示しない受付部が、鼻根部と後頭結節とを指定する情報や、左右の耳介前点を指定する情報の入力を受け付けた場合、位置情報取得部203は、図示しない表示部に対して、指定された鼻根部と後頭結節と結ぶ頭皮に沿ったガイド線や、左右の耳介前点を結ぶ頭皮に沿ったガイド線を表示させることで、ユーザが、位置を指定する操作を支援しても良い。
【0074】
なお、位置情報取得部203が、ユーザから、入力デバイス等を介して鼻根部と後頭結節と左右の耳介前点とを指定する情報の入力を受け付けるようにし、これらの情報を用いて、位置情報取得部203が、上述したような国際10-20法が示すルールに従って、自動的に保持部101を配置する位置情報を取得するようにしても良い。
【0075】
また、位置情報取得部203は、複数のリンク部102を配置する位置を指定する位置情報を取得しても良い。位置情報取得部203は、例えば、複数のリンク部102を配置する位置の指定を、図示しない入力デバイス等を介して受け付け、この指定に応じたリンク部102の位置情報を取得する。リンク部102の位置を指定する情報は、例えば、リンク部102により接続する二つの保持部101、または二つの保持部が配置される位置を指定する情報であっても良い。例えば、接続する2つの保持部101は、例えば、上記で取得した保持部101の位置情報が示す位置を用いて指定されてもよい。また、接続する2つの保持部101は、例えば、保持部101に付与された識別子等を用いて指定されても良い。また、位置情報取得部203は、保持部101同士を接続するリンク部102が、ユーザの頭部に接触しないように、リンク部102を湾曲させるための情報(例えば、湾曲する曲率半径の情報等)を取得しても良い。また、リンク部102が伸びる経路を、直線や曲線で描くことや、経路の始点と終点とを指定することによって、リンク部102が配置される位置の指定を、受け付けても良い。
【0076】
なお、位置情報取得部203は、複数のリンク部102を配置する位置を、自動的に決定しても良い。例えば、予め、位置情報取得部203が取得する複数の保持部101の位置情報に対して、鼻根部や、後頭結節や、左右の耳介前点との位置関係に応じた予め決められた識別子を付与するようにし、複数のリンク部102がそれぞれ接続する保持部101が配置される位置の識別子の組を示す情報を、予め図示しない格納部等に格納しておくようにして、この識別子の組を示す情報を読み出して、読み出した識別子の組に対応する位置に配置される保持部101を接続するようリンク部102の位置を指定する情報を取得するようにしてもよい。保持部101の位置情報の識別子は、保持部101に配置されるセンサやセンサの一部の識別子と考えてもよい。
【0077】
キャップ形状取得部204は、位置情報取得部203が取得した位置情報を用いて、脳情報取得用キャップ1の立体形状を示す情報を取得する。ここでの立体形状を示す情報は、例えば、3Dデータである。この3Dデータのデータ形式等は問わない。3Dデータは、例えば、脳情報取得用キャップ1の成形に用いられるデータであることが好ましく、例えば、3Dプリンタで3Dプリント可能な形式のデータであることが好ましい。例えば、キャップ形状取得部204は、位置情報取得部203が取得した位置情報が示す位置に、予め図示しない格納部等に格納された保持部101の立体形状を示す情報を配置する。例えば、キャップ形状取得部204は、上記で取得したユーザの頭部の立体形状を示す情報を用いて、位置情報が示す位置において、保持部101のユーザの頭部側に配置される面が、ユーザの頭部の表面に接する面となるように、あるいは接する面に対して頭部とは反対方向に予め決められた距離だけ平行移動した面となるように、保持部101の立体形状を示す情報を配置する。また、キャップ形状取得部204は、リンク部102を配置する位置を指定する情報が示す位置にリンク部102を配置する。例えば、予め指定された太さのロッド状のリンク部102を配置する。例えば、リンク部102を配置する位置を指定する情報が、リンク部102で接続する二つの保持部の位置を示す情報である場合、キャップ形状取得部204は、この保持部101を接続するリンク部102の立体形状を示す情報を取得する。なお、位置情報取得部203は、保持部101とリンク部102との接続箇所が、上記で説明したような形状となるように、保持部101とリンク部102の位置関係を調整し、接続部分の形状も調整する。2つの部材を接続する処理や、接続部分の形状を指定した形状とする処理等については、3Dソフトウェア等を用いた処理において公知の技術である。
【0078】
成形部205は、キャップ形状取得部204が取得した立体形状を示す情報を用いて脳情報取得用キャップ1を成形する。例えば、成形部205は、キャップ形状取得部204が取得した脳情報取得用キャップ1の立体形状を示す情報を用いて、3Dプリンタを用いて脳情報取得用キャップ1を3Dプリントする。また、成形部205は、キャップ形状取得部204が取得した脳情報取得用キャップ1の立体形状を示す情報を用いて、ドリルやレーザ等の切削用工具等の動作を座標値を用いて制御して、樹脂塊や、金属塊を切削することによって、脳情報取得用キャップ1を成形しても良い。また、成形部205は、3Dプリントや、切削用工具等の動作を制御することによって、キャップ形状取得部204が取得した立体形状を示す情報を用いて脳情報取得用キャップ1の金型等の型を取得し、この型を用いて、圧縮成形等により脳情報取得用キャップ1を成形しても良い。
【0079】
なお、成形部205は、3Dプリンタや、立体形状を示す情報を用いて制御可能な切削用工具等の成形を行なう機械を有していても良く、有していなくても良い。成形部205は、成形を行なう機械を有していない場合、成形部205が行なう成形とは、成形を行なう機械の制御や、成形を行なう機械への成形の指示等と考えてもよい。
【0080】
次に、脳情報取得用キャップ1の生産方法の一例について
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0081】
(ステップS100)受付部201は、ユーザの頭部の異なる位置において取得された複数の断層画像を受け付ける。
【0082】
(ステップS101)頭部形状取得部202は、ステップS100で受付部201が受け付けた複数の断層画像を用いて、ユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得する。なお、断層画像を用いずに頭部の立体形状を示す情報を取得する場合、ステップS100を省略して、頭部形状取得部202は、3Dスキャナ等が取得した頭部の形状等に関する情報を用いて、ユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得してもよい。また、頭部形状取得部202は、3Dスキャナ等が取得したユーザの頭部の立体形状を示す情報を、図示しない記録媒体等から読み出しても良く、外部の装置等から受信しても良い。
【0083】
(ステップS102)キャップ生産システム2の図示しない表示部は、ステップS101で取得したユーザの頭部の立体形状を示す情報を用いて、ユーザの頭部の立体形状の画像を、図示しないもモニタ等に表示する。
【0084】
(ステップS103)位置情報取得部203は、ステップS101で取得したユーザの頭部の立体形状を示す情報について、図示しない入力デバイス等を介して、複数の保持部101を配置する位置の指定を受け付ける。そして、位置情報取得部203は、指定された位置に対応する位置情報を、複数の保持部101の位置情報として取得する。また、同様に、位置情報取得部203は、複数のリンク部102の位置の指定を受け付け、指定された位置に対応する位置情報を、リンク部102の位置情報として取得する。なお、位置情報取得部203は、複数の保持部101および複数のリンク部102の少なくとも一方の位置情報を、自動取得するようにしても良い。
【0085】
(ステップS104)キャップ形状取得部204は、ステップS103で位置情報取得部203が取得した保持部101とリンク部102との位置情報を用いて脳情報取得用キャップ1の立体形状を示す情報を取得する。
【0086】
(ステップS105)成形部205は、ステップS104で取得した立体形状を示す情報を用いて、脳情報取得用キャップ1を成形する。例えば、ステップS104で取得した立体形状を示す情報を用いて3Dプリントを行なって、脳情報取得用キャップ1を成形する。そして、処理を終了する。
【0087】
図9は、脳情報取得用キャップ1の生産方法を説明するための、キャップ生産システム2の図示しない表示部等によりモニタに表示される表示例を示す図(
図9(a)~
図9(b))である。
図10は、脳情報取得用キャップ1の生産方法を説明するための、キャップ生産システム2の図示しない表示部等によりモニタに表示される表示例を示す図(
図10(a)~
図10(b))である。
【0088】
以下、脳情報取得用キャップ1の生産方法について、具体例を挙げて説明する。ここでは、脳波の取得に用いられる脳情報取得用キャップ1の生産方法の例について説明する。
【0089】
(1)MRIによる撮像
まず、ユーザの頭部をMRI装置(図示せず)内で撮像して、ユーザの頭部のMRI構造画像を撮像する。MRI構造画像は、ユーザの高さ方向の異なる位置での断層画像である。MRI装置による撮像は、例えば、静磁場強度を3.0T(テスラ)、フリップアングルを80度、最大傾斜磁場強度を45mT/mとした設定で行なわれる。ただし、この設定は一例であり、適宜変更してよい。撮像により得られたMRI構造画像としては、T1強調画像と呼ばれる画像と、T2強調画像と呼ばれる画像があるが、ここでは、T1強調画像のみを使用する。受付部201は、このT1強調画像を断層画像として受け付ける。
【0090】
(2)フォーマット変換等
頭部形状取得部202は、受付部201が受け付けたMRI装置で取得された断層画像であるT1強調画像のフォーマットを、ユーザの頭部の立体形状を示す情報の取得するために利用可能なフォーマットに変換する。なお、フォーマット変換が不要であれば、変換しなくても良い。例えば、頭部形状取得部202が、後述するFreeSurferと呼ばれるソフトウェアを実行することにより頭部の立体形状を取得するものであり、このソフトウェアが利用可能な画像のフォーマットがAnalyzeフォーマットと呼ばれるものであり、受付部201が受け付けたT1強調画像のフォーマットが、DAICOMフォーマットと呼ばれるフォーマットであるとすると、頭部形状取得部202は、T1強調画像のフォーマットを、DAICOMフォーマットからAnalyzeフォーマットへ変換する。このフォーマットの変換には、例えば、SPM8(The Wellcome Department of Congnitive Neurology製)と呼ばれる脳構造画像解析のためフリーソフトウェアを用いる。そして、フォーマット変換したT1強調画像に対して、頭部形状取得部202は、バイアス補正による画像補正を行う。
【0091】
(3)頭部形状の抽出
頭部形状取得部202は、上記でフォーマット変換および画像変換を行なった断層画像を用いて、ユーザの頭部形状を抽出する。例えば、頭部形状取得部202は、FreeSurferというT1強調画像から頭部形状や頭蓋骨,皮質表面モデルなどを抽出する脳機能解析用ソフトウェアを実行させ、そのスクリプトで、上記でSPM8を用いてAnalyzeフォーマットに変換したT1強調画像を指定し、頭部形状の抽出を行って、アスキーファイルとして頭部形状の情報をメモリ等の記録媒体に蓄積した。
【0092】
(4)頭部の立体形状を示す情報の取得
頭部形状取得部202は、上記で抽出した頭部形状を用いて、頭部の立体形状を示す情報を取得する。例えば、頭部形状取得部202は、上記でFreeSuferにより出力された頭部形状は座標点の集合であるアスキーファイルであるため、このままでは、後述するSolidWorks(登録商標)と呼ばれるソフトウェアで読み込むことができない。このためMeshlabと呼ばれるソフトウェアを実行して、アスキーファイルである頭部形状の情報を立体形状を示す情報である3Dモデルに編集し、SolidWorksで読み込むことができるSTL形式のファイルにする必要がある。Meshlabとは3Dモデルの作成や編集を行うことができるフリーのソフトウェアである。
【0093】
以下、アスキーファイルを3Dモデルに編集する方法の一例について説明すると、FreeSuferから出力された頭部形状の情報をMeshlabで読み込むと
図9(a)のように頭部の座標点が表示される。そして、Meshlabの編集ツールから各点の法線ベクトルを計算し,マーチングキューブス法を用いて面を貼り付けることで、
図9(b)に示すような頭部の立体形状が取得される。この立体形状をそのまま、STL形式のファイルにするとデータ量が大きくSolidWorksで読み込めないため、取得した立体形状に対してメッシュの単純化を行い、単純化により得られた立体形状のデータを、STLファイルとしてメモリ等の記録媒体に蓄積した。
【0094】
(5)位置情報を取得
位置情報取得部203は、頭部形状取得部202が取得した立体形状を示す情報を読み込み、図示しない表示部等を用いてモニタ等に表示する。そして、位置情報取得部203は、表示した立体形状について、複数の保持部101を配置する位置の指定を受け付ける。また、複数のリンク部102を配置する位置の指定を受け付ける。例えば、位置情報取得部203は、SolidWorksを実行して、頭部形状取得部202が取得した頭部の立体形状のデータであるSTLファイルを読み込んで、読み込んだ立体形状を、図示しない表示部等を用いてモニタ等に表示する。SolidWorksはDassault Systems SolidWorks Corporation製の3次元CAD設計ソフトウェアである。位置情報取得部203は、表示した立体形状に対して、マウス等の入力デバイスを介して、操作者から、複数の保持部101を配置する位置の指定を受け付ける。また、複数のリンク部102を配置する位置の指定を受け付ける。ここでは、64チャンネルの脳情報取得用キャップ1を製造するものとすると、64個の保持部101を配置する位置、つまり、脳波計の電極を配置する位置の指定を受け付ける。例えば、国際10-20法を用いて、
図4に示すような保持部101の配置を指定する。保持部101の配置は、脳波計の電極の配置と考えてもよい。ユーザの頭部の立体形状を示す情報に、複数の保持部101が配置される位置を設定すると、例えば、
図10(a)に示すような画像が表示される。そして、この指定された位置に対応した保持部101の位置情報を取得する。保持部101の位置は、ユーザにより指定された位置から、頭部から離れる方向に、例えば1~10ミリ程度移動させた位置とすることが、装着時の頭部への圧迫感を低減するとともに、電極が頭部に適切な力で当接されるようにするうえで好ましい。また、保持部101間を接続するリンク部102を配置する位置の指定も受け付け、この指定された位置に対応する位置情報を、リンク情報を配置する位置の位置情報として取得する。
【0095】
(6)キャップ形状を取得
キャップ形状取得部204は、取得した保持部101の位置情報と、リンク部102の位置情報とを用いて、脳情報取得用キャップ1の立体形状を示す情報を取得する。例えば、キャップ形状取得部204は、SolidWorksを用いて、保持部101の位置情報が示す位置に対応した位置に、予め用意された保持部101の3Dモデルのオブジェクトを配置する。保持部101を配置する位置は、保持部101の位置情報が示す位置から、頭部から離れる方向に、例えば1~10ミリ程度移動させた位置とすることが、キャップ装着時の頭部への圧迫感を低減するとともに、電極が頭部に適切な力で当接されるようにするうえで好ましい。また、キャップ形状取得部204は、リンク部102の位置情報が示す位置に、リンク部102の3Dモデルのオブジェクト、例えば、ロッド状の3Dモデルのオブジェクトを配置する。そして、保持部101とリンク部102とが重なっている部分を結合することで、脳情報取得用キャップ1の3Dモデルのデータを取得する。図示しない表示部は、取得した3Dモデルを示す画像を、
図10(b)に示すようにモニタに表示する。そして、キャップ形状取得部204は、取得したデータを図示しない格納部等に蓄積する。
【0096】
(7)成形
成形部205は、キャップ形状取得部204が取得した脳情報取得用キャップ1の立体形状を示す情報、具体的には3Dモデルのデータを用いて3Dプリントを行ない、脳情報取得用キャップ1を成形する。3Dプリントは、例えば、Stratasys社製の3DプリンタであるObjet260 Connexを用いて行なう。Objet260 Connexはインクジェット方式を用いており,噴射した樹脂を紫外線で固めながら積層していく。積層ピッチは16μmで精度は±0.1mm~0.2mmである。出力樹脂としては、アクリルライク樹脂、ラバーライク樹脂、ポリプロピレン、ABSライク樹脂が利用可能であり、ここでは、例えば、ポリプロピレンを用いて3Dプリントを行なう。なお、3Dプリントに用いられる3Dプリンタとしては、上記以外の3Dプリンタを用いても良く、また、どのような方式の3Dプリンタを用いるようにしてもよい。このように3Dプリントを行なうことにより、
図1に示すような脳情報取得用キャップ1を得ることができる。
【0097】
以上、本実施の形態によれば、脳情報取得用キャップ1が、複数の保持部と、保持部を連結する複数のリンク部等で構成されているため、通気性を向上させることができる。
【0098】
また、本実施の形態によれば、ユーザの頭部の立体形状を示す情報を取得しこの立体形状について、脳情報を取得するセンサが保持される保持部が配置される位置情報を取得し、この位置情報を用いて、脳情報取得用キャップ1の立体形状を示す情報を取得し、この情報を用いて、1以上の開口部を有し、脳情報を取得するためのセンサが保持される複数の保持部を備えた脳情報取得用キャップを成形するようにしたことにより、ユーザの頭部に適合した通気性を向上させた脳情報取得用キャップを容易に取得することができる。
【0099】
なお、上記の実施の形態においては、保持部101とリンク部102とで構成される脳情報取得用キャップ1の生産方法について説明したが、上述した脳情報取得用キャップの立体形状を示す情報を取得して、脳情報取得用キャップを成形することによって脳情報取得用キャップ1を生産する方法は、上記の脳情報取得用キャップ1のような保持部101とリンク部102とで構成される開口部以外の1以上の開口部と、センサを保持する複数の保持部とを備えた脳情報取得用キャップ1の生産方法にも適応できるものであり、このような場合においても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。なお、この場合の保持部は、上記実施の形態において例として示したようなリンク部102で接続される保持部101でなくても良く、例えば、1以上の開口部を有するキャップに設けられた電極やセンサアダプタ等を配置するための貫通孔であってもよい。
【0100】
なお、上記実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、キャップ生産システム2がスタンドアロンである場合について説明したが、キャップ生産システム2は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、出力部や受付部は、通信回線を介して入力を受け付けたり、画面を出力したりすることになる。
【0102】
また、上記実施の形態において、キャップ生産システム2の各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、格納部(例えば、ハードディスクやメモリ等の記録媒体)にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
【0103】
上記実施の形態において、キャップ生産システム2は、例えば、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0104】
コンピュータ(図示せず)は、CD-ROMドライブ(図示せず)に加えて、MPU(Micro Processing Unit)(図示せず)と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM(図示せず)と、MPUに接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)(図示せず)と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク(図示せず)と、MPU、ROM等を相互に接続するバス(図示せず)とを備える。なお、コンピュータは、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0105】
コンピュータシステムに、上記実施の形態による脳情報取得用キャップの生産を実行させるプログラムは、例えば、CD-ROM(図示せず)に記憶されて、CD-ROMドライブに挿入され、ハードディスクに転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータに送信され、ハードディスクに記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAMにロードされる。なお、プログラムは、CD-ROMまたはネットワークから直接、ロードされてもよい。
【0106】
プログラムは、コンピュータに、上記実施の形態による脳情報取得用キャップの機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステムがどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0107】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明にかかる脳情報取得用キャップ等は、脳情報を取得するために用いられるキャップとして適しており、特に、脳情報を取得するためのセンサが取付けられるキャップ等として有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 脳情報取得用キャップ
2 キャップ生産システム
3 センサアダプタ
60 生地
61、3021 開口部
101 保持部
102 リンク部
201 受付部
202 頭部形状取得部
203 位置情報取得部
204 キャップ形状取得部
205 成形部
301 対向部
302 蓋部
1011、3011 貫通孔
3012 対向面
3013 ピン
3022 孔
3023 タブ部