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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】アキシャルフィード式プラズマ溶射装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/34 20060101AFI20221012BHJP
   C23C 4/134 20160101ALI20221012BHJP
【FI】
H05H1/34
C23C4/134
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021186096
(22)【出願日】2021-11-16
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】521501163
【氏名又は名称】豊田 建蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100185476
【弁理士】
【氏名又は名称】宮下 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】豊田 建蔵
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043287(JP,A)
【文献】特開2019-073777(JP,A)
【文献】米国特許第05420391(US,A)
【文献】米国特許第06202939(US,B1)
【文献】国際公開第2013/008563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/34
C23C 4/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にプラズマ噴出口(7)を有する略無底円錐状前方部とプラズマガス供給口(8)を有しプラズマ室(9)を形成する円筒状後方部から構成される陽極ノズル(3)と陰極電極(4)を備えるトーチ(10)と、プラズマガス供給手段と、被膜形成材料供給手段を含むアキシャルフィード式プラズマ溶射装置であって、
前記陽極ノズル(3)の前記略無底円錐状前方部の後部の内周面から前記トーチ(10)の中央方向に向かって設けられた複数のブリッジ(2)と、
前記複数のブリッジ(2)の先端部の間に設けられた被膜形成材料ノズル(1)と、
前記被膜形成材料ノズル(1)の先端部に設けられた被膜形成材料噴出口(6)と、
前記陽極ノズル(3)の周壁を貫通し、少なくとも一つの前記ブリッジ(2)内と前記被膜形成材料ノズル(1)内を経由して、前記被膜形成材料噴出口(6)まで連通する被膜形成材料通路(5)を備え、
前記プラズマ噴出口(7)の中心点と前記被膜形成材料噴出口(6)の中心点が同一軸線(A)上に設けられ
前記ブリッジ(2)が、前記プラズマ噴出口(7)の中心点と前記被膜形成材料噴出口(6)の中心点が設けられる同一軸線(A)に対して傾斜して設けられていることを特徴とするアキシャルフィード式プラズマ溶射装置。
【請求項2】
前記複数のブリッジ(2)が、前記プラズマ噴出口(7)の中心点と前記被膜形成材料噴出口(6)の中心点が設けられる同一軸線(A)に対して、全て同じ角度で傾斜して設けられていることを特徴とする請求項に記載のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置。
【請求項3】
前記複数のブリッジ(2)が、前記陽極ノズル(3)の前記略無底円錐状前方部の後部の内周面に等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置。
【請求項4】
前記複数のブリッジ(2)が、全て同じ形状に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置。
【請求項5】
前記円筒状後方部の後部が第二陽極ノズル(3’)を形成し、
前記第二陽極ノズル(3’)が前記プラズマ室(9)を第一プラズマ室(9’)及び第二プラズマ室(9’’)に区画し、
前記第一プラズマ室(9’)及び前記第二プラズマ室(9’’)は、それぞれ絶縁体(12’及び12’’)で包囲されたプラズマガス供給口(8’及び8’’)を備え、
前記プラズマ噴出口(7)の前方に、サブトーチ陽極電極(15)、サブトーチ陰極ノズル(16)及びサブトーチプラズマガス供給口(17)を備える少なくとも1つのサブトーチ(18)が、前記プラズマ噴出口(7)の中心点と前記被膜形成材料噴出口(6)の中心点が設けられる同一軸線(A)に対して垂直方向に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に耐食性、耐摩耗性、耐熱性等を付与するための被膜を形成するためにプラズマ溶射を行う際に利用されるプラズマ溶射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラズマ溶射は、概略、次のように行われている。
すなわち、直流電源装置によって陽極及び陰極の間にアーク放電を発生させ、アーク放電によりプラズマ作動ガスがプラズマアークとして噴出し、噴出したプラズマアークに被膜形成材料を供給し、供給した被膜形成材料がプラズマアークによって加速及び加熱されて溶射粒子となり、これを基材表面に付着させて被膜を形成する。
【0003】
特許文献1は、アーク放電により陽極ノズル孔から噴射されるプラズマジェットの流れに上記陽極ノズル孔上流または下流に設けられた粉末供給ポートから溶射材料の粉末粒子を供給して溶射を行うプラズマ溶射トーチにおいて、上記粉末供給ポートを軸方向に進退およびプラズマジェットの流れに対して略直角方向に移動可能に設けたことを特徴とするプラズマ溶射トーチを開示している。
【0004】
特許文献1は、被膜形成材料をプラズマアークの流れに対して略直角方向に供給するものである(特許文献1の図1)が、このように被膜形成材料をプラズマアークの流れに対して略直角方向に供給すると、被膜形成材料がプラズマアークの中心に到達する前にプラズマアークによって弾き飛ばされ、又はプラズマアークを突き抜けてしまい、被膜形成材料の基材表面への付着効率が低下して歩留まりが悪いという問題があった。
【0005】
このような問題に対しては、例えば、図1に示すように、トーチ内に直角に曲げた材料ノズルを挿入して被膜形成材料をプラズマアークの進行方向と同方向に供給することで付着効率の低下を防止しようとする方法を採用し得る。
しかしながら、当該方法を用いた場合、非対称な形状の材料ノズルをトーチ内に設けるため、トーチ内のプラズマ旋回流を乱す要因となり、その結果、プラズマアークが不安定になり、またプラズマ噴出方向と材料噴出方向がずれるといった弊害が生じてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10―152766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑み、被膜形成材料の基材表面への付着効率を向上させるとともに、トーチ内の旋回流の乱れを抑制して、むしろ当該旋回流を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることを可能とするアキシャルフィード式プラズマ溶射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、先端部にプラズマ噴出口(7)を有する略無底円錐状前方部とプラズマガス供給口(8)を有しプラズマ室(9)を形成する円筒状後方部から構成される陽極ノズル(3)と陰極電極(4)を備えるトーチ(10)と、プラズマガス供給手段と、被膜形成材料供給手段を含むアキシャルフィード式プラズマ溶射装置であって、前記陽極ノズル(3)の前記略無底円錐状前方部の後部の内周面から前記トーチ(10)の中央方向に向かって設けられた複数のブリッジ(2)と、前記複数のブリッジ(2)の先端部の間に設けられた被膜形成材料ノズル(1)と、前記被膜形成材料ノズル(1)の先端部に設けられた被膜形成材料噴出口(6)と、前記陽極ノズル(3)の周壁を貫通し、少なくとも一つの前記ブリッジ(2)内と前記被膜形成材料ノズル(1)内を経由して、前記被膜形成材料噴出口(6)まで連通する被膜形成材料通路(5)を備え、前記プラズマ噴出口(7)の中心点と前記被膜形成材料噴出口(6)の中心点が同一軸線(A)上に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、前記ブリッジ(2)が、前記プラズマ噴出口(7)の中心点と前記被膜形成材料噴出口(6)の中心点が設けられる同一軸線(A)に対して傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の態様のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、前記複数のブリッジ(2)が、前記プラズマ噴出口(7)の中心点と前記被膜形成材料噴出口(6)の中心点が設けられる同一軸線(A)に対して、全て同じ角度で傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の態様のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、前記複数のブリッジ(2)が、前記陽極ノズル(3)の前記略無底円錐状前方部の後部の内周面に等間隔に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の態様のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、前記複数のブリッジ(2)が、全て同じ形状に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の態様のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、前記円筒状後方部の後部が第二陽極ノズル(3’)を形成し、前記第二陽極ノズル(3’)が前記プラズマ室(9)を第一プラズマ室(9’)及び第二プラズマ室(9’’)に区画し、前記第一プラズマ室(9’)及び前記第二プラズマ室(9’’)は、それぞれ絶縁体(12’及び12’’)で包囲されたプラズマガス供給口(8’及び8’’)を備え、前記プラズマ噴出口(7)の前方に、サブトーチ陽極電極(15)、サブトーチ陰極ノズル(16)及びサブトーチプラズマガス供給口(17)を備える少なくとも1つのサブトーチ(18)が、前記プラズマ噴出口(7)の中心点と前記被膜形成材料噴出口(6)の中心点が設けられる同一軸線(A)に対して垂直方向に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点を同一軸線上に設けたことから、プラズマアークの噴出方向と同じ方向に被膜形成材料を供給することが可能となり、その結果、被膜形成材料の基材表面への付着効率を向上させることができる。また、陽極ノズルの略無底円錐状前方部の後部の内周面からトーチの中央方向に向かって複数のブリッジを設けたことから、例えば、図1に示す直角に曲げた材料ノズルの場合、材料ノズルの直角に曲げた部分にプラズマアークに晒されて、該部分が溶損してしまうおそれがあるが、これを防止することが可能となる。また、当該ブリッジを設けたことから、トーチ内のプラズマ旋回流が乱れたり、その結果、プラズマアークが不安定になり、またプラズマ噴出方向と材料噴出方向がずれるといった弊害を防止することができる。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点を同一軸線上に設けたことから、プラズマアークの噴出方向と同じ方向に被膜形成材料を供給することが可能となり、その結果、被膜形成材料の基材表面への付着効率を向上させることができる。また、ブリッジが、プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点が設けられる同一軸線に対して傾斜して設けられていることから、トーチ内のプラズマ旋回流を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることが可能となる。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点を同一軸線上に設けたことから、プラズマアークの噴出方向と同じ方向に被膜形成材料を供給することが可能となり、その結果、被膜形成材料の基材表面への付着効率を向上させることができる。また、ブリッジが、プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点が設けられる同一軸線に対して、全て同じ角度で傾斜して設けられていることから、トーチ内のプラズマ旋回流を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることがより有効に可能となる。
【0017】
本発明の第4の態様によれば、プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点を同一軸線上に設けたことから、プラズマアークの噴出方向と同じ方向に被膜形成材料を供給することが可能となり、その結果、被膜形成材料の基材表面への付着効率を向上させることができる。また、ブリッジが、陽極ノズルの略無底円錐状前方部の後部の内周面に等間隔に設けられていることから、トーチ内のプラズマ旋回流を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることがより有効に可能となる。
【0018】
本発明の第5の態様によれば、プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点を同一軸線上に設けたことから、プラズマアークの噴出方向と同じ方向に被膜形成材料を供給することが可能となり、その結果、被膜形成材料の基材表面への付着効率を向上させることができる。また、ブリッジが、全て同じ形状に設けられていることから、トーチ内のプラズマ旋回流を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることがより有効に可能となる。
【0019】
本発明の第6の態様によれば、メイントーチに加え、サブトーチを加えた構成においても、プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点を同一軸線上に設けたことから、プラズマアークの噴出方向と同じ方向に被膜形成材料を供給することが可能となり、その結果、被膜形成材料の基材表面への付着効率を向上させることができるとともに、トーチ内のプラズマ旋回流を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術のトーチの断面図を含むプラズマ溶射装置を示す概略図である。
図2】本発明の第一の実施形態のトーチの断面図を含むアキシャルフィード式プラズマ溶射装置の一例を示す概略図である。
図3】本発明の第二の実施形態のトーチの断面図を含むアキシャルフィード式プラズマ溶射装置の一例を示す概略図である。
図4】本発明の第三の実施形態のトーチの断面図を含むアキシャルフィード式プラズマ溶射装置の一例を示す概略図である。
図5】本発明の被膜形成材料ノズル及びブリッジの一例を示す斜視図である。
図6】本発明の被膜形成材料ノズル及びブリッジの一例を示す平面図である。
図7】本発明の被膜形成材料ノズル及びブリッジの一例を示す左側面図である。
図8】本発明の被膜形成材料ノズル及びブリッジの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【0022】
本発明の第一の実施形態のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、図2に示すように、トーチ10と直流電源装置11が電気的に接続され、図示しないプラズマガス供給手段と被膜形成材料供給手段を備えている。
【0023】
トーチ10は、略無底円錐状の前方部と円筒状の後方部から構成される陽極ノズル3と、陰極電極4と、陽極ノズル3と陰極電極4の間に設けられた絶縁体12から構成される。
【0024】
トーチ10の略無底円錐状前方部は、その先端部にプラズマ噴出口7を備える。トーチ10の円筒状後方部は、プラズマガス供給口8を備え、プラズマ室9を形成する。プラズマガス供給口8は、絶縁体12に包囲され、プラズマガス供給手段と連通しており、プラズマガス供給手段から供給されるプラズマガスをプラズマ室9に供給する。
【0025】
略無底円錐状前方部の後部の内周面からトーチ10の中央方向に向かって複数のブリッジ2が設けられている。図2乃至8では、便宜的にブリッジ2が2つの場合を示しているが、ブリッジ2の数は2つに限定される訳ではなく、3つ以上設けることができる。
ブリッジ2は、耐熱性を有する熱伝導率の高い素材で製造され、例えば、純銅で製造されたものが望ましい。
ブリッジ2を設けることで、例えば、図1に示す直角に曲げた材料ノズルのような不均一で非対称的な形状の場合のようにトーチ内のプラズマ旋回流14が乱れてしまうこと及び、その結果、プラズマアークが不安定になり、またプラズマ噴出方向と材料噴出方向がずれるといった弊害を防止することができる。
【0026】
ブリッジ2のトーチ中央方向先端部の間には、被膜形成材料ノズル1が設けられている。被膜形成材料ノズル1の先端部には、被膜形成材料噴出口6が設けられている。
【0027】
ブリッジ2が設けられている部位の陽極ノズル3の略無底円錐状前方部の周壁を貫通し、少なくとも一つのブリッジ2内と被膜形成材料ノズル1内を経由して、被膜形成材料噴出口6まで連通する被膜形成材料通路5が設けられている。被膜形成材料通路5は、被膜形成材料供給手段と連通しており、被膜形成材料供給手段から供給される被膜形成材料をブリッジ2内及び被膜形成材料ノズル1内に供給する。該供給された被膜形成材料は、被膜形成材料噴出口6から噴出される。
【0028】
本発明の第一の実施形態のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置では、図2に示すように、被膜形成材料通路5は、1つのブリッジ2内を経由するように設けられている。
図3は、本発明の第二の実施形態のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置を示すものであるが、これには、被膜形成材料通路5は、2つのブリッジ2内を経由するように設けられている。このように、被膜形成材料通路5は、2つのブリッジ2内を経由するように設けた場合には、それぞれの被膜形成材料通路5から、別の種類の被膜形成材料を供給することが可能となる。
このように、被膜形成材料通路5は、複数設けられるブリッジ2のうちの少なくとも一つのブリッジ2内に設けられ、全てのブリッジ2内に設けることも可能である。
【0029】
ブリッジ2が設けられている部位の陽極ノズル3の略無底円錐状前方部の周壁を貫通し、ブリッジ2内に連通する冷却水通路13を設けることができる。
【0030】
プラズマ噴出口7の中心点と被膜形成材料噴出口6の中心点は、同一軸線A上に設けられている。これにより、プラズマアークの噴出方向(進行方向)と同じ方向に被膜形成材料を噴出させることが可能となっている。
【0031】
ブリッジ2は、好ましくは、図5乃至8に示すように、プラズマ噴出口7の中心点と被膜形成材料噴出口6の中心点が設けられる同一軸線Aに対して傾斜して設けられている。このようにブリッジ2を傾斜して、ブリッジ2に旋回角を持たせることで、トーチ10内のプラズマ旋回流14を強化してプラズマアークを安定させ、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることが可能となる。
当該ブリッジ2の傾斜角度θは、10~30度とすることが望ましく、15~25度とすることがより望ましい。このような角度にブリッジ2を傾斜させることで、トーチ10内のプラズマ旋回流14を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることがより有効に可能となるとともに、プラズマアークが曲がり切れずにブリッジ2が損傷してしまうのを防止することが可能となる。
ブリッジ2は、図2乃至8では直線的に示しているが、扇風機羽根やプロペラ羽根のように曲線的になだらかにねじれている、一般的な軸流送風機等に用いられる軸流翼の形状に設けることができ、また、そのような形状とすることが望ましい。また、複数のブリッジ2は、全て同じ形状に設けることが望ましい。
【0032】
ブリッジ2は、好ましくは、プラズマ噴出口7の中心点と被膜形成材料噴出口6の中心点が設けられる同一軸線Aに対して、全て同じ角度で傾斜して設けられている。このようにブリッジ2を傾斜して設けることで、トーチ10内のプラズマ旋回流14を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることが可能となる。
ブリッジ2を全て同じ角度で傾斜させる場合も、その角度θを10~30度とすることが望ましく、15~25度とすることがより望ましい。このような角度にブリッジ2を傾斜させることで、トーチ10内のプラズマ旋回流14を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることがより有効に可能となる。
【0033】
ブリッジ2は、好ましくは、陽極ノズル3の略無底円錐状前方部の後部の内周面に等間隔に設けられている。このように複数のブリッジ2を等間隔に設けることで、トーチ10内のプラズマ旋回流14を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることが可能となる。
【0034】
ブリッジ2は、全て同じ形状で、全て同じ角度傾斜させ、及び全て等間隔に設けることが望ましい。これにより、トーチ10内のプラズマ旋回流14を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることが可能となる。
【0035】
以上の構成を採用することにより、本発明のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、直流電源装置11によって、陽極ノズル3と陰極電極4の間にアーク放電を発生させ、該アーク放電により、プラズマガスが高温高速のプラズマアークとなりプラズマ噴出口7から噴出される。
一方、被膜形成材料通路5を経由して供給された被膜形成材料は、被膜形成材料噴出口6から噴出される。噴出した被膜形成材料は、プラズマアークによって加熱及び加速されて溶射粒子となり、基材表面に付着して被膜を形成する。
ここで、プラズマ噴出口7の中心点と被膜形成材料噴出口6の中心点が同一軸線A上に設けられていることから、被膜形成材料噴出口6から噴出された被膜形成材料は、プラズマアークの噴出方向及び進行方向と同じ方向に噴出されるため、被膜形成材料がプラズマアークに弾き飛ばされたり、プラズマアークを突き抜けてしまうことなく、基材表面に付着させることができるため、付着効率を向上させることができる。
しかも、ブリッジ2を設けるとともに、好ましくは、ブリッジ2をプラズマ噴出口7の中心点と被膜形成材料噴出口6の中心点が設けられる同一軸線Aに対して傾斜させ、より好ましくは、全てのブリッジ2を同じ角度に傾斜させ、及び/又はブリッジ2を等間隔に配置し、及び/又は全てのブリッジ2を同じ形状に設けたことから、トーチ10内のプラズマ旋回流14を強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることが可能となる。
【0036】
図4は、本発明の第三の実施形態のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置を示している。本発明の第三の実施形態のアキシャルフィード式プラズマ溶射装置は、概略説明すると、トーチ(メイントーチ)10と、少なくとも1つのサブトーチ18を含むものである。図4では1つの好適例として、サブトーチ18を2つ設ける場合を図示しているが、サブトーチ18を3つ以上設けることも可能である。
【0037】
図4に示すように、トーチ(メイントーチ)10は、図1に示す第一の実施形態のトーチ10と近似しているが、筒状後方部の構成が異なっている。
具体的には、円筒状後方部の後部が第二陽極ノズル3’を形成し、第二陽極ノズル3’がプラズマ室9を2つのプラズマ室、すなわち第一プラズマ室9’及び第二プラズマ室9’’に区画している。そして、第一プラズマ室9’及び第二プラズマ室9’’は、それぞれ絶縁体12’及び12’’で包囲されたプラズマガス供給口8’及び8’’を備え、プラズマガス供給口8’及び8’’は、プラズマガス供給手段から供給されたプラズマガスを、それぞれ第一プラズマ室9’及び第二プラズマ室9’’に供給する。
【0038】
2つのサブトーチ18は、プラズマ噴出口7の前方であって、プラズマ噴出口7の中心点と被膜形成材料噴出口6の中心点が設けられる同一軸線Aに対して垂直方向に、具体的には、サブトーチ18から噴出されるプラズマアークの進行方向が同一軸線Aに対して垂直となるように、且つ2つのサブトーチは対向するように設けられ、メイントーチ10と直流電源装置11と電気的に接続している。
【0039】
2つのサブトーチ18同士は、同じ構成である。
具体的には、サブトーチ18は、それぞれサブトーチ陽極電極15、サブトーチ陰極ノズル16及びサブトーチプラズマガス供給口17を備えている。サブトーチプラズマガス供給口17は、絶縁体に包囲され、図示しないプラズマガス供給手段に連通しており、プラズマガス供給手段から供給されたプラズマガスをサブトーチ18内に供給する。サブトーチ陰極ノズル16の先端部には、サブトーチプラズマ噴出口が設けられており、サブトーチプラズマ噴出口から、サブトーチで発生させたプラズマアークを噴出する。
【0040】
本発明の第一及び第二の実施形態に係るアキシャルフィード式プラズマ溶射装置において説明したと同様にしてトーチ(メイントーチ)10から被膜形成材料を含んだプラズマアークが噴出され、第三の実施形態では、メイントーチから噴出された被膜形成材料を含んだプラズマアークに対して、2つのサブトーチ18から噴出されたプラズマアークが垂直方向から合流するように構成されている。
【符号の説明】
【0041】
1 被膜形成材料ノズル
2 ブリッジ
3 陽極ノズル
4 陰極電極
5 被膜形成材料通路
6 被膜形成材料噴出口
7 プラズマ噴出口
8 プラズマガス供給口
9 プラズマ室
10 トーチ
11 直流電源装置
12 絶縁体
13 冷却水通路
14 旋回流
15 陽極電極
16 陰極ノズル
17 サブトーチプラズマガス供給口
18 サブトーチ
A プラズマ噴出口の中心点と被膜形成材料噴出口の中心点が設けられる同一軸線
θ 傾斜角度
【要約】
【課題】
付着効率を向上させるとともに、トーチ内の旋回流の乱れを抑制・強化してプラズマアークを安定させることで、プラズマ出力アップ及び時間当たりの被膜形成量の増加、並びにプラズマ噴出速度を上げることで被膜密度及び被膜密着力を向上させることを可能とするアキシャルフィード式プラズマ溶射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
トーチ10の内周面から前記トーチ10の中央方向に向かって設けられた複数のブリッジ2を設け、プラズマ噴出口7の中心点と被膜形成材料噴出口6の中心点を同一軸線上に設ける。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
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図6
図7
図8