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特許7156739心筋組織の運動特徴を測定するための非侵襲的方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】心筋組織の運動特徴を測定するための非侵襲的方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/053 20210101AFI20221012BHJP
   A61B 5/0295 20060101ALI20221012BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20221012BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20221012BHJP
【FI】
A61B5/053 ZDM
A61B5/0295
A61B5/33 200
A61B5/352
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021549915
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 CN2019083290
(87)【国際公開番号】W WO2020211051
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521375313
【氏名又は名称】麦層移動健康管理有限公司
【氏名又は名称原語表記】MSHEAF HEALTH MANAGEMENT TECHNOLOGIES LIMITED
【住所又は居所原語表記】Room 812, 8/F, Ocean Centre, Harbour City, TST Kowloon, Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲りん▼
(72)【発明者】
【氏名】易 成
(72)【発明者】
【氏名】何 碧霞
(72)【発明者】
【氏名】謝 鵬
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/053737(WO,A1)
【文献】特表平11-511371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0225303(US,A1)
【文献】特開昭63-003839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期的に直交し、異なる周波数及び制御可能かつ調整可能な位相を有する複数の生成された周期的交流電流を生体内に伝送して、異なる周波数の複数の周期的交流電圧信号を生成することと、生体内の心臓組織の変化によって変調された前記周期的交流電圧信号を受信して、生体の周波数応答を取得することと、前記周波数応答に基づいて、前記心臓組織の抵抗と静電容量を計算することと、前記抵抗と静電容量に基づいて、心筋組織の運動特徴を推算することと、を含み、
前記周波数応答に基づいて、前記心臓組織の抵抗と静電容量を計算することは、前記周波数応答に基づいて、前記生体のシステム伝達関数を取得し、前記心臓組織と周辺組織を分離するためにマルチコンパートメントモデリングを実行することを含む、ことを特徴とする心筋組織の運動特徴を測定する非侵襲的方法。
【請求項2】
同期的に直交し、異なる周波数及び制御可能かつ調整可能な位相を有する複数の生成された周期的交流電流を生体内に伝送して、異なる周波数の複数の周期的交流電圧信号を生成することと、生体内の心臓組織の変化によって変調された前記周期的交流電圧信号を受信して、生体の周波数応答を取得することと、前記周波数応答に基づいて、前記心臓組織の抵抗と静電容量を計算することと、前記抵抗と静電容量に基づいて、心筋組織の運動特徴を推算することと、を含み、
前記抵抗と静電容量に基づいて、心筋組織の運動特徴を推算することは、前記静電容量に基づいて、心筋細胞の縦方向の平均長さとそれらの変化を計算すること、及び/又は前記抵抗に基づいて、心臓のポンプによる血流量を計算することと、前記心筋細胞の縦方向の平均長さとそれらの変化、及び/又は前記心臓のポンプによる血流量に基づいて、心臓全体の縦方向の弾性状態を得る、ことを特徴とする心筋組織の運動特徴を測定する非侵襲的方法。
【請求項3】
前記心臓全体の縦方向の弾性状態に基づいて、心臓と心筋の健康状態と作業状態を推定することを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記推定は、前記心臓全体の縦方向の弾性状態の変化の傾き値、R波への遅延、ピークピーク値、心筋細胞の縦方向の平均長さの変化曲線及びその微分の形状に基づいて、前記心臓と心筋の健康状態と作業状態を分析することを含み、前記心臓と心筋の健康状態と作業状態は、前記心臓組織の収縮速度、時間、強度及びパターン、ならびに/又は前記心臓組織の拡張速度、時間、回復及びパターンを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記生体の周波数応答を取得することは、0.25~5ミリ秒ごとに特定の周波数の周波数応答推定値を計算することを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記静電容量に基づいて、心筋細胞の縦方向の平均長さとその変化を計算することは、1秒あたり200~4000回の速度で、心筋細胞の縦方向の平均長さ及びその経時変化を検出することと、デジタルフィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)、及び時間領域と周波数領域の分析を含むデジタル信号処理方法を使用して、前記心筋細胞の縦方向の平均長さの経時変化のタイムシーケンスを処理することと、を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、同じ前記タイムシーケンスを有する心電図を参照して前記心筋細胞の縦方向の平均長さの変化シーケンスを分析することをさらに含み、前記参照は、前記心電図を、前記心筋細胞の縦方向の平均長さの変化シーケンスの心周期、収縮期及び拡張期、ならびに/又は前記心周期、前記収縮期及び拡張期の境界と比較することを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記心臓組織と周辺組織を分離するためにマルチコンパートメントモデリングを実行することは、並列の抵抗と静電容量によって各コンパートメントをモデリングし、複数のコンパートメントを直列又は並列に接続することを含む、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実現するためのシステムであって、前記システムは端末と少なくとも1つのプロセッサを含み、前記端末は、同期的に直交し、異なる周波数及び制御可能かつ調整可能な位相を有する複数の生成された周期的交流電流を生成するための発生器と、異なる周波数の複数の周期的交流電圧信号を生成するように前記周期的交流電流を生体内に伝送し、前記生体の周波数応答を取得するように前記生体内の心臓組織の変化によって変調された前記周期的交流電圧信号を受信するための1つ又は複数のセンサと、を含み、前記プロセッサは、前記周波数応答に基づいて、前記心臓組織の抵抗と静電容量を計算し、前記抵抗と静電容量に基づいて、心筋組織の運動特徴を推算するために使用される、ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記センサは、異なる部位から単一又は複数のデータを収集するために使用される、ことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、前記プロセッサの処理結果とデータを記憶するためのデータベースをさらに含み、前記プロセッサは、前記データベースを検索し得る、ことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサはリモートであり得、リアルタイムモードでのシステムの動作をリモートで監視し得る、ことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項13】
前記端末は、システムを制御及び/又は結果を表示するためのマンマシンインターフェースをさらに含む、ことを特徴とする請求項9~12のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の測定技術に関し、特に、心筋組織の運動特徴を測定する非侵襲的方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の基本的な機能は、血液をポンプして、生体内で循環させ、組織に酸素と栄養素を提供することである。そのため、心臓力学パラメータの測定は、医学分野で非常に重要な意味を持っている。心筋細胞の構造特徴は、それらが弾性組織であることを示す。従って、心筋組織の運動、特に弾性は、主な測定目標となるはずである。現在、心筋組織の応力-ひずみ関係は広く研究されており、関連するアプリケーションは主に超音波イメージングシステムによって実現される。
【0003】
心臓は、2つの心房と2つの心室を含む4つの腔を有する。通常の状況では、右心房は上大静脈和下大静脈から血液を収集する。次に、血液は、右心室に入り、そこから肺にポンプされる。左心房は、肺静脈からの血液を受けて、左心室に送る。左心室は、血液を大動脈によって全身にポンプする。心臓の壁は、内側の心内膜、中央の心筋、及び外側の心外膜の3層構造を有する。心内膜は単層扁平上皮の内膜であり、心腔と弁を覆っている。心筋は心臓の肌肉であり、非自発的な横紋筋組織の層であり、コラーゲンのフレームによって制限され、心筋細胞が湾曲したシート上に配置され、全体として螺旋構造を形成する。心筋は本発明の焦点である。心膜は、心臓と大血管の基部を包む2層の袋である。
【0004】
病的状態の下で、最も注目される2つの主な状態は、高血圧と心筋虚血である。長期的な高血圧は、最終的には心室肥大、さらには心不全につながる。主に冠状動脈狭窄によって引き起こされる虚血は、最終的に心臓発作を引き起こし、続いて心筋梗塞を引き起こし、心不全を引き起こす。本発明は、心筋組織の変化の早期検出に焦点を合わせて、突然の心臓発作を予防するために使用することができる。
【0005】
臓器、組織、細胞など、様々なレベルで心臓機能を測定する方法はたくさんある。臓器レベルでは、心室容積の推定は画像構築を通じて行うことができる。また、心臓の全体的なポンプ機能を表す心拍出量(SV)と駆出率(EF)を測定することもできる。しかしながら、これらのパラメータは、組織の機械的特性を説明していない。心室壁のひずみを直接測定することは、心筋組織活性の非常に重要な測定であることが証明されている。これは、心臓機能を間接的に反映することができる。この測定は現在、主にペアスペックルでの超音波ドップラー又は超音波スペックル技術によって行われている。超音波スペックルトラッキングイメージングからの収縮LV収縮LVねじれは、心臓機能を評価するためのもう1つの技術である。同時に、全方位の縦方向のひずみも、化学療法における心臓毒性を予測するための有用なツールであることが証明されている。
【0006】
一方では、現在、細胞レベルでの心筋組織の健康状態のための非侵襲的測定方法がない。他方では、現在の技術は心筋組織の幾つかの健康状態を診断することができるが、幾つかの欠点がある。例えば、MRIイメージング法は、非常に高価な技術である。超音波イメージングは、比較的安価な技術であるが、依然として多くの側面の影響を受ける。まず、超音波イメージングは連続的又は長期間実行することができない。次に、超音波イメージングの結果の解像度が高くなく、超音波イメージングの結果も患者に依存している。標準化された操作がないため、イメージングの結果は異なり、超音波イメージングのコストは依然として高い。
【0007】
多くの研究者は、動物と人間の侵襲性心筋組織の特性評価について、これまでに多数の研究を行っている。研究は、虚血が心筋組織のインピーダンスの変化につながることを示し、心周期中の心臓組織のインピーダンスの変化を証明している。すべての結果は、本発明を支持する。
【0008】
多くの細胞パラメータの測定では、細胞のサイズを使用して標準化を行う必要がある。等電位細胞では、静電容量の測定により細胞の表面積を取得することで標準化を行う。これは広く使用されている技術である。この技術の理論的根拠は、膜の静電容量が細胞の表面積に比例するということである。この理論における膜の静電容量は、本発明における静電容量とは異なる。前者は、膜を通過する静電容量である。本発明における静電容量は、膜から無限又は地面までの静電容量である。それらの物理的及び数学的根拠は、本発明における静電容量が細胞の縦方向の平均長さに比例することが証明されているということである。本発明は、心筋組織の運動特徴を測定するためのシステムにおけるこの原理の適用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の問題を解決するために、心筋組織の運動特徴を測定する非侵襲的方法を提供し、その目的は、心臓組織の全体的な静電容量を測定することで、心筋細胞の縦方向の平均長さを計算し、それにより、心筋組織の運動特徴を取得することである。前記方法は、主に非治療目的の情報検出に使用される。
【0010】
上記の目的を実現するために、本発明は、心筋組織の運動特徴を測定する非侵襲的方法を提供する。この方法は、同期的に直交し、異なる周波数及び制御可能かつ調整可能な位相を有する複数の生成された交流電流を生体内に伝送して、異なる周波数の複数の周期的交流電圧信号を生成することと、生体内の心臓組織の変化によって変調された前記周期的交流電圧信号を受信して、生体の周波数応答を取得することと、前記周波数応答に基づいて、前記心臓組織の抵抗と静電容量を計算することと、前記抵抗と静電容量に基づいて、心筋組織の運動特徴を推算することと、を含む。
【0011】
好ましくは、前記周波数応答に基づいて、前記心臓組織の抵抗と静電容量を計算することは、前記周波数応答に基づいて、前記生体のシステム伝達関数を取得し、前記心臓組織と周辺組織を分離するためのマルチコンパートメントモデリングを実行することを含む。
【0012】
好ましくは、前記抵抗と静電容量に基づいて、心筋組織の運動特徴を推算することは、前記静電容量に基づいて、心筋細胞の縦方向の平均長さとその変化を計算すること、及び/又は前記抵抗に基づいて、心臓のポンプによる血流量を計算することと、前記心筋細胞の縦方向の平均長さとそれらの変化、及び/又は前記心臓のポンプによる血流量に基づいて、心臓全体の縦方向の弾性状態を得る。
【0013】
好ましくは、前記方法は、前記心臓全体の縦方向の弾性状態に基づいて、心臓と心筋の健康状態と作業状態を推定することをさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記推定は、前記心臓全体の縦方向の弾性状態の変化の傾き値、R波への遅延、ピークピーク値、心筋細胞の縦方向の平均長さの変化曲線及びその微分の形状に基づいて、前記心臓と心筋の健康状態と作業状態を分析することを含み、前記心臓と心筋の健康状態と作業状態は、前記心臓組織の収縮速度、時間、強度及びパターン、ならびに/又は前記心臓組織の拡張速度、時間、回復及びパターンを含む。
【0015】
好ましくは、前記生体の周波数応答を取得することは、0.25~5ミリ秒ごとに特定の周波数の周波数応答推定値を計算することを含む。
【0016】
好ましくは、前記静電容量に基づいて、心筋細胞の縦方向の平均長さとその変化を計算することは、1秒あたり200~4000回の速度で、心筋細胞の縦方向の平均長さ及びその経時変化を検出することと、デジタルフィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)、及び時間領域と周波数領域の分析を含むデジタル信号処理方法を使用して、前記心筋細胞の縦方向の平均長さの経時変化のタイムシーケンスを処理することと、を含む。
【0017】
好ましくは、前記方法は、同じ前記タイムシーケンスを有する心電図を参照して前記心筋細胞の縦方向の平均長さの変化シーケンスを分析することをさらに含み、前記参照は、前記心電図を、前記心筋細胞の縦方向の平均長さの変化シーケンスの心周期、収縮期及び拡張期、ならびに/又は前記心周期、前記収縮期及び拡張期の境界と比較することを含む。
【0018】
好ましくは、前記心臓組織と周辺組織を分離するためにマルチコンパートメントモデリングを実行することは、並列の抵抗と静電容量よって各コンパートメントをモデリングし、複数のコンパートメントを直列又は並列に接続することを含む。
【0019】
上記の目的を実現するために、本発明は、上記の方法を実現するためのシステムをさらに提供する。前記システムは、端末と少なくとも1つのプロセッサを含む。前記端末は、同期的に直交し、異なる周波数及び制御可能かつ調整可能な位相を有する複数の生成された周期的交流電流を生成するための発生器と、異なる周波数の複数の周期的交流電圧信号を生成するように前記周期的交流電流を生体内に伝送し、前記生体の周波数応答を取得するように前記生体内の心臓組織の変化によって変調された前記周期的交流電圧信号を受信するための1つ又は複数のセンサと、を含み、前記プロセッサは、前記周波数応答に基づいて、前記心臓組織の抵抗と静電容量を計算し、前記抵抗と静電容量に基づいて、心筋組織の運動特徴を推算するために使用される。
【0020】
好ましくは、前記センサは、異なる部位から単一又は複数のデータを収集するために使用される。
【0021】
好ましくは、前記システムは、前記プロセッサの処理結果とデータを記憶するためのデータベースを含み得る。前記プロセッサは、前記データベースを検索し得る。
【0022】
好ましくは、前記プロセッサはリモートであり得、リアルタイムモードでのシステムの動作をリモートで監視し得る。
【0023】
好ましくは、前記端末は、システムを制御及び/又は結果を表示するためのマンマシンインターフェースをさらに含む。
【0024】
従来技術と比較して、本発明は、細胞レベルで心筋組織の収縮と拡張を検出する新たな技術に関し、その利点は次のとおりである。本発明は、心筋細胞のより小さな異常な変化を検出できるように、細胞レベル全体にわたる心筋組織の運動を測定するために、連続的で、高いサンプリングレートを有する非侵襲的方法を提供する。本発明は、分析のためにイメージング結果を使用する従来技術を回避し、より速く、標準的な測定方法を有し、コストがより低い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の実施例又は従来技術の技術的手段を更に詳細に説明するため、下記では実施例又は従来技術の使用に必要な図面を簡単に説明する。当然のことながら、下記の説明における図面は本発明の幾つかの実施例のみであり、当業者にとって、創造的労働を果たさない前提で、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本発明の一実施例によって提供される、シミュレートされた心筋細胞の二次元抽象モデルの模式図である
図2】本発明の別の実施例によって提供されるシステムの一部の全体的なフレーム図である。
図3】本発明の別の実施例によって提供される伝送と受信電極の配置の模式図である。
図4】本発明の別の実施例によって提供されるシステム回路の構造の模式図である。
図5a-5d】本発明の別の実施例によって提供される方法のフローチャートである。
図6a-6d】本発明の別の実施例によって提供される、若い男性の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに静電容量曲線の微分の模式図である。
図7a-7d】本発明の別の実施例によって提供される、正常な中年男性の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに静電容量曲線の微分の模式図である。
図8a-8d】本発明の別の実施例によって提供される、高齢女性の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに静電容量曲線の微分の模式図である。
図9a-9d】本発明の別の実施例によって提供される、高齢女性の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに静電容量曲線の微分の模式図である。
図10a-10d】本発明の別の実施例によって提供される、高齢女性の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに静電容量曲線の微分の模式図である。
図11a-11d】本発明の別の実施例によって提供される、高齢女性の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに静電容量曲線の微分の模式図である。
図12a-12d】本発明の別の実施例によって提供される、高齢女性の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに静電容量曲線の微分の模式図である。
図13a-13d】本発明の別の実施例によって提供される、正常な人の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに心臓の平均細胞変形率(テンソル変化率と類似)の模式図である。
図14a-14d】本発明の別の実施例によって提供される、正常な人の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに心臓の平均細胞変形率(テンソル変化率と類似)の模式図である。
図15a-15d】本発明の別の実施例によって提供される、正常な人の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに心臓の平均細胞変形率(テンソル変化率と類似)の模式図である。
図16a-16d】本発明の別の実施例によって提供される、正常な人の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに心臓の平均細胞変形率(テンソル変化率と類似)の模式図である。
図17a-17d】本発明の別の実施例によって提供される、異常な心臓組織を有する人の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに心臓の平均細胞変形率(テンソル変化率と類似)の模式図である。
図18a-18d】本発明の別の実施例によって提供される、異常な心臓組織を有する人の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに心臓の平均細胞変形率(テンソル変化率と類似)の模式図である。
図19a-19d】本発明の別の実施例によって提供される、異常な心臓組織を有する人の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに心臓の平均細胞変形率(テンソル変化率と類似)の模式図である。
図20a-20d】本発明の別の実施例によって提供される、異常な心臓組織を有する人の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに心臓の平均細胞変形率(テンソル変化率と類似)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付の図面を併せて、本発明の実施例をさらに詳細に説明する。これらの図面はすべて、簡略化された模式図であり、単に本発明の基本構造を例示的に説明するためのものであるため、本発明に関連する構造のみを示している。
【0027】
本発明は、組織の抵抗と静電容量及びそれらの変化パターンなど、生体内組織の電気特性を検出するための非侵襲的技術に関する。その目標は、体液の変化、血液の流れ及び心血管循環組織の変化を捉え、生体の健康状態の監視、心血管系の弾性力学の検出と検証に使用し、非治療目的の情報検出にも使用することである。
【0028】
本発明によって提供される実施例では、心臓細胞は等電位であるとみなされる。従って、静電容量の測定によって細胞のサイズを推定することができる。心臓細胞が正常な位置にある場合、心臓構造細胞は空間位置で筋細胞を制限するため、それらは同時に直列モードと並列モードに配列されていると考えることができる。正常な人の心臓細胞が同様な体積を有すると仮定すると、細胞の平均幾何学的スケール変数を導入して、外部の電磁界の影響下での心筋細胞の変化プロセスを表すことができる。本発明に特に関連する変数は、心筋細胞の縦方向の平均長さr(t)である。これは、外部フィールドで測定された心筋の静電容量に比例することが照明される。これにより、静電容量を測定することで、心筋細胞の縦方向の平均長さとその変化を計算することができ、心筋細胞の縦方向の平均長さの変化から、心臓全体の縦方向の弾性の説明方法を与えることができる心臓全体の縦方向の弾性は、外部電界下での経時的な心筋の静電容量の相対的な変化率として説明することができる。
【0029】
最も単純化されたモデルは、外部電磁界の方向で心筋細胞を同等の球体に置き換えることである。このとき、縦方向の平均長さr(t)は、心筋細胞の平均収縮半径とみなすことができる。外部電磁界で、1つの細胞の静電容量は次の式に従って推算することができる。
C(t)=4πε×r(t)
【0030】
r(t)は、心筋細胞の等価平均収縮半径、即ち、時間変数である縦方向の平均長さである。εは細胞の磁気伝導率である。一般に、静電容量は、心筋細胞の縦方向の平均長さにも比例し、比例係数は、幾何学的形状及び心筋細胞の磁気伝導率に関連する。簡単にするために、以下では、同等の球体を説明として置き換える。
【0031】
図1は、本発明の一実施例によって提供される、シミュレートされた心筋細胞の二次元抽象モデルの模式図である。それは、複数の心筋細胞微細構造によって支持されている。具体的には、心臓細胞が正常な位置にあるとき、心臓構造細胞は空間位置で筋細胞を制限するため、心筋細胞は直列モードと並列モードに接続されていると考えることができる。オプションの実施例では、M個の細胞が縦方向に直列に接続されてチェーンを形成すると仮定すると、合計でL本のチェーンが並列に接続される。同時に、外部電磁界の方向で心筋細胞を同等の球体に置き換える。このとき、縦方向の平均長さr(t)は、心筋細胞の平均収縮半径とみなすことができる。外部電磁界で、1つの細胞の静電容量は次の式に従って推算することができる。
【0032】
r(t)は、心筋細胞の等価平均収縮半径、即ち、縦方向の平均長さであり、時間変数である。εは、細胞磁気伝導率である。このことからわかるように、通常の状況では、C(t)とr(t)は線形関係にあり、即ち、静電容量は心筋細胞の縦方向の平均長さに比例し、比例係数は、幾何学的形状及び心筋細胞の磁気伝導率に関連する。異常状態では、r(t)の位置やサイズなどが変化するか、又は異常細胞が異なる磁気伝導率を有する。それにより、C(t)が変化し、変化パターンが異なる。
【0033】
図2は、本発明の別の実施例によって提供されるシステムの一部の全体的なフレーム図である。具体的には、人体又は動物体「20」は、電極又はコンタクト「21」及びケーブル「22」を介して収集システム「23」に接続される。オプションの実施例では、人体又は動物体「20」によって変調された電圧信号は、電極又はコンタクト「21」を介して収集システム「23」に伝送される。収集システム「23」は、電圧信号を処理し、更なる分析のためにそれをホスト24に伝送する。オプションの実施例では、ホスト「24は、外部命令を受信又は伝送するためのマンマシンインターフェースを含む。
【0034】
図3は、本発明の別の実施例によって提供される伝送と受信電極の配置の模式図である。具体的には、「25」は、人体又は動物体の胸腔内の心臓組織を表し、送信電極「27」と受信電極「26」は両方とも心臓組織「25」の真上の皮膚に位置している。オプションの実施例では、送信電極「27」は、2対の電極「T1」と「T2」、及び「T3」と「T4」を含む。各対の送信電極は、時分割駆動され、互いに独立する。電極「T1」と「T2」は、それぞれ、心臓組織「25」の縦方向の両端の外縁と位置合わせされ、電極「T3」と「T4」は、それぞれ、心臓組織「25」の横方向の両端の外縁と位置合わせされる。広帯域電流信号は、送信電極「27」から人体又は動物体「20」に入る。受信電極「26」は、3つの電極「R1」、「R2」及び「R3」を含み、それらはすべて心臓組織「25」と位置合わせされ、送信電極「27」の間に位置し、広帯域電圧信号を検出するために使用される。オプションの実施例では、電極「R1」と「R2」又は「R1」と「R3」は、それぞれ、縦方向の受信対を形成し、電極「R2」と「R3」は、横方向の受信対を形成する。システムは、心臓組織の2つの方向での運動変化を検出するために、これらの2つの受信回路対を含み得る。
【0035】
図4は、本発明の別の実施例によって提供されるシステム回路の構造の模式図である。具体的には、このシステムは、電圧信号を受信するだけでなく、電流信号を人体又は動物体及びその組織に送信することもできる。オプションの実施例では、マイクロプロセッサ「1」又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)「2」の集積回路(IC)において、周波数領域から時間領域に広帯域信号が生成される。広帯域信号が頻繁に更新されないと、それらの時間領域信号はシステムに記憶することができる。FPGA「2」は、信号をディジタルアナログ変換器(DAC)「4」に連続的に出力することができる。オプションの実施例では、アナログ歪みを低減するために、DACは通常、高速、例えば、ナイキスト(Nyquist)速度の16倍を超えた速度で動作する。DAC「4」の出力信号は、広帯域電流ポンプ「9」を駆動するために増幅される。
【0036】
オプションの実施例では、広帯域電流ポンプ「9」の出力は、アナログスイッチャー「11」の入力に接続され、「11」の出力は、それぞれ、送信電極対「T1」と「T2」、又は「T3」と「T4」に接続される。それにより、電流信号が人体又は動物体に伝送される。
【0037】
オプションの実施例では、2対の受信電極「R1、R2」又は「R1、R3」は、心臓の長軸方向の信号を同時に又は非同時に受信することができる。同時に、1対の受信電極「R2、R3」は、心臓の短軸の信号を受信することができる。
【0038】
オプションの実施例では、人体又は動物体によって変調された電圧信号は、前置増幅器アレイ「10」によって増幅される。前置増幅器アレイ「10」の出力はすべて広帯域増幅器アレイ「8」に入力され、出力の1つは、ECG信号を取得するために専用のECG増幅収集器「7」にも接続される。このECG信号はFPGA「2」に送信される。広帯域増幅器アレイ「8」は、信号ディジタルアナログ変換器(ADC)「6」に出力する。本実施例は、高速かつ高分解能なディジタルアナログ変換器を採用する。次に、ディジタルアナログ変換器「6」は、アナログ信号をデジタル信号に変換し、それらをFPGA「2」に送信する。
【0039】
オプションの実施例では、人体の心血管の変化は、0.2%のインピーダンスの変化を引き起こす可能性があり、即ち、ダイナミックレンジは約-54dBである。信号を受信する結果に1%の分解能が必要な場合、必要なダイナミックレンジは94dBであり、約16ビットである。従って、本実施例で採用されるディジタルアナログ変換器の最小要件は16ビットである。
【0040】
オプションの実施例では、アナログフィルタが位相応答を変化させるため、人体の位相応答を計算ためにデジタル補正を実行する必要がある。従って、本実施例はアナログフィルタを使用せず、オーバーサンプリングDACを使用する。その高速度は、アナログフィルタへの依存を大幅に低減する。オーバーサンプリングの速度は、ナイキスト速度の16倍以上の速度を使用し得る。
【0041】
オプションの実施例では、信号の収集には信号の生成よりも高い要件があるが、DACのようなオーバーサンプリングは、高いハードウェア性能及びリソースを必要とする。変調信号の場合、効果が明らかではない。従って、本実施例の信号収集はデルタシグマADCを採用する。それは、重畳する必要があり、サンプリング速度が高くない。具体的には、サンプリング速度が高くなると、ビット分解能は低下する。オプションの実施例では、人間の違いのために、ADCのダイナミック変化範囲を考慮する必要がある。この変化のために約3ビットが保留され、飽和を防止するために少なくとも1ビットが保留される。具体的な実現では、DACと同じダイナミックレンジを維持するために、ADCは最小の20ビットを有するため、全速24ビットデルタシグマADCのダイナミックレンジは約20ビットを有する。
【0042】
図5a~5dは、本発明の別の実施例によって提供される方法のフローチャートであり、具体的には、信号生成、信号収集及び信号処理を含む。オプションの実施例では、図5aに示すように、信号生成は、周波数領域から時間領域に多周波数の同期直交正弦波のデジタル信号を生成するS511と、デジタル信号をアナログ信号に変換するS512と、電流ポンプを駆動するためにアナログ信号を増幅するS513と、電圧信号を電流信号に変換するS514と、多周波数の同期直交正弦波の電流を測定される人体又は動物体に注入するS515とを含む。
【0043】
オプションの実施例では、図5bに示すように、信号収集は具体的に、人体又は動物体からアナログ電圧信号を受信するS521と、それを増幅するS522と、アナログ信号をデジタル信号に変換するS523とを含む。
【0044】
オプションの実施例では、図5cに示すように、信号を収集した後、フーリエ変換を実行して信号を時間領域から周波数領域に変換して、広帯域周波数応答を取得する(S531)。これらの広帯域周波数応答は時変的である。これらの周波数応答に対して周波数補正とフィルタリングを実行して、歪みとノイズを排除する(S532~S534)。これらの補正しフィルタリングされた周波数応答をシステム伝達関数の計算に使用する(S535)。この関数も時変シーケンスである。システム伝達関数の係数分解によれば、心臓の抵抗と静電容量を取得することができる(S536)。次の段階の処理を行うために抵抗と静電容量のシーケンスをフィルタリングする(S537)。即ち、心臓の静電容量は、心筋細胞のサイズに直接関係する。
【0045】
オプションの実施例では、図5dに示すように、静電容量には幾何学的情報もあり、それを除去する必要がある(S541)。本実施例の具体的な実現では、静電容量の時間微分を1つの心周期の静電容量変動で割る、即ち、dc/dt/Δcである。この方法は、具体的なパラメータに関連する。例えば、図13dと図14dでは、幾何学的情報を除去した後、心筋細胞の半径の変化に関する情報のみが残される。これは、心周期中の心筋細胞の変化を表す。これに基づいて、更なる分析と機械学習を行うことができる(S542)。心臓の抵抗はより複雑であり、心室、心房及び心筋組織における血液の抵抗を含む。ただし、心臓内の血液の変化が支配的であるため、抵抗を直接使用して血液流量を計算することができる。
【0046】
図6a~6dは、本発明の別の実施例によって提供される、若い男性の心電図、心臓抵抗及び静電容量の経時変化の曲線、ならびに静電容量曲線の微分である。これは、正常な人のデータである。具体的には、図6aは心電図(ECG)であり、図6bは心臓の抵抗曲線であり、図6cは心筋の静電容量曲線であり、図6dは心筋の静電容量の微分変化の曲線である。
【0047】
オプションの実施例では、心電図は標準パターンではなく、心臓電圧信号を測定する電極上で同時に検出されたものである。心臓抵抗は、心室と心筋組織における血液に由来する。心臓の拡張末期に、心室は最大の血液量を有し、その抵抗が最も小さい。収縮の終わりに、状況はその逆である。これは、実際のデータに完全に一致するため、表示される心臓抵抗は血液抵抗によって支配されるはずである。心臓の拡張末期に、心筋細胞は拡張し、最大の細胞体積を有する。従って、静電容量はピーク峰値に達する。心臓の収縮末期に、心筋細胞の体積が最も小さく、静電容量が最も小さい。静電容量曲線は、この心周期において、最も拡張のレベルに完全に回復していない。これには2つの理由が考えられる。1つ目は干渉であり、2つ目は拡張のプロセスにもランダム性があることである。すべての周期が同じであり、且つ最大位置に回復できるとは限らず、大きいものも小さいものもある。心臓の抵抗曲線を見ると、彼の心臓体積はR波からT波まで小さくなり(収縮)、その後大きくなる(拡張)。これは、心筋の分極及び脱分極した生体電気活動と完全に一致する。彼の心臓の静電容量曲線を見ると、心筋細胞はR波からT波まで小さくなり(収縮)、その後大きくなる(拡張)。心臓拡張のランダム性により、それは拡張の最大点に回復していない。心臓の体積、及び心筋細胞の体積変化から、心臓ポンプ及び心筋作動の状況を推定することができる。即ち、生体組織の電気的活動に基づいて、その機械的活動の特徴を推定することができる。
【0048】
図7a~7dは、本発明の別の実施例によって提供される、正常な中年男性のデータである。図7aは心電図(ECG)であり、図7bは心臓の抵抗曲線であり、図7cは心筋の静電容量曲線であり、図7dは心筋の静電容量曲線の微分である。図7a~7dを図6a~6dと比較すると、図7a~7dでは、心筋細胞の体積が大きくなる(拡張)開始点はT波のピークにあり、図6a~6dよりも早いことがわかる。このことから、加齢とともに、心筋は、弾性が弱くなり、収縮期が短くなり、心筋拡張の開始点がますます早くなっていると推測される。被験者は心筋拡張あ、この周期中に完全に回復する。
【0049】
図8a~8dは、本発明の別の実施例によって提供される高齢女性のデータである。図8aは心電図(ECG)であり、図8bは心臓の抵抗曲線であり、図8cは心筋の静電容量曲線であり、図8dは心筋の静電容量曲線の微分である。被験者の血圧が高く、期外収縮の現象がある。抵抗曲線を見ると、被験者の心臓収縮は正常であるが、心筋の再分極のかなり前に完了した。再分極後、この周期において、心臓の体積は大きく変化していない。即ち、充填された血液が少ない。静電容量曲線を見ると、心筋は、T波のかなり前に収縮が完了し、拡張が開始するが、非常に遅く、最大拡張点に回復していない。心臓の収縮が速すぎて、拡張が遅い。このことから、心筋組織が老化していると推測される。
【0050】
図9a~9dは、本発明の別の実施例によって提供される高齢女性のデータである。図9aは心電図(ECG)であり、図9bは心臓の抵抗曲線であり、図9cは心筋の静電容量曲線であり、図9dは心筋の静電容量曲線の微分である。抵抗曲線を見ると、被験者の心臓体積の収縮は、R波よりも大幅に遅れている。即ち、左心室の圧力が十分でなく、大動脈を開くことができず、血液が放出されていない。その後、大動脈が開き、心臓の血液が減少し、T波のピークの少し前に収縮が完了する。その後、通常どおりに充填する。静電容量曲線を見ると、心筋の収縮開始点は正常であるが、心筋は弱く見え、心筋細胞体積の変化が小さく、後の段階で大きくなる。心筋拡張はT波で終了する。そして、最大拡張点に回復する。このことから、心臓体積の最小点と心筋体積の最小点は必ずしも同じ時点であるとは限らないことがわかる。
【0051】
図10a~10dは、本発明の別の実施例によって提供される高齢女性のデータである。図10aは心電図(ECG)であり、図10bは心臓の抵抗曲線であり、図10cは心筋の静電容量曲線であり、図10dは心筋の静電容量曲線の微分である。抵抗曲線を見ると、被験者の心臓の体積収縮はR波よりも遅れ、収縮はT波のピークの少し後ろに完了する。その後、充填が開始する。しかしながら、充填は大幅に遅れている。静電容量曲線を見ると、心筋収縮の開始点は正常であり、心筋収縮のプロセスは基本的に正常であり、T波の少し後ろに最小に達する。しかしながら、心筋拡張は大幅に遅れ、最終的に基本的に回復することができる。
【0052】
図11a~11dは、本発明の別の実施例によって提供される高齢女性のデータである。図11aは心電図(ECG)であり、図11bは心臓の抵抗曲線であり、図11cは心筋の静電容量曲線であり、図11dは心筋の静電容量曲線の微分である。抵抗曲線を見ると、心臓収縮は少し遅れ、T波のピークの前に完了する。その後、拡張する。静電容量曲線を見ると、心筋収縮の開始点は正常であるが、心筋収縮は2つの領域に分かれ、静電容量の微分曲線でより明らかに見える。従って、心筋細胞の状態は均一ではない。心筋細胞も拡張し回復することができる。被験者の心筋に欠陥があると判断することができる。
【0053】
図12a~12dは、本発明の別の実施例によって提供される高齢女性のデータである。図12aは心電図(ECG)であり、図12bは心臓の抵抗曲線であり、図12cは心筋の静電容量曲線であり、図12dは心筋の静電容量曲線の微分である。抵抗曲線を見ると、心臓収縮の開始点は正常であり、T波は明かではない。被験者の心臓収縮は2つの部分に分かれ、この心周期は最大収縮に達していない。心筋細胞の収縮の開始点は正常である。しかしながら、心筋細胞の収縮は2つの段階に分かれ、収縮には一貫性がない。これは、心筋細胞は協力して作動することができないことを示す。拡張は大幅に遅れるが、最大状態に回復することができる。被験者は心臓病を持っていると判断することができる。
【0054】
【0055】
dc(t)/dtは、静電容量の時間微分であり、cppは、この心周期の静電容量のピークピーク値である。
【0056】
【0057】
Δc(t)は、2つの時点での静電容量の差である。
【0058】
図から分かるように、正常な人の心臓の容積の変化と心筋細胞の体積の変化は完全に一致している。心筋細胞の等価変形率(s-1)、又は本実施例の静電容量の相対変化率、及び静電容量の相対変化は、2つの衡量パラメータである。
【0059】
図15a~15d及び図16a~16dは、それぞれ、本発明の別の実施例によって提供される2人の正常な人のデータである。図15aと図16aは心電図(ECG)であり、図15bと図16bは心臓の抵抗曲線であり、図15cと図16cは心筋の静電容量曲線であり、図15dと図16dは心筋の静電容量の相対変化率の時間曲線である。図に示すように、丸印は心臓の容積が最も小さい時刻であり、中実ドットは心筋細胞の体積が最も小さい時刻である。正常な人の心筋組織の運動では、丸と中実ドットは基本的に重なっている。心筋の静電容量曲線の「ρ」は、心筋の静電容量の相対変化であり、心臓の容積が最も小さい瞬間の静電容量値から静電容量の最小値を引いた値を、この心周期の静電容量のピークピーク値で割ったものとして、次にように定義される。
【0060】
c(tcircle)は、心臓の容積が最も小さい瞬間の静電容量であり、c(tdot)は、心筋の体積が最も小さい瞬間の静電容量であり、cppは、この心周期の静電容量のピークピーク値である。心筋の静電容量の相対変化は、超音波のテンソル変化に対応する。超音波では、大動脈弁が閉鎖しているときに、組織の等価変形(%)と等価変形率(s-1)を同様に検出する。本実施例では、大動脈弁の閉鎖に関する直接的な情報がないが、心臓の体積の最小値(抵抗の最大値)の時刻は、大動脈弁が閉鎖された時刻とみなすことができる。この時刻で測定された静電容量の相対変化率(s-1)は、超音波検出中の等価変形率(s-1)と一致する必要があり、両方ともゼロに近づいている。この時点で測定された静電容量の相対変化(%)は、超音波検出中のテンソル変形と一致する必要があり、両方ともゼロに近づいている。正常な人の場合、超音波での収縮期が最も大きい等価変形率(s-1)は1(s-1)である。即ち、心臓の体積の最小値又は抵抗の最大値の時刻で、静電容量の相対変化(ρ)及び等価変形率(s-1)の両方は、ゼロに近づいている。静電容量の相対変化(ρ)は、超音波ドップラー組織イメージングで大動脈が閉鎖された時刻のテンソル変形に対応する。
【0061】
オプションの実施例では、高いサンプリングレートと高精度により、本実施例はより多くの情報を得ることができる。例えば、波形分析法を使用して、心電図におけるP、R、T波と組み合わせ、次に、統計モデル、及び抵抗、静電容量の曲線特徴と組み合わせることで、完全に変形力学の観点から組織の弾性を分析すること、即ち、心筋細胞の縦方向の平均長さの収縮と伸長の変化プロセス、例えば、収縮の速度と伸長の速度を分析し、心筋の弾性と作動の能力を計算することができる。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
上記の説明は、具体的な実施形態を記述しており、当業者は、本発明の技術的アイデアから逸脱しない範囲内に、様々な変更及び修正を行うことができる。本発明の範囲は、明細書の内容に限定されず、特許請求の範囲に基づいて決定されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d
図12a
図12b
図12c
図12d
図13a
図13b
図13c
図13d
図14a
図14b
図14c
図14d
図15a
図15b
図15c
図15d
図16a
図16b
図16c
図16d
図17a
図17b
図17c
図17d
図18a
図18b
図18c
図18d
図19a
図19b
図19c
図19d
図20a
図20b
図20c
図20d