(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】油圧リバースブースター
(51)【国際特許分類】
F15B 15/02 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
F15B15/02 Z
(21)【出願番号】P 2022540844
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2022010173
【審査請求日】2022-07-02
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520351358
【氏名又は名称】要 賢一
(72)【発明者】
【氏名】要 賢一
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5722513(US,A)
【文献】特開2007-230291(JP,A)
【文献】特開昭63-242899(JP,A)
【文献】実開昭52-110160(JP,U)
【文献】米国特許第3991661(US,A)
【文献】特開平02-197034(JP,A)
【文献】特開平10-054215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台の油圧シリンダ(1)(2)と圧縮ばね(3)、油圧シリンダのピストンロッド(1a)(2a)を連動させるための連結ロッド(4)にそれらを組込むためのフレーム(5)と、油圧シリンダ(1)(2)を既存の油圧ポンプ(6)や油圧ジャッキ(7)等と接続するための油圧ホース(8)等を主な構成要素として、
圧縮ばね(3)を油圧シリンダのピストンロッド(1a)(2a)を押し戻す方向に力がかかるように組込み、油圧シリンダ(1)は油圧ポンプ(6)と接続し、油圧シリンダ(2)は油圧ジャッキ(7)等と接続し、
油圧ポンプ(6)のリリーフバルブ(6a)を開くと油圧シリンダ(1)の油圧が下がり、圧縮ばね(3)の力で油圧シリンダ(2)から油圧を発生して油圧ジャッキ(7)等に加圧し、逆に油圧ポンプ(6)で油圧を発生させると油圧シリンダ(1)が圧縮ばね(3)を押し縮めて油圧シリンダ(2)で発生させた油圧を下げるようにして、既存の油圧機器の作動システムを逆転させるようにした、ことを特徴とする油圧機器。
【請求項2】
既存の油圧リフト(10)の配管に接続し、荷台にフロートレバー(11)を取付けて既存の油圧ポンプ(6)のリリーフバルブ(6a)とワイヤー(11a)で連動させて、
フロートレバー(11)が作動してリリーフバルブ(6a)が開くと、油圧リフト(10)のジャッキに油圧を加えて、油圧リフト(10)の荷台が上昇するようにした、請求項1の油圧機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ジャッキ等に油圧を与えて作動させる油圧機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ジャッキや単動油圧シリンダ等は、概ね油圧ポンプで油圧を発生させるとピストンロッドが押し出され、リリーフバルブで油圧を抜くとピストンロッドが戻る機構になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の油圧ジャッキ等で物を持ち上げてその下で作業をしている時に、油圧ポンプのリリーフバルブを誤操作等で油圧を抜いてしまうと、持ち上げた物が下がってきて作業者が下敷きになったり、手足を挟まれたりする事故を起こす恐れがある。
【0006】
また物を持ち上げるために油圧ジャッキ等に必要な力は、物の全重量を持ち上げるのに必要な力を油圧ポンプで発生させなければならず、また油圧を抜いて自重で物を下ろすとそれまで物を持ち上げるために発生させたエネルギーを失い、物を持ち上げる度に毎回物の全重量を持ち上げるために必要なエネルギーを発生させる必要がある。
【0007】
上記の課題を解決するために、特願2020-152395 (PCT/JP2021/030247)にて、ばねを荷台が上がる方向に力がかかるように組み込み、油圧シリンダを荷台が下がる方向に力がかかるように組み込んだ油圧リフトを発案したが、この油圧リフトの場合、ばねをリフト機本体に組付けたり油圧シリンダの取付位置を変えたりして、従来のリフト機の機構を変更したり改造したりする必要があった。
【0008】
本発明は、駆動される油圧機器本体(上記の場合は油圧リフト)の機構を変更や改造することなく、油圧ポンプのリリーフバルブを誤操作して油圧が抜けても、持ち上げている物が下がってきて下敷きになる恐れのない下敷き事故防止と、作動させるのに必要な力を従来の油圧機器に比べ大きく削減して、物を昇降させたりするのに必要なエネルギーを削減する省エネ型の油圧機器を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段は、
2台の油圧シリンダとばね、油圧シリンダのピストンロッドを連動させるための連結ロッドにそれらを組込むためのフレームと、油圧シリンダを既存の油圧ポンプや油圧ジャッキ等と接続するための油圧ホース及びコネクターを主な構成要素として一組のユニットにして、
ばねを油圧シリンダのピストンロッドを押し戻す方向に力がかかるように組込み、片方の油圧シリンダは油圧ポンプと接続し、もう一方の油圧シリンダは油圧ジャッキ等と接続し、
油圧ポンプのリリーフバルブを開くと油圧シリンダの油圧が下がり、ばねの力でもう一方の油圧シリンダから油圧を発生して油圧ジャッキ等に加圧し、逆に油圧ポンプで油圧を発生させると油圧シリンダがばねを押し縮めて、もう一方の油圧シリンダで発生させた油圧を下げるようにして、既存の油圧機器の作動システムを逆転させるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本油圧機器を既存の油圧ジャッキ等の配管途中に追加接続することにより、油圧ポンプのリリーフバルブを開いて物を持ち上げるようにしたことで、物を持ち上げてその下で作業をしている時に、万一リリーフバルブを誤って開放しても物が上がる方向に動くため、作業者が物の下敷きになったり手足を挟んだりする事故を防ぐことができる。
【0011】
また同じような重さの物を繰り返し昇降させて使用する場合、本機器を介して油圧ジャッキで物を下げるために必要な力は、ばね荷重から持ち上げている物の重量を差し引いた分の力を少し上回るだけの力を油圧ポンプで発生させてやればよいため、手動ポンプの場合は僅かな力で楽に押し下げることができ、また電動ポンプを用いる場合は少ない消費電力ですみ省エネルギーになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本機器を既存の油圧リフトに接続して、浸水時に荷台を上昇させた応用例を示した側面図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
図1に本発明の実施形態の一例を示す。
全体構成は、2台の油圧シリンダ(1)(2)と圧縮ばね(3)、油圧シリンダのピストンロッド (1a)(2a)を連動させるための連結ロッド(4)と、圧縮ばね(3)のばね荷重を調整するばね荷重調整ねじ(9)にそれらを組込むためのフレーム(5)と、油圧シリンダ(1)(2)を既存の油圧ポンプ(6)や既存の油圧ジャッキ(7)等と接続するための油圧ホース(8)及びコネクター(8a)を主な構成要素として一組のユニットにしている。
【0014】
油圧シリンダ(1)は既存の油圧ポンプ(6)と接続され、既存の油圧ジャッキ(7)が圧縮ばね(3)の力によって発生する油圧により押し出されるのを、油圧回路を閉じることによりピストンロッド(1a)が動けずにブレーキの役割をして油圧ジャッキ(7)の作動を止めている。そして油圧ポンプ(6)のリリーフバルブ(6a)を開くと、油圧回路が開いてピストンロッド(1a)が動けるようになりブレーキが緩んで圧縮ばね(3)の力により油圧ジャッキ(7)が作動する。
また油圧シリンダ(1)は、油圧ジャッキ(7)の油圧を抜きたいときに油圧ポンプ(6)を用いて油圧を発生させて、ピストンロッド(1a)を押し出して連結ロッド(4)及び連結プレート(4a)により圧縮ばね(3)を押し縮めながらホルダープレート(3a)を移動させ、油圧シリンダ(2)のピストンロッド(2a)に加わっていた力を抜いて油圧ジャッキ(7)の油圧を抜く。
【0015】
油圧シリンダ(2)は油圧ジャッキ(7)と接続され、またピストンロッド(2a)は一体化されたホルダープレート(3a)、連結ロッド(4)及び連結プレート(4a)により油圧シリンダ(1)のピストンロッド(1a)と同調して動かすことができる。
油圧シリンダ(1)の油圧が抜けるとピストンロッド(1a)が動けるようになり、ばね(3)の力で油圧シリンダ(2)のピストンロッド(2a)が押し戻され、それにより油圧ジャッキ(7)に油圧が加わる仕組みになっている。
また油圧シリンダ(1) (2)の容量は油圧ジャッキ(7)の容量に応じて作動油を供給できる大きさのものが組込まれる。
【0016】
圧縮ばね(3)は、接続する既存の油圧ジャッキ(7)の推力に応じて、油圧ジャッキ(7)に推力を出させる油圧が与えられる強さのものが数本組込まれる。
【0017】
フレーム(5)には、油圧シリンダ(1)(2)のヘッド部が固定されており、また圧縮ばね(3)の反力も受けるようになっている。
【0018】
ばね荷重調整ねじ(9)は、ホルダープレート(3a)とフレーム(5)との相対位置を変えることにより、圧縮ばね(3)の初期設定荷重が変わり、それにより油圧シリンダ(2)から加圧される油圧を調節することができ、油圧ジャッキ(7)が出せる推力も調節することができるようになっている。
【0019】
この油圧シリンダ(2)から加圧される油圧を調節できる機能を用いて、例えば1.0 tonの重さの物を油圧ジャッキ(7)で繰り返し昇降させて使用する場合に、油圧ジャッキ(7)が出せる推力を1.1 tonに設定しておくことにより、油圧ジャッキ(7)を押し下げるために必要な力は、設定した推力から持ち上げている物の重量を差し引いた0.1 ton分の荷重を少し上回るだけの力を油圧ポンプ(6)で発生させてやればよいため、手動ポンプの場合は僅かな力で楽に押し下げることができ、また電動ポンプを用いる場合は少ない消費電力で済むため、従来の油圧ジャッキが物を持ち上げるために必要とするエネルギーと比較して大きな省エネになる。
【実施例2】
【0020】
図2に本機器を既存の油圧リフト(10)に接続して、浸水時に荷台を上昇させた応用例を示した側面図を示す。尚構造が理解し易いように、本機器の部分は上から見た平面図を誇張して示している。
本機器を既存の油圧リフト(10)の油圧ポンプ(6)との配管の途中に接続し、荷台にフロートレバー(11)を取付けてワイヤー(11a)で油圧ポンプ(6)のリリーフバルブ(6a)と連動させれば、水害等で浸水しても無人無動力で油圧リフト(10)の荷台を水位の上昇に伴い自動的に上昇させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本機器を既存の油圧ジャッキ等の配管途中に接続することにより、物を持ち上げてその下で作業をしている時に、万一リリーフバルブを誤って開放しても物が上がる方向に動くため、作業者が物の下敷きになる等の事故を防ぐ安全装置になる。
【0022】
また既存の油圧リフトで同じような重さの物を繰り返し昇降させて使用する場合、本油圧機器を油圧リフトの配管に追加接続することにより、手動ポンプの場合は僅かな力で楽に押し下げることができ、また電動ポンプを用いる場合は少ない消費電力ですみ省エネになる。
【0023】
本機器を既存の油圧リフトの油圧ポンプとの配管の途中に接続し、荷台にフロートレバーを取付けてワイヤーで油圧ポンプのリリーフバルブと連動させれば、水害等で浸水しても無人無動力で油圧リフトの荷台を水位の上昇に伴い自動的に上昇させることができ、その上に載せた車両や物を水害から守ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 油圧シリンダ 1a ピストンロッド
2 油圧シリンダ 2a ピストンロッド
3 圧縮ばね 3a ホルダープレート
4 連結ロッド 4a 連結プレート
5 フレーム
6 既存油圧ポンプ 6a リリーフバルブ
7 既存油圧ジャッキ
8 油圧ホース 8a コネクター
9 ばね荷重調整ねじ
10 既存油圧リフト
11 フロートレバー 11a ワイヤー
W L 水面
【要約】
【課題】 バルブの誤操作をして油圧ポンプからの油圧が抜けても、持ち上げている物が下がってきて下敷きになる恐れのない安全機能と、油圧ジャッキ等を作動させるために必要な力を削減して、物の昇降等に必要なエネルギーを削減する省エネ型の油圧機器を提供することを目的とした。
【解決手段】 2台の油圧シリンダ(1)(2)とばね(3)、ピストンロッド(1a)(2a)を連動させるための連結ロッド(4)と、油圧シリンダを既存の油圧ポンプやジャッキ等と接続するためのホース(8)等をユニットにして、ばねを油圧シリンダのピストンロッドを押し戻す方向に力がかかるように組込み、油圧ポンプのリリーフバルブを開くとばねの力で油圧を発生させてジャッキ等に加圧し、逆に油圧ポンプで油圧を発生させるとばねを押し縮めてジャッキ等の油圧を抜くようにして、既存の油圧機器の作動システムを逆転させるようにした。