(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】キサンテン化合物、及びこれを含んだ顔料組成物
(51)【国際特許分類】
C09B 11/28 20060101AFI20221012BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20221012BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20221012BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20221012BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20221012BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20221012BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221012BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C09B11/28 C CSP
C09B67/20 L
C09B67/20 F
C09B57/00 Z
C09D17/00
C09D11/322
G02B5/20 101
B41M5/00 120
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2019081031
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2018108185
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018145513
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 理恵
(72)【発明者】
【氏名】原田 理
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 紘
(72)【発明者】
【氏名】三藤 彰洋
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/008737(WO,A1)
【文献】特開2016-038463(JP,A)
【文献】特開2018-053154(JP,A)
【文献】特開2018-035345(JP,A)
【文献】特開2017-171719(JP,A)
【文献】国際公開第99/029784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00 - 69/10
C09D 17/00
C09D 11/322
G02B 5/20
B41M 5/00
B41J 2/01
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。R
2及びR
3は水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、-CO
2M基又は-SO
3M基を表し、複数存在するR
2は互いに同じでも異なってもよく、R
3が複数存在する場合、それぞれのR
3は互いに同じでも異なってもよい。但し、R
3の少なくとも一つは-CO
2M基又は-SO
3M基である。Mはアルカリ土類金属原子又はロジンアンモニウム(アビエタ-8,11,13-トリエン-18-アンモニウム)を表す。nは置換基R
3の数であり1乃至4の整数を表す。)で表される構造を有するキサンテン化合物。
【請求項2】
R
1がそれぞれ独立に炭素数1乃至4のアルキル基であり、R
2が水素原子であり、R
3がそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、-CO
2M基又は-SO
3M基であって、かつR
3の少なくとも一つが、-CO
2M基又は-SO
3M基である、請求項1に記載のキサンテン化合物。
【請求項3】
R
3がそれぞれ独立に水素原子又は-SO
3M基であって、かつR
3の少なくとも一つが-SO
3M基である、請求項2に記載のキサンテン化合物。
【請求項4】
R
1がエチル基である、請求項3に記載のキサンテン化合物。
【請求項5】
Mがカルシウム原子又はロジンアンモニウム(アビエタ-8,11,13-トリエン-18-アンモニウム)である、請求項1に記載のキサンテン化合物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキサンテン化合物、有機顔料及び樹脂分散剤を含有する顔料組成物。
【請求項7】
樹脂分散剤がカチオン系の樹脂分散剤である、請求項6に記載の顔料組成物。
【請求項8】
有機顔料100質量部に対するキサンテン化合物の添加量が1乃至50質量部である、請求項6又は7に記載の顔料組成物。
【請求項9】
有機顔料がジケトピロロピロール骨格を有する顔料である、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の顔料組成物。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか一項に記載の顔料組成物及びバインダー樹脂を含有するカラーレジスト。
【請求項11】
更に重合性化合物を含有する、請求項10に記載のカラーレジスト。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のカラーレジストからなるカラーフィルター。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキサンテン化合物を含有するインクジェット用インク組成物。
【請求項14】
更に、少なくとも一種以上の有機溶媒を含有する、請求項13に記載のインクジェット用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや撮像素子などの製造に使用されるカラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの成分として好適なキサンテン化合物(その塩を包含する)、及び該化合物を含有する流動性や透明性に優れる顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料や印刷インク、近年ではカラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として、顔料が利用されている。顔料は、耐熱性、耐候性、耐マイグレーション等の諸特性で、染料と比較して堅牢性の面で優れる。一方で、顔料は、組成物にした際の凝集、沈降、経時的な粘度の増加、異種顔料と混合した際の色分かれ等の潜在的な不都合を有している。
【0003】
また最近では、液晶ディスプレイの高コントラスト化や撮像素子の微細化、インクジェットインクの高着色や高鮮明化等を達成するために、顔料の微粒子化および顔料組成物中における顔料の高濃度化の要求が高まっている。しかし、粒子径の微細化に伴い、また顔料の高濃度化に伴い凝集が起こりやすくなり、安定な分散液を得ることが困難となっている。
【0004】
こうした不都合を解決するために、顔料自体の改良検討(顔料表面処理)や顔料に対して良好な吸着性を有する分散剤の開発、界面活性剤の開発、および顔料誘導体の開発等の提案がこれまでに行われてきた。
顔料誘導体とは、微粒子化する顔料と同構造あるいは類似構造の顔料に、酸性や塩基性等の置換基を導入した化合物で、顔料との親和性や吸着性を有し、且つ酸・塩基相互作用により分散剤とも強い結合力を有し、顔料の微粒子化・分散安定化を向上する性質を有する物質を指す。このような顔料誘導体は、顔料の粉砕・分散微粒子化工程等において使用されている。
カラーフィルターやインクジェットで用いられる顔料としては、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、染料レーキ顔料等が挙げられる。特にフタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料を中心に数々の顔料誘導体が報告されてきた。例えば、顔料のスルホン化物あるいはその金属塩を顔料と混和する方法(特許文献1乃至3参照)、置換アミノメチル誘導体を混和する方法(特許文献4参照)フタルイミドメチル誘導体を混和する方法(特許文献5参照)等が知られている。
【0005】
これらの方法は、特定の骨格を有する顔料に対する効果は認められる。しかし、これらの方法においては、スルホン基、アミノメチル基、フタルイミドメチル基などを導入することが構造上難しい顔料に対しては、導入する置換基の数や位置の制御が難しい。結果として、顔料の分散が不充分になり、しかも色調にも悪影響を及ぼす副生成物が多量に生成し、顔料分散液の品質が安定しない等の不都合を有する。
また、これまでカラーフィルターのレッド用の顔料として広く使用されているピグメントレッド254を用いた顔料組成物は、透過率の向上が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭41-2466号公報
【文献】特開昭63-172772号公報
【文献】特公昭50-4019号公報
【文献】特公昭39-16787号公報
【文献】特開昭55-108466号公報
【文献】米国特許第4749795号
【非特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、特にC.I.ピグメントレッド254をはじめとするレッド系等の有機顔料について、凝集、沈降、経時的な粘度の増加を引き起こすことなく有機顔料が微粒子化及び高濃度化された、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として、安定な組成物(顔料分散液)を提供することにある。
本発明が解決しようとする更なる課題は、上記のような顔料組成物(顔料分散液)に好適に使用される新規なキサンテン化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、キサンテンスルホン酸誘導体からなる化合物を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の諸態様は、以下のとおりである。
(1).下記式(1)で表されるキサンテン化合物:
【0010】
【0011】
式(1)中、R1はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表し;R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、-CO2M基又は-SO3M基を表し、複数存在するR2は互いに同じでも異なってもよく、R3が複数存在する場合、それぞれのR3は互いに同じでも異なってもよく、但し、R3の少なくとも一つは-CO2M基又は-SO3M基であり;Mはアルカリ土類金属原子又はロジンアンモニウム(アビエタ-8,11,13-トリエン-18-アンモニウム)を表し;nは置換基R3の数であり1乃至4の整数を表す。
(2).R1がそれぞれ独立に炭素数1乃至4のアルキル基であり、R2が水素原子であり、R3がそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、-CO2M基又は-SO3M基であって、かつR3の少なくとも一つが、-CO2M基又は-SO3M基である、前項(1)に記載のキサンテン化合物。
(3).R3がそれぞれ独立に水素原子又は-SO3M基であって、かつR3の少なくとも一つが-SO3M基である、前項(2)に記載のキサンテン化合物。
(4).R1がエチル基である、前項(3)に記載のキサンテン化合物。
(5).Mがカルシウム原子又はロジンアンモニウム(アビエタ-8,11,13-トリエン-18-アンモニウム)である、前項(1)に記載のキサンテン化合物。
(6).前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のキサンテン化合物、有機顔料及び樹脂分散剤を含有する顔料組成物。
(7).樹脂分散剤がカチオン系の樹脂分散剤である、前項(6)に記載の顔料組成物。
(8).有機顔料100質量部に対するキサンテン化合物の添加量が1乃至50質量部である、前項(6)又は(7)に記載の顔料組成物。
(9).有機顔料がジケトピロロピロール骨格を有する顔料である、前項(6)乃至(8)のいずれか一項に記載の顔料組成物。
(10).前項(6)乃至(9)のいずれか一項に記載の顔料組成物及びバインダー樹脂を含有するカラーレジスト。
(11).更に重合性化合物を含有する、前項(10)に記載のカラーレジスト。
(12).前項(10)又は(11)に記載のカラーレジストからなるカラーフィルター。
(13).前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のキサンテン化合物を含有するインクジェット用インク組成物。
(14).更に、少なくとも一種以上の有機溶媒を含有する、前項(13)に記載のインクジェット用インク組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の式(1)で示されるキサンテン化合物は製造が極めて容易である。
また、該化合物を使用することにより、C.I.ピグメントレッド254等の有機顔料について、凝集、沈降、経時的な粘度の増加を引き起こすことなく顔料が微粒子化・高濃度化された顔料組成物を提供することが可能となる。
このような顔料組成物は、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として好適である安定な分散液となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のキサンテン化合物は下記式(1)で表される。
【0014】
【0015】
本発明のキサンテン化合物は、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクである顔料組成物の着色剤として好適に用いることができる。以下、便宜上、「本発明のキサンテン化合物」を、単に「本発明の化合物」と簡略して記載することもある。
【0016】
式(1)中、R1はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。
式(1)のR1が表す炭素数1乃至4のアルキル基は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖であることが好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基又はn-もしくはiso-プロピル基である。
式(1)におけるR1としては、それぞれ独立に炭素数1乃至4のアルキル基であることが好ましく、全てのR1が同一の炭素数1乃至4のアルキル基であることがより好ましい。全てのR1が同一のメチル基又はエチル基又はn-もしくはiso-プロピル基であることが更に好ましく、全てのR1がエチル基であることが特に好ましい。
【0017】
式(1)中、R2及びR3は水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、-CO2M基又は-SO3M基を表し、複数存在するR2は互いに同じでも異なってもよく、R3が複数存在する場合、それぞれのR3は互いに同じでも異なってもよい。但し、R3の少なくとも一つは-CO2M基又は-SO3M基である。Mはアルカリ土類金属原子又はロジンアンモニウム(アビエタ-8,11,13-トリエン-18-アンモニウム)を表す。nは置換基R3の数であり、1乃至4の整数を表し、1であることが好ましい。
式(1)のR2及びR3が表す炭素数1乃至4のアルキル基の具体例としては、式(1)のR1が表す炭素数1乃至4のアルキル基の具体例と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0018】
式(1)のR2及びR3が表すハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは臭素原子又は塩素原子である。
式(1)においてMが表すアルカリ土類金属原子の具体例としては、カルシウム原子、ストロンチウム原子、バリウム原子及びラジウム原子が挙げられ、カルシウム原子、ストロンチウム原子又はバリウム原子であることが好ましい。Mが表すアルカリ土類金属原子としては、カルシウム原子又はバリウム原子であることがより好ましく、カルシウム原子であることが更に好ましい。
尚、Mがアルカリ土類金属の場合、該-CO2M基又は該-SO3M基中の-CO2又は-SO3との結合に関与しない一方の正の電荷は、負の電荷を有するいかなる物質や化合物等と結合していても構わず、これらは全て本発明の式(1)で表される構造を有するキサンテン化合物の範疇に含まれる。
Mがアルカリ土類金属である式(1)で表されるキサンテン化合物の好ましいものとしては、例えば下記式(2)で表されるキサンテン化合物の二量体が挙げられる。
【0019】
【0020】
式(2)中、R1乃至R3及びnは式(1)におけるR1乃至R3及びnと同じ意味を表し、Aは二価の連結基-CO2MOCO-又は二価の連結基-SO3MO3S-を表す。
式(2)は本発明のキサンテン化合物の二量体の一例であるが、二量体以上の多量体も本発明のキサンテン化合物の範疇に含まれる。
【0021】
式(1)におけるMとしてはカルシウム原子又はロジンアンモニウム(アビエタ-8,11,13-トリエン-18-アンモニウム)が好ましく、カルシウム原子がより好ましい。
【0022】
式(1)におけるR2としては、水素原子が好ましい。
式(1)におけるR3としては、少なくとも一つが-SO3M基であって、それ以外がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、塩素原子または臭素原子であることが好ましく、少なくとも一つが-SO3M基であって、それ以外が水素原子であることがより好ましい。また、R3の結合位置はキサンテン環との結合位置に対するパラ位が好ましく、式(1)中に記載されている-SO3
-基の置換位置はキサンテン環との結合位置に対するオルソ位が好ましい。即ち、式(1)で表される化合物としては、下記式(1-1)で表される化合物がより好ましく、下記式(1-2)で表される化合物が特に好ましい。尚、式(1-1)及び式(1-2)中R1乃至R3は式(1)におけるR1乃至R3と同じ意味を表す。
【0023】
【0024】
式(1)で示される本発明のキサンテン化合物は、例えば非特許文献1に記載された公知の方法に準じて合成した縮合物を市販のアルカリ土類金属の塩、又は18-アミノアビエタ-8,11,13-トリエンの酢酸水溶液を用いて塩交換することにより合成することが出来る。すなわち、4-ホルミルベンゼン-1,3-ジスルホン酸誘導体と対応するN,N-ジアルキルフェノールとを縮合、酸化し得られた化合物をアルカリ土類金属の塩、又は18-アミノアビエタ-8,11,13-トリエンの酢酸水溶液を用いて塩交換して得ることが出来る。また、市販のキサンテン化合物をアルカリ土類金属の塩、又は18-アミノアビエタ-8,11,13-トリエンの酢酸水溶液を用いて塩交換することにより合成することも可能である。
【0025】
また、式(1)で示される本発明のキサンテン化合物は、特開2011-148973号公報に記載の公知技術に基づいて、式(A)で表されるフルオラン化合物に置換基R1に対応するジアミン類を反応させることにより合成し、塩交換することにより得ることができる。その合成スキームの一例を下記に示す。
尚、下記の合成スキーム中、式(A)乃至(D)におけるR11乃至R14は式(1)におけるR1と、R21及びR22は式(1)におけるR2と、R3及びnは式(1)におけるR3及びnとそれぞれ同じ意味を表す。
【0026】
【0027】
上記に例示した合成スキームの一次縮合工程及び二次縮合工程、ならびに塩交換を行うことによって、本発明の式(1)で表される化合物を得ることが出来る。
一次縮合工程では式(A)で表される化合物と式(B)で表される化合物とを有機溶剤や縮合剤の存在下で加熱し縮合させる。次に、二次縮合工程では前記の一次縮合工程で得た式(C)で表される化合物と式(D)で表される化合物とを再び加熱し縮合させる。得られた化合物を、塩交換をすることによって式(1)で表される化合物を得ることができる。
尚、式(B)で表される化合物と式(D)で表される化合物が同一の場合は、一次縮合工程と二次縮合工程を同時に行うことができ、得られた化合物を塩交換することにより式(1)で表される化合物を得ることも出来る。
【0028】
また、式(1)で示される本発明のキサンテン化合物は、特開2011-148973号公報に記載の公知技術に基づいて、式(A-1)で表されるフルオラン化合物に置換基R1に対応するジアミン類を反応させることにより式(E)の化合物を合成し、式(E)の化合物をスルホン化、塩交換することにより得ることもできる。その合成スキームの一例を下記に示す。
尚、下記の合成スキーム中、式(A-1)乃至(E)、及び(1-3)におけるR11乃至R14は式(1)におけるR1と、R21及びR22は式(1)におけるR2とそれぞれ同じ意味を表す。
【0029】
【0030】
本発明の化合物の具体例を以下に示す。
【0031】
【0032】
本発明の顔料組成物は、本発明の化合物、有機顔料及び樹脂分散剤を含有する。
本発明の顔料組成物が含有する有機顔料は、カラーインデックスに記載されたものなど従来公知のものであれば特に限定されない。
本発明の式(1)で表される化合物自体がレッド系の色相を有するため、有機顔料本来の色相を損なわない意味ではレッド系の有機顔料を用いるのが好ましい。カラーインデックスでピグメントレッドに分類される有機顔料を用いるのがより好ましく、C.I.ピグメントレッド254が好ましい。また、本発明の化合物と混合した際の分散安定性に優れるという意味で、顔料組成物が含有する有機顔料は、ジケトピロロピロール骨格を有する有機顔料であることが好ましい。
本発明の顔料組成物における式(1)で表されるキサンテン化合物の含有量は、有機顔料100質量部に対して通常0.5乃至70質量部、好ましくは1.0乃至50質量部である。
【0033】
本発明の顔料組成物が含有する樹脂分散剤は、公知の樹脂分散剤であれば特に限定されないが、本発明の化合物との親和性を考慮した場合、カチオン系の樹脂分散剤が好ましい。カチオン系の樹脂分散剤としては、例えば、ビッグケミージャパン株式会社のBYK112、116、140、142、161、162、164、166、182、2000、2001、2050、2070、2150、エフカ社のEFKA4010、4015、4020、4050、4055、4060、4300、4330、4400、4406、日本ルーブリゾール株式会社のソルスパース24000、32500、味の素ファインテクノ社のアジスパーPB711、821、822、881などが挙げられる。
樹脂分散剤の添加量は、有機顔料100質量部に対して通常5乃至100質量部、好ましくは10乃至50質量部であってよい。樹脂分散剤の添加量を5質量部以上にすることによって、良好な分散安定性を得ることができる。
【0034】
本発明の顔料組成物には、必要により有機溶剤を加えることができる。用い得る有機溶剤は特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。有機溶剤は、通常、顔料組成物中に90質量%以下を占める量が用いられる。
【0035】
本発明のカラーレジストは、本発明の顔料組成物及びバインダー樹脂を含有する。
本発明のカラーレジストに用い得るバインダー樹脂は特に限定されないが、例えば、スチレン系(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体、スチレン-マレイン酸エステル系共重合体、セルロースアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。バインダー樹脂は、通常、顔料組成物中に50質量%以下を占める量が用いられる。
【0036】
本発明のカラーレジストは重合性化合物を含有してもよい。
本発明のカラーレジストに用い得る重合性化合物としては、光重合モノマー、エポキシ化合物及びメラミン系化合物等が挙げられる。これらの重合性化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコー(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ビスフェノール-A型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-F型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-フルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、9,9-ビス〔4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕フルオレン、カヤラッドRP-1040(日本化薬製)、カヤラッドDPCA-30(日本化薬製)、UA-33H(新中村化学製)、UA-53H(新中村化学製)及びM-8060(東亞合成製)等の(メタ)アクリレートモノマー;TEMPIC(堺化学製)、TMMP(堺化学製)、PEMP(堺化学製)及びDPMP(堺化学製)等のチオール系重合モノマー;日本化薬製品のNC-6000、NC-6300、NC-6300H、NC-3000、EOCN-1020、XD-1000、EPPN-501H、BREN-S、NC-7300L、ダイセル化学製品のセロキサイド2021P、EHPE3150、サイクロマーM100、エポリードPB3600、ジャパンエポキシレジン製品のエピコート828、エピコートYX8000、エピコートYX4000、プリンテック製品のVG-3101L、サイラエースS510(チッソ)、TEPIC(日産化学工業)等のエポキシ化合物;並びにメチロール化メラミン及びMw-30(三和ケミカル)等のメラミン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの重合性化合物には、必要により重合開始剤や硬化促進剤等を併用することが好ましい。このような重合開始剤や硬化促進剤としては、公知のいかなるものを用いてもよい。
【0037】
本発明の顔料組成物及びカラーレジストに、必要により加えることのできるその他の添加剤としては、重合開始剤や硬化促進剤に加えて、例えばチクソ付与剤、硬化剤、重合禁止剤、有機又は無機フィラー、カップリング剤等が挙げられる。このようなその他の添加剤は、顔料組成物の具体的な目的用途によって選択すればよく上記に限定されない。また、その添加量も、具体的な目的用途に合わせて選択すれば良い。
【0038】
本発明の顔料組成物及びカラーレジストは、例えば次のような方法で調整することができる。
すなわち、有機顔料および本発明の化合物の配合の方法としては、従来公知の種々の方法、例えば、それぞれの乾燥粉末やプレスケーキを単に混合する方法やニーダー、ビーズミル、ディゾルバー、アトライター等の各種分散機により機械的に混合する方法、水又は有機溶剤中に有機顔料を懸濁させ、その中に本発明の化合物を添加混合して有機顔料の表面に均一に沈着する方法などが挙げられる。
次に、得られた有機顔料および本発明の化合物の混合物に、樹脂分散剤と、必要に応じてバインダー樹脂と重合性化合物と、必要に応じて各種有機溶剤、樹脂ワニス、各種添加剤等を配合して、サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより、所望の顔料組成物及びカラーレジストを製造することができる。或いは簡便的には、有機顔料、本発明の化合物及び樹脂分散剤と必要に応じてその他の成分を、一括で混合及び分散しても構わない。
なお、本発明の顔料組成物における本発明の化合物の添加量は、有機顔料100質量部に対して通常0.1乃至70質量部であってよく、好ましくは0.5乃至60質量部、より好ましくは1乃至50質量部であってよい。本発明の化合物の配合割合が0.1質量部以上であることにより、目的とする分散安定性および有機顔料の微粒子化の達成がより容易になり、また配合割合が70質量部以下であることにより、分散安定性を良好に保つことができる。このような観点から、本発明の化合物の配合量の最適化を行うことが望ましい。
【0039】
本発明の顔料組成物の用途は特に限定されず、例えばグラビア印刷インクなどの各種印刷インク、塗料、電子写真用乾式トナー又は湿式トナー、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用レジスト着色剤などの種々の用途が挙げられる。特に、本発明の顔料組成物は、顔料の微粒子化および高い安定性が要求されるカラーフィルター用レジスト着色剤、インクジェット記録用インクとして有用である。
尚、本発明の化合物をインクジェット記録用インクに用いる場合は、必ずしも有機顔料及び樹脂分散剤を併用する必要はないが、有機溶剤を併用することが好ましい。インクジェット記録用インク用途において、本発明の化合物に併用し得る有機溶剤の具体例としては、上記した本発明の顔料組成物に必要により加えることのできる有機溶剤と同じものが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。実施例における極大吸収波長は分光光度計「(株)島津製作所製UV-3150」で測定した値であり、酸価はJIS K-0070:1992に準拠した測定方法で測定した値である。また、重量平均分子量は、移動相としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエイションクロマトグラフィーの測定結果に基づいて、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0041】
実施例1(上記具体例のNo.1で示される化合物の合成)
反応容器中で水300部にC.I.アシッドレッド52を30.0部溶解させた後、この溶解液に、20乃至30℃で塩化カルシウム5.7部を加え、同温度で一時間撹拌した。析出した結晶をろ過して得られたウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥させることにより、上記のNo.1で示される化合物23.6部を得た。該化合物の極大吸収波長λmaxは565nm(水溶液)であった。
【0042】
実施例2(上記具体例のNo.2で示される化合物の合成)
反応容器中で水300部にC.I.アシッドレッド52を30.0部溶解させた後、この溶解液に、3.3%酢酸水溶液100部に18-アミノアビエタ-8,11,13-トリエン23部溶解させた水溶液を20乃至25℃で30分間かけて滴下し、同温度で一時間撹拌した。析出した結晶をろ過して得られたウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥させることにより、上記のNo.2で示される化合物32.0部を得た。該化合物の極大吸収波長λmaxは565nm(水溶液)であった。
【0043】
合成例1(バインダー樹脂Aの調製)
500mlの四つ口フラスコにメチルエチルケトン160部、メタクリル酸10部、ベンジルメタクリレート33部、α,α’-アゾビス(イソブチロニトリル)1部を仕込み、攪拌しながら30分間窒素ガスをフラスコ内に流入した。その後、80℃まで昇温し、80乃至85℃でそのまま4時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、無色透明で均一なバインダー樹脂溶液を得た。これをイソプロピルアルコールと水の1:1混合溶液中で沈殿させ、濾過し、固形分を取り出し、乾燥させ、バインダー樹脂Aを得た。得られたバインダー樹脂Aのポリスチレン換算重量平均分子量は18000であり、酸価は152であった。
【0044】
実施例3(本発明の顔料組成物の調製)
有機顔料としてC.I.ピグメントレッド254 10.0部、本発明の化合物として実施例1で得られたNo.1で示される化合物1.5部、バインダー樹脂として合成例1で得られたバインダー樹脂A 1.8部、樹脂分散剤としてBYK2001(ビッグケミージャパン株式会社製) 2.0部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート82部を配合し、プレミキシングの後、0.3mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散した。得られた分散液を5μmのフィルタでろ過することにより本発明の顔料組成物を調製した。
【0045】
実施例4(本発明の顔料組成物の調製)
実施例1で得られたNo.1で示される化合物の代わりに実施例2で得られたNo.2で示される化合物を用いた以外は実施例3と同じ方法で、顔料組成物を調製した。
【0046】
比較例1(比較用の顔料組成物の調製)
実施例1で得られたNo.1で示される化合物を用いなかったこと以外は実施例3と同じ方法で顔料組成物を調製した。
【0047】
(顔料組成物の分散性評価)
上記実施例3、実施例4及び比較例1で得られた顔料組成物について、B型粘度計を用い、室温(25℃)で20rpmの条件で粘度の測定を行い、下記の基準で評価した。尚、初期の分散安定性に加えて保存安定性を確認するために、初期(調製直後)の粘度の他に1日放置後の粘度も測定及び評価した。結果を表1に示した。
・評価基準
初期粘度:
25mPa・S未満:○(良好)
25mPa・S以上:×(不良)
1日後粘度増加率:
20%未満:○(良好)
20%以上:×(不良)
【0048】
【0049】
表1から明らかなように、実施例3及び4の顔料組成物は、本発明の化合物である顔料誘導体を添加しない比較例1と比べて初期粘度が低く抑えられており、実際に使用する際の作業性並びにレジストやインクの品質を損なわないものである。更に実施例3及び4の顔料組成物は、保存安定性についても、比較例と比べて良好な結果を示した。
具体的には、比較例1がゲル化により分散不可であるのに対し、実施例3及び4は1日後の粘度増加率が20%未満であった。
【0050】
実施例5(上記具体例のNo.5で示される化合物の合成)
反応容器中で水500部にC.I.アシッドレッド52を50.0部溶解させた後、この溶解液に、20乃至30℃で塩化バリウム31.6部を加え、同温度で一時間撹拌した。析出した結晶をろ過して得られたウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥させることにより、上記のNo.5で示される化合物46.4部を得た。該化合物の極大吸収波長λmaxは565nm(水溶液)であった。
【0051】
合成例2(下記式(x)で表される比較用化合物の合成)
反応容器中で水500部にC.I.アシッドレッド52を50.0部溶解させた後、この溶解液に、20乃至30℃で濃塩酸15.0部を加え、同温度で一時間撹拌した。析出した結晶をろ過して得られたウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥させることにより、下記式(x)で示される比較用化合物45.7部を得た。該化合物の極大吸収波長λmaxは565nm(水溶液)であった。
【0052】
【0053】
実施例6(本発明の顔料組成物の調製)
有機顔料としてC.I.ピグメントレッド254 5.0部、本発明の化合物として実施例5で得られたNo.5で示される化合物0.8部、バインダー樹脂として合成例1で得られたバインダー樹脂A 1.8部、樹脂分散剤としてBYK2001(ビッグケミージャパン株式会社製) 2.0部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート82部を配合し、プレミキシングの後、0.3mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散した。得られた分散液を5μmのフィルタでろ過することにより本発明の顔料組成物を調製した。
【0054】
比較例2(比較用の顔料組成物の調製)
実施例5で得られたNo.5で示される化合物の代わりに合成例2で得られた式(x)で示される化合物を用いた以外は実施例6と同じ方法で、顔料組成物を調製した。
【0055】
比較例3(比較用の顔料組成物の調製)
実施例5で得られたNo.5で示される化合物を用いなかったこと以外は実施例6と同じ方法で、顔料組成物を調製した。
【0056】
(顔料組成物の分散性評価)
上記実施例6、比較例2及び比較例3で得られた顔料組成物について、B型粘度計を用い、室温(25℃)で20rpmの条件で粘度の測定を行い、下記の基準で評価した。尚、保存安定性を確認するために、初期(調製直後)の粘度の他に2時間及び4時間放置後の粘度も測定及び評価した。結果を表2に示した。
・評価基準
初期粘度:
10mPa・S未満:○(良好)
10mPa・S以上:×(不良)
粘度増加率(対初期粘度):
20%未満:○(良好)
20%以上:×(不良)
【0057】
【0058】
表2から明らかなように、実施例6の顔料組成物は、本発明の化合物である顔料誘導体を添加しない比較例3と比べて初期粘度が低く抑えられており、実際に使用する際の作業性並びにレジストやインクの品質を損なわないものである。更に実施例6の顔料組成物は、保存安定性についても、比較例と比べて良好な結果を示した。
また、初期粘度は同等であったものの2時間放置後には粘度が大幅に上昇した比較例2と比べて、実施例6の顔料組成物は経過時間安定性に優れた結果を示した。
【0059】
実施例7(本発明のカラーレジストの調製)
C.I.ピグメントレッド254/実施例1で得られたNo.1で表されるキサンテン化合物/DISPERBYK-2001(ビックケミー・ジャパン社製)/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノエチルエーテル/合成例1で得られたバインダー樹脂A=42.50部/0.30部/1.00部/16.00部/2.00部/2.00部の組成比で混合した後、0.3mmジルコニアビーズ50部を添加し、ペイントシェーカーで4時間処理を行った。ビーズをろ過して除き、得られた分散液を5μmのフィルターでろ過することにより、本発明のカラーレジストを得た。
【0060】
実施例8(本発明のカラーフィルターの作製)
スピンコーターを用いて、実施例7で得られた本発明のカラーレジストをガラス基板上に塗布した後、80℃で10分間乾燥して本発明のカラーフィルター(顔料着色体)を作製した。得られた顔料着色体の膜厚は1.5μmであった。
【0061】
比較例4(比較用のカラーレジストの調製)
C.I.ピグメントレッド254/下記式(z)で表されるC.I.アシッドレッド52/DISPERBYK-2001/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノエチルエーテル/合成例1で得られたバインダー樹脂A=33.40部/0.30部/1.00部/16.00部/2.00部/2.00部の組成比で混合した後、0.3mmジルコニアビーズ50部を添加し、ペイントシェーカーで4時間処理を行った。ビーズをろ過して除き、得られた分散液を5μmのフィルターでろ過することにより、比較用のカラーレジストを得た。
【0062】
【0063】
比較例5(比較用のカラーフィルターの作製)
実施例7で得られた本発明のカラーレジストを、比較例4で得られた比較用のカラーレジストに変更したこと以外は実施例8と同様にして、比較用のカラーフィルター(比較用の顔料着色体)を作製した。得られた比較用の顔料着色体の膜厚は1.3μmであった。
【0064】
(耐熱性の評価)
実施例8及び比較例5で得られた各カラーフィルター(顔料着色体)に、230℃の恒温熱風乾燥機中で30分間の加熱処理を施した。処理前後の顔料着色体のL値、a値、b値を、紫外可視分光光度計UV-1700(島津製作所社製)を用いて標準光としてC光源、2度視野角で測色し、色差を求めた。尚、色差(ΔEab)が小さいほど、色相の変化が少なく、耐熱堅牢度に優れていることを示す。結果を表3に示した。
【0065】
(明度の評価)
紫外可視分光光度計UV-1700を用いて、実施例8及び比較例5で得られた各カラーフィルター(顔料着色体)の分光透過率を測定し、C光源のCIEのXYZ表色系におけるx、yの色度座標と明度Yを評価した。また、耐熱性の評価後の各カラーフィルターの分光透過率も測定し、同条件で明度Yを評価した。
明度Yを算出するに当たり必要な色度x及びyは、特許文献2019-053303号公報に記載の一般的に公知な色度x及びyを用いた。尚、明度Yが大きい程、明度が高く、優れていることを示す。結果を表3に示した。
【0066】
(蛍光強度の評価)
蛍光分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、商品名F-7000)を用いて、実施例8及び比較例5で得られた各カラーフィルター(顔料着色体)の蛍光強度を測定した。蛍光強度が小さい程、蛍光が弱く、顔料組成物から得た顔料着色体のコントラストが優れていることを意味する。結果を表3に示した。尚、蛍光分光光度計の励起波長は、567nmを用いた。
【0067】
【0068】
表3の結果から、本発明のカラーレジストを用いて作製したカラーフィルターは、比較用のカラーレジストを用いて作製した比較用のカラーフィルターに比べて良好な明度、耐熱性、コントラストを示していることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のキサンテン化合物を用いることにより、凝集、沈降、経時的な粘度の増加を引き起こすことなく、C.I.ピグメントレッド254等の有機顔料を微粒子化・高濃度化することが可能である。本発明のキサンテン化合物である顔料誘導体は、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として、安定な分散液を得るために非常に有用である。