(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】燃料噴射弁及び燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F02M 61/14 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
F02M61/14 320P
F02M61/14 320A
F02M61/14 320K
(21)【出願番号】P 2016015108
(22)【出願日】2016-01-29
【審査請求日】2019-01-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】前田 薫
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーショレック セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュタッハ トーマス
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】河端 賢
【審判官】山本 信平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-92061(JP,A)
【文献】特表2014-20426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0018502(US,A1)
【文献】特開2012-177345(JP,A)
【文献】特開2012-177345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド(20)に形成された取付け穴(21)の形状に沿って挿入され、燃料供給部(A1)から供給される燃料を段差部(B1)を介して燃焼室(30)に直接噴射する燃料噴射弁(10)において、
前記燃料供給部(A1)は、
燃料が外部に漏れることを防止するシールリング(12)と、
前記シールリング(12)を支持する支持リング(13)と、
を備え、
前記段差部(B1)は、
燃料を前記燃焼室(30)に噴射するノズル部(15)と、
前記ノズル部(1
5)よりも径の大きい取付け軸部(16)と、
を備え、
前記ノズル部(15)は、
前記ノズル部(15)と前記取付け穴(21)との間に生じる隙間を埋めるガスシールリング(152)を備え、前記隙間が、前記取付け穴の段部と前記燃焼室との間で前記ガスシールリング(152)によって燃焼ガスの浸入が防止されるように構成されており、
前記燃料噴射弁(10)は、
さらに、前記取付け穴(21)の段部との間
で前記燃料噴射弁(10)を軸方向に支え、燃料の燃焼ガスの熱により溶ける樹脂製の補償エレメント(40)を介在させており、
前記燃料噴射弁(10)の開口部(141)に燃料を案内して前記軸方向の位置が固定されている燃料カップ(11)の内周のテーパ部(111)と前記燃料カップ(11)の内側に配置される前記支持リング(13)との間の軸方向における第1のギャップ(G1)が、前記取付け穴(21)と前記取付け軸部(16)との間の軸方向における第2のギャップ(G2)よりも大きい
ことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
前記第1のギャップ(G1)は、
前記テーパ部(111)の両端部のうちの前記支持リング(13)側の端部と、前記支持リング(13)の両端面のうちの前記テーパ部(111)側の端面との間の軸方向における距離であり、
前記第2のギャップ(G2)は、
前記取付け穴(21)の表面のうちの前記取付け軸部(16)に軸方向に対向する対向面と、前記取付け軸部(16)の表面のうちの前記取付け穴(21)に軸方向に対向する対向面との間の軸方向における距離である
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記第1のギャップ(G1)は、
前記テーパ部(111)の両端部のうちの前記支持リング(13)側の端部と、前記支持リング(13)の両端面のうちの前記テーパ部(111)側の端面との間の軸方向における距離であり、
前記取付け穴(21A)及び前記取付け軸部(16A)がテーパ部(211、161)を有する場合、前記第2のギャップ(G21)は、
前記取付け穴(21A)の前記テーパ部(211)が前記取付け軸部(16A)のテーパ部(161)に対向する対向面と、前記取付け軸部(16A)のテーパ部(161)が前記取付け穴(21A)のテーパ部(211)に対向する対向面との間の軸方向における最短距離である
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記第2のギャップ(G2、G21)は、0よりも大きい
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記第1のギャップ(G1)は、前記補償エレメント(40)の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項6】
シリンダヘッド(20)に形成された取付け穴(21)の形状に沿って挿入され、燃料供給部(A1)から供給される燃料を段差部(B1)を介して燃焼室(30)に直接噴射する燃料噴射弁(10)を備える燃料噴射装置(1)において、
前記燃料供給部(A1)は、
燃料が外部に漏れることを防止するシールリング(12)と、
前記シールリング(12)を支持する支持リング(13)と、
を備え、
前記段差部(B1)は、
燃料を前記燃焼室(30)に噴射するノズル部(15)と、
前記ノズル部(31)よりも径の大きい取付け軸部(16)と、
を備え、
前記ノズル部(15)は、
前記ノズル部(15)と前記取付け穴(21)との間に生じる隙間を埋めるガスシールリング(152)を備え、前記隙間が、前記取付け穴の段部と前記燃焼室との間で前記ガスシールリング(152)によって燃焼ガスの浸入が防止されるように構成されており、
前記燃料噴射弁(10)は、
さらに、前記取付け穴(21)の段部との間
で前記燃料噴射弁(10)を軸方向に支え、燃料の燃焼ガスの熱により溶ける樹脂製の補償エレメント(40)を介在させており、
前記燃料噴射弁(10)の開口部(141)に燃料を案内して前記軸方向の位置が固定されている燃料カップ(11)の内周のテーパ部(111)と前記燃料カップ(11)の内側に配置される前記支持リング(13)との間の軸方向における第1のギャップ(G1)が、前記取付け穴(21)と前記取付け軸部(16)との間の軸方向における第2のギャップ(G2)よりも大きい
ことを特徴とする燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁及び燃料噴射装置に関し、特に高圧の燃料をシリンダ内の燃焼室に直接噴射する燃料噴射弁及び燃料噴射装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料噴射弁は補償エレメントを備えて構成される。この補償エレメントは、燃料噴射弁を燃料噴射装置のシリンダヘッドに取り付ける際、燃料噴射弁の軸線と、シリンダヘッドに形成されている取付け穴の軸線との間の角度偏差を補償する。
【0003】
よって燃料噴射弁の軸線と、取付け穴の軸線とが取付け時に多少ずれている場合であっても、燃料噴射弁を取付け穴に適切に取り付けることができる。なおこの取付け時のずれは、燃料噴射弁及びシリンダヘッドの製造過程で生じる製造誤差に起因する。
【0004】
特許文献1には、この補償エレメントの構造に関する発明が開示されている。具体的には、剛性的な第1のリングと、剛性的な第2のリングと、これら第1のリング及び第2のリングの間に設けられる弾性的な中間リングとを備えて構成される補償エレメントが開示されている。
【0005】
この特許文献1によれば、中間リングの弾性変形により第1のリングの中心点が第2のリングの中心点に対して半径方向に移動することができ、また燃料噴射弁の傾動及び軸方向の移動についてもより大きな範囲で補償することができるとしている。よって取付け時のずれが多少大きな場合であっても、その誤差を補償することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで通常、補償エレメントは金属等の剛性部材により構成される。一方で燃料噴射弁及びシリンダヘッドも金属等の剛性部材により構成される。燃料噴射弁は補償エレメントにより支持されており、補償エレメントはシリンダヘッドに支持されていることから、燃料噴射弁を取り付けた状態では金属同士が直接接触していることになる。
【0008】
この場合、燃料噴射弁の駆動音がシリンダヘッドに伝達され易くなり、自動車の快適性(NVH:Noise Vibration Harshness)が損なわれるという課題がある。
【0009】
そこで近年、NVHの向上を目的として、プラスチック等の熱可塑性樹脂により成形した補償エレメントを用いることが検討されている。補償エレメントがプラスチックであれば、燃料噴射弁の駆動音がシリンダヘッドに伝達され難くなり、NVHの向上を図ることができる。また金属である場合と比較して安価に製造することができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0010】
しかし一方で補償エレメントをプラスチックにすると、金属と比較して耐久性が低下するという新たな問題が生じる。プラスチックにより成形された補償エレメントは、高熱に晒されると溶けたり、また強い衝撃を受けると破損したりする場合がある。
【0011】
例えば何らかの原因によりガスシールリングが破損して燃焼室内で発生した燃焼ガスが取付け穴から浸入し、補償エレメントが高熱の燃焼ガスに晒された場合、補償エレメントの一部又は全部が溶ける場合がある。
【0012】
この場合、補償エレメントが溶けた分だけ燃料噴射弁が軸方向の燃焼室側に移動する。その結果、燃料を案内する燃料カップと、燃料カップに接続する接続管との嵌合状態が解除又は弛緩され、燃料の一部が外部に漏れる。よって補償エレメントをプラスチックにより成形すると、安全性が低下するという課題がある。
【0013】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、快適性の向上を図りつつ安全性を維持し得る燃料噴射弁及び燃料噴射装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するために、本発明においては、シリンダヘッド(20)に形成された取付け穴(21)の形状に沿って挿入され、燃料供給部(A1)から供給される燃料を段差部(B1)を介して燃焼室(30)に直接噴射する燃料噴射弁(10)において、燃料供給部(A1)は、端部にテーパ部(111)を有する燃料カップ(11)と、燃料が外部に漏れることを防止するシールリング(12)と、シールリング(12)を支持する支持リング(13)とを備え、段差部(B1)は、燃料を燃焼室(30)に噴射するノズル部(15)と、ノズル部(14)よりも径の大きい取付け軸部(16)とを備え、テーパ部(111)と、支持リング(13)との間の軸方向における第1のギャップ(G1)が取付け穴(21)と、取付け軸部(16)との間の軸方向における第2のギャップ(G2)よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、快適性の向上を図りつつ安全性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】燃料噴射弁の移動前後を示す拡大構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0018】
(1)全体構成
図1は、本実施の形態における燃料噴射装置1の全体構成を示す。燃料噴射装置1は、燃料噴射弁10、シリンダヘッド20及び燃焼室30等を備える。燃料噴射弁10は、シリンダヘッド20に形成された取付け穴21の形状に沿って挿入されて取り付けられ、燃料供給部A1から供給される燃料を段差部B1を介して燃焼室30に直接噴射する。
【0019】
以下燃料噴射弁10が備える各部の構成について説明する。
燃料供給部A1は、燃料カップ11、シールリング12、支持リング13及び接続管14を備える。燃料カップ11は、燃料を接続管14の開口部141に案内する部材である。
【0020】
燃料カップ11の端部にはテーパ形状を有するテーパ部211が形成されている。このテーパ部211が形成されていることにより、接続管14を燃料カップ11に容易に挿入することができる。
【0021】
シールリング12は、燃料カップ11により案内された燃料が接続管14に案内されずに外部に漏れることを防止する部材である。シールリング12は、例えばゴム等の弾性部材からなるOリングである。
【0022】
支持リング13は、シールリング12を均一な力で支持する部材である。この支持リング13をシールリング12の直下に取り付けることで、例えば接続管14が軸方向D1に移動した場合でもシールリング12が不均一な力で支持されることを防止する。
【0023】
具体的には支持リング13は、シールリング12に高圧の燃料が作用する場合に燃料カップ11との直径隙間を減少させ、シールリング12がゴム等の弾性部材からなるOリングの場合のはみ出しを防止してシールリング12の破損を防止する。
【0024】
なお直径隙間が拡大するとシールリング12が不均一な力で支持される。この場合、局所的に強い力がシールリング12に付与されてシールリング12の破損につながるおそれがある。支持リング13はこれを防止する部材である。
【0025】
接続管14は、燃料カップ11に接続される部材であり、開口部141はフランジ形状を有する。なお接続管14を燃料カップ11に挿入して接続する際、接続管14にはシールリング12及び支持リング13が予め取り付けられた状態で挿入される。
【0026】
段差部B1は、ノズル部15及び取付け軸部16を備える。ノズル部15は、燃料供給部A1からの燃料を燃焼室30に実際に噴射する部材である。軸方向D1の燃焼室30側の端部151には複数の噴射孔が形成されて構成される。
【0027】
またノズル部15は、ガスシールリング152を備える。ガスシールリング152は、ノズル部15と、取付け穴21との間に生じる隙間31を埋めるための部材である。ガスシールリング152は、例えばフッ素樹脂からなるテフロン(登録商標)リングである。
【0028】
取付け軸部16は、ノズル部15の径よりも大きい径を有して構成される。これにより段差が形成される。
【0029】
補償エレメント40は、燃料噴射弁10又は取付け穴21の製造誤差を補償する部材であり、ここでは熱を加えると溶ける熱可塑性樹脂を用いて成形される。なお熱可塑性樹脂は一般にはプラスチックと呼ばれる。補償エレメント40の材料としてプラスチックを採用することにより、金属を採用する場合と比較して成形が容易で安価である。
【0030】
押さえ部50は、燃料噴射弁10を取付け穴21に保持するために燃料噴射弁10を軸方向D1の燃焼室30側に押下する部材である。接続コネクタ60は、燃料噴射弁10の動作を電気的に制御する制御線を燃料噴射弁10に接続する部材である。
【0031】
(2)不具合時の動作
次いで
図1を参照して、ガスシールリング152に不具合が生じた場合の燃料噴射弁10の動作について説明する。ガスシールリング152は、上記の通り、隙間31を埋めるための部材であり、通常はこのガスシールリング152により隙間31からの燃焼ガスの浸入を防止することができる。
【0032】
しかし何らかの原因によりガスシールリング152が溶けて破損等した場合、燃焼室30で発生した燃焼ガスが隙間31から浸入する。この場合、燃料噴射弁10は高熱の燃焼ガスに晒されることになる。そして補償エレメント40が熱可塑性樹脂であるプラスチックで成形されている場合にこの補償エレメント40が溶ける。
【0033】
その結果、補償エレメント40が溶けた分だけ燃料噴射弁10が軸方向D1の燃焼室30側に移動する。このとき燃料カップ11だけは図示しない部材により軸方向D1の位置が固定されている。よって燃料カップ11と接続管14との嵌合状態が解除され、燃料カップ11から供給される燃料が外部に漏れるおそれがある。
【0034】
本実施の形態においてはこのように補償エレメント40が溶けて燃料噴射弁10が軸方向D1の燃焼室30側に移動する場合であっても、燃料カップ11からの燃料が外部に漏れることを確実に防止しようとするものである。そのため本実施の形態ではギャップ(
図2及び
図3)を規定している。
【0035】
(3)ギャップの構成
図2は、燃料供給部A1の拡大構成図である。燃料供給部A1において規定される第1のギャップG1は、テーパ部111の両端部のうちの支持リング13側の端部と、支持リング13の両端面のうちのテーパ部111側の端面との間の軸方向D1の距離である。
【0036】
図3は、段差部B1の拡大構成図である。段差部B1において規定される第2のギャップG2は、取付け穴21の表面のうちの取付け軸部16に軸方向D1に対向する対向面と、取付け軸部16の表面のうちの取付け穴21に軸方向D1に対向する対向面との間の軸方向D1の距離である。
【0037】
ここで第1のギャップG1が小さすぎると、接続管14が少しでも下方に移動した場合に支持リング13がテーパ部111のテーパ形状に沿って径方向に拡大する。支持リング13が径方向に拡大すると、直径隙間が拡大し、シールリング12が支持リング13により均一に支持されなくなる。その結果、シールリング12に局所的な力が加わり、千切れる等して燃料が外部に漏れるおそれがある。よって第1のギャップG1は、ある程度の距離が必要になる。
【0038】
そこで本実施の形態においては第1のギャップG1と、第2のギャップG2との関係を第1のギャップG1>第2のギャップG2のように規定する。これによりたとえ補償エレメント40が溶けて接続管14が軸方向D1の燃焼室30側に移動する場合であっても、最大移動距離を第2のギャップG2に収めることができる。
【0039】
この場合、支持リング13がテーパ部111の位置まで移動することはなく、シールリング12が支持リング13に常に均一に支持される。よってシールリング12に局所的な力が加わることはなく、シールリング12の破損を防止することができるため、燃料漏れを確実に防止することができる。
【0040】
また第2のギャップG2は、第2のギャップG2>0のように規定する。これにより通常時において燃料噴射弁10とシリンダヘッド20とが直接接触することを防止することができる。すなわち金属同士が直接接触することを防止することができるため、燃料噴射弁10の駆動音がシリンダヘッド20に伝達され難くなり、NVHの向上を図ることができる。
【0041】
図4は、燃料噴射弁10の移動の前後を示す。移動前の燃料噴射弁10は、テーパ部111の端部と、支持リング13の端面との間の軸方向D1における距離として第1のギャップG1を有して構成される。何らかの原因により燃料噴射弁10(接続管14)が軸方向D1の燃焼室30側に移動する場合がある。
【0042】
しかしこの場合であっても、本実施の形態においては第1のギャップG1>第2のギャップG2に規定されているため、接続管14の最大移動距離は第2のギャップG2になる。よってテーパ部111の端部と、支持リング13の端面との間の軸方向D1における距離は少なくとも(第1のギャップG1)-(第2のギャップG2)の距離だけ維持される。
【0043】
(4)本実施の形態による効果
以上のように本実施の形態によれば、第1のギャップG1>第2のギャップG2となるように第1のギャップG1及び第2のギャップG2を規定した。よってたとえ接続管14が軸方向D1の下方に移動する場合であっても、支持リング13の底面の位置をテーパ部111の端部よりも軸方向D1の上方に維持することができる。この場合、支持リング13によりシールリング12を均一な力で常に支持することができるため、シールリング12の破損を防止して安全性を維持することができる。
【0044】
(5)他の実施の形態
図5は、他の段差部B2の拡大構成を示す。他の段差部B2は、取付け穴21A及び取付け軸部16Aがテーパ形状を有するテーパ部211及び161がそれぞれ形成されている点で、段差部B1と異なる。
【0045】
この場合、第2のギャップG21は、取付け穴21Aのテーパ部211が取付け軸部16Aのテーパ部161に対向する対向面と、取付け軸部16Aのテーパ部161が取付け穴21Aのテーパ部211に対向する対向面との間の軸方向D1の最短距離である。
【0046】
このように第2のギャップG21を規定し、上記の通り、第1のギャップG1>第2のギャップG21に規定することにより、たとえ補償エレメント40が溶けて接続管14が軸方向D1の下方に移動する場合であっても、最大移動距離を第2のギャップG2に収めることができる。
【0047】
よって支持リング13がテーパ部111の位置まで移動することはなく、シールリング12が支持リング13に常に均一に支持され、シールリング12に局所的に強い力が加わること及びシールリング12の破損を防止することができる。
【0048】
また補償エレメント40の軸方向D1の距離(すなわち厚み)を第3のギャップG3と規定して、第1のギャップG1又は第3のギャップG3<第2のギャップG2又はG21に規定してもよい。この場合、補償エレメント40が溶けた場合に接続管14が軸方向D1の下方に移動しても、最大移動距離は第3のギャップG3に収まるから、支持リング13の底面の位置をテーパ部111の端部よりも軸方向D1の上方に維持することができる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・燃料噴射装置、10・・・燃料噴射弁、20・・・シリンダヘッド、30・・・燃焼室、40・・・補償エレメント、50・・・押さえ部、60・・・接続コネクタ、A1・・・燃料供給部、B1、B2・・・段差部