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特許7156775作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/85 20060101AFI20221012BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F9/20 N
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2016146381
(22)【出願日】2016-07-26
(65)【公開番号】P2018016973
(43)【公開日】2018-02-01
【審査請求日】2019-02-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 永至
(72)【発明者】
【氏名】稲丸 昭文
(72)【発明者】
【氏名】米澤 保人
(72)【発明者】
【氏名】下條 隆宏
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】奈良田 新一
【審判官】有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5924493(US,A)
【文献】特開2003-239287(JP,A)
【文献】特開2016-132912(JP,A)
【文献】特開2000-230253(JP,A)
【文献】特開平10-147952(JP,A)
【文献】特開2013-217137(JP,A)
【文献】特開2003-64725(JP,A)
【文献】特開平10-317418(JP,A)
【文献】特開2001-303620(JP,A)
【文献】特開平10-88612(JP,A)
【文献】特開昭61-62906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0059554(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0311031(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0077514(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0076223(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0071667(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0040397(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42-3/43, 3/84-3/85, 9/20-9/22, 9/26
G05B 19/00-19/02, 19/06-19/16, 24/00-24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を有する作業車両の制御システムであって、
作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得する現況地形取得装置と、
前記現況地形より上方に位置し、前記作業対象の目標形状である最終設計地形を示す設計地形情報を記憶している記憶装置と、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記現況地形取得装置から前記現況地形情報を取得し、
前記記憶装置から前記設計地形情報を取得し、
前記現況地形情報及び前記設計地形情報に基づいて、前記現況地形の上方、且つ、前記最終設計地形の下方に位置する中間設計地形を決定し、
前記中間設計地形に基づいて前記作業機を移動させる指令信号を生成し、
前記現況地形取得装置からの前記現況地形情報によって前記現況地形を更新し、
更新された前記現況地形に基づいて次の前記中間設計地形を決定する、
作業車両の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記現況地形よりも、所定距離、上方の位置に前記中間設計地形を設定する、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記現況地形の形状に応じて前記所定距離を変化させる、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記最終設計地形を上方に超えないように、前記中間設計地形を決定する、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項5】
作業機を有する作業車両の制御方法であって、
作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得するステップと、
前記現況地形より上方に位置し、前記作業対象の目標地形である最終設計地形を示す設計地形情報を取得するステップと、
前記現況地形情報及び前記設計地形情報に基づいて、前記現況地形の上方、且つ、前記最終設計地形の下方に位置する中間設計地形を決定するステップと、
前記中間設計地形に基づいて前記作業機を移動させる指令信号を生成するステップと、
前記現況地形情報によって前記現況地形を更新するステップと、
更新された前記現況地形に基づいて次の前記中間設計地形を決定するステップと、
を備える作業車両の制御方法。
【請求項6】
前記中間設計地形は、前記現況地形よりも、所定距離、上方の位置に設定される、
請求項5に記載の作業車両の制御方法。
【請求項7】
前記所定距離は、前記現況地形の形状に応じて変更される、
請求項に記載の作業車両の制御方法。
【請求項8】
前記中間設計地形は、前記最終設計地形を上方に超えないように決定される、
請求項に記載の作業車両の制御方法。
【請求項9】
作業機と、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得し、
前記現況地形より上方に位置し、前記作業対象の目標地形である最終設計地形を示す設計地形情報を取得し、
前記現況地形情報及び前記設計地形情報に基づいて、前記現況地形の上方、且つ、前記最終設計地形の下方に位置する中間設計地形を決定し、
前記中間設計地形に基づいて前記作業機を移動させる指令信号を生成し
前記現況地形情報によって前記現況地形を更新し、
更新された前記現況地形に基づいて次の前記中間設計地形を決定する、
作業車両。
【請求項10】
前記コントローラは、前記現況地形よりも、所定距離、上方の位置に前記中間設計地形を設定する、
請求項9に記載の作業車両。
【請求項11】
前記コントローラは、前記現況地形の形状に応じて前記所定距離を変化させる、
請求項10に記載の作業車両。
【請求項12】
前記コントローラは、前記最終設計地形を上方に超えないように、前記中間設計地形を決定する
請求項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザ、或いはグレーダ等の作業車両において、作業機の位置を自動的に調整する自動制御が提案されている。例えば、特許文献1では、掘削制御と整地制御とが開示されている。
【0003】
掘削制御では、ブレードに係る負荷を目標負荷に一致させるように、ブレードの位置が自動調整される。整地制御では、掘削対象の目標形状を示す設計地形に沿ってブレードの刃先が移動するように、ブレードの位置が自動調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5247939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車両によって行われる作業には、掘削作業の他にも、盛土作業がある。盛土作業では、作業車両は、作業機によって切土部から土を切り出す。そして、作業車両は、切り出した土を所定位置に盛りながら、その上を走行することで、盛った土を締め固める。これにより、例えば、窪んだ地形を埋めて、平坦な形状に形成することができる。
【0006】
しかし、上述した自動制御では、良好な盛土作業を行うことは困難である。例えば、図20に示すように、整地制御では、設計地形100に沿ってブレードの刃先200が移動するように、ブレードの位置が自動調整される。そのため、整地制御によって盛土作業が行われると、図20において破線で示すように、一度に大量の土が作業車両300の手前の位置に盛られることになる。その場合、盛られた土の厚さが大きいため、盛られた土を締め固めることが困難になる。そのため、作業の仕上がりの品質が低下するという問題がある。或いは、盛られた土を十分に締め固めるために、盛られた土の上を、作業車両300が何度も走行する必要がある。その場合、作業の効率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、自動制御によって、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い盛土作業を行うことができる作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の局面に係る作業車両の制御システムは、現況地形取得装置と、記憶装置と、コントローラと、を備える。現況地形取得装置は、作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得する。記憶装置は、作業対象の目標地形である最終設計地形を示す設計地形情報を記憶している。コントローラは、現況地形取得装置から現況地形情報を取得する。コントローラは、記憶装置から設計地形情報を取得する。コントローラは、作業機を、現況地形と最終設計地形との間であって現況地形よりも、所定距離、上方の位置を移動させる指令信号を生成する。
【0009】
第2の局面に係る作業車両の制御システムは、現況地形取得装置と、記憶装置と、コントローラと、を備える。現況地形取得装置は、作業対象の現況地形を示す現況地形情報を取得する。記憶装置は、作業対象の目標地形である最終設計地形を示す設計地形情報を記憶している。コントローラは、現況地形取得装置から現況地形情報を取得する。コントローラは、記憶装置から設計地形情報を取得する。コントローラは、現況地形情報及び設計地形情報に基づいて、中間設計地形を決定する。中間設計地形は、現況地形の上方、且つ、最終設計地形の下方に位置する。コントローラは、中間設計地形に基づいて、作業機を移動させる指令信号を生成する。
【0010】
第3の局面に係る作業車両の制御方法は、以下のステップを備える。第1ステップでは、現況地形情報を取得する。現況地形情報は、作業対象の現況地形を示す。第2ステップでは、設計地形情報を取得する。設計地形情報は、作業対象の目標地形である最終設計地形を示す。第3ステップでは、作業機を、現況地形と最終設計地形との間であって現況地形よりも、所定距離、上方の位置を移動させる指令信号を生成する。
【0011】
第4の局面に係る作業車両は、作業機とコントローラとを備える。コントローラは、現況地形情報を取得する。現況地形情報は、作業対象の現況地形を示す。コントローラは、設計地形情報を取得する。設計地形情報は、作業対象の最終設計地形を示す。コントローラは、現況地形と最終設計地形との間であって現況地形よりも、所定距離、上方の位置を移動させるように作業機を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現況地形よりも上方の位置を移動するように作業機が自動的に制御される。その際、最終設計地形よりも下方の位置を作業機が移動することで、作業機が最終設計地形に沿って移動する場合と比べて、土を薄く現況地形上に盛ることができる。そのため、盛られた土を作業車両によって容易に締め固めることができる。それにより、作業の仕上がりの品質を向上させることができる。また、作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
図2】作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】作業車両の構成を示す模式図である。
図4】盛土作業における現況地形と最終設計地形と中間設計地形との一例を示す図である。
図5】盛土作業における作業機の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図6】現況地形情報の一例を示す図である。
図7】中間設計地形を決定するための処理を示すフローチャートである。
図8】底高さを決定するための処理を示す図である。
図9】第1上限高さ、第1下限高さ、第2上限高さ、及び第2下限高さを示す図である。
図10】中間設計地形のピッチ角を決定するための処理を示すフローチャートである。
図11】第1上限角度を決定するための処理を示す図である。
図12】第1下限角度を決定するための処理を示す図である。
図13】最短距離角度を決定するための処理を示す図である。
図14】最短距離角度を決定するための処理を示す図である。
図15】最短距離角度を決定するための処理を示す図である。
図16】第1変形例に係る中間設計地形を示す図である。
図17】第2変形例に係る中間設計地形を示す図である。
図18】他の実施形態に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
図19】他の実施形態に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
図20】従来技術による盛土作業を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る作業車両について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業車両1を示す側面図である。本実施形態に係る作業車両1は、ブルドーザである。作業車両1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0015】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業車両1が走行する。
【0016】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21とを有する。
【0017】
リフトフレーム17は、車幅方向に延びる軸線Xを中心として上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。
【0018】
リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Xを中心として上下に回転する。
【0019】
アングルシリンダ20は、リフトフレーム17とブレード18とに連結される。アングルシリンダ20が伸縮することによって、ブレード18は、略上下方向に延びる軸線Yを中心として回転する。
【0020】
チルトシリンダ21は、リフトフレーム17とブレード18とに連結される。チルトシリンダ21が伸縮することによって、ブレード18は、略車両前後方向に延びる軸線Zを中心として回転する。
【0021】
図2は、作業車両1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0022】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21とに供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0023】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0024】
制御システム3は、操作装置25と、コントローラ26と、制御弁27とを備える。操作装置25は、作業機13及び走行装置12を操作するための装置である。操作装置25は、運転室14に配置されている。操作装置25は、作業機13及び走行装置12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。操作装置25は、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0025】
コントローラ26は、取得した情報に基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、例えばCPU等の処理装置を含む。コントローラ26は、操作装置25から操作信号を取得する。コントローラ26は、操作信号に基づいて、制御弁27を制御する。なお、コントローラ26は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。
【0026】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19、アングルシリンダ20、チルトシリンダ21などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21とに供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、上述した操作装置25の操作に応じて作業機13が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19と、アングルシリンダ20と、チルトシリンダ21とが、操作装置25の操作量に応じて、制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0027】
制御システム3は、リフトシリンダセンサ29を備える。リフトシリンダセンサ29は、リフトシリンダ19のストローク長さ(以下、「リフトシリンダ長L」という。)を検出する。図3に示すように、コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。図3は、作業車両1の構成を示す模式図である。
【0028】
図3では、作業機13の原点位置が二点鎖線で示されている。作業機13の原点位置は、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角θliftは、作業機13の原点位置からの角度である。
【0029】
図2に示すように、制御システム3は、位置検出装置31を備えている。位置検出装置31は、作業車両1の位置を検出する。位置検出装置31は、GNSSレシーバ32と、IMU 33と、を備える。GNSSレシーバ32は、運転室14上に配置される。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用のアンテナである。GNSSレシーバ32は、作業車両1の位置を示す車体位置情報を受信する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32から車体位置情報を取得する。
【0030】
IMU 33は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。IMU 33は、車体傾斜角情報を取得する。車体傾斜角情報は、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を示す。IMU 33は、車体傾斜角情報をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、IMU 33から車体傾斜角情報を取得する。
【0031】
コントローラ26は、リフトシリンダ長Lと、車体位置情報と、車体傾斜角情報とから、刃先位置P1を演算する。図3に示すように、コントローラ26は、車体位置情報に基づいて、GNSSレシーバ32のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいて、リフト角θliftを算出する。コントローラ26は、リフト角θliftと車体寸法情報に基づいて、GNSSレシーバ32に対する刃先位置P1のローカル座標を算出する。車体寸法情報は、記憶装置28に記憶されており、GNSSレシーバ32に対する作業機13の位置を示す。コントローラ26は、GNSSレシーバ32のグローバル座標と刃先位置P1のローカル座標と車体傾斜角情報とに基づいて、刃先位置P1のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、刃先位置P1のグローバル座標を刃先位置情報として取得する。
【0032】
図2に示すように、制御システム3は、土量取得装置34を備えている。土量取得装置34は、作業機13の保有土量を示す土量情報を取得する。土量取得装置34は、土量情報を示す土量信号を生成し、コントローラ26に送る。本実施形態において、土量情報は、作業車両1の牽引力を示す情報である。コントローラ26は、作業車両1の牽引力から保有土量を算出する。例えば、HSTを備える作業車両1では、土量取得装置34は、HSTの油圧モータに供給される油圧(駆動油圧)を検出するセンサである。この場合、コントローラ26は、駆動油圧から牽引力を算出し、算出した牽引力から保有土量を算出する。
【0033】
或いは、土量取得装置34は、現況地形の変化を検出する測量装置であってもよい。この場合、コントローラ26は、現況地形の変化から保有土量を算出してもよい。或いは、土量取得装置34は、作業機13によって搬送されている土の画像情報を取得するカメラであってもよい。この場合、コントローラ26は、画像情報から保有土量を算出してもよい。
【0034】
制御システム3は、記憶装置28を備えている。記憶装置28は、例えばメモリーと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。
【0035】
記憶装置28は、設計地形情報を記憶している。設計地形情報は、最終設計地形の位置および形状を示す。最終設計地形は、作業現場における作業対象の目標地形である。コントローラ26は、現況地形情報を取得する。現況地形情報は、作業現場における作業対象の現況地形の位置および形状を示す。コントローラ26は、現況地形情報と、設計地形情報と、刃先位置情報とに基づいて、作業機13を自動的に制御する。
【0036】
以下、コントローラ26によって実行される、盛土作業における作業機13の自動制御について説明する。図4は、最終設計地形60と、最終設計地形60の下方に位置する現況地形50との一例を示す図である。盛土作業では、作業車両1は、最終設計地形60の下方に位置する現況地形50上に土を盛って締め固めることで、作業対象が最終設計地形60となるように形成する。
【0037】
コントローラ26は、現況地形50を示す現況地形情報を取得する。例えば、コントローラ26は、刃先位置P1の軌跡を示す位置情報を、現況地形情報として取得する。従って、位置検出装置31は、現況地形情報を取得する現況地形取得装置として機能する。
【0038】
或いは、コントローラ26は、車体位置情報と車体寸法情報とから履帯16の底面の位置を算出し、履帯16の底面の軌跡を示す位置情報を現況地形情報として取得してもよい。或いは、現況地形情報は、作業車両1の外部の測量装置によって計測された測量データから生成されてもよい。或いは、カメラによって現況地形50を撮影し、カメラによって得られた画像データから現況地形情報が生成されてもよい。
【0039】
図4に示すように、本実施形態では、最終設計地形60は、水平、且つ、平坦である。ただし、最終設計地形60の一部、或いは全部が、傾斜していてもよい。なお、図4では、-d2から0の範囲における最終設計地形の高さは、現況地形50の高さと同一である。
【0040】
コントローラ26は、現況地形50と最終設計地形60との間に位置する中間設計地形70を決定する。なお、図4では、複数の中間設計地形70が破線で示されているが、その一部のみに符号“70”を付している。図4に示すように、中間設計地形70は、現況地形50より上方、且つ、最終設計地形60よりも下方に位置する。コントローラ26は、現況地形情報と、設計地形情報と、土量情報とに基づいて、中間設計地形70を決定する。
【0041】
中間設計地形70は、現況地形50よりも上方に所定距離D1の位置に設定される。コントローラ26は、現況地形50が更新されるたびに、更新された現況地形50よりも上方に所定距離D1の位置に次の中間設計地形70を決定する。これにより、図4に示すように、現況地形50の上に積層する複数の中間設計地形70が生成される。中間設計地形70を決定するための処理については後に詳細に説明する。
【0042】
コントローラ26は、中間設計地形70を示す中間地形情報と、刃先位置P1を示す刃先位置情報とに基づいて、作業機13を制御する。詳細には、コントローラ26は、中間設計地形70に沿って作業機13の刃先位置P1が移動するように、作業機13への指令信号を生成する。
【0043】
図5は、盛土作業における作業機13の自動制御の処理を示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS101では、コントローラ26は、現在位置情報を取得する。コントローラ26は、図6に示すように、前回決定した基準位置P0の1つ前の中間設計面70_-1の高さHm_-1と、中間設計面70_-1のピッチ角θm_-1とを現在位置情報として取得する。
【0044】
ただし、盛土作業の初期状態では、コントローラ26は、前回決定した基準位置P0の1つ前の中間設計地形70_-1の高さHm_-1に代えて、基準位置P0の1つ前の現況面50_-1の高さを取得する。盛土作業の初期状態では、コントローラ26は、基準位置P0の1つ前の中間設計地形70_-1のピッチ角θm_-1に代えて、基準位置P0の1つ前の現況面50_-1のピッチ角を取得する。盛土作業の初期状態は、例えば、作業車両1が後進から前進に切り換えられたときである。
【0045】
ステップS102では、コントローラ26は、現況地形情報を取得する。図6に示すように、現況地形50は、作業車両1の進行方向において、所定の基準位置P0から、所定間隔d1ごとに分割された複数の現況面50_1~50_10を含む。基準位置P0は、例えば、作業車両1の進行方向において、現況地形50が最終設計地形60よりも下方となり始める位置である。言い換えると、基準位置P0は、作業車両1の進行方向において、現況地形50の高さが最終設計地形60の高さよりも低くなり始める位置である。或いは、基準位置P0は、作業車両1の所定距離、前方の位置である。或いは、基準位置P0は、作業車両1の刃先P1の現在位置である。或いは、基準位置P0は、現況地形50の法肩の位置であってもよい。なお、図6において、縦軸は、地形の高さを示しており、横軸は、基準位置P0からの距離を示している。
【0046】
現況地形情報は、作業車両1の進行方向において、基準位置P0から、所定間隔d1ごとの現況面50_1~50_10の位置情報を含む。すなわち、現況地形情報は、基準位置P0から前方に所定距離d10までの現況面50_1~50_10の位置情報を含む。
【0047】
図6に示すように、コントローラ26は、現況面50_1~50_10の高さHa_1~Ha_10を現況地形情報として取得する。なお、本実施形態では、現況地形情報として取得される現況面は、10個先の現況面までであるが、10個より少ない、或いは10個より多くてもよい。
【0048】
ステップS103では、コントローラ26は、設計地形情報を取得する。図6に示すように、最終設計地形60は、複数の最終設計面60_1~60_10を含む。従って、設計地形情報は、作業車両1の進行方向において、所定間隔d1ごとの最終設計面60_1~60_10の位置情報を含む。すなわち、設計地形情報は、基準位置P0から前方に所定距離d10までの最終設計面60_1~60_10の位置情報を含む。
【0049】
図6に示すように、コントローラ26は、最終設計面60_1~60_10の高さHf_1~Hf_10を設計地形情報として取得する。なお、本実施形態では、設計地形情報として取得される最終設計面の数は、10個であるが、10個より少ない、或いは10個より多くてもよい。
【0050】
ステップS104では、コントローラ26は、土量情報を取得する。ここでは、コントローラ26は、現在の保有土量Vs_0を取得する。保有土量Vs_0は、例えば、ブレード18の容量に対する比で示される。
【0051】
ステップS105では、コントローラ26は、中間設計地形70を決定する。コントローラ26は、現況地形情報と、設計地形情報と、土量情報と、現在位置情報とから、中間設計地形70を決定する。以下、中間設計地形70を決定するための処理について説明する。
【0052】
図7は、中間設計地形70を決定するための処理を示すフローチャートである。ステップS201では、コントローラ26は、底高さHbottomを決定する。ここでは、コントローラ26は、底下土量が保有土量と一致するように、底高さHbottomを決定する。
【0053】
図8に示すように、底下土量は、底高さHbottomの下方、且つ、現況面50の上方に盛られる土量を示す。例えば、コントローラ26は、底下長さLb_4~Lb_10の合計と所定距離d1との積と、保有土量とから、底高さHbottomを算出する。底下長さLb_4~Lb_10は、現況地形50から上方に底高さHbottomまでの距離である。
【0054】
ステップS202では、コントローラ26は、第1上限高さHup1を決定する。第1上限高さHup1は、中間設計地形70の高さの上限を規定する。ただし、他の条件に応じて第1上限高さHup1よりも上方に位置する中間設計地形70が決定されてもよい。第1上限高さHup1は、以下の数1式によって規定される。
【0055】
[数1]
Hup1 = MIN (最終設計地形, 現況地形 + D1)
従って、図9に示すように、第1上限高さHup1は、最終設計地形60の下方、且つ、現況地形50よりも所定距離D1、上方に位置する。所定距離D1は、好ましくは、盛られた土の上を作業車両1が1回走行することで、盛られた土を適切に締め固めることができる程度の盛り土の厚さである。
【0056】
ステップS203では、コントローラ26は、第1下限高さHlow1を決定する。第1下限高さHlow1は、中間設計地形70の高さの下限を規定する。ただし、他の条件に応じて第1下限高さHlow1よりも下方に位置する中間設計地形70が決定されてもよい。第1下限高さHlow1は、以下の数2式によって規定される。
【0057】
[数2]
Hlow1 = MIN (最終設計地形, MAX (現況地形, 底))
従って、図9に示すように、現況地形50が、最終設計地形60よりも下方、且つ、上述した底高さHbottomよりも上方に位置するときには、第1下限高さHlow1は、現況地形50と一致する。また、底高さHbottomが、最終設計地形60よりも下方、且つ、現況地形50よりも上方に位置するときには、第1下限高さHlow1は、底高さHbottomと一致する。
【0058】
ステップ204では、コントローラ26は、第2上限高さHup2を決定する。第2上限高さHup2は、中間設計地形70の高さの上限を規定する。第2上限高さHup2は、以下の数3式によって規定される。
【0059】
[数3]
Hup2 = MIN (最終設計地形, MAX (現況地形 + D2, 底))
従って、図9に示すように、第2上限高さHup2は、最終設計地形60よりも下方、且つ、現況地形50よりも所定距離D2、上方に位置する。所定距離D2は、所定距離D1よりも大きい。
【0060】
ステップS205では、コントローラ26は、第2下限高さHlow2を決定する。第2下限高さHlow2は、中間設計地形70の高さの下限を規定する。第2下限高さHlow2は、以下の数4式によって決定される。
【0061】
[数4]
Hlow2 = MIN (最終設計地形 - D3, MAX (現況地形 - D3, 底))
従って、図9に示すように、第2下限高さHlow2は、現況地形50よりも所定距離D3、下方に位置する。第2下限高さHlow2は、第1下限高さHlow1よりも所定距離D3、下方に位置する。
【0062】
ステップS206では、コントローラ26は、中間設計地形のピッチ角を決定する。図4に示すように、中間設計地形は、所定距離d1ごとに分割された複数の中間設計面70_1~70_10を含む。コントローラ26は、複数の中間設計面70_1~70_10ごとにピッチ角を決定する。図4に示す中間設計地形70では、中間設計面70_1~70_4は、それぞれ異なるピッチ角を有している。この場合、中間設計地形70は、図4に示すように、複数個所で屈曲した形状となる。
【0063】
図10は、中間設計地形70のピッチ角を決定するための処理を示すフローチャートである。コントローラ26は図10に示す処理によって、基準位置P0よりも1つ先の中間設計面70_1のピッチ角を決定する。
【0064】
図10に示すように、ステップS301では、コントローラ26は、第1上限角度θup1を決定する。第1上限角度θup1は、中間設計地形70のピッチ角の上限を規定する。ただし、他の条件に応じて、中間設計地形70のピッチ角が第1上限角度θup1よりも大きくなってもよい。
【0065】
第1上限角度θup1は、図11に示すように、中間設計地形70のピッチ角を、間隔d1ごとに、(前回 - A1)度としたときに、距離d10先まで第1上限高さHup1を上回らないようにするための中間設計面70_1のピッチ角である。第1上限角度θup1は、以下のように決定される。
【0066】
中間設計地形70のピッチ角を、間隔d1ごとに、(前回 - A1)度としたときに、n個先の中間設計面70_nが第1上限高さHup1以下となるための、中間設計面70_1のピッチ角θnは、以下の数5式によって決定される。
【0067】
[数5]
θn = (Hup1_n - Hm_-1 + A1 * (n * (n - 1) / 2)) / n
Hup1_nは、n個先の中間設計面70_nに対する第1上限高さHup1である。Hm_-1は、基準位置P0の1つ前の中間設計面70_-1の高さである。A1は所定の定数である。数5式によってn=1~10までのθnを決定し、それらのθnのうちの最小値が第1上限角度θup1として選択される。なお、図11では、n=1~10までのθnのうちの最小値は、基準位置P0から距離d2先で第1上限高さHup1を上回らないピッチ角θ2となる。この場合、θ2が第1上限角度θup1として選択される。
【0068】
ただし、選択された第1上限角度θup1が、所定の変化上限値θlimit1よりも大きいときには、変化上限値θlimit1が第1上限角度θup1として選択される。変化上限値θlimit1は、前回からのピッチ角の変化を+A1以下に制限するための閾値である。
【0069】
なお、本実施形態では、基準位置P0から10個先までの中間設計面70_1~70_10に基づいてピッチ角が決定されるが、ピッチ角の演算に用いられる中間設計面の数は10個に限らず、10個より少ない、或いは10個より多くてもよい。
【0070】
ステップS302では、コントローラ26は、第1下限角度θlow1を決定する。第1下限角度θlow1は、中間設計地形70のピッチ角の下限を規定する。ただし、他の条件に応じて、中間設計地形70のピッチ角が第1下限角度θlow1よりも小さくなってもよい。第1下限角度θlow1は、図12に示すように、中間設計地形70のピッチ角を、間隔d1ごとに、(前回 + A1)度としたときに、距離d10先まで第1下限高さHlow1を下回らないようにするための中間設計面70_1のピッチ角である。第1下限角度θlow1は、以下のように決定される。
【0071】
中間設計地形70のピッチ角を、間隔d1ごとに、(前回 + A1)度としたときに、n個先の中間設計地形70が第1下限高さHlow1以上となるための、1つ先のピッチ角θnは、以下の数6式によって決定される。
【0072】
[数6]
θn = (Hlow1_n - Hm_-1 - A1 * (n * (n - 1) / 2)) / n
Hlow1_nは、n個先の中間設計面70_nに対する第1下限高さHlow1である。数6式によってn=1~10までのθnを決定し、それらのθnのうちの最大値が第1下限角度θlow1として選択される。なお、図12では、n=1~10までのθnのうちの最大値は、基準位置P0から距離d3先で第1上限高さHup1を上回らないピッチ角θ3となる。この場合、θ3が第1下限角度θlow1として選択される。
【0073】
ただし、選択された第1下限角度θlow1が、所定の変化下限値θlimit2よりも小さいときには、変化下限値θlimit2が第1下限角度θlow1として選択される。変化下限値θlimit2は、前回からのピッチ角の変化を- A1以上に制限するための閾値である。
【0074】
ステップS303では、コントローラ26は、第2上限角度θup2を決定する。第2上限角度θup2は、中間設計地形70のピッチ角の上限を規定する。第2上限角度θup2は、中間設計地形70のピッチ角を、間隔d1ごとに、(前回 - A1)度としたときに、距離d10先まで第2上限高さHup2を上回らないようにするための中間設計面70_1のピッチ角である。第2上限角度θup2は、第1上限角度θup1と同様に以下の数7式によって決定される。
【0075】
[数7]
θn = ( Hup2_n - Hm_-1 + A1 * ( n * ( n-1 ) / 2)) / n
Hup2_nは、n個先の中間設計面70_nに対する第2上限高さHup2である。数7式によってn=1~10までのθnを決定し、それらのθnのうちの最小値が第2上限角度θup2として選択される。
【0076】
ステップS304では、コントローラ26は、第2下限角度θlow2を決定する。第2下限角度θlow2は、中間設計地形70のピッチ角の下限を規定する。第2下限角度θlow2は、中間設計地形70のピッチ角を、間隔d1ごとに、(前回 + A2)度としたときに、距離d10先まで第2下限高さHlow2を下回らないようにするための基準位置P0から1つ先の中間設計地形70のピッチ角である。角度A2は、上述した角度A1よりも大きい。第2下限角度θlow2は、第1下限角度θlow1と同様に、以下の数8式によって決定される。
【0077】
[数8]
θn = (Hlow2_n - Hm_-1 - A2 * ( n * ( n-1) / 2)) / n
Hlow2_nは、n個先の中間設計面70_nに対する第2下限高さHlow2である。A2は所定の定数である。数8式によってn=1~10までのθnを決定し、それらのθnのうちの最大値が第2下限角度θlow2として選択される。
【0078】
ただし、選択された第2下限角度θlow2が、所定の変化下限値θlimit3よりも小さいときには、変化下限値θlimit3が第1下限角度θlow1として選択される。変化下限値θlimit3は、前回からのピッチ角の変化を-A2以上に制限するための閾値である。
【0079】
ステップS305では、コントローラ26は、最短距離角度θsを決定する。図13に示すように、最短距離角度θsは、第1上限高さHup1と第1下限高さHlow1との間において、中間設計地形70の長さが最短となる中間設計地形70のピッチ角である。例えば、最短距離角度θsは図の数9式によって決定される。
【0080】
[数9]
θs = MAX (θlow1_1, MIN (θup1_1, MAX (θlow1_2, MIN (θup1_2,・・・MAX (θlow1_n, MIN (θup1_n,・・・MAX (θlow1_10, MIN (θup1_10, θm_-1)))・・・)))
θlow1_nは、図14に示すように、基準位置P0とn個先(図14では4個先)の第1下限高さHlow1とを結んだ直線のピッチ角である。θup1_nは、基準位置P0とn個先の第1上限高さHup1とを結んだ直線のピッチ角である。θm_-1は、基準位置P0の1つ前の中間設計面70_-1のピッチ角である。なお、数9式は図15のように表すこともできる。
【0081】
ステップS306では、コントローラ26は、所定のピッチ角変更条件を満たしているか否かを判定する。ピッチ角変更条件は、角度 - A1以上の傾斜した中間設計地形70が形成されることを示す条件である。すなわち、ピッチ角変更条件は、緩やかに傾斜した中間設計地形70が生成されたことを示す。
【0082】
詳細には、ピッチ角変更条件は、以下の第1~第3変更条件を含む。第1変更条件は、最短距離角度θsが角度 - A1以上であることである。第2変更条件は、最短距離角度θsがθlow1_1より大きいことである。第3変更条件は、θlow1_1が角度 - A1以上であることである。第1~第3変更条件の全てが満たされたときに、コントローラ26は、ピッチ角変更条件が満たされたと判定する。
【0083】
ピッチ角変更条件が満たされていないときには、ステップS307に進む。ステップS307では、コントローラ26は、ステップS306で求めた最短距離角度θsを目標ピッチ角θtとして決定する。
【0084】
ピッチ角変更条件が満たされているときには、ステップS308に進む。ステップS308では、コントローラ26は、θlow1_1を目標ピッチ角θtとして決定する。θlow1_1は、第1下限高さHlow1に沿うピッチ角である。
【0085】
ステップS309では、コントローラ26は、指令ピッチ角を決定する。コントローラ26は、以下の数10式によって指令ピッチ角θcを決定する。
【0086】
[数10]
θc = MAX (θlow2, MIN (θup2, MAX (θlow1, MIN (θup1, θt))))
以上のように決定された指令ピッチ角が、図7のステップS206における中間設計面70_1のピッチ角として決定される。これにより、図5のステップS105における中間設計地形70が決定される。すなわち、基準位置P0の中間設計地形70に対して上述した指令ピッチ角を成す中間設計面70_1が決定される。
【0087】
図5に示すように、ステップS106では、コントローラ26は、作業機13への指令信号を生成する。ここでは、コントローラ26は、決定された中間設計地形70に沿って作業機13の刃先位置P1が移動するように、作業機13への指令信号を生成する。また、コントローラ26は、作業機13の刃先位置P1が最終設計地形60を上方に超えないように、作業機13への指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁27に入力される。それにより、作業機13の刃先位置P1が中間設計地形70に沿って移動するように、作業機13が制御される。
【0088】
図5図7、及び図10に示す処理は繰り返し実行され、コントローラ26は、新たな現況地形情報を取得して更新する。例えば、コントローラ26は、リアルタイムに現況地形情報を取得して更新してもよい。或いは、コントローラ26は、所定動作が行われたときに現況地形情報を取得して更新してもよい。
【0089】
コントローラ26は、更新された現況地形情報に基づいて、次の中間設計地形70を決定する。そして、作業車両1は、再び前進しながら作業機13を中間設計地形70に沿って動かし、所定位置に到達すると、後進して戻る。作業車両1がこれらの動作を繰り返すことによって、現況地形50上に、土が繰り返し積層される。それにより、現況地形50が徐々に盛り上げられ、その結果、最終設計地形60が形成される。
【0090】
以上の処理により、図4に示すような中間設計地形70が決定される。詳細には、以下の条件に従うように中間設計地形70が決定される。
【0091】
(1)第1条件は、中間設計地形70を、第1上限高さHup1よりも低くすることである。第1条件により、図4に示すように、所定距離D1以内の厚さで現況地形50上に積層する中間設計地形70を決定することができる。これにより、他の条件による制約が無ければ、盛り土の積層厚さをD1以内に抑えることができる。これにより、盛られた土を締め固めるために何度も車両を走行させる必要がなくなる。その結果、作業の効率を向上させることができる。
【0092】
(2)第2条件は、中間設計地形70を、第1下限高さHlow1よりも高くすることである。第2条件により、他の条件による制約が無ければ、現況地形50を削ることが抑えられる。
【0093】
(3)第3条件は、間隔d1ごとの中間設計地形70のピッチ角を、(前回 - A1)度以内に制限しながら、中間設計地形70を第1下限高さHlow1に近づけることである。第3条件によれば、図4に示すように、下方へのピッチ角の変化dθをA1度以内に抑えることができる。このため、車体姿勢の急変を防止することができ、高速で作業を行うことができる。これにより、作業の効率を向上させることができる。また、特に法肩近傍の中間設計地形70の傾斜角度が緩やかになり、法肩での作業車両1の姿勢の変化を小さくすることができる。
【0094】
(4)第4条件は、中間設計地形70のピッチ角を、第1下限角度θlow1より大きくすることである。第4条件によれば、上方へのピッチ角の変化dθをA1度以内に抑えることができる。このため、車体11の姿勢の急変を防止することができ、高速で作業を行うことができる。これにより、作業の効率を向上させることができる。また、特に法尻近傍の中間設計地形70の傾斜角度を緩やかにすることができる。さらに、ピッチ角の変更によって中間設計地形70が第1下限高さHlow1を下回って現況地形50を削ってしまうことを抑えることができる。
【0095】
(5)第5条件は、最短距離角度θsが、第1下限角度θlow1より大きいときは、最短距離角度θsを中間設計地形70のピッチ角として選択することである。第5条件により、図4に示すように、積層を繰り返すごとに、中間設計地形70の折れ点を少なく、且つ、中間設計地形70の最大傾斜角度を緩やかにすることができる。これにより、積層を繰り返すごとに、徐々に滑らかな中間設計地形を生成することができる。
【0096】
(6)第6条件は、ピッチ角変更条件が満たされているときには、第1下限高さHlow1に沿うθlow1_1を中間設計地形70のピッチ角として選択することである。第5条件により、図4に示すように、現況地形50’において、傾斜角度A1の緩やかな傾斜面が作業車両1の手前に形成された後は、第6条件により、傾斜面の奥の現況地形50’の盛土を優先して行うことができる。
【0097】
(7)第7条件は、底下土量が保有土量と一致するように、底高さHbottomを決定することである。第7条件により、コントローラ26は、保有土量に応じて、現況地形50から中間設計地形70までの所定距離D1を変化させる。そのため、保有土量に応じて、盛土の積層厚さを変更することができる。これにより、盛土に用いられずにブレード18に残る土を少なくすることができる。
【0098】
(8)第8条件は、中間設計地形70のピッチ角を、第2上限角度θup2より小さくすることである。第8条件により、図4に示すように、最大積層厚さをD2以下に抑えることができる。
【0099】
なお、中間設計地形70のピッチ角を、第2上限角度θup2より小さくすることにより、現況地形が急な場合は、図4に示すように、法肩を削るように中間設計面70が決定される。
【0100】
(9)第9条件は、中間設計地形70のピッチ角を、第2下限角度θlow2より大きくすることである。第8条件によってピッチ角が下げられたとしても、第9条件により、現況地形50を削り過ぎてしまうことが抑えられる。
【0101】
以上説明した、本実施形態に係る作業車両1の制御システム3によれば、作業機13の刃先が、現況地形50と最終設計地形60との間であって、現況地形50よりも、所定距離D1、上方の位置を移動するように、作業機13が自動的に制御される。その際、最終設計地形60よりも下方の位置を作業機13の刃先が移動することで、作業機13が最終設計地形60に沿って移動する場合と比べて、土を薄く現況地形50上に盛ることができる。従って、現況地形50上に、薄く層状に土を盛ることができる。これにより、盛られた土を作業車両1によって容易に締め固めることができる。これにより、作業の仕上がりの品質を向上させることができる。また、作業の効率を向上させることができる。
【0102】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0103】
作業車両は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ等の他の車両であってもよい。
【0104】
中間設計地形を決定するための処理は上述したものに限らず、変更されてもよい。例えば、上述した第1~第9条件の一部が変更、或いは省略されてもよい。或いは、第1~第9条件と異なる条件が追加されてもよい。例えば、図16は第1変形例に係る中間設計地形70を示す図である。図16に示すように、現況地形50に沿う層状の中間設計地形70が生成されてもよい。
【0105】
上記の実施形態では、現況地形50は、基準位置P0から前方に向かって下るように傾斜している。しかし、現況地形50は、基準位置P0から前方に向かって上るように傾斜していてもよい。例えば、図17は、第2変形例に係る中間設計地形70を示す図である。図17に示すように、現況地形50は、基準位置P0から前方に向かって上るように傾斜している。このような場合も、コントローラは、図17に示すように、現況地形50の上方、且つ、最終設計地形60の下方に位置する中間設計地形70を決定してもよい。それにより、作業機13の刃先が、現況地形50と最終設計地形60との間であって、現況地形50よりも、所定距離D1、上方の位置を移動するように、作業機13が自動的に制御される。
【0106】
コントローラは、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。例えば、図18に示すように、コントローラは、作業車両1の外部に配置される第1コントローラ(リモートコントローラ)261と、作業車両1に搭載される第2コントローラ(車載コントローラ)262とを含んでもよい。第1コントローラ261と第2コントローラ262とは通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部が第1コントローラ261によって実行され、残りの機能が第2コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、仮想設計面70を決定する処理がリモートコントローラ261によって実行されてもよい。すなわち、図5に示すステップS101からS105までの処理が第1コントローラ261によって実行されてもよい。また、作業機13への指令信号を出力する処理(ステップS106)が第2コントローラ262によって実行されてもよい。
【0107】
作業車両は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システムの一部は、作業車両の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラは、作業車両の外部に配置されてもよい。コントローラは、作業現場から離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。操作装置は、作業車両の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業車両から省略されてもよい。或いは、操作装置が省略されてもよい。操作装置による操作無しで、コントローラによる自動制御のみによって作業車両が操作されてもよい。
【0108】
現況地形取得装置は、上述した位置検出装置31に限らず、他の装置であってもよい。例えば、図19に示すように、現況地形取得装置は、外部の装置からの情報を受け付けるインターフェ-ス装置37であってもよい。インターフェ-ス装置37は、外部の計測装置41が計測した現況地形情報を無線によって受信してもよい。或いは、インターフェ-ス装置37は、記録媒体の読み取り装置であって、外部の計測装置41が計測した現況地形情報を記録媒体を介して受け付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、自動制御によって、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い盛土作業を行うことができる作業車両の制御システム、制御方法、及び作業車両を提供することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 作業車両
3 制御システム
13 作業機
26 コントローラ
28 記憶装置
31 位置検出装置(現況地形取得装置)
34 土量取得装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20