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特許7156778軽度認知障害検査システム及び軽度認知障害検査プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】軽度認知障害検査システム及び軽度認知障害検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20221012BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20221012BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G06Q50/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017027907
(22)【出願日】2017-02-17
(65)【公開番号】P2018130454
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-01-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴文
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 枝里子
(72)【発明者】
【氏名】山内 剛
(72)【発明者】
【氏名】大泉 幸人
【合議体】
【審判長】福島 浩司
【審判官】渡戸 正義
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-8329(JP,A)
【文献】特開2015-25873(JP,A)
【文献】特開2016-85545(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148199(WO,A1)
【文献】特開2004-29107(JP,A)
【文献】特開2005-46289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0059282(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/22
A61B10/00
G16H10/00-80/00
G06Q50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽度認知障害検査用の課題の出題と当該課題への回答の受け付けとを順次行う軽度認知障害検査を実行する、軽度認知障害検査システムであって、
検査実行後に当該検査に対応する採点画面を表示させる採点画面表示部と、
出題された課題のうち簡易な課題への回答を自動的に採点し、当該採点の結果を、表示された採点画面上に表示させる自動採点部と、
出題された課題のうち複雑な課題への回答を聴取可能に再現する回答再現部と、
聴取可能に再現された複雑な課題への回答を採点するための入力を受け付けて、当該入力に基づく採点の結果を前記採点画面上に表示させる採点入力部と、
簡易な課題への回答及びその採点結果を纏めた第1部分と、複雑な課題への回答及びその採点結果を纏めた第2部分とに分けて、レポートを作成するレポート作成部と、
を有する軽度認知障害検査システム。
【請求項2】
簡易な課題への回答は、選択式の回答を含み、複雑な課題への回答は、口述式の回答を含む、
請求項1に記載の軽度認知障害検査システム。
【請求項3】
前記採点画面表示部は、過去に実行された複数回の軽度認知障害検査に対応する採点画面を、選択操作に従って選択的に表示させる、
請求項1又は2に記載の軽度認知障害検査システム。
【請求項4】
前記採点画面表示部は、聴取可能に再現された回答を評価するための評価項目を前記採点画面上に表示させ、
前記採点入力部は、表示された評価項目における評価結果の入力を受け付けて、当該評価結果を前記採点画面上に表示させると共に、当該評価結果に応じた点数を採点の結果として、前記採点画面上に表示させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の軽度認知障害検査システム。
【請求項5】
軽度認知障害検査用の課題の出題と当該課題への回答の受け付けとを順次行う軽度認知障害検査の機能を軽度認知障害検査システムのコンピュータに実現させる、軽度認知障害検査プログラムであって、
前記コンピュータに、
検査実行後に当該検査に対応する採点画面を表示させる採点画面表示機能と、
出題された課題のうち簡易な課題への回答を自動的に採点し、当該採点の結果を、表示された採点画面上に表示させる自動採点機能と、
出題された課題のうち複雑な課題への回答を聴取可能に再現する回答再現機能と、
聴取可能に再現された複雑な課題への回答を採点するための入力を受け付けて、当該入力に基づく採点の結果を前記採点画面上に表示させる採点入力機能と、
簡易な課題への回答及びその採点結果を纏めた第1部分と、複雑な課題への回答及びその採点結果を纏めた第2部分とに分けて、レポートを作成するレポート作成機能と、
をさらに実現させる、軽度認知障害検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)検査システム及びMCI検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
認知症の検査方式としては、紙ベースの検査方式(長谷川式簡易認知評価スケール、ミニメンタルステート検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)等)のほかに、ソフトウェアプログラムをコンピュータ上で実行させることで行う、ソフトウェアベースの検査方式とがある。後者は前者に比べて、検査中に必ずしも検査者が被検者に付き添う必要がない点で効率的である。
【0003】
ソフトウェアベースの検査方式の一例として、例えば特許文献1により提案されたシステムがある。この従来のシステムでは、被検者の認知機能を包括的に検査するための様々な検査における出題、回答受付及び採点、並びにこれらの検査結果を踏まえたMCI有無の診断がいずれも、コンピュータ上で実施されるようになっており、これによりMCIの有無が客観的に診断される、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-8329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、重度の認知症だけでなく、MCIを精度良く診断するには、簡易な課題だけでなく複雑な課題も取り入れて出題する必要がある。
【0006】
しかしながら、上記従来のシステムにおいては、各検査から診断までがほぼ全て自動的に実施できるよう、全ての検査が簡略化されている。具体的には、課題への回答形式が選択式になっていたり、1つの課題の中で設問が細かく分けられていたりして、被検者が回答しやすく、あるいはその回答を評価しやすくなっていて、採点が自動的に行えるようになっている。このような検査の簡略化がなされていることにより、上記従来のシステムでは、MCI診断の信頼性向上に一定の限界があった。
【0007】
本発明の目的は、MCI診断の信頼性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の軽度認知障害検査システムは、
軽度認知障害検査用の課題の出題と当該課題への回答の受け付けとを順次行う軽度認知障害検査を実行する、軽度認知障害検査システムであって、
検査実行後に当該検査に対応する採点画面を表示させる採点画面表示部と、
出題された課題のうち簡易な課題への回答を自動的に採点し、当該採点の結果を、表示された採点画面上に表示させる自動採点部と、
出題された課題のうち複雑な課題への回答を聴取可能に再現する回答再現部と、
聴取可能に再現された複雑な課題への回答を採点するための入力を受け付けて、当該入力に基づく採点の結果を前記採点画面上に表示させる採点入力部と、
簡易な課題への回答及びその採点結果を纏めた第1部分と、複雑な課題への回答及びその採点結果を纏めた第2部分とに分けて、レポートを作成するレポート作成部と、
を有する。
【0009】
本発明の軽度認知障害検査プログラムは、
軽度認知障害検査用の課題の出題と当該課題への回答の受け付けとを順次行う軽度認知障害検査の機能を軽度認知障害検査システムのコンピュータに実現させる、軽度認知障害検査プログラムであって、
前記コンピュータに、
検査実行後に当該検査に対応する採点画面を表示させる採点画面表示機能と、
出題された課題のうち簡易な課題への回答を自動的に採点し、当該採点の結果を、表示された採点画面上に表示させる自動採点機能と、
出題された課題のうち複雑な課題への回答を聴取可能に再現する回答再現機能と、
聴取可能に再現された複雑な課題への回答を採点するための入力を受け付けて、当該入力に基づく採点の結果を前記採点画面上に表示させる採点入力機能と、
簡易な課題への回答及びその採点結果を纏めた第1部分と、複雑な課題への回答及びその採点結果を纏めた第2部分とに分けて、レポートを作成するレポート作成機能と、
をさらに実現させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、MCI診断の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係るMCI検査システムのハードウェア構成を示す図
図2】同システムの機能的構成を模式的に示すブロック図
図3】システムログイン後のメイン画面の表示例を示す図
図4】MCI検査の検査データリスト画面の表示例を示す図
図5a】MCI検査の物語直後再生課題及び物語遅延再生課題における出題待機画面の表示例を示す図
図5b】MCI検査の物語直後再生課題及び物語遅延再生課題における出題画面の表示例を示す図
図5c】MCI検査の物語直後再生課題及び物語遅延再生課題における回答待機画面の表示例を示す図
図5d】MCI検査の物語直後再生課題及び物語遅延再生課題における回答画面の表示例を示す図
図5e】MCI検査の物語直後再生課題及び物語遅延再生課題における回答終了画面の表示例を示す図
図6】MCI検査の図形模写課題における出題画面の表示例を示す図
図7a】MCI検査の時計描画課題における第1出題画面の表示例を示す図
図7b】MCI検査の時計描画課題における第2出題画面の表示例を示す図
図8a】MCI検査の数唱課題における出題画面の表示例を示す図
図8b】MCI検査の数唱課題における回答画面の表示例を示す図
図9a】MCI検査の語想起課題における回答待機画面の表示例を示す図
図9b】MCI検査の語想起課題における回答画面の表示例を示す図
図10a】MCI検査の検査結果採点画面のレイアウト説明に供する第1表示例を示す図
図10b】MCI検査の検査結果採点画面のレイアウト説明に供する第2表示例を示す図
図11】検査結果採点画面における数唱課題に関する部分の表示例を示す図
図12】検査結果採点画面における図形模写課題に関する部分の表示例を示す図
図13】検査結果採点画面における時計描画課題に関する部分の表示例を示す図
図14】検査結果採点画面における語想起課題に関する部分の表示例を示す図
図15】検査結果採点画面における物語遅延再生課題に関する部分の表示例を示す図
図16a】MCI検査レポートの第1部分の印刷例を示す図
図16b】MCI検査レポートの第2部分の印刷例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る軽度認知障害(MCI)検査システムのハードウェア構成を示す図である。本実施の形態のMCI検査システム1は、制御装置10、記憶装置20、音声入力装置30、音声出力装置40、タッチパネル式表示装置50及び印刷装置60を有する。MCI検査システム1は、例えば、制御装置10及び記憶装置20を備えたパソコンを、音声入力装置30、音声出力装置40、タッチパネル式表示装置50及び印刷装置60とそれぞれ通信可能に接続するように構成してもよいし、制御装置10、記憶装置20、音声入力装置30、音声出力装置40及びタッチパネル式表示装置50を備えた携帯端末装置を、印刷装置60と通信可能に接続するように構成してもよい。
【0014】
制御装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のコンピュータを備えており、MCI検査システム1全体の動作を制御し、特に、MCI検査プログラムを実行することにより、MCI検査及びその後処理(例えば、採点やレポート作成)並びにこれらの設定に必要な機能を実現するよう構成されている。記憶装置20は、例えばRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、例えばROM(Read Only Memory)等の補助記憶装置と、を備えており、補助記憶装置には、予めMCI検査プログラムが記憶されている。制御装置10は、補助記憶装置に記憶されているMCI検査プログラムを、必要な処理内容に応じて少なくとも部分的に読み出して主記憶装置に展開し、展開したプログラムに従って、必要な処理を実行する。また、記憶装置20は、設定された事項や被検者から受け付けた回答をデータとして記憶する機能も有する。
【0015】
音声入力装置30は、例えばマイク等を備えており、主として、被検者による口述式の回答を受け付ける機能を有する。音声出力装置40は、例えばスピーカ等を備えており、主として、ガイダンスや課題を音声により出力したり、検査時に記憶された口述式の回答を検査後に音声として再生して出力したりする機能を有する。
【0016】
タッチパネル式表示装置(以下、単に「表示装置」という)50は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイ等を備えており、主として、設定、MCI検査及び後処理に用いる画面を表示したり、設定、MCI検査及び後処理における画面タッチ操作によるユーザ(検査者又は被検者)の入力を受け付けたりする機能を有する。
【0017】
なお、被検者から入力される回答としては、先述した口述式の回答の他に、選択式の回答や記述式の回答がある。表示装置50での被検者からの回答の受け付けは、選択式の回答及び記述式の回答のいずれにも対応可能であるため、便利であるが、これらの方式の回答を受け付ける手段として、キーボードやマウス、ペンタブレット等の入力装置を併用又は代用しても良い。
【0018】
印刷装置60は、例えばプリンタ等を備えており、検査結果及びその採点結果等を含むMCI検査レポートを印字する機能を有する。
【0019】
図2は、MCI検査システム1の機能的構成を模式的に示すブロック図である。MCI検査システム1は、MCI検査実行部110、設定部120及び後処理部130を有する。設定部120は、MCI検査の実行及びその後処理に関連するMCI検査システム1の動作を予め設定する機能を有し、これにより、検査者は、運用や使用環境に応じてMCI検査システム1の動作を切り替えることができる。設定部120による設定は、例えば図3に示す、ログイン後に表示装置50に表示されるメイン画面において「設定」のボタンをタップすることによって実行可能となる。MCI検査実行部110は、設定部120での設定に従って動作してMCI検査を実行し、後処理部130は、設定部120での設定に従って動作してMCI検査の後処理を行う。MCI検査実行部110によるMCI検査は、例えば図3に示すメイン画面において「検査開始」ボタンをタップすることによって実行可能となる。また、後処理部130による後処理、すなわち採点やレポート作成等は、例えば図3に示すメイン画面において「採点/印刷」ボタンをタップすることによって実行可能となる。
【0020】
MCI検査実行部110は、課題出題部111及び回答受付部112を有する。
【0021】
課題出題部111は、予め設定されたMCI検査の課題を、画面表示及び/又は音声出力を介して出題する機能を有する。回答受付部112は、課題が出題されたとき、被検者の画面タッチ操作や発話による選択式、記述式及び/又は口述式の回答を、予め設定された制限時間において受け付けて、その回答を回答データとして記憶装置20に記憶させる機能を有する。MCI検査実行部110は、課題の出題とその解答の受け付けとを、予め設定された順序で順次行う。
【0022】
後処理部130は、検査データリスト表示部131、採点画面表示部132、自動採点部133、回答再現部134、採点入力部135及びレポート作成部136を有する。
【0023】
検査データリスト表示部131は、過去に行われたMCI検査の履歴を例えば図4に示す検査データリスト画面として、表示装置50に表示させる機能を有する。採点画面表示部132は、検査データリスト画面において検査者により選択されたMCI検査結果を含む、検査結果採点画面(以下、単に「採点画面」という)を表示装置50に表示させる機能を有する。自動採点部133は、被検者の回答を自動的に採点し、その採点結果を、データとして記憶装置20に記憶させると共に、採点画面上に表示させる機能を有する。回答再現部134は、被検者の回答を目視可能及び/又は聴取可能に再現する機能を有する。採点入力部135は、被検者の回答を採点するための検査者の入力を受け付けて、その入力に基づく採点結果を、採点画面上に表示させる機能を有する。レポート作成部136は、MCI検査結果及び採点結果を含むMCI検査レポートを作成して、表示装置50に表示させたり印刷装置60に印刷させたりする機能を有する。
【0024】
以上、MCI検査システム1の構成について説明した。以下、MCI検査システム1の動作について説明する。
【0025】
まず、MCI検査時の動作について説明する。
【0026】
メイン画面(図3)において「検査開始」が選択されると、MCI検査実行部110は、MCI検査モードを開始する。MCI検査モードは、例えば、被検者情報の入力及び登録から開始される。被検者情報の入力及び登録の後、具体的なMCI検査が実行される。MCI検査としては、例えば、物語直後再生課題、文字抹消課題、図形模写課題、時計描写課題、構成課題、数唱課題、減算課題、GO/NO-GO課題、語想起課題、見当識課題及び物語遅延再生課題がある。
【0027】
物語直後再生課題は、音声で流れる物語を聞き、覚えた内容を、聞いた直後に話す課題である。文字抹消課題は、画面に表示される文字をルールに従って消していく課題である。図形模写課題は、見本の図形を真似て、同じ図形を描く課題である。時計描画課題は、例えば、描画エリアの円を使って、指定された時刻の時計を描く課題である。構成課題は、例えば、見本の図形と同じに模様になるように、四角や三角等の形状のピースを並び替える課題である。数唱課題は、音声で読み上げた数字について、例えば、最初は同じ順番、次に逆の順番で答える課題である。減算課題は、所定の数字(例えば「100」)から所定の数字(例えば「7」)を順に引き算する課題である。GO/NO-GO課題は、例えば、ルールに従い、アニメーションに合わせて画面をタップする課題である。語想起課題は、所定の文字(例えば「か」)から始まる言葉を思いつく限り話す課題である。見当識課題は、例えば、MCI検査を行っている場所や時間を答える課題である。物語遅延再生課題は、物語直後再生課題の出題時に聞いた物語について、覚えている内容を話す課題である。以下、いくつかの課題を例に挙げ、それぞれの出題及び回答受け付けの手順について概説する。
【0028】
物語直後再生課題の出題に際しては、課題出題部111は、最初に出題待機画面(図5a)を表示させ、その状態で説明の音声を流す。ここでは、最初に流れる物語の内容を後で口述することが、被検者に求められる。出題待機画面内の「開始」ボタンがタップされると、課題出題部111は、画面表示を出題画面(図5b)に切り替え、物語の音声を流す。物語の音声再生後、課題出題部111は、画面表示を回答待機画面(図5c)に切り替える。その画面内の「開始」ボタンがタップされると、課題出題部111が画面表示を回答画面(図5d)に切り替えると共に、回答受付部112は、録音を開始して、被検者の口述式の回答を収録する。回答画面内の「終了」ボタンがタップされると、回答受付部112が録音を停止すると共に、課題出題部111は、画面表示を回答終了画面(図5e)に切り替える。回答終了画面内の「はい」ボタンがタップされると、課題出題部111は、次の課題に移行する。回答終了画面内の「いいえ」ボタンがタップされると、画面表示が回答待機画面(図5c)に戻され、上述した手順に従って被検者の口述式の回答が収録し直される。
【0029】
図形模写課題の出題に際しては、課題出題部111は、最初に出題画面(図6)を表示させ、その状態で説明の音声を流す。ここでは、出題画面の左側に表示された見本の図形を真似て、同じ図形を記述することが、被検者に求められる。出題画面内の「書く」ボタンがタップされると、回答受付部112は、画面右側の四角で囲まれた空白部(描画エリア)において指、ペン又はマウス等(以下、「指等」)でスワイプすることで描かれる記述式の回答を記録する。なお、描かれた内容は、出題画面内の「消す」ボタンがタップされると、部分的に消去することができる。出題画面内の「終了」ボタンがタップされると、課題出題部111は、画面表示を回答終了画面(図示せず)に切り替える。回答終了画面内の「はい」ボタンがタップされると、課題出題部111は、次の課題に移行する。回答終了画面内の「いいえ」ボタンがタップされると、画面表示が出題画面に戻され、上述した手順に従って被検者の記述式の回答が記録し直される。
【0030】
時計描画課題の出題に際しては、課題出題部111は、最初に説明の音声を流し、その後、第1出題画面(図7a)を表示させる。第1出題画面では、時計の数字を描くことが、被検者に求められる。なお、図7aに示されている時計の数字は、回答の一例である。出題画面内の「書く」ボタンがタップされると、回答受付部112は、画面右側の描画エリアにおいて指等でスワイプすることで描かれた記述式の回答を記録する。なお、描かれた内容は、第1出題画面内の「消す」ボタンがタップされると、部分的に消去することができる。第1出題画面内の「終了」ボタンがタップされると、課題出題部111は、画面表示を第2出題画面(図7b)に切り替え、ここでは、音声で指定した時刻を描くことが、被検者に求められる。なお、図7bに示されている時計の数字及び時計の針は、回答の一例である。第2出題画面内の「書く」ボタンがタップされると、回答受付部112は、画面右側の描画エリアにおいて指等でスワイプすることで描かれた記述式の回答を記録する。なお、描かれた内容は、第2出題画面内の「消す」ボタンがタップされると、部分的に消去することができる。第2出題画面内の「終了」ボタンがタップされると、課題出題部111は、回答終了画面(図示せず)に切り替える。回答終了画面内の「はい」ボタンがタップされると、課題出題部111は、次の課題に移行する。回答終了画面内の「いいえ」ボタンがタップされると、画面表示が第1出題画面に戻され、手順した順序に従って被検者の記述式の回答が記録し直される。
【0031】
数唱課題の出題に際しては、課題出題部111は、最初に出題画面(図8a)を表示させ、説明の音声及び数字の音声を流す。ここでは、音声で読み上げた数字について、同じ順番で答えることが、被検者に求められる。その後、課題出題部111は、画面表示を回答画面(図8b)に切り替える。回答受付部112は、回答画面内の数字ボタンをタップすることで入力される選択式の回答を記録する。回答画面内の「確定」ボタンがタップされると、課題出題部111は、次の説明の音声及び数字の音声を流す。ここでは、音声で読み上げた数字について、逆の順番で答えることが、被検者に求められる。そして、回答受付部112は、回答画面内の数字ボタンをタップすることで入力される選択式の回答を記録する。回答画面内の「確定」ボタンがタップされると、課題出題部111は、次の課題に移行する。
【0032】
語想起課題の出題に際しては、課題出題部111は、最初に回答待機画面(図9a)を表示させ、その状態で説明の音声を流す。ここでは、「かきくけこ」の「か」から始まる言葉を話すことが、被検者に求められる。回答待機画面内の「開始」ボタンがタップされると、課題出題部111は、画面表示を回答画面(図9b)に切り替えると共に、回答受付部112は、録音を開始して、被検者の口述式の回答を収録する。回答画面内の「終了」ボタンがタップされると、回答受付部112が録音を停止すると共に、課題出題部111は、画面表示を回答終了画面(図示せず)に切り替える。回答終了画面内の「はい」ボタンがタップされると、課題出題部111は、次の課題に移行する。回答終了画面内の「いいえ」ボタンがタップされると、画面表示が回答待機画面に戻され、上述した手順に従って被検者の口述式の回答が収録し直される。
【0033】
物語遅延再生課題の出題に際しては、課題出題部111は、最初に回答待機画面(図5c)を表示させ、その状態で説明の音声を流す。ここでは、以前に流れた物語の内容を再び口述することが、被検者に求められる。回答待機画面内の「開始」ボタンがタップされると、課題出題部111が画面表示を回答画面(図5d)に切り替えると共に、回答受付部112は、録音を開始して、被検者の口述式の回答を収録する。回答画面内の「終了」ボタンがタップされると、回答受付部112が録音を停止すると共に、課題出題部111は、画面表示を回答終了画面(図5e)に切り替える。回答終了画面内の「はい」ボタンがタップされると、課題出題部111は、次の課題に移行する。回答終了画面内の「いいえ」ボタンがタップされると、画面表示が回答待機画面(図5c)に戻され、上述した手順に従って被検者の口述式の回答が収録し直される。
【0034】
一連のMCI検査の実行が終了(MCI検査モードの終了)すると、画面表示がメイン画面(図3)に戻され、MCI検査システム1は、次の操作を待機する。
【0035】
次いで、後処理時の動作について説明する。
【0036】
メイン画面(図3)において「採点/印刷」が選択されると、後処理部130は、後処理モードを開始する。後処理モードは、MCI検査後に検査者が作業を行うためのモードであり、主として、採点及びレポート作成が含まれる。後処理モードは、検査データリスト表示部131が検査データリスト画面(図4)を表示させることで始まる。検査データリスト画面では、過去のMCI検査の実行された日時や、対象となった被検者の氏名等が、それぞれ一纏まりのレコードとして一覧表示され、検査者がいずれかの「結果」ボタンをタップすることでいずれかのMCI検査レコードが選択されると、採点画面表示部132が、そのMCI検査レコードの採点画面を表示させる。
【0037】
採点画面は、例えば図10aに示すように、主として、被検者情報表示部、課題名表示部、回答内容表示部、採点表示部、合計点表示部及び検査時間表示部を含む。被検者情報表示部には、採点対象のMCI検査の対象となった被検者に関して予め登録された情報が表示される。課題名表示部には、採点対象のMCI検査に含まれているMCI検査の課題名が表示される。回答内容表示部には、各課題に対する被検者の回答結果が表示される。回答結果は、後処理部130が、回答データに基づいて自動的に表示させてもよいし、検査者が採点画面上で入力したものを表示させてもよい。採点表示部には、各課題に対する回答に関する採点が表示される。その採点は、回答データに基づいて自動的に点数を計算してもよいし(自動採点)、検査者が採点画面上で採点のための入力を行い、その入力に従って点数を表示させてもよい(半自動採点)。合計点表示部には、採点表示部に表示された点数の合計が表示される。検査時間表示部には、採点対象のMCI検査の所要時間が表示される。被検者情報表示部、課題名表示部、回答内容表示部及び採点表示部は、検査結果編集画面を構成しており、その最上部に被検者情報表示部が表示され、その下部に続けて課題名表示部、回答内容表示部及び採点表示部が課題毎に上下に並べて表示されるようになっている。これらが一度に表示装置50に表示しきれない場合は、例えば図10a及び図10bに示すように、画面をスクロールして表示エリアをずらすことができる。
【0038】
採点画面において、課題に対する回答は、上述したように、回答データに基づいて自動的に表示されるものと、検査者の入力に基づいて表示されるものとがある。また、回答に関する採点は、上述したように、自動採点と半自動採点とがある。これらについて、以下、いくつかの課題を例に挙げて説明する。
【0039】
例えば、数唱課題は、出題された課題への回答が、被検者がいずれかの数字キーを選択的に操作する選択式の回答であり、その回答結果と正解との照合及び採点を容易に行える、簡易な課題である。よって、本実施の形態において、例えば数唱課題についての採点は、自動的に行う。すなわち、例えば数唱課題については、自動採点部133が、被検者による選択式の回答を自動的に採点する(図11参照)。なお、この自動採点は、採点画面が表示されるときに実行されてもよいし、MCI検査時に並行して実行されてもよい。自動採点部133は、採点の結果を、採点画面上に表示させる。
【0040】
例えば、図形模写課題は、出題された課題への回答が、被検者が指等で自由に記述することが可能な記述式の回答であり、その回答と正解との照合及び採点を行うことが必ずしも容易でない、複雑な課題である。よって、本実施の形態において、例えば図形模写課題についての採点は、自動的に行わない。すなわち、例えば図形模写課題については、回答再現部134が、被検者による記述式の回答を、回答データに基づいて採点画面上の回答表示部に、例えば図12に示すように回答結果として表示させることにより、検査者の目視による回答確認を可能にする。図形模写課題の回答表示部には、回答を評価するための評価項目(例えば、図示されているように「概ね成形できている」等)が表示され、それに該当する場合には、検査者がチェックマークを入力することができるようになっている。検査者がチェックマークを入力すると、採点入力部135は、その入力を受け付けて、その入力に応じた点数を採点の結果として、採点画面上の採点表示部に表示させる。
【0041】
例えば時計描画課題も、図形模写課題と同様、記述式の回答の評価が必要な、複雑な課題である。よって、本実施の形態において、例えば時計描画課題についての採点も、自動的に行わず、回答再現部134が、被検者による記述式の回答を、回答データに基づいて採点画面上の回答表示部に、例えば図13に示すように回答結果として表示させることにより、検査者の目視による回答確認を可能にする。図形模写課題の回答表示部には、回答を評価するための複数の評価項目(例えば、図示されているように「数字の適切な配列」等)が表示され、該当する個所に検査者がチェックマークを入力する操作を行うと、採点入力部135は、その入力を受け付けて、その入力に応じた点数、例えばチェックマークの個数に応じた点数を自動的に計算し、これを採点の結果として、採点画面上の採点表示部に表示させる。
【0042】
例えば、語想起課題は、出題された課題への回答が、被検者が自由に口述することが可能な口述式の回答であり、その回答と正解との照合及び採点を行うことが必ずしも容易でない、複雑な課題である。よって、本実施の形態において、例えば語想起課題についての採点は、自動的に行わない。例えば語想起課題の課題名表示部には、音声再生ボタンが表示され(図14参照)、このボタンがタップされると、回答再現部134が、被検者による口述式の回答の音声を、回答データに基づいて回答結果として再生することにより、検査者の聴取による回答確認を可能にする。語想起課題の回答表示部には、複数の正答入力欄が番号と共に、評価項目として並べて表示される(図14参照)。検査者が被検者の正しい回答(正答)を聞き取ったときに、その正答を1番から順に正答入力欄に記入できるようになっている。採点入力部135は、その入力に応じた点数、例えば入力済みの評価項目数(入力数)に応じた点数を自動的に計算し、これを採点の結果として、採点画面上の採点表示部に表示させる。
【0043】
例えば物語遅延再生課題も、語想起課題と同様、口述式の回答の評価が必要な、複雑な課題である。よって、本実施の形態において、例えば物語遅延再生課題についての採点も、自動的に行わず、回答再現部134が、音声再生ボタン(図15参照)のタップ操作に従って、被検者による口述式の回答の音声を、回答データに基づいて回答結果として再生することにより、検査者の聴取による回答確認を可能にする。物語遅延再生課題の回答表示部には、物語の内容を表す複数のキーワード又はキーフレーズ(例えば、図示されているように「新潟市内の」等)が、チェックボックスと共に、評価項目として並べて表示される(図15参照)。検査者が被検者の正答を聞き取ったとき、該当する個所にチェックマークを入力する操作を行うと、採点入力部135は、その入力を受け付けて、その入力に応じた点数、例えばチェックマークの個数に応じた点数を自動的に計算し、これを採点の結果として、採点画面上の採点表示部に表示させる。
【0044】
採点画面表示部132は、前述のように自動又は半自動で採点された結果を自動的に合算して、合計点を採点画面上の合計点表示部に表示させる。
【0045】
採点画面において「印刷」ボタン(図10a参照)がタップされると、レポート作成部136は、採点画面の表示内容に基づいて、例えば図16a及び図16bに示すようなフォーマットを有するMCI検査レポートを作成し、印刷装置60により印刷させる。本実施の形態においては、MCI検査レポートは、簡易な課題についての自動採点結果を纏めた第1部分のページと、複雑な課題についての半自動採点結果を纏めた第2部分のページとに分けられる。このような分け方をすると、比較的重度の認知障害の場合には、第1部分の得点と第2部分の得点とがいずれも低くなる一方、比較的軽度の認知障害の場合には、第1部分の得点が高くなり第2部分の得点が低くなるという傾向が現れる。よって、単に合計点だけで認知障害を判断するよりも、認知障害の有無及び軽重をより正確に診断することができる。
【0046】
採点を終了させるとき、検査者が採点画面上の「終了」ボタンをタップすると、検査データリスト表示部131は、検査データリスト画面(図4)を表示させる。このとき、採点結果は採点データとして保存される。したがって、検査者は、過去の複数の検査結果を順次選択して表示させると、検査結果の経時変化を見て取ることができ、認知障害の進行等を客観的に判断することができる。
【0047】
さらに、検査データリスト画面上の「終了」ボタンがタップされると、後処理部130は後処理モードを終了し、画面表示は、メイン画面(図3)に戻され、MCI検査システム1は、次の操作を待機する。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、MCI検査用の課題の出題と当該課題への回答の受け付けとを順次行うMCI検査を実行するMCI検査システム1は、簡易な課題への回答を自動的に採点し、当該採点の結果を採点画面上に表示させる自動採点部132と、複雑な課題への回答を目視可能及び/又は聴取可能に再現する回答再現部134と、目視可能及び/又は聴取可能に再現された複雑な課題への回答を採点するための入力を受け付けて、当該入力に基づく採点の結果を採点画面上に表示させる採点入力部135と、を有する。
【0049】
これにより、例えば選択式の回答のように正誤判定が比較的容易である簡易な課題については人の判断を介さず自動的に、例えば記述式及び/又は口述式の回答のように正誤判定が比較的困難である複雑な課題については人の判断を介して、MCI検査の結果を評価することができるため、より確実に、重度の認知障害だけでなく軽度の認知障害まで含めて、認知障害の検査を行うことができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、記述式の回答及び口述式の回答が回答データとして保存され、採点時にそれらが目視可能及び聴取可能に再現されるため、どのような間違いが多いかを詳しく検討することができる。特に、検査データリスト画面から選択的に過去複数回の検査結果を閲覧して、記述式の回答又は口述式の回答の相違を比較することで、例えば時計描画課題において描画した時計の数字が以前よりも右側に偏りだしている等、採点には現れにくい変化も見て取ることが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、目視可能及び/又は聴取可能に再現された回答を評価するための評価項目及びその評価項目において入力された評価結果が採点画面上に表示され、さらに、その評価結果に応じた点数が採点の結果として採点画面上に表示される。すなわち、例えば記述式及び/又は口述式の回答のように正誤判定が比較的困難である複雑な課題については、人の判断を介するが半自動的にMCI検査の結果を評価することができるため、効率と信頼性との両立を図ることができる。
【0052】
以上、本発明についてその好ましい実施の形態を、例を挙げて説明してきたが、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、種々の変形が当業者によって可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の軽度認知障害検査システム及び軽度認知障害検査プログラムは、軽度認知障害検査を支援するシステム及びプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 軽度認知障害検査(MCI)システム
10 制御装置
20 記憶装置
30 音声入力装置
40 音声出力装置
50 タッチパネル式表示装置
60 印刷装置
110 MCI検査実行部
111 課題出題部
112 回答受付部
120 設定部
130 後処理部
131 検査データリスト表示部
132 採点画面表示部
133 自動採点部
134 回答再現部
135 採点入力部
136 レポート作成部
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図15
図16a
図16b