(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】2つの時計部品を組み立てるための組立ねじ、ブレスレット、時計及び腕時計
(51)【国際特許分類】
A44C 5/10 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
A44C5/10 511J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017117358
(22)【出願日】2017-06-15
【審査請求日】2020-05-18
(32)【優先日】2016-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン, エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】レイズナー, ジェイムズ
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-087817(JP,U)
【文献】特開2005-124770(JP,A)
【文献】米国特許第02798404(US,A)
【文献】実開平03-007712(JP,U)
【文献】特表2012-529300(JP,A)
【文献】特開2012-120839(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第695389(CH,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00- 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立位置にある少なくとも2つの時計部品を旋回により取り付けるための組立ねじ(1)であって、前記組立ねじ(1)は、前記時計部品の1つの旋回を可能とする少なくとも1つの案内部(3)と、他の時計部品への固定を可能とする少なくとも1つのねじ山部(4)とを含み、該ねじは、前記他の時計部品と当接することを意図された肩部(5)と、前記時計部品が組立位置にあるときに、前記組立ねじの前記肩部(5)に加わる接触圧を減少させるための、低機械的剛性の区域(10)とを含み、前記低機械的剛性の区域(10)は、前記案内部(3)に配置され
、直径が一定の軸線方向中央部を含む、
組立ねじ。
【請求項2】
前記肩部(5)は、0.8mm
2以上、または0.9mm
2以上、または1mm
2以上の表面積を有する、
請求項1に記載の組立ねじ(1)。
【請求項3】
前記低機械的剛性の区域(10)は、直径D10の円に内接する最小断面を、比率D10/D3が0.1以上0.9以下、または0.3以上0.7以下となるよう含み、ここでD3は隣接する案内部(3)の直径であり、前記ねじは幅L10を、比率L10/L13が0.04以上0.3以下となるよう含み、ここでL13は前記案内部(3)を含む前記組立ねじ(1)の中央部(13)の長さである、
請求項1または2に記載の組立ねじ(1)。
【請求項4】
前記ねじ山部(4)は、2mm以下の外径または呼び径を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)
【請求項5】
前記肩部(5)は、前記低機械的剛性の区域(10)と前記ねじ山部(4)の間に位置する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)。
【請求項6】
前記低機械的剛性の区域(10)は、任意の窪みの形状であって、一定または不定の直径の溝を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)。
【請求項7】
前記低機械的剛性の区域(10)は、前記案内部(3)内に、前記ねじ山部(4)近くに配置され、前記低機械的剛性の区域(10)の下流端は、前記肩部(5)の下流端から測定してL13/3以下、またはL13/5以下、またはL13/6以下の距離に位置し、ここでL13は前記組立ねじ(1)の前記案内部(3)を含む中央部(13)の長さであり、または前記ねじ山部(4)を含む前記組立ねじ(1)の半分内に位置する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)。
【請求項8】
前記肩部(5)は、10°以上60°以下の、または20°以上45°以下の角度の、先細形状である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)。
【請求項9】
前記肩部(5)は前記ねじ山部(4)の上流に位置する、及び/または前記肩部(5)は前記案内部(3)表面の端部に位置する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)。
【請求項10】
前記ねじは、前記肩部(5)と前記ねじ山部(4)とを含む先頭部(14)と、前記案内部(3)の表面と少なくとも1つの低剛性の区域(10)とを含む中央部(13)と、ねじを作動させるための頭部(2)を含む最終部(12)とを含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)。
【請求項11】
前記ねじは、前記先頭部(14)内で、前記肩部(5)と前記ねじ山部(4)との間に、低剛性の第2区域(11)を含む、
請求項10に記載の組立ねじ(1)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)を介して旋回により組立された、少なくとも2つのリンク(20、30)を含む、ブレスレット。
【請求項13】
前記組立ねじ(1)の前記ねじ山部(4)がその中に配置されるタップ穴を含む開口と、前記開口の入り口に前記組立ねじ(1)の前記肩部(5)が当接して位置する接触表面と、を有する第1リンク(20)を含む、
請求項12に記載のブレスレット。
【請求項14】
前記組立ねじ(1)の頭部(2)が第1端部リンク要素(21)の開口内に格納されるよう、また、前記組立ねじ(1)のねじ山部(4)が第2端部リンク要素(22)の開口内に格納されるよう、2つの端部リンク要素(21、22)を含む第1リンク(20)を有し、さらに第2リンク(30)が前記組立ねじの案内部(3)表面周りに少量の遊びをもって旋回できるよう、前記組立ねじ(1)が貫通する開口を含む、単一の中央リンク要素の形状の該第2リンク(30)を有する、
請求項12または13に記載のブレスレット。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)を用いて旋回により組み立られる少なくとも2つの部品を含む、及びまたは請求項12から14のいずれか一項のブレスレットを含む、時計。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組立ねじ(1)を用いて旋回により組み立られる少なくとも2つの部品を含む、及びまたは請求項12から14のいずれか一項のブレ
スレットを含む、腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの時計部品の、とりわけブレスレット、例えば小型時計ブレスレットの2つのリンクを、旋回により組み立てるためまたは取付けるための組立ねじまたは取付けねじに関する。本発明はまた、少なくとも2つの部品を旋回により組み立てるための、組立ねじを少なくとも1つ含む、ブレスレットそのもの、及び更に一般的には、腕時計等の時計そのものに関する。
【背景技術】
【0002】
小型時計ブレスレットの2つのリンクを、ねじにより支持される旋回案内ピンを用いて組み立てることは、既知の事例である。組み立てられたリンクは、相対的に回転運動可能である。このタイプの組立においては、望まないねじの緩みが生じるリスクがある。時計屋によく知られている当該問題は、ブレスレットの装着中の、リンクの相対的な繰返しの動きにより、または衝撃により、引き起こされる。
【0003】
引用技術に記載される第1の解決策は、望まないねじの緩みのリスクを減少させるために、一般的に「ねじ固定剤」と呼ばれる、組立ねじのねじ山に塗布される接着剤を利用することである。当該解決策は、接着剤の正確な量を習得しなければならないため、実務上は難しい。当該解決策はまた、特別な道具と、相当な組立時間を必要とする。アフターセールスサービス作業も複雑となる。
【0004】
特許文献1は、別の解決策を提案する。特許文献1は、小型時計ブレスレットのリンクを旋回により組み立てるためのデバイスを開示する。当該組立デバイスは、一端に頭を有し、他端にねじ山部を有するねじを含む。ねじの円筒形の中央部は、中央リンク要素の回転案内用の案内ピンの役割を果たす。望まないねじの緩みのリスクを制限するため、弾性素材製で環状狭窄部が設けられた管状の筒が、外側リンク要素のうちの1つの貫通孔に打ち込まれる。当該貫通孔にはねじが通され、貫通孔がねじの所定部分と協働する。組立にあたり、ねじは、筒とねじが噛み合うまで、筒内に導入される。最終ねじ締め位置において、筒はねじに対して放射状のクランプ力を加え、このクランプ力は、ねじのねじ山が発揮する保持力と結合する。このように、ねじはリンクに対して、軸方向に不動となる。当該解決策は、いくつかの部品の組立を必要とし、比較的長い組立時間を必要とする。更に、筒はねじに対して高いクランプ力を加えなければならず、組立及びまたは分解作業が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、2つの時計部品を旋回により組み立てるための、先行技術の欠点の全てまたは一部を含まない、改善された解決策を提供することである。
【0007】
更に詳しくは、本発明の目的の1つは、2つの時計部品を旋回により組み立てるための、より簡単で更に信頼性の高い解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、組立位置にある少なくとも2つの時計部品を旋回により取り付けるための組立ねじであって、前記組立ねじは、前記時計部品の1つの旋回を可能とする少なくとも1つの案内部と、他の時計部品への固定を可能とする少なくとも1つのねじ山部とを含み、該ねじは、前記他の時計部品と当接することを意図された肩部と、前記時計部品が組立位置にあるときに、前記組立ねじの前記肩部に加わる接触圧を減少させるための、低機械的剛性の区域とを含む、組立ねじに関する。
【0009】
好ましくは、前記組立ねじは、0.8mm2以上、または0.9mm2以上、または1mm2以上の、拡大した表面積を有する肩部を有する。
【0010】
加えて、前記組立ねじの前記ねじ山部は好ましくは寸法が小さく、2mm以下の外径または呼び径を有する。
【0011】
本発明は、各請求項によってより詳細に定義される。
【0012】
本発明の目的、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて、以下に限定を目的としない例として示される特定の一実施形態の説明において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる組立ねじを示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態にかかる組立ねじを用いて旋回により組み立てられた2つのブレスレットリンクを示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態にかかる組立の詳細を示すための、
図2の2つのブレスレットリンクの拡大図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の効果を示すため、それぞれ異なる組立ねじを用いたブレスレットリンクを組み立てる際の、複数の圧力計算を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、相対的に旋回可能な少なくとも2つの時計部品を組み立てることを意図された、組立または連結ねじに関する。とりわけ当該ねじは、リンク、例えば腕時計用ブレスレット等のブレスレットのリンクを、組み立てるために用いることができる。
【0015】
このため、以下に例示する一実施例において、時計ブレスレットのリンクを組み立てる例を説明する。慣例により、組立ねじの軸に平行な方向を縦方向とし、垂直方向を横方向とする。加えて、組立ねじは、導入される方向が考慮され、ねじの第1端は頭部を含む第2端の反対側であり、上流とは、当該第2端側に向いた部分を示す。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態にかかる組立ねじ1を図示する。当該ねじは、ねじが作動されるときに回転軸を形成する縦軸9の周りに配置される。当該ねじは、外径(呼び径)D4のねじ山部4を含む第1端を有する。詳細は後述するものの、ねじはさらに中心部に、円筒形で直径D3の、外面がリンクの旋回を案内する表面を形成する、案内部3を有する。ねじはまた、その第2端に、ねじ回しなどの工具を用いて作動されるよう設計される頭部2を含む。
【0017】
組立ねじ1は、加えて、少なくとも1つの低機械的剛性を有する第1区域10を含む。当該区域は、案内部3内に配置される。当該区域は有利には、ねじ山部4近傍に位置される。このために、区域の下流端は、好ましくは長さL13/3以下、またはL13/5以下、またはL13/6以下の距離である、肩部5の下流端から測定して距離L100に位置される。本実施形態において、距離L100は、1mm程度である。当該低機械的剛性の第1区域10は、好ましくは、ねじ山部4を含む第1端側に位置する、ねじの半分内に備えられる。提案される実施形態において、低機械的剛性の第1区域10は、最小直径D10の、縦方向に幅を有する、溝として形成される。好ましくは、応力集中を防ぐため、溝の底に、ねじの形式に応じて寸法決めされ、とりわけ最大化されるネックモールディングが生成される。代替案として、低機械的剛性の区域10は、その他任意の形状で形成されてよい。このため、区域10は、例えば、一定または不定の直径を有する溝でもよい。当該区域は、ねじの案内部3内の素材を除去することにより得られてもよく、その他任意の同等な製造工程で形成されてもよい。例えば素材除去により形成される窪みは、空間を形成する。当該空間は好ましくは、組立ねじ1の縦軸9周りに回転対称を示す。組立ねじの表面に配置された当該空間の形状は、組立ねじの機械的剛性に著しい低下をもたらすに十分なものである。このため、空間は、当接面を形成したり、その他の機能を発揮するような単なる小さな溝ではなく、ねじの本体の曲げ慣性を局所的に最小にすることを目的とする溝である。このため、当該空間は、比率D10/D3が、0.1以上0.9以下、または0.3から0.7の間となる。当該低機械的剛性の区域10がいかなる形状であってもよいことから、軸対称性を維持するために好ましくは実質的に円形であるその断面は、円形ではなく例えば六角形であってもよい。この場合、その最小断面は、比率D10/D3が、0.1以上0.9以下、または0.3以上0.7以下となるよう、直径D10の円内に内接する。加えて、当該低機械的剛性の区域10の幅L10は、同様に、応力をよりよく分配するために、大きく形成される。特に、比率L10/L13は、好ましくは、0.04以上0.3以下であり、ここでL13は組立ねじ1の中心部13の長さであり、詳細は後述する。本実施形態において、幅L10は1mm程度である。低機械的剛性の区域は、好ましくは、0.5mm程度または0.5mmを超える半径を有するネックモールディングにより区切られる。代替案として、低機械的剛性の区域10は、案内部3外で、中央部13またはその他の位置に形成することもできる。最後に、組立ねじは、好ましくは小さい寸法であり、特にそのねじ山部は、有利には、2mm以下の外径または呼び径を有する。
【0018】
最後に、組立ねじ1は、
図2、3に図示されるように、組み立てられるべきリンクの対応する当接面と当接することが意図される肩部5を有する。当該実施形態において、当該肩部5は、直径D3の案内部3の端部と縮径D3fの区域間に延びる、円錐台状の形状を有する。当該円錐台状面は、最終的に組立ねじ1の案内部3の端から開始する面取りにより得られ、当該面取りは、特に
図3に示すように、組立ねじの縦軸9に対して角度δを示す。当該角度δは、所定の工業的手法に基づき、特に以下に説明するように、第1リンクにタップ穴を製造する最適な手法に関して、選択することができる。図示の実施形態において、角度δは約30°に等しい。一般的には当該角度は、10°以上60°以下、または20°以上45°以下であってもよい。
【0019】
実施形態によれば、組立ねじ1は、最終的に3つの部位を有すると見做してもよい。これを、時計部品を組み立てるために時計部品の開口部に導入する順番に以下に検討する。
・長さL14の、肩部5とそれに続くねじ山部4を含む、先頭部14、
このため、当該先頭部14は、部分的にねじ切りされている。低機械的剛性を有する第2区域11は、2つの要素4、5間に位置する。当該区域は、最小直径D11で、縦方向に幅L11の、第2溝の形状を有する。この低機械的剛性の第2区域11は、上述の第1区域と同様に、異なる形状を示してもよい。このため、直径D11は、一定であってもなくてもよい。このような構成により、所望の保持性能に適した、適正な締め付けトルクを得るために必要な設定に基づき、組立ねじ1の先頭部14の伸長または圧縮を促すことが可能となる。好みにより、応力集中を防ぐため、溝の底にネックモールディングが生成され、ねじの形式に応じて最大化される。このため、低機械的剛性の第2区域11は、組立ねじの先頭部14の領域に作成され、肩部5の(ねじの導入方向の)下流側で、ねじ山部4の上流側の直近の領域に作成される。本実施形態によれば、当該低機械的剛性の第2区域11は、以下の数式で特徴づけられる形状をとってもよい。0.5≦D11/D4≦0.9、及び0.1≦L11/L14≦0.6。
・案内部3を含む長さL13の中央部13、
案内部3それ自体は低機械的剛性の第1区域10を含む。中央部13は、先頭部14に近い端部に向けて設けられる低機械的剛性の区域10を除き、一定の直径D3の、連続する円筒形状を有する。
・最終部12、
これは頭部2と、任意で頭部2に続き、ねじ摘出工具を受け入れ、特に店内作業またはアフターセールスサービス中に迅速且つ容易な分解を可能にするよう設計される溝6を有する。
【0020】
図2および3は、ブレスレットの2つのリンク20、30を組み立てる例について、上述の本実施形態にかかる組立ねじ1を、さらに詳しく図示する。第1リンク20は、特に2つの端部リンク要素21、22を含み、2つの端部リンクは既知の方法で組立手段23、24により連結される。この組立手段23、24が、第3リンク要素40を、第1リンク20内に固定する。
図2の第2リンク30は、単一の中央リンク要素の形状を有する。もちろん、同一ブレスレットの2つ以上のリンクを、好ましくはブレスレット延長リンクを、同一の組立ねじを用いて固定してもよい。リンクは、1つ以上のリンク要素の形態を取っても良い。
【0021】
図2、3に図示の2つのリンク20、30の組立位置において、組立ねじ1の第1端は、第1リンク20の第2リンク要素22の開口部に格納され、頭部2を含むねじの第2端は、第1リンク20の第1リンク要素21の開放型開口部内に格納される。ねじのねじ山部4は、これにより、タップ穴を有する第1リンク20の第2リンク要素22の対応するねじ山部と協働する。組立ねじ1は、加えて、第2リンク30の貫通開口内に位置する。このため2つのリンク20、30のそれぞれの開口は整列し、その中を組立ねじ1が完全にまたは部分的に通過する。組立ねじ1の先頭部14は、第1リンク20の第2リンク要素22内に完全に統合される。最終部12と、中央部13の短い長さの一部は、第1リンク20の第1リンク要素21の開口内に位置する。低機械的剛性区域10を含む中央部13の残りは、第2リンク30の開口内に位置し、当該第2リンク30の回転を案内する機能を発揮する。組立ねじの肩部5は、第2リンク要素22の開口の入り口に当接して位置し、当該開口は肩部5の形状に対応し、好ましくは肩部5の全体(同じ角度、そして好ましくは少なくとも同じ表面)を包含する当接表面を形成する先細部を有する。
【0022】
組立の当該位置において、中央リンク30は、2つの端部リンク要素21、22間で軸方向に保持され、小さな隙間を有して、組立ねじ1の案内部3周りに、従って組立ねじ1の縦軸9に対応する回転軸周りに、旋回運動可能である。
【0023】
実務上、このような組立ねじによる2つのリンクの組立は、組立ねじを、ねじへの所定のトルクで定義される締め付けに到達するまで締めることにより行われる。これにより、持続性のある組立を保証するために、とりわけ、ねじ頭が少量回転してねじのトルクの大幅な減少につながることで発生する組立ねじの望まぬ「緩み」を防止するために、ねじへ適切なプレテンションが与えられる。一旦ねじが緩むと、ねじのトルクが少し減少するだけで、ねじが不注意により抜け出し、つまり継続して回転することもある。ねじの望まぬ緩みは、ねじの望まぬ抜けにつながり、最悪の場合、ブレスレットからのねじの紛失につながり、これによりブレスレットまたは腕時計の落下を引き起こす。
【0024】
ねじ締め中に、ねじが組み立てられる部品の1つに、本実施形態では第2リンク要素22に当接するときに、ねじの本体の、特にねじ山部4の弾性変形により、既知の方法でねじのプレテンションを生じさせる。ねじの当該プレテンションは、上述のように、持続性のある組立を保証するため、最適化される。
【0025】
本発明によれば、最適化は、ねじに対して固定当接点を提供することにより、有利に達成されることが判明した。ここで、「固定当接点」とは、変形不能な接触表面により定義される当接点、すなわちピーニングに悩まされない接触表面、を意味する。特に、出願人の会社による研究により、ねじの締め付けトルクの減少は、ねじのねじ山部の負荷段階の塑性変形によりもたらされる弾性位置エネルギーの損失により説明可能なことが示された。このため本発明にかかる組立ねじは、所定の締め付けトルクでの、及びまたは小型時計の装着中のブレスレットが負荷を受けるときに、とりわけ組立に関連するブレスレットストランドの引張り応力またはねじり荷重がかかる間に、ピーニングにより悩まされることがない接触表面を実施する。
【0026】
このため、本実施形態にかかる組立ねじは、上述の低機械的剛性の第1区域10を有する。当該区域は、ねじの屈曲により、外部応力負荷、とりわけ衝撃を吸収する機能を発揮する。当該区域は、ねじ山部4を外部応力負荷から隔離する。このため、当該構成は、ねじと、対応する第1リンク20の第2リンク要素22の接触表面とが、互いに荷重をかけあう場所である、肩部5における接触圧を最低限にすることができる。当該解決策は、組立ねじ1と第1リンク20との間に「固定当接点」を定義することを可能にする。それぞれの接触表面において、組立に関連する素材の可容応力よりも低い、例えばブレスレットリンクに通常用いられる金合金の可容応力よりも低い、接触圧を得ることを可能にする。
【0027】
好ましくは、低機械的剛性の区域10は、特にブレスレットが引張りまたはねじりの負荷を受けるときに、せん断効果から隔離するため、リンク20、30の接触面からセットバックされる。このため、低機械的剛性の区域10は、第2リンク30の穴内に位置することができる。当該区域はこのように、組立ねじ1の案内部3内に位置される。しかしながら、当該区域の位置は、当該ねじ山部を外部応力から最大に隔離するため、ねじ山部4にできる限り近いように定義される。代替案として当該区域は、第2リンク要素22の長さが十分な場合、例えば図示の実施形態の低機械的剛性の第2区域11の代替として、第2リンク要素22のタップ穴内に位置してもよい。
【0028】
更に、組立ねじの接触表面での塑性変形は、例えば時計の寸法が小さく、時計組立において得られる容積が少ないことから、所定の締め付けトルクにおいて、組立ねじとリンクへ当接する表面との間に十分な境界面がないことから発生することもある。
【0029】
本実施形態によれば、当該接触面は、第2リンク要素22の対応する当接点形成表面に対して面接触する、組立ねじ1の肩部5の面積Aに対応する。当該面積Aは、好ましくは最大化される。本発明の実施形態によれば、角度δの先細形状の面積Aは、以下の数式で算出することができる。
【0030】
【0031】
本発明の本実施形態が想定する時計への適用において、ブレスレットのリンクの組立に関し、2mm以下のねじ山部4の外径または呼び径D4に対して、面積Aは有利には0.8mm
2より大きく、または0.9mm
2より大きく、または1mm
2より大きい。組立ねじの当接点の肩部を最大化する当該構成は、有利には当該当接点での接触圧を減少させることを可能とし、本発明が求める技術的効果を得ることに貢献する。肩部の面積の増加は、
図4に関して説明されるように、それ自体で、従来技術の現存する解決策に対する改善を提供する。しかしながら、上述のように、低機械的剛性の区域10の実施と組み合わされるのが好ましい。
【0032】
このように、上述の組立ねじ1は、望まぬ緩みのリスクを防止または減少することで、2つの時計部品の旋回による組立を更に確実に行うことができる。
【0033】
もちろん本発明は、上述の実施形態に記載された形状に限定されない。好ましくは、肩部5は図示のように、第1リンク20の当接表面と当接するねじのねじ締め中、当該部分4に引きずりを生成するよう、ねじ山部4の上流に位置する。代替的に、肩部5は、組立ねじ1が「バインド」ねじを構成するよう、ねじ山部4の下流に位置してもよい。当該構成は、ねじ山部4を含む先頭部に圧縮を生成することを可能にする。当該解決策は、曲げ応力負荷が当該部分を更に圧縮し、それによりねじのプレテンションを更に強調する傾向があるため、とりわけ曲げ応力負荷時の性能に関して、特に有利になることもある。
【0034】
加えて、本実施形態において、肩部5はねじ山部4に隣接する。有利には、ねじの当接点は、肩部5と部分的ねじ山部4を可能な限り近づけるため、好ましくは第2リンク要素22のタップ穴の入り口に、面取りの形状のリンクの接触表面として、形成される。
【0035】
しかしながら、代替案として、肩部5は組立ねじ1の頭部2に隣接してもよい。この状況において、肩部5は、第1リンク要素21の表面との協働が意図される当接点を、頭部の下に定義でき、
図2、3に図示する例に戻ると、例えばねじの本体の通過を許可する第1リンク要素21の穴の入り口の面取りの形で存在する。
【0036】
有利には、第2リンク30の旋回を少ない隙間で案内することを意図する、組立ねじ1の本体の案内部3は、ねじと旋回するリンクとの間の摩擦を最小限にし、それにより当該リンクの運動の効果、特にねじり負荷がかけられたときのリンクの滑動の効果によるねじへの応力負荷を最小限にするよう、構成される。このため、案内部3は、ねじとリンクとの間の摩擦係数を最小限にする目的で、表面被膜で被膜されまたは処理されてもよい。特に、案内部3の表面は、あらゆる工程を用いて、例えばKolsterizingの商品名で知られる処理により得られる硬化や、CrN、TiAlN、またはHfNから形成される「硬質」被膜などで、硬化されても良い。代替案として、例えばNuflon(登録商標) GBT5の商品名で知られる素材を用いた、「軟質」(固体潤滑剤とも呼ばれる)とみなされる被膜を実施することもできる。代替案として、(オイルやグリースといった)粘性潤滑剤の被膜を形成してもよい。代替案としてまたは加えて、硬化または被膜は、当該案内部により案内されるリンクの穴に適用されてもよい。加えて、当該被膜または硬化は、案内部3を超えて、とりわけ組立ねじ1の中央部13の全体に延長してもよい。
【0037】
有利には、組立ねじ1のねじ山部4は、噛み合うねじ山の数を最大化し、所定の締め付けトルクにおいてねじの本体へ与える張力を最適化するため、端部ねじ山を設けてもよい。更に、ねじ山部4は、ねじ固定剤、特に乾式ねじ固定剤の使用を許可するよう適合されても良い。
【0038】
このようなねじ形状は、例えば2mm以下のねじ呼び径のねじなど、ねじの小径に特に適しており、このような組立ねじを特に時計への適用に適したものとする。
【0039】
図4は、
図2に示す構成における、4つの異なる組立ねじA、B、C、Dのそれぞれについて、組立ねじとブレスレットリンクの第2リンク要素の接触表面での接触圧を比較する図である。全ての場合において、接触表面は、組立ねじのねじ部分または部分的ねじ部分の上流側に位置する先細肩部によって定義され、当該接触表面または肩部は、リンク要素の対応する先細接触表面に当接するねじが締められるときに、ねじ部に張力を生成する。全ての組立ねじA、B、C、Dは、同様の寸法、とりわけ同一の1.7mmの案内部直径と、同一のねじ径を有する。更に、全ての組立ねじは、ブレスレットのリンク要素と同じ、金でできている。全ての場合で同一である、組立ねじの締め付けトルクは、5Ncmである。図の縦軸に示す接触圧σは、当該組立ねじを組み込んだブレスレットを含む腕時計の、通常の使用について、計算される。接触時の可容応力σadmは、破線で示される。
【0040】
検査した4つの組立ねじA、B、C、D、は、横軸に示される。組立ねじは、以下の特徴により、それぞれ異なる。
・組立ねじAは、従来技術を代表するねじ、つまり低機械的剛性の区域を含まず、表面積が0.75mm2に等しい肩部を有するねじ、を構成する。
・組立ねじBは、低機械的剛性の区域を有さず、この点で組立ねじAに類似するが、1mm2程度と、面積の大きい肩部を有する。
・本発明の実施形態にかかる組立ねじCは、組立ねじAに類似するが、形状がD10/D3≒0.6とL10/L13≒0.09で特徴づけられる、低機械的剛性の区域を含む。当ねじは、組立ねじA同様、0.75mm2に等しい肩部を有する。
・本発明の他の実施形態にかかる組立ねじDは、組立ねじCの低機械的剛性の区域と、1mm2程度と面積の大きい肩部とを組み合わせる。
【0041】
組立ねじC、Dに形成された低機械的剛性の区域の存在は、接触圧を大きく減少させることが可能であり、著しい技術的効果を提供することができる。組立ねじDにおいて、面積の大きい肩部と組み合わせることで、従来技術の組立ねじAと比較して4倍程度、接触圧を減少させることが可能となる。このねじが、試験したなかで最良の解決策であった。接触面積の増大(組立ねじB)も、従来技術の解決策(組立ねじA)に対する改善を提供することを注記する。
【0042】
上述した全ての実施形態において、組立ねじは最終的に、上記で定義した通り、その当接点における組立ねじの接触圧を減少し、ねじが緩むリスクを大幅に減少させることによって信頼性を向上させる、少なくとも1つの低機械的剛性の区域を含む。本発明は、説明した実施形態に限定されず、当該区域はねじの長さ方向において異なる位置に、ねじ山部の上流側または下流側、ねじ山部から遠くまたは近くに、位置させることができるが、ねじ山部に近いことが好ましい。代替案として、
図1に示すように少なくとも2つ、または3以上、複数の補足的な低機械的剛性の区域を有してもよい。
【0043】
更に、組立ねじの形状は、好ましくは、上述のように、肩部の面積を増大させるように設計される。
【0044】
組立ねじは、好ましくは、金、白金、チタニウム、316Lまたは904LまたはP558鋼等の鋼、またはPhynoxやNivaflex等のコバルト合金といった金属素材から製造される。当然、他の、セラミックや複合材料といった非金属素材も、当該ねじを製造するために用いることができる。もちろん、当該素材リストは、限定的ではない。加えて、ねじは好ましくは一体成形であり、一体型の構造である。代替案として、当該組立ねじは、互いに組み立てられる複数の別個の要素を含んでもよい。
【0045】
本発明の組立ねじは有利には、上述のように、ブレスレットのリンクの組立のために用いられる。このため、本発明はまた、
図2及び3に図示の例に限定されない、あらゆる形状を取ることができるリンクの全てまたは一部が当該組立ねじを用いて組み立てられる、ブレスレットそのものに関する。本発明はまた、当該ブレスレットを含む、腕時計そのものに関する。加えて本発明は、組立ねじのブレスレットへの利用に限定されず、時計の全ての2つの時計部品の旋回可能組立への利用も包含する。
【符号の説明】
【0046】
1 組立ねじ
2 頭部
3 案内部
4 ねじ山部
5 肩部
10 低機械的剛性の区域
12 最終部
13 中央部
14 先頭部