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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/055 370
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017222221
(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公開番号】P2019092593
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 武士
(72)【発明者】
【氏名】今田 英孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】福島 豊
(72)【発明者】
【氏名】本間 亮
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-029250(JP,A)
【文献】特開2013-180051(JP,A)
【文献】特開2007-185250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0085376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の生体信号を取得する取得部と、
前記生体信号をリアルタイムに解析し、予め設定された呼吸指示前記被検体の呼吸状態の関係を評価する評価部と、
前記評価部による評価結果に応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する実行部と
を備え
前記評価部は、前記生体信号をリアルタイムに解析し、前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かを評価し、
前記実行部は、前記被検体の呼吸状態が安静でない場合に、前記息止め撮像のプロトコル群に含まれる複数のプロトコルの順序を入れ替える、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
被検体の生体信号を取得する取得部と、
前記生体信号をリアルタイムに解析し、予め設定された呼吸指示と前記被検体の呼吸状態の関係を評価する評価部と、
前記評価部による評価結果に応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する実行部と
を備え、
前記評価部は、前記生体信号をリアルタイムに解析し、前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かを評価し、
前記実行部は、前記被検体の呼吸状態が安静でない場合に、前記息止め撮像のプロトコル群の間に休憩用のプロトコルを挿入する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
被検体の生体信号を取得する取得部と、
前記生体信号をリアルタイムに解析し、予め設定された呼吸指示と前記被検体の呼吸状態の関係を評価する評価部と、
前記評価部による評価結果に応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する実行部と
を備え、
前記評価部は、前記生体信号をリアルタイムに解析し、前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かを評価し、
前記実行部は、前記被検体の呼吸状態が安静でない場合に、前記息止め撮像のプロトコルを、息止め不要のプロトコルに変更する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
被検体の生体信号を取得する取得部と、
前記生体信号をリアルタイムに解析し、前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かを評価する評価部と、
前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かに応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する実行部と
を備え、
前記実行部は、前記被検体の呼吸状態が安静でない場合に、前記息止め撮像のプロトコル群に含まれる複数のプロトコルの順序を入れ替える、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
被検体の生体信号を取得する取得部と、
前記生体信号をリアルタイムに解析し、前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かを評価する評価部と、
前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かに応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する実行部と
を備え、
前記実行部は、前記被検体の呼吸状態が安静でない場合に、前記息止め撮像のプロトコル群の間に休憩用のプロトコルを挿入する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
被検体の生体信号を取得する取得部と、
前記生体信号をリアルタイムに解析し、前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かを評価する評価部と、
前記被検体の呼吸状態が安静であるか否かに応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する実行部と
を備え、
前記実行部は、前記被検体の呼吸状態が安静でない場合に、前記息止め撮像のプロトコルを、息止め不要のプロトコルに変更する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記生体信号として、前記被検体の呼吸信号を取得し、
前記評価部は、前記呼吸信号をリアルタイムに解析することで、前記被検体の呼吸状態を推定し、推定した前記呼吸状態と前記呼吸指示との関係を評価する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記実行部は、前記息止め撮像に関連する実行条件を調整する、
請求項1~7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記生体信号として、前記息止め撮像における呼吸指示の練習における呼吸信号を取得し、
前記評価部は、前記練習における呼吸信号を解析することで、予め設定された呼吸指示と前記練習における前記被検体の呼吸状態との関係を評価し、
前記実行部は、前記呼吸指示と前記練習における前記被検体の呼吸状態との関係に基づいて、前記息止め撮像に関連する実行条件を調整する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記実行部は、前記実行条件として、前記息止め撮像に関連する音声の出力タイミングを調整する、
請求項又はに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記実行部は、前記実行条件として、前記息止め撮像の開始タイミングを調整する、
請求項又はに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記実行部は、前記実行条件として、前記息止め撮像のプロトコル群に関する調整を行う、
請求項又はに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記実行部は、前記実行条件の調整に関連する情報を表示させる、
請求項又はに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記実行部は、前記評価部による評価結果に関連する情報を表示させる、
請求項1~13のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記評価部は、前記呼吸指示との関係として、前記被検体の現在の呼吸状態が、前記呼吸指示に要求される呼吸状態に対応するか否かを評価する、
請求項1~のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
前記評価部における評価に用いられるパラメータ及び閾値の少なくとも一方を、操作者の入力に応じて変更する変更部を更に備える、
請求項1~15のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数(Larmor frequency)のRF(Radio Frequency)パルスで磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR(Magnetic Resonance)信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置がある。
【0003】
肝臓など上腹部の撮像では、呼吸性の体動によりアーチファクト(以下、「呼吸アーチファクト」とも称する)が発生することがある。呼吸アーチファクトを軽減するため、被検体に息止めを要求し、息止めの間に撮像を行う息止め撮像と呼ばれる撮像方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-259604号公報
【文献】特開平9-187521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、呼吸アーチファクトを低減することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、取得部と、評価部と、実行部とを備える。取得部は、被検体の生体信号を取得する。評価部は、前記生体信号をリアルタイムに解析し、予め設定された呼吸指示と前記被検体の呼吸状態の関係を評価する。実行部は、前記評価部による評価結果に応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る評価機能の処理を説明するための図である。
図3A図3Aは、第1の実施形態に係る実行機能の処理を説明するための図である。
図3B図3Bは、第1の実施形態に係る実行機能の処理を説明するための図である。
図3C図3Cは、第1の実施形態に係る実行機能の処理を説明するための図である。
図3D図3Dは、第1の実施形態に係る実行機能の処理を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るMRI装置による処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態に係る音声ガイダンス再生処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、第1の実施形態の変形例2に係るMRI装置の構成を示す機能ブロック図である。
図7図7は、第1の実施形態の変形例3に係る実行機能の処理を説明するための図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るMRI装置による処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、第3の実施形態に係る実行機能の処理について説明するための図である。
図10図10は、第3の実施形態に係る実行機能の処理について説明するための図である。
図11図11は、第3の実施形態に係る実行機能の処理について説明するための図である。
図12図12は、第3の実施形態に係る実行機能の処理について説明するための図である。
図13図13は、第3の実施形態に係る実行機能の処理について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、各実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(以下、適宜「MRI装置」)を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1と、傾斜磁場コイル2と、傾斜磁場電源3と、送信コイル(RF(Radio Frequency)送信コイル)4と、送信回路5と、受信コイル(RF受信コイル)6と、受信回路7と、寝台8と、入力回路9と、ディスプレイ10と、記憶回路11と、処理回路12~15とを備える。また、MRI装置100は、呼吸センサ9aと、スピーカ10aとを備える。なお、MRI装置100に、図1に示す被検体S(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。
【0010】
静磁場磁石1は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、内周側に形成される撮像空間に一様な静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、永久磁石や超伝導磁石等によって実現される。
【0011】
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、静磁場磁石1の内周側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる3つのコイルを有する。ここで、x軸、y軸及びz軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、x軸の方向は、鉛直方向に設定され、y軸の方向は、水平方向に設定される。また、z軸の方向は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
【0012】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が有する3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、x軸、y軸及びz軸に対応する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。各軸は、例えば、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向に対応する。ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向に対応する軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0013】
各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
【0014】
送信コイル4は、送信回路5から出力されるRF(Radio Frequency)パルス信号に基づいて、被検体Sが配置される撮像空間にRF磁場を印加するRFコイルである。具体的には、送信コイル4は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内側に配置されている。そして、送信コイル4は、送信回路5から出力されるRFパルス信号に基づいて、当該送信コイル4の内周側の空間に形成された撮像空間にRF磁場を印加する。
【0015】
送信回路5は、ラーモア周波数に対応するRFパルス信号を送信コイル4に出力する。
【0016】
受信コイル6は、被検体Sから発せられるMR信号を受信するRFコイルである。例えば、受信コイル6は、送信コイル4の内周側に配置された被検体Sに装着され、送信コイル4によって印加されるRF磁場の影響で被検体Sから発せられるMR信号を受信する。そして、受信コイル6は、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、受信コイル6には、撮像対象の部位ごとに専用のコイルが用いられる。ここで、専用のコイルとは、例えば、頭部用の受信コイル、頚部用の受信コイル、肩用の受信コイル、胸部用の受信コイル、腹部用の受信コイル、下肢用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。
【0017】
受信回路7は、受信コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路13に出力する。
【0018】
なお、ここでは、送信コイル4がRF磁場を印加し、受信コイル6がMR信号を受信する場合の例を説明するが、各RFコイルの形態はこれに限られない。例えば、送信コイル4が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよいし、受信コイル6が、RF磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信コイル4が受信機能を有している場合は、受信回路7は、送信コイル4によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信コイル6が送信機能を有する場合は、送信回路5は、受信コイル6にもRFパルス信号を出力する。
【0019】
寝台8は、被検体Sが載置される天板8aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の内周側に形成される撮像空間へ天板8aを挿入する。例えば、寝台8は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0020】
入力回路9は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。例えば、入力回路9は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。入力回路9は、処理回路15に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路15へ出力する。
【0021】
呼吸センサ9aは、被検体Sの腹部に装着され、呼吸による被検体Sの周期的な動きを検出する。例えば、呼吸センサ9aは、呼吸による腹部の動きを検出し、検出した動きを電気信号に変換して呼吸信号(呼吸波形)として出力する。呼吸センサ9aから出力された呼吸信号は、処理回路15に送られ、被検体Sの呼吸状態の評価に用いられる。なお、被検体Sの呼吸信号を検出する技術としては、呼吸センサ9aに限らず、従来の如何なる技術であっても適用可能である。
【0022】
ディスプレイ10は、各種情報及び各種画像を表示する。例えば、ディスプレイ10は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。ディスプレイ10は、処理回路15に接続されており、処理回路15から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。また、本実施形態に係るディスプレイ10は、プロトコルの候補及び撮像条件の候補を表示することにより、プロトコルの候補及び撮像条件の候補をユーザに提示する。ディスプレイ10は、例えば、操作室に配置される。ディスプレイ10は、表示部の一例である。
【0023】
スピーカ10aは、被検体Sに対する呼吸指示の音声を出力する。例えば、スピーカ10aは、「吸って」や「吐いて」などの予め記録された音声データ(後述する音声データ11aに相当)の電気信号を受け付け、受け付けた電気信号を振動に変換して音声を出力する。
【0024】
記憶回路11は、各種データを記憶する。例えば、記憶回路11は、MR信号データや画像データを被検体Sごとに記憶する。例えば、記憶回路11は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。また、本実施形態に係る記憶回路11は、音声データ11aを記憶する。
【0025】
音声データ11aは、息止め撮像用の音声ガイダンスを行うためのデータである。例えば、音声データ11aは、「吸って、吐いて、止めてください」という音声が記録されたデータである。具体的には、「吸って」、「吐いて」、「止めてください」という3つの呼吸指示の音声が、一定の時間間隔で順番に記録されたデータである。つまり、この音声データ11aが再生されると、「吸って、吐いて、止めてください」という音声ガイダンスが流れることとなる。なお、音声データ11aは、上記の例に限定されるものではなく、任意の音声を記録可能である。また、「吸って、吐いて、止めてください」という一連の音声が一つのデータとして記録されていなくても良い。例えば、「吸って」、「吐いて」、「止めてください」という3つの音声が個別に記録されていても良い。
【0026】
処理回路12は、寝台制御機能12aを有する。処理回路12は、寝台8に接続されている。例えば、処理回路12は、プロセッサによって実現される。寝台制御機能12aは、制御用の電気信号を寝台8へ出力することで、寝台8の動作を制御する。例えば、寝台制御機能12aは、入力回路9を介して、天板8aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板8aを移動するように、寝台8が有する天板8aの駆動機構を動作させる。
【0027】
処理回路13は、シーケンス実行機能13aを有する。例えば、処理回路13は、プロセッサによって実現される。シーケンス実行機能13aは、各種のプロトコルを実行する。具体的には、シーケンス実行機能13aは、処理回路15から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、各種プロトコルを実行する。
【0028】
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すプロトコルを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が送信コイル4に供給するRFパルス電流の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
【0029】
また、シーケンス実行機能13aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路11に格納する。なお、シーケンス実行機能13aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路11に格納される。
【0030】
また、処理回路13は、受信回路7から出力されたIDを受信すると、受信したIDを記憶回路11に格納する。この際、処理回路13は、検査ごとにIDを記憶回路11に格納する。なお、検査とは、プロトコル群を実行する単位である。プロトコル群に含まれるプロトコルは、撮影を実行する単位である。
【0031】
処理回路14は、画像生成機能14aを有する。例えば、処理回路14は、プロセッサによって実現される。画像生成機能14aは、記憶回路11に格納されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能14aは、シーケンス実行機能13aによって記憶回路11に格納されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能14aは、生成した画像の画像データを記憶回路11に格納する。
【0032】
処理回路15は、制御機能15aと、取得機能15bと、評価機能15cと、実行機能15dとを有する。例えば、処理回路15は、プロセッサによって実現される。
【0033】
制御機能15aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、制御機能15aは、入力回路9を介して操作者からパルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力を受け付け、受け付けたパラメータに基づいてシーケンス実行データを生成する。そして、制御機能15aは、生成したシーケンス実行データを処理回路13に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、制御機能15aは、操作者から要求された画像の画像データを記憶回路11から読み出し、読み出した画像データをディスプレイ10に出力する。
【0034】
取得機能15b、評価機能15c、及び実行機能15dについては後述する。なお、制御機能15aは、制御部の一例である。取得機能15bは、取得部の一例である。評価機能15cは、評価部の一例である。実行機能15dは、実行部の一例である。
【0035】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、記憶回路11にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0036】
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の全体構成について説明した。
【0037】
ここで、息止め撮像において、例えば、MRI装置100は、「吸って、吐いて、止めてください」という音声ガイダンスを再生する。被検体Sは、この音声ガイダンスにしたがって、「吸う」、「吐く」、「止める」という3つの所作を順番に行うこととなる。
【0038】
しかしながら、MRI装置100から再生される音声ガイダンスの再生速度が被検体Sにとって早く、被検体Sが音声ガイダンスの指示に追従することができない場合がある。このような場合、被検体Sは、十分な時間息を止めていられないといった事態に陥る。また、被検体Sの症状(容体)、技量、知識などの何らかの都合により、操作者が意図した息止めや呼吸ができない場合もある。また、操作者が意図した息止め所作を行うことができて息止め撮像を開始したとしても、撮像完了まで息を止めることができず、撮像中に被検体Sが呼吸を再開してしまうこともある。
【0039】
このように、息止め撮像において、操作者の意図に沿った息止め所作が行われなかった場合には、呼吸アーチファクトが発生してしまい、撮像のやり直しが発生してしまうことがある。
【0040】
そこで、本実施形態に係るMRI装置100は、呼吸アーチファクトを低減するために、以下の各処理機能を実行する。
【0041】
取得機能15bは、被検体Sの生体信号を取得する。例えば、取得機能15bは、呼吸センサ9aから出力された呼吸信号を、生体信号として取得する。なお、被検体Sの呼吸信号を検出する技術としては、呼吸センサ9aに限らず、従来の如何なる技術であっても適用可能である。
【0042】
評価機能15cは、生体信号をリアルタイムに解析し、予め設定された呼吸指示と被検体Sの呼吸状態との関係を評価する。例えば、評価機能15cは、取得機能15bにより取得された呼吸信号をリアルタイムに解析することで、被検体Sの呼吸状態を推定する。そして、評価機能15cは、推定した呼吸状態と呼吸指示との関係を評価する。
【0043】
具体的には、評価機能15cは、呼吸指示との関係として、被検体Sの現在の呼吸状態が、予め設定された呼吸指示に要求される呼吸状態に対応するか否かを評価する。また、例えば、評価機能15cは、呼吸指示との関係として、予め設定された呼吸指示を被検体Sが適切に実行できたか否かを評価する。
【0044】
図2は、第1の実施形態に係る評価機能15cの処理を説明するための図である。図2には、息止め撮像において検出される被検体Sの呼吸信号の波形を例示する。図2の横軸は時間に対応し、縦軸は吸気相/呼気相に対応する。
【0045】
図2に示すように、評価機能15cは、息止め所作に含まれるそれぞれの所作に要求されるそれぞれの呼吸状態を順番に特定する。ここで、評価機能15cにより評価される呼吸指示は、予め設定されている。例えば、息止め撮像では、息止め所作として、「吸う」、「吐く」、「止める」という3つの所作を順番に行うことが決められている。このうち、「吸う」という所作を行うには、「呼気末期」であるのが適切である。また、「吐く」という所作を行うには、「吸気末期」であるのが適切である。また、息止め撮像用に息を「止める」という所作を行うには、「呼気末期」であるのが適切である。つまり、評価機能15cは、息止め所作のうち、「吸う」、「吐く」、「止める」という3つの所作の順番と、それぞれの所作に要求される呼吸状態「呼気末期」、「吸気末期」、及び「呼気末期」とを順番に特定する。
【0046】
ここで、「呼気末期」は、負の傾きが0になる、若しくは負の傾きが小さくなるという波形の特徴を有する。また、「吸気末期」は、正の傾きが0になる、若しくは正の傾きが小さくなるという特徴を有する。
【0047】
そこで、評価機能15cは、息止め撮像が開始されると、呼吸状態の特徴を用いて、被検体Sの現在の呼吸状態が特定した呼吸状態それぞれに該当するか否かを順番に評価する。例えば、評価機能15cは、息止め所作が開始される前の自然呼吸下の呼吸信号の波形に基づいて、「呼気末期」であるか否かを評価する。図2に示す例では、評価機能15cは、期間T1において「呼気末期」であると評価する。続いて、評価機能15cは、息止め所作時の呼吸信号の波形に基づいて、「吸気末期」であるか否かを評価する。図2に示す例では、評価機能15cは、期間T2において「吸気末期」であると評価する。そして、評価機能15cは、息止め所作時の呼吸信号の波形に基づいて、「呼気末期」であるか否かを評価する。図2に示す例では、評価機能15cは、期間T3において「呼気末期」であると評価する。
【0048】
また、評価機能15cは、被検体Sが適切に「息止め」をできているか否かを評価する。「息止め」は、呼吸信号が平たん(振幅の変化量が閾値以下)になるという特徴を有する。この場合、評価機能15cは、息止め所作時の呼吸信号の波形に基づいて、「息止め」が適切であるか否かを評価する。図2に示す例では、評価機能15cは、期間T4において「息止め」であると評価する。
【0049】
このように、評価機能15cは、被検体Sの呼吸信号の波形に基づいて、被検体Sの呼吸状態と予め設定された呼吸状態との関係を評価する。そして、評価機能15cは、評価結果を実行機能15dに出力する。
【0050】
なお、図2に図示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、評価機能15cが評価する呼吸状態は、「呼気末期」及び「吸気末期」に限定されるものではない。例えば、評価機能15cは、「呼吸の再開」を評価してもよい。「呼吸の再開」は、「息止め」状態から振幅が大きくなるという特徴を有する。「呼吸量」、「応答速度」、及び「呼吸速度」などを更に加味して呼吸状態を評価しても良い。「呼吸量」は、呼吸信号の振幅に対応し、任意の閾値以上又は以下になることにより検出される。また、「応答速度」は、音声指示を再生してから被検体Sの呼吸信号に変化が出るまでの時間に対応する。また、「呼吸速度」は、呼吸信号の周期に対応し、「吸って」、「吐いて」、「止めてください」という3つの音声指示を再生するタイミングの調整に用いられる。また、例えば、評価機能15cは、呼吸信号の波形形状を用いて評価してもよい。この場合、操作者が意図する波形形状(Sine波形など)を登録しておき、評価機能15cは、登録された波形形状と現在の呼吸信号の波形形状との類似度に応じて評価することができる。
【0051】
また、図2では、縦軸の上方が吸気相に対応し、縦軸の下方が呼気相に対応する場合を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、呼吸を計測するためのセンサや計測ロジックによっては図2の縦軸が逆転する場合も考えられる。この場合、呼吸周期に対応する波形周期が逆転するため、上述した「呼気末期」及び「吸気末期」の特徴は真逆の周期となる。つまり、この場合、「呼気末期」は、正の傾きが0になる、若しくは正の傾きが小さくなるという特徴を有し、「吸気末期」は、負の傾きが0になる、若しくは負の傾きが小さくなるという波形の特徴を有する。
【0052】
実行機能15dは、評価機能15cによる評価結果に応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する。例えば、実行機能15dは、息止め撮像に関連する実行条件を調整する。また、例えば、実行機能15dは、実行条件の調整に関連する情報、又は、評価結果に関連する情報を表示させる。
【0053】
具体例を挙げると、実行機能15dは、息止め撮像に関連する音声ガイダンス再生処理を制御する。つまり、実行機能15dは、「吸って、吐いて、止めてください」という音声が記録された音声データ11aの再生において、「吸って」、「吐いて」、「止めてください」という3つの呼吸指示の音声が適切なタイミングで再生されるように制御する。なお、呼吸指示とは、被検体Sに対して息止め所作を指示するための音声を表す。
【0054】
図3Aから図3Dは、第1の実施形態に係る実行機能15dの処理を説明するための図である。図3A図3B図3C、及び図3Dは、息止め撮像においてリアルタイムに検出される被検体Sの呼吸信号の経時的変化を順番に図示したものである。具体的には、図3Aには、時刻t1において取得済みの呼吸信号の変化を例示する。図3Bには、時刻t2において取得済みの呼吸信号の変化を例示する。図3Cには、時刻t3において取得済みの呼吸信号の変化を例示する。図3Dには、時刻t4において取得済みの呼吸信号の変化を例示する。図3Aから図3Dの横軸は時間に対応し、縦軸は吸気相/呼気相に対応する。なお、時刻t1は、図2の期間T1に含まれる一時点である。時刻t2は、図2の期間T2に含まれる一時点である。時刻t3は、図2の期間T3に含まれる一時点である。時刻t4は、図2の期間T4に含まれる一時点である。
【0055】
図3Aから図3Dに示すように、実行機能15dは、息止め撮像が開始されると、評価機能15cによる評価結果を順次受け付ける。そして、実行機能15dは、受け付けた評価結果に応じて、音声データ11aの再生を制御する。
【0056】
例えば、時刻t1において、実行機能15dは、現在の呼吸状態が「呼気末期」である旨の評価結果を受け付ける(図3A)。この評価結果を受け付けたタイミングで、実行機能15dは、「吸って」という音声をスピーカ10aから出力させる。続いて、時刻t2において、実行機能15dは、現在の呼吸状態が「吸気末期」である旨の評価結果を受け付ける(図3B)。この評価結果を受け付けたタイミングで、実行機能15dは、「吐いて」という音声をスピーカ10aから出力させる。そして、時刻t3において、実行機能15dは、現在の呼吸状態が「呼気末期」である旨の評価結果を受け付ける(図3C)。この評価結果を受け付けたタイミングで、実行機能15dは、「止めてください」という音声をスピーカ10aから出力させる。その後、時刻t4において、実行機能15dは、「息止め」が適切である旨の評価結果を受け付ける(図3D)。この評価結果を受け付けると、実行機能15dは、息止め撮像の開始要求をシーケンス実行機能13aへ出力する。これにより、シーケンス実行機能13aは、息止め撮像を開始する。
【0057】
このように、実行機能15dは、評価機能15cによる評価結果に応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する。具体的には、実行機能15dは、実行条件として、息止め撮像に関連する音声の出力タイミングを調整する。また、実行機能15dは、実行条件として、息止め撮像の開始タイミングを調整する。
【0058】
なお、図3Aから図3Dに図示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、実行機能15dは、「止めてください」という音声が出力されてから一定時間(例えば、息止め撮像の所要時間)が経過した後に、「楽にしてください」という音声を出力させてもよい。また、実行機能15dは、「息止め」が適切に行われている場合には、「息止め」が適切に行われている旨のメッセージを、操作者及び被検体Sに通知してもよい。
【0059】
また、例えば、実行機能15dは、「止めてください」という音声が出力されてから一定時間が経過する前に「呼吸の再開」が検出された場合には、呼吸が再開された旨を示すメッセージをディスプレイ10上に表示させてもよい。また、例えば、実行機能15dは、評価機能15cによる評価結果(例えば、応答速度等)を操作者に通知してもよい。この通知は、音声、メッセージ表示、警報音など、任意の出力形態にて出力可能である。
【0060】
図4は、第1の実施形態に係るMRI装置100による処理手順を示すフローチャートである。図5は、第1の実施形態に係る音声ガイダンス再生処理の処理手順を示すフローチャートである。図5に示す処理手順は、図4に示すステップS105の処理の処理手順に対応する。
【0061】
ステップS101において、制御機能15aは、撮像条件を設定する。例えば、制御機能15aは、操作者による撮像条件の入力をGUI(Graphical User Interface)上で受け付け、受け付けた入力にしたがってシーケンス実行データに定義されたプロトコルの撮像条件を設定する。
【0062】
ステップS102において、寝台制御機能12aは、被検体Sが載置された天板8aを移動させる。具体的には、寝台制御機能12aは、撮像条件により設定された撮像部位が磁場中心に位置付けられるように、天板8aを撮像空間へ挿入する。
【0063】
ステップS103において、シーケンス実行機能13aは、準備スキャンを実行する。例えば、準備スキャンには、例えば、各コイルエレメント(若しくはチャネル)の配列方向の感度を示すプロファイルデータを収集するためのスキャン、各コイルエレメント(若しくはチャネル)の感度分布を示す感度マップを収集するためのスキャン、RFパルスの中心周波数を求めるためのスペクトラムデータを収集するためのスキャン等がある。
【0064】
ステップS104において、取得機能15bは、呼吸信号の取得を開始する。例えば、取得機能15bは、呼吸センサ9aから出力される呼吸信号の取得を開始する。呼吸信号の取得は、基本的にはMR信号データの収集が完了するまで行われるが、呼吸信号が不要となった時点で取得を中断(終了)してもよい。
【0065】
ステップS105において、評価機能15c及び実行機能15dは、音声ガイダンス再生処理を実行する。ここで、図5を参照して、音声ガイダンス再生処理の処理手順を説明する。
【0066】
ステップS201において、評価機能15cは、息止め所作のうち1つ目の所作に適した呼吸状態を特定する。例えば、評価機能15cは、「吸う」という所作に適した呼吸状態として「呼気末期」を特定する。
【0067】
ステップS202において、評価機能15cは、現在の被検体Sの呼吸状態が、特定した呼吸状態であるか否かを評価する。例えば、評価機能15cは、取得機能15bにより取得される現在の呼吸状態が、「吸う」という所作に適した「呼気末期」であるか否かを評価する。具体的には、評価機能15cは、現在の呼吸波形が「呼気末期」の特徴を有するか否かに基づいて、「呼気末期」であるか否かを評価する。評価機能15cは、現在の呼吸状態が「呼気末期」であると評価すると、評価結果を実行機能15dへ出力する。
【0068】
ステップS203において、実行機能15dは、評価結果に応じて、所作に対応する音声を出力する。例えば、実行機能15dは、評価機能15cにより現在の呼吸状態が「呼気末期」である旨の評価結果を受け付けると、「吸う」という所作に対応する音声として、「吸って」という音声をスピーカ10aから出力させる。
【0069】
ステップS204において、処理回路15は、息止め所作のうち次の所作があるか否かを判定する。例えば、処理回路15は、1つ目の所作「吸う」が完了した場合には、次の所作として「吐く」が存在すると判定し(ステップS204肯定)、ステップS205の処理に移行する。また、例えば、処理回路15は、2つ目の所作「吐く」が完了した場合には、次の所作として「止める」が存在すると判定し(ステップS204肯定)、ステップS205の処理に移行する。
【0070】
ステップS205において、評価機能15cは、次の所作に適した呼吸状態を特定する。例えば、評価機能15cは、次の所作が「吐く」であれば、「吐く」に適した呼吸状態として「吸気末期」を特定する。また、例えば、評価機能15cは、次の所作が「止める」であれば、「止める」に適した呼吸状態として「呼気末期」を特定する。そして、処理回路15は、ステップS202の処理へ移行する。この結果、次の所作が存在しないと判定されるまで(ステップS204否定)、処理回路15は、ステップS202~ステップS205の処理を繰り返し実行する。
【0071】
次の所作が存在しないと判定されると(ステップS204否定)、ステップS206において、評価機能15cは、「息止め」が適切か否かを評価する。例えば、評価機能15cは、現在の呼吸波形が「息止め」の特徴を有するか否かに基づいて、「息止め」が適切か否かを評価する。「息止め」が適切である場合には(ステップS206肯定)、評価機能15cは、「息止め」が適切である旨の評価結果を実行機能15dへ出力し、ステップS207へ移行する。一方、「息止め」が適切でない場合には(ステップS206否定)、処理回路15は、ステップS201へ移行する。つまり、処理回路15は、息止め所作の音声ガイダンスを最初から再度実行する。
【0072】
ステップS207において、実行機能15dは、「息止め」が適切である旨の評価結果を受け付けると、息止め撮像の開始要求を出力する。例えば、実行機能15dは、息止め撮像の開始要求をシーケンス実行機能13aへ出力する。
【0073】
図4の説明に戻る。ステップS106において、シーケンス実行機能13aは、息止め撮像を開始する。例えば、シーケンス実行機能13aは、実行機能15dから出力される息止め撮像の開始要求を受け付けたタイミングで、予め設定された息止め撮像を開始する。
【0074】
ステップS107において、画像生成機能14aは、画像を生成する。例えば、画像生成機能14aは、息止め撮像により収集されたMR信号データに基づいて、画像を生成する。
【0075】
ステップS108において、制御機能15aは、画像を表示させる。例えば、制御機能15aは、画像生成機能14aにより生成された画像を、ディスプレイ10に表示させる。
【0076】
なお、図4及び図5に図示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図4及び図5に図示した処理手順は、上記の順序に限定されるものではない。例えば、呼吸信号の取得を開始するタイミング(ステップS104)は、音声ガイダンス再生処理が開始される前の任意のタイミングで実行可能である。
【0077】
また、例えば、上記の例では、息止め撮像を1回行う場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、息止め撮像を複数回行う場合には、それぞれの息止め撮像の前段にて実行されるそれぞれの音声ガイダンス再生処理に対して、実施形態を適用可能である。
【0078】
また、音声ガイダンスを最初から再度実行する回数には、上限を設けるのが好適である。これは、音声ガイダンスの実行回数が増えるほど検査時間が延長し、被検体Sの負荷が増加するためである。例えば、音声ガイダンスの実行回数が上限(例えば、3回)に到達した場合には、息止め撮像に関連する実行条件を調整するのが好適である。例えば、実行機能15dは、息止め撮像を中止したり、予め指定された機能やプロトコルを実行したりする。この場合、実行条件の調整内容を予め登録しておくことで、実行機能15dは、登録済みの調整内容を自動的に実行することができる。なお、上限となる回数は、操作者が任意に変更可能である。
【0079】
上述してきたように、第1の実施形態に係るMRI装置100において、取得機能15bは、被検体Sの呼吸信号を取得する。そして、評価機能15cは、呼吸信号をリアルタイムに解析し、予め設定された呼吸指示との関係を評価する。そして、実行機能15dは、評価機能15cによる評価結果に応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する。これによれば、第1の実施形態に係るMRI装置100は、呼吸アーチファクトを低減することができる。
【0080】
例えば、MRI装置100は、上記の処理により、息止め撮像に関する音声ガイダンスを、被検体Sの呼吸状態に応じた適切なタイミングに調整することができる。この結果、被検体Sは、操作者が意図した息止め所作を平易かつ確実に行うことが可能となる。このため、MRI装置100は、操作者が意図した息止め所作を被検体Sが行えないことに起因する呼吸アーチファクトを低減することができる。これに伴い、MRI装置100は、息止め撮像が再撮像となる確率を低減させることができ、スループットを向上させることができる。
【0081】
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態では、被検体Sから取得される呼吸信号のリアルタイム解析を行う場合を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、他の生体信号のリアルタイム解析を組み合わせることも可能である。
【0082】
例えば、被検体Sの心電信号を取得可能な場合には、評価機能15cは、心電信号のリアルタイム解析を行う。一例としては、評価機能15cは、心電信号を解析し、心拍数(又は脈波)が閾値以上であるか否かに応じて、被検体Sの呼吸状態が安静であるか否かを評価する。例えば、息止め撮像により息を長く止めていると、苦しくなっていくに従って心拍数が上昇することが知られている。このため、息止め撮像を複数回実行する場合には、被検体Sの呼吸状態が安静であるか否かを確認した上で、2回目(若しくは3回目以降)の息止め撮像を行うのが好適である。そこで、評価機能15cは、被検体Sの心拍数が閾値未満である場合に、被検体Sの呼吸状態が安静であると評価する。そして、評価機能15cは、評価結果を実行機能15dに出力する。実行機能15dは、例えば、被検体Sの状態が安定している場合に2回目(若しくは3回目以降)の息止め撮像を実行する(若しくは、息止め撮像の実行を許可する)など、評価結果に応じた処理を実行する。
【0083】
なお、心電信号からの心拍数の計測は、例えば、Impulse波形の検出により実行可能である。また、他の生体信号としては、心電信号に限らず、従来の如何なる技術により取得可能な生体信号であっても解析対象として適用可能である。例えば、被検体Sの息が上がっていると脈波の不調律が認められるので、評価機能15cは、「脈波の不調律が認められない」という特徴を利用して被検体Sの状態が安定していることを評価しても良い。
【0084】
なお、上述した第1の実施形態の変形例1に係る処理では、必ずしも呼吸信号を用いなくても良い。つまり、取得機能15aは、被検体Sの生体信号として、心電信号を取得する。そして、評価機能15bは、心電信号をリアルタイムに解析し、予め設定された呼吸指示と被検体の呼吸状態との関係を評価する。例えば、評価機能15bは、上述した第1の実施形態の変形例1に係る処理により、被検体の呼吸状態が安静であるか否かを評価する。そして、実行機能15dは、評価機能15bによる評価結果に応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する。
【0085】
また、上述した第1の実施形態の変形例1に係る処理において、呼吸指示(例えば、「吸って」、「吐いて」、「止めてください」という3つの音声指示とタイミング)が予め設定されている必要はない。つまり、評価機能15bは、呼吸指示が予め設定されていなくとも、心電信号をリアルタイムに解析し、被検体Sの呼吸状態が安静であるか否かを評価することが可能である。
【0086】
(第1の実施形態の変形例2)
また、例えば、上記の実施形態にて説明したパラメータ及び閾値は、操作者の任意に変更可能である。なお、パラメータ又は閾値の変更としては、パラメータ又は閾値の追加や削除も含むものとする。
【0087】
図6は、第1の実施形態の変形例2に係るMRI装置100の構成を示す機能ブロック図である。第1の実施形態の変形例2に係るMRI装置100は、図1に例示したMRI装置100と同様の構成を備え、処理回路15がパラメータ管理機能15eを更に備える点が相違する。そこで、図1において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0088】
パラメータ管理機能15eは、評価機能15cにおける評価に用いられるパラメータ及び閾値の少なくとも一方を、操作者の入力に応じて変更する。例えば、操作者は、「呼気末期」を評価するためのパラメータを、呼吸信号の「傾き」から「振幅」に変更する旨の入力を行う。この変更を受け付けると、パラメータ管理機能15eは、「呼気末期」を評価するためのパラメータを、呼吸信号の「傾き」から「振幅」に変更する。この場合、例えば、評価機能15cは、呼吸信号の振幅が閾値以下となった場合に、「呼気末期」であると評価する。
【0089】
また、例えば、操作者は、上述した各種のパラメータに用いられる閾値を任意の値に変更する旨の入力を行う。この変更を受け付けると、パラメータ管理機能15eは、各種のパラメータに用いられる閾値を、操作者により入力された値に変更する。
【0090】
また、例えば、パラメータ管理機能15eは、パラメータ又は閾値の変更を、被検体Sの単位、年齢単位、性別単位、部位単位、プロトコル単位、カバレージ単位、時相単位、その他の任意の単位で行うことができる。なお、カバレージとは、撮像対象である全スライスを、一度に収集可能な任意の枚数ごとに分割した単位である。
【0091】
このように、パラメータ管理機能15eは、評価機能15cにおける評価に用いられるパラメータ及び閾値の少なくとも一方を、操作者の入力に応じて変更する。また、パラメータ管理機能15eは、評価対象となる所作の種類やそのパラメータ、閾値についても、操作者の入力に応じて適宜変更可能である。
【0092】
(第1の実施形態の変形例3)
また、上述した音声ガイダンスに限定されるものではない。例えば、実行機能15dは、撮像前に、「息止め撮像を開始します」の音声を出力させてもよい。
【0093】
図7は、第1の実施形態の変形例3に係る実行機能15dの処理を説明するための図である。図7には、息止め撮像において検出される被検体Sの呼吸信号の波形を例示する。図7の横軸は時間に対応し、縦軸は吸気相/呼気相に対応する。
【0094】
図7に示すように、時刻t0において、実行機能15dは、「息止め撮像を開始します」という音声を出力する。なお、この音声は、例えば、評価機能15cにより自然呼吸下の正常な呼吸信号が検出された場合に出力されても良いし、息止め撮像が開始される一定時間前に自動的に出力されてもよい。
【0095】
(第1の実施形態の変形例4)
また、例えば、実行機能15dは、音声ガイダンスのやり直しにおいて、各回の音声ガイダンスの内容を調整してもよい。
【0096】
例えば、実行機能15dは、出力される音声の音量を調整する。具体的には、実行機能15dは、「息止め」が適切でない場合には、出力される音声の音量を大きくする。
【0097】
また、例えば、実行機能15dは、出力される音声の周波数を調整する。具体的には、実行機能15dは、「吸って、吐いて、止めてください」という音声の性別を変更する。また、例えば、実行機能15dは、出力される音声データを、予め用意していた別の音声データに切り替える。具体的には、実行機能15dは、「吸って、吐いて、止めてください」という内容は同一であるが、話し手の話し方(丁寧語、方言など、)が異なる音声に切り替える。これにより、音声ガイダンスの聞き取りやすさを改善したり、眠っている被検体Sを覚醒させたりする効果が期待される。
【0098】
また、例えば、実行機能15dは、評価機能15cによる評価結果に応じて、出力される音声の内容を調整する。例えば、実行機能15dは、予め設定された呼吸指示に対して呼吸が浅かったと評価される場合には(呼吸信号の振幅が小さい場合など)、「次はもっと深く呼吸をしてください」という音声をスピーカ10aから出力させる。このように、実行機能15dは、予め設定した呼吸指示に対する評価結果に応じて、呼吸の改善方法を被検体Sに通知することができる。
【0099】
また、例えば、評価機能15cによる評価結果において、被検体Sが眠っていることが疑われてやり直しが必要な場合には、実行機能15dは、被検体Sを覚醒させるために、大きな撮像音が鳴るプロトコル(例えば、EPI等)を自動的に挿入しても良い。
【0100】
また、例えば、評価機能15cによる評価結果において、一定回数以上やり直しても操作者の意図した所作にならない場合がある。一例としては、呼吸指示に従えないために、一定回数以上やり直しても操作者の意図した所作にならない場合がある。この場合、実行機能15dは、実行予定の息止め撮像のプロトコルを、息止めを必要としないプロトコルに変更しても良い。息止めを必要としないプロトコルとしては、例えば、RMC撮像や同期撮像などが適用可能である。なお、プロトコル群の調整については、後の実施形態にて詳述する。
【0101】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、息止め撮像の音声ガイダンス時の呼吸信号をリアルタイムに解析し、音声ガイダンスや息止め撮像の実行条件を調整する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、音声ガイダンスの練習を行う場合には、練習時の呼吸信号を解析し、その結果に応じて実行条件を調整することも可能である。
【0102】
第2の実施形態に係るMRI装置100は、図1に例示したMRI装置100と同様の構成を備え、処理回路15が音声ガイダンスの練習に関する処理を実行する点が相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については説明を省略する。
【0103】
図8は、第2の実施形態に係るMRI装置による処理手順を示すフローチャートである。なお、図8に示すステップS101~ステップS104の処理は、図4に示したステップS101~ステップS104の処理と同様であるので、説明を省略する。また、図8に示すステップS106~ステップS108の処理は、図4に示したステップS106~ステップS108の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0104】
ステップS305において、実行機能15dは、練習用音声ガイダンスを再生する。例えば、実行機能15dは、息止め撮像に用いられる音声ガイダンス用の音声データ11aを、練習用音声ガイダンスとして再生する。この練習用音声ガイダンスでは、例えば、「吸って」、「吐いて」、「止めてください」の3つの呼吸指示が一定の時間間隔で音声出力される。このとき、取得機能15bは、息止め撮像における呼吸指示の練習における呼吸信号を取得する。
【0105】
ステップS306において、実行機能15dは、音声ガイダンスを調整する。例えば、評価機能15cは、練習における呼吸信号を解析することで、予め設定された呼吸指示と練習における被検体Sの呼吸状態との関係を評価する。例えば、評価機能15cは、呼吸指示に対する被検体Sの応答時間を評価する。ここで、練習用音声ガイダンスに要求される応答時間と比較して、被検体Sの応答時間が遅れていると評価される場合には、実行機能15dは、次のステップS307において出力される呼吸指示の出力タイミングを、遅れていた時間の分だけ早めるように調整する。なお、被検体Sの応答時間が遅れていない場合には、実行機能15dは、呼吸指示の出力タイミングの調整を行わない。
【0106】
ステップS307において、実行機能15dは、音声ガイダンスを再生する。例えば、実行機能15dは、ステップS306において調整された出力タイミングで呼吸指示を音声出力する。なお、実行機能15dは、ステップS306において呼吸指示の出力タイミングの調整が行われなかった場合には、練習用音声ガイダンスと同じタイミングで呼吸指示を音声出力する。
【0107】
なお、図8に図示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図8に図示した処理手順は、上記の順序に限定されるものではない。例えば、呼吸信号の取得を開始するタイミング(ステップS304)は、練習用音声ガイダンスが再生される前の任意のタイミングで実行可能である。
【0108】
また、図8の例では、実行機能15dは、実行条件として、呼吸指示の出力タイミングを調整する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、実行機能15dは、実行予定の息止め撮像のプロトコル又はプロトコルの撮像条件を調整してもよい。実行機能15dは、息止めを必要としないプロトコルに変更しても良い。息止めを必要としないプロトコルとしては、例えば、RMC撮像や同期撮像などが適用可能である。なお、プロトコルの変更については、後の実施形態にて詳述する。
【0109】
このように、第2の実施形態に係るMRI装置100において、取得機能15bは、息止め撮像における呼吸指示の練習における呼吸信号を取得する。評価機能15cは、練習における呼吸信号を解析することで、予め設定された呼吸指示と練習の結果との関係を評価する。そして、実行機能15dは、呼吸指示と練習の結果との関係に基づいて、息止め撮像に関連する実行条件を調整する。これによれば、第2の実施形態に係るMRI装置100は、操作者が意図した息止めを被検体Sが実行可能であるか否かを本撮像(息止め撮像)前に評価することができる。
【0110】
なお、第2の実施形態では、息止め撮像に関連する実行条件として、呼吸指示の出力タイミングやプロトコル群を調整する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、実行機能15dは、評価機能15cによる評価結果を操作者に提示するだけでも良い。これにより、操作者は、本撮像(息止め撮像)前に何らかの対策を採ることができる。例えば、操作者は、息止め撮像に関連する実行条件を用手的に調節することが可能である。
【0111】
また、第2の実施形態では、練習における被検体Sの呼吸状態の評価結果を、本撮像の音声ガイダンスに反映させ、本撮像を実行するまでの一連の処理を説明したが、この一連の処理は必ずしも実行されなくてもよい。例えば、実行機能15dは、必ずしも本撮像を実行しなくてもよい。具体的には、練習の結果、呼吸指示に従った呼吸を被検体Sが実施できていないと評価された場合には、実行機能15dは、練習を繰り返し実行してもよい。また、実行機能15dは、評価機能15cによる練習の評価結果を操作者に提示するだけでも良い。
【0112】
(第3の実施形態)
上述した実施形態では、実行条件として、息止め撮像に関連する音声の出力タイミングを調整する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、MRI装置100は、実行条件として、息止め撮像のプロトコル群に関する調整を行うことも可能である。
【0113】
第3の実施形態に係るMRI装置100は、図1に例示したMRI装置100と同様の構成を備え、処理回路15が息止め撮像のプロトコル群に関する調整を行う点が相違する。そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については説明を省略する。
【0114】
第3の実施形態に係る実行機能15dは、実行条件として、息止め撮像のプロトコル群に関する調整を行う。プロトコル群に関する調整としては、以下の5つのパターン(第1~第5のパターン)が挙げられる。以下、図9から図13を用いて、プロトコル群に関する調整の5つのパターンについて順番に説明する。
【0115】
図9から図13は、第3の実施形態に係る実行機能15dの処理について説明するための図である。図9から図13には、息止め撮像に関連するプロトコル群の進捗と、呼吸波形を表示するモニタの遷移との関係を例示する。なお、図9から図13において、プロトコル群は、「Locator等」、「息止めA」、「息止めB」、「息止め無しA」、「息止め無しB」という5つのプロトコルを含む。なお、「Locator等」は、位置決め用画像の撮像を行うためのプロトコルである。また、「息止めA」及び「息止めB」は、息止め撮像のプロトコルである。また、「息止め無しA」及び「息止め無しB」は、息止め不要のプロトコルである。なお、図9から図13に図示したプロトコル群の名称は、あくまで説明の便宜上の名称であり、実際には設計者や操作者により任意の名称が設定可能である。
【0116】
まず、第1のパターンについて説明する。第1のパターンは、実行機能15dは、プロトコル群に関する調整として、プロトコル群の間に休憩時間を挿入する方法である。図9の上段では、「息止めA」の撮像が行われている。「息止めA」の撮像が完了すると、「楽にしてください」という音声がスピーカ10aから出力され、「息止めA」が完了する(図9の中段)。ここで、図9の中段に示すように、「息止めA」が完了した時点では、被検体Sが息止め所作により疲労しており、被検体Sの安静が確保されていない。そこで、実行機能15dは、被検体Sの安静が確保されるまで、プロトコル群の間に休憩時間を挿入する。例えば、評価機能15cは、呼吸信号をリアルタイムに解析し、被検体の呼吸状態が安静であるか否かを評価する。ここで、「安静」は、例えば、安静時の代表的な呼吸波形の形状により評価される。そして、実行機能15dは、被検体の呼吸状態が安静ではないと評価された場合に、予め設定されたプロトコル群の間に待機時間を挿入する処理を実行する。この結果、図9の下段に示すように、実行機能15dは、次のプロトコルである「息止めB」の実行を開始せず、MRI装置100を待機状態にする。そして、実行機能15dは、被検体の呼吸状態が安静であると評価された場合に、休憩時間(待機時間)を終了させ、「息止めB」の撮像を開始する。
【0117】
次に、第2のパターンについて説明する。第2のパターンは、実行機能15dは、プロトコル群に関する調整として、プロトコル群に含まれる複数のプロトコルの順序を入れ替える方法である。なお、図10の上段及び中段は、図9の上段及び中段と同じであるので、説明を省略する。図10の下段に示すように、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静ではないと評価された場合に、プロトコル群に含まれる複数のプロトコルの順序を入れ替える。例えば、図10において、「息止めA」の次に実行されるプロトコルは、「息止めB」である。ここで、被検体Sの呼吸状態が安静ではないと評価された場合には、実行機能15dは、未実行のプロトコルの中から、息止め不要のプロトコルを検索する。図10では、「息止め無しA」及び「息止め無しB」が検索される。そこで、実行機能15dは、例えば、「息止めB」と「息止め無しA」との順序を入れ替え、「息止め無しA」の撮像を先に実行する。この場合、実行機能15dは、「患者安静のため、プロトコルを入れ替えます。」というメッセージを操作者に提示するのが好適である。これにより、被検体Sは、「息止め無しA」の撮像中に安静を確保することができる。
【0118】
次に、第3のパターンについて説明する。第3のパターンは、実行機能15dは、プロトコル群に関する調整として、プロトコル群の間に休憩用のプロトコルを挿入する方法である。なお、図11の上段及び中段は、図9の上段及び中段と同じであるので、説明を省略する。図11の下段に示すように、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静ではないと評価された場合に、プロトコル群の間に休憩用のプロトコルを挿入する。例えば、図11において、「息止めA」の次に実行されるプロトコルは、「息止めB」である。ここで、被検体Sの呼吸状態が安静ではないと評価された場合には、実行機能15dは、未実行のプロトコルに含まれるプレスキャンを先に実行する。そこで、実行機能15dは、例えば、「息止めB」の前に「プレスキャン」を挿入する。この場合、実行機能15dは、「患者安静を確認するまで残りの撮像のプレスキャンを行います」というメッセージを操作者に提示するのが好適である。これにより、被検体Sは、「プレスキャン」の撮像中に安静を確保することができる。なお、「プレスキャン」に限らず、任意の休憩用のプロトコルを挿入可能である。なお、ここで言う「プレスキャン」とは、診断用画像を撮像するための「本撮像(本スキャン)」に先立って行われる準備的な撮像の総称である。
【0119】
次に、第4のパターンについて説明する。第4のパターンは、実行機能15dは、プロトコル群に関する調整として、息止め撮像のプロトコルを息止め不要のプロトコルに変更する方法である。なお、図12の上段及び中段は、図9の上段及び中段と同じであるので、説明を省略する。図12の下段に示すように、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静ではないと評価された場合に、息止め撮像のプロトコルを、息止め不要のプロトコルに変更する。例えば、図12において、「息止めA」の次に実行されるプロトコルは、「息止めB」である。ここで、被検体Sの呼吸状態が安静ではないと評価された場合には、実行機能15dは、息止め撮像のプロトコルを息止め不要のプロトコルに変更する。例えば、実行機能15dは、「息止めB」を「RMC」に変更する。この場合、実行機能15dは、「息止め困難と判断したので、次の撮像を息止め不要な撮像に変更します」というメッセージを操作者に提示するのが好適である。これにより、被検体Sは、息止めを行うことなく撮像を継続することができる。
【0120】
次に、第5のパターンについて説明する。第5のパターンは、実行機能15dは、プロトコル群に関する調整として、息止め撮像のプロトコルの撮像条件を変更する方法である。なお、図13の上段及び中段は、図9の上段及び中段と同じであるので、説明を省略する。図13の下段に示すように、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静ではないと評価された場合に、息止め撮像のプロトコルの撮像条件を変更する。例えば、図13において、「息止めA」の次に実行されるプロトコルは、「息止めB」である。ここで、被検体Sの呼吸状態が安静ではないと評価された場合には、実行機能15dは、息止め撮像のプロトコルの撮像条件を変更する。例えば、実行機能15dは、「息止めB」のTR(Repetition Time)を「2000」から「100」に変更する。この場合、実行機能15dは、「短時間の息止めになる撮像条件に変更します」というメッセージを操作者に提示するのが好適である。これにより、被検体Sは、疲労していても息止め可能な程度の短時間で撮像を行うことができる。なお、撮像時間が短くなるように撮像条件を変更することに限らず、例えば、平易な息止め所作で撮像できるように撮像条件を変更することも可能である。
【0121】
このように、実行機能15dは、実行条件として、息止め撮像のプロトコル群に関する調整を行う。
【0122】
なお、第3の実施形態にて説明した第1~第5のパターンは、被検体Sの呼吸状態が安静であるか否かを評価機能15cが評価した評価結果に応じて実行されるのが好適である。例えば、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静であるか否かに応じて、息止め撮像に関連する処理を実行する。そして、例えば、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静でない場合に、前記息止め撮像のプロトコル群の間に休憩時間を挿入する。また、例えば、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静でない場合に、息止め撮像のプロトコル群に含まれる複数のプロトコルの順序を入れ替える。また、例えば、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静でない場合に、息止め撮像のプロトコル群の間に休憩用のプロトコルを挿入する。また、例えば、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静でない場合に、息止め撮像のプロトコルを、息止め不要のプロトコルに変更する。また、例えば、実行機能15dは、被検体Sの呼吸状態が安静でない場合に、息止め撮像のプロトコルの撮像条件を変更する。
【0123】
なお、上述した内容はあくまで一例であり、上述した内容に限定されるものではない。例えば、プロトコル群に複数の息止め撮像用のプロトコルが含まれる場合には、実行機能15dは、息止め時間が長いプロトコルから先に実行するように、プロトコルの順序を設定する。これにより、実行機能15dは、被検体Sの状態が低下(例えば、疲労の蓄積など)する前に息止め時間が長いプロトコルを実行できるので、結果として、プロトコル群全体の撮像を適切に行うことができる。
【0124】
また、例えば、評価機能15cによる評価結果において、被検体Sが眠っていたり、呆けていたりすることが疑われてやり直しが必要となる場合がある。このような場合には、例えば、実行機能15dは、大きな撮像音が鳴るプロトコル(例えば、EPI等)を自動的に挿入しても良い。これにより、実行機能15dは、被検体Sが眠っていた場合には覚醒させることができ、また、被検体Sが呆けていた場合には注意喚起を行うことができる。
【0125】
また、例えば、実行機能15dは、呼吸同期からECG同期による撮像に変更するなど、同期条件を変更することも可能である。
【0126】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0127】
(被検体Sの息止めが中断した場合の処理)
例えば、評価機能15cは、息止め撮像中に呼吸が再開したか否かを評価することで、息止めが中断したことを検出可能である。なお、「呼吸の再開」は、「息止め」状態から振幅が大きくなるという特徴により評価可能である。
【0128】
そこで、実行機能15dは、被検体Sの息止めが中断した場合には、息止めが中断した時点で、息止め撮像を一時停止又は中断し、自動的に呼吸が再開された時の収集データを破棄することが可能である。そして、実行機能15dは、残りのプロトコル群に含まれる撮像データを収集するために、以下の処理を実行可能である。
【0129】
例えば、実行機能15dは、再度、息止め撮像を行うための呼吸指示を再生させる。実行機能15dは、一時停止していた息止め撮像を再開させる。
【0130】
また、例えば、実行機能15dは、残りの撮像データが収集できるように撮像条件を変更させる。実行機能15dは、再度、息止め撮像の呼吸指示を再生させる。そして、実行機能15dは、一時停止していた息止め撮像を再開させる。
【0131】
また、例えば、実行機能15dは、息止め不要な撮像方法又はシーケンス種に変更させる。そして、実行機能15dは、一時停止していた本撮像を再開させる。
【0132】
また、例えば、実行機能15dは、新たなプロトコルを挿入させる。そして、実行機能15dは、撮像条件制御部に、残りの撮像データが収集できるような撮像条件に変更させる。また、実行機能15dは、残りの撮像データを収集できるプロトコルに変更させた旨のメッセージをディスプレイ10に表示させる。
【0133】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0134】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0135】
また、上述した実施形態及び変形例で説明した撮像方法は、予め用意された撮像プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することもできる。この撮像プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することもできる。また、この撮像プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0136】
また、上記の実施形態及び変形例において、リアルタイムとは、処理対象となる各データが発生するたびに、即時に各処理を行うことを意味する。例えば、リアルタイムで画像を表示する処理は、被検体が撮像される時刻と画像が表示される時刻とが完全に一致する場合に限らず、画像処理などの各処理に要する時間によって画像がやや遅れて表示される場合を含む概念である。
【0137】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、呼吸アーチファクトを低減することができる。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
100 MRI装置
15 処理回路
15a 制御機能
15b 取得機能
15c 評価機能
15d 実行機能
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13