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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】検査装置の調整方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20221012BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B11/26 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018004619
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019124544
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】595039014
【氏名又は名称】株式会社サキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140800
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 丈世
(74)【代理人】
【識別番号】100156281
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 敬
(72)【発明者】
【氏名】柳詰 健二
(72)【発明者】
【氏名】柏木 亮志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆二
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-313840(JP,A)
【文献】特開2012-053016(JP,A)
【文献】特開2014-163710(JP,A)
【文献】特開2008-224552(JP,A)
【文献】特開2016-205957(JP,A)
【文献】特開2003-028615(JP,A)
【文献】国際公開第2014/037993(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02894012(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体を保持するための検査テーブルと、
前記被検査体を撮像する撮像ユニットと、
前記撮像ユニットを第1の方向に移動させる第1ガイド、
前記第1ガイドの一端側を第2の方向に移動させる第2ガイド、及び、
前記第1ガイドの他端側を前記第2の方向に移動させる第3ガイド、を有する撮像ユニット駆動機構と、
前記検査テーブルの前記被検査体の位置に着脱可能であり、直交する2直線の交点、及び前記2直線の各々の線上に配置される少なくとも3つの標識を有する基準盤と、
前記第1ガイド、前記第2ガイド及び前記第3ガイドの作動を制御する制御ユニットと、を有する検査装置において、
前記基準盤を前記被検査体に代えて前記検査テーブル上に載置した状態で、
前記制御ユニットは、
前記基準盤の前記3つの標識の各々を前記撮像ユニットで撮像して、前記3つの標識の各々に対する前記撮像ユニットの位置を検出するステップと、
前記3つの標識の各々に対する前記撮像ユニットの位置から、前記2直線の交点の標識の位置と前記2直線の一方の線上の標識の位置とを結ぶ直線と、前記2直線の交点の標識の位置と前記2直線の他方の線上の標識の位置とを結ぶ直線との角度を算出するステップと、
前記角度が略90°となるように、前記第2ガイドにおける前記第1ガイドの一端の位置と、前記第3ガイドにおける前記第1ガイドの他端の位置とを補正するステップと、
を有することを特徴とする検査装置の調整方法。
【請求項2】
前記制御ユニットは、
前記位置を検出するステップにおいて、前記撮像ユニットの視野領域の中心に前記標識があるときの前記撮像ユニットの位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置の調整方法。
【請求項3】
前記制御ユニットは、
前記補正するステップにおいて、
前記角度と90°との差の絶対値が所定の閾値より小さいか否かを判断し、
前記差の絶対値が前記所定の閾値より小さくないと判断したときは、前記角度が略90°となるように、前記第2ガイドにおける前記第1ガイドの一端の位置と、前記第3ガイドにおける前記第1ガイドの他端の位置とを補正した後、前記位置を検出するステップ、前記角度を検出するステップ及び前記補正をするステップを繰り返し、
前記角度と90°との差の絶対値が前記所定の閾値より小さいと判断したときは、前記補正するステップを終了する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置の調整方法。
【請求項4】
前記制御ユニットは、
前記撮像ユニットの位置と、前記第2ガイドにおける前記第1ガイドの一端の位置及び前記第3ガイドにおける前記第1ガイドの他端の位置との対応関係である設計値と、
前記設計値の補正値と、を有し、
前記制御ユニットは、前記設計値及び前記補正値により前記撮像ユニットの位置を決定するように構成され、
前記補正するステップは、前記角度が略90°となる前記補正値を算出して記憶することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の検査装置の調整方法。
【請求項5】
被検査体を保持するための検査テーブルと、
前記被検査体を撮像する撮像ユニットと、
前記撮像ユニットを第1の方向に移動させる第1ガイド、
前記第1ガイドの一端側を第2の方向に移動させる第2ガイド、及び、
前記第1ガイドの他端側を前記第2の方向に移動させる第3ガイド、を有する撮像ユニット駆動機構と、
前記検査テーブルの前記被検査体の位置に着脱可能であり、直交する2直線の交点、及び前記2直線の各々の線上に配置される少なくとも3つの標識を有する基準盤と、
前記第1ガイド、前記第2ガイド及び前記第3ガイドの作動を制御する制御ユニットと、を有し、
前記基準盤を前記被検査体に代えて前記検査テーブル上に載置した状態で、
前記制御ユニットは、請求項1~4のいずれか一項に記載の検査装置の調整方法により、前記3つの標識の各々に対する前記撮像ユニットの位置から、前記2直線の交点の標識の位置と前記2直線の一方の線上の標識の位置とを結ぶ直線と、前記2直線の交点の標識の位置と前記2直線の他方の線上の標識の位置とを結ぶ直線との角度が略90°となるように、前記第2ガイドにおける前記第1ガイドの一端の位置と、前記第3ガイドにおける前記第1ガイドの他端の位置とを補正することを特徴とする検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置の調整方法及びこの調整方法を有する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、様々な機器に電子回路基板が実装されるようになってきているが、この種の電子回路基板が実装される機器においては、小型化、薄型化等が常に課題になっており、この点から、電子回路基板の実装の高密度化を図ることが要求されている。例えば、電子回路基板の実装装置において、部品を実装する電子回路基板の画像を撮像するカメラを電子回路基板に対して相対移動させるためのXY駆動装置において、このXY駆動装置を構成するX軸ユニット及びY軸ユニットの組み付けに誤差があると、精度の高い実装結果を得ることができない。
【0003】
従来、電子回路基板の実装装置においては、電子部品の実装を電子回路基板上の所定の位置に正確に行うために、X軸ユニット及びY軸ユニットの組み付けの誤差を補正することが重要な課題であり、基準治具上の観測点を撮像することにより、X軸ユニット及びY軸ユニットの歪みを測定し、これらのX軸ユニット及びY軸ユニットからなる機械座標系の歪みを補正する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-028615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、基準治具上の複数の観測点の画像から、最小二乗法等により補正用のパラメータを予め求めておき、XY駆動装置の作動時に、このパラメータを用いて補正する必要があり、処理が複雑になるという課題があった。
【0006】
また、従来、電子回路基板の検査装置においては、電子回路基板上の被検査体の基板上における絶対位置は重視されてこなかったが、近年、電子回路基板の実装装置と電子回路基板の検査装置の間で被検査体に関する情報を連携させることが進んでいる。電子回路基板の実装装置と電子回路基板の検査装置の間で被検査体に関する情報を連携させるにあたっては、個々の被検査体の基板上における絶対位置が精度良く把握されていることが重要であり、電子回路基板の検査装置においても、電子回路基板上の被検査体の基板上における絶対位置をより正確に測定することが課題になっている。
【0007】
そのためには、座標系を構成するX軸ユニットとY軸ユニットとを直交させる必要がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、直角補正用の特別なセンサー等を必要とせず、簡単な構成で容易に撮像ユニット駆動機構(XY駆動装置)の直角補正を行うことができる検査装置の調整方法及びこの調整方法を有する検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る検査装置の調整方法は、被検査体を保持するための検査テーブルと、前記被検査体を撮像する撮像ユニットと、前記撮像ユニットを第1の方向に移動させる第1ガイド、前記第1ガイドの一端側を第2の方向に移動させる第2ガイド、及び、前記第1ガイドの他端側を前記第2の方向に移動させる第3ガイド、を有する撮像ユニット駆動機構と、前記検査テーブルの前記被検査体の位置に着脱可能であり、直交する2直線の交点、及び前記2直線の各々の線上に配置される少なくとも3つの標識を有する基準盤と、前記第1ガイド、前記第2ガイド及び前記第3ガイドの作動を制御する制御ユニットと、を有する検査装置において、前記基準盤を前記被検査体に代えて前記検査テーブル上に載置した状態で、前記制御ユニットは、前記基準盤の前記3つの標識の各々を前記撮像ユニットで撮像して、前記3つの標識の各々に対する前記撮像ユニットの位置を検出するステップと、前記3つの標識の各々に対する前記撮像ユニットの位置から、前記2直線の交点の標識の位置と前記2直線の一方の線上の標識の位置とを結ぶ直線と、前記2直線の交点の標識の位置と前記2直線の他方の線上の標識の位置とを結ぶ直線との角度を算出するステップと、前記角度が略90°となるように、前記第2ガイドにおける前記第1ガイドの一端の位置と、前記第3ガイドにおける前記第1ガイドの他端の位置とを補正するステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る検査装置の調整方法において、前記制御ユニットは、前記位置を検出するステップにおいて、前記撮像ユニットの視野領域の中心に前記標識があるときの前記撮像ユニットの位置を検出することが好ましい。
また、本発明に係る検査装置の調整方法において、前記制御ユニットは、前記補正するステップにおいて、前記角度と90°との差の絶対値が所定の閾値より小さいか否かを判断し、前記差の絶対値が前記所定の閾値より小さくないと判断したときは、前記角度が略90°となるように、前記第2ガイドにおける前記第1ガイドの一端の位置と、前記第3ガイドにおける前記第1ガイドの他端の位置とを補正した後、前記位置を検出するステップ、前記角度を検出するステップ及び前記補正をするステップを繰り返し、前記角度と90°との差の絶対値が前記所定の閾値より小さいと判断したときは、前記補正するステップを終了することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る検査装置の調整方法において、前記制御ユニットは、前記撮像ユニットの位置と、前記第2ガイドにおける前記第1ガイドの一端の位置及び前記第3ガイドにおける前記第1ガイドの他端の位置との対応関係である設計値と、前記設計値の補正値と、を有し、前記制御ユニットは、前記設計値及び前記補正値により前記撮像ユニットの位置を決定するように構成され、前記補正するステップは、前記角度が略90°となる前記補正値を算出して記憶することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る検査装置は、被検査体を保持するための検査テーブルと、前記被検査体を撮像する撮像ユニットと、前記撮像ユニットを第1の方向に移動させる第1ガイド、前記第1ガイドの一端側を第2の方向に移動させる第2ガイド、及び、前記第1ガイドの他端側を前記第2の方向に移動させる第3ガイド、を有する撮像ユニット駆動機構と、前記検査テーブルの前記被検査体の位置に着脱可能であり、直交する2直線の交点、及び前記2直線の各々の線上に配置される少なくとも3つの標識を有する基準盤と、前記第1ガイド、前記第2ガイド及び前記第3ガイドの作動を制御する制御ユニットと、を有し、前記基準盤を前記被検査体に代えて前記検査テーブル上に載置した状態で、前記制御ユニットは、上述した検査装置の調整方法により、前記3つの標識の各々に対する前記撮像ユニットの位置から、前記2直線の交点の標識の位置と前記2直線の一方の線上の標識の位置とを結ぶ直線と、前記2直線の交点の標識の位置と前記2直線の他方の線上の標識の位置とを結ぶ直線との角度が略90°となるように、前記第2ガイドにおける前記第1ガイドの一端の位置と、前記第3ガイドにおける前記第1ガイドの他端の位置とを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直角補正用の特別なセンサー等を必要とせず、簡単な構成で容易に撮像ユニット駆動機構の直角補正を行うことができる検査装置の調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】検査装置の構成を示すブロック図である。
図2】XYステージの構成を示す模式図である。
図3】基準平面の位相と測定した位相との関係を説明する説明図である。
図4】直角補正処理の流れを示すフローチャートである。
図5】直角補正処理における角度の補正方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1図3を用いて本実施形態に係る検査装置10の構成について説明する。この検査装置10は、被検査体12を撮像して得られる被検査体画像データを使用して被検査体12を検査する装置である。被検査体12は例えば、ハンダが塗布されている電子回路基板である。検査装置10は、ハンダの塗布状態の良否を被検査体画像データに基づいて判定する。
【0016】
検査装置10は、被検査体12を保持するための検査テーブル14と、被検査体12を照明し撮像する撮像ユニット20と、検査テーブル14に対し撮像ユニット20を相対移動させるXYステージ40と、撮像ユニット20及びXYステージ40の作動を制御し、被検査体12の検査を実行するための制御ユニット30と、を含んで構成される。なお説明の便宜上、図1に示すように、検査テーブル14の被検査体配置面をXY平面とし、その配置面に垂直な方向(すなわち撮像ユニット20を構成するカメラユニット21による撮像方向(カメラユニット21の光学系の光軸方向))をZ方向とする。
【0017】
撮像ユニット20は、撮像ユニットを駆動するための機構(撮像ユニット駆動機構)であるXYステージ40の移動テーブル(図示せず)に取り付けられており、XYステージ40によりX方向及びY方向のそれぞれに移動可能である。XYステージ40は例えばいわゆるH型のXYステージである。よってXYステージ40は、第1の方向であるX方向に延びる第1ガイドであるX方向ガイド41に沿って移動テーブル41aをX方向に移動させるX駆動部42と、X方向ガイド41をその両端で支持しかつ移動テーブル41aとX方向ガイド41とを第2の方向であるY方向に移動可能に構成されている2本のY方向ガイド及びY駆動部(一方を第2ガイドである「Y方向マスタガイド43」及び「Yマスタ駆動部44」と呼び、他方を第3ガイドである「Y方向スレイブガイド45」及び「Yスレイブ駆動部46」と呼ぶ)と、を備える。なおXYステージ40は、撮像ユニット20をZ方向に移動させるZ移動機構をさらに備えてもよいし、撮像ユニット20を回転させる回転機構をさらに備えてもよい。検査装置10は、検査テーブル14を移動可能とするXYステージをさらに備えてもよく、この場合、撮像ユニット20を移動させるXYステージ40は省略されてもよい。また、X駆動部42及びY駆動部44,46には、リニアモータやボールねじを用いることができる。
【0018】
なお、本実施形態に係る検査装置10は、X方向ガイド41における移動テーブル41a(撮像ユニット20)のX軸方向の位置を、X方向ガイド41に設けられたX方向位置検出部41bで検出し、Y方向マスタガイド43におけるX方向ガイド41の位置を、Y方向マスタガイド43に設けられたY方向マスタ位置検出部43aで検出し、Y方向スレイブガイド45に設けられたY方向スレイブ位置検出部45aで検出することで、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a及びY方向スレイブ位置検出部45aの検出値から、撮像ユニット20のX軸方向及びY軸方向の位置が決定されるように構成されている。
【0019】
撮像ユニット20は、被検査体12の検査面(基板面)に対して垂直方向(Z軸方向)から撮像するカメラユニット21と、照明ユニット22と、投射ユニット23と、を含んで構成される。本実施形態に係る検査装置10においては、カメラユニット21、照明ユニット22、及び投射ユニット23は、一体の撮像ユニット20として構成されていてもよい。この一体の撮像ユニット20において、カメラユニット21、照明ユニット22、及び投射ユニット23の相対位置は固定されていてもよいし、各ユニットが相対移動可能に構成されていてもよい。また、カメラユニット21、照明ユニット22、及び投射ユニット23は別体とされ、別々に移動可能に構成されていてもよい。
【0020】
カメラユニット21は、対象物の2次元画像を生成する撮像素子と、その撮像素子に画像を結像させるための光学系(例えばレンズ)とを含む。このカメラユニット21は例えばCCDカメラである。カメラユニット21の最大視野は、検査テーブル14の被検査体載置区域よりも小さくてもよい。この場合、カメラユニット21は、複数の部分画像に分割して被検査体12の全体を撮像する。制御ユニット30は、カメラユニット21が部分画像を撮像するたびに次の撮像位置へとカメラユニット21が移動されるようXYステージ40を制御する。制御ユニット30は、部分画像を合成して被検査体12の全体画像データを生成する。
【0021】
照明ユニット22は、カメラユニット21による撮像のための照明光を被検査体12の表面に投射するよう構成されている。照明ユニット22は、カメラユニット21の撮像素子により検出可能である波長域から選択された波長または波長域の光を発する1つまたは複数の光源を備える。照明光は可視光には限られず、紫外光やX線等を用いてもよい。光源が複数設けられている場合には、各光源は異なる波長の光(例えば、赤色、青色、及び緑色)を異なる投光角度で被検査体12の表面に投光するよう構成される。
【0022】
本実施形態に係る検査装置10において、照明ユニット22は、被検査体12の検査面に対し斜め方向から照明光を投射する側方照明源であって、本実施形態では、上位光源22a、中位光源22b及び下位光源22cを備えている。なお、本実施形態に係る検査装置10においては、側方照明源22a、22b、22cはそれぞれリング照明源であり、カメラユニット21の光軸を包囲し、被検査体12の検査面に対し斜めに照明光を投射するように構成されている。これらの側方照明源22a,22b,22cの各々は、複数の光源が円環状に配置されて構成されていてもよい。また、側方照明源である上位光源22a、中位光源22b及び下位光源22cは、それぞれ、検査面に対して異なる角度で照明光を投射するように構成されている。
【0023】
投射ユニット23は、被検査体12の検査面にパターンを投射する。パターンが投射された被検査体12は、カメラユニット21により撮像される。検査装置10は、撮像された被検査体12のパターン画像データ(被検査体12にパターンが投射された状態でカメラユニット21により撮像された画像データ)に基づいて被検査体の検査面の高さマップを作成する。制御ユニット30は、投射パターンに対するパターン画像データの局所的な不一致を検出し、その局所的な不一致に基づいてその部位の高さ情報を取得する。つまり、投射パターンに対する撮像パターンの変化が、検査面上の高さ変化に対応する。
【0024】
投射パターンは、明線と暗線とが交互に周期的に繰り返される1次元の縞パターンであることが好ましい。投射ユニット23は、被検査体12の検査面に対し斜め方向から縞パターンを投射するよう配置されている。被検査体の検査面における高さの非連続は、パターン画像データにおいてパターンのずれとして表れる。よって、パターンのずれ量から高さ差を求めることができる。例えば、サインカーブに従って明るさが変化する縞パターンを用いるPMP(Phase Measurement Profilometry)法により制御ユニット30は高さマップを作成する。PMP法においては縞パターンのずれ量がサインカーブの位相差に相当する。
【0025】
投射ユニット23は、パターン形成装置と、パターン形成装置を照明するための光源装置と、パターンを被検査体12の検査面に投射するための投射光学系と、を含んで構成される。パターン形成装置は例えば、液晶ディスプレイ等のように所望のパターンを動的に生成しうる可変パターニング装置であってもよいし、ガラスプレート等の基板上にパターンが固定的に形成されている固定パターニング装置であってもよい。パターン形成装置が固定パターニング装置である場合には、固定パターニング装置を移動させる移動機構を設けるか、あるいはパターン投射用の投射光学系に調整機構を設けることにより、パターンの投射位置を可変とすることが好ましい。また、投射ユニット23は、異なるパターンをもつ複数の固定パターニング装置を切替可能に構成されていてもよい。
【0026】
投射ユニット23は、カメラユニット21の周囲に複数設けられていてもよい。複数の投射ユニット23は、それぞれ異なる投射方向から被検査体12にパターンを投射するよう配置される。このようにすれば、検査面における高さ差によって影となりパターンが投射されない領域を小さくすることができる。
【0027】
また、以上の説明では、被検査体12を固定し、XYステージ40により撮像ユニット20をXY方向に移動させるように構成した場合について説明したが、撮像ユニット20を固定し、被検査体12をXY方向に移動させるように構成してもよい。
【0028】
図1に示す制御ユニット30は、本装置全体を統括的に制御するもので、ハードウエアとしては、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現され、ソフトウエアとしてはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0029】
図1には、制御ユニット30の構成の一例が示されている。制御ユニット30は、検査制御部31と記憶部であるメモリ35とを含んで構成される。検査制御部31は、高さ測定部32と検査データ処理部33と検査部34とを含んで構成される。また、検査装置10は、ユーザまたは他の装置からの入力を受け付けるための入力部36と、検査に関連する情報を出力するための出力部37とを備えており、入力部36及び出力部37はそれぞれ制御ユニット30に接続されている。入力部36は例えば、ユーザからの入力を受け付けるためのマウスやキーボード等の入力手段や、他の装置との通信をするための通信手段を含む。出力部37は、ディスプレイやプリンタ等の公知の出力手段を含む。
【0030】
検査制御部31は、入力部36からの入力及びメモリ35に記憶されている検査関連情報に基づいて、検査のための各種制御処理を実行するよう構成されている。検査関連情報には、被検査体12の2次元画像データ、被検査体12の高さマップ、及び基板検査データが含まれる。検査に先立って、検査データ処理部33は、すべての検査項目に合格することが保証されている被検査体12の2次元画像データ及び高さマップを使用して基板検査データを作成する。検査部34は、作成済みの基板検査データと、検査されるべき被検査体12の2次元画像データ及び高さマップとに基づいて検査を実行する。
【0031】
基板検査データは基板の品種ごとに作成される検査データである。基板検査データはいわば、その基板に塗布されたハンダごとの検査データの集合体である。各ハンダの検査データは、そのハンダに必要な検査項目、各検査項目についての画像データ上の検査区域である検査ウインドウ、及び各検査項目について良否判定の基準となる検査基準を含む。検査ウインドウは各検査項目について1つまたは複数設定される。例えばハンダの塗布状態の良否を判定する検査項目においては通常、その部品のハンダ塗布領域の数と同数の検査ウインドウがハンダ塗布領域の配置に対応する配置で設定される。また、被検査体画像データに所定の画像処理をした画像データを使用する検査項目については、その画像処理の内容も検査データに含まれる。
【0032】
検査データ処理部33は、基板検査データ作成処理として、その基板に合わせて検査データの各項目を設定する。例えば検査データ処理部33は、その基板のハンダレイアウトに適合するように各検査ウインドウの位置及び大きさを各検査項目について自動的に設定する。検査データ処理部33は、検査データのうち一部の項目についてユーザの入力を受け付けるようにしてもよい。例えば、検査データ処理部33は、ユーザによる検査基準のチューニングを受け入れるようにしてもよい。検査基準は高さ情報を用いて設定されてもよい。
【0033】
検査制御部31は、基板検査データ作成の前処理として被検査体12の撮像処理を実行する。この被検査体12はすべての検査項目に合格しているものが用いられる。撮像処理は上述のように、照明ユニット22により被検査体12を照明しつつ撮像ユニット20と検査テーブル14との相対移動を制御し、被検査体12の部分画像を順次撮像することにより行われる。被検査体12の全体がカバーされるように複数の部分画像が撮像される。検査制御部31は、これら複数の部分画像を合成し、被検査体12の検査面全体を含む基板全面画像データを生成する。検査制御部31は、メモリ35に基板全面画像データを記憶する。
【0034】
また、図2に示すように、検査制御部31は、高さマップ作成のための前処理として、投射ユニット23により被検査体12にパターンを投射しつつ撮像ユニット20と検査テーブル14との相対移動を制御し、被検査体12のパターン画像を分割して順次撮像する。投射されるパターンは好ましくは、PMP法に基づきサインカーブに従って明るさが変化する縞パターンである。検査制御部31は、撮像した分割画像を合成し、被検査体12の検査面全体のパターン画像データを生成する。検査制御部31は、メモリ35にパターン画像データを記憶する。なお、全体ではなく検査面の一部についてパターン画像データを生成するようにしてもよい。
【0035】
高さ測定部32は、パターン画像データ上のパターンの像に基づいて被検査体12の検査面全体の高さマップを作成する。高さ測定部32はまず、パターン画像データと基準パターン画像データ(基準面にパターンを投射した状態でカメラユニット21により撮像された画像データ)との局所的な位相差を画像データ全体について求めることにより、被検査体12の検査面の位相差マップを求める。高さ測定部32は、高さ測定の基準となる基準面と位相差マップとに基づいて被検査体12の高さマップを作成する。基準面は例えば、検査される電子回路基板の基板表面である。基準面は必ずしも平面ではなくてもよく、基板の反り等の変形が反映された曲面であってもよい。
【0036】
高さ測定部32は、具体的には、パターン画像データ(図3(b))の各画素と、当該画素に対応する基準パターン画像データ(図3(a))の画素とで縞パターンの位相差(図3(c)、(d))を求める。高さ測定部32は、位相差を高さ情報に換算する。高さ情報への換算は、当該画素近傍における局所的な縞幅を用いて行われる。パターン画像データ上の縞幅が場所により異なるのを補償するためである。検査面上での位置により投射ユニット23からの距離が異なるために、基準パターンの縞幅が一定であっても、検査面のパターン投射領域の一端から他端へと線形に縞幅が変化してしまうからである。高さ測定部32は、換算された高さ情報と基準面とに基づいて基準面からの高さ情報を取得し、被検査体12の高さマップを作成する。
【0037】
検査制御部31は、被検査体12の高さマップが有する高さ情報を被検査体12の2次元画像データの各画素に対応づけることにより、高さ分布を有する被検査体画像データを作成してもよい。検査制御部31は、高さ分布付き被検査体画像データに基づいて被検査体12の3次元モデリング表示を行うようにしてもよい。また、検査制御部31は、2次元の被検査体画像データに高さ分布を重ね合わせて出力部37に表示してもよい。例えば、被検査体画像データを高さ分布により色分け表示するようにしてもよい。
【0038】
上述したように、撮像ユニット20による被検査体12の画像データの取得は、制御ユニット30によりXYステージ40のX駆動部42、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御することにより行われる。また、検査テーブル14に対する撮像ユニット20の位置は、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a及びY方向スレイブ位置検出部45aで検出される検出値に基づいて決定される。
【0039】
なお、検査テーブル14に対する撮像ユニット20の位置は、検査装置10において適宜設定することができる。ここでは、図2において、検査テーブル14の右下角の所定の位置を原点とし、当該位置に撮像ユニット20のカメラユニット21の視野領域の中心(カメラユニット21を構成する光学系の光軸と略一致する)があるときに、撮像ユニット20が原点にあるとして説明する。もちろん、カメラユニット21の視野領域の右下角に検査テーブル14の右下角の所定の位置があるときを原点としてもよいし、検査テーブル14の左下角や、右上角、左上角を原点としてもよい。
【0040】
ここで、検査テーブル14に対する撮像ユニット20の位置を(x,y)で表す。また、本実施形態に係る検査装置10の設計時において、撮像ユニット20が位置(x,y)にあるときの、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45の設計値を、(dx,dy1,dy2)とする。制御ユニット30には、位置(x,y)と設計値(dx、dy1,d2)との対応関係が、演算式やテーブルで予め設定されている。例えば、位置(0,0)に対して設計(0,0,0)という対応関係が記憶されている。
【0041】
但し、検査装置10として組み立てられたXYステージ40の組み付け誤差等により、X方向ガイド41がY方向マスタガイド43及びY方向スレイブガイド45に対して直交するように調整したときのX方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45からの検出値はずれている可能性があり、そのずれを、補正値ax,ay1,ay2で補正する。具体的には、撮像ユニット20が位置(x,y)にあるときに、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45から検出される検出値(sx,sy1,sy2)との関係は次式(1)のようになる。
【0042】
(x,y) = (sx,sy1,sy2)
= (dx+ax,dy1+ay1,dy2+ay2) (1)
【0043】
例えば、撮像ユニット20を位置(x,y)に移動させるときに、制御ユニット30は、位置(x,y)に対応するX方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45の設計値(dx,dy1,dy2)を決定し、さらに、補正値(ax,ay1,ay2)を読み出し、式(1)に基づいて、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45の目標値(dx+ax,dy1+ay1,dy2+ay2)を決定し、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45からの検出値がこの目標値になるように、X駆動部42、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御する。
【0044】
反対に、制御ユニット30は、現在のX方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aからの検出値が(sx,sy1,sy2)であるときは、式(1)に基づいて、(sx-ax,sy1-ay1,sy2-ay2)を算出し、この値となる設計値(dx,dy1,dy2)から現在の撮像ユニット20の位置(x,y)を決定する。なお、設計値及び補正値は、例えば、メモリ35に記憶される。
【0045】
上述したX方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aの補正値(ax,ay1,ay2)の算出(以下、「直角補正」と呼ぶ)は、予め、直交することが明らかな3つの標識(これらを結ぶ直線が直交する3つの標識)を有する基準盤(ガラスボード)47を用いて行われる。具体的には、図2に示すように、3つの標識MA,MB,MCが形成された基準盤47を被検査体12に代えて検査テーブル14上に載置し、撮像ユニット20のカメラユニット21でこれらの標識MA,MB,MCを撮像して補正値を算出する。なお、ここでは、原点を図2の右下とし、標識MAが原点に位置し、標識MBが標識MAからX軸方向に予め決められた距離(所定距離)を有して位置し、標識MCが標識MAからY軸方向に予め決められた距離(所定距離)を有して位置する場合について説明する。
【0046】
図4は、制御ユニット30における直角補正処理のフローチャートを示している。制御ユニット30は、直角補正処理が開始されると、まず、原点P0(0,0)に対するX方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aの設計値及び現在の補正値をメモリ35から読み出し(ステップ100)、上述した式(1)に基づいて原点P0の目標値(sx,sy1,sy2)を決定し、決定した値を原点P0の目標値として設定する(ステップS101)。
【0047】
制御ユニット30は、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aの検出値が原点P0の目標値となるように、X駆動部42、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御し、原点P0に撮像ユニット20を移動させる(ステップS102)。
【0048】
制御ユニット30は、カメラユニット21で基準盤47の標識MAを撮像し、カメラユニット21の視野領域の中心に標識MAが位置するように、X駆動部42、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御して撮像ユニット20を移動させ、視野領域の中心に標識MAが位置したときの撮像ユニット20の位置PA1(x,y)を検出し(ステップS103)、位置PA1をメモリ35に記憶する(ステップS104)。なお、位置PA1(x,y)の算出は、上述したとおり、現在のX方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aからの検出値(sx,sy1,sy2)と補正値(ax,ay1,ay2)を用いて上述した式(1)に基づいて算出することができる。
【0049】
制御ユニット30は、X駆動部42の作動を制御して、撮像ユニット20をX軸方向に所定距離移動させる(ステップS105)。ここで、所定距離をtxとすると、撮像ユニット20を移動させる目標位置PB′は(tx,0)となり、この位置PB′(tx,0)と、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aの設計値及び現在の補正値とから、式(1)に基づいて目標値が決定され、この目標値になるように、X駆動部42の作動が制御される。
【0050】
制御ユニット30は、カメラユニット21で基準盤47の標識MBを撮像し、カメラユニット21の視野領域の中心に標識MBが位置するように、X駆動部42、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御して撮像ユニット20を移動させ、視野領域の中心に標識MBが位置したときの撮像ユニット20の位置PB(x,y)を検出し(ステップS106)、この撮像ユニットの位置PBをメモリ35に記憶する(ステップS107)。位置PBの検出方法は、位置PA1と同じである。
【0051】
制御ユニット30は、X駆動部42、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御し、原点P0に撮像ユニット20を移動させる(ステップS108)。そして、制御ユニット30は、カメラユニット21で基準盤47の標識MAを撮像し、カメラユニット21の視野領域の中心に標識MAが位置するように、X駆動部42、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御して撮像ユニット20を移動させ、視野領域の中心に標識MAが位置したときの撮像ユニット20の位置PA2(x,y)を検出し(ステップS109)、この撮像ユニットの位置PA2をメモリ35に記憶する(ステップS110)。
【0052】
制御ユニット30は、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御して、撮像ユニット20をY軸方向に所定距離移動させる(ステップS111)。ここで、所定距離をtyとすると、撮像ユニット20を移動させる目標位置PC′は(0,ty)となり、この位置PC′(0,ty)と、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aの設計値及び現在の補正値とから、式(1)に基づいて目標値が決定され、この目標値になるように、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動が制御される。
【0053】
制御ユニット30は、カメラユニット21で基準盤47の標識MCを撮像し、カメラユニット21の視野領域の中心に標識MCが位置するように、X駆動部42、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動部46の作動を制御して撮像ユニット20を移動させ、視野領域の中心に標識MCが位置したときの撮像ユニット20の位置PC(x,y)を検出し(ステップS112)、この撮像ユニットの位置PCをメモリ35に記憶する(ステップS113)。
【0054】
以上の処理により制御ユニット30で算出された位置PA1,PB,PA2,PCは、図5の関係を有している。制御ユニット30は、位置PA1,PB,PA2,PCの座標から、直線PA1-PB(線A1B)と直線PA2-PC(線A2C)との角度θを算出し(ステップS114)、更に、この角度θから90°を引いた差Δθを算出し(ステップS115)、この差Δθの絶対値が所定の閾値より小さいか否かを判断する(ステップS116)。
【0055】
図5に示すように、直線PA1-PBと直線PA2-PCとの角度θが90°より大きいとき(Δθが正の値のとき)は、位置PA1をD1方向に移動させ、位置PBをD2方向に移動させる(Y方向マスタ位置検出部43aに対する補正値ay1を増加させ、Y方向スレイブ位置検出部45aに対する補正値ay2を減少させる)ことにより、角度θを90°に近づけることができる。反対に、角度θが90°より小さいとき(Δθが負の値のとき)は、位置PA1をD1と反対方向に移動させ、位置PBをD2と反対方向に移動させる(Y方向マスタ位置検出部43aに対する補正値ay1を減少させ、Y方向スレイブ位置検出部45aに対する補正値ay2を増加させる)ことにより、角度θを90°に近づけることができる。
【0056】
制御ユニット30が、差Δθの絶対値が所定の閾値より小さくないと判断した場合(ステップS116:No)、制御ユニット30は、上述したように、差Δθの符号に応じて、Y方向マスタ位置検出部43a及び方向スレイブ位置検出部45aに対する補正値ay1,補正値ay2を所定の値だけ補正し、この補正値に基づいて原点P0の目標値sy1,sy2を更新し(ステップS117)、ステップS102に戻って以上の処理を繰り返す。ステップS102~ステップS117の処理を繰り返すことにより、目標値sy1,sy2が更新されて、ステップS114で算出される角度θを90°に近づけることができる。なお、上述した説明では、補正値ay1,ay2を補正する値を一定値(所定の値)として説明したが、差Δθの絶対値の大きさに合わせて補正する値の大きさを変化させてもよい。
【0057】
制御ユニット30が、差Δθの絶対値が所定の閾値より小さいと判断した場合(ステップS116:Yes)、制御ユニット30は、現在のX方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aの補正値(ax,ay1,ay2)をメモリ35に記憶し(ステップS118)、直角補正処理を終了する。
【0058】
このように、本実施形態に係る検査装置10は、上述した直角補正処理により、予め直角を形成していることが明らかな3つの標識MA,MB,MCをカメラユニット21で撮像してその位置により、X方向ガイド41(第1の方向)とY方向マスタガイド43及びY方向スレイブガイド45(第2の方向)とが直交するように、X方向位置検出部41b、Y方向マスタ位置検出部43a、及び、Y方向スレイブ位置検出部45aの補正値(ax,ay1,ay2)を修正することができるので、この検査装置10による測定の精度を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る検査装置10は、上述した直角補正処理により、Y方向マスタガイド43及びY方向スレイブガイド45に対してX方向ガイド41が直交した状態でXYステージ40が作動するため、特に、Yマスタ駆動部44及びYスレイブ駆動46や、Y方向マスタガイド43及びY方向スレイブガイド45に対してX方向ガイド41を移動させる機構の負担を軽減することができるので、この検査装置10の耐久性能を向上させることができる。
【0060】
なお、上述したように、基準盤47に形成された標識MA,MB,MCがカメラユニット21の視野領域の中心(このカメラユニット21の光学系の光軸上)にあるときの位置を、標識MA、MB,MCの位置とすることにより、カメラの取り付け状況に依存しないで、直角補正処理を行うことができる。また、撮像される標識MA,MB,MCの像が、カメラユニット21の光学系の収差等の影響を受けないので、正確な位置を検出することができる。
【0061】
また、上述したように、本実施形態に係る検査装置10における直角補正処理は、直角補正用の特別なセンサー等は不要であり、簡単な構成で容易に直角補正を行うことができる。
【0062】
また、本実施形態に係る検査装置10における直角補正処理は、検査テーブル14に載置された基準盤47が傾いて配置されていたとしても、上述した手順でX方向ガイド41とY方向マスタガイド43及びY方向スレイブガイド45との角度を直角に補正することができる。X方向ガイド41とY方向マスタガイド43及びY方向スレイブガイド45との角度が直角でなく、且つ、基準盤47が傾いて配置されている場合、上述した処理により、上述したように、Y方向マスタガイド43及びY方向スレイブガイド45に対してX方向ガイド41がどの程度ずれているかを判定することができる。このずれの情報に基づいて、上述した直角補正処理により標識の計測及び差Δθに基づく補正値の補正を繰り返すことにより、X方向ガイド41とY方向マスタガイド43及びY方向スレイブガイド45との角度を直角に近づけることができ、この検査装置10による測定精度を向上させることができる。
【0063】
また、上記の説明で用いた基準盤47は、3つの標識MA,MB,MCのみが形成されていたが、同様の標識が2次元状に予め既知の間隔で配置されていてもよい。上述したように、標識MAは原点に配置されており、また、標識MB及び標識MCは、標識MAから所定距離の位置にあるため、その距離にある標識を用いることで上記処理を実行することができる。なお、この場合、カメラユニット21の画像データのうち、直交補正処理に利用される範囲は、カメラユニット21の光軸を含む所定の範囲であって、撮像ユニット20の位置に関わらず、その所定の範囲内に、常に一つの標識が撮像されるように構成することが必要である。
【0064】
なお、以上の実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、実施の形態の中で説明されている特徴的事項の組み合わせの全てが解決手段の必須事項であるとは限らないことは言うまでもない。
【0065】
以上述べた方法によるXYステージ40の直角補正を、装置製造時にはもとより、運用時にも定期的あるいは不定期に行うことにより、継続的に装置測定精度を維持することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 検査装置
20 撮像ユニット
30 制御ユニット
40 XYステージ(撮像ユニット駆動機構)
41 X方向ガイド(第1ガイド)
43 Y方向マスタガイド(第2ガイド)
45 Y方向スレイブガイド(第3ガイド)
図1
図2
図3
図4
図5