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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】作業車両、及び、作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
E02F9/22 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018030735
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143770
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大浅 貴央
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056492(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/123376(WO,A1)
【文献】特開2013-011361(JP,A)
【文献】特開2015-140727(JP,A)
【文献】特開2008-164096(JP,A)
【文献】国際公開第03/091606(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/056079(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0000288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20-9/22
F16H 61/425
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、
前記走行用ポンプに接続された油圧回路と、
前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータと、
前後進操作部材と、
前記前後進操作部材の操作位置を示す信号を出力する前後進操作センサと、
車両の実進行方向を示す信号を出力する進行方向センサと、
前記前後進操作センサと前記進行方向センサとからの信号を受信し、前記走行用ポンプと前記走行用モータとを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記前後進操作部材の操作位置と、前記車両の実進行方向とから、前記車両がシャトル動作中であるかを判定し、
前記車両がシャトル動作中であるときには、目標ブレーキ力を決定し、
前記目標ブレーキ力に基づいて前記シャトル動作中の目標車速を決定し、前記シャトル動作中の目標車速に基づいて前記走行用ポンプの目標容量、及び/又は、前記走行用モータの目標容量を決定する、
作業車両。
【請求項2】
アクセル操作部材と、
前記アクセル操作部材の操作量を示す信号を出力するアクセル操作センサと、
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記アクセル操作センサからの信号を受信し、
前記アクセル操作部材の操作量に応じて前記目標ブレーキ力を決定する、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記コントローラは、前記アクセル操作部材の操作量と前記目標ブレーキ力との関係を規定する目標ブレーキデータを参照して、前記アクセル操作部材の操作量から前記目標ブレーキ力を決定する、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記コントローラは、
実車速を示す信号を受信し、
前記シャトル動作の開始時からの経過時間と、前記実車速と、前記目標ブレーキ力とから、前記シャトル動作中の目標車速を決定し、
前記シャトル動作中の目標車速から、前記走行用ポンプの目標容量を決定する、
請求項1から3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記コントローラは、前記シャトル動作の開始時からの経過時間に応じて、前記シャトル動作中の目標車速を0に近づける、
請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記シャトル動作の開始時の前記走行用ポンプの容量指令を記憶し、
前記シャトル動作の開始時の前記走行用ポンプの容量指令を、前記シャトル動作の開始時からの経過時間と前記目標ブレーキ力とに応じて減少させることで、前記走行用ポンプの目標容量を決定する、
請求項1から5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記走行用ポンプは、第1ポンプポートと第2ポンプポートとを含み、
前記走行用モータは、第1モータポートと第2モータポートとを含み、
前記油圧回路は、前記第1ポンプポートと前記第1モータポートとを接続する第1回路と、前記第2ポンプポートと前記第2モータポートとを接続する第2回路とを含み、
前記作業車両は、
前記第1回路の油圧を示す信号を出力する第1圧力センサと、
前記第2回路の油圧を示す信号を出力する第2圧力センサと、
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記第1圧力センサからの信号と前記第2圧力センサからの信号とを受信し、
前記第1圧力センサからの信号と前記第2圧力センサからの信号とから、前記第1回路と前記第2回路との間の実差圧を取得し、
前記目標ブレーキ力と前記実差圧とから前記走行用モータの目標容量を決定する、
請求項1から6のいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
前記コントローラは、
実車速を示す信号を受信し、
前記実車速の低下に応じて前記目標ブレーキ力を低減する、
請求項1から7のいずれかに記載の作業車両。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記実車速と前記目標ブレーキ力の上限値との関係を規定するブレーキ上限データを参照して、前記実車速から前記目標ブレーキ力の上限値を決定する、
請求項8に記載の作業車両。
【請求項10】
前記コントローラは、前記前後進操作部材の操作位置と、前記車両の実進行方向とが不一致であるときに、前記車両がシャトル動作中であると判定する、
請求項1から9のいずれかに記載の作業車両。
【請求項11】
インチング操作部材と、
前記インチング操作部材の操作量を示す信号を出力するインチング操作センサと、
をさらに備え、
前記コントローラは、
前記インチング操作センサからの信号を受信し、
前記インチング操作部材の操作量に応じて前記目標ブレーキ力を決定する、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項12】
前記コントローラは、前記インチング操作部材の操作量と前記目標ブレーキ力との関係を規定する目標ブレーキデータを参照して、前記インチング操作部材の操作量から前記目標ブレーキ力を決定する、
請求項11に記載の作業車両。
【請求項13】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、前記走行用ポンプに接続された油圧回路と、前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータと、前後進操作部材と、を備える作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
前記前後進操作部材の操作位置を示す信号を受信することと、
前記作業車両の実進行方向を示す信号を受信することと、
前記前後進操作部材の操作位置と、前記車両の実進行方向とから、前記車両がシャトル動作中であるかを判定することと、
前記作業車両がシャトル動作中であるときには、目標ブレーキ力を決定することと、
前記目標ブレーキ力に基づいて、前記シャトル動作中の目標車速を決定することと、
前記シャトル動作中の目標車速に基づいて、前記走行用ポンプの目標容量、及び/又は、前記走行用モータの目標容量を決定すること、
を備える方法。
【請求項14】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、
前記走行用ポンプに接続された油圧回路と、
前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された第1走行用モータ及び第2走行用モータと、
前後進操作部材と、
前記前後進操作部材の操作位置を示す信号を出力する前後進操作センサと、
車両の実進行方向を示す信号を出力する進行方向センサと、
前記前後進操作センサと前記進行方向センサとからの信号を受信し、前記走行用ポンプと前記第1走行用モータと前記第2走行用モータとを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
走行モードを、前記第1走行用モータと前記第2走行用モータとによって走行する2モータ走行と、前記第2走行用モータのみによって走行する1モータ走行とに切り換え、
前記前後進操作部材の操作位置と、前記車両の実進行方向とから、前記車両がシャトル動作中であるかを判定し、
前記車両がシャトル動作中であるときには、前記走行モードが前記1モータ走行と前記2モータ走行とのいずれであるかに応じて、目標ブレーキ力を決定し、
前記目標ブレーキ力に基づいて前記シャトル動作中の目標車速を決定し、前記シャトル動作中の目標車速に基づいて前記走行用ポンプの目標容量、及び/又は、前記第1走行用モータ及び前記第2走行用モータの目標容量を決定する、
作業車両。
【請求項15】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、前記走行用ポンプに接続された油圧回路と、前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された第1走行用モータ及び第2走行用モータと、前後進操作部材と、を備える作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
走行モードを、前記第1走行用モータと前記第2走行用モータとによって走行する2モータ走行と、前記第2走行用モータのみによって走行する1モータ走行とに切り換えることと、
前記前後進操作部材の操作位置を示す信号を受信することと、
前記作業車両の実進行方向を示す信号を受信することと、
前記前後進操作部材の操作位置と、前記車両の実進行方向とから、前記車両がシャトル動作中であるかを判定することと、
前記作業車両がシャトル動作中であるときには、前記走行モードが前記1モータ走行と前記2モータ走行とのいずれであるかに応じて、目標ブレーキ力を決定することと、
前記目標ブレーキ力に基づいて前記シャトル動作中の目標車速を決定し、前記シャトル動作中の目標車速に基づいて前記走行用ポンプの目標容量、及び/又は、前記第1走行用モータ及び前記第2走行用モータの目標容量を決定すること、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両、及び、作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両には、静油圧式トランスミッションを備えるものがある。静油圧式トランスミッションは、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータとを含む。走行用ポンプはエンジンによって駆動され、作動油を吐出する。走行用ポンプから吐出された作動油は、油圧回路を介して、走行用モータに供給される。走行用モータは、作業車両の走行装置に接続されており、走行用モータが駆動されることで、作業車両が走行する。静油圧式トランスミッションでは、走行用ポンプの容量と走行用モータの容量とを制御することにより、変速比を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-190088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16は、従来技術に係る作業車両の駆動系の一部を示す図である。図16に示すように、走行用ポンプ101は、ポンプ制御シリンダ102とポンプ制御弁103とによって制御される。ポンプ制御シリンダ102は、ポンプ制御弁103から入力されるパイロット圧に応じて、走行用ポンプ101の吐出方向及び容量を変更する。ポンプ制御弁103が第1状態P1では、ポンプ制御シリンダ102が前進位置となるように、ポンプ制御シリンダ102にパイロット圧が供給される。ポンプ制御弁103が第2状態P2では、ポンプ制御シリンダ102が後進位置となるように、ポンプ制御シリンダ102にパイロット圧が供給される。
【0005】
ホイールローダのような作業車両では、走行中に進行方向を切り換えるシャトル動作が多用される。例えば、作業車両が前進中に、オペレータは前後進レバーを前進位置から後進位置に切り換える。このとき、作業車両のコントローラは、ポンプ制御弁を第1状態P1から第2状態P2に切り換えることで、走行用ポンプの吐出方向を切り換える。それにより、作業車両の進行方向が前進から後進に切り換えられる。
【0006】
上記のような状況では、走行用ポンプの吐出方向を切り換えるために、走行用ポンプの斜板角が急激に切り換えられると、車両にショックが生じる虞がある。そのため、従来技術に係る作業車両では、図16に示すように、ポンプ制御弁103の戻り回路104に絞り105が設けられている。この絞り105によって、ポンプ制御弁103の切換時にポンプ制御シリンダ102を緩やかに動作させることで、走行用ポンプ101の斜板角の急変が抑えられる。それにより、前進方向の車速が徐々に減速して0となり、そして、車両の進行方向が前進から後進に切り換わる。
【0007】
しかし、上記のような構成では、シャトル動作時における走行用ポンプの制御は、絞りによる影響を受ける。従って、シャトル動作中に走行用ポンプの制御の応答性を向上させることは容易ではない。また、シャトル動作中に限らず、常時、絞りが、応答遅れの要因となり得る。さらに、アクセルワークに応じてシャトル動作の強弱を調整することは困難である。シャトル動作時に走行用ポンプ及び/又は走行用モータの制御の応答性を向上させることで、オペレータの意図に合った車両の動作を精度良く実現することが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、シャトル動作時に、ショックの発生を抑えながら、オペレータの意図に合った作業車両の動作を精度良く実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る作業車両は、エンジンと、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータと、前後進操作部材と、前後進操作センサと、進行方向センサとを備える。走行用ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧回路は、走行用ポンプに接続されている。走行用モータは、油圧回路を介して走行用ポンプと接続されている。前後進操作センサは、前後進操作部材の操作位置を示す信号を出力する。進行方向センサは、車両の実進行方向を示す信号を出力する。コントローラは、前後進操作センサと進行方向センサとからの信号を受信し、走行用ポンプと走行用モータとを制御する。コントローラは、前後進操作部材の操作位置と、車両の実進行方向とから、車両がシャトル動作中であるかを判定する。コントローラは、車両がシャトル動作中であるときには、目標ブレーキ力を決定する。コントローラは、目標ブレーキ力に基づいて、走行用ポンプの目標容量、及び/又は、走行用モータの目標容量を決定する。
【0010】
本態様に係る作業車両では、車両がシャトル動作中であるときには、コントローラによって決定された目標ブレーキ力に基づいて、走行用ポンプの目標容量、及び/又は、走行用モータの目標容量が決定される。そのため、絞りではなく、所望の目標ブレーキ力を設定することで、シャトル動作時のショックを抑えることができる。そのため、絞りによってショックを抑える場合と比べて、シャトル動作時の走行用ポンプ及び/又は走行用モータの制御の応答性を向上させることができる。それにより、シャトル動作時に、ショックの発生を抑えながら、オペレータの意図に合った車両の動作を精度良く実現することができる。
【0011】
作業車両は、アクセル操作部材とアクセル操作センサとをさらに備えてもよい。アクセル操作センサは、アクセル操作部材の操作量を示す信号を出力してもよい。コントローラは、アクセル操作センサからの信号を受信してもよい。コントローラは、アクセル操作部材の操作量に応じて目標ブレーキ力を決定してもよい。
【0012】
この場合、オペレータによるアクセル操作部材の操作に応じて、シャトル動作中のブレーキ力を制御することができる。そのため、オペレータの意図に合った車両の動作を精度良く実現することができる。
【0013】
コントローラは、目標ブレーキデータを参照して、アクセル操作部材の操作量から目標ブレーキ力を決定してもよい。目標ブレーキデータは、アクセル操作部材の操作量と目標ブレーキ力との関係を規定してもよい。この場合、目標ブレーキデータの特性に応じて、シャトル動作中のブレーキ力を制御することができる。
【0014】
コントローラは、実車速を示す信号を受信してもよい。コントローラは、シャトル動作の開始時からの経過時間と、実車速と、目標ブレーキ力とから、シャトル動作中の目標車速を決定してもよい。コントローラは、シャトル動作中の目標車速から、走行用ポンプの目標容量を決定してもよい。この場合、シャトル動作の開始時からの経過時間に応じて、作業車両の車速を精度よく制御することができる。
【0015】
コントローラは、シャトル動作の開始時からの経過時間に応じて、シャトル動作中の目標車速を0に近づけてもよい。この場合、シャトル動作中に作業車両を徐々に減速させることができる。それにより、ショックの発生を抑えることができる。
【0016】
コントローラは、シャトル動作の開始時の走行用ポンプの容量指令を記憶してもよい。コントローラは、シャトル動作の開始時の走行用ポンプの容量指令を、シャトル動作の開始時からの経過時間と目標ブレーキ力とに応じて減少させることで、走行用ポンプの目標容量を決定してもよい。この場合、走行用ポンプの目標容量は、シャトル動作の開始時の容量から徐々に小さくなる。それにより、シャトル動作の開始時にショックの発生を抑えることができる。
【0017】
走行用ポンプは、第1ポンプポートと第2ポンプポートとを含んでもよい。走行用モータは、第1モータポートと第2モータポートとを含んでもよい。油圧回路は、第1ポンプポートと第1モータポートとを接続する第1回路と、第2ポンプポートと第2モータポートとを接続する第2回路とを含んでもよい。作業車両は、第1圧力センサと第2圧力センサとを含んでもよい。第1圧力センサは、第1回路の油圧を示す信号を出力してもよい。第2圧力センサは、第2回路の油圧を示す信号を出力してもよい。コントローラは、第1圧力センサからの信号と第2圧力センサからの信号とを受信してもよい。コントローラは、第1圧力センサからの信号と第2圧力センサからの信号とから、第1回路と第2回路との間の実差圧を取得してもよい。コントローラは、目標ブレーキ力と実差圧とから走行用モータの目標容量を決定してもよい。
【0018】
この場合、目標ブレーキ力と実差圧とに基づいて走行用モータの容量を制御することで、所望のブレーキ力を得ることができる。それにより、オペレータの意図に合った車両の動作を精度良く実現することができる。
【0019】
コントローラは、実車速を示す信号を受信してもよい。コントローラは、実車速の低下に応じて目標ブレーキ力を低減してもよい。この場合、作業車両が減速してシャトル動作の終了に近づくほど、目標ブレーキ力が小さくなる。それにより、作業車両を滑らかに停車させて進行方向を切り換えることができる。
【0020】
コントローラは、実車速と目標ブレーキ力の上限値との関係を規定するブレーキ上限データを参照して、実車速から目標ブレーキ力の上限値を決定してもよい。この場合、ブレーキ上限データの特性に応じて、シャトル動作中のブレーキ力を制御することができる。
【0021】
コントローラは、前後進操作部材の操作位置と、車両の実進行方向とが不一致であるときに、車両がシャトル動作中であると判定してもよい。この場合、車両がシャトル動作中であることを精度良く判定することができる。
【0022】
作業車両は、インチング操作部材とインチング操作センサとをさらに備えてもよい。インチング操作センサは、インチング操作部材の操作量を示す信号を出力してもよい。コントローラは、インチング操作センサからの信号を受信してもよい。コントローラは、インチング操作部材の操作量に応じて目標ブレーキ力を決定してもよい。
【0023】
この場合、オペレータによるインチング操作部材の操作に応じて、シャトル動作中のブレーキ力を制御することができる。そのため、オペレータの意図に合った車両の動作を精度良く実現することができる。
【0024】
コントローラは、目標ブレーキデータを参照して、インチング操作部材の操作量から目標ブレーキ力を決定してもよい。目標ブレーキデータは、インチング操作部材の操作量と目標ブレーキ力との関係を規定してもよい。この場合、目標ブレーキデータの特性に応じて、シャトル動作中のブレーキ力を制御することができる。
【0025】
第2の態様に係る方法は、作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法である。作業車両は、エンジンと、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータと、前後進操作部材とを備える。走行用ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧回路は、走行用ポンプに接続されている。走行用モータは、油圧回路を介して走行用ポンプと接続されている。本態様に係る方法は、以下の処理を備える。
【0026】
第1の処理は、前後進操作部材の操作位置を示す信号を受信することである。第2の処理は、作業車両の実進行方向を示す信号を受信することである。第3の処理は、前後進操作部材の操作位置と、車両の実進行方向とから、作業車両がシャトル動作中であるかを判定することである。第4の処理は、作業車両がシャトル動作中であるときには、目標ブレーキ力を決定することである。第5の処理は、目標ブレーキ力に基づいて、走行用ポンプの目標容量、及び/又は、走行用モータの目標容量を決定することである。
【0027】
本態様に係る方法では、作業車両がシャトル動作中であるときには、コントローラによって決定された目標ブレーキ力に基づいて、走行用ポンプの目標容量、及び/又は、走行用モータの目標容量が決定される。そのため、絞りではなく、所望の目標ブレーキ力を設定することで、シャトル動作時のショックを抑えることができる。そのため、絞りによってショックを抑える場合と比べて、シャトル動作時の走行用ポンプ及び/又は走行用モータの制御の応答性を向上させることができる。それにより、シャトル動作時に、ショックの発生を抑えながら、オペレータの意図に合った作業車両の動作を精度良く実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、シャトル動作時に、ショックの発生を抑えながら、オペレータの意図に合った作業車両の動作を精度良く実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る作業車両の側面図である。
図2】作業車両の駆動系の構成を示すブロック図である。
図3】作業車両の駆動系の構成を示すブロック図である。
図4】作業車両の制御系の構成を示すブロック図である。
図5】作業車両の車速-牽引力特性を示す図である。
図6】コントローラによって実行される処理を示すフローチャートである。
図7】目標車速を決定するための処理を示す図である。
図8】目標エンジン回転速度を決定するための処理を示す図である。
図9】走行用ポンプの目標容量と、走行用モータの目標容量とを決定するための処理を示す図である。
図10】シャトル動作時にコントローラによって実行される処理を示すフローチャートである。
図11】シャトル動作中の目標ブレーキ力を決定するための処理を示す図である。
図12】シャトル動作中の目標車速を決定するための処理を示す図である。
図13】シャトル動作中の走行用ポンプの目標容量を決定するための処理を示す図である。
図14】シャトル動作中の走行モータの目標容量を決定するための処理を示す図である。
図15】他の実施形態に係るシャトル動作中の目標ブレーキ力を決定するための処理を示す図である。
図16】従来技術に係る作業車両の駆動系の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る作業車両1について、図面を用いて説明する。図1は、作業車両1の側面図である。作業車両1は、ホイールローダである。作業車両1は、車体2と、作業機3と、複数の走行輪4と、キャブ5と、を含む。作業機3は、車体2の前部に装着されている。作業機3は、ブーム11とバケット12とリフトシリンダ13とバケットシリンダ14とを含む。
【0031】
ブーム11は、車体2に回転可能に取り付けられている。ブーム11は、リフトシリンダ13によって駆動される。バケット12は、ブーム11に回転可能に取り付けられている。バケット12は、バケットシリンダ14によって上下に移動する。キャブ5は、車体2上に配置されている。複数の走行輪4は、車体2に回転可能に取り付けられている。
【0032】
図2及び図3は、作業車両1に搭載された駆動系の構成を示すブロック図である。図2に示すように、作業車両1は、エンジン21と、作業機用ポンプ22と、静油圧式変速機(Hydro Static Transmission;以下“HST”と呼ぶ)23とを含む。エンジン21は、例えば、ディーゼル式のエンジンである。燃料噴射装置24がエンジン21への燃料噴射量を制御することにより、エンジン21の出力トルク(以下、「エンジントルク」と呼ぶ)と回転速度とが制御される。エンジン21の実回転速度は、エンジン回転速度センサ25によって検出される。エンジン回転速度センサ25は、エンジン21の実回転速度を示す信号を出力する。
【0033】
作業機用ポンプ22は、エンジン21に接続されている。作業機用ポンプ22は、エンジン21によって駆動されることで、作動油を吐出する。作業機用ポンプ22から吐出された作動油は、作業機用油圧回路26を介してリフトシリンダ13に供給される。これにより、作業機3が駆動される。
【0034】
作業機用ポンプ22は、可変容量型の油圧ポンプである。作業機用ポンプ22には、作業機ポンプ制御装置28が接続されている。作業機ポンプ制御装置28は、作業機用ポンプ22の容量を制御する。なお、作業機用ポンプ22は、固定容量型の油圧ポンプであってもよい。
【0035】
作業機用油圧回路26には、作業機制御弁30が配置されている。作業機制御弁30は、作業機制御弁30に印加されるパイロット圧に応じて、リフトシリンダ13に供給される作動油の流量を制御する。図示を省略するが、作業機制御弁30は、バケットシリンダ14に供給される作動油の流量を制御してもよい。なお、作動油の流量とは、単位時間当たりに供給される作動油の量を意味する。作業機制御弁30は、油圧パイロットの制御弁に限らず、電気的に制御される電磁比例制御弁であってもよい。オペレータが、図示しない作業機操作部材を操作することによって、作業機制御弁30が制御される。それによって、オペレータは、作業機3を操作することができる。
【0036】
図2及び図3に示すように、HST23は、走行用ポンプ31と、駆動油圧回路32と、第1走行モータ33aと、第2走行モータ33bを含む。走行用ポンプ31は、エンジン21に接続されている。走行用ポンプ31は、エンジン21によって駆動されることにより作動油を吐出する。走行用ポンプ31は、可変容量型の油圧ポンプである。走行用ポンプ31から吐出された作動油は、駆動油圧回路32を通って走行モータ33a,33bへと送られる。
【0037】
駆動油圧回路32は、走行用ポンプ31と走行モータ33a,33bとを接続している。駆動油圧回路32は、第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとを含む。第1駆動回路32aは、走行用ポンプ31の第1ポンプポート31aと第1走行モータ33aの第1モータポート331とを接続している。また、第1駆動回路32aは、走行用ポンプ31の第1ポンプポート31aと第2走行モータ33bの第1モータポート333とを接続している。第2駆動回路32bは、走行用ポンプ31の第2ポンプポート31bと第1走行モータ33aの第2モータポート332とを接続している。また、第2駆動回路32bは、走行用ポンプ31の第2ポンプポート31bと第2走行モータ33bの第2モータポート334とを接続している。走行用ポンプ31と走行モータ33a,33bと第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとは、閉回路を構成している。
【0038】
作動油が、走行用ポンプ31から第1駆動回路32aを介して走行モータ33a,33bに供給されることにより、走行モータ33a,33bが前進方向に駆動される。この場合、作動油は、走行モータ33a,33bから第2駆動回路32bを介して走行用ポンプ31に戻る。また、作動油が、走行用ポンプ31から第2駆動回路32bを介して走行モータ33a,33bに供給されることにより、走行モータ33a,33bが後進方向に駆動される。この場合、作動油は、走行モータ33a,33bから第1駆動回路32aを介して走行用ポンプ31に戻る。
【0039】
駆動油圧回路32には、駆動回路圧センサ34が設けられている。駆動回路圧センサ34は、第1駆動回路32a又は第2駆動回路32bを介して第1走行モータ33aに供給される作動油の圧力を検出する。具体的には、駆動回路圧センサ34は、第1回路圧センサ34aと第2回路圧センサ34bとを含む。
【0040】
第1回路圧センサ34aは、第1駆動回路32aの油圧を検出する。第2回路圧センサ34bは、第2駆動回路32bの油圧を検出する。第1回路圧センサ34aは、第1駆動回路32aの油圧を示す信号を出力する。第2回路圧センサ34bは、第2駆動回路32bの油圧を示す信号を出力する。
【0041】
走行モータ33a,33bは、可変容量型の油圧モータである。走行モータ33a,33bは、走行用ポンプ31から吐出された作動油によって駆動され、走行のための駆動力を生じさせる。
【0042】
第1走行モータ33aには、第1モータ容量制御装置35aが接続されている。第1モータ容量制御装置35aは、第1走行モータ33aの容量を制御する。第1モータ容量制御装置35aは、第1モータシリンダ351と第1モータ制御弁352とを含む。
【0043】
第1モータシリンダ351は、第1走行モータ33aに接続されている。第1モータシリンダ351は、油圧によって駆動され、第1走行モータ33aの傾転角を変更する。第1モータ制御弁352は、第1モータ制御弁352に入力される指令信号に基づいて制御される電磁比例制御弁である。第1モータ制御弁352が、第1モータシリンダ351を動作させることで、第1走行モータ33aの容量が変更される。
【0044】
第2走行モータ33bには、第2モータ容量制御装置35bが接続されている。第2モータ容量制御装置35bは、第2走行モータ33bの容量を制御する。第2モータ容量制御装置35bは、第2モータシリンダ353と第2モータ制御弁354とを含む。第2モータ容量制御装置35bの構成は、第1モータ容量制御装置35aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
走行モータ33a,33bは、駆動軸37に接続されている。駆動軸37は、図示しないアクスルを介して上述した走行輪4に接続されている。走行モータ33a,33bの回転は、駆動軸37を介して走行輪4に伝達される。それにより、作業車両1が走行する。
【0046】
HST23は、クラッチ54とクラッチ制御弁55とを含む。クラッチ54は、第1走行モータ33aと駆動軸37との間に配置されている。クラッチ54は、係合状態と開放状態とに切り換えられる。クラッチ54は係合状態で第1走行モータ33aと駆動軸37とを接続する。それにより、第1走行モータ33aの回転と第2走行モータ33bの回転とが共に駆動軸37に伝達される。クラッチ54は開放状態で第1走行モータ33aと駆動軸37とを非接続とする。それにより、第1走行モータ33aの回転は駆動軸37に伝達されず、第2走行モータ33bの回転のみが駆動軸37に伝達される。
【0047】
クラッチ制御弁55は、クラッチ54の油室に供給される作動油の圧力を制御する。クラッチ制御弁55は、例えば電磁比例制御弁であり、入力される信号に応じて、クラッチ54の油室に供給される作動油の圧力を制御する。なお、クラッチ制御弁55は、入力されるパイロット圧に応じて制御される圧力比例制御弁であってもよい。クラッチ制御弁55によってクラッチ54の油室に供給される作動油の圧力が制御されることで、クラッチ54が係合状態と開放状態とに切り換えられる。
【0048】
作業車両1には、車速センサ36が設けられている。車速センサ36は、車速を検出する。車速センサ36は、車速を示す信号を出力する。例えば、車速センサ36は、駆動軸37の回転速度を検出することにより、車速を検出する。また、車速センサ36は、作業車両1の実進行方向を検出する進行方向センサとしても機能する。例えば、車速センサ36は、駆動軸37の回転方向を検出することにより、作業車両1の進行方向を検出する。車速センサ36は、駆動軸37に限らず、駆動軸37の回転に応じて回転する他の軸、或いは、ギアの回転速度、及び、回転方向を検出してもよい。
【0049】
HST23は、チャージポンプ38とチャージ回路39とを含む。チャージポンプ38は、固定容量型の油圧ポンプである。チャージポンプ38は、エンジン21に接続されている。チャージポンプ38は、エンジン21によって駆動されることで、チャージ回路39を介して駆動油圧回路32に作動油を供給する。
【0050】
チャージ回路39は、チャージポンプ38に接続されている。チャージ回路39は、第1チェック弁41を介して、第1駆動回路32aに接続されている。チャージ回路39は、第2チェック弁42を介して、第2駆動回路32bに接続されている。
【0051】
チャージ回路39は、第1リリーフ弁43を介して、第1駆動回路32aに接続されている。第1リリーフ弁43は、第1駆動回路32aの油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。チャージ回路39は、第2リリーフ弁44を介して第2駆動回路32bに接続されている。第2リリーフ弁44は、第2駆動回路32bの油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。
【0052】
チャージ回路39には、チャージリリーフ弁40が設けられている。チャージリリーフ弁40は、チャージ回路39の油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。それにより、チャージ回路39の油圧が、所定のリリーフ圧を超えないように制限される。
【0053】
走行用ポンプ31には、ポンプ容量制御装置45が接続されている。ポンプ容量制御装置45は、走行用ポンプ31の容量を制御する。なお、油圧ポンプの容量とは、一回転あたりの作動油の吐出量(cc/rev)を意味する。また、ポンプ容量制御装置45は、走行用ポンプ31の吐出方向を制御する。ポンプ容量制御装置45は、ポンプ制御シリンダ46とポンプ制御弁47とを含む。
【0054】
ポンプ制御シリンダ46は、走行用ポンプ31に接続されている。ポンプ制御シリンダ46は、油圧によって駆動され、走行用ポンプ31の傾転角を変更する。これにより、ポンプ制御シリンダ46は、走行用ポンプ31の容量を変更する。ポンプ制御シリンダ46は、ポンプパイロット回路48を介してチャージ回路39に接続されている。
【0055】
ポンプ制御弁47は、ポンプ制御弁47に入力される指令信号に基づいて制御される電磁比例制御弁である。ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46への作動油の供給方向を切り換える。ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46への作動油の供給方向を切り換えることにより、走行用ポンプ31の吐出方向を切り換える。それにより、走行モータ33a,33bの駆動方向が変更され、作業車両1の前進と後進とが切り換えられる。
【0056】
詳細には、ポンプ制御弁47は、前進状態と後進状態と中立状態とに切り換えられる。ポンプ制御弁47は、前進状態で、ポンプパイロット回路48をポンプ制御シリンダ46の前進側の油室に接続すると共に、ポンプ制御シリンダ46の後進側の油室を戻り回路49に接続する。それにより、ポンプ制御シリンダ46が前進側に駆動され、走行用ポンプ31の吐出方向が前進方向に設定される。
【0057】
ポンプ制御弁47は、後進状態で、ポンプパイロット回路48をポンプ制御シリンダ46の後進側の油室に接続すると共に、ポンプ制御シリンダ46の前進側の油室を戻り回路49に接続する。それにより、ポンプ制御シリンダ46が後進側に駆動され、走行用ポンプ31の吐出方向が後進方向に設定される。なお、ポンプ制御弁47は、中立状態で、ポンプパイロット回路48とポンプ制御シリンダ46の前進側の油室と後進側の油室とを絞りを介して戻り回路49に接続する。
【0058】
また、ポンプ制御弁47は、ポンプパイロット回路48を介してポンプ制御シリンダ46に供給される作動油の圧力を制御する。具体的には、ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46に供給される作動油の圧力を変更することで、走行用ポンプ31の傾転角を調整する。それにより、走行用ポンプ31の容量が制御される。
【0059】
ポンプパイロット回路48は、リリーフ弁52を介して、作動油タンクに接続されている。リリーフ弁52のパイロットポートは、シャトル弁53を介して第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとに接続されている。シャトル弁53は、第1駆動回路32aの油圧と第2駆動回路32bの油圧とのうち大きい方(以下、「駆動回路圧」と呼ぶ)を、リリーフ弁52のパイロットポートに導入する。
【0060】
リリーフ弁52は、駆動回路圧が所定のカットオフ圧以上になると、ポンプパイロット回路48を作動油タンクに連通させる。それにより、ポンプパイロット回路48の油圧が低下することにより、走行用ポンプ31の容量が低減される。その結果、駆動回路圧の上昇が抑えられる。
【0061】
図4は、作業車両1の制御系を示す模式図である。図4に示すように、作業車両1は、アクセル操作部材61とFR操作部材62とインチング操作部材68とを含む。アクセル操作部材61とFR操作部材62とインチング操作部材68とは、オペレータによって操作可能に配置されている。アクセル操作部材61とFR操作部材62とインチング操作部材68とは、キャブ5内に配置されている。
【0062】
アクセル操作部材61は、例えばアクセルペダルである。ただし、アクセル操作部材61は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材であってもよい。アクセル操作部材61は、アクセル操作センサ64と接続されている。アクセル操作センサ64は、例えばアクセル操作部材61の位置を検出する位置センサである。アクセル操作センサ64は、アクセル操作部材61の操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)を示す信号を出力する。アクセル操作量は、例えば、アクセル操作部材61を全開に操作した状態を100%としたときの割合で表される。後述するように、オペレータは、アクセル操作量を調整することによって、車速と牽引力とを制御することができる。
【0063】
FR操作部材62は、例えばFRレバーである。ただし、FR操作部材62は、スイッチなどの他の部材であってもよい。FR操作部材62は、前進位置と後進位置と中立位置とに切り換えられる。FR操作部材62は、FR操作センサ65に接続されている。FR操作センサ65は、例えばFR操作部材62の位置を検出する位置センサである。FR操作センサ65は、FR操作部材62の位置を示す信号を出力する。オペレータは、FR操作部材62を操作することによって、作業車両1の前進と後進とを切り換えることができる。
【0064】
インチング操作部材68は、例えばインチングペダルである。ただし、インチング操作部材68は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材であってもよい。インチング操作部材68は、インチング操作センサ69と接続されている。インチング操作センサ69は、例えばインチング操作部材68の位置を検出する位置センサである。インチング操作センサ69は、インチング操作部材68の操作量(以下、「インチング操作量」と呼ぶ)を示す信号を出力する。インチング操作量は、例えば、インチング操作部材68を全開に操作した状態を100%としたときの割合で表される。オペレータは、インチング操作量を調整することによって、車速と牽引力とを制御することができる。
【0065】
図4に示すように、作業車両1は、記憶装置71とコントローラ72とを含む。記憶装置71は、例えばメモリと補助記憶装置とを含む。記憶装置71は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置71は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置71は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置71は、処理装置(プロセッサ)によって実行可能であり作業車両1を制御するためのコンピュータ指令を記憶している。
【0066】
コントローラ72は、例えばCPU等の処理装置(プロセッサ)を含む。コントローラ72は、上述したセンサ、及び記憶装置71と通信可能に接続されている。コントローラ72は、上述した各種のセンサ、及び記憶装置71と有線、或いは無線によって通信可能に接続されている。コントローラ72は、センサ、及び記憶装置71から信号を受信することで各種のデータを取得する。コントローラ72は、取得したデータに基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。なお、コントローラ72は、互いに別体の複数のコントローラによって構成されてもよい。
【0067】
コントローラ72は、上述した制御弁352,354,47,55、及び、燃料噴射装置24と、有線、或いは無線により通信可能に接続されている。コントローラ72は、制御弁352,354,47,55、及び、燃料噴射装置24に指令信号を出力することで、制御弁35a,35b,47,55、及び、燃料噴射装置24を制御する。
【0068】
詳細には、コントローラ72は、燃料噴射装置24に指令信号を出力することで、エンジントルク及びエンジン回転速度を制御する。コントローラ72は、第1モータ制御弁352に指令信号を出力することで、第1走行モータ33aの容量を制御する。コントローラ72は、第2モータ制御弁354に指令信号を出力することで、第2走行モータ33bの容量を制御する。コントローラ72は、ポンプ制御弁47に指令信号を出力することで、走行用ポンプ31の容量を制御する。コントローラ72は、クラッチ制御弁55に指令信号を出力することで、クラッチ54の切換を制御する。
【0069】
コントローラ72は、図5に示すような車速-牽引力特性が実現されるように、走行用ポンプ31の容量と走行モータ33a,33bの容量とを制御して、HST23の変速比を制御する。図5は、オペレータによるアクセル操作部材61の操作に応じて変更される車速-牽引力特性の一例を示す図である。図5において、T100は、アクセル操作量が100%であるときの車速-牽引力特性を示している。T80は、アクセル操作量が80%であるときの車速-牽引力特性を示している。T60は、アクセル操作量が60%であるときの車速-牽引力特性を示している。
【0070】
コントローラ72は、FR操作部材62の位置に応じて、ポンプ制御弁47を制御する。詳細には、FR操作部材62が前進位置であるときには、コントローラ72は、ポンプ制御弁47を前進状態とする。FR操作部材62が後進位置であるときには、コントローラ72は、ポンプ制御弁47を後進状態とする。FR操作部材62が中立位置であるときには、コントローラ72は、ポンプ制御弁47を中立状態とする。それにより、FR操作部材62の操作位置に応じて、走行用ポンプ31が制御される。
【0071】
コントローラ72は、作業車両1の走行モードを、車速に応じて1モータ走行と2モータ走行とを切り換える。詳細には、コントローラ72は、車速が所定の切換閾値より低いときには、クラッチ制御弁55を係合状態とする。それにより、第1走行モータ33aが駆動軸37に接続され、第1走行モータ33aの回転と第2走行モータ33bの回転とが駆動軸37に伝達される。従って、車速が所定の切換閾値より低いときには、作業車両1は2モータ走行にて走行する。
【0072】
コントローラ72は、車速が所定の切換閾値以上であるときには、クラッチ制御弁55を開放状態とする。それにより、第1走行モータ33aが駆動軸37に非接続とされ、第1走行モータ33aの回転は駆動軸37に伝達されず、第2走行モータ33bの回転のみが駆動軸37に伝達される。従って、車速が所定の切換閾値以上であるときには、作業車両1は1モータ走行にて走行する。
【0073】
以下、コントローラ72によって実行される処理について説明する。図6は、コントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、作業車両1が前進するときの制御について説明するが、作業車両1が後進するときにも同様の制御が行われてもよい。
【0074】
図6に示すように、S101では、コントローラ72は、アクセル操作量を取得する。コントローラ72は、アクセル操作センサ64からの信号により、アクセル操作量を取得する。
【0075】
ステップS102では、コントローラ72は、目標車速を決定する。コントローラ72は、アクセル操作量に基づいて目標車速を決定する。図7は、アクセル操作量に基づいて目標車速を決定するための処理を示している。
【0076】
図7に示すように、ステップS111では、コントローラ72は、アクセル操作量から、目標基準車速を決定する。目標基準車速は、作業車両1が平地を走行しているときの目標到達車速として設定される車速である。記憶装置71は、アクセル操作量と目標基準車速との関係を規定する基準車速データD1を記憶している。基準車速データD1では、アクセル操作量の増大に応じて目標基準車速が増大する。コントローラ72は、基準車速データD1を参照して、アクセル操作量に対応する目標基準車速を決定する。
【0077】
ステップS112では、コントローラ72は、車速偏差を算出する。車速偏差は、目標基準車速と実際の車速との差である。ステップS113では、コントローラ72は、目標加速度を算出する。コントローラ72は、車速偏差とアクセル操作量とから、目標加速度を算出する。詳細には、コントローラ72は、加速度データD5を参照して、車速偏差に対応する目標加速度を算出する。加速度データD5は、車速偏差と目標加速度との関係を規定する。加速度データD5では、車速偏差の増大に応じて目標加速度が減少する。コントローラ72は、アクセル操作量に応じて加速度データD5を変更する。コントローラ72は、車速偏差が同じであっても、アクセル操作量が増大するほど、目標加速度が増大するように、加速度データD5を変更する。なお、車速偏差が負であることは、作業車両1が加速中であることを意味する。車速偏差が正であることは、作業車両1が減速中であることを意味する。目標加速度が正の値であることは加速を意味し、目標加速度が負の値であることは減速を意味する。
【0078】
ステップS114では、コントローラ72は、目標加速度から目標速度変化量を算出する。コントローラ72は、目標加速度に、コントローラ72による計算周期を乗じることで、目標速度変化量を算出する。
【0079】
ステップS115とステップS116とでは、コントローラ72は、実際の車速に目標速度変化量を加算する。ステップS117では、コントローラ72は、実際の車速に目標速度変化量を加算した値と目標基準車速との小さい方(第1目標車速)を選択する。ステップS118では、コントローラ72は、実際の車速に目標速度変化量を加算した値と目標基準車速との大きい方(第2目標車速)を選択する。
【0080】
ステップS119では、コントローラ72は、作業車両1が加速中であるのか、減速中であるのかに応じて目標車速を決定する。コントローラ72は、目標基準車速よりも実際の車速が小さいときには、作業車両1が加速中であると判断する。また、コントローラ72は、目標基準車速よりも実際の車速が大きいときには、作業車両1が減速中であると判断する。コントローラ72は、加速中には第1目標車速を目標車速として決定し、減速中には、第2目標車速を目標車速として決定する。なお、目標車速が負の値であるときには、コントローラ72は、目標車速を0とする。
【0081】
ステップS103では、コントローラ72は、目標エンジン回転速度を決定する。コントローラ72は、アクセル操作量と目標車速とに応じて、目標エンジン回転速度を決定する。詳細には、図8に示すように、コントローラ72は、アクセル操作量と目標車速とに応じて、目標入力馬力を決定する。記憶装置71は、目標車速とアクセル操作量と目標入力馬力との関係を示す目標入力馬力データD6を記憶している。コントローラ72は、目標入力馬力データD6を参照して、アクセル操作量に応じた目標車速-目標入力馬力特性が得られるように、アクセル操作量と目標車速とから目標入力馬力を決定する。
【0082】
コントローラ72は、目標入力馬力から目標エンジン回転速度を決定する。記憶装置71は、エンジントルクと目標エンジン回転速度との関係を規定するエンジントルク-回転速度データD7を記憶している。コントローラ72は、エンジントルク-回転速度データD7を参照して、目標入力馬力に対応する目標エンジン回転速度を決定する。コントローラ72は、エンジントルクと走行用ポンプ31の吸収トルクとが、目標入力馬力に対応する等馬力線上の所定のマッチング点MPで一致するように、目標エンジン回転速度を決定する。コントローラ72は、オールスピードガバナ方式で、アクセル操作量と負荷に応じて、燃料噴射装置24を制御する。詳細には、コントローラ72は、アクセル操作量に応じたレギュレーションライン上で、負荷に応じたエンジン回転速度となるように、燃料噴射装置24に指令信号を出力する。
【0083】
次に、ステップS104において、コントローラ72は、走行用ポンプ31の目標容量を決定する。図9Aに示すように、コントローラ72は、目標車速と、走行モータ33a,33bの最大容量と、目標エンジン回転速度とから、走行用ポンプ31の目標容量を決定する。詳細には、コントローラ72は、目標車速と走行モータ33a,33bの最大容量とから、目標車速を得るための走行モータ33a,33bの流量を算出し、走行モータ33a,33bの流量と目標エンジン回転速度とから、走行用ポンプ31の目標容量を算出する。コントローラ72は、走行用ポンプ31の目標容量を示す指令信号をポンプ容量制御装置45に出力する。
【0084】
なお、上述したように、作業車両1は、車速に応じて、2モータ走行と1モータ走行とに切り換えられる。上述した走行モータ33a,33bの最大容量は、2モータ走行時には、第1走行モータ33aの最大容量と第2走行モータ33bの最大容量との合計である。走行モータ33a,33bの最大容量は、1モータ走行時には第1走行モータ33aの最大容量である。
【0085】
ステップS105において、コントローラ72は、走行モータ33a,33bの目標容量を決定する。図9Bに示すように、コントローラ72は、目標車速と、目標エンジン回転速度と、走行用ポンプ31の最大容量とから、走行モータ33a,33bの目標容量を決定する。詳細には、コントローラ72は、目標エンジン回転速度と走行用ポンプ31の最大容量とから、走行用ポンプ31の流量を決定する。コントローラ72は、目標車速から、目標車速を得るための走行モータ33a,33bの回転速度を算出する。コントローラ72は、走行用ポンプ31の流量と走行モータ33a,33bの回転速度とから、走行モータ33a,33bの目標容量を算出する。コントローラ72は、走行モータ33a,33bの目標容量を示す指令信号を、第1モータ容量制御装置35aと第2モータ容量制御装置35bとに出力する。
【0086】
次に、コントローラ72によって実行されるシャトル動作時の制御について説明する。コントローラ72は、作業車両1がシャトル動作中であるときには、アクセル操作量に応じて目標ブレーキ力を決定し、目標ブレーキ力に基づいて、走行用ポンプの目標容量、及び、走行モータの目標容量を決定する。図10は、シャトル動作時にコントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。コントローラ72は、図10に示す処理を、所定の演算周期で繰り返し実行する。
【0087】
図10に示すように、ステップS201では、コントローラ72は、FR操作部材62の操作位置を取得する。コントローラ72は、FR操作センサ65からの信号により、FR操作部材62の操作位置を取得する。
【0088】
ステップS202では、コントローラ72は、作業車両1の実進行方向を取得する。コントローラ72は、車速センサ36からの信号によって、作業車両1の実進行方向を取得する。
【0089】
ステップS203では、コントローラ72は、作業車両1の実車速を取得する。コントローラ72は、車速センサ36からの信号によって、作業車両1の実車速を取得する。
【0090】
ステップS204では、コントローラ72は、シャトル判定が“ON”である、“OFF”であるかを判定する。シャトル判定が“ON”であることは、シャトル動作中であることを意味する。シャトル判定が“OFF”であることは、シャトル動作が終了したことを意味する。
【0091】
コントローラ72は、作業車両1の実進行方向とFR操作部材62の操作位置との不一致が発生し、且つ、FR操作部材62の操作が有りのときに、シャトル判定が“ON”であると判定し、そうではないときには、前回のシャトル判定を維持する。コントローラ72は、前回の判定では作業車両1の実進行方向とFR操作部材62の操作位置とが一致しており、且つ、今回の判定で作業車両1の実進行方向とFR操作部材62の操作位置とが不一致であるときに、不一致が発生したと判定する。また、コントローラ72は、FR操作センサ65からの信号の今回の値が前回の値と異なるときに、FR操作部材62の操作が有りと判定する。なお、コントローラ72は、作業車両1が停止状態、或いは概ね停止状態であるときには、一致と判定する。また、コントローラ72は、作業車両1が停止状態、或いは、概ね停止状態ではないときに、FR操作部材62の操作位置が中立位置であるときには、不一致と判定する。
【0092】
コントローラ72は、作業車両1の実進行方向とFR操作部材62の操作位置とが一致しているか、又は、後述するシャトル動作中の目標車速が所定の終了閾値より大きいときに、シャトル判定が“OFF”であると判定する。なお、終了閾値は、0であってもよく、或いは、作業車両1が概ね停止していると見なせる程度の小さな値であってもよい。目標車速は、FR操作部材の操作位置に対応する方向を正とする。
【0093】
ステップS204において、シャトル判定が“ON”であるときには、ステップS205に進む。ステップS205では、コントローラ72は、目標ブレーキ力を決定する。ここでは、コントローラ72は、アクセル操作量に応じて目標ブレーキ力を決定する。図11は、目標ブレーキ力を決定するための処理を示す図である。
【0094】
図11に示すように、コントローラ72は、目標ブレーキデータD2,D3を参照して、アクセル操作量から目標ブレーキ力を決定する。目標ブレーキデータD2,D3は、アクセル操作量と目標ブレーキ力との関係を規定しており、記憶装置71に記憶されている。詳細には、目標ブレーキデータD2,D3は、2モータ走行時の目標ブレーキデータD2と、1モータ走行時の目標ブレーキデータD3とを含む。各目標ブレーキデータD2,D3は、アクセル操作量の増大に応じて増大する目標ブレーキ力を規定している。
【0095】
ステップS301において、コントローラ72は、クラッチ54の状態から、作業車両1の走行モードが1モータ走行と2モータ走行のいずれであるのかを決定する。詳細には、コントローラ72は、クラッチ54が係合状態であるときには、走行モードが2モータ走行であると判定する。コントローラ72は、クラッチ54が開放状態であるときには、走行モードが1モータ走行であると判定する。
【0096】
走行モードが2モータ走行であるときには、ステップS302において、コントローラ72は、2モータ走行時の目標ブレーキデータD2を参照して、アクセル操作量から目標ブレーキ力を決定する。走行モードが1モータ走行時には、コントローラ72は、ステップS303において、1モータ走行時の目標ブレーキデータを参照して、アクセル操作量から目標ブレーキ力を決定する。なお、FR操作部材の操作位置が中立位置であるときには、コントローラ72は、目標ブレーキ力を所定の一定値とする。
【0097】
次に、図10に示すステップS206において、コントローラ72は、シャトル動作時の目標車速を決定する。コントローラ72は、シャトル動作の開始時からの経過時間と、実車速と、目標ブレーキ力とから、シャトル動作中の目標車速を決定する。図12は、シャトル動作中の目標車速を決定するための処理を示す図である。
【0098】
図12に示すように、ステップS401において、コントローラ72は、目標ブレーキ力による目標車速の減速分を算出する。コントローラ72は、目標ブレーキ力を作業車両1の車重で割り、コントローラ72の計算時間を乗じることで、目標ブレーキ力による目標車速の減速分を算出する。コントローラ72の計算時間は、上述した処理の繰り返しの演算周期を意味する。
【0099】
ステップS402において、コントローラ72は、今回の演算時点がシャトル動作の開始時であるのかを判定する。コントローラ72は、上述したステップS204の判定結果によって、今回の演算時点がシャトル動作の開始時であるのかを判定する。コントローラ72は、前回の演算時点でシャトル判定がOFFであり、今回の演算時点でシャトル判定がONである場合に、今回の演算時点がシャトル動作の開始時であると判定する。
【0100】
コントローラ72は、ステップS402において今回の演算時点がシャトル動作の開始時であるときには、ステップS403において、ステップS401で算出した目標車速の減速分を実車速に加えることで、シャトル動作中の目標車速を決定する。従って、コントローラ72は、シャトル動作の開始時からの経過時間に応じて、シャトル動作中の目標車速を大きくする。
【0101】
なお、実車速は、FR操作部材の操作位置に対応する方向を正とする。シャトル動作中には、作業車両1の実進行方向は、FR操作部材の操作位置に対応する方向と反対であるため、ここでの実車速は負の値となる。
【0102】
ステップS402において今回の演算時点がシャトル動作の開始時以外であるときには、ステップS404において、コントローラ72は、実車速と前回のシャトル動作中の目標車速とのうち大きい方を算出し、実車速と前回のシャトル動作中の目標車速とのうち大きい方に、ステップS401で算出した目標車速の減速分を加えることで、シャトル動作中の目標車速を決定する。
【0103】
次に、図10に示すステップS207において、コントローラ72は、シャトル動作中の走行用ポンプ31の目標容量を決定する。コントローラ72は、シャトル動作中の目標車速から、シャトル動作中の走行用ポンプ31の目標容量を決定する。図13は、シャトル動作中の走行用ポンプ31の目標容量を決定するための処理を示す図である。
【0104】
図13に示すように、ステップS501において、コントローラ72は、ステップS403において決定したシャトル動作中の目標車速をシャトル動作の開始時の実車速で割ることで、車速比率を算出する。なお、コントローラ72は、シャトル動作の開始時に検出した実車速を、シャトル動作の開始時の実車速として記憶装置71に記憶している。
【0105】
ステップS502において、シャトル動作の開始時の走行用ポンプ31の容量指令に、ステップS501で算出した車速比率を乗じることで、シャトル動作中の走行用ポンプ31の目標容量を決定する。なお、コントローラ72は、シャトル動作の開始時に決定された走行用ポンプ31の目標容量を、シャトル動作の開始時の走行用ポンプ31の容量指令として記憶装置71に記憶している。
【0106】
上述したように、シャトル動作の開始時からの経過時間に応じて、シャトル動作中の目標車速の絶対値は小さくなる。従って、シャトル動作の開始時からの経過時間に応じて、車速比率も小さくなる。従って、コントローラ72は、シャトル動作の開始時の走行用ポンプ31の容量指令を、シャトル動作の開始時からの経過時間と目標ブレーキ力とに応じて減少させることで、走行用ポンプ31の目標容量を決定する。
【0107】
次に、図10に示すステップS208において、コントローラ72は、シャトル動作中の走行モータ33a,33bの目標容量を決定する。図14は、シャトル動作中の走行モータ33a,33bの目標容量を決定するための処理を示す図である。
【0108】
ステップS601において、コントローラ72は、前回の走行モータ33a,33bの容量指令とHST実差圧とから、現状のブレーキ力を算出する。HST実差圧は、第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとの間の実差圧である。コントローラ72は、第1回路圧センサ34aからの信号と、第2回路圧センサ34bからの信号により、HST実差圧を取得する。
【0109】
詳細には、コントローラ72は、前回の走行モータ33a,33bの容量指令とHST実差圧との積を、モータトルク効率とトランスミッション機械効率で割り、所定の換算係数を乗じることで、現状のブレーキ力を算出する。トランスミッション機械効率は、HST23の出力軸から走行輪4までの伝達効率である。所定の換算係数は、HST23の出力軸でのトルクを作業車両1の牽引力に換算するための係数である。
【0110】
ステップS602では、コントローラ72は、目標ブレーキ量と現状のブレーキ力とのうちの小さい方を選択する。ステップS603では、コントローラ72は、今回の演算時点がシャトル動作の開始時であるのかを判定する。コントローラ72は、ステップS603において今回の演算時点がシャトル動作の開始時ではないときには、ステップS604において、目標ブレーキ力とHST実差圧とから、シャトル動作中の走行モータ33a,33bの目標容量を算出する。詳細には、コントローラ72は、目標ブレーキ力に所定の換算係数とトランスミッション機械効率を乗じ、HST実差圧で割り、モータトルク効率を乗じることで、シャトル動作中の走行モータ33a,33bの目標容量を算出する。所定の換算係数は、作業車両1の牽引力をHST23の出力軸でのトルクに換算するための係数である。
【0111】
なお、ステップS605において、コントローラ72は、ブレーキ上限データD4を参照して、実車速から目標ブレーキ力の上限値を決定する。ブレーキ上限データD4は、実車速と目標ブレーキ力の上限値との関係を規定する。ステップS606において、コントローラ72は、目標ブレーキ力と上限値との小さい方を選択し、ステップS604では、目標ブレーキ力と上限値との小さい方から、シャトル動作中の走行モータ33a,33bの目標容量を算出する。
【0112】
ブレーキ上限データD4は、実車速の絶対値の低下に応じて低減される目標ブレーキ力の上限値を規定している。従って、コントローラ72は、コントローラ72は、実車速の絶対値の低下に応じて目標ブレーキ力を低減させる。
【0113】
コントローラ72は、ステップS603において今回の演算時点がシャトル動作の開始時であるときには、目標ブレーキ力と現状のブレーキ力との小さい方から、シャトル動作中の走行モータ33a,33bの目標容量を算出する。すなわち、シャトル動作の開始時において、現状のブレーキ力が目標ブレーキ力より小さいときには、コントローラ72は、上述した目標ブレーキ力に代えて、現状のブレーキ力からシャトル動作中の走行モータ33a,33bの目標容量を算出する。それにより、シャトル動作の開始時にブレーキ力が急変することが抑えられ、ショックの発生を抑えることができる。なお、目標ブレーキ力の急変防止のためのフィルタ処理がS603とS606の処理の間に設けられてもよい。それにより、シャトル動作開始後に目標ブレーキ力が急変することが抑えられ、ショックの発生を抑えることができる。
【0114】
以上説明した本実施形態に係る作業車両では、作業車両1がシャトル動作中であるときには、コントローラ72によって決定された目標ブレーキ力に基づいて、走行用ポンプ31の目標容量、及び、走行モータ33a,33bの目標容量が決定される。そのため、絞りではなく、所望の目標ブレーキ力を設定することで、シャトル動作時のショックを抑えることができる。そのため、絞りによってショックを抑える場合と比べて、シャトル動作時の走行用ポンプ31、及び、走行モータ33a,33bの制御の応答性を向上させることができる。それにより、シャトル動作時に、ショックの発生を抑えながら、オペレータの意図に合った作業車両1の動作を精度良く実現することができる。
【0115】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0116】
作業車両1は、ホイールローダに限らず、モータグレーダ等の他の種類の車両であってもよい。作業車両1の駆動系及び制御系の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、走行モータの数は2つに限らず、1つ、或いは3つ以上であってもよい。走行用ポンプ31の容量は、ポンプ制御弁47に限らず、他の制御弁によって制御されてもよい。すなわち、ポンプパイロット回路48を介してポンプ制御シリンダ46に供給される作動油の圧力を制御するための制御弁が、ポンプ制御弁47とは別に設けられてもよい。
【0117】
上述した各種の演算に用いられるパラメータは、上述したものに限らず、変更されてもよい。或いは、上述したパラメータ以外のパラメータが演算に用いられてもよい。上述した各種のデータは、例えば式で表されてもよく、或いは、テーブル、マップなどの形式であってもよい。
【0118】
コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、目標車速を決定してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、目標エンジン回転速度を決定してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、走行用ポンプ31の目標容量を決定してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、走行モータ33a,33bの目標容量を決定してもよい。
【0119】
上記の実施形態では、コントローラ72は、作業車両1がシャトル動作中であるときには、目標ブレーキ力に基づいて、走行用ポンプ31の目標容量、及び、走行モータ33a,33bの目標容量を決定している。ただし、コントローラ72は、作業車両1がシャトル動作中であるときに、目標ブレーキ力に基づいて、走行用ポンプ31の目標容量と走行モータ33a,33bの目標容量とのうち一方のみを決定してもよい。
【0120】
進行方向センサは、車速センサに限らず、他のセンサであってもよい。例えば、作業車両1の位置を示す信号を出力するGPSなどのGNSSセンサによって作業車両1の進行方向が検出されてもよい。
【0121】
コントローラ72は、目標ブレーキ力の算出に、インチング操作量を使用してもよい。或いは、コントローラ72は、アクセル操作量とインチング操作量との両方を用いて、目標ブレーキ力を算出してもよい。詳細には、図15に示すように、コントローラ72は、アクセル操作量とインチング操作量とに基づいて、インチング操作量を考慮したアクセル・インチング操作量を決定する。
【0122】
コントローラ72は、インチング操作量の増大に応じて減少するインチング率を決定してもよい。コントローラ72は、アクセル操作量にインチング率を加算することで、アクセル・インチング操作量を決定してもよい。コントローラ72は、上述したステップS301~S303と同様の処理により、アクセル・インチング操作量から、目標ブレーキ力を算出してもよい。この場合、アクセル操作とインチング操作とが同時に行われたときに、アクセル操作のみが行われたときと比べて、目標ブレーキ力が小さく設定される。これにより、シャトル動作時の作業車両1のブレーキ感をより直感的に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、シャトル動作時に、ショックの発生を抑えながら、オペレータの意図に合った車両の動作を精度良く実現することができる。
【符号の説明】
【0124】
21 エンジン
31 走行用ポンプ
31a 第1ポンプポート
31b 第2ポンプポート
32 駆動油圧回路
32a 第1駆動回路
32b 第2駆動回路
33a 第1走行モータ
33b 第2走行モータ
34a 第1回路圧センサ
34b 第2圧力センサ
36 車速センサ(進行方向センサ)
61 アクセル操作部材
62 FR操作部材
64 アクセル操作センサ
65 FR操作センサ
68 インチング操作部材
69 インチング操作センサ
72 コントローラ
331 第1モータポート
332 第2モータポート
D2,D3 目標ブレーキデータ
D4 ブレーキ上限データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16