(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】手持式作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20221012BHJP
A01D 34/90 20060101ALI20221012BHJP
A01G 3/08 20060101ALI20221012BHJP
A01G 3/04 20060101ALI20221012BHJP
B27B 17/00 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
B25F5/00 B
A01D34/90 B
A01G3/08 503B
A01G3/04 501J
B27B17/00 H
(21)【出願番号】P 2018134176
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【氏名又は名称】山本 彰司
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【氏名又は名称】山本 龍郎
(72)【発明者】
【氏名】坂下 佳史
(72)【発明者】
【氏名】▲衛▼藤 邦淑
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0193669(US,A1)
【文献】特開2014-117761(JP,A)
【文献】特開2010-151124(JP,A)
【文献】特開平06-198573(JP,A)
【文献】特開昭63-005133(JP,A)
【文献】特開2013-256094(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0051873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F5/00-5/02
B27B17/00
A01G3/04;3/08
A01D34/412-34/90
A01D43/06-43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源となる原動機と、前後方向に延びるハンドルであって、作業者によって把持されるグリップ部を有するハンドルと、前記グリップ部の下面に配設されて前記原動機の出力を制御するために作業者によって上下に揺動操作される出力操作部材と、前記グリップ部の上面に配設されるロック部材であって、該ロック部材が操作されたときにのみ前記出力操作部材を操作できるように相互作用する前記ロック部材と、前記出力操作部材
が操作されていない状態であるデフォルト位置にあることを検出して前記原動機の制御に寄与する
第一の位置センサと、
前記出力操作部材が操作された状態である操作位置にあることを検出して前記原動機の制御に寄与する第二の位置センサと、を備え、
前記第一の位置センサの少なくとも一部が、前記グリップ部の内部であって、前記出力操作部材の後方位置且つ前記ロック部材の下方位置且つ前記出力操作部材の下端と前記ロック部材の後端とを結ぶ線より前側に配設され
、前記第二の位置センサは、前記出力操作部材の揺動中心軸の前方位置に配設されることを特徴とする、手持式作業機。
【請求項2】
前記
第一の位置センサは機械式に動作するマイクロスイッチであって、前記出力操作部材が揺動することにより前記マイクロスイッチのスイッチ部が押圧されることを特徴とする、請求項
1に記載の手持式作業機。
【請求項3】
前記出力操作部材は、揺動中心軸から第一距離にあ
って、前記第一の位置センサが押圧されない第一外形と、前記揺動中心軸から第二距離にあって、前記
第一の位置センサが押圧される第二外形と、を有することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の手持式作業機。
【請求項4】
前記出力操作部材は、前記第一外形と前記第二外形との間に偏心外形を有することを特徴とする、請求項
3に記載の手持式作業機。
【請求項5】
前記原動機を停止させる際に作業者によって操作される停止スイッチと、前記原動機用の燃料タンクであって、前記原動機と前記ハンドルとの間に位置する燃料タンクと、を備え、前記停止スイッチにつながる停止スイッチ配線と前記
第一の位置センサにつながるセンサ配線とが、前記ハンドルの前方位置且つ前記燃料タンクの後方位置で互いに統合されることを特徴とする、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の手持式作業機。
【請求項6】
前記原動機を停止させる際に作業者によって操作される停止スイッチと、前記原動機用の燃料タンクであって、前記原動機と前記ハンドルとの間に位置する燃料タンクと、を備え、前記停止スイッチにつながる停止スイッチ配線と前記
第一の位置センサにつながるセンサ配線とが、前記ハンドルの前方位置且つ前記燃料タンクの上方位置で互いに統合されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の手持式作業機。
【請求項7】
前記統合された配線が、前記原動機側に向かい、該原動機の制御装置に接続されることを特徴とする、請求項
5又は
6に記載の手持式作業機。
【請求項8】
前記停止スイッチ配線と前記センサ配線との統合部につながる配線が共通信号線として一本化され、該共通信号線が前記原動機の制御装置に接続されることを特徴とする、請求項
5又は
6に記載の手持式作業機。
【請求項9】
前記統合部に基板が配設され、該基板で前記配線が一本化されることを特徴とする、請求項
8に記載の手持式作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンソー、ヘッジトリマー、動力カッター等の手持式作業機に関し、詳しくは、手持式作業機に搭載される原動機の出力操作部材の位置を検知する位置センサと、前記出力操作部材を非操作位置にロックするロック部材と、を有する、手持式作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チェーンソー、ヘッジトリマー、動力カッター等の手持式作業機においては、作業者が把持するハンドルのグリップ部の近傍に、作業機の動力源である原動機の出力を制御するための、レバーやトリガ等の適宜の形式の出力操作部材を含む操作部が配設される。この操作部には、特許文献1に記載されているように、ロック部材が操作されたときにのみ前記出力操作部材を操作できるように相互作用する前記ロック部材(アクセレータロック20)や、前記出力操作部材の位置を検知して前記原動機の制御に役立てるための位置センサ(アクチュエータ31)を含むものがある。
【0003】
特許文献1に記載の電動式のチェーンソーにおいては、作業者によって把持される後ハンドルのグリップ部の上部に前記ロック部材が配設され、前記グリップ部の下部に出力操作部材としてのスロットルトリガが配設され、さらに、前記グリップ部の内部には、前記スロットルトリガの上側であって前記ロック部材の下側に、前記位置センサが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のものにおいては、前記グリップ部内において、上下に揺動する前記スロットルトリガの上側に前記位置センサが配設されているので、少なくとも該位置センサの配設スペース分だけは、前記グリップ部の輪郭が大きくならざるを得なかった。このため、作業者にとって前記グリップ部を握った状態での操作性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、ハンドルのグリップ部におけるロック部材と出力操作部材と位置センサとの配置を適正化することにより、前記グリップ部のコンパクト化に貢献でき、且つ、作業機の取扱性も向上させ得る、手持式作業機を提供しようとするものである。
【0007】
本発明はまた、原動機を停止させるための停止スイッチと前記位置センサとにつながる配線の方法を適正化することにより、配線が出力操作部材の動作の邪魔になったり配線が損傷したりする等の問題を回避し得る、手持式作業機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1の本発明に係る手持式作業機は、動力源となる原動機と、前後方向に延びるハンドルであって、作業者によって把持されるグリップ部を有するハンドルと、前記グリップ部の下面に配設されて前記原動機の出力を制御するために作業者によって上下に揺動操作される出力操作部材と、前記グリップ部の上面に配設されるロック部材であって、該ロック部材が操作されたときにのみ前記出力操作部材を操作できるように相互作用する前記ロック部材と、前記出力操作部材が操作されていない状態であるデフォルト位置にあることを検出して前記原動機の制御に寄与する第一の位置センサと、前記出力操作部材が操作された状態である操作位置にあることを検出して前記原動機の制御に寄与する第二の位置センサと、を備え、前記第一の位置センサの少なくとも一部が、前記グリップ部の内部であって、前記出力操作部材の後方位置且つ前記ロック部材の下方位置且つ前記出力操作部材の下端と前記ロック部材の後端とを結ぶ線より前側に配設され、前記第二の位置センサは、前記出力操作部材の揺動中心軸の前方位置に配設されることを特徴とする。
【0010】
請求項2の本発明に係る手持式作業機は、請求項1のものにおいて、前記第一の位置センサは機械式に動作するマイクロスイッチであって、前記出力操作部材が揺動することにより前記マイクロスイッチのスイッチ部が押圧されることを特徴とする。
【0011】
請求項3の本発明に係る手持式作業機は、請求項1又は2のものにおいて、前記出力操作部材は、揺動中心軸から第一距離にあって、前記第一の位置センサが押圧されない第一外形と、前記揺動中心軸から第二距離にあって、前記第一の位置センサが押圧される第二外形と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4の本発明に係る手持式作業機は、請求項3のものにおいて、前記出力操作部材は、前記第一外形と前記第二外形との間に偏心外形を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5の本発明に係る手持式作業機は、請求項1乃至4のいずれか一項のものにおいて、前記原動機を停止させる際に作業者によって操作される停止スイッチと、前記原動機用の燃料タンクであって、前記原動機と前記ハンドルとの間に位置する燃料タンクと、を備え、前記停止スイッチにつながる停止スイッチ配線と前記第一の位置センサにつながるセンサ配線とが、前記ハンドルの前方位置且つ前記燃料タンクの後方位置で互いに統合されることを特徴とする。
【0015】
請求項6の本発明に係る手持式作業機は、請求項1乃至4のいずれか一項のものにおいて、前記原動機を停止させる際に作業者によって操作される停止スイッチと、前記原動機用の燃料タンクであって、前記原動機と前記ハンドルとの間に位置する燃料タンクと、を備え、前記停止スイッチにつながる停止スイッチ配線と前記第一の位置センサにつながるセンサ配線とが、前記ハンドルの前方位置且つ前記燃料タンクの上方位置で互いに統合されることを特徴とする。
【0016】
請求項7の本発明に係る手持式作業機は、請求項5又は6のものにおいて、前記統合された配線が、前記原動機側に向かい、該原動機の制御装置に接続されることを特徴とする。
【0017】
請求項8の本発明に係る手持式作業機は、請求項5又は6のものにおいて、前記停止スイッチ配線と前記センサ配線との統合部につながる配線が共通信号線として一本化され、該共通信号線が前記原動機の制御装置に接続されることを特徴とする。
【0018】
請求項9の本発明に係る手持式作業機は、請求項8のものにおいて、前記統合部に基板が配設され、該基板で前記配線が一本化されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の本発明によれば、第一の位置センサが、ハンドルの内部であって出力操作部材の後方位置且つロック部材の下方位置且つ前記出力操作部材の下端と前記ロック部材の後端とを結ぶ線より前側に配設される。これにより、ハンドルの内部の空きスペースを利用してハンドル内に位置センサが収められるので、ハンドルが必要以上に太くなることが避けられる。よって、ハンドルのコンパクト化に貢献でき、且つ、作業機の操作性、取扱性も向上する。また、作業者が出力操作部材を操作していないこと、または操作されたことが、制御装置によって速やかに受信されることができる。さらに、第一の位置センサに加えて第二の位置センサが配設されるので、これらの位置センサによって、出力操作部材のデフォルト位置と操作位置とが検出される。第二の位置センサは出力操作部材の揺動の中心軸の前方位置に配設されるので、ハンドルのコンパクト化に対して何ら支障はなく、したがって、作業機の操作性、取扱性にも何の悪影響も及ばない。
【0021】
請求項2の本発明によれば、簡易な構成で確実に出力操作部材の位置を検出することができる。
【0022】
請求項3の本発明によれば、出力操作部材が第一の位置センサが押圧されない第一外形と第一の位置センサが押圧される第二外形とを有するので、出力操作部材が上下に揺動操作されることにより、第一の位置センサを押圧する押圧位置と第一の位置センサが押圧されない押圧解除位置とが第一の位置センサによって検出される。よって、簡易な構成で出力操作部材の位置を検出することができる。
【0023】
請求項4の本発明によれば、出力操作部材が第一の位置センサに対しスムーズな動作になり、押圧位置または押圧解除位置から押圧解除位置または押圧位置へスムーズに移行することができる。
【0025】
請求項5の本発明によれば、停止スイッチ配線とセンサ配線とが出力操作部材から離れた位置で互いに統合されるので、それらの配線が出力操作部材の動作の邪魔になることがない。また、配線の統合位置となるハンドルの前方位置且つ燃料タンクの後方位置は、手持式作業機の操作性、取扱性に悪影響を及ぼす位置ではなく、また、原動機の発熱により悪影響を受ける位置でもないので、これらの点でも有利である。
【0026】
請求項6の本発明によれば、停止スイッチ配線とセンサ配線とが出力操作部材から離れた位置で互いに統合されるので、それらの配線が出力操作部材の動作の邪魔になることがない。また、配線の統合位置となるハンドルの前方位置且つ燃料タンクの上方位置は、手持式作業機の操作性、取扱性に悪影響を及ぼす位置ではなく、また、原動機の発熱により悪影響を受ける位置でもないので、これらの点でも有利である。
【0027】
請求項7の本発明によれば、前記配線が統合された状態で前記制御装置へと接続されるので、配線重量及び配線コストが低減できる。
【0028】
請求項8の本発明によれば、停止スイッチ配線とセンサ配線との統合部につながる配線が共通信号線として一本化されるので、配線重量及び配線コストが低減できる。
【0029】
請求項9の本発明によれば、簡易な構成で前記配線を一本化して制御装置に接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る手持式作業機としてのチェーンソーの全体左側面図である。
【
図2】
図1のチェーンソーに搭載されている内燃エンジンの制御装置を含むブロック図である。
【
図3】
図2の内燃エンジンの点火・失火制御関連要素の系統図である。
【
図4】
図1のチェーンソーの後ハンドルのグリップ部の内部構造を開示した左側面図であり、(a)はロックレバーがロック位置にありスロットルトリガがアイドル位置にある状態を示し、(b)はロックレバーが解除位置にありスロットルトリガがアイドル位置にある状態を示し、(c)はロックレバーが解除位置にありスロットルトリガがフルスロットル位置にある状態を示している。
【
図5】
図1のチェーンソーの機体の左側面図であり、配線及び基板の配設位置の説明図である。
【
図6】
図1のチェーンソーの機体の平面図であり、配線及び基板の配設位置の説明図である。
【
図7】スロットルトリガとアイドル位置センサとの組み合わせについて、
図4の例とは別の例を示す左側面図である。
【
図8】スロットルトリガとアイドル位置センサとの組み合わせについて、
図7の例とは別の例を示す左側面図である。
【
図9】スロットルトリガとアイドル位置センサとの組み合わせについて、
図7の変形例を示す左側面図である。
【
図10】スロットルトリガとアイドル位置センサとの組み合わせについての別例を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
まず、
図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る手持式作業機の一例として、チェーンソーの全体構成について説明する。
図1のチェーンソー1は、機体2の右側面(
図1において紙面の奥側の側面)から前後方向に沿って延びるガイドバー3と、ガイドバー3の外周に沿って高速走行する無端のソーチェーン4と、を備える。工具又は刃物としてのソーチェーン4は、機体2に動力源として搭載された原動機の一例としての小型空冷二サイクル内燃エンジン5によって走行駆動される。
【0033】
機体2の左側部には、空気取入用スリット6aが形成されたリコイルスタータケース6が取り付けられており、リコイルスタータケース6内に、手動のリコイルスタータ7(
図2参照)が配設されている。作業者がスタータグリップ7aを引っ張ることでリコイルスタータ7が作動し、内燃エンジン5をアイドル状態へと起動させることができる。
【0034】
機体2には前ハンドル8と後ハンドル9とが配設されている。作業者は通常、前ハンドル8を左手、後ハンドル9を右手で握って機体2を保持し、後ハンドル9のグリップ部10の前部下面に出力操作部材として配設されたスロットルトリガ11によって内燃エンジン5の出力を制御し、ソーチェーン4の走行速度を制御する。
【0035】
前ハンドル8は略L字状に形成され、機体2の上面と左側面との間に間隔を開けて機体2に対して防振的に連結されている。前ハンドル8は、機体2の上方を左右方向水平に延びた後に、機体2の左方を下向きに延びている。前ハンドル8の前方には、ハンドガード12が配設されている。ハンドガード12は、ソーチェーン4が固いものに当たったりして機体2が作業者の側に勢いよく跳ね返る現象であるキックバック時に、作業者の前側の手を保護するためのものである。ハンドガード12は、キックバック時に作業者の前側の手に当たって押されることで、ソーチェーン4の走行を緊急停止させるブレーキ装置(図示せず)を作動させる作用も奏する。
【0036】
一方、後ハンドル9は側面視で略C字状に形成され、機体2の後部に防振的に連結されている。後ハンドル9の上部は、前後方向に延びるグリップ部10とされている。グリップ部10の上面にはロック部材としてのロックレバー13が上下に揺動して出没可能に配設され、グリップ部10の前部下面にはスロットルトリガ11が上下揺動可能に配設されている。ロックレバー13とスロットルトリガ11の詳細については後述する。
【0037】
内燃エンジン5と後ハンドル9との間の下部位置には、内燃エンジン5用の燃料タンク14が配設されている。
【0038】
また、機体2の後部であって、グリップ部9の前部の左方位置には、上下切替式の停止スイッチ15が配設されている。停止スイッチ15は、作業者によって操作され、内燃エンジン5の点火装置16への電気回路を短絡して、内燃エンジン5を停止させるためのものである。
【0039】
次に、
図2及び
図3を参照して、
図1のチェーンソーに搭載されている内燃エンジン5の制御装置について説明する。
図2に示すように、内燃エンジン5の吸気系17は、上流端のエアクリーナ18と、エアクリーナ18と内燃エンジン5との間に配設される気化器19と、で構成されている。内燃エンジン5の出力軸には遠心クラッチ20が連結され、エンジン回転数が所定の回転数以上となったときに遠心クラッチ20を介してソーチェーン4に内燃エンジン5の動力が伝達される。
【0040】
遠心クラッチ20は内燃エンジン5の回転数が約5,000rpmに達すると係合状態となるように設定されており、遠心クラッチ20が係合状態になることで内燃エンジン5の出力軸の回転がソーチェーン4へと伝達される。なお、内燃エンジンの常用回転数は約8,000~13,000rpmである。
【0041】
気化器19はスロットル弁21を有し、このスロットル弁21は、スロットルロッド22等の伝動部材を介して、スロットルトリガ11に作動上連結されている。作業者がスロットルトリガ11を操作してスロットル弁21を開閉させることで、内燃エンジン5の出力が制御される。
【0042】
内燃エンジン5はリコイルスタータ7を有し、作業者がスタータグリップ7aを引っ張ることで内燃エンジン5をアイドル状態へと起動することができる。内燃エンジン5は、更に、発電機構23を有する。この発電機構23は、
図3に示すように、発電コイル24とロータ25との組み合わせによって構成されており、該ロータ25に磁極25aが配設されている。ロータ25はエンジン出力によって駆動され、ロータ25の回転によって、発電コイル24は磁極25aからの磁束を受けてパルス電圧を誘起する。そして、このパルス電圧のレベル及びタイミングはロータ25の回転速度つまりエンジン回転速度に対応したものとなる。発電機構23が生成した電圧を使って点火装置16の点火が行われる。
【0043】
図2に戻って、点火装置16の制御、具体的には点火装置16への電源供給のON/OFF及び点火タイミングは、マイクロコンピュータからなる制御装置(点火制御装置)26によって実行される。この制御装置26は実質的にCDI型点火制御機能を有する。制御装置26には、発電機構23(前記ロータ25)からの点火タイミング信号、回転数センサ27からのエンジン回転数信号、スロットルトリガ11の位置を検知する第一の位置センサ29及び第二の位置センサ30からのトリガ位置信号、温度センサ31からの遠心クラッチ20又はその周辺の温度信号などが入力される。なお、第一の位置センサ29及び第二の位置センサ30の詳細については後述する。
【0044】
図2及び
図3に示すように、制御装置26には停止スイッチ15が接続されている。作業者が停止スイッチ15を操作することで、点火装置16への電源供給が停止され、これにより内燃エンジン5を停止させることができる。
【0045】
次に、
図4を参照して、ロックレバー13、スロットルトリガ11、第一及び第二の位置センサ29,30について説明する。
【0046】
図4に示すように、ロックレバー13は、機体2の左右水平方向(
図5の紙面に対して垂直方向)に延びるレバー軸13aを中心として上下に揺動できるように、グリップ部10に取り付けられている。レバー軸13aはグリップ部10内に配設され、ロックレバー13は、側面視でレバー軸13aから後方へと延びるレバー本体部13bを備える。レバー本体部13bは、図示しないスプリングで
図4の反時計回り方向に常時付勢され、この反時計回り方向への回動は、
図4(a)に示すように、レバーストッパ13cがグリップ部10の内壁面に下から当接することによって規制される。これにより、ロックレバー13は、作業者がロックレバー13を操作していない状態において、
図1のロック位置Lに保持される。なお、レバーストッパ13cは、ロックレバー13の後端下部から後方へと突出形成されている。
【0047】
ロックレバー13は、
図4(a)のロック位置Lにおいて、スロットルトリガ11をデフォルト位置(非操作位置)であるアイドル位置Iにロックするものであり、ロックレバー13が操作された状態でのみスロットルトリガ11の操作が許容されるように作用する。すなわち、ロックレバー13は、基端部側の下部にロック部13dを有し、このロック部13dは、ロックレバー13のロック位置Lにおいてスロットルトリガ11の上部に当接する。これにより、スロットルトリガ11が
図4(a)のアイドル位置Iにロックされる。
【0048】
そして、作業者がグリップ部10を握ると、作業者の掌でロックレバー13が押されるので、レバー軸13aを中心としてロックレバー13が下方へと回動し、ロックレバー13がグリップ部10内へと没入した
図4(b)の解除位置Rとなる。これにより、ロックレバー13のロック部13dがスロットルトリガ11から離れ、ロックレバー13によるスロットルトリガ11のロック状態が解除されて、該スロットルトリガ11の操作が可能となる。作業者がグリップ部10から手を離すと、ロックレバーは
図4(a)のロック位置Lへと復帰する。
【0049】
図4に示すように、スロットルトリガ11は、後ハンドル9のグリップ部10の前部下面に配設されている。スロットルトリガ11は、グリップ部10内でレバー軸13aと平行に延びるトリガ軸11aを中心として上下に揺動できるように、グリップ部10の前部の下部に取り付けられている。
【0050】
スロットルトリガ11は、側面視でトリガ軸11aの後方位置にて略扇形状に広がるトリガ本体部11bを備える。トリガ本体部11bは、図示しないスプリングで
図4の時計回り方向に常時付勢され、この時計回り方向への回動は、アーム状のトリガストッパ11cがロックレバー13のボス部13eに当接することで規制される。これにより、スロットルトリガ11は、作業者がスロットルトリガ11を操作していない状態において、
図4(a)(b)のアイドル位置Iに保持される。なお、トリガストッパ11cは、スロットルトリガ11のボス部11dから上方斜め後方へと突出形成されている。
【0051】
図4(a)(b)に示すように、スロットルトリガ11がアイドル位置Iにある状態において、トリガ本体部11bの略下半部がグリップ部10の下面10aから突出している。スロットルトリガ11のアイドル位置Iに対応して、気化器19のスロットル弁21はアイドル開度位置にある。そして、グリップ部10を握ることでロックレバー13によるスロットルトリガ11のロック作用が解除された
図4(b)の状態で、作業者がトリガ本体部11bの指掛部11eを引き操作すると、スロットルトリガ11が
図4の反時計回り方向へと回動し、最大で
図4(c)のフルスロットル位置Fまで回動する。スロットルトリガ11の
図4の反時計回り方向への回動は、
図4(c)に示すように、トリガ本体部11bの後面に形成される段部11gがロックレバー13に形成される規制部13fに当接することで規制され、この状態がスロットルトリガ11のフルスロットル位置Fである。
【0052】
スロットルトリガ11の
図4の反時計回り方向への回動により、スロットルロッド22(
図2参照)等の伝動部材を介して、気化器19のスロットル弁21が全開位置へ向けて開作動させられる。作業者がスロットルトリガ11を解放すると、スロットルトリガ11はアイドル位置Iへと復帰し、これに対応して、スロットル弁21がアイドル開度位置へ戻る。
【0053】
図4に示すように、グリップ部10内には、スロットルトリガ11の位置を検知するために、第一の位置センサとしてのアイドル位置センサ29と、第二の位置センサとしてのフルスロットル位置センサ30と、が設けられる。これらのセンサ29,30の検出信号を制御装置26に入力して内燃エンジン5の制御に役立てることにより、内燃エンジン5を安全に始動できるほか、内燃エンジン5の加速及び減速をスムーズに行うことができる。また、
図2に示した他のセンサ27,31等との組み合わせにより、各運転状態に最適な点火制御や燃料制御等を確実に行うことができる。本実施の形態では、アイドル位置センサ29とフルスロットル位置センサ30とが、共に機械式に動作するマイクロスイッチとされ、各スイッチ部29a,30aが押圧または押圧解除されることにより検知信号を発するようになっている。このため、簡易な構造で検知信号が得られる。
【0054】
アイドル位置センサ29は、スロットルトリガ11が作業者により操作されていない状態であるデフォルト位置(非操作位置)にあることを検知し、この検知信号を制御装置26に入力することにより、内燃エンジン5の制御に寄与する。
【0055】
アイドル位置センサ29を設けることにより、作業者がスロットルトリガ11を操作していないことが制御装置26に速やかに受信されるので、この状態からスロットルトリガ11を操作することで、内燃エンジン5を安全に始動できる。また、スロットルトリガ11を増速方向又は減速方向に操作することで、速やかに加速、減速ができる。さらに、内燃エンジン5の回転数を検知するセンサ27(
図2参照)等の他のセンサとの組み合わせにより、各運転状態に最適な点火制御や燃料制御等ができる。
【0056】
フルスロットル位置センサ30は、スロットルトリガ11が気化器19のスロットル弁21の全開位置に対応するフルスロットル位置(第二の位置:
図4(c)に示す位置)にあることを検知し、この検知信号を制御装置26に入力することにより、内燃エンジン5の制御に寄与する。但し、制御装置26におけるスロットルトリガ11の位置情報の重要性から言えば、フルスロットル位置センサ30を省略して、アイドル位置センサ29だけを設けるようにしても良い。
【0057】
図4(b)に示すように、本実施の形態では、アイドル位置センサ29の配設位置が、グリップ部10の内部であって、スロットルトリガ11の後方位置且つロックレバー13の下方位置且つスロットルトリガ11の下端11hとロックレバー13の後端13fとを結ぶ線310より前側とされている。ここで、「スロットルトリガ11の下端11h」とは、「スロットルトリガ11がアイドル位置Iにある時のスロットルトリガ11の下端11h」ということであり、「ロックレバー13の後端13f」とは、「ロックレバー13が解除位置Rにある時のロックレバー13の後端13f」ということである。これにより、グリップ部10の内部の空きスペースを利用してグリップ部10内にアイドル位置センサ29が収められるので、グリップ部10が必要以上に太くなることが避けられる。よって、グリップ部10のコンパクト化に貢献でき、且つ、チェーンソー1の操作性、取扱性も向上する。なお、アイドル位置センサ29は、少なくともその一部が前記配設位置にあってもよい。
【0058】
図4(a)(b)に示すように、スロットルトリガ11は、アイドル位置Iにあるときにアイドル位置センサ29のスイッチ部29aと接触する偏心外形を有する。すなわち、スロットルトリガ11において、トリガ本体部11bの後面の上半部は、側面視でトリガ軸11aを中心とする円弧状に形成されるのに対し、後面の下半部は、側面視でトリガ軸11aに対して偏心した円弧面11fとなっている。
【0059】
偏心円弧面11fの下端11hは、トリガ軸11aから第一距離D1にある第一外形をなす。一方、偏心円弧面11fの上端11iは、トリガ軸11aから第二距離D2にある第二外形をなす。第二距離D2は第一距離D1よりも長い。したがって、偏心外形を有する偏心円弧面11fは、上端11iが下端11hよりもトリガ軸11aから遠い位置にある。そして、
図4(a)(b)に示すように、アイドル位置センサ29は、スロットルトリガ11がアイドル位置Iにあるときにトリガ本体部11bの偏心円弧面11fの上端11iによってスイッチ部29aが押される位置に配設されている。これにより、アイドル位置センサ29によって、スロットルトリガ11がアイドル位置Iにあることが検知される。
【0060】
スロットルトリガ11が
図4(b)のアイドル位置Iから出力増大方向へ操作されると、
図4(c)に示すように、トリガ本体部11bの偏心円弧面11fが反時計回り方向へと回動するので、トリガ本体部11bがアイドル位置センサ29のスイッチ部29aから離れる。これにより、アイドル位置センサ29のスイッチ部29aが解放されて、アイドル位置センサ29によるスロットルトリガ11のアイドル位置Iの検知が失われる。このように、本実施の形態のものによれば、簡易な構成でマイクロスイッチが押されてスロットルトリガ11のアイドル位置Iを検出することができる。加えて、マイクロスイッチであるアイドル位置センサ29に対してスムーズな動作になり、アイドル位置センサ29の接触位置または非接触位置から非接触位置または接触位置に、スムーズに移行することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、
図4に示すように、フルスロットル位置センサ30が、スロットルトリガ11のトリガ軸11aの前方位置に配設される。この配設位置は、グリップ部10のコンパクト化に対して何ら支障のない位置である。したがって、作業機の操作性、取扱性にも何の悪影響も及ばない。
【0062】
フルスロットル位置センサ30は、スイッチ部30aがトリガ軸11aよりも上方に位置するように配置され、
図4(c)に示すように、スロットルトリガ11がフルスロットル位置Fにあるときに、トリガストッパ11cの基部によってスイッチ部30aが押される位置に配設される。これにより、フルスロットル位置センサ30によって、スロットルトリガ11がフルスロットル位置Fにあることが検知される。そして、スロットルトリガ11がフルスロットル位置Fから出力減少方向(
図4の時計回り方向)へと回動することにより、トリガストッパ11cの基部がフルスロットル位置センサ30のスイッチ部30aから離れる(
図4(b)参照)。これにより、フルスロットル位置センサ30のスイッチ部30aが解放されて、フルスロットル位置センサ30によるスロットルトリガ11のフルスロットル位置Fの検知が失われる。このように、本実施の形態のものによれば、簡易な構成でマイクロスイッチを押してスロットルトリガ11のフルスロットル位置Fを検出することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、
図5及び
図6に示すように、停止スイッチ15につながる停止スイッチ配線32とアイドル位置センサ29につながる第一センサ配線33とが、後ハンドル9の前方位置且つ燃料タンク14の後方位置であって、前記気化器19より下側で互いに統合され、統合された配線は、燃料タンク14の横を通り(避けて)、内燃エンジン5の近くにある制御装置26へと延びる。図示は省略しているが、フルスロットル位置センサ30につながる第二センサ配線も、第一センサ配線33と同様に統合させることが好ましい。統合部には基板34が配設されても良い。さらに基板34にマイクロコンピュータが配設されても良く、この基板34は内燃エンジン5の制御を行う場合もあり、機能的には
図2に示した制御装置26の少なくとも一部を構成する。
【0064】
前記構成によれば、停止スイッチ配線32と第一センサ配線33(さらには第二センサ配線)とがスロットルトリガ11から離れた位置で互いに統合されるので、それらの配線32,33がスロットルトリガ11の動作の邪魔になることがない。また、配線32,33の統合位置(基板34の配設位置)となる後ハンドル9の前方位置且つ燃料タンク14の後方位置且つ気化器より下側は、チェーンソー1の操作性、取扱性に悪影響を及ぼす位置ではなく、また、内燃エンジン5の発熱により悪影響を受ける位置でもないので、これらの点でも有利である。さらに、基板34の配設位置は、停止スイッチ15からもアイドル位置センサ29からも近い位置であるので、配線32,33を短くシンプルにできる。
【0065】
他の実施の形態として、停止スイッチ配線32と第一センサ配線33とを、後ハンドル9の前方位置且つ燃料タンク14の上方位置であって、気化器19の横の位置で互いに統合させ、この統合部に、
図5及び
図6に破線で示すように、基板34を配設しても良い。配線32,33の統合位置(基板34の配設位置)となる後ハンドル9の前方位置且つ燃料タンク14の上方位置且つ気化器19の横の位置は、チェーンソー1の操作性、取扱性に悪影響を及ぼす位置ではなく、また、内燃エンジン5の発熱により悪影響を受ける位置でもないので、これらの点でも有利である。なお、この場合の配線32,33の統合位置(基板34の配設位置)は、
図6に示すように、チェーンソー1を上から見たときに、後ハンドル9を中心として停止スイッチ15側(チョークレバー35とは反対側)に寄った位置とするのが好ましい。停止スイッチ15との間の配線32を短くシンプルにできるからである。なお、この実施の形態では、停止スイッチ配線32と第一センサ配線33は、気化器19を避けて配線32,33の統合位置(基板34)に向けて配線される。
【0066】
図6に示すように、基板34からは、一本の共通信号線36が延び出している。この共通信号線36は、内燃エンジン5側に向けて配線され、制御装置26に接続される。この構成により、基板34と制御装置26とをつなぐ配線が共通信号線36として一本化されるので、配線重量及び配線コストが低減できる。
【0067】
本発明の他の実施の形態として、
図7及び
図8のものを採用してもよい。これらの実施の形態は、
図4のものとは別形状のスロットルトリガ37とアイドル位置センサ38,39との組み合わせを例示するものである。
【0068】
図7及び
図8のスロットルトリガ37は、トリガ軸37aから第一距離D1にある第一外形37bと、トリガ軸37aから第二距離D2にあってアイドル位置センサ38,39と接触する第二外形37cと、を有する。第二距離D2は第一距離D1よりも長い。すなわち、
図7及び
図8のスロットルトリガ37は、側面視で下半部が、第一外形としての、トリガ軸37aを中心とする円弧面37bとなっており、この円弧面37bの上側に、第二外形としての突出部37cが形成されている。スロットルトリガ37の回動過程において、円弧面37bはアイドル位置センサ38,39に接触することはないが、突出部37cはスロットルトリガ37がアイドル位置Iにあるときに、アイドル位置センサ38,39に接触する。
【0069】
図7の例では、アイドル位置センサ38がスイッチ部38aを押圧するセンサレバー38bを備え、スロットルトリガ37がアイドル位置Iに向けて
図7の時計回り方向に回動する際に、スロットルトリガ37の突出部37cがセンサレバー38bに接触することで、センサレバー38bによってスイッチ部38aが押される。これにより、アイドル位置センサ38によって、スロットルトリガ37がアイドル位置Iにあることが検知される。スロットルトリガ37が
図7のアイドル位置Iから出力増大方向へと操作されると、突出部37cが反時計回り方向へと回動するので、センサレバー38bが解放される。これにより、センサレバー38bによるスイッチ部38aの押圧が解除され、アイドル位置センサ38によるスロットルトリガ37のアイドル位置Iの検知が失われる。
【0070】
図8の例では、アイドル位置センサ39がスイッチ部39aを上向きにして配設されている。そして、スロットルトリガ37がアイドル位置Iに向けて
図8の時計回り方向に回動する際に、スロットルトリガ37の突出部37cがスイッチ部39aを押す。これにより、アイドル位置センサ39によって、スロットルトリガ37がアイドル位置Iにあることが検知される。スロットルトリガ37が
図8のアイドル位置Iから出力増大方向へと操作されると、突出部37cが反時計回り方向へと回動する。これにより、突出部37cによるアイドル位置センサ39のスイッチ部39aの押圧が解除され、アイドル位置センサ39によるスロットルトリガ37のアイドル位置Iの検知が失われる。
【0071】
図7の例のようにスロットルトリガ37の揺動方向とスイッチ部38aの押圧方向が異なる方向であっても、
図8の例のようにスロットルトリガ37の揺動方向とスイッチ部の押圧方向が同じ方向であっても、スロットルトリガ37がアイドル位置センサ38,39を押圧する突出部37cを有するので、スロットルトリガ37が上下に揺動操作されることにより、アイドル位置センサ38,39を押圧する押圧位置とアイドル位置センサ38,39を押圧しない押圧解除位置とがアイドル位置センサ38,39によって検出される。よって、簡易な構成でアイドル位置センサ38,39のスイッチ部38a,39aを押して、スロットルトリガ37の位置を検出することができる。
【0072】
本発明の他の実施の形態として、
図9及び
図10のものを採用してもよい。
【0073】
図9の例は、
図7の変形例であり、
図7のスロットルトリガ37において、第一外形としての円弧面37bと第二外形としての突出部37cとの間に、偏心外形としての傾斜面37dを設けたものである。また、
図7のセンサレバー38b付きのアイドル位置センサ38に代えて、
図4におけるマイクロスイッチと同タイプのアイドル位置センサ29を採用している。
図9の例によれば、傾斜面37dを設けてあるので、スロットルトリガ37が回動する際に、突出部37cによるアイドル位置センサ29のスイッチ部29aの押圧状態と、円弧面37bによるアイドル位置センサ29のスイッチ部29aの非押圧状態と、の間の相互移行がスムーズになされる。よって、簡易な構造で円滑にスロットルトリガ37の位置を検出することができる。なお、傾斜面37dの上端部と突出部37cの後面との間にアールを設けておくと、前記相互移行が尚一層スムーズなものとなり好適である。
【0074】
図10の例は、アイドル位置センサ40として、スイッチ部40aが押されていないときにスロットルトリガ41がアイドル位置Iにあることを検出するマイクロスイッチを採用したものである。これに対応して、スロットルトリガ41は、揺動中心軸であるトリガ軸41aから第一の距離D1にある第一外形として、アイドル位置センサ40を押圧しない小径部41bを有する。また、スロットルトリガ41は、トリガ軸41aから第一の距離D1よりも長い第二の距離D2にある第二外形として、小径部41bよりも下方に、アイドル位置センサ40のスイッチ部40aを押圧する大径の円弧面41cを有する。小径部41bと大径円弧面41cとの間には、直線部41dと円弧部41eとからなる偏心外形が形成されている。偏心円弧面41eは大径円弧面41cに対して滑らかに接続されている。
【0075】
図10の例において、スロットルトリガ41がアイドル位置Iにあるときには、アイドル位置センサ40のスイッチ部40aは非押圧状態であるので、スロットルトリガ41がアイドル位置Iにあることがアイドル位置センサ40によって検出される。スロットルトリガ41が
図10のアイドル位置Iから出力増大方向(反時計回り方向)へと揺動操作されると、偏心外形としての円弧部41eを介して大径円弧面41cがスイッチ部40aを押圧する。これにより、アイドル位置センサ40によるスロットルトリガ41のアイドル位置Iの検出が失われる。作業者がスロットルトリガ41を解放すると、スロットルトリガ41が
図10の状態に戻り、スイッチ部40aの押圧が解除されることで、スロットルトリガ41がアイドル位置Iにあることがアイドル位置センサ40によって検出される。
【0076】
図10の例では、スロットルトリガ41がアイドル位置センサ40を押圧する突出部41cを有するので、スロットルトリガ37が上下に揺動操作されることにより、アイドル位置センサ40を押圧する押圧位置とアイドル位置センサ40を押圧しない押圧解除位置とがアイドル位置センサ40によって検出される。よって、簡易な構成でアイドル位置センサ40のスイッチ部40aを押圧解除して、スロットルトリガ41の位置を検出することができる。また、スロットルトリガ41の小径部41bと大径円弧面41cとの間に偏心外形41d,41eが設けられているので、スロットルトリガ41が回動する際に、小径部41bによるアイドル位置センサ40のスイッチ部40aの非押圧状態と、大径円弧面41cによるアイドル位置センサ40のスイッチ部40aの押圧状態と、の間の相互移行がスムーズになされる。よって、簡易な構造で円滑にスロットルトリガ41の位置を検出することができる。なお、偏心外形41d,41eは、全体が直線部として形成されるものであってもよい。
【0077】
本発明の他の実施の形態として、原動機として電動モータを搭載した手持式作業機についても本発明を適用することができる。また、手持式作業機の例としては、前記のようなチェーンソーのほか、ヘッジトリマー、動力カッター等が挙げられる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
5 原動機(内燃エンジン)
9 ハンドル
10 グリップ部
11 出力操作部材(スロットルトリガ)
11a 揺動中心軸(トリガ軸)
11h 第一外形(偏心円弧面の上端)
11i 第二外形(偏心円弧面の下端)
13 ロック部材(ロックレバー)
14 燃料タンク
15 停止スイッチ
26 制御装置
29 第一の位置センサ(アイドル位置センサ)
29a スイッチ部
30 第二の位置センサ
32 停止スイッチ配線
33 センサ配線(第一センサ配線)
34 基板
36 共通信号線
37 出力操作部材(スロットルトリガ)
37b 第一外形(円弧面)
37c 第二外形(突出部)
38,39 第一の位置センサ(アイドル位置センサ)
40 第一の位置センサ(アイドル位置センサ)
41 出力操作部材(スロットルトリガ)
41b 第一外形(小径部)
41c 第二外形(大径円弧面)
D1 第一距離
D2 第二距離
I 第一の位置(アイドル位置)
F 第二の位置(フルスロットル位置)