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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】負極及び亜鉛二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20221012BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221012BHJP
   C01G 9/00 20060101ALI20221012BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20221012BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20221012BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20221012BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20221012BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20221012BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/38 Z
C01G9/00 B
C01G15/00 B
C01G23/00 C
C01G33/00 A
H01M10/30 Z
H01M4/24 H
H01M4/24 Z
H01M12/08 K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018164452
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020038763
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】加納 大空
(72)【発明者】
【氏名】林 洋志
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直美
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-046760(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/48
H01M 10/30
H01M 4/42
C01G 9/00
C01G 15/00
C01G 23/00
C01G 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛二次電池に用いられる負極であって、
Al、Ti及びNbからなる群から選択される少なくとも1種とZnとの複合金属酸化物であるZn化合物を含む、負極。
【請求項2】
前記Zn化合物が、ZnAl 、ZTiO、ZnNb6、及びZnNbからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記Zn化合物がZnNbである、請求項1又は2に記載の負極。
【請求項4】
ZnO及び/又は金属Znをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の負極。
【請求項5】
前記Zn化合物、前記ZnO及び前記金属Znの合計量に対する、前記Zn化合物の割合が10~80体積%である、請求項1~のいずれか一項に記載の負極。
【請求項6】
前記負極がシート状のプレス成形体である、請求項1~のいずれか一項に記載の負極。
【請求項7】
前記負極がバインダーをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の負極。
【請求項8】
正極と、
請求項1~のいずれか一項に記載の負極と、
前記正極と前記負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するセパレータと、
電解液と、
を含む、亜鉛二次電池。
【請求項9】
前記セパレータが層状複水酸化物(LDH)セパレータである、請求項に記載の亜鉛二次電池。
【請求項10】
前記LDHセパレータが多孔質基材と複合化されている、請求項又はに記載の亜鉛二次電池。
【請求項11】
前記正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより前記亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなす、請求項8~10のいずれか一項に記載の亜鉛二次電池。
【請求項12】
前記正極が空気極であり、それにより前記亜鉛二次電池が亜鉛空気二次電池をなす、請求項8~10のいずれか一項に記載の亜鉛二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極及び亜鉛二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル亜鉛二次電池、空気亜鉛二次電池等の亜鉛二次電池では、充電時に負極から金属亜鉛がデンドライト状に析出し、不織布等のセパレータの空隙を貫通して正極に到達し、その結果、短絡を引き起こすことが知られている。このような亜鉛デンドライトに起因する短絡は繰り返し充放電寿命の短縮を招く。
【0003】
上記問題に対処すべく、水酸化物イオンを選択的に透過させながら、亜鉛デンドライトの貫通を阻止する、層状複水酸化物(LDH)セパレータを備えた電池が提案されている。例えば、特許文献1(国際公開第2013/118561号)には、ニッケル亜鉛二次電池においてLDHセパレータを正極及び負極間に設けることが開示されている。また、特許文献2(国際公開第2016/076047号)には、樹脂製外枠に嵌合又は接合されたLDHセパレータを備えたセパレータ構造体が開示されており、LDHセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有する程の高い緻密性を有することが開示されている。また、この文献にはLDHセパレータが多孔質基材と複合化されうることも開示されている。さらに、特許文献3(国際公開第2016/067884号)には多孔質基材の表面にLDH緻密膜を形成して複合材料を得るための様々な方法が開示されている。この方法は、多孔質基材にLDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、原料水溶液中で多孔質基材に水熱処理を施してLDH緻密膜を多孔質基材の表面に形成させる工程を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/118561号
【文献】国際公開第2016/076047号
【文献】国際公開第2016/067884号
【発明の概要】
【0005】
ところで、亜鉛二次電池の短寿命化を招く別の要因として、負極活物質である亜鉛の形態変化が挙げられる。すなわち、充放電の繰り返しにより亜鉛が溶解及び析出を繰り返すにつれて、負極が形態変化して、気孔の閉塞、亜鉛の孤立化等を生じ、その結果、高抵抗化して充放電が困難になるとの問題がある。
【0006】
本発明者らは、今般、負極に所定のZn化合物を用いることにより、亜鉛二次電池において、充放電の繰り返しに伴う負極の形態変化を抑制して耐久性を向上し、それにより多数回の充放電サイクル後も良好な電池性能を維持できるとの知見を得た。
【0007】
したがって、本発明の目的は、亜鉛二次電池において、充放電の繰り返しに伴う負極の形態変化を抑制して耐久性を向上し、それにより多数回の充放電サイクル後も良好な電池性能を維持することを可能とする負極を提供することにある。
【0008】
本発明の一態様によれば、亜鉛二次電池に用いられる負極であって、
Al、In、Ti及びNbからなる群から選択される少なくとも1種とZnとの複合金属酸化物であるZn化合物を含む、負極が提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、
正極と、
前記負極と、
前記正極と前記負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するセパレータと、
電解液と、
を含む、亜鉛二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】例1(比較)において作製した負極の充放電サイクル307回後のX線CT像である。
図2】例5において作製した負極の充放電サイクル320回後のX線CT像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
負極
本発明の負極は亜鉛二次電池に用いられる負極である。この負極は、従来型のZnO含有負極とは異なり、Al、In、Ti及びNbからなる群から選択される少なくとも1種とZnとの複合金属酸化物として定義されるZn化合物を含む。このように所定のZn化合物を負極に用いることにより、亜鉛二次電池において、充放電の繰り返しに伴う負極の形態変化を抑制して耐久性を向上し、それにより多数回の充放電サイクル後も良好な電池性能(例えば高い容量維持率及び高い放電平均電圧)を維持することができる。つまり、電池のサイクル寿命を長くすることができる。Zn化合物を負極に用いることで負極の形態変化が抑制される理由は定かではないが、Zn化合物の電解液に対する溶解度の低さが要因の一つとして考えられる。
【0012】
すなわち、従来型のZnO含有負極では、ZnOは溶解度が高いため、充放電の際に電解液に溶け、電解液中を移動して異なった箇所に析出する。そして、この析出は負極板に対し不均一に起きるため、負極の形態変化が起きる要因となる。これに対し、本発明の負極に用いるZn化合物はZnOよりも溶解度が低いと考えられる。このため、Zn化合物を負極に用いることで、電解液中の亜鉛酸イオンの大きな移動が抑制され、負極の形態変化抑制に寄与するものと考えられる。こうした負極の形態変化抑制によって高抵抗化が抑制され、それにより多数回の充放電サイクル後における電池性能(例えば容量維持率及び放電平均電圧)が向上するものと考えられる。
【0013】
上述のとおり、Zn化合物は、Al、In、Ti及びNbからなる群から選択される少なくとも1種とZnとの複合金属酸化物である。典型的なZn化合物は、Al、In、Ti及びNbから選択される1種とZnとの複合酸化物(二元系の複合金属酸化物)である。そのようなZn化合物の好ましい例として、ZnAl、ZnInk+3(但し3≦k≦15)(例えばZnIn)、ZnTiO、ZnNb6、ZnNb、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。ZnNbが多数回の充放電サイクル後における容量維持率及び放電平均電圧に特に優れる点で最も好ましいが、それ以外の組成のZnAlやZnTiO等のZn化合物も安価な原料で望ましい性能が得られるという点では有利といえる。Zn化合物は、上述したような二元系の複合金属酸化物に限らず、Al、In、Ti及びNbから選択される2種とZnの複合金属酸化物(すなわち三元系の複合金属酸化物)であってもよい。例えば、Nbを固溶させたZnTiOであってもよいし、ZnO-TiO-Nbの複合酸化物であってもよい。
【0014】
負極は、ZnO及び/又は金属Znをさらに含むものであってよい。もっとも、上述したZn化合物はZnOのより良い代替物と考えられるため、負極はZnO及び/又は金属Zn(特にZnO)を必ずしも含む必要はない。いずれにせよ、Zn化合物、ZnO(存在する場合)及び金属Zn(存在する場合)の合計量に対する、Zn化合物の割合は典型的には5~95体積%、より典型的には10~80体積%、さらに典型的には20~70体積%、特に典型的には30~60体積%、最も典型的には50~60体積%である。負極活物質はゲル状に構成してもよいし、電解液と混合して負極合材としてもよい。例えば、負極活物質に電解液及び増粘剤を添加することにより容易にゲル化した負極を得ることができる。増粘剤の例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、CMC、アルギン酸等が挙げられるが、ポリアクリル酸が強アルカリに対する耐薬品性に優れているため好ましい。
【0015】
負極材料の形状は特に限定されないが、粉末状とすることが好ましく、それにより表面積が増大して大電流放電に対応可能となる。このように負極材料の表面積が大きいと、大電流放電への対応に適するとともに、電解液及びゲル化剤と均一に混合しやすく、電池組み立て時の取り扱い性も良い。
【0016】
負極はバインダーをさらに含むのが好ましい。負極がバインダーを含むことで、負極形状を保持しやすくなる。バインダーは公知の様々なバインダーが使用可能であるが、好ましい例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。PVA及びPTFEの両方を組み合わせてバインダーとして用いるのが特に好ましい。
【0017】
負極はシート状のプレス成形体であるのが好ましい。こうすることで、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることができ、負極の形態変化をより効果的に抑制することができる。かかるシート状のプレス成形体の作製は、負極材料にバインダーを加えて混練し、得られた混練物にロールプレス等のプレス成形を施してシート状に成形すればよい。
【0018】
負極には集電体が設けられるのが好ましい。集電体の好ましい例としては、銅パンチングメタルや銅エキスパンドメタルが挙げられる。この場合、例えば、銅パンチングメタルや銅エキスパンドメタル上に、Zn化合物、金属亜鉛及び酸化亜鉛粉末、並びに所望によりバインダー(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含む混合物を塗布して負極/負極集電体からなる負極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の負極板(すなわち負極/負極集電体)にプレス処理を施して、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。あるいは、上述したようなシート状のプレス成形体を銅エキスパンドメタル等の集電体に圧着してもよい。
【0019】
亜鉛二次電池
本発明の負極は亜鉛二次電池に適用されるのが好ましい。したがって、本発明の好ましい態様によれば、正極と、負極と、正極と負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するセパレータと、電解液とを含む、亜鉛二次電池が提供される。本発明の亜鉛二次電池は、亜鉛を負極として用い、かつ、電解液(典型的にはアルカリ金属水酸化物水溶液)を用いた二次電池であれば特に限定されない。したがって、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、その他各種のアルカリ亜鉛二次電池であることができる。例えば、正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなすのが好ましい。あるいは、正極が空気極であり、それにより亜鉛二次電池が亜鉛空気二次電池をなしてもよい。
【0020】
セパレータは層状複水酸化物(LDH)セパレータであるのが好ましい。すなわち、前述したように、ニッケル亜鉛二次電池や空気亜鉛二次電池の分野において、LDHセパレータが知られており(特許文献1~3を参照)、このLDHセパレータを本発明の亜鉛二次電池にも好ましく使用することができる。LDHセパレータは、水酸化物イオンを選択的に透過させながら、亜鉛デンドライトの貫通を阻止することができる。本発明の負極の採用による効果と相まって、亜鉛二次電池の耐久性をより一層向上することができる。
【0021】
LDHセパレータは、特許文献1~3に開示されるように多孔質基材と複合化されたものであってもよい。多孔質基材はセラミックス材料、金属材料、及び高分子材料のいずれで構成されてもよいが、高分子材料で構成されるのが特に好ましい。高分子多孔質基材には、1)フレキシブル性を有する(それ故薄くしても割れにくい)、2)気孔率を高くしやすい、3)伝導率を高くしやすい(気孔率を高めながら厚さを薄くできるため)、4)製造及びハンドリングしやすいといった利点がある。特に好ましい高分子材料は、耐熱水性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、しかも低コストである点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンであり、最も好ましくはポリプロピレンである。多孔質基材が高分子材料で構成される場合、機能層が多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている(例えば多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔がLDHで埋まっている)のが特に好ましい。この場合における高分子多孔質基材の好ましい厚さは、5~200μmであり、より好ましくは5~100μm、さらに好ましくは5~30μmである。このような高分子多孔質基材として、リチウム電池用セパレータとして市販されているような微多孔膜を好ましく用いることができる。
【0022】
電解液は、アルカリ金属水酸化物水溶液を含むのが好ましい。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等が挙げられるが、水酸化カリウムがより好ましい。亜鉛含有材料の自己溶解を抑制するために、電解液中に酸化亜鉛、水酸化亜鉛等を添加してもよい。
【実施例
【0023】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0024】
例1~6
(1)Zn化合物の作製(例2~6のみ)
例2~6については、以下に示される金属酸化物粉末及びZnO粉末を表1に示される配合割合(モル比)となるように秤量した。なお、例1においてはZn化合物の作製は行わなかった。
・Al粉末(大明化学株式会社製、TM-DAR)
・In粉末(株式会社高純度化学研究所製、純度:99.99%、平均粒径D50:4μm)
・TiO粉末(石原産業株式会社製、CR-EL)
・Nb粉末(株式会社高純度化学研究所製、純度:99.9%)
・Ta粉末(三井金属鉱業株式会社製、純度:99.9%)
・ZnO粉末(正同化学工業株式会社製、JIS規格1種グレード)
【0025】
【表1】
【0026】
秤量した金属酸化物粉末とZnO粉末を乳鉢により乾式で混合した。得られた混合物をるつぼに入れ、表1に示される条件に従い電気炉で焼成して各Zn化合物を生成させた。具体的には、200℃/hの昇温速度で混合物を加熱して表1に示される焼成温度に到達させ、当該焼成温度で5時間保持した後、200℃/hの降温速度で冷却させた。こうして得られたZn化合物を乳鉢で手粉砕して、表1に示される組成のZn化合物粉末を得た。
【0027】
(2)負極の作製
上記Zn化合物粉末(例2~6のみ)、ZnO粉末(正同化学工業株式会社製、JIS規格1種グレード)及び金属Zn粉末(三井金属鉱業株式会社製)を表2に示される配合割合となるように秤量した。
【0028】
【表2】
【0029】
秤量した上記粉末を乾式で混合した後、プロピレングリコール(関東化学株式会社製)、ポリビニルアルコール水溶液(和光純薬株式会社製)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液(ダイキン工業株式会社製)を加えて混練機で混練した。得られた混練物にロールプレスを施し、所望の厚さの負極合材シートとした。この負極合材シートを銅製の集電体(銅エキスパンドメタル)に圧着し、乾燥させて負極を得た。
【0030】
(3)亜鉛二次電池の作成
作製した負極、ペースト式水酸化ニッケル正極(容量密度:約700mAh/cm)、及びLDHセパレータを用いて、評価用の小型セルを作製した。小型セルには、電解液として酸化亜鉛を飽和させた5.4mol/lのKOH水溶液を注入した。
【0031】
(4)評価
充放電装置(東洋システム株式会社製、TOSCAT3100)を用いて、作成した亜鉛二次電池に対し、0.1C充電及び0.2C放電で化成を実施し、その後1C充放電サイクルを実施した。150サイクル目、250サイクル目及び350サイクル目における放電容量及び放電平均電圧を調べた。各サイクル充放電終了後の電池の放電容量を7サイクル目(化成終了直後のサイクル目)の放電容量で除した値に100を乗じたものを、容量維持率(%)とした。結果は表3に示されるとおりであった。表中、各サイクル数に到達する以前に低容量維持率の判明により充放電評価を終了した水準は空欄とした。表3の結果から、(例6のTa化合物以外の)例2~5のZn化合物含有負極を用いた亜鉛二次電池は、例1の従来型のZnO含有負極を用いた亜鉛二次電池よりも、長く容量を維持し、放電平均電圧も高いことが分かる。
【0032】
また、約300回の充放電サイクル後の評価セルの負極部分をX線CTで観察したところ、例2~5のZn化合物含有負極は、例1の従来型のZnO含有負極や例6のTa化合物含有負極よりも残存面積が大きくなり、負極のシェイプチェンジ抑制効果が確認された。このことから、表3に示される例2~5における高い容量維持率及び高い放電平均電圧は、負極のシェイプチェンジ抑制効果によってもたらされたものであることが分かる。参考のため、図1に例1における307サイクル後の評価セルの負極部分のX線CT像を、図2に例5における320サイクル後の評価セルの負極部分のX線CT像を示す。図中、黒っぽい領域が残留した負極活物質(Zn化合物、ZnO及び金属Zn)に相当する。図1と2の比較から、例5のZnNbを含む負極は、例1の従来型のZnO含有負極よりも、繰り返し充放電による負極のシェイプチェンジが非常に起こりにくいことが理解される。これらの結果から、本発明の所定のZn化合物を含む負極を用いた場合、そのようなZn化合物を含まない負極を用いた場合よりも、亜鉛二次電池の耐久性が向上することが分かる。
【0033】
【表3】
図1
図2