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特許7156879水上太陽光発電システムの支持構造および水上太陽光発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】水上太陽光発電システムの支持構造および水上太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/00 20200101AFI20221012BHJP
   B63B 35/34 20060101ALI20221012BHJP
   B63B 21/00 20060101ALI20221012BHJP
   B63B 21/22 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B35/34 Z
B63B21/00 A
B63B21/22 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018177910
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020049959
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 賢五
(72)【発明者】
【氏名】近藤 彰人
(72)【発明者】
【氏名】四谷 友騎
(72)【発明者】
【氏名】小橋 健太
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-135502(JP,A)
【文献】特開2003-118677(JP,A)
【文献】特開平10-313130(JP,A)
【文献】特開2016-019395(JP,A)
【文献】特開昭59-032579(JP,A)
【文献】米国特許第08939105(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00
B63B 35/34
B63B 21/00
B63B 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールを支持して水面に浮くフロートを有する水上太陽光発電システムの支持構造であって、
前記フロートは、複数が相互に連結されて複数の太陽電池モジュールを支持する水上構造物を構成し、前記水上構造物には係留部材が備えられ、
前記係留部材は、前記水上構造物を垂直投影したときの水底における投影領域と、前記フロートとの間に配設されており、
前記水上構造物には、該水上構造物を前記水底に引き下ろし可能な長さを有するガイド索が連結されていることを特徴とする水上太陽光発電システムの支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の水上太陽光発電システムの支持構造において、
前記係留部材は、一端が前記フロートに連結される係留索と、前記係留索の他端が連結され前記水底に固定されたアンカーとを含むことを特徴とする水上太陽光発電システムの支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の水上太陽光発電システムの支持構造において、
前記水上構造物は、前記アンカーの垂直上方部に開口部を備えることを特徴とする水上太陽光発電システムの支持構造。
【請求項4】
太陽電池モジュールを支持して水面に浮くフロートを有する水上太陽光発電システムの支持構造であって、
前記フロートは、複数が相互に連結されて複数の太陽電池モジュールを支持する水上構造物を構成し、前記水上構造物には係留部材が備えられ、
前記係留部材は、前記水上構造物を垂直投影したときの水底における投影領域と、前記フロートとの間に配設されており、一端が前記フロートに連結される係留索と、前記係留索の他端が連結され前記水底に固定されたアンカーとを含み、
前記水上構造物は、前記アンカーの垂直上方部に開口部を備えることを特徴とする水上太陽光発電システムの支持構造。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一つの請求項に記載の水上太陽光発電システムの支持構造において、
前記アンカーは、前記水底における前記投影領域の内側に設けられたことを特徴とする水上太陽光発電システムの支持構造。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一つの請求項に記載の水上太陽光発電システムの支持構造において、
前記アンカーは、前記水底における前記投影領域の内周部に設けられたことを特徴とする水上太陽光発電システムの支持構造。
【請求項7】
請求項2~のいずれか一つの請求項に記載の水上太陽光発電システムの支持構造において、
前記アンカーには、複数方向から延設された係留索の他端が連結されていることを特徴とする水上太陽光発電システムの支持構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つの請求項に記載の水上太陽光発電システムの支持構造によって、複数の太陽電池モジュールを水上に支持してなる水上太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上太陽光発電システムの支持構造および水上太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムとして、湖や池などの水面に太陽電池モジュールを設置することも行われている。この種の水上太陽光発電システムでは、水面に浮かべたフロートの上に太陽電池モジュールを設置して、影になりにくい水面を有効活用できるように構成されている。
【0003】
一般に、太陽電池モジュールは、その傾斜角度を太陽光の最適入射角に設置することで発電効率が高められる。水上太陽光発電システムにおいても同様に、太陽電池モジュールはフロート上に傾斜させて配置される。この場合、太陽電池モジュールを陸屋根や地面等の水平面に設置する場合とは異なり、水面は風などで波打ち、上下動するので、太陽電池モジュールを備えたフロートを安定的に支持し、強風で吹き上げられたり反転したりしないように繋ぎ止めておくことも求められる。
【0004】
この種の水上太陽光発電システムの一例として、例えば特許文献1には、太陽電池モジュールを支持する複数のフロートが互いに連結され、隣り合うフロートの揺動を許容した状態で水面に設置することが開示されている。連結した複数のフロート集合体の外周角部には索を設け、この索を係留手段で係留している。係留手段は、索に連結した固定用索と、この固定用索の端部に連結するアンカーとで構成されている。固定用索は、斜め下方に延び、フロート集合体の外側で、水底まで延設されている(特許文献1の図19および図28参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-229593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の水上太陽光発電システムの支持構造は、図8に模式的に示すように、水面に浮かべたフロートの集合体である水上構造物(アイランド)81が、外周部に連結された複数本の係留索82により、異なる複数の方向に引っ張られた状態で水底のアンカー83に係留されている。係留索82は、平面視で、水上構造物81を中心として、その外周部から外方へ延びる態様で配置されている。
【0007】
図8に示す水上太陽光発電システムの支持構造の場合、太陽電池モジュールに作用する風圧荷重などを考慮すると、水上構造物81から東西南北へ複数の方向に多数の係留手段を配設する必要性があった。そのため、水上構造物81への係留数が極めて多くなり、設置作業に手間がかかるとともに、水上太陽光発電システムを設置するためのコストが嵩むという問題点があった。
【0008】
また、発電効率を高めて、水面を有効に活用するには、水上構造物81の面積をできるだけ大きく確保することが望ましい。しかしながら、水上構造物81よりも外側の水中および水底に係留索82とアンカー83を配置しなければならず、岸から水上構造物81の外周部まで、少なくとも5~10mの距離を設ける必要性があった。そのため、水面の面積に対して、水上構造物81の面積の割合が低くなってしまうという問題点もあった。
【0009】
本発明は、前記の問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、水上の太陽電池モジュールを安定的に係留するとともに、その係留数の低減と太陽電池モジュールの設置面積の拡張との両方を実現し得る、新たな水上太陽光発電システムの支持構造およびこの支持構造を用いた水上太陽光発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、太陽電池モジュールを支持して水面に浮くフロートを有する水上太陽光発電システムの支持構造を前提とする。この支持構造として、前記フロートは、複数が相互に連結されて複数の太陽電池モジュールを支持する水上構造物を構成し、前記水上構造物には係留部材が備えられている。また、前記係留部材は、前記水上構造物を垂直投影したときの水底における投影領域と、前記フロートとの間に配設されていることを特徴としている。
【0011】
このような特定事項により、太陽電池モジュールを安定的に係留するとともに、その係留数の低減と太陽電池モジュールの設置面積の拡張を図ることが可能となる。
【0012】
前記太陽光発電システムの支持構造における、より具体的な構成として次のものが挙げられる。すなわち、前記水上太陽光発電システムの支持構造において、前記係留部材は、一端が前記フロートに連結される係留索と、前記係留索の他端が連結され前記水底に固定されたアンカーとを含んで構成される。
【0013】
また、前記アンカーは、前記水底における前記投影領域の内側に設けられることが好ましい。これにより、前記水上構造物の設置面積を拡張することが可能となる。
【0014】
また、前記アンカーは、前記水底における前記投影領域の内周部に設けられてもよい。これによっても、前記水上構造物の設置面積を拡張することが可能となる。
【0015】
また、前記アンカーには、複数方向から延設された係留索の他端が連結されていることが好ましい。これにより、前記投影領域に設けたアンカーによって、前記水上構造物を安定的に係留することが可能となる。
【0016】
また、前記水上構造物は、前記アンカーの垂直上方部に開口部を備えることが好ましい。これにより、太陽光発電システムの設置水域の水抜きを行う際に、前記水上構造物をアンカーに干渉させることなく水底に載置することが可能となる。
【0017】
また、前記水上構造物には、該水上構造物を前記水底に引き下ろし可能な長さを有するガイド索が連結されていることが好ましい。これにより、前記水上構造物を水底の所望の位置に導き、載置することが可能となる。
【0018】
また、前記の目的を達成するため、前記水上太陽光発電システムの支持構造によって、複数の太陽電池モジュールを水上に支持してなる水上太陽光発電システムも、本発明の技術的思想の範疇にある。これにより、前記水上構造物の係留数の低減と太陽電池モジュールの設置面積の拡張を図ることが可能となり、太陽電池モジュールを安定的に係留しつつ、水面を有効に活用することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、太陽電池モジュールを安定的に係留するとともに、その係留数の低減と太陽電池モジュールの設置面積の拡張を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る水上太陽光発電システムおよびその支持構造の基本構成を模式的に示す平面図である。
図2図1におけるA-A断面図である。
図3】前記水上太陽光発電システムの一部を拡大して示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態2に係る水上太陽光発電システムおよびその支持構造を模式的に示す平面図である。
図5図4におけるB-B断面図である。
図6図5に示す水上太陽光発電システムにおいて、水抜きを行った場合の様子を示す断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る水上太陽光発電システムの支持構造を示す説明図である。
図8】従来の水上太陽光発電システムの支持構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る水上太陽光発電システムの支持構造およびこの支持構造を適用した水上太陽光発電システムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る水上太陽光発電システム1およびその支持構造を模式的に示す平面図であり、図2は、図1のA-A断面図である。また、図3は水上太陽光発電システム1の一部を拡大して示す斜視図である。
【0023】
水上太陽光発電システム1は、複数の太陽電池モジュールを水面に浮くフロート上に支持して構成されている。なお、図1および図2では、複数のフロートの集合体である水上構造物2を模式的に示しており、フロート上に設置される複数の太陽電池モジュール等については省略して示している。
【0024】
水上太陽光発電システム1は、例えばため池、貯水池、養魚池、湖沼、海などの水域10に設置して発電を行うものである。図3に拡大して示すように、水上太陽光発電システム1において、水面に浮かぶ略矩形状のフロート4の上面には、複数の太陽電池モジュール3がマトリクス状に並べられるとともに、支持部材31により傾斜状態で支持されている。
【0025】
太陽電池モジュール3は、例えば矩形状のものとされ、ガラスやフィルム等からなる受光面保護材と裏面保護材との間に図示しない複数の太陽電池を挟み込んで封止された構造を有している。太陽電池モジュール3に用いられる太陽電池の種類は特に限定されず、例えば、単結晶、多結晶、薄膜等のシリコン系太陽電池、GaAs、CdTe、CdS等の化合物系太陽電池、色素増感、有機薄膜等の有機系太陽電池等が挙げられる。
【0026】
複数のフロート4は相互に連結されて、図1に示されるように、一つの水上構造物(アイランド)2を構成している。フロート4には、図示しない連結部が備えられて、隣り合うフロート4に対して回動可能な状態で連結されていることが好ましい。各フロート4は、例えば、内部が中空の樹脂成形浮体であって、太陽電池モジュール3が取り付けられた状態で十分な浮力を得られるように形成されている。フロート4同士の間には、メンテナンス作業を行う際の歩行スペースとして、太陽電池モジュール3を備えない補助フロートが連結されていてもよい。
【0027】
水上太陽光発電システム1では、水上構造物2を構成する複数のフロート4が上下方向に互いに回動可能とされることで、水面に生じる波の影響等で水上構造物2が上下変位したとしても、その上下変位を許容し得るように構成されている。また、これによって、フロート4に過剰な負荷がかかるのを防止し、破損の発生を抑制することが可能とされている。なおフロート4は、連結部を介して回動可能に連結されるに限られず、どのような手法によって連結されて水上構造物2を構成するものであってもよい。
【0028】
太陽電池モジュール3は、太陽光の受光効率を高めるため、その受光面32が傾斜した状態となるようにフロート4の上面に取り付けられている。すべての太陽電池モジュール3の受光面32は、傾斜方向が特定方向に揃えられて設置されている。
【0029】
例えば、図1に示すように、矩形状をなす水上構造物2の一辺が南北方向に沿うように配置され、該一辺に隣接する他の一辺が東西方向に沿うように配置される。この場合、水上構造物2に備えられる図示しない複数の太陽電池モジュール3は、各受光面32が例えば南向きとなるように傾斜方向が揃えられている。
【0030】
水上構造物2には、これらの複数のフロート4を水面に拘束するための係留部材5が備えられている。太陽電池モジュール3は、水上構造物2が係留されることで、受光面32が特定の傾斜方向に揃えられた状態で保持されている。
【0031】
図1および図2に示すように、係留部材5は、係留索51と、係留索51に連結されるアンカー52とを有する。係留索51は、一端が、水上構造物2を構成するフロート4のいずれかに連結され、他端が、アンカー52に連結されている。係留索51は、強度および耐候性を有する索条体であることが好ましく、例えばステンレスワイヤなどからなる金属製ワイヤロープ、繊維製ロープ、または金属製ワイヤロープと繊維材とを組み合わせた複合ロープなどであってもよく、特に限定されない。
【0032】
アンカー52は、水底6に設置されている。ここで、アンカー52が設置される場所は、水上構造物2を垂直投影したときに形成される投影領域61内とされている。この投影領域61とは、水面に浮かぶ水上構造物2の投影線が、投影面である水底6に対して垂直な場合に投影される領域である。例示の形態では、アンカー52は、水底6における投影領域61の内側に設けられており、かつ、水上構造物2の中央部の直下に位置している。
【0033】
また、アンカー52には、複数方向から延設された係留索51の他端が連結されている。複数本の係留索51は、フロート4と、水底6の投影領域61との間に配設されている。水上構造物2を構成する複数のフロート4は、東西方向にも南北方向にも互いに連結されており、これらのフロート4に対して係留部材5が均等に配置されている。
【0034】
図1に示す例では、係留索51は、南北方向(太陽電池モジュール3の受光面32の傾斜方向)には、アンカー52の北側に1本、南側に1本が延設されている。また、これに交差する方向となる東西方向には、アンカー52の東側に1本、西側に1本が延設されている。これにより、合計4本の係留索51が、水上構造物2の下方に均等に配設されている。
【0035】
水上太陽光発電システム1では、水域10のメンテナンス等のために定期的に水抜きが行われ、水面に浮かぶ水上構造物2を、水域10の水抜きによって水底6まで引き下ろさなければならないことがある。そのような場合に備え、水上構造物2には、アンカー52の垂直上方部に開口部21が設けられている。
【0036】
開口部21は、水上構造物2を構成する複数のフロート4同士の間に形成されている。開口部21の大きさは、アンカー52を内側に収容しうる程度の大きさがあれば足りる。例示の形態では、水底6の投影領域61の中央部にアンカー52が設置されており、この垂直上方部に位置する水上構造物2の中央部に開口部21が設けられている。このような開口部21としては、図3に示されるフロート4同士の間の空隙部33のいずれかを利用することが可能である。
【0037】
また、水上構造物2には、この水上構造物2を水底6に引き下ろし可能な長さを有するガイド索7が連結されている。ガイド索7は、水域10の外周部を囲む岸部11と水上構造物2との間に配設されている。図1に示すように、ガイド索7は、水上構造物2の外縁部から、水上構造物2における東西方向にそれぞれ延設され、対岸の岸部11に接続され固定されている。
【0038】
各ガイド索7は、係留索51と同様の索条体により形成され、水上構造物2を水底6に降下させたときの水上構造物2と岸部11との間の距離に相当する長さを有している。このため、図2に示すように、水上構造物2が水面に係留されているときには、ガイド索7は水中に撓んだ状態で配設されている。
【0039】
このように構成される水上太陽光発電システム1の支持構造によって、複数の太陽電池モジュール3を備えた水上構造物2を、水域10に安定的に係留しつつ支持することが可能となる。また、図8に示した従来構造の場合と比較して、水上構造物2の外方へ係留索51を延設したり投影領域61の外側にアンカー設置のための領域を設けたりする必要性がないことから、水面の面積に対する水上構造物2の面積の割合を大きく確保することが可能となる。図2に示すように、水上構造物2の面積を、水底6の面積いっぱいまで大きくすることも可能となり、水域10に、より多くの太陽電池モジュール3を設置することが可能となる。
【0040】
図1では、比較のため、仮に従来構造の係留索82およびアンカー83の配置した場合を想定して二点鎖線により示している。本実施形態では、係留索51の数は従来構造と同等であるのに対し、アンカー52は中央部の1箇所だけに集約することができる。これにより、部材コストを低減することができ、設置作業の手間が軽減されて施工性を高めることも可能となる。
【0041】
また、図2に破線にて示すように、水抜きを行う際には、水位の低下に伴って水上構造物2がガイド索7に導かれて水底6へ引き下ろされる。水上構造物2の開口部21には、水底6のアンカー52が挿入される。水上構造物2にはガイド索7が備えられているので、水底6の所望の位置にずれることなく水上構造物2を載置することが可能となる。水上構造物2には開口部21が設けられているので、水底6のアンカー52がフロート4等に干渉することなく、水上構造物2を水底6まで降下させることができる。
【0042】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係る水上太陽光発電システム1およびその支持構造を模式的に示す平面図であり、図5は、図4のB-B断面図である。図6は、図5の状態から、水抜きを行った場合の水上構造物2の設置形態を模式的に示す断面図である。
【0043】
水上太陽光発電システム1においては、水上構造物2の大きさに応じて係留部材5を多様な形態により配置して、水上構造物2を水域10に安定的に係留することが可能である。本実施形態では、係留部材5の配置形態に特徴を有しており、水上構造物2を構成するフロート4や、水上構造物2に支持される太陽電池モジュール3等の基本構成は実施形態1と共通する。
【0044】
係留部材5は、一端がフロート4に連結される複数本の係留索51と、これらの係留索51の他端が連結される複数のアンカー52とを含んで構成されている。図4および図5に示すように、アンカー52は、水底6の投影領域61の内側の4箇所に均等に配設されている。最も東側に位置するアンカー52と、最も西側に位置するアンカー52には、東西南北の四方向に延びる係留索51が連結されている。また、最も北側に位置するアンカー52と、最も南側に位置するアンカー52には、南北方向の二方向に延びる係留索51が連結されている。
【0045】
水上構造物2には、アンカー52の配置形態に対応させて、各アンカー52の垂直上方部に開口部21が設けられている。ガイド索7は、実施形態1と同様に、ガイド索7は、水上構造物2の外縁部から、水上構造物2における東西方向にそれぞれ延設され、対岸の岸部11に接続されている。
【0046】
このような水上太陽光発電システム1の支持構造によって、図5図8とを比較して明らかなように、水面の面積に対して水上構造物2の面積を大きく確保するとともに、複数の太陽電池モジュール3を水域10に安定的に係留し支持することが可能となる。図4に示すように、従来構造であれば必要となった12本の係留索82に対する12個のアンカー83は、この場合には4個のアンカー52で足りることとなる。このため、従来の構造と比較して、本実施形態では係留のために要するコストを大幅に削減することが可能になるとともに、施工性も格段に向上する。
【0047】
また、図6に示すように、水抜きを行った際には、水上構造物2が、水位の低下とともにガイド索7によって導かれて良好に水底6へ引き下ろされ、開口部21にアンカー52がそれぞれ挿入される。このように、ガイド索7を備えていることによって、水上構造物2を、水底6の所望の位置にずれることなく載置することが可能となる。
【0048】
(他の実施形態)
本発明に係る水上太陽光発電システム1の支持構造、およびこの支持構造により複数の太陽電池モジュール3が支持された水上太陽光発電システム1は、前記の実施形態以外にも他の様々な形態で実施することができる。例えば、係留部材5のアンカー52は、水底6の投影領域61のうち、前記実施形態に示した場所に設置されるに限らず、投影領域61内であればどのような位置に設置されてもよい。
【0049】
図7に示すように、アンカー52は、投影領域61の内周部に設けられてもよい。すなわち、水上構造物2を上方から見たとき、アンカー52は、水上構造物2の投影領域61内であって、その外周縁寄りに位置している。水上構造物2におけるアンカー52の垂直上方部には開口部21が設けられている。アンカー52には、投影領域61の内側の複数方向から延設された係留索51の他端が連結されている。この場合にも、複数の太陽電池モジュール3を水域10に安定的に係留し支持することが可能となる。
【0050】
このように、アンカー52および係留索51の設置箇所については、投影領域61内であれば特に限定されない。そのため、前記実施形態は例示であって、限定的なものではない。いずれの形態にあっても、太陽電池モジュール3を安定的に係留することが可能となるうえ、その係留数を低減して設置コストを抑え、太陽電池モジュール3の設置面積の拡張することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、水上に設置される太陽光発電システムにおいて好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 水上太陽光発電システム
2 水上構造物
21 開口部
3 太陽電池モジュール
32 受光面
4 フロート
5 係留部材
51 係留索
52 アンカー
6 水底
61 投影領域
7 ガイド索
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8