(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20221012BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20221012BHJP
H04L 69/14 20220101ALI20221012BHJP
【FI】
H04N1/00 127Z
B41J29/38
H04L69/14
(21)【出願番号】P 2018178688
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】荒木 明日香
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-023363(JP,A)
【文献】特開2004-241841(JP,A)
【文献】特開2008-017020(JP,A)
【文献】特開2007-300392(JP,A)
【文献】特開2017-084124(JP,A)
【文献】那須野 洋一 YOUICHI NASUNO,パワーアップ講座 レイヤー3スイッチ時代のネットワーク設計術,日経NETWORK ,日本,日経BP社 Nikkei Business Publications,Inc.,2006年03月22日,第72号 ,pp.176-183
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/38
H04L 69/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置において、
前記画像形成装置の所属するネットワーク以外のネットワークであってローカルネットワークである複数のネットワークのうち利用するネットワークを
所望の送信先が存在する可能性のある1つのみに制限するネットワーク決定部と、
制限されたネットワークを介してデータを送信するデータ送信部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ネットワーク決定部は、
前記利用するネットワークを、ユーザが指定したネットワークに決定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ネットワーク決定部は、
前記利用するネットワークを、登録ユーザとして認証されたユーザに関連付けられたネットワークに決定することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ネットワーク決定部は、
前記利用するネットワークを、登録ユーザとしてユーザを認証した認証サーバが属するネットワークに決定することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ネットワーク決定部は、
印刷ジョブを受信したネットワークと前記印刷ジョブのジョブオーナとを関連付けた印刷ジョブ履歴情報を用いて、前記利用するネットワークを、ユーザに一致するジョブオーナに関連付けられたネットワークに決定することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ネットワーク決定部は、
前記ユーザに係る複数の印刷ジョブのうち現在時刻から直前の所定時間以内に受信した印刷ジョブを受信したネットワークを優先することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ネットワーク決定部は、
前記利用するネットワークを、ユーザが属するグループと同じグループの他ユーザに関連付けられたネットワークに決定することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置でネットワークを決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複数のネットワーク接続部を搭載した印刷装置の研究開発が進められている。この印刷装置は、複数のネットワーク接続部を備えるため、スキャンデータ等のファイルを他装置へ保存する場合、ファイルの保存先を指定した後、通信開始時にネットワークを決定する処理が必要とされる。かかるネットワークの決定処理に関し、特許文献1は、ユーザ操作を契機にネットワークを選択し、通信接続不可時にネットワークを切り替える方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信接続不可時にネットワークを切り替える場合、次の課題がある。切り替え前後の各ネットワークに偶然にも同一名称の保存先が存在する場合、ファイルの保存処理自体は正常に終了するが、所望の保存先に保存されない可能性がある。また、ユーザのアクセスできない他ネットワークの保存先に誤って保存されると、他ネットワーク又は保存先のアクセス制限により削除できず、ファイルが第三者に開示されてしまう。更に、トラヒックが増加し、応答待ち時間等の無駄が発生する。これらの課題は、例えば、ファイルの保存先が、ルータを超えたネットワークに位置し、かつ、いずれかのネットワークからでしか到達できないネットワークに位置する場合に発生する。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、複数のネットワーク接続部を備える画像形成装置において、データを保存先に保存する際に、適切なネットワークにデータを送信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、複数のネットワークのうち利用するネットワークを1つのみに制限するネットワーク決定部と、制限されたネットワークを介してデータを送信するデータ送信部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のネットワーク接続部を備える画像形成装置において、データを保存先に保存する際に、適切なネットワークにデータを送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】印刷装置を有するネットワークの構成例を示す図である。
【
図2】印刷装置の機能ブロック構成例を示す図である。
【
図7】ネットワーク利用履歴情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、複数のネットワーク接続部を備える画像形成装置において、データを保存先に保存する際、データの保存先を指定する処理に加え、利用するネットワークを1つのみに制限することを特徴とする。利用するネットワークを1つのみに制限するので、印刷装置は、適切なネットワークにデータを送信でき、確実に所望の保存先にデータを保存できる。以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、印刷装置1を有するネットワークの構成例を示す図である。印刷装置1は、2つのネットワーク接続部(NIC;Network Interface Card)を備える。NIC20aとNIC20bは、それぞれ複数のルータRを介してインターネットを含む複数のネットワークNに多段に接続される。なお、印刷装置1は、3つ以上のNICを備えてもよい。
【0011】
印刷装置1は、ユーザ端末2からの印刷ジョブを受信して印刷する印刷装置本来の動作に加え、データを送信するクライアントとして動作する。具体的に、印刷装置1は、NIC20a又はNIC20bを通じて各ネットワークNにそれぞれアクセス可能であり、スキャンデータ等のファイルを所定のネットワークNへ送信し、ユーザ端末2又はDBサーバ3に保存する。また、印刷装置1は、印刷装置1を操作するユーザを認証する際、印刷装置1の備える登録ユーザ情報を用いて認証を行う他、各ネットワークNでユーザ認証をそれぞれ行う各認証サーバ4を用いて認証を行う。
【0012】
ユーザ端末2は、ユーザが業務等で使用する情報処理端末である。DBサーバ3は、各ネットワークNに所属するユーザ端末2からのデータを保存するサーバ装置である。印刷装置1は、ファイルの保存先としてユーザ端末2とDBサーバ3を選択可能に指定できる。認証サーバ4は、各ネットワークNに所属するユーザのユーザIDとパスワードとを関連付けて記憶し、印刷装置1を操作するユーザを認証するサーバ装置である。
【0013】
図1に示したネットワーク構成は、例えば、ある企業でネットワークNの異なる複数の部門が1つの印刷装置1を共有する場合に適用可能である。各部門と印刷装置1との間ではアクセス可能であるが、部門間ではアクセス不可である場合が想定される。各部門のユーザは、それぞれ、共有する1つの印刷装置1で印刷ジョブを印刷可能であるとともに、印刷装置1でスキャンしたスキャンデータのファイルを自部門の自身のユーザ端末2又はDBサーバ3に保存する。
【0014】
ここで、ネットワークの定義について説明する。ネットワークとは、ネットワークアドレスで表されるネットワークであり、例えば、LAN(Local Area Network)、VLAN(Virtual LAN)、WAN(Wide Area Network)、プライベートネットワーク、パブリックネットワーク等である。また、通信媒体の意味でのネットワークはNICに接続される点でNICと密接的関係にあり、印刷装置1のアプリケーションレイヤから見れば共にネットワークレイヤに位置するので、特許請求の範囲に記載した「ネットワーク」の語句には、印刷装置1の備える「NIC」も含まれる。
【0015】
次に、印刷装置1の機能について説明する。
図2は、印刷装置1の機能ブロック構成例を示す図である。印刷装置1は、ユーザ認証部11と、ファイル生成部12と、ファイル保存先指定部13と、ネットワーク決定部14と、ファイル送信部15と、印刷ジョブ制御部16と、ネットワーク利用制御部17と、データ記憶部18と、データ設定部19と、を備えて構成される。
【0016】
ユーザ認証部11は、データ記憶部18の登録ユーザ情報181を用いて、印刷装置1を操作するユーザを認証する機能を備える。また、ユーザ認証部11は、データ記憶部18の認証サーバ情報182を用いて、印刷装置1を操作するユーザの認証を各ネットワークの認証サーバ4を用いて行う機能を備える。
【0017】
ファイル生成部12は、印刷装置1から送信する送信対象データのファイルを生成する機能を備える。送信対象データの種類及び種別は、任意である。例えば、印刷装置1のスキャナ装置でスキャンしたスキャンデータである。
【0018】
ファイル保存先指定部13は、データ記憶部18からファイル保存先情報183を取得して、ファイルの保存先を選択可能に印刷装置1のパネル画面に表示し、ユーザにより選択された保存先をファイルの指定保存先として指定する機能を備える。
【0019】
ネットワーク決定部14は、データ記憶部18のネットワーク情報184を用いて、ファイル保存時に利用するネットワークを複数のネットワークのうち1つのみに制限する機能を備える。
【0020】
ファイル送信部15は、制限された1つのネットワークを介して送信対象データのファイルを送信し、指定保存先に保存する機能を備える。また、ファイル送信部15は、ファイルを送信した送信日時等をネットワーク利用履歴情報185としてデータ記憶部18に記憶する機能を備える。ファイル送信部15は、特許請求の範囲に記載された「データ送信部」に相当する。
【0021】
印刷ジョブ制御部16は、ユーザ端末2からの印刷ジョブを受信し、印刷装置1の印刷機構を用いて紙媒体に印刷するとともに、印刷ジョブを受信した受信日時等を印刷ジョブ履歴情報186としてデータ記憶部18に記憶する機能を備える。
【0022】
ネットワーク利用制御部17は、データ記憶部18のネットワーク情報184を用いて、印刷装置1に入力された入力パスワードが、制限された1つのネットワークのパスワードに一致する場合のみ、制限されたネットワークの利用を許可する機能を備える。
【0023】
データ記憶部18は、
図2に示したように、登録ユーザ情報181と、認証サーバ情報182と、ファイル保存先情報183と、ネットワーク情報184と、ネットワーク利用履歴情報185と、印刷ジョブ履歴情報186と、を読み出し可能に記憶する機能を備える。
【0024】
図3は、登録ユーザ情報181の例を示す図である。登録ユーザ情報181には、印刷装置1を操作可能であり登録されたユーザに関する情報が格納される。例えば、ユーザの名称、ユーザの所属グループ、ユーザの所属ネットワークと、ユーザのパスワードとが、ユーザIDに関連付けて格納される。
【0025】
図4は、認証サーバ情報182の例を示す図である。認証サーバ情報182には、認証サーバ4に関する情報が格納される。例えば、認証サーバ4のIDと、認証サーバ4のIPアドレスと、が関連付けて格納される。なお、IPアドレスは、サーバのID(名称等)から名前解決できるので、認証サーバ4のIPアドレスを予め格納しておくのに代えて、ユーザ認証時に取得してもよい。
【0026】
図5は、ファイル保存先情報183の例を示す図である。ファイル保存先情報183には、ファイルの保存先に関する情報が格納される。例えば、保存先のIDと、保存先のIPアドレスと、が関連付けて格納される。保存先は、
図5に例示したユーザ端末2やDBサーバ3の他、コンピュータ内のフォルダやディレクトリでもよい。なお、IPアドレスは、サーバのID(名称等)から名前解決できるので、保存先のIPアドレスを予め登録しておくのに代えて、ファイル保存時に取得してもよい。また、保存先についても、ファイル保存時にユーザ端末2及びDBサーバ3に問い合わせて取得してもよい。
【0027】
図6は、ネットワーク情報184の例を示す図である。ネットワーク情報184には、印刷装置1に接続されたネットワークに関する情報が格納される。例えば、ネットワークのIDと、ネットワークのネットワークアドレスと、ネットワークのパスワードと、が関連付けて格納される。ネットワークは、前述した通り印刷装置1のNICでもよい。なお、ネットワークアドレスは、ネットワークに問い合わせることで取得できるので、各ネットワークのネットワークアドレスを予め登録しておくのに代えて、ファイル保存時に取得してもよい。
【0028】
図7は、ネットワーク利用履歴情報185の例を示す図である。ネットワーク利用履歴情報185には、ファイル保存時のネットワークの利用履歴に関する情報が格納される。例えば、ファイルの送信日時と、ファイルを送信したユーザのID(名称等)と、ファイル保存時に利用したネットワーク(NIC)のIDと、がファイルIDに関連付けて格納される。
【0029】
図8は、印刷ジョブ履歴情報186の例を示す図である。印刷ジョブ履歴情報186には、ユーザが過去に印刷した印刷ジョブに関する情報が格納される。例えば、ユーザ端末2からの印刷ジョブの受信日時と、印刷ジョブのジョブオーナのID(名称等)と、印刷ジョブを受信したネットワーク(NIC)のIDと、が印刷ジョブIDに関連付けて格納される。
【0030】
データ設定部19は、登録ユーザ情報181と、認証サーバ情報182と、ファイル保存先情報183と、ネットワーク情報184と、をそれぞれ設定するための入力欄をパネル画面に表示し、印刷装置1の管理者により入力された設定データを受け付けてデータ記憶部18に記憶する機能を備える。
【0031】
次に、印刷装置1の動作について説明する。冒頭で説明した通り、本実施形態に係る印刷装置1は、ファイルを保存先に保存する際、利用するネットワークを1つのみに制限する点に特徴がある。以降、複数のネットワークの中からネットワークを決定する動作例について説明する。
【0032】
(動作例1)
動作例1では、ネットワーク決定部14が、複数のネットワークのうち利用するネットワークを1つのみに制限する場合を説明すると同時に、利用するネットワークをユーザが指定したネットワークに決定する場合について説明する。
図9は、動作例1の処理フローを示す図である。
【0033】
ステップS101;
まず、ファイル生成部12は、スキャナ装置でスキャンしたスキャンデータを受け取り、そのスキャンデータのファイルを生成する。
【0034】
ステップS102;
次に、ファイル保存先指定部13は、ファイル保存先情報183に含まれるファイル保存先を選択可能にパネル画面に表示し、ユーザにより選択された保存先をファイルの指定保存先として指定する。このとき、ファイル保存先指定部13は、ユーザ端末2及びDBサーバ3に問い合わせて取得したファイル保存先(例えば、DBサーバ3のフォルダ等)を追加表示してもよい。
【0035】
ステップS103;
次に、ネットワーク決定部14は、ファイルの指定保存先が、ネットワーク情報184に含まれる最初のネットワーク(LAN1)のセグメント内にあるか(YES)否か(NO)を判定する。YESの場合、ステップS104へ進み、NOの場合、ステップS105へ進む。例えば、ネットワーク決定部14は、指定保存先のIPアドレスの先頭24ビットのビット列が、LAN1のネットワークアドレスの先頭24ビットのビット列に一致するか否かで判定する。
【0036】
ステップS104;
ステップS103でYESの場合、ネットワーク決定部14は、ファイル保存時に利用する利用ネットワークをLAN1に決定する。利用ネットワークがLAN1に決定されると、LAN1に接続されたNIC20aが用いられることになる。その後、ステップS112へ進む。
【0037】
ステップS105;
ステップS103でNOの場合、ネットワーク決定部14は、ファイルの指定保存先が、ネットワーク情報184に含まれる次のネットワーク(LAN2)のセグメント内にあるか(YES)否か(NO)を判定する。YESの場合、ステップS106へ進み、NOの場合、ステップS107へ進む。
【0038】
ステップS106;
ステップS105でYESの場合、ネットワーク決定部14は、ファイル保存時の利用ネットワークをLAN2に決定する。利用ネットワークがLAN2に決定されると、LAN2に接続されたNIC20bが用いられることになる。その後、ステップS112へ進む。
【0039】
ステップS107;
ステップS105でNOの場合、ネットワーク決定部14は、印刷装置1にファイルの指定保存先又はファイルの指定保存先を含むセグメントへのスタティックルートが設定されているか(YES)否か(NO)を判定する。スタティックルートとは、印刷装置1の管理者により設定された固定の通信ルートである。YESの場合、ステップS108へ進み、NOの場合、ステップS109へ進む。
【0040】
ステップS108;
ステップS107でYESの場合、ネットワーク決定部14は、ファイル保存時の利用ネットワークをスタティックルートで指定されたネットワークに決定する。その後、ステップS112へ進む。
【0041】
ステップS109;
ステップS107でNOの場合、ネットワーク決定部14は、ユーザによりファイル保存時の利用ネットワークが指定されているか(YES)否か(NO)を判定する。YESの場合、ステップS110へ進み、NOの場合、ステップS111へ進む。
【0042】
ステップS110;
ステップS109でYESの場合、ネットワーク決定部14は、ファイル保存時の利用ネットワークをユーザが指定したネットワークに決定する。その後、ステップS112へ進む。
【0043】
ステップS111;
ステップS109でNOの場合、ネットワーク決定部14は、ファイル保存時の利用ネットワークを、印刷装置1に設定されたデフォルトゲートウェイのネットワークに決定する。その後、ステップS112へ進む。
【0044】
ステップS112;
最後に、ファイル送信部15は、ステップS101で生成していたファイルを、ステップS104,S106,S108,S110,S111のうちいずれかで決定された利用ネットワークへ送信し、ステップS102で指定された指定保存先に保存する。
【0045】
動作例1によれば、ステップS104,S106,S108,S110,S111のうちいずれかで決定された利用ネットワークへ送信するので、ファイル保存時の利用ネットワークを1つのみに制限することから、ファイルを保存先に保存する際に、適切なネットワークにファイルを送信できる。つまり、ファイル保存時の利用ネットワークを1つのみに制限するので、ユーザの意図しない保存先にファイルが送信される可能性を確実に排除でき、通信接続不可時にネットワークを切り替える従来の方法で生じるトラヒックの増加や応答待ち時間の無駄の発生を確実に防止できる。加えて、ファイル保存時にユーザの意図した動作が行われなかった場合、その原因を容易かつ迅速に突き止めることができる。
【0046】
また、動作例1によれば、ステップS110で、ファイル保存時の利用ネットワークを、ユーザが指定したネットワークに決定するので、ユーザの意図したネットワークにファイルを送信でき、より確実に所望の保存先にファイルを保存できる。
【0047】
(動作例2)
動作例2では、ネットワーク決定部14が、ファイル保存時の利用ネットワークを、登録ユーザとして認証されたユーザに関連付けられたネットワークに決定する場合について説明する。
図10は、動作例2の処理フローを示す図である。
【0048】
ステップS201;
まず、ユーザ認証部11は、印刷装置1のカードリーダ又はモニタ画面で受け付けたユーザのユーザID及びパスワードを受け取り、登録ユーザ情報181に含まれる登録ユーザのユーザID及びパスワードと一致するか(YES)否か(NO)を判定する。YESの場合、登録ユーザとしてログインを行いステップS202へ進み、NOの場合、ログインすることなく処理を終了する。
【0049】
ステップS202;
次に、ファイル生成部12は、スキャナ装置でスキャンしたスキャンデータを受け取り、そのスキャンデータのファイルを生成する。
【0050】
ステップS203;
次に、ファイル保存先指定部13は、ファイル保存先情報183に含まれるファイルの保存先を選択可能にパネル画面に表示し、ユーザにより選択された保存先をファイルの指定保存先として指定する。
【0051】
ステップS204;
次に、ネットワーク決定部14は、登録ユーザ情報181を参照し、ファイル保存時の利用ネットワークを、ステップS201でログインしたログインユーザに関連付けられた所属ネットワークに決定する。
【0052】
ステップS205;
最後に、ファイル送信部15は、ステップS202で生成していたファイルを、ステップS204で決定された利用ネットワークへ送信し、ステップS203で指定された指定保存先に保存する。
【0053】
動作例2によれば、ステップS204で、ファイル保存時の利用ネットワークを、ログインユーザに関連付けられた所属ネットワークに決定するので、ユーザが認証された状態で印刷装置1を操作する場合、利用ネットワークをファイル保存の度に指定しなくても自動で適切なネットワークを選択でき、適切なネットワークにファイルを送信できる。
【0054】
(動作例3)
動作例3では、ネットワーク決定部14が、ファイル保存時の利用ネットワークを、登録ユーザとしてユーザを認証した認証サーバが属するネットワークに決定する場合について説明する。
図11は、動作例3の処理フローを示す図である。
【0055】
ステップS301;
まず、ユーザ認証部11は、ユーザ認証の問い合わせを行っていない認証サーバ4があるか(YES)否か(NO)を判定する。YESの場合、ステップS302へ進み、NOの場合、処理を終了する。
【0056】
ステップS302;
ステップS301でYESの場合、ユーザ認証部11は、認証サーバ情報182に含まれる複数の認証サーバ4から、ユーザ認証を問い合わせる1つの認証サーバ4を決定する。
【0057】
ステップS303;
次に、ユーザ認証部11は、印刷装置1のカードリーダ又はモニタ画面で受け付けたユーザのユーザID及びパスワードを含めたユーザ認証要求を決定した認証サーバ4へ送信し、ユーザ認証を実行させる。
【0058】
ステップS304;
その後、ユーザ認証部11は、認証サーバ4からユーザ認証結果を受信し、そのユーザ認証結果に基づきユーザを認証できたか(YES)否か(NO)を判定する。YESの場合、ステップS305へ進み、NOの場合、ステップS301へ戻り、他の認証サーバ4に対してユーザ認証を問い合わせる。
【0059】
ステップS305;
ステップS304でYESの場合、ユーザ認証部11は、登録ユーザとしてユーザを認証した認証サーバ4の所属ネットワークをファイル保存時の利用ネットワークとして決定する。
【0060】
動作例3によれば、ステップS305で、ファイル保存時の利用ネットワークを、登録ユーザとしてユーザを認証した認証サーバ4の所属ネットワークに決定するので、ユーザが認証された状態で印刷装置1を操作する場合、利用ネットワークをファイル保存の度に指定しなくても自動で適切なネットワークを選択でき、適切なネットワークにファイルを送信できる。
【0061】
(動作例4)
動作例4では、ステップS204の別例として、印刷ジョブの受信時に用いたネットワーク(NIC)情報の履歴を随時記憶しておき、ファイル保存時に当該履歴情報を活用する場合について説明する。
【0062】
具体的には、ネットワーク決定部14は、印刷ジョブを受信したネットワーク(NIC)と印刷ジョブのジョブオーナとを関連付けた印刷ジョブ履歴情報186を用いて、ファイル保存時の利用ネットワークを、ログインユーザに一致するジョブオーナに関連付けられたネットワークに決定する。例えば、ネットワーク決定部14は、印刷ジョブ履歴情報186からログインユーザのユーザIDに一致するジョブオーナIDを探索し、探索したジョブオーナIDに関連付けられたネットワーク(NIC)を、ファイル保存時の利用ネットワークとして決定する。
【0063】
動作例4によれば、印刷ジョブ履歴情報186を用いて、ファイル保存時の利用ネットワークを、ログインユーザに一致するジョブオーナに関連付けられたネットワークに決定するので、利用ネットワークをファイル保存の度に指定しなくても自動で適切なネットワークを選択でき、適切なネットワークにファイルを送信できる。
【0064】
上記動作例4のオプション1として、ネットワーク決定部14は、ログインユーザに係る複数の印刷ジョブのうち現在時刻から直前の所定時間以内に受信した印刷ジョブを受信したネットワーク(NIC)を優先してもよい。例えば、
図8に例示した印刷ジョブ履歴情報186の場合、印刷装置1は、ユーザAからの印刷ジョブをNIC#1とNIC#2で受信している。このように一人のユーザが複数のネットワークを利用していた場合、印刷装置1は、現在時刻に近接する所定時間内の印刷ジョブを受信したNICをユーザAの属するネットワークのNICとみなす。現在時刻が「2018/09/01 00:00:00」であり、所定時間が「1日」であれば、「2018/08/31 00:00:00」~「2018/09/01 00:00:00」に印刷ジョブを受信したNIC#1をユーザAの利用ネットワークとして優先する。
【0065】
動作例4のオプション1によれば、ログインユーザに係る複数の印刷ジョブのうち直前の所定時間以内に受信した印刷ジョブを受信したネットワーク(NIC)を優先するので、ログインユーザの現在位置に応じたネットワークを選択でき、より適切なネットワークにファイルを送信できる。
【0066】
また、上記動作例4のオプション2として、ネットワーク決定部14は、ログインユーザに係る印刷ジョブを受信した回数が最も多いネットワーク(NIC)を優先してもよい。一人のユーザが複数のネットワークを利用する場合であっても、オプション1のように直前に利用したネットワークをユーザの属するネットワークとみなすことが必ずしも正しいとは限らない。そこで、オプション2では、印刷ジョブ履歴情報186からログインユーザに係る印刷ジョブのNIC毎の受信回数を算出し、最も受信回数の多いNICをログインユーザの属するネットワークのNICとみなす。例えば、
図8に例示した印刷ジョブ履歴情報186の場合、ログインユーザがユーザBであれば、NIC#1をユーザBの利用ネットワークとして優先する。
【0067】
動作例4のオプション2によれば、ログインユーザに係る印刷ジョブを受信した回数が最も多いネットワーク(NIC)を優先するので、ログインユーザの利用頻度の高いネットワークを選択でき、より適切なネットワークにファイルを送信できる。
【0068】
(動作例5)
動作例5では、ステップS204の別例として、ユーザが以前にファイル保存時に用いたネットワーク(NIC)を記憶しておき、ログインユーザがファイル保存時に利用するネットワークを決定する場合について説明する。
【0069】
具体的には、ネットワーク決定部14は、以前にファイルを送信したユーザとファイル保存時に利用したネットワークとを関連付けたネットワーク利用履歴情報185を用いて、ファイル保存時の利用ネットワークを、ログインユーザが以前に利用したネットワークに決定する。例えば、ネットワーク決定部14は、ネットワーク利用履歴情報185からログインユーザのユーザIDに関連付けられたネットワーク(NIC)を特定し、特定したネットワーク(NIC)をファイル保存時の利用ネットワークとして決定する。
【0070】
動作例5によれば、ファイル保存時の利用ネットワークを、ユーザが以前に利用したネットワークに決定するので、より適切なネットワークにファイルを送信できる。
【0071】
(動作例6)
動作例6では、ステップS204の別例として、同じグループの他ユーザが利用したネットワーク(NIC)を記憶しておき、ログインユーザがファイル保存時に利用するネットワークを決定する場合について説明する。
【0072】
具体的には、ネットワーク決定部14は、ユーザと所属グループとを関連付けた登録ユーザ情報181と、ユーザが以前に指定したネットワークを格納したネットワーク利用履歴情報185を用いて、ファイル保存時の利用ネットワークを、ログインユーザが属するグループと同じグループの他ユーザに関連付けられたネットワークに決定する。例えば、ネットワーク決定部14は、登録ユーザ情報181からログインユーザと同じグループに所属する他ユーザを探索し、ネットワーク利用履歴情報185から当該他ユーザが過去に利用したネットワークを特定して、特定したネットワークをファイル保存時の利用ネットワークとして決定する。
【0073】
動作例6によれば、ファイル保存時の利用ネットワークを、ユーザが属するグループと同じグループの他ユーザに関連付けられたネットワークに決定するので、より適切なネットワークにファイルを送信できる。
【0074】
(動作例7)
動作例7では、ステップS204以後の動作について説明する。動作例7では、ネットワーク(NIC)にパスワードを設定しておき、パスワードを知っているユーザのみネットワーク(NIC)を利用できる場合について説明する。
【0075】
具体的には、ネットワーク利用制御部17は、入力パスワードが、制限された利用ネットワークのパスワードに一致する場合のみ、その利用ネットワークの利用を許可する。例えば、ネットワーク利用制御部17は、ステップS204の後、決定された利用ネットワーク(NIC)のパスワードをログインユーザへ要求する。パスワードが入力された後、ネットワーク利用制御部17は、ネットワーク情報184を用いて、入力パスワードが利用ネットワークのパスワードに一致するか否かを判定し、互いのパスワードが一致する場合のみ、利用ネットワークの利用を許可する。互いのパスワードが一致しない場合、ステップS205へ進むことなく、処理を終了する。
【0076】
動作例7によれば、入力パスワードが利用ネットワークのパスワードに一致する場合のみ、利用ネットワークの利用を許可するので、ネットワーク利用のセキュリティを向上できる。
【0077】
(動作例8)
動作例8では、ステップS203の別例を説明する。動作例8では、ファイル保存先指定部13は、全ての保存先を一覧化した保存先一覧情報をパネル画面に表示する。例えば、ファイル保存先指定部13は、ファイル保存先情報183に含まれる全てのファイル保存先と、ユーザ端末2及びDBサーバ3に問い合わせて取得した全てのファイル保存先とを併せてリスト化し、ファイル保存先候補としてパネル画面に表示する。また、ファイル保存先指定部13は、ユーザ操作に応じて指定された保存先に問い合わせ、保存先に存在するファイルの一覧を表示する。動作例8によれば、全ての保存先を一覧化した保存先一覧情報をパネル画面に表示するので、ユーザは保存先が正しいか否かを確実かつ容易に判断できる。また、動作例8によれば、保存先に存在するファイルの一覧を表示するので、保存先のファイル一覧を参照可能なことから、前回保存したファイルや見覚えのあるファイルがあれば保存先として正しいことを確実かつ容易に判断できる。
【0078】
(動作例9)
動作例9では、ステップS204の別例を説明する。動作例9では、ネットワーク決定部14は、ファイル送信前に通信テストを行い、その結果に基づき通信可能なネットワーク(NIC)を特定し、通信可能な1つ以上のネットワークのうち最も通信速度の速いネットワークを、ファイル保存時の利用ネットワークとして決定する。例えば、ネットワーク決定部14は、数ビットのテストデータを各ネットワークをそれぞれ介して所定のサーバへ送信し、応答を受信するまでの応答時間を計測して、最も応答時間の小さいネットワーク(NIC)を利用ネットワークとする。動作例9によれば、通信可能な1つ以上のネットワークのうち最も通信速度の速いネットワークを利用ネットワークとして決定するので、より適切なネットワークにファイルを送信できる。
【0079】
(動作例10)
動作例10では、ステップS201以前の動作について説明する。動作例10では、データ設定部19は、ネットワーク情報の設定欄をモニタ画面に表示し、ユーザにより入力されたネットワーク名(NIC名)をネットワーク情報184に変更可能に追加する。この場合、印刷装置1は、ネットワーク利用履歴情報185と印刷ジョブ履歴情報186に格納するネットワーク(NIC)にネットワーク名(NIC名)を用いる。動作例10によれば、ユーザにより入力されたネットワーク名をネットワーク情報184に変更可能に追加するので、ユーザが容易に認識可能なネットワーク名を設定でき、利用ネットワークを容易に判断できる。
【0080】
(動作例11)
動作例11では、ステップS205以後の動作例を説明する。動作例11では、ファイル送信部15は、ファイル保存時の利用ネットワークに関する名称等の情報をモニタ画面に表示する。動作例11によれば、ファイル保存時に利用した利用ネットワークに関する情報をモニタ画面に表示するので、利用したネットワークをユーザへ通知でき、利用ネットワークを容易に判断できる。
【0081】
最後に、印刷装置1は、動作例1~動作例11で説明した全ての動作を実行可能である。印刷装置1は、ユーザ操作によりいずれか1つの動作例を選択して実行してもよいし、2つ以上の動作例を組み合わせて実行してもよい。また、印刷装置1は、メモリ及びCPUを備えたコンピュータにより実現できる。また、印刷装置1の各処理をプログラムとして構築し、コンピュータにインストールして実行させ、通信ネットワークを介して流通させることも可能である。更に、印刷装置1は、画像形成装置の例である。印刷装置1に付随する封入封緘装置等についても対象装置に含めることができる。
【0082】
<付記>
本出願は、以下の発明を開示する。
【0083】
(付記1)
複数のネットワークのうち利用するネットワークを1つのみに制限するネットワーク決定部と、
制限されたネットワークを介してデータを送信するデータ送信部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【0084】
(付記2)
前記ネットワーク決定部は、
前記利用するネットワークを、ユーザが指定したネットワークに決定することを特徴とする付記1に記載の画像形成装置。
【0085】
(付記3)
前記ネットワーク決定部は、
前記利用するネットワークを、登録ユーザとして認証されたユーザに関連付けられたネットワークに決定することを特徴とする付記1又は2に記載の画像形成装置。
【0086】
(付記4)
前記ネットワーク決定部は、
前記利用するネットワークを、登録ユーザとしてユーザを認証した認証サーバが属するネットワークに決定することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【0087】
(付記5)
前記ネットワーク決定部は、
印刷ジョブを受信したネットワークと前記印刷ジョブのジョブオーナとを関連付けた印刷ジョブ履歴情報を用いて、前記利用するネットワークを、ユーザに一致するジョブオーナに関連付けられたネットワークに決定することを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
【0088】
(付記6)
前記ネットワーク決定部は、
前記ユーザに係る複数の印刷ジョブのうち現在時刻から直前の所定時間以内に受信した印刷ジョブを受信したネットワークを優先することを特徴とする付記5に記載の画像形成装置。
【0089】
(付記7)
前記ネットワーク決定部は、
前記利用するネットワークを、ユーザが属するグループと同じグループの他ユーザに関連付けられたネットワークに決定することを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0090】
1…印刷装置
2…ユーザ端末
3…DBサーバ
4…認証サーバ
11…ユーザ認証部
12…ファイル生成部
13…ファイル保存先指定部
14…ネットワーク決定部
15…ファイル送信部
16…印刷ジョブ制御部
17…ネットワーク利用制御部
18…データ記憶部
19…データ設定部
20a…NIC#1
20b…NIC#2
181…登録ユーザ情報
182…認証サーバ情報
183…ファイル保存先情報
184…ネットワーク情報
185…ネットワーク利用履歴情報
186…印刷ジョブ履歴情報