(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 3/30 20060101AFI20221012BHJP
B23B 7/06 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B23B3/30
B23B7/06
(21)【出願番号】P 2018191537
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 修一
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002589(WO,A1)
【文献】特開昭53-021056(JP,A)
【文献】特開平4-69131(JP,A)
【文献】特開2002-268715(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第310219(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 3/30-3/32,7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するワーク保持手段を備え、該ワークに対して所定の作業を行う複数のモジュールと、複数の前記モジュールの作動を制御する制御手段と、を有し、
複数の前記モジュールが、
第1の方向に移動可能であり、前記第1の方向に直交する第2の方向には移動しない固定モジュールと、
前記第1の方向及び前記第2の方向に移動可能であり、互いに並列に前記固定モジュールの対向側に配置されて前記固定モジュールに対向可能な2つの移動モジュールと、で構成されている工作機械であって、
前記制御手段は、
両移動モジュールの一方のみが前記固定モジュールの対向位置に移動するように他方の移動モジュールの移動を規制する規制手段と、前記所定の作業に基づいて固定モジュールの対向位置に移動する移動モジュールを判断する判断手段を備え、
前記固定モジュールと一方の前記移動モジュールとの間で連携して行われる作業と、前記固定モジュールと他方の前記移動モジュールとの間で連携して行われる作業と、を同時並行して行う場合に、一方の前記移動モジュールと他方の前記移動モジュールとの両方が前記固定モジュールの対向位置に移動するように前記制御手段から移動指令を受けたときに、
前記規制手段が、
前記固定モジュールと、前記判断手段によって判断された一方の前記移動モジュールとの前記作業が終了すると、他方の前記移動モジュールの、前記対向位置への移動の前記規制を解除するように、複数の前記モジュールの作動を制御することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記判断手段が、
加工プログラムに記載されている、前記固定モジュールと前記移動モジュールとの間で連携して行われる複数の前記作業の動作指令の実行順序に従って、前記移動モジュールを判断する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記判断手段が、
前記固定モジュールがワークを保持しているときには、該ワークを次工程に搬送する一方の前記移動モジュールの移動を優先し、
前記固定モジュールがワークを保持していないときには、前記固定モジュールにワークを搬送する他方の前記移動モジュールの移動を優先するように、前記移動モジュールを判断する、請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを保持するワーク保持手段を備え、該ワークに対して所定の作業を行う複数のモジュールと、モジュールの作動を制御する制御手段と、を有し、複数のモジュールが、Z軸方向に直交するX軸方向には移動しない固定モジュールと、それぞれZ軸方向及びX軸方向に移動可能であり、互いに並列に固定モジュールの対向側に配置されて、固定モジュールに対して対向可能な2つの移動モジュールとで構成されている工作機械が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
当該構成の工作機械によれば、一方の移動モジュールがワークに対して所定の作業を行った後、当該ワークを固定モジュールに受け渡し、固定モジュールが当該ワークに対して所定の加工を行った後、当該ワークを他方の移動モジュールに受け渡して次の作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される工作機械では、固定モジュールに対して、2つの移動モジュールがともに当該固定モジュールに対向する位置に移動可能である。そのため、移動モジュールと固定モジュールとの間でワークの受渡し等を行う際に、2つの移動モジュールを固定モジュールに対向する位置に円滑に移動させるように制御することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、2つの移動モジュールを固定モジュールに対向する位置に円滑に移動させるように制御することが可能な工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の工作機械は、ワークを保持するワーク保持手段を備え、該ワークに対して所定の作業を行う複数のモジュールと、複数の前記モジュールの作動を制御する制御手段と、を有し、複数の前記モジュールが、第1の方向に移動可能であり、前記第1の方向に直交する第2の方向には移動しない固定モジュールと、前記第1の方向及び前記第2の方向に移動可能であり、互いに並列に前記固定モジュールの対向側に配置されて前記固定モジュールに対向可能な2つの移動モジュールと、で構成されている工作機械であって、前記制御手段は、両移動モジュールの一方のみが前記固定モジュールの対向位置に移動するように他方の移動モジュールの移動を規制する規制手段と、前記所定の作業に基づいて固定モジュールの対向位置に移動する移動モジュールを判断する判断手段を備え、前記固定モジュールと一方の前記移動モジュールとの間で連携して行われる作業と、前記固定モジュールと他方の前記移動モジュールとの間で連携して行われる作業と、を同時並行して行う場合に、一方の前記移動モジュールと他方の前記移動モジュールとの両方が前記固定モジュールの対向位置に移動するように前記制御手段から移動指令を受けたときに、前記規制手段が、前記固定モジュールと、前記判断手段によって判断された一方の前記移動モジュールとの前記作業が終了すると、他方の前記移動モジュールの、前記対向位置への移動の前記規制を解除するように、複数の前記モジュールの作動を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記判断手段が、加工プログラムに記載されている、前記固定モジュールと前記移動モジュールとの間で連携して行われる複数の前記作業の動作指令の実行順序に従って、前記移動モジュールを判断するのが好ましい。
【0009】
本発明の工作機械は、上記構成において、前記判断手段が、前記固定モジュールがワークを保持しているときには、該ワークを次工程に搬送する一方の前記移動モジュールの移動を優先し、前記固定モジュールがワークを保持していないときには、前記固定モジュールにワークを搬送する他方の前記移動モジュールの移動を優先するように、前記移動モジュールを判断するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つの移動モジュールを、固定モジュールに対向する位置に同時に移動することを規制し、固定モジュールに対して円滑に移動させるように制御することが可能な工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である工作機械の構成を概略で示す説明図である。
【
図2】モジュールMD2を移動させる際の移動指令のフローチャート図である。
【
図3】(a)~(c)は、それぞれモジュールMD2をモジュールMD3の側に移動させる際の工程パターンを示す概略図である。
【
図4】モジュールMD4を移動させる際の移動指令のフローチャート図である。
【
図5】(a)~(c)は、それぞれモジュールMD4をモジュールMD3の側に移動させる際の工程パターンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す工作機械1は基台2を備え、基台2の上に、それぞれワークに対して所定の作業を行う4台のモジュールMD1、MD2、MD3、MD4を備えている。モジュールMD1とモジュールMD3は互いに並列に配置されており、モジュールMD2とモジュールMD4は互いに並列であるとともにモジュールMD1及びモジュールMD3の対向側に配置されている。
【0013】
モジュールMD1は、主軸台11に回転自在に支持された主軸12を備えている。主軸12の先端にはチャック13が設けられ、チャック13によりワークを保持することができる。主軸台11には従来公知のビルトインモータが主軸モータとして設けられ、主軸12は主軸モータにより駆動されてチャック13により保持したワークとともに回転することができる。
【0014】
モジュールMD1は、基台2に固定された一対のZ軸ガイドレール14を介して基台2に搭載されている。Z軸ガイドレール14は、それぞれ主軸12の軸方向に沿う方向すなわちZ軸方向(第1の方向)に沿って延びており、モジュールMD1は、Z軸ガイドレール14に案内されてZ軸方向に移動可能となっている。主軸台11と基台2との間に設けられる従来公知のボールネジ機構15を、サーボモータ等の駆動源16によって駆動することで、モジュールMD1を基台2上でZ軸方向に移動制御することができる。モジュールMD1は、Z軸方向には移動可能であるが、X軸方向には移動しない固定モジュールとなっている。
【0015】
モジュールMD2は、主軸台21に回転自在に支持された主軸22を備え、主軸22がZ軸方向に沿う方向で配置されている。主軸22の先端にはチャック23が設けられ、チャック23によりワークを保持することができる。主軸台21には従来公知のビルトインモータが主軸モータとして設けられ、主軸22は主軸モータにより駆動されてチャック23により保持したワークとともに回転することができる。
【0016】
モジュールMD2は、基台2に固定された一対のX軸ガイドレール24に搭載された移動台25の上に一対のZ軸ガイドレール26を介して搭載されている。X軸ガイドレール24は、それぞれZ軸方向に直交する水平方向すなわちX軸方向(第2の方向)に沿って延びており、モジュールMD2は移動台25とともにX軸ガイドレール24に案内されてX軸方向に移動可能となっている。移動台25と基台2との間に設けられる従来公知のボールネジ機構27を、サーボモータ等の駆動源28によって駆動することで、モジュールMD2を基台2上でX軸方向に移動制御することができる。Z軸ガイドレール26は、それぞれZ軸方向に沿って延びており、モジュールMD2は、Z軸ガイドレール26に案内されることにより、X軸方向に加えてZ軸方向に移動可能となっている。主軸台21と移動台25との間に設けられる従来公知のボールネジ機構29を、サーボモータ等の駆動源30によって駆動することで、モジュールMD2を移動台25上でZ軸方向に移動制御することができる。モジュールMD2は、Z軸方向に加えてX軸方向に移動可能な移動モジュールとなっている。
【0017】
モジュールMD3は、主軸台31に回転自在に支持された主軸32を備え、主軸32がZ軸方向に沿う方向で配置されている。主軸32の先端にはチャック33が設けられ、チャック33によりワークを保持することができる。主軸台31には従来公知のビルトインモータが主軸モータとして設けられ、主軸32は主軸モータにより駆動されてチャック33により保持したワークとともに回転することができる。
【0018】
モジュールMD3は、基台2に固定された一対のZ軸ガイドレール34を介して基台2に搭載されている。Z軸ガイドレール34は、それぞれZ軸方向に沿って延びており、モジュールMD3は、Z軸ガイドレール34に案内されてZ軸方向に移動可能となっている。主軸台31と基台2との間に設けられる従来公知のボールネジ機構35を、サーボモータ等の駆動源36によって駆動することで、モジュールMD3を基台2上でZ軸方向に移動制御することができる。モジュールMD3は、Z軸方向には移動可能であるが、X軸方向には移動しない固定モジュールとなっている。
【0019】
モジュールMD4は、主軸台41に回転自在に支持された主軸42を備え、主軸42がZ軸方向に沿う方向で配置されている。主軸42の先端にはワーク保持手段としてのチャック43が設けられ、チャック43によりワークを保持することができる。主軸台41には従来公知のビルトインモータが主軸モータとして設けられ、主軸42は主軸モータにより駆動されてチャック43により保持したワークとともに回転することができる。
【0020】
モジュールMD4は、モジュールMD2と共用の一対のX軸ガイドレール24に搭載された移動台44の上に一対のZ軸ガイドレール45を介して搭載されており、移動台44とともにX軸ガイドレール24に案内されてX軸方向に移動可能となっている。移動台44と基台2との間に設けられる従来公知のボールネジ機構46を、サーボモータ等の駆動源47によって駆動することで、モジュールMD4を基台2上でX軸方向に移動制御することができる。Z軸ガイドレール45は、それぞれZ軸方向に沿って延びており、モジュールMD4は、Z軸ガイドレール45に案内されることにより、X軸方向に加えてZ軸方向に移動可能となっている。主軸台31と移動台44との間に設けられる従来公知のボールネジ機構48を、サーボモータ等の駆動源49によって駆動することで、モジュールMD4を移動台44上でZ軸方向に移動制御することができる。モジュールMD4は、Z軸方向に加えてX軸方向に移動可能な移動モジュールとなっている。
【0021】
基台2は、一部に切欠き部2aを備えて平面視で略L字形状に形成されている。X軸ガイドレール24は、それぞれ基台2の切欠き部2aが設けられていない部分において、モジュールMD1及びモジュールMD3に対向する部分から切欠き部2aに対向する部分にまで延びている。
【0022】
モジュールMD2は、モジュールMD1、MD3の対向側において、モジュールMD1と対向する位置とモジュールMD3と対向する位置との間でX軸方向に移動可能となっており、X軸方向に移動することで、モジュールMD1及びモジュールMD3の何れか一方に選択的に対向することができる。モジュールMD4は、モジュールMD1、MD3の対向側において、モジュールMD3と対向する位置と切欠き部2aに対向する位置との間でX軸方向に移動可能となっており、X軸方向に移動することで、モジュールMD3及び切欠き部2aの何れか一方に選択的に対向することができる。モジュールMD2ないしモジュールMD4がモジュールMD3に対向する位置(
図1において2点鎖線で示す)は、モジュールMD2とモジュールMD4の何れもが移動可能な対向位置Aとなっている。
【0023】
モジュールMD1は、加工対象となるワークをワーク供給部3から受け取ることができる。モジュールMD2は、モジュールMD1からワークを受け取ることができるとともに当該ワークをモジュールMD3に受け渡すことができる。モジュールMD4は、モジュールMD3からワークを受け取ることができるとともに当該ワークをワーク搬出部4から次の工程に向けて搬出させることができる。
【0024】
モジュールMD1、MD2、MD3、MD4は、受け取ったワークをチャック13、23、33、43で保持して、各モジュール毎に設けられた工具台の工具によってワークを加工することができる。モジュールMD1、MD2、MD3、MD4は、それぞれ移動することで、基台2に設けられた工具台の工具によって、チャック13、23、33、43で保持したワークを加工することもできる。
【0025】
モジュールMD1、MD2、MD3、MD4は、それぞれワークを受け取るとともに、受け取ったワークをチャック13、23、33、43で保持して当該ワークに対して所定の加工を行った後、次の工程にワークを受け渡すなど、ワークに対して所定の作業を行うことができる。
【0026】
工作機械1は制御手段としての制御部5を有している。制御部5は、例えばCPU(中央演算処理装置)やメモリ等の記憶手段を備えたマイクロコンピュータで構成され、記憶手段には加工プログラムが格納されている。
【0027】
制御部5は、モジュールMD1、MD2、MD3、MD4、各駆動源16、28、30、36、47、49、ワーク供給部3及びワーク搬出部4に接続されており、加工プログラムに従って、ワーク供給部3から供給されたワークを、モジュールMD1、MD2、MD3、MD4の間で順に受け渡しつつ所定の加工を行ってワーク搬出部4から搬出させるように、各モジュールMD1、MD2、MD3、MD4、各駆動源16、28、30、36、47、49、ワーク供給部3及びワーク搬出部4の作動を統合制御することができる。
【0028】
制御部5は、その機能として、規制手段5aと判断手段5bとを備えている。規制手段5aは、それぞれ移動モジュールであるモジュールMD2、MD4の一方のみが、固定モジュールであるモジュールMD3の対向位置Aに移動するように、他方のモジュールMD2、MD4の移動を規制する。判断手段5bは、各モジュールMD1、MD2、MD3、MD4が行う所定の作業に基づいて、モジュールMD3の対向位置Aに移動するモジュールMD2、MD4の判断を行う。
【0029】
上記機能を有する制御部5は、各モジュールMD1、MD2、MD3、MD4による複数の所定の作業を、同時に並列的に行うように、各モジュールMD1、MD2、MD3、MD4、各駆動源16、28、30、36、47、49、ワーク供給部3及びワーク搬出部4の作動を制御することができる。上記構成を有する工作機械1では、モジュールMD2とモジュールMD4が、共にモジュールMD3の対向位置Aに移動可能な移動モジュールであるので、制御部5は、判断手段5bによって、各モジュールMD1、MD2、MD3、MD4が行う所定の作業に基づいてモジュールMD2、MD4のうちの何れを対向位置Aに移動させるかを判断し、規制手段5aによって、該判断に基づいて選択したモジュールMD2またはモジュールMD4の何れか一方のみが対向位置Aに移動するように、選択されていない他方のモジュールMD2またはモジュールMD4の移動を規制して、モジュールMD1、MD2、MD3、MD4の作動を制御する。
【0030】
例えば、モジュールMD3とモジュールMD2との間で連携して行われる作業と、モジュールMD3とモジュールMD4との間で連携して行われる作業とが同時並行して行われるような、各モジュールMD1、MD2、MD3、MD4による複数の所定の作業を、同時に並列的に行う場合に、モジュールMD2とモジュールMD4の両方がモジュールMD3の対向位置Aに移動するように制御部5から移動指令を受けることがあり得る。
【0031】
これに対して制御部5は、判断手段5bによって移動させるべき移動モジュール(モジュールMD2、MD4)を判断し、当該判断により選択したモジュールMD2、MD4の一方の対向位置Aへの移動を許容し、他方の対向位置Aへの移動を規制手段5aによって規制するように、モジュールMD2ないしモジュールMD4の作動を制御して、モジュールMD2とモジュールMD4とがモジュールMD3の対向位置Aに同時に移動することを回避する。
【0032】
予めワークをモジュールMD1からモジュールMD2に受け渡し、モジュールMD2のワークをモジュールMD3に受け渡し、モジュールMD3のワークをモジュールMD4に受け渡す加工工程に沿って加工が行われるように定められている場合、制御部5がモジュールMD2のX軸方向への移動指令を受けると、制御部5は、
図2に示すように、まず、ステップS1において、モジュールMD2が、モジュールMD1側へ移動するのかモジュールMD3側へ移動するのかが移動指令による移動先の位置に応じて判断される。ここで、モジュールMD1側への移動は、モジュールMD2が、モジュールMD3に対向する位置からモジュールMD1に対向する位置に向けて移動することを意味し、モジュールMD3側への移動は、モジュールMD2が、モジュールMD1に対向する位置からモジュールMD3に対向する位置に向けて移動することを意味する。
【0033】
図3(a)に示すように、モジュールMD1側に移動を行う場合には、ステップS1において、モジュールMD2がモジュールMD1側へ移動することが許容され、ステップS2において、モジュールMD2はモジュールMD1側へ移動する。
【0034】
ステップS1において、モジュールMD2がモジュールMD3側へ移動すると判断された場合には、ステップS3において、判断手段5bにより、モジュールMD3が実行中のプログラムブロックに応じて、モジュールMD3が加工中ではないかが判断される。モジュールMD3の実行中のプログラムブロックが、加工プログラムの加工工程であれば、加工中であると判断される。モジュールMD3が加工中であれば、モジュールMD3が、モジュールMD4に受け渡すためのワークWを加工している最中で、次の工程が該ワークをモジュールMD4への受け渡しとなる。よって、モジュールMD3が加工中の場合には、モジュールMD3が、モジュールMD4に受け渡すためのワークWを加工しており、判断手段5bにより、モジュールMD3はワークを保持していると判断され、モジュールMD4が優先して対向位置Aに移動する移動モジュールと判断され、ステップS3に戻り、モジュールMD3での加工が完了するまでステップS3の判断を繰り返す。
【0035】
ステップS3において、
図3(b)に示すように、判断手段5bによりモジュールMD3が加工中ではない、と判断されると、次に、ステップS4において、判断手段5bによりモジュールMD3が加工済みのワークWをモジュールMD4に受け渡したか否かが判断される。モジュールMD3の実行中のプログラムブロックが、モジュールMD3とモジュールMD4の間でのワークWの受け渡し工程であれば、ワークWを受け渡ししていないと判断され、受け渡し工程を終了していれば、ワークWの受け渡しは完了していると判断される。
【0036】
モジュールMD3からモジュールMD4への加工済みのワークWを受け渡ししていない場合には、次の工程が加工済みワークWのモジュールMD4への受け渡しとなるため、判断手段5bにより、モジュールMD3はワークWを保持していると判断され、モジュールMD4が優先して対向位置Aに移動する移動モジュールと判断され、ステップS4に戻り、ワークWの受け渡しが完了するまでステップS4の判断を繰り返す。規制手段5aはステップS3及びステップS4の判断の繰り返しによって、上記判断において対向位置Aに移動する移動モジュールとして選択されなかったモジュールMD2の対向位置Aへの移動を規制する。
【0037】
モジュールMD3からモジュールMD4への加工済みのワークWの受け渡しが完了している場合には、
図3(c)に示すように、モジュールMD4が、当該ワークWをワーク搬出部4から搬出させるために切欠き部2aに対向する位置に移動し、次の工程がモジュールMD2の保持しているワークWのモジュールMD3への受け渡しとなるため、判断手段5bにより、モジュールMD3がワークWを保持していないと判断され、モジュールMD2が優先して対向位置Aに移動する移動モジュールと判断され、モジュールMD2の対向位置Aへの移動の規制が解除されて、対向位置Aへの移動が許容され、ステップS5においてモジュールMD2は対向位置Aへ移動する。
【0038】
前記のようにワークをモジュールMD1からモジュールMD2及びモジュールMD3を介してモジュールMD4に受け渡す加工工程に沿って加工が行われる場合に、制御部5がモジュールMD4のX軸方向への移動指令を受けると、制御部5は、
図4に示すように、まず、ステップS6において、モジュールMD4が、モジュールMD3側へ移動するのかワーク搬出部4側へ移動するのかが移動指令による移動先の位置に応じて判断される。ここで、モジュールMD3側への移動は、モジュールMD4が、切欠き部2aに対向する位置からモジュールMD3に対向する位置に向けて移動することを意味し、ワーク搬出部4側への移動は、モジュールMD4が、モジュールMD3に対向する位置から切欠き部2aに対向する位置に向けて移動することを意味する。
【0039】
図5(a)に示すように、モジュールMD4がワーク搬出部4側への移動として切欠き部2aに対向する位置に移動を行う場合は、ステップS6において、モジュールMD4が切欠き部2aへ移動することが許容され、ステップS7において、モジュールMD4は切欠き部2aへ移動する。
【0040】
ステップS6において、モジュールMD4がモジュールMD3側へ移動すると判断された場合には、ステップS8において、判断手段5bにより、モジュールMD3が実行中のプログラムブロックに応じて、
図5(b)に示すように、モジュールMD3が加工中か、または、
図5(c)に示すように、モジュールMD3が加工済みのワークWを受け渡していないかが判断される。
【0041】
ステップS8において、判断手段5bによりモジュールMD3が加工中ではなく、モジュールMD3が加工済みのワークWの受け渡しが完了していると判断されると、判断手段5bにより、モジュールMD2が優先して対向位置Aに移動する移動モジュールと判断され、ステップS8に戻り、判断手段5bによりモジュールMD3が加工中であると判断されるか、または、モジュールMD3が加工済みのワークWを受け渡していないと判断されるまでステップS8の判断を繰り返す。規制手段5aはステップS8の判断の繰り返しによって、上記判断において対向位置Aに移動する移動モジュールとして選択されなかったモジュールMD4の対向位置Aへの移動を規制する。
【0042】
ステップS8において、判断手段5bによりモジュールMD3が加工中であると判断されるか、または、モジュールMD3が加工済みのワークWを受け渡していないと判断されると、判断手段5bにより、モジュールMD3がワークWを保持していると判断され、モジュールMD4が優先して対向位置Aに移動する移動モジュールであると判断され、モジュールMD4の対向位置Aへの移動の規制が解除されて、対向位置Aへの移動が許容され、ステップS9においてモジュールMD4は対向位置Aへ移動する。
【0043】
このように、モジュールMD2又はMD4の一方を、判断手段5bにより選択されて対向位置Aに優先して移動するように制御される移動モジュールとして、モジュールMD3がワークWを保持しているか否かにより判断手段5bが判断し、モジュールMD2又はMD4のうちの他方の移動モジュールを対向位置Aへの移動を規制手段5aが規制することにより、モジュールMD2とモジュールMD4とがモジュールMD3の対向位置Aに同時に移動することを回避でき、モジュールMD2、MD4を順に対向位置Aに向けて移動させて加工を行うことができる。
【0044】
判断手段5bにより選択されて対向位置Aに優先して移動するように制御されたモジュールMD2又はモジュールMD4の一方のモジュールMD3の対向位置Aでの作業が終了すると、規制手段5aが、上記判断において選択されなかったモジュールMD2、MD4のうちの他方の対向位置Aへの移動の規制を解除する。これにより、モジュールMD2とモジュールMD4とが対向位置Aにおいて互いに干渉することなく、移動の規制を解除されたモジュールMD2ないしモジュールMD4は、加工プログラムに記載された移動指令に基づいて対向位置Aに向けて移動することができるようになる。
【0045】
以上のことにより、モジュールMD2とモジュールMD4とが対向位置Aにおいて互いに干渉することを防止してモジュールMD3に対向する位置に円滑に移動することができるとともに、加工の上流側(例えばモジュールMD1)から下流側(例えばモジュールMD4)に向けて効率良くワークWを受け渡しながら加工し、搬送することができる。
【0046】
また、上記の通り、モジュールMD2とモジュールMD4との干渉を防止することができるので、干渉に関する機械的な制約を考慮することなく、各モジュールMD1~MD4の作動を制御するための加工プログラムを作成して、モジュールMD2及びモジュールMD4をモジュールMD3に対向する位置に効率的に移動させることができる。
【0047】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0048】
例えば、記憶手段に格納されている加工プログラムに、モジュールMD3とモジュールMD2との間で連携して行われる作業の動作指令と、モジュールMD3とモジュールMD4との間で連携して行われる作業の動作指令との2つの動作指令が記載されている場合、判断手段5bは、これらの動作指令の加工プログラム上における実行順序に従い、加工プログラム上において先に記載されている動作指令を先に実行するように、モジュールMD3の対向位置Aへ移動させる移動モジュール(モジュールMD2、MD4)を判断する。そして、規制手段5aによって、一方の移動モジュール(モジュールMD2、MD4)のみがモジュールMD3の対向位置Aに移動するように、他方の移動モジュール(モジュールMD2、MD4)の移動を規制しつつ、当該判断に基づいて、モジュールMD1、MD2、MD3、MD4の作動を制御することもできる。
【0049】
本発明の実施の形態においては、基台2には、固定モジュールであるモジュールMD3に対して並列に、X軸方向に移動しないモジュールMD1が設けられているが、モジュールMD1が設けられない構成としてもよい。
【0050】
本発明の実施の形態においては、一例として加工の上流側をモジュールMD1として加工を開始し、加工の下流としてモジュールMD4で加工を終了する工程で説明をしたが、逆に加工の上流側をモジュールMD4として加工を開始し、加工の下流側としてモジュールMD1で加工を終了する工程としてもよい。
【0051】
本発明の実施の形態においては、一例としてモジュールMD1から加工を開始したが、モジュールMD3の横にワーク供給装置を設置することにより、モジュールMD3から加工を始めることが可能である。その際、モジュールMD3がワークを保持しているかどうかと、加工工程の流れ方向によって
図2のステップS3以降のステップ、
図4のステップS8以降のステップの判断が適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 工作機械
2 基台
2a 切欠き部
3 ワーク供給部
4 ワーク搬出部
5 制御部
5a 規制手段
5b 判断手段
11 主軸台
12 主軸
13 チャック
14 Z軸ガイドレール
15 ボールネジ機構
16 駆動源
21 主軸台
22 主軸
23 チャック(ワーク保持手段)
24 X軸ガイドレール
25 移動台
26 Z軸ガイドレール
27 ボールネジ機構
28 駆動源
29 ボールネジ機構
30 駆動源
31 主軸台
32 主軸
33 チャック(ワーク保持手段)
34 Z軸ガイドレール
35 ボールネジ機構
36 駆動源
41 主軸台
42 主軸
43 チャック(ワーク保持手段)
44 移動台
45 Z軸ガイドレール
46 ボールネジ機構
47 駆動源
48 ボールネジ機構
49 駆動源
MD1 モジュール
MD2 モジュール(移動モジュール)
MD3 モジュール(固定モジュール)
MD4 モジュール(移動モジュール)
A 対向位置
W ワーク