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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】車両用前照灯システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/46 20060101AFI20221012BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20221012BHJP
   B60Q 1/24 20060101ALI20221012BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B60Q1/46
B60Q1/04 Z
B60Q1/24 B
G08G1/00 X
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018228298
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020090182
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 篤
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-277887(JP,A)
【文献】特開2014-130409(JP,A)
【文献】特開2013-252796(JP,A)
【文献】特開2015-15104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0070849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00-1/56
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-2/00,390
2/00,500-45/70
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイビーム配光パターンとロービーム配光パターンの少なくとも一つと、隊列走行用配光パターンを少なくとも形成可能な前照灯と、
前記前照灯を制御するランプ制御部と、を有し、
前記ランプ制御部は、前記隊列走行用配光パターンとして、先行車の背面を照らす配光パターンを形成する、車両用前照灯システム。
【請求項2】
前記ランプ制御部は、前記隊列走行用配光パターンとして、先行車の背面の上部を照らす配光パターンを形成する、請求項1に記載の車両用前照灯システム。
【請求項3】
前記ランプ制御部は、前記隊列走行用配光パターンとして、前記先行車の背面よりも右方の領域および前記先行車の背面の上部よりも左方の領域に光を照射しない配光パターンを形成する、請求項1または2に記載の車両用前照灯システム。
【請求項4】
前記ランプ制御部は、車両を制御する車両制御部が隊列走行モードを実行していることを示す信号を前記車両制御部から取得すると、前記前照灯に前記隊列走行用配光パターンを形成させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用前照灯システム。
【請求項5】
前記前照灯は、アレイ状に配列された複数のLED光源を有し、
前記ランプ制御部は、複数の前記LED光源を点消灯させることにより、前記ハイビーム配光パターン、前記ロービーム配光パターン、前記隊列走行用配光パターンを切り替える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用前照灯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、隊列走行時に形成する配光パターンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-21632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで本発明者は、隊列走行時に形成する配光パターンの視認性について向上の余地があると考えた。
そこで本発明は、隊列走行時に視認性の高い配光パターンを形成可能な車両用前照灯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の車両用前照灯システムは、 ハイビーム配光パターンとロービーム配光パターンの少なくとも一つと、隊列走行用配光パターンを少なくとも形成可能な前照灯と、
前記前照灯を制御するランプ制御部と、を有し、
前記ランプ制御部は、前記隊列走行用配光パターンとして、先行車の背面を照らす配光パターンを形成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、隊列走行時に視認性の高い配光パターンを形成可能な車両用前照灯システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る車両用前照灯システムが搭載された車両の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用前照灯システムを備える車両システムのブロック図である。
図3】隊列走行している様子を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る前照灯システムの前照灯の側断面図を示す。
図5図4に示した前照灯の光源ユニットの正面模式図である。
図6】ハイビーム配光パターンを示す。
図7】ロービーム配光パターンを示す。
図8】隊列走行用配光パターンを示す。
図9】本発明の変形例に係る隊列走行用配光パターンを示す。
図10】参考例に係る隊列走行用配光パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0009】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0010】
本実施形態に係る車両用前照灯システム4(以下、単に前照灯システム4という。)について以下に説明する。図1は、車両1の斜視図を示す。車両1は、自動運転モードで走行可能な車両であって、前照灯システム4を備える。
【0011】
次に、図2を参照して車両1の車両システム2について説明する。図2は、車両システム2のブロック図を示している。図2に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、前照灯システム4と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10(第1無線通信部)と、地図情報記憶部11とを備える。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0012】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。電子制御ユニットは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、各種車両制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、各種車両制御データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)とにより構成されている。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。
【0013】
前照灯システム4は、前照灯42と、ランプ制御部43とを備える。前照灯42は、1以上のLED(Light Emitting Diode)やレーザ等の発光素子を含み、車両1の外部に向けて光を照射するように構成されている。ランプ制御部43は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。
【0014】
センサ5は、加速度センサ、速度センサ及びジャイロセンサ等を備える。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。
【0015】
カメラ6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等である。カメラ6及び/又はレーダ7は、車両1の周辺環境(他車、歩行者、道路形状、交通標識、障害物等)を検出し、周辺環境情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0016】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイである。
【0017】
GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報等)を他車から受信すると共に、車両1に関する情報(例えば、走行情報等)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、交通インフラ設備から照明制御信号を受信するように構成されている。さらに、無線通信部10は、交通インフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報を交通インフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。車両1は、他車両や交通インフラ設備と直接通信してもよいし、アクセスポイントを介して通信してもよい。地図情報記憶部11は、地図情報が記憶されたハードディスクドライブ等の外部記憶装置であって、地図情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0018】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0019】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0020】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0021】
また、車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。また、車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0022】
本実施形態に係る前照灯システム4が搭載された車両1の車両制御部3は、上述した完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モードに加えて、隊列走行モードを実行可能である。隊列走行モードとは、複数の車両が隊列を組んで協調して走行を行うモードである。例えば先頭車両が後続車両に隊列走行制御信号を送信し、後続車両の車両制御部3はこの隊列走行制御信号に基づいて自車両1の挙動を制御する。
【0023】
図2に示したように、本実施形態に係る前照灯システム4は、前照灯42と、前照灯42を制御するランプ制御部43を含んでいる。
図3は、自車両1と先行車Sを含む複数の車両が隊列走行をしている様子を示す図である。前照灯システム4は、図3に示したように、自車両1がこの隊列走行に後続車両として参加したときに、以下に詳述する隊列走行用配光パターンRを形成する。詳細には、ランプ制御部43が、車両1を制御する車両制御部3から、車両制御部3が隊列走行モードを実行していることを示す信号を取得すると、前照灯42に隊列走行用配光パターンRを形成させる。
【0024】
図4は、本実施形態に係る前照灯42の側面図である。図5は、図4に示した前照灯42の光源ユニット44を模式的に表した正面図である。図4に示すように、前照灯42は、光源ユニット44と、投影レンズ45とを備えている。光源ユニット44は、光源46と、光源46が搭載された基板47を有している。図5に示したように、基板47には、複数のLED光源46が搭載されている。各々のLED光源46は他のLED光源46とは独立して点消灯可能に構成されている。
【0025】
図6図9は、前照灯42が形成可能な配光パターンを示している。図6図9において、それぞれの配光パターンを形成するときのLED光源46の点灯状態を右上に示している。
図6は、公知のハイビーム配光パターンPである。ハイビーム配光パターンPは広くかつ遠くまで光を照射することができる配光パターンである。図7は、公知のロービーム配光パターンQである。ロービーム配光パターンQは、対向車とすれ違う際に、対向車に眩しさを与えない配光パターンである。
【0026】
投影レンズ45は光源ユニット44から出射された光を上下左右を反転させて前方に照射する。ランプ制御部43は、全てのLED光源46を点灯させることにより、前照灯42にハイビーム配光パターンPを形成させる。また、ランプ制御部43は、図5における下部に位置するLED光源46を消灯させ、図5における上部に位置するLED光源46を点灯させることにより、前照灯42にロービーム配光パターンQを形成させる。
なお、図5図9に表示したLED光源46の模式図は、矩形状のLED光源46がアレイ状に配列された例を示している。もっとも実際には、ロービーム配光パターンQの上縁のカットオフラインが形成されるような配列となっていることが好ましい。
【0027】
図8は、隊列走行用配光パターンRを示している。図8に示すように、隊列走行用配光パターンRは、先行車Sの背面を照らしている。先行車Sの背面の一部を照らしてもよいし、背面の全体を照らしてもよい。なお、隊列走行用配光パターンRは、図8に示したようにロービーム配光パターンQとともに形成してもよいし、ロービーム配光パターンQとともに形成しなくてもよい。
【0028】
このようにロービーム配光パターンQの他に隊列走行時に自車両1が隊列走行していることを示す配光パターンが形成される。この隊列走行用配光パターンRによって、先行車Sの背面に光が照射される。先行車両Sの背面は、他の車両のドライバーに視認されやすい領域である。また、一般に周囲に車両が走行している状態では、車両はロービーム配光パターンQを形成しているため、周囲の車両の背面には光が照射されていない。このため、本実施形態に係る隊列走行用配光パターンRを形成すると、通常時は照射されない車両の背面が照射されることになり、隊列走行に参加していない他車両は、先行車Sの後方の自車両1が隊列走行に参加していることを認識しやすい。
【0029】
また、図8に示したように、隊列走行用配光パターンRは、先行車Sの背面に光を照射しつつ、先行車Sの背面の右方および左方の領域に光を照射しないことが好ましい。なお「先行車Sの背面に光を照射する」とは、先行車Sの背面のみに光を照射する態様の他に、先行車Sの背面を含む領域に光を照射することを含んでもよい。
先行車Sの背面を含む領域とは、先行車Sの背面のみの領域に加えて、先行車Sから右方および左方に先行車Sの背面の幅寸法の0.5倍以内の領域である。つまり隊列走行用配光パターンRとして、左右方向について先行車Sの背面の幅寸法の2倍の幅を有する領域に光を照射してもよい。先行車Sから右方および左方に離れた位置には、他の車両や歩行者などが存在することがあるため、これらに眩しさを与えないためである。
先行車Sの背面を含む領域とは、先行車Sの背面のみの領域に加えて、先行車Sから上方および下方に先行車Sの背面の高さ寸法の0.5倍以内の領域である。つまり隊列走行用配光パターンRとして、上下方向について先行車Sの背面の高さ寸法の2倍の幅を有する領域に光を照射してもよい。
また、隊列走行用配光パターンRとして、H線より上方の領域において先行車Sの背面に光を照射してもよい。
【0030】
なお、隊列走行用配光パターンRは、ロービーム配光パターンQやハイビーム配光パターンPと同じ色の光で形成してもよいし、異なる色の光で形成してもよい。例えば、ロービーム配光パターンQやハイビーム配光パターンPの光の色とは異なる、緑、青、青緑、紫の色の光で隊列走行用配光パターンRを形成してもよい。この場合には、光源ユニット44は、隊列走行用配光パターンRを形成する光を出射する領域に位置するLED光源46として、ロービーム配光パターンQとハイビーム配光パターンPを形成するための白色光を出射させるLED光源46と、隊列走行用配光パターンRを形成するための白色と異なる色の光を出射させるLED光源46とを備えた光源ユニット44とを含むように構成できる。
【0031】
また、隊列走行用配光パターンRは、図9に示すように、先行車Sの背面の少なくとも上部を照らしてもよい。先行車Sの背面の上部とは、先行車Sの背面を仮想的に上下方向に二分割したときの上半分の領域である。もっとも、先行車Sの上部とは、先行車Sの背面を仮想的に上下方向に三分割したときの最も上方に位置する領域であってもよいし、先行車Sの背面の内、水平線(H線)よりも上方に位置する部位であってもよい。さらに隊列走行用配光パターンは、ハイビーム配光パターンPを減光することにより形成してもよい。
【0032】
隊列走行時は、主に先行車Sの走行状態などを基に自車両1の挙動が制御される。このため、自車両1が独立して走行している状況に比べて、自車両1が隊列走行している状況では、周囲の環境が自車両1の挙動に与える影響が少ない。このため、隊列走行時に前照灯42を点灯させる目的の多くは、周囲の環境の情報を取得するためというよりは、他車両の割り込みを抑制させるためである。つまり隊列走行時には、自車両1が後続車両として隊列走行している際に、先行車Sと自車両1との間に他車両に進入して欲しくないことを示すために、前照灯42を点灯することが多い。
【0033】
つまり、隊列走行用配光パターンRは、先行車Sと自車両1との間に位置して自車両1と同じ方向に走行している他車両にとって、認識しやすい配光パターンであることが望ましい。この場合に、他車両のドライバーの目線と同程度である先行車Sの背面の下部には、自車両1より先行する他車両によるロービーム配光パターンQによる光が照射されてしまうことが多く、自車両1が該領域に光を照射しても、他車両のドライバーに気がつかれにくい。
【0034】
この理由を図10を用いて説明する。図10は、図9に示した配光パターンとは異なり自車両1が先行車Sの背面の全域に光を照射し、かつ、他車両がロービーム配光パターンQ1を形成している様子を示す。ここで、自車両1と先行車Sとの間に割り込もうとする他車両は、自車両1より先行している。つまり、自車両1より先行している他車両が形成するロービーム配光パターンQ1によって照射される領域の上縁は、自車両1が形成するロービーム配光パターンQによって照射される領域の上縁よりも上方に位置する。また、先行車Sと自車両1との距離や他車両が形成するロービーム配光パターンQ1の形状にもよるが、他車両のロービーム配光パターンQ1は、先行車Sの背面の下部の領域を照射することが多い。
【0035】
つまり、隊列走行用配光パターンRとして先行車Sの背面の下部の領域を照らしても、割り込みを防ぎたい先行車Sもこの領域を照射するため、該領域の明るさの変化が少ないため、視認性が低い。これに対して、先行車Sの背面の上部の領域は、他車両が形成するロービーム配光パターンQ1の上縁よりも上方に位置することが多い。つまり、隊列走行用配光パターンRを形成すると、全く光が照射されない状態から光が照射される状態となり、明るさの変化が大きい。このため、隊列走行用配光パターンRとして先行車Sの背面の上部の領域に光を照射すると、他車両の割り込みを効果的に抑制できることを見出した。
【0036】
なお、先行車Sの背面の上部を照らすように自車両1の前方かつ上方の領域に光を照射してしまう配光パターンは、一般的には対向車に眩しさを与えてしまうため、一般的には発想しない配光パターンである。ところが、隊列走行中は自車両1の前方に必ず先行車Sがいる状態であるため、自車両1の前方かつ上方の領域に向かって光を照射しても、該光は先行車Sで遮られるので、対向車が眩しくなるという問題は生じにくい。
このような考えに基づき、対向車へ眩しさを与えずに他車両へ自車両1が隊列走行中であることを分かりやすく知らせることができる本発明を完成させた。
【0037】
なお、上述した実施形態においては、複数のLED光源46と投影レンズ45を備えた光源ユニット44を有する前照灯42が、ロービーム配光パターンQ、ハイビーム配光パターンP、隊列走行用配光パターンRを形成する例を説明した。本発明はこの例に限られない。前照灯42は、ロービーム配光パターンQおよびハイビーム配光パターンPを形成可能な第一光源ユニットと、第一光源ユニットとは異なり上述した隊列走行用配光パターンRを形成可能な第二光源ユニットとを有してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態においては、アレイ状に配列された複数のLED光源46の点消灯を制御することにより、配光パターンを切り替える例を説明した。本発明はこの例に限られない。
例えば、前照灯が光源と、ランプ制御部によって制御可能な遮光部とを有し、遮光部が部分的に光源から出射される光を遮ることによって、配光パターンを切り替えるように構成してもよい。
あるいは、前照灯が、レーザ光源と、レーザ光源を任意の領域に反射させる可動ミラーとを備え、可動ミラーによってレーザ光源から出射される光を走査させることによって、所望の配光パターンを形成するように構成してもよい。この場合、ランプ制御部は、レーザ光源と可動ミラーを制御する。
【0039】
なお、先行車Sとの距離や路面のカーブなどに応じて、自車両1に対する先行車Sの位置が変化する。このため、ランプ制御部43は、車両制御部3は、隊列走行モードを実行していることを示す信号と、先行車Sの位置および領域を示す信号を、ランプ制御部43に送信する。ランプ制御部43は、先行車Sの位置および領域に応じて先行車Sの背面を特定し、その領域に向かって光を照射するように前照灯42を制御するように構成してもよい。あるいは、前照灯42に組み込まれたランプ搭載カメラから先行車Sの位置および領域を示す信号を取得するように構成してもよい。もっとも、自車両1に対する先行車Sの相対位置は大きく変化しにくいので、先行車Sの位置や領域といった情報を取得せずに、隊列走行配光パターンが常に同じ領域に光を照射するように構成してもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0041】
本実施形態では、車両の運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードと、手動運転モードとを含むものとして説明したが、車両の運転モードは、これら4つのモードに限定されるべきではない。車両の運転モードの区分は、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って適宜変更されてもよい。同様に、本実施形態の説明で記載された「完全自動運転モード」、「高度運転支援モード」、「運転支援モード」のそれぞれの定義はあくまでも一例であって、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って、これらの定義は適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 車両
2 車両システム
3 車両制御部
4 前照灯システム
42 前照灯
43 ランプ制御部
44 光源ユニット
45 投影レンズ
46 LED光源
47 基板
P ハイビーム配光パターン
Q ロービーム配光パターン
R 隊列走行用配光パターン
S 先行車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10