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特許7156932ヘッドアップディスプレイ装置およびヘルメット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置およびヘルメット
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018238252
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020101608
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390005429
【氏名又は名称】株式会社SHOEI
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】平松 将紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
(72)【発明者】
【氏名】田島 元樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直哉
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 海山
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-175035(JP,A)
【文献】特開2000-284214(JP,A)
【文献】特開2014-120963(JP,A)
【文献】特開2018-141824(JP,A)
【文献】特開平07-325265(JP,A)
【文献】特開平07-277293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
H04N 5/64-5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用したユーザに視界を提供するための窓開口が設けられたヘルメット本体と前記窓開口の少なくとも一部を覆い得る透明なシールドとを備えるとともに当該シールドを光透過率が異なる別のシールドへ取り替え可能に構成されたヘルメットに搭載されるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記シールドの内側に配置されるコンバイナと、
前記コンバイナに投射される表示光を出射する光出射器と、
前記コンバイナに前記表示光が投射されることにより前記ヘルメットを着用したユーザが前記コンバイナ越しに虚像として視認可能な表示像の明るさを調節するための操作を受け付ける操作器と連携し、前記光出射器での表示光の生成を制御する制御ユニットと、を備え、
前記操作器は、前記表示像の明るさの度合いを複数段階に調整するための画面として、前記表示像の明るさの度合いを前記シールドの光透過率に応じて変えた複数の選択肢を表示し、ユーザによる一の選択肢の選択操作を、前記明るさを調節するための操作として受け付け、
前記制御ユニットは、前記表示像が前記操作器で受け付けた操作によって調節された明るさとなるように、前記光出射器に表示光を生成させる
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記シールドの内側で外光の明るさを検出する外光センサをさらに備え、
前記制御ユニットは、前記外光センサにより検出された外光の明るさに応じて前記表示像の明るさを調節するように、前記光出射器に表示光を生成させる
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記外光センサは、前記窓開口を介して入射する外光の明るさを検出する姿勢で、前記ヘルメット本体の窓開口の周縁部分のうち上下方向における上側の位置に設けられている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載されたヘッドアップディスプレイ装置において、
前記外光センサは、前記窓開口を介して入射する外光の明るさを検出する姿勢で、前記ヘルメット本体の窓開口の周縁部分のうち左右方向における中央または中央付近の位置に設けられている
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
着用したユーザに視界を提供するための窓開口が設けられたヘルメット本体と、
記窓開口の少なくとも一部を覆い得る透明なシールドと、を備えるとともに当該シールドを光透過率が異なる別のシールドへ取り替え可能に構成され、
前記ヘルメット本体を着用したユーザに対して視覚情報を映し出すヘッドアップディスプレイ装置が搭載されたヘルメットであって、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、前記シールドの内側に配置されるコンバイナと、該コンバイナに投射される表示光を出射する光出射器と、前記コンバイナに前記表示光が投射されることにより前記ヘルメットを着用したユーザが前記コンバイナ越しに虚像として視認可能な表示像の明るさを調節するための操作を受け付ける操作器と連携し、該光出射器での表示光の生成を制御する制御ユニットと、を備え、
前記操作器は、前記表示像の明るさの度合いを複数段階に調整するための画面として、前記表示像の明るさの度合いを前記シールドの光透過率に応じて変えた複数の選択肢を表示し、ユーザによる一の選択肢の選択操作を、前記明るさを調節するための操作として受け付け、
前記制御ユニットは、前記表示像が前記操作器で受け付けた操作によって調節された明るさとなるように、前記光出射器に表示光を生成させる
ことを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘルメットに搭載されるヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップティスプレイ装置が搭載されたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車を運転する際に着用されるヘルメットにヘッドアップディスプレイ(Head Up Display)装置(以下「HUD装置」と称する)を搭載することにより、当該ヘルメットを着用したユーザ(運転者)に対し、車速などの車両情報、ナビゲーションシステムによる地図情報、警告情報といった各種情報を虚像として視界前方に視認させるようにして、車両運転時の利便性や安全性を高めることが知られている。
【0003】
ヘルメットに搭載されるHUD装置は、表示する情報に応じた表示光を出射する投射モジュールと、投射モジュールから出射された表示光をヘルメットの着用者であるユーザの眼に向けて反射するコンバイナとを備える。コンバイナは、ハーフミラーからなり、ヘルメットの前部に設けられた窓開口内でユーザの前方視界に入る位置に配置され、ユーザの前方からの光を透過させる。したがって、ユーザは、コンバイナ越しに風景と重畳した状態で表示光による虚像(表示像)を視認できる。このようなHUD装置の一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-030530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動二輪車用のヘルメットとしては、前部に窓開口が形成されたヘルメット本体に対し、窓開口を覆い得る透明なシールド(バイザー)が所定の角度範囲だけ回転自在に取り付けられ、そのシールドの回転動作により窓開口を開閉できるものが多く市場に出回っている。このようなヘルメットのシールドは、一般的にヘルメット本体への着脱が可能とされており、自動二輪車の走行中における外部環境の明るさに応じて、視認性の点から光透過率の異なるシールドに取り換えられるようになっている。
【0006】
ヘルメットのシールドには、無色透明なシールドの他、遮光性のあるスモーク色の付いたスモークシールドなどの色付き透明なシールドや、外見は鏡のように反射して見えるミラーシールドなどがある。例えば、陽射しが強い昼間にはスモークシールドが使用される一方、曇天や夜間などには無色透明なシールドが使用される。一概にスモークシールドと言っても、ソフトスモークやダークスモークなどスモーク色の濃さが異なるものが多種多様に存在する。また、ミラーシールドにおいては、青や赤などの多数の色味の反射表面を持つ様々なものが存在する。
【0007】
上述したようなHUD装置では、コンバイナがシールドの内側に配置されるが、そうした光透過率の異なるシールドの取り替えによってユーザの視界の明暗状態が変化することを考慮せずに、ヘルメット外部の明るさに応じてコンバイナ越しに見える表示像の明るさ調節を行っているため、当該シールドの取り替えによって表示像の視認性が低下することがある。
【0008】
例えば、ヘルメットのシールドを無色透明なシールドなどの光透過率が相対的に高いシールドからスモークシールドなどの光透過率が相対的に低いシールドに取り替えた場合、ユーザの視界が暗くなるため、HUD装置によってユーザが視認可能な表示像の明るさが光透過率の高いシールドを使用しているときに合わせて明るい目に設定されていると、表示像が眩しく見えて運転の妨げになるおそれがある。
【0009】
逆に、ヘルメットのシールドを光透過率が相対的に低いシールドから光透過率が相対的に高いシールドに取り替えた場合、ユーザの視界が明るくなるため、HUD装置によってユーザが視認可能な表示像の明るさが光透過率の低いシールドに合わせて暗い目に設定されていると、表示像が外光にかき消されて見難くなる。また、HUD装置によって表示される表示像の視認し易いと感じる明るさは、ユーザによって個人差がある。
【0010】
本開示の技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、HUD装置によって表示される表示像の視認性を良くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、HUD装置によって表示される表示像の明るさをユーザが手動で調節できるようにした。
【0012】
具体的には、本開示の技術は、着用したユーザに視界を提供するための窓開口が設けられたヘルメット本体とヘルメット本体に取り替え可能に装着されて窓開口の少なくとも一部を覆い得る透明なシールドとを備えたヘルメットに搭載されるHUD装置を対象とする。ここでいう「シールド」に関して「透明な」とは、可視光を透過する性質(透明性)を有することを意味し、無色透明な場合以外に半透明な場合も含む。「透明なシールド」としては、例えば、無色透明なシールドの他、スモークシールドなどの色付き透明なシールドやミラーシールドを採用し得る。
【0013】
本開示の技術に係るHUD装置は、シールドの内側に配置されるコンバイナと、コンバイナに投射される表示光を出射する光出射器と、光出射器での表示光の生成を制御する制御ユニットとを備える。そして、制御ユニットは、コンバイナに表示光が投射されることによりヘルメットを着用したユーザがコンバイナ越しに虚像として視認可能な表示像の明るさを調節するための操作を受け付ける操作器と連携し、表示像が操作器の操作によって調節された明るさとなるように、光出射器に表示光を生成させる。
【0014】
この構成によると、制御ユニットがHUD装置によって表示される表示像の明るさを調節するための操作を受け付ける操作器と連携し、その操作器の操作により調節された明るさで表示像が形成されるよう光出射器で表示光を生成するようにしたので、ヘルメットに取り付けて使用するシールドの光透過率に応じて、またユーザによって個人差のある視認性の感覚に応じて、ユーザが表示像の明るさを手動で自身の視認し易いレベルに調節することができる。これにより、ヘルメットのシールドを取り替えることに起因してHUD装置により表示される表示像の視認性が低下するのを避けることができる。
【0015】
HUD装置は、シールドの内側で外光の明るさを検出する外光センサをさらに備えていてもよい。この場合、制御ユニットは、外光センサにより検出された外光の明るさに応じて表示像の明るさを調節するように、光出射器に表示光を生成させることが好ましい。
【0016】
この構成によると、外光センサによりシールドの内側でユーザの視認環境と同じ空間における外光の明るさを検出し、検出されたシールドの内側での外光の明るさに応じて表示像の明るさを調節するようにしたので、HUD装置によって表示される表示像の明るさを、操作器の操作を以てユーザの視認し易い明るさに一旦調節しておけば、ヘルメット外部の明るさの変化に応じて自動的に調節し、ユーザの視界の明暗状態に対して視認し易い状態に維持することができる。
【0017】
外光センサは、窓開口を介して入射する外光の明るさを検出する姿勢で、ヘルメット本体の窓開口の周縁部分のうち上下方向における上側の位置に設けられていることが好ましい。
【0018】
HUD装置を搭載するヘルメットが、ヘルメット本体に対してシールドを上下方向に所定の角度範囲だけ回転自在に取り付けて、シールドの回転動作により窓開口を開閉できるものである場合、湿度が高かったり雨が降ったりしているときには、シールドを下げて窓開口を完全に閉めると、ヘルメット内に湿気が籠もってユーザが不快に感じることがある。このため、ユーザは、自身の眼を保護しつつヘルメット内の換気を行うべく、シールドを窓開口の下側を開けて上側を部分的に覆うような半開きにした状態でHUD装置を使用することがあり得る。
【0019】
このようにヘルメットのシールドを半開きにした状態でHUD装置が使用される場合、外光センサが窓開口を介して入射する外光の明るさを検出する姿勢で設けられていると、外光センサの位置がヘルメット本体の窓開口の周縁部分で上下方向における下側の位置であるなど、外光センサの設けられている位置によっては、窓開口のうちシールドの開いた部分(半開き状態のシールドと窓開口周縁との間)からヘルメット外部における外光の明るさを検出することになるため、シールドの内側でユーザの視認環境と同じ空間における外光の明るさを外光センサにより検出できなくなる。
【0020】
これに対し、上記の構成によると、外光センサを、ヘルメット本体の窓開口の周縁部分で上下方向における上側の位置に設けるようにしたので、ヘルメットのシールドが半開き状態とされたときにも、外光センサの受光側(外光を取り入れる受光部の臨む側)がシールドによって覆われるようにすることができる。それにより、シールドが半開き状態でHUD装置が使用される場合であっても、シールドの内側でユーザの視認環境と同じ空間における外光の明るさを外光センサにより検出することができる。
【0021】
また、外光センサは、窓開口を介して入射する外光の明るさを検出する姿勢で、ヘルメット本体の窓開口の周縁部分のうち左右方向における中央または中央付近の位置に設けられていることが好ましい。
【0022】
外光センサが窓開口を介して入射する外光の明るさを検出する姿勢で設けられていると、外光センサの位置がヘルメット本体の窓開口の周縁部分で左右方向における左端の位置や右端の位置であるなど、外光センサの設けられている位置によっては、外光センサの向く方向(外光を取り入れる受光部の臨む方向)がシールド側方の湾曲部分に対して比較的小さな角度で交差する関係となるため、外光センサの正面以外の方向からシールドに入射した外光が、シールドの湾曲部分で比較的大きく屈折して外光センサにて受光され得る。このように、外光センサで受光される光量はシールドの曲面形状の影響を受け易く、シールドの内側でもユーザの視認環境と異なる外光の明るさが外光センサにより検出されることが懸念される。
【0023】
これに対し、上記の構成によると、外光センサを、ヘルメット本体の窓開口の周縁部分のうち左右方向における中央または中央付近の位置に設けるようにしたので、外光センサの向く方向(外光を取り入れる受光部の臨む方向)がシールドに対して比較的大きな角度で交差する関係となり、外光センサの正面以外の方向からシールドに入射した外光が、シールドの湾曲部分で屈折して外光センサにて受光されるのを抑制できる。したがって、外光センサで受光される光量がシールドの曲面形状の影響を受け難く、シールドの内側でユーザの視認環境と同等な外光の明るさを外光センサにより検出することができる。
【0024】
また、本開示の技術は、着用したユーザに視界を提供するための窓開口が設けられたヘルメット本体と、ヘルメット本体に取り替え可能に装着されて窓開口の少なくとも一部を覆い得る透明なシールドとを備え、ヘルメット本体を着用したユーザに対して視覚情報を表示するHUD装置が搭載されたヘルメットを対象とする。
【0025】
本開示の技術に係るヘルメットにおいて、HUD装置は、シールドの内側に配置されるコンバイナと、コンバイナに投射される表示光を出射する光出射器と、光出射器での表示光の生成を制御する制御ユニットとを備える。そして、制御ユニットは、コンバイナに表示光が投射されることによりヘルメットを着用したユーザがコンバイナ越しに虚像として視認可能な表示像の明るさを調節するための操作を受け付ける操作器と連携し、表示像が操作器の操作によって調節された明るさとなるように、光出射器に表示光を生成させる。
【0026】
この構成によると、制御ユニットがHUD装置によって表示される表示像の明るさを調節するための操作を受け付ける操作器と連携し、その操作器の操作により調節された明るさで表示像が形成されるよう光出射器で表示光を生成するようにしたので、ヘルメットに取り付けて使用するシールドの光透過率に応じて、またユーザによって個人差のある視認性の感覚に応じて、ユーザが表示像の明るさを手動で自身の視認し易いレベルに調節することができる。これにより、ヘルメットのシールドを取り替えることに起因してHUD装置により表示される表示像の視認性が低下するのを避けることができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示の技術に係るHUD装置およびそれを搭載したヘルメットによれば、ヘルメットのシールドが光透過率の異なるシールドに取り替えられても、そのことに起因してHUD装置により表示される表示像の視認性が低下するのを避けることができ、表示像の視認性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施形態に係る情報提示システムの概略的な全体構成図である。
図2図2は、実施形態に係る情報提示システムの概略的なブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る情報端末に表示されるHUD表示の明るさを設定する画面の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの正面図である。
図5図5は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの側面図である。
図6図6は、実施形態に係るHUD装置が搭載されたヘルメットのシールドを半開けにした状態を示す側面図である。
図7図7は、ルックアップテーブルの配列に格納された値をグラフ化した図である。
図8図8は、変形例に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの正面図である。
図9図9は、変形例に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの正面図である。
図10図10は、変形例に係るHUD装置が搭載されたヘルメットの正面図である。
図11図11は、変形例に係る情報端末に表示されるHUD表示の明るさを設定する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、便宜上、ヘルメットおよびヘルメットに搭載されるHUD装置について、ヘルメットを着用したユーザの顔の上下に相当する方向における上側を「上」、下側を「下」と称し、ヘルメットを着用したユーザの顔の前後に相当する方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、ヘルメットを着用したユーザの顔の前方を向いてその顔の左右に相当する方向における左側を「左」、右側を「右」と称する。
【0030】
<情報提示システムの構成>
図1は、この実施形態に係る情報提示システム1の概略的な全体構成図である。図2は、情報提示システム1の概略的なブロック図である。なお、図1において、二点鎖線の矢印は、表示光の経路および進行方向を示している。情報提示システム1は、自動二輪車のライダー(ユーザ)に向けて運転支援に寄与する情報を提示するシステムであって、図1および図2に示すように、自動二輪車のヘルメット101に搭載されたHUD装置3と、HUD装置3に対して表示され得る各種情報を提供する情報端末5とを備えている。
【0031】
- 情報端末の構成 -
情報端末5としては、スマートフォンと呼ばれる小型の多機能携帯電話機が用いられる。この情報端末5は、GPS衛星Sからの電波を受信して測位情報を生成するGPS(Global Positioning System)受信機7と、外部との無線通信を行う無線通信モジュール9と、当該情報端末5の動作を総合的に制御するマイクロコンピュータ11と、入出力装置としてのタッチパネル付き表示装置13と、当該情報端末5を動作させるのに必要な電力を供給する電源15とを備えている。
【0032】
GPS受信機7は、図示しないGPSアンテナなどを備えて構成されている。GPSアンテナは、地球軌道に打ち上げられた複数のGPS衛星から送信されるGPS信号を受信する。GPS受信機7は、GPSアンテナで受信したGPS信号に基づいて、情報端末5の現在位置(例えば緯度、経度および高度)の情報を取得する。このGPS受信機7は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、測位した情報端末5の位置情報をマイクロコンピュータ11に含まれるメモリ21に保存し、逐次更新する。
【0033】
無線通信モジュール9は、インターネットなどの広域通信網である外部ネットワークNと通信を行うネットワーク通信部17と、HUD装置3と近距離無線通信を行う近距離通信部19とを備えている。
【0034】
ネットワーク通信部17は、WiFi(Wireless Fidelity;登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)の機能やLTE(Long Time Evolution;登録商標)といったモバイル通信規格での通信機能を有している。このネットワーク通信部17は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、外部ネットワークNから地図情報や、工事や渋滞などに関する道路情報、GPS受信機7で取得された現在位置に基づく周辺施設の情報、災害情報などのネット情報を受信して、メモリ21に一時的に蓄積する。
【0035】
近距離通信部19は、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの近距離無線通信規格での通信機能を有している。この近距離通信部19は、マイクロコンピュータ11からの要求に応じて、GPS受信機7で取得された情報端末5の位置情報や、ネットワーク通信部17で取得されたネット情報、後述する各種のアプリケーションソフトウェア(以下「アプリ」と称する)により取得されるアプリ情報、HUD装置3によって表示する表示像に関する明るさなどの設定(以下「表示設定」と称する)の情報をメモリ21から読み出して、無線通信によりHUD装置3へと送信する。
【0036】
マイクロコンピュータ11は、メモリ21およびCPU(Central Processing Unit)23を含んでいる。メモリ21は、情報端末5を動作させるためのプログラムを含む様々な情報を一時的または恒久的に保存する。このメモリ21は、典型的には、RAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)の組合せによって実現される。当該メモリ21に記憶される各種のプログラムには、モバイルOS(Operating System)や、モバイルOS上で特定機能を実現すべく動作する複数のアプリが含まれている。
【0037】
複数のアプリには、時刻アプリ25、速度アプリ27、ナビゲーションアプリ(以下「ナビアプリ」と称する)29および連携アプリ31が含まれている。これら複数のアプリ27,29,31は、情報端末5に予めインストールされてメモリ21に保存されている。
【0038】
時刻アプリ25は、現在時刻を取得するソフトウェアである。この時刻アプリ25では、例えば、基地局との通信で取得されるタイムスタンプやGPS受信機7で取得される時刻情報に基づき、さらにはNITZ(Network Identity and Time Zone)やNTP(Network Time Protocol)といった時刻同期技術を用いて、現在時刻を取得する。
【0039】
速度アプリ27は、情報端末5の移動速度を検出するソフトウェアである。この速度アプリ27では、例えば、GPS受信機7で取得される情報端末5の位置情報に基づいて、情報端末5の移動速度を検出する。
【0040】
ナビアプリ29は、ユーザによって設定された目的地への経路案内を行うソフトウェアである。このナビアプリ29では、例えば、ネットワーク通信部17で取得された、またはメモリ21に予め保存された地図情報と、GPS受信機7で取得される情報端末5の位置情報とに基づいて、目的地への経路案内を行う。
【0041】
連携アプリ31は、近距離通信部19による無線通信を用いてHUD装置3と連携し、HUD装置3へアプリ情報やネット情報、HUD装置3の表示設定の情報などの各種情報を送信するソフトウェアである。この連携アプリ31では、HUD装置3の表示設定を行えるようになっている。具体的には、表示設定として、HUD装置3で表示する項目を現在時刻、移動速度および経路案内情報(ナビゲーション情報)を含む複数の項目から設定したり、HUD装置3によって表示される表示像(以下「HUD表示」と称する)の明るさを設定したりできる。当該連携アプリ31で設定された表示設定の情報は、メモリ21に保存される。
【0042】
CPU23は、典型的には、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integration Circuit)などによって実現される。マイクロコンピュータ11は、CPU23の機能により、GPS受信機7に現在位置の情報を取得させ、ネットワーク通信部17に外部ネットワークNとの接続を確立させてネット情報を収集すると共に、連携アプリ31の実行により、近距離通信部19にHUD装置3との接続を確立させ、それ以外の各種アプリ25,27,29の実行に応じた種々の処理によって取得したアプリ情報やネット情報をHUD装置3に送信する。
【0043】
タッチパネル付き表示装置13は、情報端末5の画面33に画像を表示する表示装置と、ユーザがタッチした画面33内の位置(触れた位置)を検出するタッチパネルとが一体化された電子装置であって、画像の出力機能とユーザ操作の入力機能とを兼ね備えている。情報端末5では、このタッチパネル付き表示装置13へのタッチ操作により、各種アプリ25,27,29,31の実行や、連携アプリ31においては上述したHUD装置3での表示設定を行えるようになっている。
【0044】
このように情報端末5は、HUD装置3での表示設定を行うための操作を受け付ける操作器を兼ねている。情報端末5では、HUD表示についての視認性の点で、光透過率の異なるシールド107への取り替えに対応し、またユーザによる視認し易いと感じるHUD表示の明るさに関する個人差に対応すべく、表示設定の1つとして、上述したように、連携アプリ31によりHUD表示の明るさをユーザが手動で設定できるようになっている。
【0045】
図3は、情報端末5に表示されるHUD表示の明るさを設定する画面33の一例を示す図である。この実施形態において、連携アプリ31で設定されるHUD表示の明るさは第1~第5の5段階にレベル分けされている。HUD表示の明るさを設定する画面33としては、図3に例示するような、第1~第5の5段階の明るさレベルの選択肢35を提示するレイアウトの画面を採用し得る。5段階の明るさレベルは、第1の明るさレベル、第2の明るさレベル、第3の明るさレベル、第4の明るさレベル、第5の明るさレベルの順に明るく、第1の明るさレベルが最も明るいレベルであり、第5の明るさレベルが最も暗いレベルである。
【0046】
HUD表示の明るさを設定する画面33では、第1~第5の明るさレベルの選択肢35が上から順に並べて提示される。明るさレベルの選択肢35は、例えば、明るさの度合を示すアイコン37と、推奨されるシールド107の光透過率に関する記述39と、その明るさレベルの選択欄41とを1セットとして左右に並べた項目である。連携アプリ31では、そのような設定画面33において、ユーザが列挙された5段階の明るさレベルの選択肢35のうちから選択欄41をタッチ操作で1つ選択することにより、HUD表示の明るさが設定される。なお、図3では、第1の明るさレベルの選択肢35が選択された例を示している。
【0047】
電源15は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成されている。当該電源15は、無線通信モジュール9、マイクロコンピュータ11およびタッチパネル付き表示装置13に配線を介して電気的に接続されている。情報端末5は、図示しない電源スイッチで電源を入れる操作がされると、電源15から無線通信モジュール9、マイクロコンピュータ11およびタッチパネル付き表示装置13に電力を供給して、ユーザの操作に応じた所定の動作をするようになっている。
【0048】
- HUD装置の構成 -
図4は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101の正面図である。図5は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101の側面図である。なお、図4および図5において、二点鎖線の矢印は、図1と同様に表示光の経路および進行方向を示している。また、図4では、PCB(Printed Circuit Board)モジュール57の図示を省略する。HUD装置3は、ヘルメット101(ヘルメット本体105)を着用したユーザの視野に視覚情報を映し出す表示装置である。
【0049】
HUD装置3は、図1図2図4および図5に示すように、外部との無線通信を行う無線通信モジュール43と、表示像の明るさを外部環境に合わせて自動的に調節するのに利用される外光センサ45と、当該HUD装置3での表示動作を制御する制御ユニット47と、表示光を生成して投射する投射モジュール49と、表示光による表示像を虚像としてユーザに視認させるためのコンバイナユニット51と、当該HUD装置3へのユーザによる操作を入力するための操作ユニット53と、当該HUD装置3を動作させるのに必要な電力を供給する電源55とを備えている。
【0050】
この実施形態に係るHUD装置3が搭載されるヘルメット101は、フルフェイス型のヘルメットであって、着用したユーザに視界を提供するための窓開口103が前部に形成されたヘルメット本体105と、ヘルメット本体105に取り替え可能に装着されて窓開口103を開閉し得る透明なシールド107とを備えて構成されている。
【0051】
ヘルメット本体105は、その外殻を構成するシェル(帽体)の内側に、発泡ポリスチレンなどからなる衝撃を吸収する緩衝体としてのライナー(不図示)が設けられた構造を有している。シールド107は、ヘルメット本体105(シェル)の窓開口103の左右両側に留め具109などを用いて所定の角度範囲だけ回転可能に取り付けられており、上下方向への回転動作を以て窓開口103を開閉するようになっている。
【0052】
シールド107は、窓開口103を閉じた状態で、窓開口103を通して飛び込む塵埃などの異物や風、紫外線などをブロックする機能を有している。シールド107は、留め具109を外して取り外せるようになっている。このシールド107には、天候や昼夜などによる外部環境の明るさに合わせて、無色透明なシールド、スモークシールドなどの色付き透明なシールド、ミラーシールドなどの光透過率の異なる様々なシールドが採用され得る。
【0053】
無線通信モジュール43は、ブルートゥースなどの近距離無線通信規格での通信機能を有している。この無線通信モジュール43は、制御ユニット47に備えられたマイクロコンピュータ63からの要求に応じて、情報端末5の近距離通信部19から送信されたネット情報やアプリ情報、表示設定の情報を受信し、マイクロコンピュータ63に含まれるメモリ59に保存する。この無線通信モジュール43は、制御ユニット47と共にPCB上に設けられ、PCBモジュール57としてヘルメット本体105の左頬下部分に内蔵される。
【0054】
外光センサ45は、いわゆる照度センサであって、外光の明るさに応じた光電流を発生するフォトダイオードなどの受光素子を外光を取り入れる受光部58に有し、受光素子に入射した外光を電流に変換して外光の明るさを検出するようになっている。この外光センサ45は、マイクロコンピュータ63と電気的に接続されており、検出した外光の明るさをマイクロコンピュータ63に含まれるCPU61に出力するようになっている。
【0055】
当該外光センサ45は、閉じた状態にあるシールド107の内側に位置するようにヘルメット本体105に配置される。具体的には、外光センサ45は、窓開口103を介して入射する外光の明るさを検出する姿勢、つまり受光部58を窓開口103側に臨ませる姿勢で、ヘルメット本体105の窓開口103の周縁部分のうち上下方向における上側の額部111下面の、左右方向における中央または中央付近の位置に設けられている。
【0056】
図6は、HUD装置3が搭載されたヘルメット101のシールド107を半開けにした状態を示す側面図である。湿度が高かったり雨が降ったりしているときには、シールド107を下げて窓開口103を完全に閉めると、ヘルメット101内に湿気が籠もって不快に感じることがあるため、ユーザは、自身の眼を保護しつつヘルメット101内の換気を行うべく、図6に示すように、シールド107を窓開口103の下側を開けて上側を部分的に覆うような半開きにすることがあり、その状態でHUD装置3を使用することがあり得る。
【0057】
HUD装置3では、外光センサ45が、ヘルメット本体105の窓開口103の周縁部分で上下方向における上側の位置に設けられているので、上述のようにヘルメット101のシールド107が半開き状態とされたときにも、外光センサ45の受光側(受光部58の臨む側)がシールド107によって覆われる。それにより、シールド107が半開き状態でHUD装置3が使用される場合であっても、シールド107の内側でユーザの視認環境と同じ空間における外光の明るさが外光センサ45により検出されるから、外光センサ45により検出された外光の明るさに基づいて表示像の明るさの自動的な調節を好適に行える。
【0058】
制御ユニット47は、投射モジュール49に備えられた光出射器67での表示光の生成を制御する。この制御ユニット47は、メモリ59およびCPU61を含むマイクロコンピュータ63と、画像表示に関する処理を担当する集積回路であるGDC(Graphics Display Controller)65とを有している。
【0059】
メモリ59は、HUD装置3を動作させるためのプログラムを含む様々な情報を一時的または恒久的に保存する。このメモリ59には、無線通信モジュール43で受信したネット情報やアプリ情報、表示設定の情報も保存される。当該メモリ59は、典型的には、RAMとROMの組合せによって実現される。メモリ59には、外光センサ45により検出されるシールド107内の外光の明るさと表示像を形成する表示光の強さとの関係を示すルックアップテーブル66が保存されている。
【0060】
図7は、ルックアップテーブル66の配列に格納された値をグラフ化した図である。ルックアップテーブル66は、外光センサ45により検出されたシールド107内の外光の明るさに応じて表示光の強さを調整するための、図7のグラフで示されるような値を格納した配列を持つデータ構造である。当該ルックアップテーブル66の配列には、表示光の強さを示す値が、外光センサ45により検出されたシールド107内の外光の明るさを示す値と関連付けられて、シールド107内の外光が明るいほど表示光を強くし、シールド107内の外光が暗くなるほど表示光を弱くするよう、情報端末5で設定されるHUD表示の明るさレベル毎に規定されている。
【0061】
CPU61は、典型的には、ICやLSI、ASICなどによって実現される。GDC65は、メモリ59に保存されたネット情報やアプリ情報、表示設定の情報に基づき、コンバイナユニット51に含まれるコンバイナ73を介してユーザに視認させる表示像のデータを生成する。このGDC65で生成される表示像のデータは、情報端末5の連携アプリ31の表示設定で設定された項目の情報を表す画像データである。マイクロコンピュータ63は、CPU61の機能により、GDC65に表示像のデータを生成させ、その画像信号を投射モジュール49に含まれる光出射器67に出力させる。
【0062】
このとき、CPU61は、情報端末5で設定されたHUD表示の明るさレベルと外光センサ45によって検出されたシールド107内の外光の明るさとに基づき、メモリ59に保存されたルックアップテーブル66を参照して、当該シールド107内の外光の明るさに応じた表示光の強さを決定し、決定した表示光の強さの情報を表示像の画像データと共に光出射器67に出力する。そうして、制御ユニット47は、ユーザに視認される表示像が、情報端末5で設定された明るさレベルにおいて、外光センサ45により検出されたシールド内の外光の明るさに応じて調整された明るさとなるように、光出射器67に表示光を生成させる。
【0063】
投射モジュール49は、GDC65から入力された画像信号に基づいて表示像に対応するパターンの表示光を生成して出射する光出射器67と、光出射器67から出射された表示光をコンバイナユニット51に向けて反射する凹面ミラー69とを備えている。これら光出射器67と凹面ミラー69とは、ヘルメット101の顎部113における左右両側に分けて設けられている。光出射器67から出射されて凹面ミラー69により反射された表示光は、コンバイナユニット51に含まれるコンバイナ73に投射される。
【0064】
光出射器67は、ヘルメット本体105の顎部113左側でPCBモジュール57の近傍位置に内蔵されている。この光出射器67は、詳しく図示しないが、LED(Light Emitting Diode)などの光源およびLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示パネルからなる表示素子と、凸レンズや凹レンズなどの光学レンズ、拡散板、TIR(Total Internal Reflection)プリズムといった複数の光学部材とを組み合わせて構成されている。
【0065】
当該光出射器67は、CPU61から入力される表示光の強さの情報に基づき、コンバイナ73に投射される表示光を、HUD表示が情報端末5で設定された明るさレベルとなるように、シールド107内の外光の明るさに応じて調整した光の強さで生成する。そして、光出射器67は、生成した表示光を凹面ミラー69に向けて出射する。
【0066】
凹面ミラー69は、ヘルメット本体105の顎部113右側に内蔵されている。この凹面ミラー69は、回転対称性を持たない自由曲面形状の反射面71(図示では平面状)を有している。当該凹面ミラー69は、光出射器67から受けた表示光を、反射面71により、上方あるコンバイナユニット51に含まれるコンバイナ73に向けて反射すると共に、ユーザに視認される表示像が運転中の表示に適したサイズおよび位置となるように整形する。
【0067】
コンバイナユニット51は、凹面ミラー69により反射された表示光を下方から受けてユーザが視認可能な方向に反射するコンバイナ73と、コンバイナ73をヘルメット101を着用したユーザの眼前に位置させるように支持する支持機構75とを備えている。
【0068】
コンバイナ73は、透明または半透明な板状部品であって、回転対称性を持たない自由曲面形状の半透過反射面77(図示では平面状)を有している。コンバイナ73は、閉じた状態にあるシールド107の内側に位置するように配置される。当該コンバイナ73は、ハーフミラーによって構成されている。ハーフミラーは、入射した光の一部を反射させて一部を透過させる性質を有している。コンバイナ73の裏面には、フッ化マグネシウム(MgF)などからなるAR(Anti Reflection)コートと呼ばれる反射防止膜が設けられている。
【0069】
支持機構75は、ヘルメット本体105の前部に設けられた窓開口103内でユーザの前方視界に入る位置にコンバイナ73を支持する。コンバイナ73は、この支持機構75により、ユーザの右眼Eの前方位置において、半透過反射面77がユーザの顔側に位置するように、後端が上方に位置する一方で前端が下方に位置する前傾姿勢で支持される。支持機構75は、例えば、上下方向に延びるステー79を有し、ステー79の下端部に左右方向に延びる回転軸81を介してコンバイナ73が連結され、コンバイナ73の回転軸81周りの回転動作を以て、半透過反射面77の向きを調整可能とされている。
【0070】
操作ユニット53は、図示しないが例えば、ヘルメット本体105外面のPCBモジュール57に対応する箇所に設けられている。この操作ユニット53は、図示しないが、電源スイッチと、操作スイッチとを含んでいる。電源スイッチは、HUD装置3の電源のオンおよびオフ(入切)を切り替える機能を持たせたプッシュボタン式のスイッチである。操作スイッチは、HUD装置3の表示のオンおよびオフを切り替える機能を持たせたプッシュボタン式のスイッチである。
【0071】
電源55は、ヘルメット本体105の後頭部に内蔵されている。この電源55は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成されている。当該電源55は、無線通信モジュール43、制御ユニット47および光出射器67と電気的に接続されている。HUD装置3は、操作ユニット53にて電源スイッチで電源を入れる操作がされると、電源55から無線通信モジュール43、制御ユニット47および光出射器67に電力を供給して、操作スイッチの操作による表示のオンとオフの切り替えに応じた表示動作をするようになっている。
【0072】
<情報提示システムの動作>
上記構成の情報提示システム1では、HUD装置3の電源が入れられて、情報端末5で連携アプリ31が実行されると、ネット情報やアプリ情報、表示設定の情報がHUD装置3で受信される。そして、受信したネット情報やアプリ情報に基づいて、表示設定の情報に含まれる予め設定された項目に対応する表示像のデータがGDC65にて生成される。このとき、HUD装置3の表示がオン状態であると、光出射器67において、GDC65で生成された表示像のデータに対応する表示光が、情報端末5で設定されたHUD表示の明るさレベルに対応する光の強さで生成される。この表示光は、光出射器67から出射された後に凹面ミラー69で反射されて、コンバイナ73に投光され、コンバイナ73でユーザの視界に入るようにさらに反射される。これにより、ユーザは、コンバイナ73越しに前方視界の風景に重畳した状態で、表示光による表示像を虚像として視認させられる。
【0073】
この実施形態に係るHUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101によると、制御ユニット47がHUD装置3によって表示される表示像の明るさを調節するための操作を受け付ける情報端末5と連携し、その情報端末5の操作により調節された明るさで表示像が形成されるよう光出射器67で表示光を生成するようにしたので、ヘルメット本体105に取り付けて使用するシールド107の光透過率に応じて、またユーザによって個人差のある視認性の感覚に応じて、ユーザが表示像の明るさを情報端末5にて手動で自身の視認し易いレベルに調節することができる。これにより、シールド107を取り替えることに起因してHUD装置3により表示される表示像の視認性が低下するのを避けることができる。
【0074】
さらに、この実施形態に係るHUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101によると、外光センサ45によりシールド107の内側でユーザの視認環境と同じ空間における外光の明るさを検出し、検出されたシールド107の内側での外光の明るさに応じて表示像の明るさを調節するようにしたので、HUD装置3によって表示される表示像の明るさを、情報端末5の操作を以てユーザの視認し易い明るさに一旦調節しておけば、ヘルメット101外部の明るさの変化に応じて自動的に調節し、ユーザの視界の明暗状態に対して視認し易い状態を維持することができる。
【0075】
したがって、HUD装置3およびそれが搭載されたヘルメット101によれば、ヘルメット101のシールド107が光透過率の異なるシールド107に取り替えられても、そのことに起因してHUD装置3により表示される表示像の視認性が低下するのを避けることができ、表示像の視認性を良くすることができる。その結果、HUD装置3の使用性(ユーザビリティ)、ひいては情報提示システム1の使用性を高めることができる。
【0076】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0077】
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0078】
上記実施形態では、外光センサ45がヘルメット本体105の窓開口103の周縁部分のうち上下方向における上側の額部111下面の、左右方向における中央または中央付近の位置に設けられているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。HUD装置3が搭載されたヘルメット101において外光センサ45を設け得る位置の例を、図8図10のヘルメット101の正面図に示す。
【0079】
外光センサ45は、図8に示すように、ヘルメット本体105の窓開口103の周縁部分のうち上下方向における下側の顎部113上面の、左右方向における中央または中央付近の位置に設けられていてもよい。また、外光センサ45は、図9に示すように、ヘルメット本体105の窓開口103の周縁部分のうち左右方向における左側部の、上下方向における上側の位置に設けられていてもよい。また、外光センサ45は、図10に示すように、ヘルメット本体105の窓開口103の周縁部分のうち左右方向における右側部の、上下方向における上側の位置に設けられていてもよい。
【0080】
上記実施形態では、ユーザが情報端末5の設定画面33に列挙された5段階の明るさレベルの選択肢35のうちから1つ選択することにより、HUD表示の明るさが設定されるとしたが、本開示の技術はこれに限らない。情報端末5に表示されるHUD表示の明るさを設定する画面33の一例を図11に示す。
【0081】
HUD表示の明るさは、例えば図11に示すような、明るさレベルのバー83と、バー83の左右両側に配置された明るさのイメージを示すアイコン84と、バー83に沿ってスライド操作が可能なスライダ85とが表示された設定画面33において、無段階で連続的に調節可能となっていてもよい。ユーザは、スライダ85をタッチ操作により左右にスライドさせることにより、HUD表示の明るさを調節することができる。その他、情報端末5に表示されるHUD表示の明るさを設定する画面33には、任意の画面を採用することが可能である。
【0082】
上記実施形態では、HUD装置3と連携する情報端末5としてスマートフォンを例示したが、本開示の技術はこれに限らない。当該情報端末5は、スマートウォッチやタブレット端末、PDA(Personal Data Assistant)などのスマートフォンに類する機能を備えた端末であってもよく、外部ネットワークNに接続する機能やGPS受信機7を備え、HUD装置3と通信できるものあれば、その他の携帯型の情報端末であっても構わない。また、HUD装置3は、情報端末5に代え、または情報端末5に加えて、自動二輪車と通信して同車に搭載された各種センサによる検知情報を受信して表示像とするようになっていてもよい。
【0083】
上記実施形態では、情報端末5がHUD装置3での表示設定を行うための操作を受け付ける操作器を兼ねているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。情報提示システム1は、情報端末5とは別に、HUD装置3での表示設定を行うための操作を受け付ける操作器を備え、その操作器でHUD表示の明るさを調節するための操作を行えるようになっていてもよい。当該操作器は、HUD装置3の一部であってもよいし、HUD装置3とは別個の装置にHUD装置3での表示設定を行うための操作を受け付ける機能を持たせたものであってもよい。そうした操作器は、ヘルメット101に設けられていてもよいし、ヘルメット101とは分離されていてもよい。
【0084】
上記実施形態では、光出射器67に用いる表示素子としてLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示パネルを例示したが、本開示の技術はこれに限らない。光出射器67の表示素子には、例えば、有機EL(Electro Luminescence)表示パネルやVFD(Vacuum Fluorescent Display)などの自発光型の表示素子が用いられてもよい。
【0085】
上記実施形態では、投射モジュール49が凹面ミラー69を有しているとしたが、本開示の技術はこれに限らない。投射モジュール49は、凹面ミラー69に代えて、凸面ミラーまたは平面ミラーを有していてもよい。
【0086】
上記実施形態では、HUD装置3によりユーザに表示像として提示される情報が現在時刻、速度、経路案内の情報であるとしたが、本開示の技術はこれに限らない。これら現在時刻、速度、経路案内の情報は、HUD装置3により提示し得る情報の一例に過ぎず、それら以外の自動二輪車の運転に寄与する情報であってもよく、情報端末5の連携アプリ31で設定するなどして、走行地域の周辺施設の情報などといったユーザにとって有用なその他の情報がHUD装置3で表示する項目とされていても構わない。
【0087】
上記実施形態では、HUD装置3が搭載されるヘルメット101としてフルフェイス型のヘルメットを例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。フルフェイス型のヘルメット101は、HUD装置3が搭載されるヘルメット101の一例に過ぎず、窓開口103の少なくとも一部を覆い得るシールド107が取り付けられる構成のものであれば、オープンフェイス型(ジェット型)やセミジェット型(スリークォーターズ型)など、任意のタイプのヘルメットをHUD装置3が搭載されるヘルメット101として採用することが可能である。
【0088】
上記実施形態では、HUD装置3が搭載されたヘルメット101として、自動二輪車を運転する際に着用されるヘルメット101を例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限らない。HUD装置3は、水上バイクや自転車などの二輪車、スノーモービル(雪上バイク)などの他の乗物において着用されるヘルメットにも勿論適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本開示の技術は、取り替え可能なシールド付きのヘルメットに搭載されるHUD装置およびHUD装置が搭載されたヘルメットについて有用である。
【符号の説明】
【0090】
1…情報提示システム
3…HUD装置
5…情報端末(操作器)
7…GPS受信機
9…無線通信モジュール
11…マイクロコンピュータ
13…タッチパネル付き表示装置
15…電源
17…ネットワーク通信部
19…近距離通信部
21…メモリ
23…CPU
25…時刻アプリ
27…速度アプリ
29…ナビアプリ
31…連携アプリ
33…画面
35…明るさレベルの選択肢
37…アイコン
39…記述
41…選択欄
43…無線通信モジュール
45…外光センサ
47…制御ユニット
49…投射モジュール
51…コンバイナユニット
53…操作ユニット
55…電源
57…PCBモジュール
58…受光部
59…メモリ
61…CPU
63…マイクロコンピュータ
65…GDC
66…ルックアップテーブル
67…光出射器
69…凹面ミラー
71…反射面
73…コンバイナ
75…支持機構
77…半透過反射面
79…ステー
81…回転軸
101…ヘルメット
103…窓開口
105…ヘルメット本体
107…シールド
109…留め具
111…額部
113…顎部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11