(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】真空チャック用シリカ多孔体
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20221012BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221012BHJP
C04B 35/14 20060101ALI20221012BHJP
B24B 37/30 20120101ALN20221012BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
H01L21/68 N
C04B35/14
B24B37/30 A
(21)【出願番号】P 2018242913
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【氏名又は名称】藤木 博
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183535(JP,A)
【文献】特開2013-121888(JP,A)
【文献】特開2008-060232(JP,A)
【文献】特開2006-205187(JP,A)
【文献】特開平05-345685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/14
C04B 38/00
H01L 21/683
B24B 37/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を吸着して支持する真空チャックのチャックプレートに用いられる真空チャック用シリカ多孔体であって、
粒径が30μm以上100μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなり、平均気孔径が10μm以上15μm以下である支持体部と、
この支持体部に対して前記対象物を吸着する側に配設され、粒径が1μm以上40μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなり、平均気孔径が3μm以上7μm以下である表面層部とを備え、
前記支持体部のシリカ粒子の平均粒子径は、前記表面層部のシリカ粒子の平均粒子径よりも10μm以上大きい
ことを特徴とする真空チャック用シリカ多孔体。
【請求項2】
前記支持体部の厚みは3mm以上5mm以下であり、前記表面層部の厚みは0.5mm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の真空チャック用シリカ多孔体。
【請求項3】
前記支持体部のシリカ粒子の粒子分布幅は30μm以下であり、前記表面層部のシリカ粒子の粒子分布幅は20μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の真空チャック用シリカ多孔体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を吸引により吸着して支持する真空着チャックに用いるシリカ多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物を空気の吸引により吸着面に吸着させ、裏面より光を当てることで対象物の影ができ、その影から対象物の輪郭を確認し、寸法及び不良品の検査を行ったり、加工したりする真空チャックが知られている。このような真空チャックでは、吸着面に、光透過性と流体透過性を有する部材が用いられている。例えば、本出願人は、このような光透過性と流体透過性を有する部材として、特許文献1において、シリカ粒子の焼結体からなる真空チャック用シリカ多孔体を提案している。
【0003】
この真空チャック用シリカ多孔体は、シリカ多孔体が容易には光を透過させないことを利用したものであり、平均粒子径が5μm~300μm、かつ、粒子分布幅が平均粒子径の±50%以内にあるシリカ粒子の焼結体から形成されている。また、このシリカ多孔体は、気孔径が1μm~100μm、気孔率が5%~45%、見掛け密度が2.1g/cm3以上であり、断面における気孔の平均径が、該断面におけるシリカ粒子の平均粒子径の1/12以上3/4以下に構成され、波長350nm~750nmの光の反射率が80%以上に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリカ多孔体では、一般的に光透過率を高めるには、粒径を大きくする必要があるが、その一方で、粒径を大きくすると強度が低下してしまい、加工時に表面の粒子脱落が起きやすくなり、平面度が悪くなってしまうという問題があった。また逆に、必要な強度を得るために粒径を小さくすると、光透過性が低下し、十分な特性を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、高い光透過性を得ることができ、かつ、吸着面の平面度を高くすることができる真空チャック用シリカ多孔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の真空チャック用シリカ多孔体は、対象物を吸着して支持する真空チャックのチャックプレートに用いられるものであって、粒径が30μm以上100μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなり、平均気孔径が10μm以上15μm以下である支持体部と、この支持体部に対して対象物を吸着する側に接合され、粒径が1μm以上40μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなり、平均気孔径が3μm以上7μm以下である表面層部とを備え、支持体部のシリカ粒子の平均粒子径は、表面層部のシリカ粒子の平均粒子径よりも10μm以上大きいものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の真空チャック用シリカ多孔体によれば、粒径が30μm以上100μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなる支持体部を備えるようにしたので、高い光透過性を維持しつつチャックプレートとしての強度を得ることができる。また、支持体部の対象物を吸着する側に、粒径が1μm以上40μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなる表面層部を接合するようにしたので、対象物を吸着する吸着面の強度を高くすることができ、平面度を向上させることができる。よって、高い光透過性を有し、かつ、吸着面の平面度が高いチャックプレートを形成することができる。
【0009】
更に、支持体部の厚みを3mm以上5mm以下、表面層部の厚みを0.5mm以上1mm以下とすれば、又は、支持体部のシリカ粒子の粒子分布幅を20μm以下、表面層部のシリカ粒子の粒子分布幅を30μm以下とすれば、より高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る真空チャック用シリカ多孔体の構成を表す図である。
【
図2】シリカ多孔体の気孔径の違いによる光透過率の差を表す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る真空チャック用シリカ多孔体10の構成を表すものである。この真空チャック用シリカ多孔体10は、平板状部材等の対象物を吸引により吸着して支持する真空チャックのチャックプレートに用いられるものであり、支持体部11と、この支持体部11に対して対象物を吸着する側に配設された表面層部12とを備えている。表面層部12は支持体部11に直接接触していることが好ましく、接合されていればより好ましい。表面層部12の表面、すなわち支持体部11と反対側の表面は、対象物を吸着する平らな吸着面となっている。支持体部11及び表面層部12は、例えば、円盤状等の板状であり、通気性及び透光性を有し、粒径の異なるシリカ粒子の多孔質焼結体によりそれぞれ構成されている。
【0013】
支持体部11は、粒径が30μm以上100μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなり、平均気孔径は10μm以上15μm以下である。表面層部12は、粒径が1μm以上40μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなり、平均気孔径が3μm以上7μm以下である。支持体部11のシリカ粒子の平均粒子径は、表面層部12のシリカ粒子の平均粒子径よりも10μm以上大きくなるように構成されている。なお、粒径及び平均粒子径は、レーザ回折・散乱法によって導出される値である。平均気孔径は、水銀圧入法により導出される値である。
【0014】
このように構成することで、粒径の大きい支持体部11により、高い光透過性を維持しつつチャックプレートとしての強度を得ることができ、かつ、粒径の小さい表面層部12により、対象物を吸着する吸着面の強度を高くして平面度を向上させ、チャックプレートとして要求される約5μmの平面度を得ることができるようになっている。
【0015】
支持体部11の作製に用いられるシリカ粒子の粒径は、30μm以上100μm以下とする。30μmよりも小さいと十分に光透過率を高くすることができず、100μmよりも大きいと強度が大きく低下し、形状を維持出来ないからである。表面層部12の作製に用いられるシリカ粒子の粒径は、1μm以上40μm以下とする。1μmよりも小さいと焼結時にクラックが生じやすく、40μmよりも大きいと十分な平面度を得ることが難しいからである。
【0016】
また、支持体部11の作製に用いられるシリカ粒子の粒子分布幅は30μm以下とすることが好ましく、表面層部12の作製に用いられるシリカ粒子の粒子分布幅は20μm以下とすることが好ましい。分級して粒子分布幅を狭くすることにより、焼結時の割れを防ぐことができるからである。例えば、支持体部11の作製に用いられるシリカ粒子の粒径は70μm以上100μm以下とすることが好ましく、表面層部12の作製に用いられるシリカ粒子の粒径は20μm以上40μm以下とすることが好ましい。
【0017】
支持体部11の平均気孔径を10μm以上とするのは、光透過率をより高くすることができるからであり、15μm以下とするのは、支持層として必要な強度を持たせるためである。表面層部12の平均気孔径を7μm以下とするのは、平面度を高くすることができるからである。
図2にシリカ多孔体の気孔径の違いによる光透過率の差を示す。
図2に示したように、平均気孔径が大きい方が光透過率が高くなることが分かる。また、平面度は平均気孔径が小さくなるほど高くなる傾向があり、平均気孔径が15μmの場合の平面度は約40μmであるのに対して、平均気孔径が7μmの場合には約5μmの平面度が得られる。
【0018】
支持体部11の厚みは3mm以上5mm以下とすることが好ましく、表面層部12の厚みは0.5mm以上1mm以下とすることが好ましい。支持体部11の厚みが3mmよりも薄いと、チャックプレートとしての十分な強度を得ることが難しく、5mmよりも厚いと、光透過性が低下してしまうからである。表面層部12の厚みが0.5mmよりも薄いと、表面層を均一に作製できなくなり、1mmよりも厚いと光透過性が低下してしまうからである。
【0019】
この真空チャック用シリカ多孔体10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、例えば、支持体部11及び表面層部12を形成する球状シリカを上述した粒径及び平均粒径となるように分級し、結合剤と混合して鋳型に鋳込み、15℃~50℃程度の所定の温度で3時間~12時間程度放置することによりゲル化させる。次いで、例えば、このゲルを離型し、1300℃~1350℃程度の所定の温度で10時間~15時間程保持することにより焼成し、支持体部11及び表面層部12を形成する。
【0020】
続いて、得られた支持体部11及び表面層部12を必要により加工し、洗浄した後、接合する。例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と超純水と塩酸とプロピレングリコールとを混合し、アンモニアでpHを調整したゾルを支持体部11と表面層部12との間に塗布し、乾燥した後、ゲル化して焼成する。焼成温度は、例えば1200℃~1350℃とすることが好ましい。1200℃未満では接合が弱く、剥離してしまう場合があり、1350℃よりも高いとシリカガラスが失透してしまうからである。なお、接合の際には、ゲルの中にシリカ粒子を同量程度まで混合してもよい。
【0021】
このように本実施の形態によれば、粒径が30μm以上100μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなる支持体部を備えるようにしたので、高い光透過性を維持しつつチャックプレートとしての強度を得ることができる。また、支持体部の対象物を吸着する側に、粒径が1μm以上40μm以下のシリカ粒子の多孔質焼結体よりなる表面層部を接合するようにしたので、対象物を吸着する吸着面の強度を高くすることができ、平面度を向上させることができる。よって、高い光透過性を有し、かつ、吸着面の平面度が高いチャックプレートを形成することができる。
なお、支持体部のシリカ粒子の平均粒子径は、表面層部のシリカ粒子の平均粒子径よりも10μm以上大きくなければならない。両者の平均粒子径差が10μm未満であったり、大小関係が逆転してしまうと、二層構造とする本発明の効果が得られなくなってしまう。
【0022】
更に、支持体部の厚みを3mm以上5mm以下、表面層部の厚みを0.5mm以上1mm以下とすれば、又は、支持体部のシリカ粒子の粒子分布幅を20μm以下、表面層部のシリカ粒子の粒子分布幅を30μm以下とすれば、より高い効果を得ることができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
まず、球状シリカを分級して粒径及び平均粒径を調整し、結合剤と混合して鋳型に鋳込み、25℃で12時間放置してゲル化した後、離型し、1350℃で12時間保持することにより焼成して円盤状の支持体部11及び表面層部12を形成した。支持体部11を形成する球状シリカの粒径は30μm以上100μm以下とし、平均粒径は約70μmとした。表面層部12を形成するシリカ粒子の粒径は20μm以上40μm以下とし、平均粒径は約30μmとした。得られた支持体部11の平均気孔径は約15μm、表面層部12の平均気孔径は約7μmであった。また、支持体部11の厚みは5mmとし、表面層部12の厚みは0.5mmとした。
【0024】
次いで、得られた表面層部12の表面について平面出し加工を行い、3次元測定により平面度を測定した。その結果、平面度は約5μmであった。続いて、得られた支持体部11及び表面層部12を洗浄したのち接合し、真空チャック用シリカ多孔体10を製造した。接合は、TEOSと超純水と0.1mol/lの塩酸とプロピレングリコールとをTEOS:超純水:塩酸:プロピレングリコール=11.7:9:1:3の重量比で混合し、アンモニアでpH4.5~5.0に調整したゾルを支持体部11と表面層部12との間に塗布し、乾燥した後、ゲル化し、1200℃で焼成することにより行った。
【0025】
得られた真空チャック用シリカ多孔体10について、積分球を用いて全透過率を測定したところ、400nmから750nmの光透過率は7%であった。
【0026】
(比較例1,2)
比較例1として、実施例1の支持体部11と同様にしてシリカ多孔体を作製した。厚みは5.5mmとした。比較例2として、実施例1の表面層体12と同様にしてシリカ多孔体を作製した。厚みは同じく5.5mmとした。比較例1,2についても、表面出し加工を行い、実施例1と同様にして平面度,光透過度を測定した。その結果、比較例1の平面度は約40μmであった。また、比較例2の光透過度は3%であった。すなわち、実施例1によれば、吸着面の平面度をチャックプレートとして要求される5μm以下とすることができ、かつ、光透過率を高くできることが分かった。
【0027】
実施例1は、支持体強度を重視し厚くしたために光透過率は
図2に比べて、小さくなっているが、光源の強度との組み合わせで実用化できる範囲である。
支持体部11の厚みを3mm程度まで薄くすれば、光の透過率はさらに大きくなる。
【0028】
以上、実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが変更してもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
半導体ウエハ等の対象物を空気の吸引によって吸着して支持する真空チャックに用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
10…真空チャック用シリカ多孔体、11…支持体部、12…表面層部